【実施例】
【0070】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0071】
以下の合成例において、パーフルオロアルキル基は、特に記載のない限り、直鎖状のパーフルオロアルキル基である。
【0072】
合成例1
【化16】
化合物1
N−メチルグリシン(89mg, 1mmol)、C
60フラーレン(360mg, 0.5mmol)、及び4-パーフルオロヘキシルベンズアルデヒド(212mg, 0.5mmol)を、クロロベンゼン100mL中、120℃で15時間撹拌した。反応生成液を減圧下に濃縮し、反応物をカラムクロマトグラフィー(SiO2)、さらにHPLCで精製し、目的物(化合物1)を108.2 mg(単離収率18.5 %)得た。(純度:99%以上)
1H-NMR (CDCl
3)δ: 2.82 (3H, s), 4.30 (1H, d, J=9.9 Hz), 5.01 (1H, d, J=9.9 Hz), 5.02 (1H, s), 7.66 (2H, d, J=8.4 Hz), 7.98 (2H, bs).
F-NMR (CDCl
3)δ: -80.57 - -80.67 (3F, m), -110.49 - -110.63 (2F, m), -121.11 - -121.45 (2F, m), -121.85 - -122.10 (2F, m), -122.50 - -122.80 (2F, m), -125.90 - -126.10 (2F, m).
Anal. calcd for C
75H
10NF
13: C 76.87, H 0.86, N 1.20; found C 76.98, H 1.04, N 1.24.
【0073】
合成例2
4-トリデカフルオロオクチルベンズアルデヒドはD. P. Curran、Y. Oderaotoshi、Tetrahedron、2001年、57巻、5243頁に従い合成した。
【化17】
化合物2
N−メチルグリシン(89mg, 1mmol)、C
60フラーレン(360mg, 0.5mmol)、及び4-トリデカフルオロオクチルベンズアルデヒド(226mg、0.5mmol)を、クロロベンゼン100mL中、120℃で15時間撹拌した。反応生成液を減圧下に濃縮し、反応物をカラムクロマトグラフィー(SiO2)、さらにHPLCで精製し、目的物(化合物2)を141.0 mg(単離収率23.5 %)得た。(純度:99%以上)
1H-NMR (CDCl
3)δ: 2.30 - 2.47 (2H, m), 2.78 (3H, s), 2.87 - 2.96 (2H, m), 4.25 (1H, d, J=9.2 Hz), 4.91 (1H, s), 4.97 (1H, d, J=9.2 Hz), 7.26 (2H, d, J=8.2 Hz), 7.74 (2H, bs).
F-NMR (CDCl
3)δ: -80.58 - -80.67 (3F, m), -114.35 - -114.56 (2F, m), -121.60 - -121.90 (2F, m), -122.60 - -122.90 (2F, m), -123.10 - -123.40 (2F, m), -125.90 - -126.10 (2F, m).
MS (FAB) m/z 1199 (M
+).
【0074】
合成例3
【化18】
化合物3
トリデカフルオロノナナールを、M. L. Blancら、Tetrahedron Letters、1998年、39巻、8857頁に従い合成した。
N−メチルグリシン(180mg, 2mmol)、C
60フラーレン(360mg, 0.5mmol)、及びトリデカフルオロノナナール(94mg, 0.25mmol)を、トルエン100mL中、120℃で15時間撹拌した。反応生成液を減圧下に濃縮し、反応物をカラムクロマトグラフィー(SiO2)、さらにHPLCで精製し、目的物(化合物3)を84 mg(単離収率29.9 %)得た。(純度:99%以上)
1H-NMR (CDCl
3)δ: 2.60 - 2.88 (4H, s), 2.98 (3H, s), 4.02 - 4.10 (1H, m), 4.22 (1H, d, J=9.8 Hz), 4.85 (1H, d, J=9.8 Hz). F-NMR (CDCl
3)δ: -80.50 - -80.90 (3F, m), -114.10 - -114.60 (2F, m), -121.50 - -121.95 (2F, m), -122.50 - -123.00 (2F, m), -123.00 - -123.30 (2F, m), -125.90 - -126.10 (2F, m).
MS (FAB) m/z 1123 (M
+).
【0075】
合成例4
【化19】
化合物4
N−メチルグリシン(180mg, 1mmol)、C
60フラーレン(720mg, 1.0mmol)、及び4-パーフルオロドデシルベンズアルデヒド(138mg, 0.2mmol)を、クロロベンゼン200mL中、120℃で16時間撹拌した。反応生成液を減圧下に濃縮し、反応物をカラムクロマトグラフィー(SiO2)、さらにHPLCで精製し、目的物(化合物4)を68.9 mg(単離収率24.6 %)得た。(純度:99%以上)
1H-NMR (CDCl
3)δ: 2.82 (3H, s), 4.30 (1H, d, J=9.4 Hz), 5.00 (1H, d, J=9.4 Hz), 5.01 (1H, s), 7.64 (2H, d, J=8.2 Hz), 7.98 (2H, bs).
F-NMR (CDCl
3)δ: -80.56 (3F, t, J=10.3Hz), -110.50 (2F, t, J=13.4Hz), -121.10 - -121.40 (2F, m), -121.60 - -122.20 (34F, m), -122.30 - -122.70 (2F, m), -125.80 - -126.10 (2F, m).
MS (FAB) m/z 1471 (M
+).
【0076】
合成例5
4-ノナフルオロオクチルベンズアルデヒドを、D. P. Curran、Y. Oderaotoshi、Tetrahedron、2001年、57巻、5243頁に記載の方法に準じて合成した。
【化20】
化合物5
N−メチルグリシン(180mg, 2.0mmol)、C
60フラーレン(720mg, 1.0mmol)、及び4-ノナフルオロオクチルベンズアルデヒド(352mg、1.0mmol)を、クロロベンゼン200mL中、120℃で15時間撹拌した。反応生成液を減圧下に濃縮し、反応物をカラムクロマトグラフィー(SiO2)、さらにHPLCで精製し、目的物(化合物5)を340.7 mg(単離収率31.1 %)得た。(純度:99%以上)
1H-NMR (CDCl
3)δ: 2.30 - 2.48 (2H, m), 2.78 (3H, s), 2.88 - 2.98 (2H, m), 4.24 (1H, d, J=9.4 Hz), 4.90 (1H, s), 4.96 (1H, d, J=9.4 Hz), 7.25 (2H, d, J=8.4 Hz), 7.74 (2H, bs).
F-NMR (CDCl
3)δ: -80.63 (3F, t, J=10.0Hz), -114.47 (2F, t, J=13.9Hz), -122.60 - -122.90 (2F, m), -125.88 - -126.12 (2F, m).
MS (FAB) m/z 1099 (M
+).
【0077】
合成例6
【化21】
化合物6
2−(ドデシルアミノ)酢酸(243mg, 1mmol)、C
60フラーレン(720mg, 1.0mmol)、及び4-トリデカフルオロオクチルベンズアルデヒド(226mg、0.5mmol)を、クロロベンゼン200mL中、120℃で16時間撹拌した。反応生成液を減圧下に濃縮し、反応物をカラムクロマトグラフィー(SiO2)、さらにHPLCで精製し、目的物を155.6 mg(単離収率23.0 %)得た。(純度:99%以上)
1H-NMR (CDCl
3)δ: 0.87 (3H, t, J=10.5Hz), 1.20 - 1.60 (17H, m), 1.60 - 1.75 (1H, m), 1.82 - 2.05 (2H, m), 2.50 - 2.62 (1H, m), 3.12 - 3.23 (1H, m), 4.10 (1H, d, J=9.6Hz), 5.02 (1H, s), 5.11 (1H, d, J=9.6 Hz), 7.62 (2H, d, J=8.2 Hz), 7.96 (2H, bs).
F-NMR (CDCl
3)δ: -80.56 (3F, t, J=9.3Hz), -114.46 (2F, t, J=13.4Hz), -121.60 - -121.90 (2F, m), -122.55 - -122.90 (2F, m), -123.15 - -123.40 (2F, m), -125.80 - -126.10 (2F, m).
MS (FAB) m/z 1353 (M
+).
【0078】
試験例1:溶解度(トルエン溶液で測定)
フラーレン誘導体の溶解度は、紫外可視吸光光度計を用いて測定できる吸光度により算出した。
先に、一定濃度のフラーレン誘導体の吸光度測定により、各化合物のモル吸光係数を決めておいた。
フラーレン誘導体のトルエン過飽和溶液を調製し、これの上澄み溶液の一定量を取出し、これの吸光度を測定した。
ここで得られた吸光度の数値と、前記モル吸光係数より、過飽和トルエン溶液における上澄み溶液の濃度(溶解度)を決定した。その結果を、以下に記載する。
【0079】
溶解度
化合物1 トルエン溶解度1.5%
化合物2 トルエン溶解度0.9%
合成例4 トルエン溶解度0.14%
【0080】
これから明かな通り、化合物1、2、及び4はいずれもトルエンに溶解した。特に、12のパーフルオロアルキル基鎖長を有する対照化合物(合成例4)の溶解度に比べ、それぞれ6のパーフルオロアルキル基鎖長を有する化合物1、及び2の溶解度は非常に高かった。
【0081】
これらの化合物1、2、及び4の各トルエン溶液をガラス基板に塗布、及び乾燥した結果、いずれも塗膜が得られたが、特に、化合物1、及び2の各トルエン溶液からは、色の濃さの均一性が高い塗膜が得られた。
【0082】
試験例
前記の合成例で合成した化合物の電界効果トランジスタ(FET)特性において、その電子移動度を評価した。
<電界効果型トランジスタ作成および電子伝導度評価>
厚さ300nmのSiO
2絶縁膜を有するp−ドープSi(シリコン)基板をトルエン、アセトン、脱イオン水、イソプロピルアルコールで各15分間ずつ超音波洗浄した。その後、基板を30分間オゾン洗浄し、ヘキサメチルジシラザンのトルエン溶液に1時間浸した。その後、基板をトルエン、アセトンで各15分間超音波洗浄した。
これに、電極として金を真空蒸着した。さらにこの上に前記合成例で合成した各化合物(フラーレン誘導体)の1wt%のo−ジクロロベンゼン溶液を滴下し、ホットプレートで70℃に加熱することでキャスト膜(有機層)を作製した。得られたFET素子の概略図を
図1に示す。
得られたFET素子を150℃で30分間アニールした後、真空下でソース−ドレイン間電圧を80V印加し、ゲート電圧を−20V〜80Vの範囲で変化させ、FET性能を測定した。
結果を表1に示した。これにより、化合物1、及び2の、電子輸送層材料としての実用性が確認された。
【0083】
【表1】