特開2019-137877(P2019-137877A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アルバックの特許一覧

<>
  • 特開2019137877-蒸着装置及び蒸着方法 図000003
  • 特開2019137877-蒸着装置及び蒸着方法 図000004
  • 特開2019137877-蒸着装置及び蒸着方法 図000005
  • 特開2019137877-蒸着装置及び蒸着方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-137877(P2019-137877A)
(43)【公開日】2019年8月22日
(54)【発明の名称】蒸着装置及び蒸着方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20190726BHJP
【FI】
   C23C14/24 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-19785(P2018-19785)
(22)【出願日】2018年2月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】北沢 僚也
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 宏之
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029BA62
4K029BD01
4K029CA01
4K029DA03
4K029DA12
4K029DB14
4K029DB18
4K029DB19
4K029EA01
4K029EA02
4K029KA01
(57)【要約】
【課題】水晶振動子が示すモニタリング値の偶発的な変動を避け、長時間にわたり基板上に形成される膜の厚みを高精度に制御され得る蒸着装置及び蒸着方法を提供する。
【解決手段】蒸着装置は、真空容器と、蒸着源と、膜厚センサと、制御装置とを具備する。上記蒸着源は、上記真空容器内に設けられ、蒸着材料が収容される。上記膜厚センサは、上記蒸着源に対向する水晶振動子と、上記水晶振動子を遮蔽可能なシャッタとを有する。上記制御装置は、上記水晶振動子に堆積する蒸着材料の蒸着速度を定期的に検知することによって、基板に形成される上記蒸着材料の膜厚を制御する。上記制御装置は、上記シャッタを開けた後に、上記水晶振動子によって検知された上記蒸着速度の変化量を算出し、上記変化量が目的値である場合には、上記シャッタを閉じて、上記蒸着速度に基づいて上記基板に形成される上記蒸着材料の上記膜厚を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器と、
前記真空容器内に設けられ、蒸着材料が収容される蒸着源と、
前記蒸着源に対向する水晶振動子と、前記水晶振動子を遮蔽可能なシャッタとを有する膜厚センサと、
前記水晶振動子に堆積する蒸着材料の蒸着速度を定期的に検知することによって、基板に形成される前記蒸着材料の膜厚を制御する制御装置と
を具備し、
前記制御装置は、前記シャッタを開けた後に、前記水晶振動子によって検知された前記蒸着速度の変化量を算出し、前記変化量が目的値である場合には、前記シャッタを閉じて、前記蒸着速度に基づいて前記基板に形成される前記蒸着材料の前記膜厚を制御する
蒸着装置。
【請求項2】
請求項1に記載された蒸着装置であって、
前記制御装置は、前記変化量が目的値でない場合には、前記シャッタを開けた後の定められた許容時間内で、前記水晶振動子によって前記蒸着速度を再検知し、再検知された前記蒸着速度の変化量が目的値であるか否かの判断を行う
蒸着装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された蒸着装置であって、
前記制御装置は、前記蒸着速度に基づく前記膜厚の制御に進む前に、前記蒸着速度と、前回に検知された蒸着速度との差を求め、前記差が目的値である場合には、前記シャッタを閉じて前記蒸着速度に基づく前記膜厚の制御に進む
蒸着装置。
【請求項4】
請求項3に記載された蒸着装置であって、
前記制御装置は、前記許容時間内における前記変化量、または前記差が目的値でない場合には、前記シャッタを閉じ、前記シャッタを再び開けて前記変化量または前記差を再び求めるリトライ動作を実行する
蒸着装置。
【請求項5】
請求項4に記載された蒸着装置であって、
前記制御装置は、前記リトライ動作が許容回数以下の場合には、前記水晶振動子を用いた前記膜厚の制御を停止し、前記蒸着源の温度が前記制御を停止する直前の温度で維持される制御を行う
蒸着装置。
【請求項6】
蒸着材料が収容される蒸着源と、水晶振動子と、前記水晶振動子を遮蔽可能なシャッタとを有する膜厚センサとを用い、前記水晶振動子に堆積する前記蒸着材料の蒸着速度を定期的に検知することによって、基板に形成される前記蒸着材料の膜厚を制御する蒸着方法であって、
前記シャッタを開けた後に、前記水晶振動子によって検知された前記蒸着速度の変化量を算出し、前記変化量が目的値である場合には、前記シャッタを閉じて、前記蒸着速度に基づいて前記基板に形成される前記蒸着材料の前記膜厚を制御する
蒸着方法。
【請求項7】
請求項6に記載された蒸着方法であって、
前記変化量が目的値でない場合には、前記シャッタを開けた後の定められた許容時間内で、前記水晶振動子によって前記蒸着速度を再検知し、再検知された前記蒸着速度の変化量が目的値であるか否かの判断を行う
蒸着方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載された蒸着方法であって、
前記蒸着速度に基づく前記膜厚の制御に進む前に、前記蒸着速度と、前回に検知された蒸着速度との差を求め、前記差が目的値である場合には、前記シャッタを閉じて前記蒸着速度に基づく前記膜厚の制御に進む
蒸着方法。
【請求項9】
請求項8に記載された蒸着方法であって、
前記許容時間内における前記変化量または前記差が目的値でない場合には、前記シャッタを閉じ、前記シャッタを再び開けて前記変化量または前記差を再び求めるリトライ動作を実行する
蒸着方法。
【請求項10】
請求項9に記載された蒸着方法であって、
前記リトライ動作が許容回数以下の場合には、前記水晶振動子を用いた前記膜厚の制御を停止し、前記蒸着源の温度が前記制御を停止する直前の温度で維持される
蒸着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着装置及び蒸着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(エレクトロルミネッセンス)を利用した有機ELディスプレイでは、一般的に基板上に形成される層が有機物で構成される。その製造方法としては、有機物の分子構造が破壊されにくい真空蒸着法が採用される。また、その蒸着速度は、水晶振動子を用いた膜厚センサにより制御される。
【0003】
しかし、水晶振動子を用いた膜厚モニタでは、水晶振動子の共振特性に限界があり、水晶振動子上に形成される膜の厚みが厚くなったときは膜厚モニタとしての機能を失う場合がある。
【0004】
これに対して、膜厚モニタに水晶振動子を遮蔽するシャッタを設け、膜厚のモニタリング時にシャッタを開け、非モニタリング時には、シャッタを閉じる間欠制御がある(例えば、特許文献1参照)。このような手法によれば、水晶振動子上に形成される膜の過剰な堆積が抑えられ、モニタリング寿命が長くなるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−039762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、モニタリング寿命が長くなったとしても、水晶振動子が示すモニタリング値が偶発的に変動する場合には、基板上に形成される膜の厚みを長時間にわたり高精度に制御できないことになる。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、水晶振動子が示すモニタリング値の偶発的な変動を避け、長時間にわたり基板上に形成される膜の厚みを高精度に制御され得る蒸着装置及び蒸着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る蒸着装置は、真空容器と、蒸着源と、膜厚センサと、制御装置とを具備する。
上記蒸着源は、上記真空容器内に設けられ、蒸着材料が収容される。
上記膜厚センサは、上記蒸着源に対向する水晶振動子と、上記水晶振動子を遮蔽可能なシャッタとを有する。
上記制御装置は、上記水晶振動子に堆積する蒸着材料の蒸着速度を定期的に検知することによって、基板に形成される上記蒸着材料の膜厚を制御する。
上記制御装置は、上記シャッタを開けた後に、上記水晶振動子によって検知された上記蒸着速度の変化量を算出し、上記変化量が目的値である場合には、上記シャッタを閉じて、上記蒸着速度に基づいて上記基板に形成される上記蒸着材料の上記膜厚を制御する。
【0009】
このような蒸着装置であれば、シャッタが開けられた後に、水晶振動子によって検知された蒸着速度の変化量が算出され、変化量が目的値である場合にシャッタが閉じられて、水晶振動子が検知した蒸着速度に基づいて基板に形成される蒸着材料の膜厚が制御される。これにより、水晶振動子が示すモニタリング値の偶発的な変動が避けられ、長時間にわたり基板上に形成される膜の厚みが高精度に制御される。
【0010】
上記の蒸着装置においては、上記制御装置は、上記変化量が目的値でない場合には、上記シャッタを開けた後の定められた許容時間内で、上記水晶振動子によって上記蒸着速度を再検知し、再検知された上記蒸着速度の変化量が目的値であるか否かの判断を行ってもよい。
【0011】
このような蒸着装置であれば、変化量が目的値でない場合には、シャッタを開けた後の定められた許容時間内で、水晶振動子によって蒸着速度が再検知される。これにより、水晶振動子が示すモニタリング値の偶発的な変動が避けられ、長時間にわたり基板上に形成される膜の厚みが高精度に制御される。
【0012】
上記の蒸着装置においては、上記制御装置は、上記蒸着速度に基づく上記膜厚の制御に進む前に、上記蒸着速度と、前回に検知された蒸着速度との差を求め、上記差が目的値である場合には、上記シャッタを閉じて上記蒸着速度に基づく上記膜厚の制御に進んでもよい。
【0013】
このような蒸着装置であれば、蒸着速度に基づく膜厚の制御に進む前に、蒸着速度と、前回に検知された蒸着速度との差を求め、この差が目的値である場合には、シャッタを閉じて蒸着速度に基づく膜厚の制御に進むことになる。これにより、水晶振動子が示すモニタリング値の偶発的な変動が確実に避けられ、長時間にわたり基板上に形成される膜の厚みが高精度に制御される。
【0014】
上記の蒸着装置においては、上記制御装置は、上記許容時間内における上記変化量、または上記差が目的値でない場合には、上記シャッタを閉じ、上記シャッタを再び開けて上記変化量または上記差を再び求めるリトライ動作を実行してもよい。
【0015】
このような蒸着装置であれば、許容時間内における変化量または上記の差が目的値でない場合には、シャッタが閉じられ、シャッタが再び開けられて変化量または上記の差を再び求めるリトライ動作が実行される。これにより、水晶振動子が示すモニタリング値の偶発的な変動が避けられ、長時間にわたり基板上に形成される膜の厚みが高精度に制御される。
【0016】
上記の蒸着装置においては、上記制御装置は、上記リトライ動作が許容回数以下の場合には、上記水晶振動子を用いた上記膜厚の制御を停止し、上記蒸着源の温度が上記制御を停止する直前の温度で維持される制御を行ってもよい。
【0017】
このような蒸着装置であれば、リトライ動作が許容回数以下の場合には、水晶振動子を用いた上記膜厚の制御を停止し、蒸着源の温度が制御を停止する直前の温度で維持される。これにより、水晶振動子が示すモニタリング値の偶発的な変動が避けられ、長時間にわたり基板上に形成される膜の厚みが高精度に制御される。
【0018】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る蒸着方法は、蒸着材料が収容される蒸着源と、水晶振動子と、上記水晶振動子を遮蔽可能なシャッタとを有する膜厚センサとを用い、上記水晶振動子に堆積する上記蒸着材料の蒸着速度を定期的に検知することによって、基板に形成される上記蒸着材料の膜厚を制御する。
上記シャッタを開けた後に、上記水晶振動子によって検知された上記蒸着速度の変化量が算出され、上記変化量が目的値である場合には、上記シャッタを閉じて、上記蒸着速度に基づいて上記基板に形成される上記蒸着材料の上記膜厚が制御される。
【0019】
このような蒸着方法であれば、シャッタが開けられた後に、水晶振動子によって検知された蒸着速度の変化量が算出され、変化量が目的値である場合にシャッタが閉じられて、水晶振動子が検知した蒸着速度に基づいて基板に形成される蒸着材料の膜厚が制御される。これにより、水晶振動子が示すモニタリング値の偶発的な変動が避けられ、長時間にわたり基板上に形成される膜の厚みが高精度に制御される。
【0020】
上記の蒸着方法においては、上記変化量が目的値でない場合には、上記シャッタを開けた後の定められた許容時間内で、上記水晶振動子によって上記蒸着速度を再検知し、再検知された上記蒸着速度の変化量が目的値であるか否かの判断を行ってもよい。
【0021】
このような蒸着方法であれば、変化量が目的値でない場合には、シャッタを開けた後の定められた許容時間内で、水晶振動子によって蒸着速度が再検知される。これにより、水晶振動子が示すモニタリング値の偶発的な変動が避けられ、長時間にわたり基板上に形成される膜の厚みが高精度に制御される。
【0022】
上記の蒸着方法においては、上記蒸着速度に基づく上記膜厚の制御に進む前に、上記蒸着速度と、前回に検知された蒸着速度との差を求め、上記差が目的値である場合には、上記シャッタを閉じて上記蒸着速度に基づく上記膜厚の制御に進んでもよい。
【0023】
このような蒸着方法であれば、蒸着速度に基づく膜厚の制御に進む前に、蒸着速度と、前回に検知された蒸着速度との差を求め、この差が目的値である場合には、シャッタを閉じて蒸着速度に基づく膜厚の制御に進むことになる。これにより、水晶振動子が示すモニタリング値の偶発的な変動が確実に避けられ、長時間にわたり基板上に形成される膜の厚みが高精度に制御される。
【0024】
上記の蒸着方法においては、上記許容時間内における上記変化量または上記差が目的値でない場合には、上記シャッタを閉じ、上記シャッタを再び開けて上記変化量、または上記差を再び求めるリトライ動作を実行してもよい。
【0025】
このような蒸着方法であれば、許容時間内における変化量または上記の差が目的値でない場合には、シャッタが閉じられ、シャッタが再び開けられて変化量または上記の差を再び求めるリトライ動作が実行される。これにより、水晶振動子が示すモニタリング値の偶発的な変動が避けられ、長時間にわたり基板上に形成される膜の厚みが高精度に制御される。
【0026】
上記の蒸着方法においては、上記リトライ動作が許容回数以下の場合には、上記水晶振動子を用いた上記膜厚の制御を停止し、上記蒸着源の温度が上記制御を停止する直前の温度で維持されてもよい。
【0027】
このような蒸着方法であれば、リトライ動作が許容回数以下の場合には、水晶振動子を用いた上記膜厚の制御を停止し、蒸着源の温度が制御を停止する直前の温度で維持される。これにより、水晶振動子が示すモニタリング値の偶発的な変動が避けられ、長時間にわたり基板上に形成される膜の厚みが高精度に制御される。
【発明の効果】
【0028】
以上述べたように、本発明によれば、水晶振動子が示すモニタリング値の偶発的な変動が避けられ、長時間にわたり蒸着速度が高精度に制御される蒸着装置及び蒸着方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】図(a)及び図(b)は、本実施形態に係る蒸着装置の概略的断面図である。図(c)は、本実施形態に係る蒸着装置に設置された膜厚センサの概略的斜視図である。
図2】本実施形態に係る蒸着装置のブロック構成図である。
図3】本実施形態で起こり得る現象を概略的に説明するグラフ図である。
図4】本実施形態の蒸着方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。
【0031】
図1(a)及び図1(b)は、本実施形態に係る蒸着装置の概略的断面図である。図1(c)は、本実施形態に係る蒸着装置に設置された膜厚センサの概略的斜視図である。図1(a)が正面図とした場合、図1(b)は、側面図に相当する。
【0032】
蒸着装置1は、真空容器10と、蒸着源20と、基板搬送機構30と、膜厚測定器40と、温度センサ50と、制御装置60とを具備する。蒸着装置1では、X軸方向における基板90と蒸着源20との相対位置を変えながら、基板90に蒸着材料20mが蒸着される。図1(a)、(b)では、蒸着源20が固定され、蒸着源20の上方をX軸方向に基板90が移動する蒸着装置が例示されている。
【0033】
真空容器10は、減圧状態が維持することが可能な容器である。真空容器10には、真空容器10内のガスを排気する排気系が設けられる。また、真空容器10には、真空容器10外から真空容器10内にガスを供給することが可能なガス供給機構が設けられてもよい。真空容器10をX−Y平面で切断したときの形状は、例えば、矩形状である。
【0034】
蒸着源20は、真空容器10内に設けられている。蒸着源20は、例えば、真空容器10内の底部または底部近傍に設けられている。蒸着源20は、複数の蒸着源20sを有する。複数の蒸着源20sのそれぞれは、基板90が移動する方向に対して交差する方向(例えば、直交する方向)に並ぶ。蒸着源20は、いわゆるリニアソース型の蒸着源である。
【0035】
複数の蒸着源20sのそれぞれは、蒸着材料20mを収容する。複数の蒸着源20sのそれぞれは、加熱装置(不図示)が設けられ、外部から供給される交流電圧によって加熱される。加熱装置は、例えば、誘導加熱装置または抵抗加熱装置である。複数の蒸着源20sのそれぞれが加熱されると、複数の蒸着源20sのそれぞれから、基板90に向けて蒸着材料20mが蒸発する。蒸着材料20mは、例えば、有機EL素子の発光層及びキャリア輸送層を構成する有機材料である。蒸着材料20mは、有機材料とは限らず、無機材料、金属等でもよい。
【0036】
基板搬送機構30は、蒸着源20上に設けられる。基板搬送機構30は、基板90が基板ホルダ91によって保持された状態で、基板90及び基板ホルダ91を真空容器10内で搬送する。基板搬送機構30には、基板90側に図示しないロール機構が設けられる。例えば、基板搬送機構30は、基板90及び基板ホルダ91を複数の蒸着源20sのそれぞれが並ぶ方向に対して直交する方向に搬送する。
【0037】
複数の蒸着源20sのそれぞれから、基板90に向けて蒸着材料20mが蒸発すると、基板90の成膜対象面90dに蒸発物質が付着して、基板90に所望の厚みの薄膜が形成される。また、基板90を一定速度で移動しながら、成膜対象面90dへの蒸着を行うことにより、成膜対象面90dにおける局所成膜が抑えられ、成膜対象面90dに均一な厚みの薄膜が形成される。
【0038】
膜厚測定器40は、膜厚センサ41と、膜厚センサ42とを有する。膜厚センサ41、42は、蒸着源20からの蒸着材料20mの量を測定し、基板90に形成される薄膜の厚み(または、蒸着速度)を制御する。膜厚センサ41、42は、蒸着源20に対向する。但し、膜厚センサ41、42は、蒸着材料20mが基板90に到達するのを妨げないように配置される。例えば、膜厚センサ41、42は、蒸着源20と基板90との間には配置されない。蒸着装置1では、蒸着源20に対する、膜厚センサ41、42のそれぞれの幾何学的位置が固定されている。膜厚センサ41、42の出力は、制御装置60に入力される。
【0039】
ここで、膜厚センサ41は、実測用のセンサとして用いられる。膜厚センサ42は、膜厚センサ41に代わり、蒸着源20から発せられる蒸着材料20mの蒸発量を補正する代替用の予備センサとして用いてもよい。膜厚センサ42は、蒸着装置1から取り除いてもよい。
【0040】
膜厚センサ41は、本体41bと、複数の水晶振動子41cと、複数の水晶振動子41cのそれぞれを遮蔽可能な回転式のシャッタ41sを有する(図1(c))。膜厚センサ41は、例えば、12個の水晶振動子41cを含むマルチセンサである。膜厚センサ41に含まれる水晶振動子41cの数は、12個に限らない。また、実測用のセンサとしての膜厚センサ41は、本体41bと、1個の水晶振動子41cと、回転式のシャッタ41sを有する構成でもよい。
【0041】
シャッタ41sには、複数の水晶振動子41cのいずれかが露出する開口41hが設けられている。シャッタ41sの回転により、膜厚センサ41から任意の水晶振動子41cが露出、選択される。膜厚センサ41では、膜厚センサ41から選択される任意の水晶振動子41cによって、それぞれの水晶振動子41cに堆積する蒸着材料20mの蒸着速度が検知可能である。また、開口41hを回転方向に隣り合う水晶振動子41c間に位置させることにより、複数の水晶振動子41cのそれぞれがシャッタ41sによって遮蔽される。
【0042】
蒸着装置1では、任意の水晶振動子41cが選択された後、水晶振動子41cに堆積する蒸着材料20mの蒸着速度を定期的に検知することによって、基板90に形成される蒸着材料20mの膜厚が制御される。この定期的な検知とは、いわゆる間欠的な検知であって、水晶振動子41cを定期的にシャッタ41sから露出させて水晶振動子41cによる蒸着速度の検知を行うことである。これにより、長時間、基板90に対する蒸着を続けても、水晶振動子41cには間欠的に蒸着材料20mが堆積するので、同じ水晶振動子41cを長時間にわたり使用することができる。
【0043】
なお、膜厚センサ42は、本体42bと、基準となる水晶振動子42cと、シャッタ42sとを含む。膜厚センサ42では、水晶振動子42cに形成される蒸着材料20mの蒸着速度が検知可能である。
【0044】
温度センサ50は、複数の蒸着源20sのそれぞれに設置されている。温度センサ50は、例えば、熱電対により温度を測定する。温度センサ50は、制御装置60に接続されている。温度センサ50は、適宜、蒸着装置1から取り除いてもよい。
【0045】
制御装置60は、膜厚測定器40及び温度センサ50の測定結果に基づいて、蒸着源20に設けられた加熱装置に供給される電力(交流電圧)を調整し、蒸着源20を所望の温度に調整し、蒸着材料20mの量が所望の値となるように制御する。
【0046】
図2(a)及び図2(b)は、本実施形態に係る蒸着装置のブロック構成図である。ここで、図中のSVは、設定信号であり、SPは、目標信号であり、MVは、制御信号であり、PVは、測定信号である。
【0047】
蒸着装置1では、膜厚測定器40の膜厚センサ41から任意の水晶振動子41cが選択され、水晶振動子41cに形成される蒸着材料20mの蒸着速度を検知することによって、基板90に形成される蒸着材料20mの膜厚が制御される。
【0048】
例えば、図2(a)には、温度センサ50を使用しない例が示されている。この場合、使用者によって所望の蒸着速度(SV)が蒸着装置1に設定されると、蒸着速度(SV)と、水晶振動子41cによって検知された蒸着速度(PV)との差が目的値内に収まるように交流電源に制御信号(MV)が送られる。この結果、使用者は、所望する蒸着速度で基板90に蒸着材料20mを蒸着することができる。この制御は、例えば、PID(Proportional Integral Differential)制御により行われる。
【0049】
なお、水晶振動子41cによって検知される蒸着速度(PV)は、速度フィルタによって平均化処理がなされる。これらのPID制御及び膜厚測定器40の管理は、制御装置60により一括して行われる。
【0050】
一方、温度センサ50を使用し、蒸着源20の温度を管理することにより、基板90に形成される蒸着材料20mの膜厚を制御することもできる。例えば、図2(b)に示すように、蒸着速度(SV)と、蒸着速度(PV)との差は、温度差として予め変換される。そして、この温度差が目的値内に収まるように、温度センサ50によって検知された温度(PV)が所望の温度になるように、交流電源に制御信号(MV)が送られる。この結果、使用者は、所望する蒸着速度で基板90に蒸着材料20mを蒸着することができる。
【0051】
特に、リニアソース型の蒸着源20のように、熱容量が大きい蒸着源を用いる場合は、蒸着源20の蒸発量を直接的に検知して蒸着速度を制御する方法(図2(a))よりも、蒸着源20の温度を検知して蒸着速度を制御する方法(図2(b))のほうが、蒸発量の過度現象が抑制されて、より精度の高い膜厚制御ができる。
【0052】
しかし、膜厚センサ41の使用環境によっては、何らかの外的要因によって水晶振動子41cの共振周波数が偶発的に変動する可能性がある。
【0053】
さらに、膜厚センサ41に含まれる複数の水晶振動子41cのそれぞれについては、マクロな構成(例えば、直径、石英母材の厚み)が同じであったとしても、ミクロな構成(例えば、表面研磨状態、コーティング膜の構造等)が同じであるとは限らない(内的要因)。このようなミクロな構成を複数の水晶振動子41cのそれぞれについて完全に一致させることは不可能である。
【0054】
さらに、外的要因、内的要因以外にも、製造プロセス中に、水晶振動子41cに堆積した膜の一部が剥離する場合もある。
【0055】
これらの外的要因、内的要因等は、膜厚が数nm〜数百nm程度の極薄の膜を対象とし、蒸着速度が0.01nm/秒〜数10nm/秒程度の範囲で膜厚を制御するときには、無視できない問題になる。
【0056】
例えば、水晶振動子41cの共振周波数が一時的に変動した場合、水晶振動子41cによって検知される蒸着速度も一時的に変動する。このような変動した蒸着速度が測定信号(PV)として使用されると、蒸着源20の温度も変動し、基板90に形成される蒸着材料20mの厚みを高精度に制御できないことになる。この現象を以下に説明する。
【0057】
図3(a)及び図3(b)は、本実施形態で起こり得る現象を概略的に説明するグラフ図である。
【0058】
図3(a)において、横軸は、時間(秒)であり、縦軸は、水晶振動子41cに堆積する蒸着材料20mの蒸着速度(nm/秒)である。図3(a)中の横方向に引かれた直線(実線)は、蒸着速度の設定値(目標値)である。この設定値は、一例として0.3nm/秒とする。設定値の上下に引かれた破線で挟まれた範囲は、設定値(実線)の99%〜101%の範囲を意味する。換言すれば、この範囲は、本実施形態が目的とする蒸着速度の範囲である。
【0059】
また、図3(b)において、横軸は、時間(秒)であり、縦軸は、周波数変化量(MHz)である。ここで、周波数変化量(MHz)とは、一秒前後における水晶振動子41cの共振周波数の差である。
【0060】
また、図3(a)、(b)の横軸のスケールは、同じである。図3(a)、(b)の例では、製造プロセス途中の任意の時間帯で起きた3回分のシャッタ開閉が示されている。
【0061】
まず、図3(a)に示すように、水晶振動子41cが検知する蒸着材料20mの蒸着速度(PV)は、シャッタ41sが閉状態では、0(nm/秒)を示すものの、シャッタ41sが開かれると、0(nm/秒)から、設定値近くまで急峻に上昇する。次いで、蒸着速度(PV)は、設定値付近で安定した後、シャッタ41sが閉じられると、設定値近くから0(nm/秒)に急峻に下降する。このように、シャッタ41sの開閉によって、水晶振動子41cが検知する蒸着速度(PV)は、時間(秒)に対して、パルス波形を示す。
【0062】
本実施形態では、シャッタ41sが開状態の時の水晶振動子41cが検知した蒸着速度(PV)の平均値を算出し、この平均値によって蒸発源20の温度を制御する。例えば、図中の1点破線が蒸発源20の温度を制御する蒸着速度である。これにより、蒸発源20からの蒸着材料20mの蒸発量が水晶振動子41cによって制御されるとともに、水晶振動子41c上に形成される膜の過剰な堆積が抑えられ、水晶振動子41cのモニタリング寿命が長くなる。
【0063】
但し、膜厚センサ41の使用環境によっては、何らかの内的要因、外的要因等によって水晶振動子41cの共振周波数が安定しない期間がある。
【0064】
例えば、図3(b)の例では、1番目のパルスが現れる前までは、周波数変化量(MHz)が0(MHz)になっている。これは、シャッタ41sが閉じられた状態にあるからである。ここからシャッタ41sが開けられると、周波数変化量は、ある特定の値F1(MHz)を示す。これは、シャッタ41sが開けられた状態では、水晶振動子41cに蒸着材料20mが徐々に堆積し、水晶振動子41cの共振周波数が徐々に減少するからである。
【0065】
しかし、1番目のパルスの後に、水晶振動子41cの共振周波数が偶発的に変動すると、以下のような現象が起きる。
【0066】
例えば、図3(b)の左から2番目のパルスにおいては、シャッタ41sが開けられる直前と、シャッタ41sが開けられた直後から、周波数変化量が不安定になっている(F2)。これは、1番目のパルスの後に、水晶振動子41cの共振周波数が偶発的に変動し、これに応じて、1秒前後における水晶振動子41cの共振周波数の差も偶発的に変動するからである。さらに、これに応じて、水晶振動子41cが検知した蒸着速度(PV)の値も不安定になる(図3(a))。
【0067】
特に、水晶振動子41cが検知した蒸着速度(PV)が共振周波数の変動によって大きく跳ね上がると、シャッタ開時における蒸着速度の平均値も高く算出されてしまう。このため、制御装置60は、蒸発源20からの蒸着材料20mの蒸発量が見かけ上、高い値になっていると誤認してしまう。従って、2番目のパルスの後からは、蒸発源20からの蒸着材料20mの蒸発量が水晶振動子41cによって精度よく制御できないことになる。
【0068】
しかし、このような共振周波数の変動は、製造プロセス中に偶発的に起こり得ることから、例えば、左から3番目のパルスにおいては、1番目のパルスと同様のパルス形状に戻っている。そして、水晶振動子41cが検知した蒸着速度(PV)も設定値付近で再び安定している。これは、2番目のパルスの後に、水晶振動子41cの共振周波数が再び安定になったからである。
【0069】
このような不具合を解決するために、蒸着装置1では、水晶振動子41cが示す蒸着速度(PV)の信号が一時的に変動した場合には、この変動を製造プロセス中に変化量として捉え、この変化量が許容範囲内にある場合には、水晶振動子41cを用いて膜厚を制御する。ここで、変化量とは、シャッタ41sが開状態での所定の時間x秒間における水晶振動子41cが検知した、「0秒時の蒸着速度と最大蒸着速度」との差分、もしくは「0秒時の蒸着速度と最小蒸着速度」との差分で定義される。
【0070】
例えば、制御装置60は、シャッタ41sを開けた後に、水晶振動子41cによって検知された蒸着速度の変化量を算出し、変化量が目的値である場合には、シャッタ41sを閉じて、蒸着速度に基づいて基板90に形成される蒸着材料20mの膜厚を制御する。
【0071】
一方、変化量が許容範囲外にある場合には、制御装置60は、変動が偶発的に起きているか否かを確認し、変動が偶発的に起きている場合には、引き続き水晶振動子41cを用いて膜厚を制御する。また、変動が偶発的に起きていない場合には、水晶振動子41cによる膜厚の制御を停止したり、水晶振動子41cを新規のものに交換したりする。
【0072】
これらの制御は、制御装置60によって自動的に行われる。例えば、本実施形態の蒸着方法では、蒸着材料20mが収容される蒸着源20と、水晶振動子41cと、水晶振動子41cを遮蔽可能なシャッタ41sとを有する膜厚センサ41とを用い、水晶振動子41cに堆積する蒸着材料20mの蒸着速度を定期的に検知することによって、基板90に形成される蒸着材料20mの膜厚が制御される。
【0073】
図4は、本実施形態の蒸着方法を示すフロー図である。
【0074】
図4に示されるフロー図の概略的な流れは、以下の通りである。
【0075】
例えば、制御装置60は、シャッタ41sを開けた後に、水晶振動子41cによって検知された蒸着速度の変化量を算出し、この変化量が目的値である場合には、シャッタ41sを閉じて、蒸着速度に基づいて基板90に形成される蒸着材料20mの膜厚を制御する。
【0076】
制御装置60は、この変化量が目的値でない場合には、シャッタ41sを開けた後の定められた許容時間内で、水晶振動子41cによって蒸着速度を再検知し、再検知された蒸着速度の変化量が目的値であるか否かの判断を行う。
【0077】
さらに、制御装置60は、蒸着速度に基づく膜厚の制御に進む前に、蒸着速度と、前回に検知された蒸着速度との差を求め、この差が目的値である場合には、シャッタ41sを閉じて蒸着速度に基づく膜厚の制御に進む。
【0078】
さらに、制御装置60は、許容時間内における上記変化量、または上記差が目的値でない場合には、シャッタ41sを閉じて、シャッタ41sを再び開けて上記変化量または上記差を再び求めるリトライ動作を実行する。
【0079】
さらに、制御装置60は、リトライ動作が許容回数以下の場合には、水晶振動子41cを用いた膜厚の制御を停止し、蒸着源20の温度が制御を停止する直前の温度で維持される制御を行うこともできる。
【0080】
次に、図4に示すフロー図に沿って、本実施形態に係る蒸着方法をより具体的に説明する。
【0081】
まず、製造プロセス中で、シャッタ41sが開状態になると(ステップS11)、水晶振動子41cによって検知される蒸着速度が安定するまで予備時間Z1(待機時間)が設けられる(ステップS12)。予備時間Z1は、例えば、90秒である。予備時間では、水晶振動子41cによる蒸着速度の表示を非表示にしてもよい。
【0082】
次に、変化量を算出する許容時間(Z2秒)のタイマ開始が行われる(ステップS13)。許容時間(Z2秒)は、例えば、60秒である。
【0083】
次に、許容時間がZ2秒以内か否かの判断がなされる(ステップS14)。
【0084】
許容時間がZ2秒以内の場合には、水晶振動子41cによって蒸着速度(PV)が計測される(ステップS15)。
【0085】
次に、x秒間における変化量が所望の範囲±y(nm/秒)以内にあるか否かの判断がなされる(ステップS16)。x秒間は、シャッタ41sが開状態の時間と同じか、それ以下の時間である。例えば、x秒間は、10秒である。±y(nm/秒)は、例えば、±0.001(nm/秒)である。
【0086】
次に、変化量が所望の範囲以内にあるときは、s秒間、前回との変化量との差が算出される(ステップS21)。s秒間は、例えば、1秒である。
【0087】
変化量が所望の範囲にないときは、許容時間内であるか否かの判断が行われ(ステップS14)、再度、水晶振動子41cによって蒸着速度(PV)が計測される(ステップS15)。これは、水晶振動子41cの共振周波数の変動が偶発的に起きた可能性があるからである。
【0088】
次に、水晶振動子41cによる蒸着速度が検知が2回目以降では、前回との変化量との差が所望の範囲±t(nm/秒)以内にあるか否かの判断がなされる(ステップS21)。なお、この段階での「前回の変化量」とは、変化量が所望の範囲以内にある前回の蒸着速度のデータが使用される。また、±t(nm/秒)は、±0.03(nm/秒)である。
【0089】
次に、前回との変化量との差が所望の範囲以内にある場合には、蒸着速度(PV)に基づいて蒸発源20の温度を制御するために、水晶振動子41cによって計測された蒸着速度(PV)が制御装置60に取り込まれる(ステップS22)。
【0090】
次に、水晶振動子41cによる蒸着速度(PV)の計測が停止されて(ステップS23)、シャッタ41sが閉状態になる(ステップS31)。この後、検知された蒸着速度(PV)によって、蒸着源20の温度(SV)が設定される。なお、蒸着源20の温度(SV)を制御する蒸着速度(PV)は、x秒間における蒸着速度の平均値である。
【0091】
次に、シャッタ41sがu秒間、閉状態になるカウントがなされ(ステップS33)、u秒間、シャッタ41sが閉状態になる。u秒は、例えば、3600秒である。また、u秒後には、再びシャッタ41sが開状態となって(ステップS11)、水晶振動子41cによる蒸着速度(PV)の検知が再開される。
【0092】
なお、ステップS21を略して、ステップS16からステップS22に進むフローも、本実施形態に含まれる。
【0093】
本実施形態では、水晶振動子41cの共振周波数の変動が偶発的に起こることを考慮して、ステップS16→ステップS14→ステップS15→ステップS16のルーチン動作の他にも、リトライ動作の機会が水晶振動子41cに別途与えられている。
【0094】
例えば、ステップS14の段階で、許容時間Z2を超えている場合には、シャッタ41sが開状態から閉状態になる(ステップS41)。
【0095】
次に、水晶振動子41cによる蒸着速度(PV)の計測が停止される(ステップS42)。次に、リトライカウンタによって、リトライ動作(第1リトライ動作)の回数として回数Aが1回加算される(ステップS43)。
【0096】
次に、リトライ動作の回数Aが所定回数M回未満ならば(ステップS44)、再びシャッタ41sが開状態となって(ステップS11)、水晶振動子41cによる蒸着速度(PV)の検知が再開される。所定回数M回は、例えば、3回とする。
【0097】
あるいは、ステップS21の段階で、前回との変化量との差が範囲±t(nm/秒)外にある場合には、シャッタ41sが開状態から閉状態になる(ステップS41)。
【0098】
次に、水晶振動子41cによる蒸着速度(PV)の計測が停止される(ステップS42)。次に、リトライカウンタによって、リトライ動作(第1リトライ動作)の回数Aが1回加算される(ステップS43)。
【0099】
次に、リトライ動作の回数Aが所定回数M回未満ならば(ステップS44)、再びシャッタ41sが開状態となって(ステップS11)、水晶振動子41cによる蒸着速度(PV)の検知が再開される。
【0100】
但し、リトライ動作の回数Aが所定回数M回以上ならば(ステップS44)、別のリトライカウンタによって、リトライ動作(第2リトライ動作)の回数として回数Bが1回加算される(ステップS51)。
【0101】
次に、リトライ動作の回数Bの回数が許容回数N回以下か否かの判断がなされる(ステップS52)。
【0102】
ここで、リトライ動作の回数Bが許容回数N以下の場合には、水晶振動子41cを用いた膜厚の制御を停止し、蒸着源20の温度が制御を停止する直前の温度で維持される(ステップS53)。例えば、前回に検知された蒸着速度に対応した蒸着源20の温度で、蒸着源20の温度が保持される。許容回数N回は、例えば、3回とする。
【0103】
なお、リトライ動作の回数Bが許容回数Nを超えた場合には、水晶振動子41cは、不良品だと判断され、水晶振動子41cが別の水晶振動子41cに交換される(ステップS54)。
【0104】
このような蒸着装置1であれば、シャッタ41sが開けられた後に、水晶振動子41cによって検知された蒸着速度の変化量が算出され、変化量が目的値である場合にシャッタ41sが閉じられて、水晶振動子41cが検知した蒸着速度に基づいて基板90に形成される蒸着材料20mの膜厚が制御される。これにより、水晶振動子41cが示すモニタリング値の偶発的な変動が避けられ、長時間にわたり基板90上に形成される膜の厚みが高精度に制御される。
【0105】
例えば、蒸着速度(PV)に基づく膜厚の制御に進む前に、変化量が目的値でない場合には、シャッタ41sを開けた後の定められた許容時間内で、水晶振動子41cによって蒸着速度が再検知される。あるいは、蒸着速度と、前回に検知された蒸着速度との差を求め、この差が目的値である場合には、シャッタ41sを閉じて蒸着速度に基づく膜厚の制御に進むことになる。これにより、水晶振動子41cが示すモニタリング値の偶発的な変動が確実に避けられ、長時間にわたり基板90上に形成される膜の厚みが高精度に制御される。
【0106】
また、リトライ動作の機会を水晶振動子41cに与えることにより、水晶振動子41cが示すモニタリング値の偶発的な変動が確実に避けられ、長時間にわたり基板上に形成される膜の厚みが高精度に制御される。
【0107】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【符号の説明】
【0108】
1…蒸着装置
10…真空容器
20、20s…蒸着源
20m…蒸着材料
30…基板搬送機構
40…膜厚測定器
41、42…膜厚センサ
41s、42s…シャッタ
41b、42b…本体
41c、42c…水晶振動子
41h…開口
50…温度センサ
60…制御装置
90…基板
90d…成膜対象面
91…基板ホルダ
図1
図2
図3
図4