【課題】追跡対象を追跡するための適切な撮像条件の目安を治療計画作成前のリハーサル前の段階で算出することができ、動体を追跡する際に用いるマーカの採択率を向上させる。
【解決手段】演算処理装置406において、被験者302のCT画像から被験者302内の水等価厚情報を求め、この求めた水等価厚情報に基づいてマーカ304の認識の可否およびマーカ304を認識可能なX線の撮像条件を演算し、表示装置403で表示する。また、マーカ304の移動想定範囲を入力し、演算処理装置406において、被験者302内の水等価厚情報を求め、マーカ304挿入位置の推奨度を算出し、表示装置403に表示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放射線治療において、治療放射線を標的に集中して照射し、周辺臓器への照射を低減するため、患部(以下、標的)の位置をリアルタイムに認識して放射線を照射する動体追跡放射線治療が行われている。このような動体追跡を行うことにより、呼吸性移動臓器などの治療中に移動する臓器に対しても正確な照射が可能となる。
【0005】
この動体追跡放射線治療では、その特性上、体内の標的位置を正確に認識する必要がある。標的位置の認識手段の一つとして、X線透視画像を撮像し、X線透視画像から標的位置を認識する手段が用いられる。この手法では、標的の動きに応じて治療放射線を制御するため、X線撮像も標的移動を捕えることのできる十分な頻度でX線の透視画像の撮像が行われる。
【0006】
撮像したX線透視画像上における標的位置の認識には、直接的に画像から認識する方法と、標的付近にあらかじめ設置しておいた代替マーカを認識する方法の2つの手法が主に用いられる。いずれの方法においても、標的または代替マーカの投影像をテンプレート画像として用意しておき、撮像された画像からテンプレートマッチングにより一致する領域を探索する事で標的位置を求める。標的位置を認識する事で、治療計画の標的位置と一致する時に照射を行う迎撃照射や、標的位置に合わせて放射線照射位置を変更する追尾照射が可能となる。迎撃照射、または追尾照射により治療放射線は標的に集中して照射される。
【0007】
ここで、代替マーカ(以下、マーカ)を用いて動体追跡放射線治療を実施する場合における治療までの流れを、
図1を用いて簡単に説明する。
【0008】
図1において、まず、医療従事者(放射線技師や医師)は、患者の診断用CTを撮像する(ステップS101)。続いて医療従事者は診断用CTを見てマーカの挿入位置を医療従事者の経験から決定し、医療従事者が挿入位置にマーカを挿入する(ステップS102)。挿入したマーカの位置が体内で安定した後、医療従事者は治療計画用のCTを撮像する(ステップS103)。
【0009】
治療計画用CTの撮像後は、医療従事者は、治療計画用CT画像内での標的および照射を極力避けたい臓器(以下、危険臓器)の位置関係から、照射予定角度を定める(ステップS104)。
【0010】
照射予定角度決定後、リハーサルを実施する(ステップS105)。このリハーサルでは、マーカを挿入した被験者のX線透視画像を撮像し、撮像した画像を基に標的位置を認識できるかどうか確認し、標的位置を認識するのに適した動体追跡装置の撮像条件(X線管の管電圧・管電流)を決定する。リハーサルの概要に関しては、上述した特許文献1に詳しく記載されている。
【0011】
リハーサル後、医療従事者は治療計画を治療計画装置により作成する(ステップS106)。放射線治療計画装置は治療計画用CT画像等から得られる患者(以下、被験者と記載)の体内の情報を基に、被験者内での線量分布を数値計算によりシミュレートする。治療計画装置の概要は例えば特開2008−99807号公報に詳しく記載されている。医療従事者は放射線治療計画装置の計算結果を参照しながら、最適な放射線の照射方向やエネルギー,照射位置,照射量等の照射条件(治療計画)を決定する。
【0012】
その後、照射角度を照射予定角度から変更したか否かを判断し(ステップS107)、変更したと判断された場合は、変更した照射角度で再度リハーサルを実施し(ステップS109)、治療計画を治療計画装置により作成する(ステップS106)。これに対し、照射角度を照射予定角度から変更していないと判断されたときは、治療が実施される(ステップS108)。
【0013】
この
図1におけるステップS105に示すリハーサル処理では、X線透視によって被験者は新たに放射線を浴びる必要がある。放射線を浴びる量は少なければ少ないほど良いため、リハーサル時のX線撮像条件の探索を短縮し、リハーサルの時間を短縮することが望まれている。
【0014】
現状では、このリハーサル中に動体追跡装置の撮像条件を適宜変更し、マーカを認識可能な撮像条件を試行錯誤により探索することで撮像条件を決定している。特に照射装置の照射部と動体追跡装置の撮像部が一体となって回転する動体追跡装置では、被験者の体型や照射角度によって、X線透視画像撮像用のX線管とX線検出面との水等価厚が変化するため、撮像条件の探索が困難となり、撮像条件の探索に要する時間が増加する。
【0015】
そのため、リハーサル時間を短縮するためには、リハーサル前の段階で、適切な撮像条件の目安を算出しておく必要、若しくはマーカを適切な位置に埋め込んでマーカが速やかに認識されるようにする必要がある。しかしながら、上述した特許文献1では、精度の高い位置決めを行うことはできるものの、リハーサル前の段階で撮像条件の目安を算出することやマーカの適切な埋め込み位置を求めることは困難であった。
【0016】
本発明の目的は、リハーサル時間を短縮することができる追跡対象認識シミュレータ、若しくはマーカ認識シミュレータおよび動体追跡装置ならびに放射線照射システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
【0018】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、放射線の発生装置と、前記放射線を被験体に照射する照射装置と、前記被験体内の標的を直接若しくは間接的に認識するためのX線撮像装置と、前記X線撮像装置が前記標的を直接若しくは間接的に認識できるかを判定するシミュレータ装置と、を有することを特徴とする。
【0019】
また本発明の他の一例を挙げるならば、放射線治療における被験者内の追跡対象を認識するための追跡対象認識シミュレータであって、前記被験者のCT画像から前記被験者内の水等価厚情報または密度情報を求め、この求めた水等価厚情報または密度情報に基づいて前記追跡対象の認識の可否および前記追跡対象を認識可能なX線の撮像条件を演算する演算処理装置と、この演算処理装置で演算された前記追跡対象の認識の可否および前記撮像条件を表示する表示部と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
また本発明の他の一例を挙げるならば、放射線治療における被験者内のマーカの埋め込み推奨位置を提示するためのマーカ認識シミュレータであって、前記被験者内にマーカを埋め込んだ際の前記マーカの移動想定範囲を入力するための入力装置と、前記被験者のCT画像から前記被験者内の水等価厚情報または密度情報を求め、この求めた水等価厚情報または密度情報と前記入力装置により入力された前記移動想定範囲とに基づいてマーカ挿入位置の推奨度を算出する演算処理装置と、この演算処理装置で演算された前記マーカ挿入位置の推奨度を表示する表示部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、リハーサル時間を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1の実施形態>
本発明の追跡対象認識シミュレータ、若しくはマーカ認識シミュレータおよび動体追跡装置ならびに放射線照射システムの第1の実施形態を、
図1乃至
図12を用いて説明する。なお、本実施形態では、追跡対象としてマーカを用い、マーカ認識シミュレータをスキャニング照射法による粒子線治療に適用することを前提に説明する。
【0024】
最初に、本発明が対象とする放射線照射システムの概要を、
図2用いて説明する。
図2において、放射線照射システムは、粒子線加速器201、粒子線輸送系202、粒子線照射ノズル203、照射制御装置204および動体追跡装置205を備えている。
【0025】
粒子線加速器201は、イオン源、ライナック等の前段加速器201A、加速器であるシンクロトロン201Bとから概略構成される。
【0026】
粒子線治療を行う場合には、まずイオン源で生成された荷電粒子が前段加速器201Aに供給される。前段加速器201Aはこれらの荷電粒子を加速した後、シンクロトロン201Bに供給する。前段加速器201Aから荷電粒子を受け取ったシンクロトロン201Bは、荷電粒子を所定のエネルギーまで更に加速させて荷電粒子ビーム(粒子線)を生成する。また、シンクロトロン201Bは周回する粒子線を取り出すために、粒子線の安定限界を変更する高周波四極電磁石や、高周波を印加して粒子線のベータトロン振動振幅を増大させる出射用高周波印加装置を備える。
【0027】
なお加速器としてシンクロトロン201Bを例に挙げたが、シンクロトロン201Bに代わり、例えばサイクロトロン等のような前段加速器201Aを必要としない加速器を用いてもよい。
【0028】
粒子線輸送系202は、粒子線経路、四極電磁石、偏向電磁石、高速ステアラー等を有している。この粒子線輸送系202が構成する粒子線経路は、粒子線加速器201と後述する粒子線照射ノズル203とを連絡している。粒子線加速器201で生成された粒子線は、この粒子線輸送系202を介して粒子線照射ノズル203に輸送される。
【0029】
治療室には、標的に対して粒子線を照射する粒子線照射ノズル203および被験者302内の標的303の位置を確認するための動体追跡装置205が設けられている。
【0030】
また、治療室は、モーター等を利用して回転させることができるガントリーと一体的に設けることもある。その様なガントリーに対して粒子線照射ノズル203と粒子線輸送系202の一部とを設置すると、ガントリーを回転させることで任意の方向から被験者302の治療を実施することが可能となり、一方向からは照射困難な患部に対しても効果的な治療を実施することができる。
【0031】
粒子線照射ノズル203には、二つの走査電磁石(X方向への走査電磁石203A,Y方向への走査電磁石203B)と粒子線通過位置モニタ203C、線量計測器203Dとが設置されている。
【0032】
粒子線輸送系202を介して運ばれてきた粒子線は、これらの走査電磁石203A,203Bや粒子線通過位置モニタ203C、線量計測器203Dとを通過して標的303に照射される。
【0033】
照射される粒子線は、治療の計画に沿って励磁された走査電磁石203A,203B間を通過する際に、その電磁力によって進路を曲げられ、患部形状に適した照射野を形成するようにx,y方向へ走査される。粒子線通過位置モニタ203Cは、走査電磁石203A,203Bによるビーム走査位置やその幅が制御位置(設定値)にあるかどうかを検出するものである。線量計測器203Dは、より被験者302に近い位置での照射線量を計測するために走査電磁石203A,203Bと被験者302の間に設置されており、自身を通過する粒子線の線量を計測する。この計測値を利用して線量管理が実施される。
【0034】
照射制御装置204は、粒子線加速器201、粒子線輸送系202および粒子線照射ノズル203から構成される放射線照射装置に接続されており、これらの各装置を制御する。
【0035】
照射制御装置204は、後述する動体追跡装置205から出力されるゲートオン信号に基づいて粒子線加速器201、粒子線輸送系202および粒子線照射ノズル203の各機器を制御し、被験者302内の標的303に対する治療用放射線を制御する。照射制御装置204は、標的303への迎撃照射(詳細には、標的303の位置と治療計画による放射線照射位置とが所定の許容範囲内で一致するタイミングで照射を行うもの)または追尾照射(詳細には、標的303の位置に合わせて放射線照射位置を変更するもの)を行うべく、粒子線加速器により加速された荷電粒子を粒子線輸送系202が粒子線照射ノズル203に輸送し、粒子線照射ノズル203において被験者302内で適切な線量分布を形成するように、粒子を走査し、被験者302内の標的303に照射する制御を実行する。
【0036】
続いて
図3を用いて、動体追跡装置205の構成を説明する。
【0037】
図3において、動体追跡装置205は、被験者302を照射に適した位置に移動・固定させるためのベッド301、X線撮像装置305A,305B、標的位置認識装置306、認識結果出力装置307、撮像条件設定装置310、信号処理回路311、マーカ認識シミュレータ401、データサーバ408とを備えている。この動体追跡装置205は、被験者302内のマーカ304の位置が予め指定した範囲内にあるときに照射制御装置204に対して放射線の出射を許可するゲートオン信号を出力する。
【0038】
撮像条件設定装置310は、マーカ認識シミュレータ401から出力される撮像条件に基づいて、X線撮像装置305A内のX線管308AやX線撮像装置305B内のX線管308Bの撮像条件(X線管の管電流、管電圧等)を設定する。撮像条件設定装置310では、X線管308A,308Bとで異なる撮像条件を設定することも可能である。
【0039】
X線撮像装置305Aは、ベッド301上の被験者302内の標的303およびマーカ(追跡対象)304をX線撮像する装置であり、第1方向から被験者302にX線を照射するX線管308Aと、このX線管308Aから照射されて被験者302を透過したX線の二次元線量分布を検出するX線検出器309Aとを備えている。X線検出器309Aは、二次元的に配置された複数の検出素子(詳細には、例えば放射線を電荷に変換する半導体素子等)を有し、それら検出素子からのアナログ信号を信号処理回路311に対して出力する。
【0040】
X線撮像装置305Bは、X線撮像装置305Aと同様に、ベッド301上の被験者302内の標的303およびマーカ304をX線撮像する装置であり、第2方向(本実施形態では、第1方向に対して直交する方向)から被験者302にX線を照射するX線管308Bと、このX線管308Bから照射されて被験者302を透過したX線の二次元線量分布を検出するX線検出器309Bとを備えている。X線検出器309Bは、二次元的に配置された複数の検出素子を有し、それら検出素子からのアナログ信号を信号処理回路311に対して出力する。このX線撮像装置305Bによる撮像動作は、X線撮像装置305Aの撮像動作と同期して行われる。
【0041】
これらX線撮像装置305AおよびX線撮像装置305Bによる標的303およびマーカ304の撮像の頻度は、標的303およびマーカ304の動きを捉えるのに十分な頻度(例えば30Hz程度)で行われている。
【0042】
信号処理回路311は、X線検出器309A,309Bからのアナログ信号を処理してX線透視画像のデータを生成し、標的位置認識装置306へ送信するようになっている。
【0043】
標的位置認識装置306は、これらX線撮像装置305A,305Bで撮像された画像から、被験者302内におけるマーカ304の3次元位置をリアルタイムで演算し、演算したマーカ304の3次元位置を認識結果出力装置307に対して出力する。
【0044】
認識結果出力装置307は、標的位置認識装置306において演算されたマーカ304の3次元位置に基づいて粒子線の出射を許可するか否かを判定する。例えば、マーカ304の位置から求めた標的303の位置が予め指定したゲート範囲(照射許可範囲)に入っているか否かを判定し、標的303の位置がゲート範囲に入っていると判定された場合はゲートオン信号を照射制御装置204に対して送信する。これに対し標的303の位置がゲート範囲に入っていないと判定された場合は、ゲートオフ信号を送信して出射を許可しない。
【0045】
続いて、マーカ認識シミュレータ401の構成を
図4乃至
図5を用いて説明する。
図4は、マーカ認識シミュレータの全体構成を示す図である。また、
図5は、本実施形態のマーカ認識シミュレータを用いた場合の治療までの流れを示す図である。
【0046】
マーカ認識シミュレータ401は、
図4に示すように、入力装置402、表示装置(表示部)403、メモリ(記憶装置)404、データ格納装置405、演算処理装置406、通信装置407を備える。これらの各装置はマーカ認識シミュレータ401内で接続されており、また通信装置407を介してネットワークと接続されており、このネットワークを介してデータサーバ408と接続されている。
【0047】
このマーカ認識シミュレータ401は、放射線治療における被験者302内のマーカ304を認識するための装置であり、また、放射線治療における被験者302内のマーカ304の埋め込み推奨位置を求め、医療従事者にその推奨位置を提示するための装置でもある。
【0048】
入力装置402は、マウス等の機器であり、医療従事者が、CT画像の中の標的303領域、重要臓器およびマーカ304の位置を入力するための機器である。また、被験者302内にマーカ304を埋め込んだ際のマーカ304の移動想定範囲を入力するための機器でもある。
【0049】
表示装置403は、演算処理装置406で演算されたマーカ304の認識の可否および撮像条件や、演算処理装置406で演算されたマーカ304挿入位置の推奨位置を表示する装置である。
【0050】
メモリ(記憶装置)404は、入力装置402を用いて入力されたCT画像の中の標的303領域、重要臓器およびマーカ304の位置に関する情報や、X線撮影装置305AやX線撮影装置305Bの設置角度、X線管308AとX線検出器309A間やX線管308BとX線検出器309B間の距離、X線検出器309A,309Bの寸法などの動体追跡装置205の形状パラメータの情報(装置情報)、演算処理装置406で演算された水等価厚マップ、水等価厚勾配マップ、マーカ推奨値マップ等の情報を記憶する。
【0051】
データ格納装置405は、実測データ又は、臨床データ(CT画像から算出した水等価厚と実治療に用いた撮像条件)から作成された最大水等価厚−撮像条件テーブルが格納されている。
【0052】
演算処理装置406は、被験者302のCT画像から被験者302内の水等価厚情報を求める。そして、この求めた水等価厚情報に基づいてマーカ304の認識の可否およびマーカ304を認識可能なX線の撮像条件を演算する。また、求めた水等価厚情報と入力装置402により入力された移動想定範囲とに基づいてマーカ304挿入位置の推奨度を算出する。
【0053】
通信装置407は、ネットワークを介してデータサーバ408に接続されており、データサーバ408とマーカ認識シミュレータ401内の各装置との間で被験者302に関するデータのやりとりをする。
【0054】
データサーバ408は、CT装置を用いて撮像された、治療される被験者302の診断用CT画像に関するデータ(CTデータ)を保存している。このCTデータは、ボクセルと呼ばれる小さな領域ごとにCT値が記録された3次元のデータである。
【0055】
次に、本実施形態に係る追跡対象認識シミュレータ、マーカ認識シミュレータおよび動体追跡装置ならびに放射線照射システムの動作やこれらを用いた粒子線の照射の手順について
図5乃至
図11を参照して説明する。
【0056】
まず、医療従事者は、CT装置で被験者302の診断用CT画像を撮像し、撮像した画像をデータサーバ408に登録する(ステップS501)。
【0057】
次いで、マーカ304を挿入するために、医療従事者は、照射予定角度を決め(ステップS502)、その後、本実施形態のマーカ認識シミュレータ401を用いて任意の位置でのマーカ挿入の推奨度を算出し(ステップS503)、マーカ挿入位置を決定する(ステップS504)。
【0058】
ステップS503における本実施形態のマーカ認識シミュレータを用いたマーカ挿入の推奨度を計算する際における、操作者の動作を
図6に、マーカ認識シミュレータ401の演算処理装置406の動作を
図7に示す。
【0059】
図6において、マーカ認識シミュレータ401の操作者(医療従事者に相当)が、入力装置402から被験者302の情報(患者ID)を入力する(ステップS601)。この入力を受けて、マーカ認識シミュレータ401は患者IDに相当する被験者302におけるマーカ挿入の推奨度算出に使用するパラメータ設定を開始する。
【0060】
具体的には、まず、マーカ認識シミュレータ401の入力装置402は、入力された患者IDを演算処理装置406に出力する。演算処理装置406は、入力された患者IDに基づいて、データサーバ408から対象となる被験者302のCTデータを読み込む。すなわち、マーカ認識シミュレータ401は、通信装置407に接続されたネットワークを通じて、データサーバ408から患者IDに対応する被験者302のCTデータを受け取り、メモリ404に記憶させる。また、マーカ認識シミュレータ401は、受け取ったCTデータに基づいて治療計画用のCT画像を作成し、表示装置403に表示させる。表示装置403は、被験者302の患部を含む領域を複数の層に分割した各スライス(各層)での画像を表示する。
【0061】
また、操作者は、領域入力画面で入力装置402を用いてCT画像のスライスごとに指定すべき領域を入力する(ステップS601)。ここで言う指定すべき領域とは、標的として指定する領域(標的領域)と付与される線量を極力抑制したい領域(重要臓器)を表す。
【0062】
各スライスでの入力も終えたら、操作者は入力した領域をマーカ認識シミュレータ401への登録指示操作を行う(ステップS602)。この結果、操作者が入力した領域は、3次元の位置情報としてマーカ認識シミュレータ401に登録され、メモリ404内に保存される。
【0063】
続いて、操作者は動体追跡装置205の形状パラメータ(以下、形状パラメータ)を設定し、マーカ認識シミュレータ401への登録指示操作を行う(ステップS603)。この結果、操作者が入力した形状パラメータは、マーカ認識シミュレータ401に登録され、メモリ404内に保存される。
【0064】
形状パラメータ登録後、操作者は登録された標的領域と重要臓器の位置関係に基づいて標的領域に対して照射予定角度を決定し、マーカ認識シミュレータ401への登録指示操作を行う(ステップS604)。この結果、操作者が設定した照射予定角度はマーカ認識シミュレータ401に登録され、メモリ404内に保存される。
【0065】
続いて操作者は、入力装置402を操作して4DCTデータや過去のマーカ挿入時におけるマーカの軌跡データに基づいてマーカの移動想定範囲を設定し、マーカ認識シミュレータ401への登録指示操作を行う(ステップS605)。本実施形態では、移動想定範囲として頭尾方向、腹背方向、左右方向のマーカ移動量を設定した場合を例に説明する。
【0066】
以上の条件の設定を完了すると、操作者は演算開始指示を行う(ステップS606)。この演算開始指示により、演算処理装置406はX線管308AからX線検出器309Aまでの水等価厚の勾配およびX線管308BからX線検出器309Bまでの水等価厚の勾配を計算し、任意の位置でのマーカ挿入の推奨度を計算する。X透視画像撮像時に照射されるX線は、ある位置(X線管308A,308B位置)に線源802を持つビームとして照射される。この様子を
図8に示す。
【0067】
粒子線照射システムおよび動体追跡装置205では、装置の中心位置であるアイソセンタと呼ばれる点801が定義されており、通常はこの点801の位置が標的領域の中心に一致するように位置決めが行われている。点801と線源802との距離は、ステップS603で設定した形状パラメータから求まる。
【0068】
マーカ認識シミュレータ401の演算処理装置406は、まず、X線管308AからX線検出器309Aの検出面までの水等価厚およびX線管308BからX線検出器309Bの検出面までの水等価厚を計算する(ステップS701)。
【0069】
ステップS701において、具体的には、まず、演算処理装置406は、メモリ404に記憶された情報のうち、照射予定角度および動体追跡装置205の形状パラメータを読み込む。
【0070】
続いて、演算処理装置406は、X線源802と点801とを結ぶ直線803に垂直な面804を定義し、面804を適切な解像度(通常は数mm以下)で分割する。分割された領域一つ一つをピクセルと呼ぶ。
【0071】
続いて、演算処理装置406は、あるピクセル805の中心位置と線源802とを結ぶ直線806に沿って、決められたステップ(通常はピクセル805と同程度のサイズ)ごとにCTデータのボクセルの値を線源802側から検出面まで積算していく。この時、各ボクセルに保持されたCT値は、あらかじめマーカ認識シミュレータ401のメモリ404に記憶されたテーブルにより、ボクセル内の物質を水に換算した場合の厚みに変換された上で積算される。これを水等価厚と呼ぶ。CT値から水等価厚への変換は、計算前にまとめて行ってもよい。
【0072】
演算処理装置406は、X線照射方向に垂直な面804を分割したすべてのピクセルに関して同様の水等価厚を求める計算を行う。この操作により任意の位置における、X線管308AからX線検出器309Aの検出面までの水等価厚およびX線管308BからX線検出器309Bの検出面までの水等価厚が計算され、全てのピクセルの水等価厚をメモリ404に保存する。
【0073】
その後、演算処理装置406は、ステップS701で計算した水等価厚に基づき水等価厚勾配を計算する(ステップS702)。
【0074】
ステップS702においては、具体的には、まず、演算処理装置406は、面804のあるピクセル805において、ピクセル805とピクセル805の周囲のピクセルとの水等価厚の差を積算することで水等価厚勾配を計算する。これを面804の全てのピクセルに対して計算する。この計算により、X線管308AからX線検出器309A間の水等価厚勾配マップおよびX線管308BからX線検出器309B間の水等価厚勾配マップを計算する。その後、演算処理装置406は、全てのピクセルの水等価厚をメモリ404に保存する。
【0075】
続いて、演算処理装置406は、各照射予定角度のX線管308A,308B毎に、マーカ推奨値の計算範囲を各ピクセルに対して定義し、マーカ推奨値マップを作成する。
【0076】
その後、演算処理装置406は、マーカ推奨値の計算範囲を算出する(ステップS703)。
【0077】
ステップS703では、具体的には、演算処理装置406は、ある点901を中心とし、ステップS605で操作者が頭尾方向、腹背方向、左右方向に設定したマーカ移動量を一辺の幅とする直方体902を定義する。
【0078】
次いで、点901を面804に射影した点を有するピクセル903および直方体902を面804に射影した領域(ピクセル範囲)904を算出する。ここで、ピクセル904の範囲はピクセル903のマーカ推奨値の計算範囲となる。
【0079】
その後、演算処理装置406は、先のステップS703において算出したマーカ推奨値の計算範囲内のピクセル904の水等価厚勾配の平均値を算出し(ステップS704)、ピクセル903のマーカ推奨値として設定する。このマーカ推奨値の計算範囲を、面804内の全てのピクセルに対して適応することで、面804内のマーカ推奨値マップを作成することが可能となる。
【0080】
演算処理装置406は、このマーカ推奨値マップを表示装置403に表示させる。医療従事者はCT画面上でマーカ304の挿入候補位置を入力すると、マーカ認識シミュレータ401は、その位置に対応するマーカ推奨値マップ上での位置をX線管毎に算出し、マーカ推奨値マップ上での位置とマーカ推奨値を画面に表示する。医療従事者はこの画面を見ながら、マーカ推奨値が小さくなる位置を探し、マーカ挿入候補位置として選択する。
【0081】
図5に戻り、マーカ挿入位置決定後、医療従事者は先に選択したマーカ挿入候補位置にマーカ304を挿入する(ステップS504)。マーカ304を挿入し、被験者302内でのマーカ304の位置が安定した後、医療従事者はCT撮像装置を用いて、治療計画用CT画像を撮像する。医療従事者は治療計画用CT画像撮像後、データサーバ408に登録する(ステップS505)。
【0082】
続いて、医療従事者は、治療計画用CT画像とマーカ認識シミュレータ401とを用いて、マーカ304を認識可能な動体追跡装置205の撮像条件を算出する(ステップS506)。以下で撮像条件の算出方法について説明する。撮像条件計算時の演算処理装置406の動作を
図10に示す。
【0083】
図10において、操作者(医療従事者)が、入力装置402を用いて被験者302情報(患者ID)を入力すると、マーカ認識シミュレータ401は患者IDに相当する被験者302に対する動体追跡装置205の撮像条件の算出を開始する。撮像条件の算出のために、演算処理装置406は、まずマーカの移動範囲における最大水等価厚を算出する(ステップS1001)。
【0084】
ステップS1001では、まず、医療従事者は、入力装置402を用いて患者IDを入力する。演算処理装置406は、マーカ推奨値算出時の手順と同様の手順で、入力された患者IDに基づいて、データサーバ408から対象となる被験者302のCTデータを読み込む。マーカ推奨値算出時に設定した患者IDと同一の患者IDの診断用CT画像がデータサーバ408内に存在する場合は、ステップS602からステップS605にかけて設定した照射予定角度、移動想定範囲、撮像装置の形状パラメータを呼び出す。一方、マーカ推奨値算出時に設定した患者IDと同一の患者IDの診断用CT画像がデータサーバ408内にない場合、上述したステップS701〜S704におけるマーカ推奨値の算出時と同様の手順で、これらの値を設定する。ここで、設定した値は、操作者によって変更可能である。
【0085】
続いて、操作者は、領域入力画面で入力装置402を用いてCT画像のスライスごとに指定すべき領域を入力する。ここで言う指定すべき領域とは、標的領域、重要臓器、挿入したマーカ304の位置を表す。全てのスライスで入力が終わると、操作者は入力した領域をマーカ認識シミュレータ401への登録指示操作を行う。この結果、操作者が入力した領域は、3次元の位置情報としてマーカ認識シミュレータ401に登録され、メモリ404内に保存される。
【0086】
その後、演算処理装置406は、先に説明したステップS702と同様の手順で、X線管308AからX線検出器309Aの間の水等価厚マップおよびX線管308BからX線検出器309Bの間の水等価厚マップを計算し、計算した水等価厚マップをメモリ404に保存する(ステップS1002)。
【0087】
その後、演算処理装置406は、各照射予定角度のX線管308A,308B毎に入力装置402によって設定されたマーカ移動範囲を定義し、マーカ移動範囲内での水等価厚の最大値を算出する(ステップS1003)。ここでは、マーカを複数個挿入した場合を例に挙げて説明する。
【0088】
ステップS1003では、具体的には、まず、演算処理装置406は、マーカ位置1101を中心とし、操作者が頭尾方向、腹背方向、左右方向に設定したマーカ移動量を一辺の長さとする直方体1103と、マーカ位置1102を中心とし、操作者が頭尾方向、腹背方向、左右方向に設定したマーカ移動量を一辺の長さとする直方体1104とを定義する。
【0089】
続いて、演算処理装置406は、直方体1103および直方体1104を面804に射影した領域(ピクセル範囲)1105,1106を算出し、それぞれのマーカ304に対するマーカ移動範囲として設定する。演算処理装置406は、照射予定角度のX線管308A,308B毎に、全てのマーカ移動範囲内(
図11では、ピクセル範囲1105および1106)のピクセルに対して、水等価厚の最大値(最大水等価厚)を探索し、メモリ404に保存する。
【0090】
その後、演算処理装置406は、データ格納装置405から最大水等価厚−撮像条件テーブルを読み出す。演算処理装置406は読み出した最大水等価厚−撮像条件テーブルを参照し、メモリ404に保存されている各照射方向のX線管308A,308Bごとの最大水等価厚から、マーカを認識可能な撮像条件を算出する(ステップS1004)。また、算出した撮像条件は動体追跡装置205へ転送する。
【0091】
撮像条件算出後、演算処理装置406は、撮像条件と認識可能を表すメッセージを表示装置403に表示する。もしマーカ304を認識可能な撮像条件が存在しない場合は、表示装置403に認識不可を表すメッセージを表示する。
【0092】
図5に戻り、その後、マーカ認識シミュレータ401が算出した撮像条件を初期値とし、リハーサルを実施する(ステップS507)。
【0093】
リハーサルの実施後、操作者は治療計画を作成する(ステップS508)。
【0094】
次いで、治療計画時に照射角度を変更したか否かを判断し(ステップS509)、変更したと判断された場合は再度撮像条件を算出し(ステップS510)、リハーサルを再度実施する(ステップS511)。その後、再度治療計画を治療計画装置により作成する(ステップS508)。
【0095】
これに対し、照射角度を照射予定角度から変更していないと判断されたときは、医療従事者は、作成された治療計画に従って、被験者302への照射を実施する(ステップS512)。
【0096】
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0097】
上述した本発明の追跡対象認識シミュレータおよび動体追跡装置ならびに放射線照射システムの第1の実施形態は、演算処理装置406において、被験者302のCT画像から被験者302内の水等価厚情報を求め、この求めた水等価厚情報に基づいてマーカ304の認識の可否およびマーカ304を認識可能なX線の撮像条件を演算し、表示装置403で表示する。
【0098】
これによって、CT画像から算出した水等価厚情報を基に、追跡対象の認識の可否および追跡対象を認識可能な動体追跡装置の撮像条件をリハーサル前に算出することで追跡対象を追跡するための適切な撮像条件の目安を治療計画作成前のリハーサル前の段階で算出することができ、リハーサルに要する時間を短縮することができる。また、適切な撮像条件での追跡対象の撮像が可能となり、追跡対象を見失う可能性が低くなり、治療時間の短縮を図ることができる。
【0099】
また、上述した本発明のマーカ認識シミュレータおよび動体追跡装置ならびに放射線照射システムの第1の実施形態では、マーカ304の移動想定範囲を入力し、演算処理装置406において、被験者302内の水等価厚情報を求め、マーカ304挿入位置の推奨度を算出し、表示装置403に表示する。
【0100】
これによって、マーカ304を認識しにくい水等価厚勾配が急峻な場所を事前に把握することが出来るため、マーカの認識のしやすさをマーカ挿入位置の選択時に判断でき、挿入位置を決定することが出来る。よって、マーカ304の認識率を向上させることが可能となり、リハーサルに要する時間を短縮することができる。また、追跡対象を見失う可能性が低くなるため、同様に治療時間の短縮を図ることができる。
【0101】
<第2の実施形態>
本発明の追跡対象認識シミュレータ、マーカ認識シミュレータおよび動体追跡装置ならびに放射線照射システムの第2の実施形態を
図12を用いて説明する。
図1乃至
図11と同じ構成には同一の符号を示し、説明は省略する。
【0102】
図12に示す本実施形態のマーカ認識シミュレータ401Aは、治療計画装置1201と連携した動作を実行するものである。
図12は、マーカ認識シミュレータと治療計画装置との関係を示す構成図である。
【0103】
図12に示す、本実施形態のマーカ認識シミュレータ401Aは、放射線治療における被験者302内のマーカ304を認識し、また放射線治療における被験者302内のマーカ304の埋め込み推奨位置を提示する点は、第1の実施形態のマーカ認識シミュレータ401と同様である。
【0104】
更に、本実施形態のマーカ認識シミュレータ401Aは、治療計画装置1201と連携して、治療計画装置1201で設定したガントリー角度(陽子線の照射角度)に対して、設定された撮像パラメータに対してマーカ304が認識可能かどうかを判定し、治療計画装置1201の表示装置1201Aに認識の可否を表示することができるようになっているものである。
【0105】
マーカ認識シミュレータ401Aは、
図12に示すように、入力装置402、表示装置403、メモリ(記憶装置)404、データ格納装置405、演算処理装置406A、通信装置407を備える。これらの各装置はマーカ認識シミュレータ401A内で接続されている。
【0106】
演算処理装置406Aは、マーカ304の認識の可否およびマーカ304を認識可能なX線の撮像条件を演算し、また、マーカ304挿入位置の推奨度を算出する点は、第1の実施形態の演算処理装置406と同様である。
【0107】
更に、本実施形態の演算処理装置406Aは、治療計画装置1201において設定された照射角度の情報と動体追跡装置205の形状パラメータに基づいて、X線撮像装置305A,305BにおけるX線の照射角度を演算する。その後、演算したX線の照射角度の情報とCT画像とに基づいてマーカ304の認識の可否を演算する。また、演算処理装置406Aは、放射線を照射する全ての角度に対するマーカ304の認識の可否を演算する。これらの演算結果は、通信装置407を介して治療計画装置1201に対して出力する。
【0108】
通信装置407は、ネットワークを介してデータサーバ408および治療計画装置1201に接続されており、データサーバ408や治療計画装置1201とマーカ認識シミュレータ401A内の各装置との間で被験者302に関するデータのやりとりをする。
【0109】
治療計画装置1201は、放射線の照射方向や、各照射方向からの照射量・照射分布等の放射線の照射パラメータを決定する治療計画を作成する。この治療計画装置1201は、マーカ認識シミュレータ401Aの演算処理装置406Aにおいて求められた放射線を照射する全ての角度に対するマーカ304の認識の可否の結果や、照射可能なガントリー角度を表示するための表示装置1201Aを備えている。
【0110】
マーカ認識シミュレータ401A内の入力装置402、表示装置403、メモリ404、データ格納装置405、データサーバ408や、マーカ認識シミュレータ401A以外の構成は前述した第1の実施形態の追跡対象認識シミュレータ、マーカ認識シミュレータおよび動体追跡装置ならびに放射線照射システムと略同じ構成であり、詳細は省略する。なお、本実施形態においては、表示装置403および表示装置1201Aによって表示部が構成される。
【0111】
次に、本実施形態に係る追跡対象認識シミュレータ、マーカ認識シミュレータおよび動体追跡装置ならびに放射線照射システムにおける動作のうち、第1の実施形態との相違点について以下説明する。
【0112】
まず、治療計画装置1201を用いて操作者が設定したガントリー角度のデータをマーカ認識シミュレータ401Aに転送する。
【0113】
マーカ認識シミュレータ401Aの演算処理装置406Aでは、転送されたガントリー角度とマーカ認識シミュレータ401Aのメモリ404内に保存されている形状パラメータとに基づいて、X線の照射角度を決定する。
【0114】
続いて、マーカ認識シミュレータ401Aは、形状パラメータ中のX線の照射角度の情報およびデータサーバ408から取得したCT画像に基づいて、撮像パラメータを算出した際と同様の手法でマーカ304の認識の可否を求め、結果を治療計画装置1201へ転送する。
【0115】
治療計画装置1201では、転送されたマーカ304の認識の可否の結果を表示装置1201A上に表示する。
【0116】
また、演算処理装置406Aでは、全てのガントリー角度に対して、設定された撮像パラメータでのマーカ認識の可否を算出する。そして、認識不可となったガントリー角度情報を治療計画装置1201へ転送する。
【0117】
治療計画装置1201では、転送されたマーカ認識不可のガントリー角度を設定できないようにするとともに、ガントリー角度をマスクして表示装置1201A上に表示する。
【0118】
本発明の追跡対象認識シミュレータ、マーカ認識シミュレータおよび動体追跡装置ならびに放射線照射システムの第2の実施形態においても、前述した追跡対象認識シミュレータ、マーカ認識シミュレータおよび動体追跡装置ならびに放射線照射システムの第1の実施形態とほぼ同様な効果が得られる。
【0119】
また、本実施態によれば、予め、マーカを認識できない角度を治療計画のガントリー角度選択時に知ることが出来るため、治療計画立案の際の効率を従来に比べて高めることができ、トータルの治療時間をさらに短縮することができる。
【0120】
<その他>
なお、本発明は上記の実施形態に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【0121】
例えば、上述した実施形態では、動体追跡治療時の撮像条件の算出方法に関して説明したが、本発明の追跡対象認識シミュレータやマーカ認識シミュレータは動体追跡治療のみの利用に限らず、マーカを用いて位置決めを行う際の撮像条件の算出にも利用可能である。
【0122】
また、CT画像から算出した水等価厚情報を基に追跡対象の認識の可否および追跡対象を認識可能な動体追跡装置の撮像条件を算出する場合について説明したが、追跡対象の認識の可否および追跡対象を認識可能な動体追跡装置の撮像条件の算出方法はこれに限られず、CT画像から算出した密度情報をそのまま用いて、追跡対象の認識の可否および追跡対象を認識可能な動体追跡装置の撮像条件を算出することができる。
【0123】
また、マーカ認識シミュレータが動体追跡装置の一部である場合を例にして説明したが、マーカ認識シミュレータは動体追跡装置内に設けられる場合に限定されず、マーカ認識シミュレータ単体で治療計画装置や動体追跡装置に接続される態様とすることができ、また治療計画装置の一部として設けられる態様とすることもできる。
【0124】
また、追跡対象としてマーカを用い、追跡対象認識シミュレータをマーカ認識シミュレータとする場合について説明したが、追跡対象は間接的な標的認識であるマーカに限られず、追跡対象は直接標的そのものや間接的に骨などの密度が高い高密度領域のいずれかとすることができる。
【0125】
また、X線撮像装置によって第1方向および第2方向から撮像を行う場合について説明したが、追跡対象の撮像は、一軸方向から撮像を行う配置であってもよいし、X線管とX線検出器の配置を逆転させて配置してもよいし、追加でX線撮像装置を設けてもよい。
【0126】
また、粒子線の照射方法は、スキャニング照射法に限られず、ラスタースキャニング照射法や散乱体照射法を用いることができる。また、上述した実施形態は、X線や中性子線等の他の放射線を照射する装置若しくは照射方法等においても用いることができる。