【解決手段】 単層又は複数層のポリイミド層からなり、(a)厚みが3μm以上50μm以下の範囲内にあること、(b)熱膨張係数が10ppm/K以下であること、(c)23℃、湿度50%下で、20時間調湿後の50mm角のポリイミドフィルムの中央部の凸面が平らな面上に接するように静置し、4角の浮き上がり量の平均値を平均反り量としたとき、平均反り量が10mm以下であること、(d)長手(MD)方向の熱膨張係数(CTE−MD)と、幅(TD)方向の熱膨張係数(CTE−TD)との差が±3ppm/K以下であること、を満たす表示装置形成用ポリイミドフィルム。
前記ポリイミドフィルムが、単層の第1のポリイミド層及び該第1のポリイミド層の片面に積層されている単層若しくは複数層の第2のポリイミド層からなり、かつ、前記第1のポリイミド層が前記離型ポリイミドフィルムと接する位置にあって、
前記第1のポリイミド層の熱膨張係数(CTE1)及び第2のポリイミド層の熱膨張係数(CTE2)が、下記の数式(1);
1ppm/K<(CTE2−CTE1)≦10ppm/K ・・・(1)
を満たすことを特徴とする請求項5又は6に記載のポリイミド積層体。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0023】
[表示装置形成用ポリイミドフィルム]
本発明の一実施の形態に係る表示装置形成用ポリイミドフィルムは、単層又は複数層のポリイミド層からなるポリイミドフィルムであり、下記の条件(a)〜(d)を満たすものである。なお、本明細書では、「表示装置形成用ポリイミドフィルム」と、後述するポリイミド積層体における「ポリイミドフィルム」(ポリイミドフィルム200)を区別しない場合は、単に「ポリイミドフィルム」と記す。
【0024】
(a)厚みが3〜50μmの範囲内にあること。
本実施の形態のポリイミドフィルムの厚みは、熱膨張係数を制御するために、3〜50μmの範囲内、好ましくは10〜30μmの範囲内、より好ましくは15〜25μmの範囲内がよい。本実施の形態のポリイミドフィルムの厚みが、3μm未満であると、電気絶縁性の低下やハンドリング性の低下により製造工程の取扱いが困難となる場合があり、50μmを超えると反りの制御が困難となり、熱膨張係数の増加が生じる傾向になる。
【0025】
(b)熱膨張係数が10ppm/K以下であること。
本実施の形態のポリイミドフィルムの熱膨張係数は、寸法変化を低減する為、10ppm/K以下の範囲、好ましくは7ppm/K以下の範囲がよい。熱膨張係数が10ppm/Kを超えると、本発明のポリイミドフィルムを基材とする表示装置を製造する際、寸法変化が低減されず、表示素子の位置ずれなどの問題が生じることがある。
【0026】
(c)23℃、湿度50%下で、20時間調湿後の50mm角のポリイミドフィルムの中央部の凸面(ここで、「凸面」とは、全体的にゆるやかに屈曲したポリイミドフィルム断片において、屈曲の外周側の面を意味する)が平らな面上に接するように静置し、4角の浮き上がり量の平均値を平均反り量としたとき、平均反り量が10mm以下であること。
本実施の形態のポリイミドフィルムの平均反り量は、本実施の形態のポリイミドフィルムを基材として用いた表示装置を製造する際の、ハンドリング性の向上や、加工時における浮きによる表示素子の位置ずれを防止する為に、10mm以下の範囲、好ましくは5mm以下の範囲がよい。
【0027】
(d)長手(MD)方向の熱膨張係数(CTE−MD)と、幅(TD)方向の熱膨張係数(CTE−TD)との差が±3ppm/K以下であること。
本実施の形態のポリイミドフィルムは、本実施の形態のポリイミドフィルムを基材として用いた表示装置を製造する際の、加工時における寸法変化を低減する為、CTE−MDとCTE−TDとの差が±3ppm/K以下の範囲、好ましくは、±1ppm/K以下の範囲がよい。
【0028】
また、本発明の一実施の形態に係るポリイミドフィルムは、好ましくは、上記(a)〜(d)の条件に加え、更に、下記の条件(e)を満たすものがよい。
【0029】
(e)面内リタデーション(RO)の値が1nm以上50nm以下の範囲内であること。
本実施の形態のポリイミドフィルムは、面内リタデーション(RO)の値が1nm以上50nm以下の範囲内、好ましくは1nm以上20nm以下の範囲内、より好ましくは1nm以上15nm以下の範囲内がよい。
【0030】
また、本発明の一実施の形態に係るポリイミドフィルムは、好ましくは、複数層のポリイミド層からなるポリイミドフィルムがよい。
【0031】
本発明の一実施の形態に係るポリイミドフィルムが複数層のポリイミド層からなる場合、ポリイミド層が、熱膨張係数が最も低い単層の第1のポリイミド層及び前記第1のポリイミド層の片側に積層されている単層若しくは複数層の第2のポリイミド層からなり、
前記第1のポリイミド層の熱膨張係数(CTE1)及び第2のポリイミド層の熱膨張係数(CTE2)が、下記の数式(1);
1ppm/K<(CTE2−CTE1)≦10ppm/K ・・・(1)
の範囲内がよい。ポリイミドフィルムの厚さ方向において熱膨張係数を変化させることにより、厚さ方向のリタデーション(ROL)の低下を防止し、平均反り量の低減が可能となる。CTE1とCTE2の差(CTE2−CTE1)は、2ppm/K以上10ppm/K以下の範囲内が好ましく、2ppm/K以上7ppm/K以下の範囲内がより好ましい。
【0032】
<ポリイミドフィルムの形態>
本実施の形態のポリイミドフィルムは、上記のとおり、条件(a)から(d)を満たすものであれば特に限定されるものではなく、絶縁樹脂からなるフィルム(シート)であってもよく、銅箔、ガラス板、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルムなどの樹脂シート等の基材に積層された状態の絶縁樹脂のフィルムであってもよい。
【0033】
<フィラー>
本実施の形態のポリイミドフィルムは、必要に応じて、無機フィラーを含有してもよい。具体的には、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
<ポリイミド>
本実施の形態のポリイミドフィルムは、ポリイミドからなるポリイミド層を有し、単層又は複数層からなるものである。ここで、ポリイミド層が複数層からなる場合は、熱膨張係数が最も低い単層の第1のポリイミド層及びこの第1のポリイミド層の片側に積層されている単層若しくは複数層からなる第2のポリイミド層を含んでいてもよい。なお、本明細書では、「第1のポリイミド層」と「第2のポリイミド層」を区別しない場合は、単に「ポリイミド層」と記す。
【0035】
ポリイミド層を構成するポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミンと、を反応させて得られるポリアミド酸をイミド化して得られるものである。従って、本実施の形態のポリイミドフィルムにおいて、ポリイミド層を構成するポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミンから誘導されるジアミン残基を含むものである。なお、本発明において、テトラカルボン酸残基とは、テトラカルボン酸二無水物から誘導された4価の基のことを表し、ジアミン残基とは、ジアミン化合物から誘導された2価の基のことを表す。
【0036】
以下、酸無水物とジアミンを説明することにより、本実施の形態で用いるポリイミドの具体例が理解される。
【0037】
ポリイミドに含まれるテトラカルボン酸残基としては、例えば3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等から誘導されるテトラカルボン酸残基が好ましく挙げられる。これらの中でも特に、BPDAから誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、BPDA残基ともいう。)は、秩序構造を形成しやすく、高温環境下での面内リタデーション(RO)の変化量を小さくすることができるので特に好ましい。また、BPDA残基は、ポリイミド前駆体のポリアミド酸としてのゲル膜の自己支持性を付与できるが、イミド化後のCTEを増大させる傾向になる。このような観点から、BPDA残基は、ポリイミドに含まれる全テトラカルボン酸残基に対して、好ましくは3〜70モル%の範囲内、より好ましくは5〜60モル%の範囲内がよい。
【0038】
ポリイミドに含まれる上記BPDA残基以外のテトラカルボン酸残基としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)から誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、PMDA残基ともいう。)が好ましく挙げられる。PMDA残基は、ポリイミドに含まれる全テトラカルボン酸残基に対して、好ましくは30〜97モル%の範囲内、より好ましくは40〜95モル%の範囲内がよい。PMDA残基は任意であるが、熱膨張係数の制御とガラス転移温度の制御の役割を担う残基である。
【0039】
その他のテトラカルボン酸残基としては、例えば、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、2,3',3,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-、2,3,3',4'-又は3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3'',4,4''-、2,3,3'',4''-又は2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基が挙げられる。
【0040】
ポリイミドに含まれるテトラカルボン酸残基において、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物及び2,3',3,4'-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物のテトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基は、非熱可塑性ポリイミドに含まれる全テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、好ましくは20モル部以下、より好ましくは15モル部以下がよい。非熱可塑性ポリイミドに含まれる全テトラカルボン酸残基に対し、これらのテトラカルボン酸残基が20モル部を超えると、分子の配向性が低下し、面内リタデーション(RO)の制御が困難となる。
【0041】
本実施の形態のポリイミドフィルムにおいて、ポリイミドに含まれるジアミン残基としては、例えば下記の一般式(A1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基(以下、「A1残基」と記すことがある)が好ましく挙げられる。
【0043】
上記式(A1)において、Yは独立に水素原子、又はハロゲン原子若しくはフェニル基で置換されてもよい炭素数1〜3の1価の炭化水素基、又は炭素数1〜3のアルコキシ基、又はアルケニル基を示し、nは0〜2の整数を示し、p及びqは独立に0〜4の整数を示す。ここで、「独立に」とは、上記式(A1)において、複数の置換基Y、整数p、qが、同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。
【0044】
A1残基は、秩序構造を形成しやすく分子鎖の面内方向の配向を促進する為、面内リタデーションを抑制することができる。このような観点から、A1残基は、ポリイミドに含まれる全ジアミン残基に対して、好ましくは20モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは70〜99モル%の範囲内がよい。
【0045】
また、A1残基として、例えば下記の一般式(1)で表されるジアミン残基が好ましく挙げられる。
【0047】
上記一般式(1)において、R
1、R
2は、独立して、ハロゲン原子若しくはフェニル基で置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基、又は炭素数1〜3のアルコキシ基若しくは炭素数2〜3のアルケニル基を示す。
【0048】
一般式(1)で表されるジアミン残基は、秩序構造を形成しやすく、特に高温環境下での面内リタデーション(RO)の変化量を有利に抑制することができる。このような観点から、一般式(1)で表されるジアミン残基は、ポリイミドに含まれる全ジアミン残基に対して、好ましくは20モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは60〜90モル%の範囲内がよい。
【0049】
一般式(1)で表されるジアミン残基の好ましい具体例としては、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−TB)、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−EB)、2,2’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(m−EOB)、2,2’−ジプロポキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(m−POB)、2,2’−n−プロピル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−NPB)、2,2’−ジビニル−4,4’−ジアミノビフェニル(VAB)、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)等のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が挙げられる。これらの中でも特に、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−TB)は、秩序構造を形成しやすく、高温環境下での面内リタデーション(RO)の変化量を小さくすることができるので特に好ましい。
【0050】
一般式(1)で表されるジアミン残基以外のジアミン残基としては、p‐フェニレンジアミン(p−PDA)、m‐フェニレンジアミン(m−PDA)等から誘導されるジアミン残基が好ましく挙げられ、より好ましくはp−PDAから誘導されるジアミン残基(以下、PDA残基ともいう。)がよい。PDA残基は、ポリイミドに含まれる全ジアミン残基に対して、好ましくは0〜80モル%の範囲内、より好ましくは0〜50モル%の範囲内がよい。PDA残基は任意であるが、熱膨張係数の制御とガラス転移温度の制御の役割を担う残基である。
【0051】
なお、本明細書において、「ジアミン化合物」は、末端の二つのアミノ基における水素原子が置換されていてもよく、例えば−NR
3R
4(ここで、R
3,R
4は、独立にアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
【0052】
また、ポリイミドフィルムとした場合の伸度及び折り曲げ耐性等を向上させるため、ポリイミドが、下記の一般式(2)〜(4)で表されるジアミン残基からなる群より選ばれる少なくとも1種のジアミン残基を含むことが好ましい。
【0054】
上記式(2)において、R
5及びR
6はそれぞれ独立に水素原子、又はハロゲン原子、又は炭素数1〜4のハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基、又は炭素数1〜4のハロゲン原子で置換されてもよいアルコキシ基、又は炭素数2〜4のハロゲン原子で置換されてもよいアルケニル基を示し、Xは独立に−O−、−S−、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−NH−又は−NHCO−から選ばれる2価の基を示し、m及びnは独立に1〜4の整数を示す。
【0056】
上記式(3)において、R
5、R
6及びR
7はそれぞれ独立に水素原子、又はハロゲン原子、又は炭素数1〜4のハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基、又は炭素数1〜4のハロゲン原子で置換されてもよいアルコキシ基、又は炭素数2〜4のハロゲン原子で置換されてもよいアルケニル基を示し、Xは独立に−O−、−S−、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−NH−又は−NHCO−から選ばれる2価の基を示し、m、n及びoは独立に1〜4の整数を示す。
【0058】
上記式(4)において、R
5、R
6、R
7及びR
8はそれぞれ独立に水素原子、又はハロゲン原子、又は炭素数1〜4のハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基、又は炭素数1〜4のハロゲン原子で置換されてもよいアルコキシ基、又は炭素数2〜4のハロゲン原子で置換されてもよいアルケニル基を示し、X
1及びX
2はそれぞれ独立に単結合、−O−、−S−、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−CO−、−COO−、−SO
2−、−NH−又は−NHCO−から選ばれる2価の基を示すが、X
1及びX
2の両方が単結合である場合を除くものとし、m、n、o及びpは独立に1〜4の整数を示す。
【0059】
なお、「独立に」とは、上記式(2)から(4)の内の一つにおいて、または(2)から(4)において、複数の連結基X、連結基X
1、X
2、複数の置換基R
5、R
6、R
7、R
8、さらに、整数m、n、o、pが、同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。
【0060】
一般式(2)〜(4)で表されるジアミン残基は、屈曲性の部位を有するので、ポリイミドフィルムに柔軟性を付与することができる。ここで、一般式(3)及び(4)で表されるジアミン残基は、ベンゼン環が3個又は4個であるので、熱膨張係数(CTE)の増加を抑制するために、ベンゼン環に結合する末端基はパラ位とすることが好ましい。また、ポリイミドフィルムに柔軟性を付与しながら熱膨張係数(CTE)の増加を抑制する観点から、一般式(2)〜(4)で表されるジアミン残基は、ポリイミドに含まれる全ジアミン残基に対して、好ましくは3〜40モル%の範囲内、より好ましくは3〜30モル%の範囲内がよい。一般式(2)〜(4)で表されるジアミン残基が3モル%未満であると、フィルムとした場合の伸度が低下し、折り曲げ耐性等の低下が生じる。一方、40モル%を超えると、分子の配向性が低下し、低CTE化が困難となる。
【0061】
一般式(2)において、基R
5及びR
6の好ましい例としては、水素原子又は炭素数1〜4のハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基、あるいは炭素数1〜3のアルコキシ基若しくは炭素数2〜3のアルケニル基を挙げることができる。また、一般式(2)において、連結基Xの好ましい例としては、−O−、−S−、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−SO
2−又は−CO−を挙げることができる。一般式(2)で表されるジアミン残基の好ましい具体例としては、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル(4,4'-DAPE)、3,3'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジアミノジフェニルメタン、3,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルプロパン、3,3'−ジアミノジフェニルプロパン、3,4'−ジアミノジフェニルプロパン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,3'−ジアミノベンゾフェノン等のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が挙げられる。
【0062】
一般式(3)において、基R
5、R
6及びR
7の好ましい例としては、水素原子又は炭素数1〜4のハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基、あるいは炭素数1〜3のアルコキシ基若しくは炭素数2〜3のアルケニル基を挙げることができる。また、一般式(3)において、連結基Xの好ましい例としては、−O−、−S−、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−SO
2−又は−CO−を挙げることができる。一般式(3)で表されるジアミン残基の好ましい具体例としては、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)、1,4−ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−Q)、ビス(4‐アミノフェノキシ)−2,5−ジ−tert−ブチルベンゼン(DTBAB)、4,4−ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゾフェノン(BAPK)、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン等のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が挙げられる。
【0063】
一般式(4)において、基R
5、R
6、R
7及びR
8の好ましい例としては、水素原子又は炭素数1〜4のハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基、あるいは炭素数1〜3のアルコキシ基若しくは炭素数2〜3のアルケニル基を挙げることができる。また、一般式(4)において、連結基X
1及びX
2の好ましい例としては、単結合、−O−、−S−、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−SO
2−又は−CO−を挙げることができる。但し、屈曲部位を付与する観点から、連結基X
1及びX
2の両方が単結合である場合を除くものとする。一般式(4)で表されるジアミン残基の好ましい具体例としては、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(BAPE)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン等のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が挙げられる。
【0064】
その他のジアミン残基としては、例えば、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[1-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、9,9-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、2,2−ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-メチレンジ-o-トルイジン、4,4’-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4’-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、3,3’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシベンジジン、3,3''-ジアミノ-p-テルフェニル、4,4'-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4'-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン等の芳香族ジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が挙げられる。
【0065】
ポリイミドにおいて、上記テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の種類や、2種以上のテトラカルボン酸残基又はジアミン残基を適用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張係数、貯蔵弾性率、引張弾性率等を制御することができる。また、非熱可塑性ポリイミドにおいて、ポリイミドの構造単位を複数有する場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在していてもよいが、面内リタデーション(RO)のばらつきを抑制する観点から、ランダムに存在することが好ましい。
【0066】
<ポリイミドフィルムの製造方法>
本実施の形態のポリイミドフィルムの製造方法の態様として、例えば、[1]支持基材に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥した後、イミド化してポリイミドフィルムを製造する方法、[2]支持基材に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥した後、ポリアミド酸のゲルフィルムを支持基材から剥がし、イミド化してポリイミドフィルムを製造する方法がある。また、本実施の形態のポリイミドフィルムは、複数層のポリイミド層からなるポリイミドフィルムである場合、その製造方法の態様としては、例えば[3]支持基材に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥することを複数回繰り返した後、イミド化を行う方法(キャスト法)、[4]多層押出により、同時にポリアミド酸を多層に積層した状態で塗布・乾燥した後、イミド化を行う方法(多層押出法)などが挙げられる。
【0067】
上記[1]の方法は、例えば、次の工程1a〜1c;
(1a)支持基材にポリアミド酸の溶液を塗布し、乾燥させる工程と、
(1b)支持基材上でポリアミド酸を熱処理してイミド化することによりポリイミド層を形成する工程と、
(1c)支持基材とポリイミド層とを分離することによりポリイミドフィルムを得る工程と、
を含むことができる。
【0068】
上記[2]の方法は、例えば、次の工程2a〜2c;
(2a)支持基材にポリアミド酸の溶液を塗布し、乾燥させる工程と、
(2b)支持基材とポリアミド酸のゲルフィルムとを分離する工程と、
(2c)ポリアミド酸のゲルフィルムを熱処理してイミド化することによりポリイミドフィルムを得る工程と、
を含むことができる。
【0069】
上記[3]の方法は、上記[1]の方法又は[2]の方法において、工程1a又は工程2aを複数回繰り返し、支持基材上にポリアミド酸の積層構造体を形成する以外は、上記[1]の方法又は[2]の方法と同様に実施できる。
【0070】
上記[4]の方法は、上記[1]の方法の工程1a、又は[2]の方法の工程2aにおいて、多層押出により、同時にポリアミド酸の積層構造体を塗布し、乾燥させる以外は、上記[1]の方法又は[2]の方法と同様に実施できる。
【0071】
本発明で製造されるポリイミドフィルムは、支持基材上でポリアミド酸のイミド化を完結させることが好ましい。ポリアミド酸の樹脂層が支持基材に固定された状態でイミド化されるので、イミド化過程におけるポリイミド層の伸縮変化を抑制して、ポリイミドフィルムの厚みや寸法精度を維持することができる。
【0072】
また、支持基材上のポリアミド酸のゲルフィルムを分離し、ポリアミド酸のゲルフィルムを一軸延伸又は二軸延伸と同時あるいは連続的にイミド化を行う方法によって、面内リタデ−ション(RO)を制御してもよい。この際、ROをより精密に高度に制御するために、延伸操作及びイミド化時の昇温速度、イミド化の完結温度、荷重等の条件を適宜調整することが好ましい。
【0073】
<ポリイミドの合成>
一般にポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物を溶媒中で反応させ、ポリアミド酸を生成したのち加熱閉環させることにより製造できる。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0〜100℃の範囲内の温度で30分〜24時間撹拌し重合反応させることでポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5〜30重量%の範囲内、好ましくは10〜20重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、2−ブタノン、ジメチルスホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。また、このような有機溶媒の使用量としては特に制限されるものではないが、重合反応によって得られるポリアミド酸溶液の濃度が5〜30重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
【0074】
合成されたポリアミド酸は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、ポリアミド酸は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。ポリアミド酸の溶液の粘度は、500cps〜100,000cpsの範囲内であることが好ましい。この範囲を外れると、コーター等による塗工作業の際にフィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。ポリアミド酸をイミド化させる方法は、特に制限されず、例えば前記溶媒中で、80〜400℃の範囲内の温度条件で1〜24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。
【0075】
[ポリイミド積層体]
本発明の一実施の形態に係るポリイミド積層体300は、例えば
図1に示すように、離型ポリイミドフィルム100からなる層と、該離型ポリイミドフィルム100に直接積層されたポリイミドフィルム200からなる層と、を備えている。ポリイミドフィルム200は、例えば表示装置等の電子デバイスにおける樹脂基板(ポリイミド基材)として好適に利用できる。つまり、ポリイミドフィルム200は、例えば電子デバイスにおける樹脂基板若しくは樹脂基材の用途に利用できる。
【0076】
<離型ポリイミドフィルム>
離型ポリイミドフィルム100は、前記のポリイミドフィルム200がその境界面から容易に分離できることが好ましい。好適には、離型ポリイミドフィルム100とポリイミドフィルム200との界面における接着強度が1N/m以上500N/m以下、より好適には2N/m以上300N/m以下、更に好適には10N/m以上200N/m以下であることによって、人の手で容易に剥離できる程度の分離性を備える。
【0077】
離型ポリイミドフィルム100の熱膨張係数は、反りを抑制するため、25ppm/K以下であることが好ましく、10ppm/K以下であることがより好ましい。また、前記のポリイミドフィルム200の剥離性及び耐熱性の観点から、離型ポリイミドフィルム100のガラス転移温度(Tg)が300℃以上であるのがよい。具体例として、例えば、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とフェニレンジアミンとからなる構造単位を主成分とするポリイミド等が挙げられる。市販品としては、例えば、宇部興産社製のユーピレックス−Sや東レ・デュポン社製のカプトン、東洋紡績社製のゼノマックス等を用いることができる。
【0078】
離型ポリイミドフィルム100の厚みは特に限定されるものではないが、生産安定性及びハンドリング性の観点から、10μm以上とすることが好ましい。厚みの上限は特に制限されるものではないが、コスト性等を考慮すれば100μm以下であるのが望ましい。
【0079】
離型ポリイミドフィルム100は、ポリイミドフィルム200との接着強度を調整するために、離型ポリイミドフィルム100の表面を例えばプラズマ処理などの改質処理を施して表面状態の濡れ性を大きくしても良いし、あるいは熱処理を施して表面状態の濡れ性を小さくしてもよい。
【0080】
<ポリイミド積層体の製造方法>
本実施の形態のポリイミド積層体300の製造方法の態様として、[1]離型ポリイミドフィルム100に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥した後、イミド化してポリイミドフィルム200の層を形成することによって、ポリイミド積層体300を製造する方法、[2]離型ポリイミドフィルム100に、前記のポリイミドフィルム200を圧着してポリイミド積層体300を製造する方法があるが、[1]の製造方法を採用することが好ましい。上記[1]の方法では、イミド化過程でポリイミドフィルム200の伸縮変化が抑制されるため、ポリイミドフィルム200の厚みや寸法を高精度に制御することができる。また、離型ポリイミドフィルム100とポリイミドフィルム200との剥離性を良好にするために、例えば離型ポリイミドフィルム100のガラス転移温度Tg
1とポリイミドフィルム200のガラス転移温度Tg
2との関係を、Tg
1≦Tg
2≦Tg
1+30℃とし、イミド化の際の熱処理温度の上限T
maxを、Tg
1≦T
max≦Tg
1+30℃とすることがよい。
【0081】
[表示装置の製造方法]
図2は、本実施の形態の表示装置の製造方法における概略の工程図である。表示装置の製造方法では、予め支持体400上にポリイミド積層体300を備えたものを用いるようにする。そして、ポリイミド積層体300のポリイミドフィルム200側に所定の表示部500を形成し、その後、離型ポリイミドフィルム100とポリイミドフィルム200との境界面で分離することで、ポリイミドフィルム200からなる樹脂基板(ポリイミド基材)上に表示部500を備えた表示装置600を製造することができる。
【0082】
より具体的には、先ず、液晶表示装置や有機EL表示装置、LED素子等における表示部500の製造工程で台座となる支持体400を準備する。この支持体400については、各種表示装置を形成する表示部500の製造過程での熱履歴や雰囲気等に耐え得るような化学的強度や機械的強度を備えたものであれば特に制限されず、ガラス基板や金属基板が例示されるが、好適には、ガラス基板を用いるのがよい。ガラス基板は、例えば、有機EL表示装置の製造において一般的に使用されるものを利用することができる。ガラス基板は、ポリイミド基材上に表示部500を形成する際に台座の役割をするものであって、表示部500の製造過程でポリイミド基材の取り扱い性や寸法安定性等を担保することはあっても、最終的には除去されて表示装置600を構成するものではない。
【0083】
この支持体400の上にポリイミド積層体300を設けるわけであるが、その方法としては、支持体400にポリイミド積層体300を、直接、接着させ積層させてもよく、又は、任意の接着層を介して積層させてもよい。
図2(a)は、支持体400にポリイミド積層体300を、直接積層した状態を示している。
図2(a)に示す積層体は、予め作製したポリイミド積層体300と支持体400とを貼り合わせる方法で作製してもよいし、キャスト法によって、支持体400上に、離型ポリイミドフィルム100を構成するポリイミドもしくはその前駆体の樹脂溶液、及びポリイミドフィルム200を構成するポリイミドもしくはその前駆体の樹脂溶液を、順次塗布し、加熱することによって、作製してもよい。
【0084】
図2(b)は、ポリイミド積層体300におけるポリイミドフィルム200の表面に表示部500を形成した状態を示している。表示部500は、例えば、TFT素子、有機EL素子、カラーフィルター、LED、トランジスタ、電子放出素子、電子インク、電気泳動素子、GLV(グレーティングライトバルブ)、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)を用いた表示素子、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)、DMS(デジタル・マイクロ・シャッター)、IMOD(インターフェロメトリック・モジュレーション)素子、エレクトロウェッティング素子、圧電セラミックディスプレイ、カーボンナノチューブを用いた表示素子などを含んでいてもよい。
【0085】
図2(c)は、表示部500を形成した後、離型ポリイミドフィルム100とポリイミドフィルム200との境界面で分離することによって、ポリイミドフィルム200を基材とし、その上に表示部500を備えた表示装置600を得た状態を示している。なお、表示部500を形成した後、先ず、支持体400を除去し、その後で、離型ポリイミドフィルム100とポリイミドフィルム200との境界面で分離してもよい。
【0086】
以上のようにして、ポリイミドフィルム200からなる樹脂基板(ポリイミド基材)上に表示部500を備えた表示装置600を製造することができる。
【実施例】
【0087】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
【0088】
[熱膨張係数(CTE)の測定]
3mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、サーモメカニカルアナライザー(Bruker社製、商品名;4000SA)を用い、5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度で30℃から250℃まで昇温させ、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、250℃から100℃までの平均熱膨張係数(熱膨張係数)を求めた。なお、CTE−MDとは、長手(MD)方向の熱膨張係数、CTE−TDとは、幅(TD)方向の熱膨張係数である。
【0089】
[面内リタデーション(RO)の測定]
複屈折率計(フォトニックラティス社製、商品名;ワイドレンジ複屈折評価システムWPA−100、測定エリア;MD:200mm×TD:150mm)を用いて、所定のサンプルの面内方向のリタデーションを求めた。なお、入射角は0°、測定波長は543nmである。
【0090】
[厚さ方向のリタデーション(ROL)の測定]
ポリイミドフィルムのウルトラミクロトームによる薄膜切断により調製したサンプルを、顕微鏡型複屈折率計(フォトニックラティス社製、商品名;PI−micro)を用いて、厚さ方向のリタデーションを測定した。なお、入射角は0°、測定波長は520nmである。
【0091】
[反りの測定]
ポリイミドフィルムの反りは、50mm×50mmのサイズのポリイミドフィルムを23℃、湿度50%で、20時間調湿後、サンプルの中央部の凸面が平らな面上に接するよう静置し、サンプルの4角の静置面からの浮き上がりの距離を計測し、その平均値を平均反り量とした。
【0092】
[接着強度の評価]
接着強度は、東洋精機製作所社製、ストログラフR−1を用いて、幅25mmの短冊状に切断したサンプルについて、T字剥離試験法による180°ピール強度を測定することにより評価した。
【0093】
実施例及び比較例に用いた略号は、以下の化合物を示す。
m−TB:2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル
DAPE:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
【0094】
(合成例1)
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、固形分濃度が15重量%となるように、2.550gのDAPE(0.0127モル)、15.333gのm‐TB(0.0721モル)及び212.5gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、6.0847gのBPDA(0.0207モル)及び13.532gのPMDA(0.0620モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液aを調製した。
【0095】
次に、ポリアミド酸溶液aをステンレス製の支持基材上に、硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、130℃で加熱乾燥した。更に、130℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結し、樹脂フィルム1(CTE;7.6ppm/K)を調製した。
【0096】
(合成例2)
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、固形分濃度が15重量%となるように、1.188gのDAPE(0.0059モル)、16.740gのm‐TB(0.0787モル)及び212.5gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、6.071gのBPDA(0.0206モル)及び13.502gのPMDA(0.0618モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液bを調製した。
【0097】
次に、ポリアミド酸溶液bをステンレス製の支持基材上に、硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、130℃で加熱乾燥した。更に、130℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結し、樹脂フィルム2(CTE;3.9ppm/K)を調製した。
【0098】
(合成例3)
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、固形分濃度が15重量%となるように、0.862gのDAPE(0.0043モル)、17.381gのm‐TB(0.0817モル)及び212.5gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、3.703gのBPDA(0.0126モル)及び15.554gのPMDA(0.0712モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液cを調製した。
【0099】
次に、ポリアミド酸溶液cをステンレス製の支持基材上に、硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、130℃で加熱乾燥した。更に、130℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結し、樹脂フィルム3(CTE;1.3ppm/K)を調製した。
【0100】
[実施例1]
離型ポリイミドフィルム1(東洋紡社製、登録商標;ゼノマックス、厚さ;38μm、長尺状、CTE−MD;2.8ppm/K、CTE−TD;0.8ppm/K)に、合成例2で調製したポリアミド酸溶液bを硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、130℃で加熱乾燥した。その後、130℃から360℃まで、段階的な熱処理を行い、イミド化を完結し、常温まで冷却してポリイミド積層体1を調製した。
【0101】
このポリイミド積層体1について、離型ポリイミドフィルム1より剥離することで、ポリイミドフィルム1を調製した。剥離強度は4N/mであった。
ポリイミドフィルム1の評価結果は次のとおりである。なお、支持基材(支持基材としての離型ポリイミドフィルムを含む)より剥離する前の状態において、支持基材に接している側の面をポリイミドフィルムのA面とし、もう一方の表面をポリイミドフィルムのB面とする。
CTE−MD;3.8ppm/K
CTE−TD;4.0ppm/K
面内リタデーション(RO);18nm
平均反り量;1.0mm
A面から深さ方向に4μm地点のリタデーション(ROL);70nm
B面から深さ方向に20μm地点のリタデーション(ROL);69nm
【0102】
[実施例2]
離型ポリイミドフィルム1に、合成例3で調製したポリアミド酸溶液cを硬化後の厚みが約12.5μmとなるように均一に塗布した後、130℃で加熱乾燥した。その上に、合成例1で調製したポリアミド酸溶液aを硬化後の厚みが約12.5μmとなるように均一に塗布し、130℃で加熱乾燥した後、130℃から360℃まで、段階的な熱処理を行い、イミド化を完結し、常温まで冷却してポリイミド積層体2を調製した。
【0103】
このポリイミド積層体2について、離型ポリイミドフィルム1より剥離することで、ポリイミドフィルム2を調製した。剥離強度は4N/mであった。
ポリイミドフィルム2の評価結果は次のとおりである。
CTE−MD;6.6ppm/K
CTE−TD;6.1ppm/K
面内リタデーション(RO);11nm
平均反り量;1.2mm
第1のポリイミド層(A面側)と第2のポリイミド層(B面側)のCTE差(CTE2−CTE1);6.7ppm/K
【0104】
[実施例3]
離型ポリイミドフィルム1に、合成例3で調製したポリアミド酸溶液cを硬化後の厚みが約16μmとなるように均一に塗布した後、130℃で加熱乾燥した。その上に、合成例2で調製したポリアミド酸溶液bを硬化後の厚みが約9μmとなるように均一に塗布し、130℃で加熱乾燥した後、130℃から360℃まで、段階的な熱処理を行い、イミド化を完結し、常温まで冷却してポリイミド積層体3を調製した。
【0105】
このポリイミド積層体3について、離型ポリイミドフィルム1より剥離することで、ポリイミドフィルム3を調製した。剥離強度は4N/mであった。
ポリイミドフィルム3の評価結果は次のとおりである。
CTE−MD;4.0ppm/K
CTE−TD;4.3ppm/K
面内リタデーション(RO);3.0nm
平均反り量;0.7mm
第1のポリイミド層(A面側)と第2のポリイミド層(B面側)のCTE差(CTE2−CTE1);2.6ppm/K
【0106】
[実施例4]
リップ幅200mmのマルチマニホールド式の3層共押出三層ダイを用い、離型ポリイミドフィルム1に近い側から、合成例3で調製したポリアミド酸溶液c、合成例2で調製したポリアミド酸溶液bの順の2層構造となるように離型ポリイミドフィルム1の面に押出し流延塗布した。その後、130℃から360℃の温度で段階的な熱処理を行い、イミド化を完結し、常温まで冷却してポリイミド積層体4を調製した。
【0107】
このポリイミド積層体4について、離型ポリイミドフィルム1より剥離することで、ポリイミドフィルム4を調製した。剥離強度は4N/mであった。
ポリイミドフィルム4の評価結果は次のとおりである。
CTE−MD;4.2ppm/K
CTE−TD;4.5ppm/K
面内リタデーション(RO);5nm
平均反り量;1.3mm
第1のポリイミド層(A面側、厚み;16μm)と第2のポリイミド層(B面側、厚み;
9μm)のCTE差(CTE2−CTE1);3.0ppm/K
【0108】
[作製例1]
実施例1で調製したポリイミド積層体1において、離型ポリイミドフィルム1側の面をガラス基板に接着剤を用いて貼り付けた後、ポリイミドフィルム1側の表面に表示部であるマイクロLED素子(LEDチップ;約20μm、正方形、薄片状)を形成した。その後、表示部を取り囲むようにしてポリイミドフィルム1に切り込みを入れ、離型ポリイミドフィルム1とポリイミドフィルム1との界面を剥離分離し、ポリイミドフィルム1からなるポリイミド基材上にマイクロLED素子を有する表示装置を調製した。この際、離型ポリイミドフィルム1とポリイミドフィルム1との間は、表示部のデバイスにダメージを与えることなく、レーザー剥離等の手段を使わずに人が引き剥がすことで、容易に分離することが出来た。
【0109】
(参考例1)
支持基材1(ステンレス製、厚み;16μm)の離型処理した面に、合成例2で調製したポリアミド酸溶液bを硬化後の厚みが約55μmとなるように均一に塗布した後、130℃で加熱乾燥した。その後、130℃から380℃まで、段階的な熱処理を行い、イミド化を完結し、常温まで冷却後、支持基材1より剥離することで、ポリイミドフィルム5を調製した。
【0110】
ポリイミドフィルム5の評価結果は次のとおりである。
CTE−MD;9.8ppm/K
CTE−TD;9.7ppm/K
面内リタデーション(RO);49nm
平均反り量;21.3mm
【0111】
(参考例2)
合成例1で得られたポリアミド酸溶液aを支持基材1上に、硬化後の厚みが約16μmとなるように均一に塗布した後、130℃で加熱乾燥した。その上に、合成例2で得られたポリアミド酸溶液bを硬化後の厚みが約9μmとなるように均一に塗布し、130℃で加熱乾燥した後、130℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結し、常温まで冷却後、支持基材1より剥離することで、ポリイミドフィルム6を調製した。
【0112】
ポリイミドフィルム6の評価結果は次のとおりである。
CTE−MD;13.5ppm/K
CTE−TD;14.6ppm/K
面内リタデーション(RO);19.4nm
平均反り量;13.0mm
【0113】
実施例1〜4及び参考例1〜2は、ポリアミド酸溶液を支持基材上に塗布し、支持基材上で乾燥及びイミド化を完結したポリイミドフィルムであり、いずれのポリイミドフィルムにおいてもCTE等方性が良く、面内リタデーションも低いため、寸法安定性に優れていることが確認された。
【0114】
ポリイミド層が単層である実施例1及び参考例1を比較すると、実施例1では、ポリイミドフィルムの厚み及び厚さ方向のリタデーション(ROL)を高精度に制御しているので、平均反り量を10mm以下に抑えることできた。一方、参考例1では、ポリイミドフィルムが所定の厚みに制御されていないため、平均反り量が10mmを超える結果となった。
【0115】
また、ポリイミド層が複数層である実施例2〜実施例4及び参考例2を比較すると、実施例2〜4では、支持基材上に直接積層した第1のポリイミド層を低熱膨張性とし、その熱膨張係数(CTE)を、数式(1)を満たす範囲で第2のポリイミド層のCTEよりも小さく設計することで、A面側への反りを抑制し、ポリイミドフィルムの平均反り量を10mm以下に抑えることができた。一方、参考例2では、2層のポリイミド層の内、CTEの大きいポリイミド層をA面側に配置した為に、平均反り量が10mmを超える結果となった。これまで、支持基材上に複数層のポリイミド層を形成する場合に、厚さ方向のリタデーション(ROL)を考慮した各層間のCTEの制御を行なっていなかったため、支持基材上に直接積層するポリイミド層のA面側のROLが低くなり、B面側に比べてCTEが増加する傾向があり、参考例2のようにA面側への反りが発生しやすくなっていた。それに対し、実施例2〜実施例4に示したように、ROLを考慮して、第1のポリイミド層のCTEを第2のポリイミド層のCTEよりも小さく設計することで、反りの発生が抑制された多層ポリイミドフィルムを製造できることが確認できた。
【0116】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態
に制約されることはない。