【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は次のような表面処理方法および表面処理装置を提供した。すなわち、
バルブ金属からなる被処理体を電解液に浸漬してマイクロアーク酸化処理を含むアノード酸化処理を行い、前記被処理体に酸化被膜を形成する表面処理装置であって、
前記被処理体の被処理面上に前記アノード酸化処理によって前記酸化被膜を形成するための陽極手段と、
前記電解液を収納し、かつ、該電解液に対する前記陽極手段の浸漬を可能とする開口部を備えた電解液槽と、
前記電解液中において前記陽極手段と対向して配置された陰極手段と、
前記陽極手段と前記陰極手段が前記電解液に浸漬された状態において、前記陽極手段と前記陰極手段との間に電流Iを発生させて、前記アノード酸化処理を行うための電源手段と、
前記被処理体のうち特定の処理区画までを前記電解液に浸漬させるために、前記被処理体を前記電解液の深さ方向へ移動させ、かつ、前記特定の処理区画までが前記電解液に浸漬された位置に前記被処理体を静止させる機能を備えた前記被処理体の移動手段と、
前記電源手段と前記移動手段とを制御する制御装置と、
を含み、
前記移動手段は、前記被処理体の全域に亘って、所定の電圧を印加して一連のアノード酸化処理が終了する毎に、前記電解液の中から前記被処理体の全域が露呈する位置まで、該被処理体を該電解液から引き上げる方向へ前記陽極手段を移動させるように構成されている、
ことを特徴とする。
本発明において、前記制御装置は、前記被処理体の全域に亘ってアノード酸化処理である第M工程を繰り返すとともに、
所定の電圧V
Mを印加したアノード酸化処理である前記第M工程が終了する毎に、次の第M工程においては、前記所定の電圧V
Mより高い電圧を前記被処理体に印加する機能を備える、
ことを特徴とする。
本発明において、前記制御装置は、前記アノード酸化処理時の電流値Iと所定の電流値I
1とを比較し、
前記アノード酸化処理時の電流値Iと所定の電流I
1との関係が、「I
1≧I」を満たす場合に、前記被処理体を前記電解液の深さ方向に移動させるとともに、
前記アノード酸化処理時の電流値Iが、前記所定の電流値I
1を超える場合は前記被処理体を静止させる機能を備える、
ことを特徴とする。
本発明は、上記の表面処理装置によって、前記電解液に浸漬した前記被処理体の前記被処理面に酸化被膜を形成する表面処理方法であって、
前記アノード酸化処理は、
前記電源手段によって、前記アノード酸化処理の最高電圧V
maxよりも低い電圧V
Mに保持して前記被処理面の全域に亘って酸化被膜を形成する第M工程を備え、
前記第M工程は、複数回に渡って繰り返し行う工程であって、
前記アノード酸化処理の電圧を電圧V
Mで行う最初の第M工程から、前記アノード酸化処理の電圧を前記最高電圧V
maxで行う最後の第M工程までの間を、前記アノード酸化処理の電圧を、前記電圧V
Mから前記最高電圧V
maxになるまで段階的に増加させることで、前記被処理面の全域に合計膜厚が所望の厚さからなる前記酸化被膜を形成するものとされ、
それぞれの第M工程は、同一の前記電圧V
M条件に保持したままで、前記被処理体を前記電解液の深さ方向の幅を有する処理区画ごとに移動させる複数のステップから構成され、
各ステップでは、前記移動手段により、処理を終えた前記処理区画に隣接する処理区画まで前記電解液に浸漬するように、前記被処理体を前記電解液の深さ方向に移動させる、
ことを特徴とする。
本発明において、前記第M工程では、前記ステップ毎に前記アノード酸化処理時の電流値Iと所定の電流値I
1とを比較し、
前記アノード酸化処理時の電流値Iが、前記所定の電流値I
1を超える場合は前記被処理体を静止させるとともに、
前記アノード酸化処理時の電流値Iと所定の電流I
1との関係が、「I
1≧I」を満たす場合に、前記被処理体を前記電解液の深さ方向に移動させて次のステップに進む、
ことを特徴とする。
本発明において、前記第M工程では、前記ステップを連続した1つの工程と見なして、前記電解液の深さ方向に前記被処理体を連続的に移動するか、
または、
前記ステップ毎に前記被処理体を停止するとともに、前記電解液の深さ方向に前記被処理体を断続的に移動する、
ことを特徴とする。
【0009】
本発明は、バルブ金属からなる被処理体の被処理面に、複数の処理区画を設定し、各処理区画を断続的に電解液に浸漬してマイクロアーク酸化処理を含むアノード酸化処理を行い、前記被処理面に酸化被膜を形成する表面処理方法であって、
前記アノード酸化処理は、前記被処理体を前記電解液の深さ方向の幅を有する前記処理区画ごとに移動させる複数のステップから構成される第M工程を備え、
前記第M工程は、
前記被処理体のうち最初の処理区画のみを前記電解液に浸漬させて、前記アノード酸化処理の最高電圧V
maxよりも低い電圧V
Mに保持し、所定の電流I
1となるように、前記最初の処理区画に所望の酸化被膜を形成するステップに続けて、
一つ手前のステップを終えた前記被処理体を、処理を終えた前記処理区画に隣接する処理区画まで前記電解液に浸漬させて、先のステップと同一電圧V
M条件で最初と最後の間の前記処理区画に対して所望の酸化被膜を形成するステップを繰り返し行い、
最後の処理区画まで前記電解液に浸漬させて、先のステップと同一電圧V
M条件で前記最後の処理区画に所望の酸化被膜を形成するステップを行うことで、前記電圧V
Mに保持して前記被処理面の全域に亘って酸化被膜を形成するものとされ、
さらに、前記第M工程は、複数回に渡って繰り返し行う工程であって、
前記アノード酸化処理の電圧を電圧V
Mで行う最初の第M工程から、前記アノード酸化処理の電圧を前記最高電圧V
maxで行う最後の第M工程までの間を、前記アノード酸化処理の電圧を、前記電圧V
Mから前記最高電圧V
maxになるまで段階的に増加させることで、前記被処理面の全域に合計膜厚が所望の厚さからなる前記酸化被膜を形成する、
ことができる。
【0010】
本発明は、上記において、前記第M工程の繰り返しが2以上である、ことができる。
本発明は、上記において、前記第M工程を繰り返し行う際における所定の電流の値が、前記電流I
1と同じである、ことができる。
本発明は、上記において、前記被処理体における複数の前記処理区画を順に前記電解液に浸漬させる際には、該電解液の深さ方向へ該被処理体が進行するか、または停止するように、前記電解液の液面に対する前記被処理体の位置を制御する、ことができる。
本発明は、上記における前記最後の第M工程に続けて、
前記最後の第M工程が行われた前記電圧V
Mよりも低い電圧V
M−まで、所定の時間で連続的又は断続的に電圧を降下させて、前記アノード酸化処理を行う工程Pと、
前記電圧V
M−で定電圧処理を行う工程Qと、を順に、さらに備える、ことができる。
本発明は、上記に記載の表面処理方法によりアノード酸化処理を行い、前記被処理体に酸化被膜を形成する表面処理装置であって、
前記被処理体の被処理面上に前記アノード酸化処理によって前記酸化被膜を形成するための陽極手段と、
前記電解液を収納し、かつ、該電解液に対する前記陽極手段の浸漬を可能とする開口部を備えた電解液槽と、
前記電解液中において前記陽極手段と対向して配置された陰極手段と、
前記陽極手段と前記陰極手段が前記電解液に浸漬された状態において、前記陽極手段と前記陰極手段との間に前記電流I
1を発生させて、前記アノード酸化処理を行うための電源手段と、
前記被処理体の前記処理区画のうち特定の処理区画までを前記電解液に浸漬させるために、前記被処理体を前記電解液の深さ方向へ移動させ、かつ、前記特定の処理区画までが前記電解液に浸漬された位置に前記被処理体を静止させる機能を備えた前記被処理体の移動手段と、を含み、
前記移動手段は、前記被処理体の全域に亘る前記第M工程が終了する毎に、前記電解液の中から前記被処理体の全域が露呈する位置まで、該被処理体を該電解液から引き上げる方向へ前記陽極手段を移動させるように構成されている、ことができる。
本発明は、上記に記載の表面処理方法によりアノード酸化処理を行い、前記被処理体に酸化被膜を形成する表面処理装置であって、
前記被処理体の被処理面上に前記アノード酸化処理によって前記酸化被膜を形成するための陽極手段と、
前記電解液を収納し、かつ、該電解液に対する前記陽極手段の浸漬を可能とする開口部を備えた電解液槽と、
前記電解液中において前記陽極手段と対向して配置された陰極手段と、
前記陽極手段と前記陰極手段が前記電解液に浸漬された状態において、前記陽極手段と前記陰極手段との間に電流を発生させて、前記アノード酸化処理を行うための電源手段と、
前記被処理体のうち特定の処理区画までを前記電解液に浸漬させるために、前記被処理体を前記電解液の深さ方向へ移動させ、かつ、前記所定の電流値I
1と処理電流の値を比較し、前記所定の電流値I
1を超える場合は前記被処理体を静止させる機能を備えた前記被処理体の移動手段と、を含み、
前記移動手段は、前記被処理体の全域に亘る前記第M工程が終了する毎に、前記電解液の中から前記被処理体の全域が露呈する位置まで、該被処理体を該電解液から引き上げる方向へ前記陽極手段を移動させるように構成され、かつ、前記第M工程の次の第M工程においては前記所定の電圧より高い電圧を所定の電圧として前記被処理体に印加している、ことができる。
【0011】
本発明は、バルブ金属からなる被処理体の被処理面に、複数の処理区画を設定し、各処理区画ごとに断続的に電解液に浸漬してアノード酸化処理を行い、前記被処理面に酸化被膜を形成する表面処理方法であって、
前記アノード酸化処理は、第M(Mは2以上の整数)工程から構成され、
前記第M工程は、
前記被処理体のうち第一処理区画のみを前記電解液に浸漬させて、マイクロアーク酸化処理を含むアノード酸化処理の最高電圧V
maxよりも低い電圧V
Mに保持し、所定の電流I
1となるように、前記被処理体の第一処理区画に所望の酸化被膜を形成する第Ma工程と、
前記第Ma工程を終えた被処理体を、前記第一処理区画に隣接する第二処理区画まで前記電解液に浸漬させて、第Ma工程と同一条件で前記二処理区画に所望の酸化被膜を形成する第Mb工程と、
前記第Mb工程を終えた被処理体を、第n処理区画まで前記電解液に浸漬させて、第Ma工程と同一条件で前記n処理区画に所望の酸化被膜を形成し、前記被処理面の全域に亘って酸化被膜を形成するする第Mn工程(nは1以上の整数)とを備え、
前記電圧V
Mを前記最高電圧V
maxの方向へ順に増加させて所定の数値とし、前記第M工程を繰り返し行うことにより、合計膜厚が所望の厚さからなる前記酸化被膜を形成する、ことができる。
本発明は、上記において、前記アノード酸化処理は、前記nが1であり、前記第M工程を構成する、前記第Ma工程、前記第Mb工程、・・・前記第Mn工程が、前記被処理体を連続的または断続的に前記電解液に浸漬する、ことができる。
本発明は、上記において、前記第Mb工程、・・・前記第Mn工程における所定の電流の値が、前記第Ma工程における所定の電流I
1と同じであることができる。
本発明は、上記において、前記被処理体における前記第一処理区画、前記第二処理区画、・・前記第n区画を順に前記電解液に浸漬させる際には、該電解液の深さ方向へ該被処理体が進行するか、または停止するように、前記電解液の液面に対する前記被処理体の位置を制御する、ことができる。
本発明は、上記において、前記電解液の液面に対する前記被処理体の位置を制御するために、前記電解液の液面の高さ位置を固定し、前記電解液の液面に対して前記被処理体の高さ位置を調整する、ことができる。
本発明は、上記において、前記電解液の液面に対する前記被処理体の位置を制御するために、前記被処理体の高さ位置を固定し、前記被処理体の高さ位置に対して前記電解液の液面の高さを調整する、ことができる。
本発明は、上記における最後の第M工程に続けて、前記最後の第M工程が行われた前記電圧V
Mよりも低い電圧V
M−まで、所定の時間で連続的又は断続的に電圧を降下させて、前記アノード酸化処理を行う工程Pと、前記電圧V
M−で定電圧処理を行う工程Qとを順に、さらに備えることができる。
【0012】
本発明は、バルブ金属からなる被処理体を電解液に浸漬してアノード酸化処理を行い、前記被処理体に酸化被膜を形成する表面処理装置であって、
前記被処理体の被処理面上にアノード酸化処理によって前記酸化被膜を形成するための陽極手段と、
前記電解液を収納し、かつ、該電解液に対する前記陽極手段の浸漬を可能とする開口部を備えた電解液槽と、
前記電解液中において前記陽極手段と対向して配置された陰極手段と、
前記陽極手段と前記陰極手段が前記電解液に浸漬された状態において、前記陽極手段と前記陰極手段との間に電流を発生させて、前記アノード酸化処理を行うための電源手段と、
前記被処理体のうち特定の処理区画までを前記電解液に浸漬させるために、前記被処理体を前記電解液の深さ方向へ移動させ、かつ、前記特定の処理区画までが前記電解液に浸漬された位置に前記被処理体を静止させる機能を備えた被処理体の移動手段と、を含み、
前記移動手段は、前記被処理体の全域に亘って、所定の電圧を印加して一連のアノード酸化処理が終了する毎に、前記電解液の中から前記被処理体の全域が露呈する位置まで、該被処理体を該電解液から引き上げる方向へ前記陽極手段を移動させるように構成されている、ことができる。