(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-14613(P2019-14613A)
(43)【公開日】2019年1月31日
(54)【発明の名称】シリコチタネート成形体及びその製造方法、シリコチタネート成形体を含むセシウム又はストロンチウムの吸着剤、及び当該吸着剤を用いる放射性廃液の除染方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/462 20060101AFI20190104BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20190104BHJP
G21F 9/12 20060101ALI20190104BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20190104BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20190104BHJP
C01B 33/20 20060101ALI20190104BHJP
B28B 3/20 20060101ALI20190104BHJP
C04B 35/499 20060101ALI20190104BHJP
【FI】
C04B35/462
B01J20/10 C
G21F9/12 501J
G21F9/12 501D
B01J20/28 Z
B01J20/30
C01B33/20
B28B3/20 K
C04B35/499
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-131809(P2017-131809)
(22)【出願日】2017年7月5日
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000230593
【氏名又は名称】日本化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 貴志
(72)【発明者】
【氏名】小松 誠
(72)【発明者】
【氏名】出水 丈志
(72)【発明者】
【氏名】宮部 慎介
(72)【発明者】
【氏名】坂本 剛
(72)【発明者】
【氏名】野口 英治
(72)【発明者】
【氏名】杉原 かおり
【テーマコード(参考)】
4G054
4G066
4G073
【Fターム(参考)】
4G054AA06
4G054AC00
4G054BD00
4G066AA12B
4G066AA13B
4G066AA20B
4G066AA22B
4G066AA23B
4G066AA24D
4G066AA27B
4G066BA01
4G066BA20
4G066BA31
4G066BA35
4G066BA36
4G066CA12
4G066CA45
4G066DA08
4G066FA03
4G066FA21
4G066FA27
4G066FA37
4G066FA38
4G073BA04
4G073BA05
4G073BA20
4G073BA25
4G073BA57
4G073BA63
4G073BD01
4G073BD02
4G073BD26
4G073CD04
4G073FA09
4G073FA12
4G073FA20
4G073FB36
4G073FB50
4G073FC03
4G073FC06
4G073FC24
4G073FC25
4G073FC26
4G073FC27
4G073FC30
4G073FD01
4G073FD02
4G073FD15
4G073FD17
4G073FD18
4G073FD21
4G073FD25
4G073FD27
4G073GA01
4G073GA03
4G073GA11
4G073GA19
4G073GA26
4G073UA06
4G073UB48
(57)【要約】
【課題】強度が大きく、微粉の発生が少ないシリコチタネート成形体及びその製造方法、並びに当該シリコチタネート成形体を使用したセシウム又はストロンチウムの除染処理方法を提供する。
【解決手段】体積基準で90%以上の粒子が粒径1μm〜10μmの範囲に存在する粒度分布を有する、一般式:A
2Ti
2O
3(SiO
4)・nH
2O(式中、Aは、Na及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属元素を示す。nは0〜2の数を示す。)で表される結晶性シリコチタネート粒子と、アルミニウム、ジルコニウム、鉄、及びセリウムからなる群より選ばれる1種以上の元素の酸化物と、を含有することを特徴とする、シリコチタネート成形体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積基準で90%以上の粒子が粒径1μm〜10μmの範囲に存在する粒度分布を有する、一般式:A2Ti2O3(SiO4)・nH2O(式中、Aは、Na及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属元素を示す。nは0〜2の数を示す。)で表される結晶性シリコチタネート粒子と、
アルミニウム、ジルコニウム、鉄、及びセリウムからなる群より選ばれる1種以上の元素の酸化物と、を含有することを特徴とする、シリコチタネート成形体。
【請求項2】
さらにニオブを含有する、請求項1に記載のシリコチタネート成形体。
【請求項3】
押し潰し圧縮強度が5.0N以上である、請求項1又は2に記載のシリコチタネート成形体。
【請求項4】
前記アルミニウム、ジルコニウム、鉄、及びセリウムの群から選ばれる一つ以上の酸化物の含有量が20wt%以下である、請求項1〜3のいずれか1に記載のシリコチタネート成形体。
【請求項5】
成形体は、平均径が300μm〜3,000μmの範囲である円柱状を有する、請求項1〜4のいずれか1に記載のシリコチタネート成形体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のシリコチタネート成形体を含む、セシウム又はストロンチウム用吸着剤。
【請求項7】
。
請求項6に記載のセシウム又はストロンチウム用吸着剤を、放射性セシウム又は放射性ストロンチウムを含む廃液と接触させることを特徴とする放射性廃液の除染方法。
【請求項8】
前記放射性廃液の除染方法は、線流速LV2〜40m/h、空間速度SV10〜300h−1で放射性廃液を前記吸着剤とカラム流通方式で接触させることを含む、請求項7に記載の放射性廃液の除染方法。
【請求項9】
体積基準で90%以上の粒子の粒径が1μm〜10μmの範囲に存在する粒度分布を有する、一般式:A2Ti2O3(SiO4)・nH2O(式中、Aは、Na及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属元素を示す。nは0〜2の数を示す。)で表される結晶性シリコチタネートと、アルミニウム、ジルコニウム、鉄、及びセリウムからなる群より選ばれる1種以上の元素の酸化物と、を含む混合物を押出成形し、次いで、乾燥させることを含む、請求項1〜5のいずれか1に記載のシリコチタネート成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコチタネート成形体に関し、特に、原子力発電プラント内で発生する海水などの夾雑イオンを含む廃液中に含まれている放射性セシウム又は放射性ストロンチウムを除去する吸着剤として用いることができるシリコチタネート成形体及び当その製造方法並びに当該シリコチタネート成形体を含む吸着剤及び当該吸着剤を用いる除染方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2011年3月11日の東日本大震災により福島第一原子力発電所で発生した事故により、放射性核種を含む放射性廃液が大量に発生している。この放射性廃液には、原子炉圧力容器や格納容器、使用済み燃料プールに注水される冷却水に起因して発生する汚染水や、トレンチ内に滞留しているトレンチ水、原子炉建屋周辺のサブドレンと呼ばれる井戸より汲み上げられるサブドレン水、地下水、海水などがある(以下「放射性廃液」と称す。)。これらの放射性廃液は、サリー(SARRY, Simplified Active Water Retrieve and Recovery
System(単純型汚染水処理システム)セシウム除去装置)やアルプス(ALPS, 多核種除去装置)などと呼ばれる処理設備にて放射性物質が除去され、処理された水はタンクに回収されている。
【0003】
放射性セシウムを選択的に吸着除去することができる物質として、紺青等のフェロシアン化合物や、ゼオライトの一種であるモルデナイト、アルミノケイ酸塩、チタンケイ酸塩(CST)などがある。たとえばサリーでは、放射性セシウムを除去するために、アルミノケイ酸塩であるUOP社製のIE96とCSTであるUOP社製のIE911が使用されている。放射性ストロンチウムを選択的に吸着除去することができる物質として、天然ゼオライトや合成A型及びX型ゼオライト、チタン酸塩、CSTなどがある。たとえばアルプスでは、放射性ストロンチウムを除去するためにチタン酸塩である吸着剤が使用されている。
【0004】
日本原子力学会バックエンド部会にて公開されている「福島第一原子力発電所内汚染水処理技術のための基礎データ」(非特許文献1)では、粉状のCSTであるUOP社製IE910、及び成形されたCSTであるUOP社製IE911のセシウム及びストロンチウムの吸着性能について、粉状のCSTは放射性セシウム及びストロンチウムの吸着能があり、成形されたCSTはセシウム吸着性能が高いがストロンチウム吸着性能は低いことが報告されている。
【0005】
また、チタンケイ酸塩化合物に0.5モル/L以上2.0モル/Lの範囲内の水酸化ナトリウム濃度を有する水酸化ナトリウム水溶液を接触させて表面処理することにより得られる改質CSTが、セシウムの除去効率99%以上及びストロンチウムの除去効率95%以上を達成すること(特許文献1)が報告されている。
【0006】
粉状のCSTは、凝集沈殿により処理する方法などでは使用することができるが、サリーやアルプスで採用されている、吸着剤をカラムに充填して被処理水を通水する方法には適していない。
【0007】
成形したCSTのストロンチウム吸着性能を向上させるため、特許文献1や非特許文献2に示される処理や操作が検討されているが、大量の薬品が必要となりコストアップにつながる問題があった。
【0008】
このため煩雑な処理や操作をすることなく、セシウム及びストロンチウムの両方の吸着性能が高く、吸着カラムによる通水処理に適する成形されたCSTを使用した放射性廃液処理方法が望まれている。一方で、CSTは熱に弱く、強熱すると組成変化を起こし、セシウム及びストロンチウムの吸着能が低下する。ゼオライト成形体では粘土鉱物などのバインダーを使用し、500〜800℃にて焼成し、成形体の強度を向上させているが、CSTは前述の通り強熱することで吸着能が低下するため、焼成することができない。このため、CSTを強熱せずに成形することが必要であった。
【0009】
また、ナトリウムイオンは、放射性セシウムとCSTとのイオン交換反応を抑制する傾向があることが報告されており(非特許文献2)、濃度が高い海水中からの放射性セシウム及び放射性ストロンチウムの除去性能が低下するという問題がある。
【0010】
本発明者らは、ナトリウムイオンを含む海水からのセシウム及びストロンチウムの吸着性能を高めることを目的として、一般式;Na
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O、(Na
xK
(1−x))
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O及びK
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O(これらの式中、xは0超1未満の数を示し、nは0〜8の数を示す。)で表される結晶性シリコチタネートから選ばれる少なくとも一種と、一般式;Na
4Ti
9O
20・mH
2O、(Na
yK
(1−y))
4Ti
9O
20・mH
2O及びK
4Ti
9O
20・mH
2O(これらの式中、yは0超1未満の数を示し、mは0〜10の数を示す。)で表されるチタン酸塩から選ばれる少なくとも一種を含む、セシウム又はストロンチウムの吸着剤及びその製造方法を提案した(特許文献2)。得られた吸着剤は、セシウム又はストロンチウムの吸着能は高いものの、成形体とした場合の強度が弱く、脆いため、湿潤状態では微粉が多く発生し、使用前に大量の水で洗浄する必要があった。また、吸着剤として使用する際にも、摩擦や通水圧力など外的な荷重により粉砕する懸念があった。
【0011】
無機結合剤としてシリカ、アルミナ、ジルコニア及び酸化タングステンの群から選ばれる一つ以上の酸化物と、シチナカイト構造を有するシリコチタネートを含む粉末を乾燥させた後に成形して得られる、海水、地下水中のセシウム、ストロンチウムの吸着除去処理に有用なシリコチタネート成形体が提案されている(特許文献3)。しかし、この方法で得られる成形体は、比較例として後述するように微粉が多く発生する、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許5285183号公報
【特許文献2】特許5696244号公報
【特許文献3】特開2016-102053号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】「福島第一原子力発電所内汚染水処理技術のための基礎データ」http://www.nuce-aesj.org/projects:clwt:start
【非特許文献2】JAEA−Research 2011−037
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、強度が大きく、微粉の発生が少ないシリコチタネート成形体及びその製造方法、並びに当該シリコチタネート成形体を使用したセシウム又はストロンチウムの除染処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、強度が大きく、微粉の発生が少ないシリコチタネート成形体、及びそれを使用したセシウム又はストロンチウムの除染処理方法が提供される。具体的態様は以下のとおりである。
[1]体積基準で90%以上の粒子が粒径1μm〜10μmの範囲に存在する粒度分布を有する、一般式:A
2Ti
2O
3(SiO
4)・nH
2O(式中、Aは、Na及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属元素を示す。nは0〜2の数を示す。)で表される結晶性シリコチタネート粒子と、
アルミニウム、ジルコニウム、鉄、及びセリウムからなる群より選ばれる1種以上の元素の酸化物と、を含有することを特徴とする、シリコチタネート成形体。
[2]さらにニオブを含有する、[1]に記載のシリコチタネート成形体。
[3]押し潰し圧縮強度が5.0N以上である、[1]又は[2]に記載のシリコチタネート成形体。
[4]前記アルミニウム、ジルコニウム、鉄、及びセリウムの群から選ばれる一つ以上の酸化物の含有量が20wt%以下である、[1]〜[3]のいずれか1に記載のシリコチタネート成形体。
[5]成形体は、平均径が300μm〜3,000μmの範囲である円柱状を有する、[1]〜[4]のいずれか1に記載のシリコチタネート成形体。
[6]前記[1]〜[5]のいずれか1に記載のシリコチタネート成形体を含む、セシウム又はストロンチウム用吸着剤。
[7]前記[6]に記載のセシウム又はストロンチウム用吸着剤を、放射性セシウム又は放射性ストロンチウムを含む廃液と接触させることを特徴とする放射性廃液の除染方法。[8]前記放射性廃液の除染方法は、線流速LV2〜40m/h、空間速度SV10〜300h
−1で放射性廃液を前記吸着剤とカラム流通方式で接触させることを含む、[7]に記載の放射性廃液の除染方法。
[9]体積基準で90%以上の粒子の粒径が1μm〜10μmの範囲に存在する粒度分布を有する、一般式:A
2Ti
2O
3(SiO
4)・nH
2O(式中、Aは、Na及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属元素を示す。nは0〜2の数を示す。)で表される結晶性シリコチタネートと、アルミニウム、ジルコニウム、鉄、及びセリウムからなる群より選ばれる1種以上の元素の酸化物とを含む混合物を押出成形し、次いで、乾燥させることを含む、[1]〜[5]のいずれか1に記載のシリコチタネート成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、強度が大きく、微粉の発生が少ないシリコチタネート成形体が提供される。本発明のシリコチタネート成形体は、押し潰圧縮強度が高く、微粉発生量が少ないため、カラム充填用の吸着剤として有用である。本発明のシリコチタネート成形体は、特にセシウム又はストロンチウムの吸着能に優れるため、放射性セシウム又はストロンチウムを含む放射性廃液の除染処理、特にカラムを用いる除染処理に適する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1〜8及び比較例1〜4で用いた結晶性シリコチタネートのX線回折チャート
【
図2】比較例5及び6で用いた結晶性シリコチタネートのX線回折チャート
【
図3】実施例1の含水ケーキ中シリコチタネートの粒度分布、及びび比較例3の押出成形前の乾燥させた粉末の粒度分布を対比して示すグラフ
【
図4】実施例9における本発明の吸着剤のセシウムの除去性能を示すグラフ
【
図5】実施例9における本発明の吸着剤のストロンチウムの除去性能を示すグラフ
【
図6】実施例10における本発明の吸着剤のセシウムの除去性能を示すグラフ
【
図7】実施例10における本発明の吸着剤のストロンチウムの除去性能を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、体積基準で90%以上の粒子が粒径1μm〜10μmの範囲に存在する粒度分布を有する、一般式:A
2Ti
2O
3(SiO
4)・nH
2O(式中、Aは、Na及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属元素を示す。nは0〜2の数を示す。)で表される結晶性シリコチタネート粒子と、アルミニウム、ジルコニウム、鉄、及びセリウムからなる群より選ばれる1種以上の元素の酸化物と、を含有することを特徴とする、シリコチタネート成形体を提供する。
【0019】
本発明における「結晶性シリコチタネート」とは、Cu−Kα線源によるX線回折分析において、2θ=10°〜13°の範囲にメーンピークが検出されることを意味し、2θ=14°〜16°、25°〜28°、26°〜29°、33°〜36°のいずれか1以上の範囲にもピークが検出されることが好ましい。
【0020】
本発明のシリコチタネート成形体中の前記結晶性シリコチタネートの含有量は80wt%以上であることが好ましく、85wt%〜99.9wt%であることがより好ましく、90wt%〜99.9wt%であることが特に好ましい。
【0021】
本発明のシリコチタネート成形体は、押出成形前の結晶性シリコチタネートが、体積基準で90%以上の粒子が粒径1μm〜10μmの範囲、好ましくは95%以上の粒子が1μm〜10μmの範囲、又は体積基準で90%以上の粒子の粒径が2μm〜10μmの範囲、好ましくは95%以上の粒子が2μm〜10μmの範囲に存在する非常にシャープな粒度分布を有するため、緻密な成形体を得ることができ、成形体からの粒子の脱離が減少する。
【0022】
本発明のシリコチタネート成形体は、さらにニオブを含有することが好ましい。ニオブ(Nb)は基本的に、結晶性シリコチタネートのチタン(Ti)と一部置換した形態で含まれていることが好ましい。
【0023】
アルミニウム、ジルコニウム、鉄、及びセリウムからなる群より選ばれる1種以上の酸化物は、シリコチタネート成形体の20wt%以下の量で含まれていることが好ましく、0.1wt%〜10wt%で含まれていることがより好ましい。本発明のシリコチタネート成形体に含まれるアルミニウム、ジルコニウム、鉄、及びセリウムからなる群より選ばれる1種以上の元素の酸化物は、Cu−Kα線源によるX線回折分析において各酸化物の特性ピークの検出により確認することができる。
【0024】
ニオブをさらに含む場合には、ニオブはNb
2O
5として結晶性シリコチタネートの2wt%以上、好ましくは5〜20wt%、特に10〜20wt%で含まれていることがより好ましい。
【0025】
本発明のシリコチタネート成形体は、5.0N以上、好ましくは8.0N以上、より好ましくは10N以上、25N以下、好ましくは20N以下、より好ましくは15N以下の押し潰し圧縮強度を有することが好ましい。上記範囲内であれば、カラムに充填する際及びカラム通水処理の際の液圧に潰されることがなく、大量の液体を処理する通水処理用の吸着剤として特に好適に用いることができる。
【0026】
本発明のシリコチタネート成形体は、平均径が300μm〜3000μmの範囲である円柱状を有することが好ましく、平均径が400μm〜2000μmの範囲であることがより好ましく、平均径が500μm〜1000μmの範囲であることが特に好ましい。上記範囲内であれば、吸着性能と通水差圧とのバランスが良好であり、カラムに充填する際
の充填圧及び充填密度の好適な範囲を実現することができる。また、シリコチタネート成形体の製造が容易である。
【0027】
本発明によれば、上記シリコチタネート成形体を含む、セシウム又はストロンチウム用吸着剤も提供される。本発明の吸着剤は、イオン交換樹脂、イオン交換繊維、キレート樹脂、キレート繊維、アルギン酸カルシウム、キトサン、酸化鉄、水酸化鉄、活性炭、銀ゼオライト、銀化合物、ハイドロタルサイト、ジオポリマー、ケイ酸塩、酸化チタン、シリカゲル、非晶質アルミニウムケイ酸塩、ゼオライト、チタン酸塩、非晶質シリコチタネート、酸化マンガン、マンガン酸塩、ケイ酸塩、フェロシアン化物、ヒドロキシアパタイト、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化セリウム、水酸化セリウム、酸化ジルコニウム、及び水酸化ジルコニウムなどから選択される1種以上の他の成分を含有していてもよい。
【0028】
本発明によれば、上記セシウム又はストロンチウム用吸着剤を、放射性セシウム又は放射性ストロンチウムを含む放射性廃液と接触させることを特徴とする放射性廃液の除染方法も提供される。本発明による放射性廃液の除染方法は、線流速LV2〜40m/h、好ましくはLV5〜30m/h、より好ましくはLV10〜20m/h、空間速度SV10〜300h
−1、好ましくはSV15〜200h
−1、より好ましくはSV20〜50h
−1で放射性廃液を前記吸着剤とカラム流通方式で接触させることを含む、放射性廃液の除染方法も提供される。本発明の吸着剤は、セシウム及びストロンチウムに対する高い吸着能に加え、高い圧縮強度を有するため、高い線流速及び空間速度による大量の放射性廃液を処理しても直ぐに破瓜することがなく、長期にわたり安定した除染処理を行うことができる。
【0029】
さらに本発明によれば、体積基準で90%以上の粒子の粒径が1μm〜10μmの範囲、好ましくは95%以上の粒子が1μm〜10μmの範囲、又は体積基準で90%以上の粒子の粒径が2μm〜10μmの範囲、好ましくは95%以上の粒子が2μm〜10μmの範囲に存在する粒度分布を有する、一般式:A
2Ti
2O
3(SiO
4)・nH
2O(式中、Aは、Na及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属元素を示す。nは0〜2の数を示す。)で表される結晶性シリコチタネート粒子と、アルミニウム、ジルコニウム、鉄、及びセリウムからなる群より選ばれる1種以上の元素の酸化物と、を含む混合物を押出成形し、次いで乾燥させることを含む、シリコチタネート成形体の製造方法も提供される。結晶性シリコチタネートの調製方法は特に限定されないが、ケイ酸源、アルカリ金属化合物、ニオブ源、四塩化チタン及び水を混合してニオブ含有混合ゲルを得て、当該ニオブ含有混合ゲルを120℃以上200℃以下、好ましくは140℃以上200℃以下、6時間以上100時間以下、好ましくは12時間以上80時間以下、オートクレープ中加圧条件で水熱反応させることにより得ることが好ましい。水熱反応前に、ニオブ含有混合ゲルを0.5時間以上2時間以下、大気圧下で20℃以上100℃以下、好ましくは20℃以上70℃以下で熟成させることがより好ましい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に具体的に説明する。
[シリコチタネート成形体の調製]
(1)第一工程
3号ケイ酸ソーダ115g、苛性ソーダ水溶液670.9g、及びイオン交換水359.1gを混合し撹拌して混合水溶液を得た。この混合水溶液に、水酸化ニオブ25.5g(Nb
2O
5:76.5質量%)を加えて撹拌混合した後、四塩化チタン水溶液412.3gをぺリスタポンプで0.5時間にわたり連続的に添加してニオブ含有混合ゲルを製造した。当該ゲルは、四塩化チタン水溶液の添加後、1時間にわたり室温(25℃)で静置熟成した。
【0031】
(2)第二工程
第一工程で得られたニオブ含有混合ゲルをオートクレーブに入れ、1時間かけて160℃に昇温したのち、この温度を維持しながら撹拌下に18時間反応を行った。そして、反応後のスラリーをろ過した。ろ過残渣を乾燥させてX線回折分析して、一般式:A
2Ti
2O
3(SiO
4)・nH
2O(式中、Aは、Na及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属元素を示す。nは0〜2の数を示す。)で表される結晶性シリコチタネートであることを確認した(
図1)。
【0032】
[実施例1]
上述の第二工程で得られたろ過後であるが乾燥前の一般式:A
2Ti
2O
3(SiO
4)・nH
2O(式中、Aは、Na及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属元素を示す。nは0〜2の数を示す。)で表される結晶性シリコチタネートを含む含水ケーキ(以下の実施例2〜8及び比較例1〜4において単に「ろ過後の含水ケーキ」という。)に、結晶性シリコチタネートに対して1.0wt%の酸化アルミニウムを含有させ、直径0.8mmの円柱状に押出成形し、次いで乾燥させ、425〜840μmの範囲に分級したシリコチタネート成形体を調製し、押し潰し圧縮強度及び微粉発生量を測定した。また、含水ケーキ中のシリコチタネート粒子の粒度分布を
図3に示す。
【0033】
[実施例2]
上述の第二工程で得られたろ過後の含水ケーキに、結晶性シリコチタネートに対して1.0wt%の酸化アルミニウムを含有させ、直径0.6mmの円柱状に押出成形し、次いで乾燥させ、300〜710μmの範囲に分級したシリコチタネート成形体を調製し、押し潰し圧縮強度及び微粉発生量を測定した。
【0034】
[実施例3]
上述の第二工程で得られたろ過後の含水ケーキに、結晶性シリコチタネートに対して1.0wt%の酸化アルミニウムを含有させ、直径1.0mmの円柱状に押出成形し、次いで乾燥させ、500〜1000μmの範囲に分級したシリコチタネート成形体を調製し、押し潰し圧縮強度及び微粉発生量を測定した。
【0035】
[実施例4]
上述の第二工程で得られたろ過後の含水ケーキに、結晶性シリコチタネートに対して1.0wt%の酸化アルミニウムを含有させ、直径1.2mmの円柱状に押出成形し、次いで乾燥させ、840〜1400μmの範囲に分級したシリコチタネート成形体を調製し、押し潰し圧縮強度及び微粉発生量を測定した。
【0036】
[実施例5]
上述の第二工程で得られたろ過後の含水ケーキに、結晶性シリコチタネートに対して0.5wt%の酸化アルミニウム及び10.0wt%の酸化ジルコニウムを含有させ、直径0.5mmの円柱状に押出成形し、次いで乾燥させ、300〜600μmの範囲に分級したシリコチタネート成形体を調製し、押し潰し圧縮強度及び微粉発生量を測定した。
【0037】
[実施例6]
上述の第二工程で得られたろ過後の含水ケーキに、酸化アルミニウム及び成形剤(シリカゾル)を含有させ、直径1.0mmの円柱状に押出成形し、次いで乾燥させ、500〜1000μmの範囲に分級したシリコチタネート成形体を調製し、押し潰し圧縮強度及び微粉発生量を測定した。
【0038】
[実施例7]
上述の第二工程で得られたろ過後の含水ケーキに、結晶性シリコチタネートに対して1.0wt%の酸化アルミニウムを含有させ、直径0.8mmの円柱状に押出成形し、次いで乾燥したものを、さらに破砕し、425〜840μmの範囲に分級したシリコチタネート成形体を調製し、以下の各測定を実施した。
【0039】
[実施例8]
上述の第二工程で得られたろ過後の含水ケーキに、結晶性シリコチタネートに対して1.0wt%の酸化アルミニウムを含有させ、直径0.6mmの円柱状に押出成形し、次いで乾燥したものを、さらに破砕し、425〜840μmの範囲に分級したシリコチタネート成形体を調製し、押し潰し圧縮強度及び微粉発生量を測定した。
【0040】
[比較例1]
上述の第二工程で得られたろ過後の含水ケーキに酸化アルミニウムなどを添加せずにそのまま、直径0.8mmの円柱状に押出成形し、次いで乾燥させ、425〜840μmの範囲に分級したシリコチタネート成形体を調製し、押し潰し圧縮強度及び微粉発生量を測定した。
【0041】
[比較例2]
上述の第二工程で得られたろ過後の含水ケーキに酸化アルミニウムなどを添加せずにそのまま、直径0.6mmの円柱状に押出成形し、次いで乾燥させ、300〜710μmの範囲に分級したシリコチタネート成形体を調製し、押し潰し圧縮強度及び微粉発生量を測定した。
【0042】
[比較例3]
上述の第二工程で得られた含水ケーキを乾燥、粉砕し、得られた粉末と水及び成形剤(シリカゾル)を混合し、直径1.0mmの円柱状に押出成形し、乾燥させ、500〜2000μmの範囲に分級したシリコチタネート成形体を調製し、押し潰し圧縮強度及び微粉発生量を測定した。また、含水ケーキを乾燥、粉砕して得られた粉末の粒度分布を
図3に示す。
【0043】
[比較例4]
比較例3で調製したシリコチタネート成形体を、さらに破砕し、600〜1400μmの範囲に分級したシリコチタネート成形体の押し潰し圧縮強度及び微粉発生量を測定した。
【0044】
[比較例5]
(1)第一工程
ケイ酸ソーダ(日本化学工業株式会社製 SiO
2:28.96%、Na
2O:9.37%、H
2O:61.67%、SiO
2/Na
2O=3.1)60g、25%苛性ソーダ(工業用25%水酸化ナトリウム NaOH:25%、H
2O:75%)224.3g、85%苛性カリ(固体試薬 水酸化カリウム KOH:85%)34.6g及び純水82.5gを混合し撹拌して混合水溶液を得た。この混合水溶液に、四塩化チタン水溶液(株式会社大阪チタニウムテクノロジーズ社製36.48%水溶液)203.3gをペリスタポンプで0.5時間にわたって連続的に添加して混合ゲルを製造した。当該混合ゲルは、四塩化チタン水溶液の添加後、1時間にわたり室温(25℃)で静置熟成した。
【0045】
(2)第二工程
第一工程で得られた混合ゲルをオートクレーブに入れ、1時間かけ170℃まで昇温したのち、この温度を維持しながら撹拌下に96時間反応を行った。反応後のスラリーをろ過して、結晶性シリコチタネート(一般式:A
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O)を含む
含水ケーキを得た。
【0046】
この含水ケーキを、直径0.6mmの円柱状に押出成形し、300〜710μmの範囲に分級したシリコチタネート成形体を調製し、押し潰し圧縮強度及び微粉発生量を測定した。
【0047】
[比較例6]
比較例5で得られた含水ケーキを、直径0.6mmの円柱状に押出成形したものを乾燥させた後に破砕し、300〜710μmの範囲に分級したシリコチタネート成形体の押し潰し圧縮強度及び微粉発生量を測定した。
【0048】
[X線回折]
・X線回析:Bruker社 D8 AdvanceSを用いた。
線源としてCu−Kαを用いた。測定条件は、管電圧40kV、管電流40mA、走査速度0.1°/secとした。
【0049】
[粒度分布測定]
粒径分布はレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラックMT3300EXII、マイクロトラック・ベル株式会社製)を使用して体積分布を測定した。試料は前処理として水に分散した液にヘキサメタリン酸ソーダを加えた後、超音波で2分間処理したものを測定した。測定条件は粒子屈折率を1.81、溶媒屈折率を1.333とした。
【0050】
[押し潰し圧縮強度測定]
調製したシリコチタネート成形体1個を、John Chatillon & Sons Inc. 製押し潰し強度測定装置TCD200(DFGS10)にて、押し潰し圧縮強度を測定した。シリコチタネート成形体20個を同様の操作で測定し、測定された押し潰し圧縮強度の平均を算出した。
【0051】
[微粉発生量の測定]
調製したシリコチタネート成形体350mlを内径30mmのガラスカラムに50cmの層高となるように充填し、純水を0.3L/minの流量で、上向流でシリコチタネート成形体層高を展開させるように通水し、シリコチタネート成形体量の10倍量(3.5L)、20倍量(7.0L)、30倍量(10.5L)通水時のカラム出口水を採取して、濁度計にて濁度を測定し微粉発生量とした。
【0052】
[セシウム及びストロンチウム吸着量の測定]
アジレントテクノロジー社製誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)型式:Agilent 7700xを用いて、セシウム133とストロンチウム88の定量分析を行った。試料は希硝酸で1000倍希釈し0.1%硝酸マトリックスとして分析した。標準試料はストロンチウムを0.05ppb、0.5ppb、1.0ppb、5.0ppb及び10.0ppb含有した水溶液、並びにセシウムを0.005ppb、0.05ppb、0.1ppb、0.5ppb及び1.0ppb含有した水溶液を使用した。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示す実施例1〜6のとおり、一般式:A
2Ti
2O
3(SiO
4)・nH
2O(式中、Aは、Na及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属元素を示す。nは0〜2の数を示す。)で表される結晶性シリコチタネートの含水ケーキに、酸化アルミニウム及び/又は酸化ジルコニウムを含有させ、押出成形し、次いで乾燥させて得られるシリコチタネート成形体は、押し潰し圧縮強度が大きく、かつ微粉発生量が少ない。
【0055】
また、実施例7及び8に示すように、結晶性シリコチタネートの含水ケーキに、酸化アルミニウム及び/又は酸化ジルコニウムを含有させ、円柱状に押出成形し、次いで乾燥させたものをさらに破砕しても、押し潰し圧縮強度が大きく、かつ微粉発生量が少ないことがわかる。
【0056】
一方、比較例1,2のとおり、一般式:A
2Ti
2O
3(SiO
4)・nH
2O(式中、Aは、Na及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属元素を示す。nは0〜2の数を示す。)で表される結晶性シリコチタネートの含水ケーキに、酸化アルミニウム又は酸化ジルコニウムのいずれも含有させずに、押出成形し、次いで乾燥したシリコチタネート成形体は、微粉発生量は少ないが、押し潰し圧縮強度が小さい。
【0057】
また、比較例3、4のとおり、一般式:A
2Ti
2O
3(SiO
4)・nH
2O(式中、Aは、Na及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属元素を示す。nは0〜2の数を示す。)で表される結晶性シリコチタネートの含水ケーキに、酸化アルミニウム及び/又は酸化ジルコニウムのいずれも含有させずに、乾燥させた後に、粉砕し、さらに押出
成形したシリコチタネート成形体は、押し潰し圧縮強度は大きいが、微粉発生量が多いことがわかる。
【0058】
また、比較例5、6のとおり、一般式:A
4Ti
4Si
3O
16・nH
2O(式中、Aは、Na及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属元素を示す。nは0〜2の数を示す。)で表される結晶性シリコチタネートの含水ケーキに、酸化アルミニウム又は酸化ジルコニウムのいずれも含有させずに、押出成形し、次いで乾燥したシリコチタネート成形体は、押し潰し圧縮強度が小さく、微粉発生量が多い。
【0059】
[実施例9]
[模擬汚染海水の調製]
大阪薬研株式会社の人工海水製造用薬品であるマリンアートSF−1(塩化ナトリウム:22.1g/L、塩化マグネシウム六水和物:9.9g/L、塩化カルシウム二水和物:1.5g/L、無水硫酸ナトリウム:3.9g/L、塩化カリウム:0.61g/L、炭酸水素ナトリウム:0.19g/L、臭化カリウム:96mg/L、ホウ砂:78mg/L、無水塩化ストロンチウム:13mg/L、フッ化ナトリウム:3mg/L、塩化リチウム:1mg/L、ヨウ化カリウム:81μg/L、塩化マンガン四水和物:0.6μg/L、塩化コバルト六水和物:2μg/L、塩化アルミニウム六水和物:8μg/L、塩化第二鉄六水和物:5μg/L、タングステン酸ナトリウム二水和物:2μg/L、モリブデン酸アンモニウム四水和物:18μg/L)を用いて、塩分濃度が0.03wt%になるように水溶液を作成した。そこに、セシウム濃度が0.5mg/Lとなるように塩化セシウムを添加し、模擬汚染海水を調製した。
【0060】
[模擬汚染海水のカラム通水]
実施例2で調製したシリコチタネート成形体10mlを吸着剤として内径30mmのガラスカラムに1.4cmの層高となるように充填し、模擬汚染海水を流量11.5ml/min(通水線流速LV=1.6m/h、空間速度SV=70h
−1)、23.5ml/min(通水線流速LV=3.4m/h、空間速度SV=140h
−1)、47.0ml/min(通水線流速LV=6.7m/h、空間速度SV=280h
−1)にて下降流で通水し、カラム出口水を定期的に採取して、ICP−MSにてセシウム又はストロンチウム濃度を測定した。カラム出口水中セシウム又はストロンチウム濃度(C)を模擬汚染海水の初期セシウム又はストロンチウム濃度(C
0)で除した値が0.1となる時点を除染完了時とした。通水直後から除染完了時までの模擬汚染海水のセシウム又はストロンチウム濃度とカラム出口水中セシウム又はストロンチウム濃度の差分の合計を吸着剤量で除して、吸着剤1ml当たりのセシウム又はストロンチウム総吸着量(mg/ml)を算出した。
【0061】
セシウムの除去性能を
図4に、ストロンチウムの除去性能を
図5に示す。
図4及び5において、横軸は吸着剤の体積に対して何倍量の模擬汚染海水を通水したのかを示すB.V.であり、縦軸はカラム出口のセシウム又はストロンチウムの濃度(C)をカラム入口のセシウム又はストロンチウムの濃度(C
0)でそれぞれ除した値である。
【0062】
図4及び5より、本発明のシリコチタネート成形体は、模擬汚染海水のカラム通水流量がSV70h
−1以上と非常に高くても、セシウム及びストロンチウムの吸着性能に優れていることがわかる。
図4及び5より、本発明のシリコチタネート成形体は、模擬汚染海水のカラム通水流量がSV70h
−1〜280h
−1の非常に高い範囲の通水流量にもかかわらず非常に優れた吸着能を示すことがわかる。
【0063】
[実施例10]
[模擬汚染海水の調製]
大阪薬研株式会社の人工海水製造用薬品であるマリンアートSF−1(塩化ナトリウム:22.1g/L、塩化マグネシウム六水和物:9.9g/L、塩化カルシウム二水和物:1.5g/L、無水硫酸ナトリウム:3.9g/L、塩化カリウム:0.61g/L、炭酸水素ナトリウム:0.19g/L、臭化カリウム:96mg/L、ホウ砂:78mg/L、無水塩化ストロンチウム:13mg/L、フッ化ナトリウム:3mg/L、塩化リチウム:1mg/L、ヨウ化カリウム:81μg/L、塩化マンガン四水和物:0.6μg/L、塩化コバルト六水和物:2μg/L、塩化アルミニウム六水和物:8μg/L、塩化第二鉄六水和物:5μg/L、タングステン酸ナトリウム二水和物:2μg/L、モリブデン酸アンモニウム四水和物:18μg/L)を用いて、塩分濃度が0.17wt%になるように水溶液を作成した。そこに、セシウム濃度が1.0mg/Lとなるように塩化セシウムを添加し、模擬汚染海水を調製した。
【0064】
[模擬汚染海水のカラム通水]
実施例3で調製したシリコチタネート成形体200mlを吸着剤として内径16mmのガラスカラムに100cmの層高となるように充填し、模擬汚染海水を流量66.5ml/min(通水線流速LV=20m/h、空間速度SV=20h
−1)、にて下降流で通水し、カラム出口水を定期的に採取して、ICP−MSにてセシウム又はストロンチウム濃度を測定した。カラム出口水中セシウム又はストロンチウム濃度(C)を模擬汚染海水の初期セシウム又はストロンチウム濃度(C
0)で除した値が0.1となる時点を除染完了時とした。通水直後から除染完了時までの模擬汚染海水のセシウム又はストロンチウム濃度とカラム出口水中セシウム又はストロンチウム濃度の差分の合計を吸着剤量で除して、吸着剤1ml当たりのセシウム又はストロンチウム総吸着量(mg/ml)を算出した。
【0065】
セシウムの除去性能を
図6に、ストロンチウムの除去性能を
図7に示す。
図6及び7において、横軸は吸着剤の体積に対して何倍量の模擬汚染海水を通水したのかを示すB.V.であり、縦軸はカラム出口のセシウム又はストロンチウムの濃度(C)をカラム入口のセシウム又はストロンチウムの濃度(C
0)でそれぞれ除した値である。
【0066】
図6及び7より、本発明のシリコチタネート成形体は、塩分濃度が高い排水中であってもセシウム及びストロンチウムの吸着性能に優れていることがわかる。
【手続補正書】
【提出日】2017年7月7日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積基準で90%以上の粒子が粒径1μm〜10μmの範囲に存在する粒度分布を有する、一般式:A2Ti2O3(SiO4)・nH2O(式中、Aは、Na及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属元素を示す。nは0〜2の数を示す。)で表される結晶性シリコチタネート粒子と、
アルミニウム、ジルコニウム、鉄、及びセリウムからなる群より選ばれる1種以上の元素の酸化物と、を含有することを特徴とする、シリコチタネート成形体。
【請求項2】
さらにニオブを含有する、請求項1に記載のシリコチタネート成形体。
【請求項3】
押し潰し圧縮強度が5.0N以上である、請求項1又は2に記載のシリコチタネート成形体。
【請求項4】
前記アルミニウム、ジルコニウム、鉄、及びセリウムの群から選ばれる一つ以上の酸化物の含有量が20wt%以下である、請求項1〜3のいずれか1に記載のシリコチタネート成形体。
【請求項5】
成形体は、平均径が300μm〜3,000μmの範囲である円柱状を有する、請求項1〜4のいずれか1に記載のシリコチタネート成形体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のシリコチタネート成形体を含む、セシウム又はストロンチウム用吸着剤。
【請求項7】
請求項6に記載のセシウム又はストロンチウム用吸着剤を、放射性セシウム又は放射性ストロンチウムを含む廃液と接触させることを特徴とする放射性廃液の除染方法。
【請求項8】
前記放射性廃液の除染方法は、線流速LV2〜40m/h、空間速度SV10〜300h−1で放射性廃液を前記吸着剤とカラム流通方式で接触させることを含む、請求項7に記載の放射性廃液の除染方法。
【請求項9】
体積基準で90%以上の粒子の粒径が1μm〜10μmの範囲に存在する粒度分布を有する、一般式:A2Ti2O3(SiO4)・nH2O(式中、Aは、Na及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属元素を示す。nは0〜2の数を示す。)で表される結晶性シリコチタネートと、アルミニウム、ジルコニウム、鉄、及びセリウムからなる群より選ばれる1種以上の元素の酸化物と、を含む混合物を押出成形し、次いで、乾燥させることを含む、請求項1〜5のいずれか1に記載のシリコチタネート成形体の製造方法。
【手続補正書】
【提出日】2018年10月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積基準で90%以上の粒子の粒径が1μm以上10μm以下の範囲である粒度分布を有する、一般式:A2Ti2O3(SiO4)・nH2O(式中、Aは、Na及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属元素を示す。nは0〜2の数を示す。)で表される結晶性シリコチタネート粒子と、
アルミニウム、ジルコニウム、鉄、及びセリウムからなる群より選ばれる1種以上の元素の酸化物と、を含有することを特徴とする、シリコチタネート成形体。
【請求項2】
さらにニオブを含有する、請求項1に記載のシリコチタネート成形体。
【請求項3】
押し潰し圧縮強度が5.0N以上である、請求項1又は2に記載のシリコチタネート成形体。
【請求項4】
前記アルミニウム、ジルコニウム、鉄、及びセリウムの群から選ばれる一つ以上の酸化物の含有量が20wt%以下である、請求項1〜3のいずれか1に記載のシリコチタネート成形体。
【請求項5】
成形体は、平均直径が300μm以上3,000μm以下の範囲である円柱状を有する、請求項1〜4のいずれか1に記載のシリコチタネート成形体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のシリコチタネート成形体を含む、セシウム及び/又はストロンチウム用の吸着剤。
【請求項7】
請求項6に記載のセシウム及び/又はストロンチウム用の吸着剤を、放射性セシウム及び/又は放射性ストロンチウムを含む廃液と接触させることを特徴とする放射性廃液の除染
方法。
【請求項8】
前記放射性廃液の除染方法は、線流速LV2m/h以上40m/h以下、空間速度SV10h−1以上300h−1以下のカラム流通方式で、前記放射性廃液を前記吸着剤と接触させることを含む、請求項7に記載の放射性廃液の除染方法。
【請求項9】
体積基準で90%以上の粒子の粒径が1μm以上10μm以下の範囲である粒度分布を有する、一般式:A2Ti2O3(SiO4)・nH2O(式中、Aは、Na及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属元素を示す。nは0〜2の数を示す。)で表される結晶性シリコチタネートと、アルミニウム、ジルコニウム、鉄、及びセリウムからなる群より選ばれる1種以上の元素の酸化物と、を含む混合物を押出成形し、次いで、乾燥させることを含む、請求項1〜5のいずれか1に記載のシリコチタネート成形体の製造方法。