【解決手段】本発明は、環状オレフィン系樹脂と、ブロック共重合体とを含み、前記ブロック共重合体は、ポリエーテルブロックと、ポリアミドブロック又はポリオレフィンブロックとを含むブロック共重合体である、樹脂組成物を提供する。また、前記ブロック共重合体の含有量は、前記樹脂組成物に対して5.0質量%以上であってもよい。
前記ブロック共重合体において、ポリエーテルブロックを構成するモノマー量が、ポリアミドブロックを構成するモノマー量に対してモル比で2.0倍以上である、請求項1から4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、例えば、特許文献1及び3に記載された方法では、帯電防止剤として比較的小さい分子量の化合物を用い、該化合物が成形品の表面に分布することで帯電防止効果が奏される。しかし、成形品の洗浄や滅菌等によって、帯電防止剤が成形品から流れ出てしまうため、特許文献1及び3に記載された方法では、帯電防止効果を長期にわたって維持することが困難である可能性がある。
【0007】
他方、特許文献2に記載された方法では、特定の重合体が帯電防止剤として用いられている。この重合体は、特許文献1及び3に記載された方法において用いられる化合物よりも分子量が大きい化合物であるため、帯電防止剤が成形品から流れ出るという問題は生じにくいと考えられる。しかし、帯電性がより抑制された環状オレフィン系樹脂を含む成形品に対するニーズがある。
【0008】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、帯電性が抑制された、環状オレフィン系樹脂を含む成形品が得られる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、環状オレフィン系樹脂とともに、特定のブロック共重合体を含む樹脂組成物によれば上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0010】
(1) 環状オレフィン系樹脂と、ブロック共重合体とを含み、
前記ブロック共重合体は、ポリエーテルブロックと、ポリアミドブロック又はポリオレフィンブロックとを含むブロック共重合体である、樹脂組成物。
【0011】
(2) 前記ブロック共重合体の含有量は、前記樹脂組成物に対して5.0質量%以上である、(1)に記載の樹脂組成物。
【0012】
(3) 前記環状オレフィン系樹脂の含有量は、前記樹脂組成物に対して70質量%以上である、(1)又は(2)に記載の樹脂組成物。
【0013】
(4) 前記環状オレフィン系樹脂は、炭素数2〜20のα−オレフィンとノルボルネンとの共重合体である、(1)から(3)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0014】
(5) 前記ブロック共重合体において、ポリエーテルブロックを構成するモノマー量が、ポリアミドブロックを構成するモノマー量に対してモル比で2.0倍以上である、(1)から(4)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0015】
(6) 前記ブロック共重合体は、ビスフェノールAをモノマーとして含む、(1)から(5)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0016】
(7) (1)から(6)のいずれかに記載の樹脂組成物からなる成形品。
【0017】
(8) 医療用容器である、(7)に記載の成形品。
【0018】
(9) IEC60093に基づいて測定した表面固有抵抗値が1.0×10
14Ω以下である、(7)又は(8)に記載の成形品。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、帯電性が抑制された、環状オレフィン系樹脂を含む成形品が得られる技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0021】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、環状オレフィン系樹脂とともに、ポリエーテルブロックと、ポリアミドブロック又はポリオレフィンブロックとを含むブロック共重合体を少なくとも含む。以下、「ポリエーテルブロックと、ポリアミドブロック又はポリオレフィンブロックとを含むブロック共重合体」を「本発明のブロック共重合体」ともいう。以下に、本発明の樹脂組成物の構成について詳述する。
【0022】
(本発明のブロック共重合体)
本発明のブロック共重合体は、帯電防止剤として機能する。本発明のブロック共重合体は、各種樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート)に対して帯電防止効果を付与できることが知られていた。しかし、本発明者による検討の結果、本発明のブロック共重合体は、意外にも、環状オレフィン系樹脂を含む成形品に対して、特に好ましい帯電防止効果を付与できることが見出された。
【0023】
本発明のブロック共重合体は、ポリエーテルブロックと、ポリアミドブロック又はポリオレフィンブロックとを含むものであれば特に限定されない。また、本発明のブロック共重合体は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
本発明のブロック共重合体としては、ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを含むブロック共重合体(「ポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体」ともいう。)、ポリオレフィンブロック及びポリエーテルブロックを含むブロック共重合体(「ポリオレフィン−ポリエーテルブロック共重合体」ともいう。)のいずれであってもよい。本発明の効果が得られやすいという観点から、ポリアミド−ポリオレフィンブロック共重合体が特に好ましい。
【0025】
ポリアミドブロックを構成するポリアミドとしては、特に限定されないが、カプロラクタムの開環縮合重合体、ウンデカンラクタムの開環縮合重合体、ラウリンラクタムの開環縮合重合体、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンの縮合重合体、等が好ましい。
【0026】
ポリオレフィンブロックを構成するポリオレフィンとしては、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンとの共重合体、等が好ましい。
【0027】
本発明のブロック共重合体がポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体である場合、本発明の効果が得られやすいという観点から、ポリエーテルブロックを構成するモノマー量は、ポリアミドブロックを構成するモノマー量に対して、モル比で好ましくは2.0倍以上、より好ましくは3.0倍以上である。ポリエーテルブロックを構成するモノマー量の上限は特に限定されないが、ポリアミドブロックを構成するモノマー量に対して、モル比で好ましくは10倍以下である。
【0028】
なお、各ブロックを構成するモノマー量(単位量)は、プロトンNMRを用いて定量することができる。具体的には、3.3ppm付近に出現するピーク(ポリアミドのアミド結合中に存在する窒素原子に隣接するメチレンのプロトン由来のピーク)の積分強度と、3.8ppm付近に出現するピーク(アルキルエーテル中に存在するプロトン由来のピーク)の積分強度との比を算出して確認することができる。
【0029】
本発明のブロック共重合体は、得られる成形品の帯電性をより抑制しやすいという観点、及び、得られる成形体の外観を損ないにくいという観点から、ビスフェノールAをモノマーとして含むことが好ましい。このような共重合体を用いると、分子量の大きい化合物を帯電防止剤として用いた場合において成形時に生じやすい問題(帯電防止剤の熱劣化による成形品の変色、離形性不良による成形品表面の剥離等)が生じにくい。なお、本発明において「ビスフェノールAをモノマーとして含む」とは、ブロック共重合体が、下記に示すビスフェノールAに由来する骨格を有することを意味する。
【化1】
【0030】
本発明のブロック共重合体としては市販品を用いてもよい。ポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体としては、商品名「ペレクトロンAS」(三洋化成工業株式会社製)、商品名「ペレクトロンLIP」(三洋化成工業株式会社製)、商品名「ペレスタットNC7530」(三洋化成工業株式会社製)、商品名「エレコンPAS205」(大日精化株式会社製)が挙げられる。ポリオレフィン−ポリエーテルブロック共重合体としては、商品名「ペレクトロンPVL」(三洋化成工業株式会社製)が挙げられる。
【0031】
本発明のブロック共重合体の含有量の下限は、成形品に充分な帯電性を付与しやすいという観点から、樹脂組成物に対して、好ましくは5.0質量%以上である。
【0032】
本発明のブロック共重合体の含有量の上限は、成形品の離型性や表面外観等が損なわれる、という観点から、樹脂組成物に対して、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
【0033】
(環状オレフィン系樹脂(COC))
本発明における環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンに由来する構造単位を主鎖に含む重合体又は共重合体であれば、特に限定されない。例えば、環状オレフィンの付加重合体又はその水素添加物、環状オレフィンとα−オレフィンとの付加共重合体又はその水素添加物等を挙げることができる。環状オレフィン系樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
また、環状オレフィン系樹脂としては、環状オレフィンに由来する構造単位を主鎖に含む上記重合体又は上記共重合体において、さらに極性基を有する不飽和化合物がグラフト及び/又は共重合したものも挙げられる。
【0035】
極性基としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、アミド基、エステル基、ヒドロキシル基等を挙げることができ、極性基を有する不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜10)エステル、マレイン酸アルキル(炭素数1〜10)エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル等を挙げることができる。
【0036】
また、本発明において環状オレフィン系樹脂として用いられる上記共重合体としては、市販の樹脂を用いることも可能である。市販されている環状オレフィン系樹脂としては、例えば、TOPAS(登録商標)(TOPAS Advanced Polymers社製)、アペル(登録商標)(三井化学社製)、ゼオネックス(登録商標)(日本ゼオン社製)、ゼオノア(登録商標)(日本ゼオン社製)、アートン(登録商標)(JSR社製)等を挙げることができる。
【0037】
環状オレフィンとα−オレフィンとの付加共重合体として、特に好ましい例としては、〔1〕炭素数2〜20のα−オレフィンに由来する構造単位と、〔2〕下記一般式(I)で示される環状オレフィンに由来する構造単位と、を含む共重合体を挙げることができる。
【化2】
(式中、R
1〜R
12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものであり、
R
9とR
10、R
11とR
12は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、
R
9又はR
10と、R
11又はR
12とは、互いに環を形成していてもよい。
また、nは、0又は正の整数を示し、
nが2以上の場合には、R
5〜R
8は、それぞれの繰り返し単位の中で、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0038】
〔〔1〕炭素数2〜20のα−オレフィン〕
炭素数2〜20のα−オレフィンは、特に限定されるものではない。例えば、特開2007−302722と同様のものを挙げることができる。また、これらのα−オレフィンは、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中では、エチレンの単独使用が最も好ましい。
【0039】
〔〔2〕一般式(I)で示される環状オレフィン〕
一般式(I)で示される環状オレフィンについて説明する。一般式(I)におけるR
1〜R
12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものである。一般式(I)で示される環状オレフィンの具体例としては、特開2007−302722と同様のものを挙げることができる。
【0040】
これらの環状オレフィンは、1種単独でも、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中では、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(慣用名:ノルボルネン)を単独使用することが好ましい。
【0041】
〔1〕炭素数2〜20のα−オレフィンと〔2〕一般式(I)で表される環状オレフィンとの重合方法及び得られた重合体の水素添加方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法に従って行うことができる。
【0042】
また、用いられる重合触媒についても特に限定されるものではなく、チーグラー・ナッタ系、メタセシス系、メタロセン系触媒等の従来周知の触媒を用いて周知の方法により環状オレフィン系樹脂を得ることができる。
【0043】
環状オレフィン系樹脂の含有量の下限は、成形品の離型性や表面外観等が損なわれるのを抑制するという観点から、樹脂組成物に対して、好ましくは70質量%以上、より好ましくは85質量%以上である。
【0044】
環状オレフィン系樹脂の含有量の上限は、所望の帯電防止性能を成形品に付与できる充分量のブロック共重合体を配合するという観点から、樹脂組成物に対して、好ましくは95質量%以下、より好ましくは92質量%以下である。
【0045】
(その他の成分)
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、任意の成分を配合できる。このような成分としては、エラストマー、酸化防止剤、耐光安定剤等が挙げられる。エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー等が挙げられる。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、燐系安定剤、硫黄系安定剤等が挙げられる。耐候安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアソール系紫外線吸収剤、縮合リン酸エステル等が挙げられる。これらの成分の種類や配合量は、得ようとする効果に応じて適宜設定できる。
【0046】
(樹脂組成物の製造方法)
本発明の樹脂組成物の製造方法は、環状オレフィン系樹脂と、本発明のブロック共重合体と、適宜その他の成分を混合できれば特に限定されない。例えば、一軸押出機又は二軸押出機を用いた方法、本発明の樹脂組成物を構成する各成分をペレット化し、各ペレットを混合する方法等が挙げられる。
【0047】
<成形品>
本発明の成形品は、本発明の樹脂組成物を任意の方法で成形することで得ることができる。成形方法としては射出成形、任意形状のダイによる押出成形、インフレーション成形等の方法が挙げられる。本発明の成形品は本発明の樹脂組成物からなるが、本発明の成形品に対して任意の加工(コーティング等)を行ってもよい。
【0048】
本発明の成形品としては、医療用容器、集積回路若しくは医療器具等のための搬送容器、包装フィルム、又は、OA機器や家電の構造部材等が挙げられる。
【0049】
環状オレフィン系樹脂は、その性質上、オリゴマーや金属イオン等の含有量や溶出が少ない。そのため、環状オレフィン系樹脂は安全性が高い樹脂であることから、従来より医療用容器の材料として使用されている。本発明の樹脂組成物によれば、帯電性が低い成形品が得られるので、環状オレフィン系樹脂が有する安全性を活かしつつ、異物(埃、ゴミ等)の付着が抑制された医療用容器を得ることができる。したがって、本発明の成形品の好ましい態様として、医療用容器、医療器具のための搬送容器、医療用包装フィルムが挙げられる。
【0050】
本発明の成形品の帯電性の程度は、成形品の表面における、IEC60093に基づいて測定した表面固有抵抗値によって判断できる。表面固有抵抗値が低いほど、成形品の帯電性が抑制されていることを意味する。例えば、本発明の成形品は、IEC60093に基づいて測定した表面固有抵抗値が好ましくは1.0×10
14Ω以下、より好ましくは1.0×10
13Ω以下である。本発明の成形品の表面固有抵抗値の下限値は低いほど好ましいが、1.0×10
12Ω以上であってもよい。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
<成形品の作製>
表1及び2に記載された材料からなる樹脂組成物を用いて、成形品を作製した。具体的には、以下の[樹脂組成物の作製方法]の項に示した方法によって表1及び2に記載された材料からなる樹脂組成物を得た。次いで、各樹脂組成物を射出成形し、以下に示す成形条件で成形品を得た。なお、表中、「樹脂組成物の作製方法」の欄に記載された数字は、下記[樹脂組成物の作製方法]の方法1又は2のいずれかによって樹脂組成物を得たことを示す。例えば、「1」は方法1によって樹脂組成物を得たことを意味する。なお、比較例1、3及び5については、環状オレフィン系樹脂をそのまま、[成形品の作製方法]の項に示した方法に供した。
【0053】
なお、表中、「COC」、「帯電防止剤」の項の数値の単位は「質量%」である。
【0054】
[材料]
表に示した材料の詳細は以下のとおりである。
【0055】
(環状オレフィン系樹脂(COC))
6013S−04:商品名「TOPAS6013S−04」、TOPAS Advanced Polymers社製
6017S−04:商品名「TOPAS6017S−04」、TOPAS Advanced Polymers社製
6017S−04+エラストマー:6017S−04(80質量%)と、スチレン系エラストマー(20質量%、商品名「G1651」、クレイトンポリマー社製)と、を配合し、下記[樹脂組成物の作製方法]の(方法1)に示す条件を用いて、二軸押出機で溶融混錬しペレット化したものである。
【0056】
(帯電防止剤)
ペレスタットNC7530(本発明のブロック共重合体に相当する):ビスフェノールAをモノマーとして含むポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体、商品名「ペレスタットNC7530」、三洋化成工業株式会社製、ポリエーテルブロックを構成するモノマー量=ポリアミドブロックを構成するモノマー量に対してモル比で2.4倍
ペレクトロンAS(本発明のブロック共重合体に相当する):ビスフェノールAをモノマーとして含むポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体、商品名「ペレクトロンAS」、三洋化成工業株式会社製、ポリエーテルブロックを構成するモノマー量=ポリアミドブロックを構成するモノマー量に対してモル比で5.6倍
ペレクトロンLIP(本発明のブロック共重合体に相当する):ビスフェノールAをモノマーとして含むポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体、商品名「ペレクトロンLIP」、三洋化成工業株式会社製、ポリエーテルブロックを構成するモノマー量=ポリアミドブロックを構成するモノマー量に対してモル比で7.0倍
ペレクトロンPVL(本発明のブロック共重合体に相当する):ポリオレフィン(ポリプロピレン)−ポリエーテルブロック共重合体、商品名「ペレクトロンPVL」、三洋化成工業株式会社製
エレコンPAS205(本発明のブロック共重合体に相当する):ビスフェノールAをモノマーとして含まないポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体、商品名「エレコンPAS205」、大日精化株式会社製、ポリエーテルを構成するモノマー量=ポリアミドを構成するモノマー量に対してモル比で1.3倍
エレクトマスターLL−10:アルキルジエタノールアミンをポリエチレンに配合したマスターバッチ、商品名「エレクトマスターLL−10」、花王株式会社製
リケマスターLSR−375:アルキルジエタノールアミンをポリエチレンに配合したマスターバッチ、商品名「リケマスターLSR−375」、理研ビタミン株式会社製
ビオミセルBN−105:以下の化学式で表される化合物、商品名「ビオミセルBN−105」、株式会社ボロン研究所製
【化3】
【0057】
[樹脂組成物の作製方法]
(方法1)
各材料を二軸溶融押出機(商品名「TEX30」、東芝機械社製)に投入し、下記条件に基づき、各材料を混練し、樹脂組成物をペレットとして得た。
条件1:シリンダー温度
6013S−04を使用した場合=260℃
6017S−04を使用した場合=300℃
条件2:スクリュー回転数=200rpm
条件3:押出レート=15kg/hour
(方法2)
ペレット状の各材料を表に示した割合でポリエチレン袋に投入し、手作業で混合し、樹脂組成物をペレット混合物として得た。
【0058】
[成形品の作製方法]
各樹脂組成物を、射出成形機(商品名「ROBOSHOT S−2000i−100BH」、ファナック社製)を用いて、表面固有抵抗値を測定するための80mm角2mm厚の平板を下記の条件で射出成形した。
(成形条件)
条件1:シリンダー温度
6013S−04を使用した場合=280℃
6017S−04を使用した場合=300℃
条件2:金型温度=120℃
条件3:射出速度=60mm/sec
条件4:保圧力=70MPa、25sec
条件5:冷却時間=20sec
条件6:スクリュー回転=200rpm
条件7:背圧=15MPa
【0059】
<成形品の表面固有抵抗値の測定>
超高抵抗計(商品名「R8340」、アドバンテスト社製)を用いて、IEC60093に準拠した方法で、各成形品の表面固有抵抗値を測定した。その結果を、表中の「表面固有抵抗値」の項に示す。なお、表面固有抵抗値は、「a×10
b」(Ω)という形式で表し、表には「a」及び「b」に入る値を記載した。例えば、実施例1の成形品表面の表面固有抵抗値は、a=2、かつ、b=13であるので、「2×10
13」(Ω)である。
【0060】
<成形品の外観評価>
上述の表面固有抵抗値の測定に用いた80mm角2mm厚の成形品を成形する際に、目視で外観に問題がなかった場合を「1」、成形品表面に剥離がみられた場合を「2」、成形品が熱劣化により茶色く変色した場合を「3」で示した。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
表1及び2から理解されるとおり、実施例の成形品は、いずれも表面固有抵抗値が低い傾向にあり、帯電性が抑制されていることが推察された。特に、本発明のブロック共重合体(帯電防止剤)の配合量を高めるにつれて、成形品の表面固有抵抗値が低くなる傾向にあった。
【0064】
実施例19〜21(ビスフェノールAをモノマーとして含まないブロック共重合体を使用)と、その他の実施例(ビスフェノールAをモノマーとして含むブロック共重合体を使用)との比較から理解されるとおり、ビスフェノールAをモノマーとして含むブロック共重合体を使用すると、表面固有抵抗値が低いだけでなく、外観が良好な成形品が得られやすいことがわかった。
【0065】
他方、表2から理解されるとおり、本発明のブロック共重合体を含まない比較例の成形品は、帯電防止剤として知られる成分を含んでいるものの、いずれも表面固有抵抗値が高い傾向にあり、帯電性が充分に抑制されていなかった。
【0066】
以上のことから、本発明の共重合体は、環状オレフィン系樹脂を含む樹脂組成物において、特に好ましく帯電性を抑制できることが見出された。