ここで、Xはエーテル基とベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、又はフェナントレン環と特定構造のリン含有基とを有し、Yはそれぞれ水素原子又はグリシジル基であり、nは25〜500である。
上記Xが、上記基(X1)を含有すると共に、リンを含有しないリン不含基(X2)を、X全体のモル数に対して、25〜75モル%の範囲で含有する請求項1又は2に記載のリン含有フェノキシ樹脂。
上記硬化性樹脂成分がエポキシ樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メラニン樹脂、イソシアネート樹脂、及びフェノール樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂である請求項6に記載の樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。 本発明のリン含有フェノキシ樹脂は、上記式(1)で表され、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定による重量平均分子量(Mw)が10,000〜200,000であり、20,000〜150,000が好ましく、25,000〜100,000がより好ましく、30,000〜80,000がさらに好ましい。Mwが低いとフィルム製膜性や伸び性が劣り、Mwが高すぎると樹脂の取り扱い性が著しく悪化する。なお、GPCの測定方法は、実施例に記載の条件に従う。
【0020】
式(1)において、Xは、2価の基であり、上記式(2)で表される基(X1)を必須成分として含有する。ここで、基(X1)は、芳香族環と酸素原子とZを含み、Zはリンを含有する基であるので、リンを含有する基である。
Xは上記酸素含有基(X1)を含有する限り、特に制限はないが、酸素含有基(X1)とともに、リンを含有しないリン不含基(X2)を有することが好ましく、リン不含基(X2)としては上記式(4a)〜(4c)等で表される基が挙げられる。また、リンを含有する基として、上記基(X1)以外のP含有基(X3)を含んでもよい。
Yはそれぞれ独立に水素原子又はグリシジル基である。
nは繰り返し数で、その平均値は25〜500であり、40〜400が好ましく、50〜350がより好ましく、70〜300がさらに好ましい。nは上記Mwに関係する。
【0021】
上記式(2)において、Aはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、又はフェナントレン環から選ばれる芳香族環基を示す。そして、これらの芳香族環基は、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜11のアラルキル基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、又は炭素数7〜11のアラルキルオキシ基のいずれかを置換基として有してもよい。例えば、炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基等が挙げられ、炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、シクロヘキシル基等が挙げられ、炭素数6〜10のアリール基又はアリールオキシ基としては、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられ、炭素数7〜11のアラルキル基又はアラルキルオキシ基としては、ベンジル基、フェネチル基、1−フェニルエチル基、ベンジルオキシ基、ナフチルメチルオキシ基等が挙げられる。好ましいAとしては、ベンゼン環、ベンゼン環のメチル基置換体、ベンゼン環の1−フェニルエチル基置換体、ナフタレン環、ナフタレン環のメチル基置換体、又はナフタレン環の1−フェニルエチル基置換体である。より溶剤溶解性が必要な用途には、ベンゼン環、ベンゼン環のメチル基置換体、ベンゼン環の1−フェニルエチル基置換体が好ましく、より難燃性や耐熱性が必要な用途には、ナフタレン環、ナフタレン環のメチル基置換体、又はナフタレン環の1−フェニルエチル基置換体が好ましい。
【0022】
上記式(2)において、Zは上記式(3)で表されるリン含有基である。
式(3)において、R
1及びR
2はヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、それぞれ異なっていても同一でも良く、直鎖状、分岐鎖状、環状であってもよい。また、R
1とR
2が結合し、環状構造部位となっていてもよい。特に、芳香族環基が好ましい。R
1及びR
2が芳香族環基の場合は置換基として、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜11のアラルキル基、炭素数6〜10のアリールオキシ基又は炭素数7〜11のアラルキルオキシ基を有してもよい。ヘテロ原子としては、酸素原子等が例示され、これは炭化水素鎖又は炭化水素環を構成する炭素間に含まれることができる。
n1及びn2は0又は1であり、同じであっても異なっていてもよい。
【0023】
式(3)で表されるリン含有基としては、上記式(3a)又は(3b)で表される基が挙げられる。
式(3a)及び式(3b)において、R
3及びR
4はそれぞれ独立に炭素数1〜11の炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基であり、メチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基が挙げられ、メチル基、フェニル基、ベンジル基が好ましい。
m1はそれぞれ独立に0〜4の整数であり、0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。m2はそれぞれ独立に0〜5の整数であり、0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。
【0024】
上記式(3)で表されるリン含有基の他の好ましい例としては、下記式(a1)〜(a10)で表されるリン含有基が挙げられる。
【0026】
上記基(X1)は、難燃性や耐熱性に優れるリン含有フェノキシ樹脂を与える。基(X1)の構造は、従来のリン含有フェノキシ樹脂におけるリン原子含有骨格の構造、例えば、後述の式(5)で表される構造に比べて、化学構造の剛直性がより高まり、分子運動の拘束をより行えることで耐熱性がより高められ、そしてより嵩高く、疎水性で剛直であるため、耐熱性を高めつつ吸水性を低下できると推定される。一方、その他の特性の向上にはリン含有基以外の構造を導入することが望ましいが、基(X1)は少量であっても所望の効果を奏するため、他の構造をより多く導入することができ、他の特性の付与が容易である。
式(1)において、Xの少なくとも一部は基(X1)である。基(X1)は全Xに対して、1〜100モル%であり、2〜75モル%が好ましく、5〜50モル%がより好ましく、10〜40モル%がさらに好ましく、15〜35モル%が特に好ましい。そして、1分子中に平均として1個以上の基(X1)を有する。
【0027】
上記基(X1)の好ましい構造としては、下記式(2a)〜(2f)で表される構造が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に下記式(2a’)〜(2f’)で表される構造が好ましい。
【0030】
また、Xには、基(X1)以外の他のリン原子を含有するP含有基(X3)を含有できる。P含有基(X3)としては、上記Zを一つ有する下記式(5)で表される2価の基が好ましく挙げられる。
【0031】
【化9】
上記式(5)中、A及びZは、上記式(2)のA及びZとそれぞれ同義である。
【0032】
また、式(1)のXには、リン原子を含有しないリン不含基(X2)を含有してもよく、このリン不含基(X2)としては、上記式(4a)〜(4c)で表される2価の基が好ましく挙げられる。
【0033】
式(4a)において、R
5は、直接結合又は炭素数1〜20の炭化水素基、−CO−、−O−、−S−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−から選ばれる2価の基である。上記炭化水素基としては、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C
2H
4−、−C(CH
3)
2−、シクロヘキシレン基、シクロドデシレン基、シクロペンチリデン基、メチルシクロペンチリデン基、トリメチルシクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、メチルシクロヘキシリデン基、トリメチルシクロヘキシリデン基、テトラメチルシクロヘキシリデン基、シクロオクチリデン基、シクロドデシリデン基、ビシクロ[4.4.0]デシリデン基、ビシクロヘキシリデン基、フェニレン基、キシリレン基、フェニルメチレン基、ジフェニルメチレン基、9H−フルオレン−9−イリデン基や、ノルボルニレン基、アダマンチレン基、テトラヒドロジシクロペンタジエニレン基、テトラヒドロトリシクロペンタジエニレン基、ノルボルナン構造、テトラヒドロジシクロペンタジエン構造、テトラヒドロトリシクロペンタジエン構造を有する2価の基が挙げられる。これらの内、直接結合、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−CO−、−O−、−S−、−SO
2−、シクロヘキシリデン基、トリメチルシクロヘキシリデン基、シクロオクチリデン基、シクロドデシリデン基、ビシクロヘキシリデン基、9H−フルオレン−9−イリデン基や、テトラヒドロジシクロペンタジエン構造を有する2価の基が好ましく、直接結合、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−CO−、−SO
2−、トリメチルシクロヘキシリデン基、9H−フルオレン−9−イリデン基や、テトラヒドロジシクロペンタジエン構造を有する2価の基がより好ましい。
R
5が直接結合の場合、そのビフェニル骨格は、2,2’−ビフェニル骨格、2,3’−ビフェニル骨格、2,4’−ビフェニル骨格、3,3’−ビフェニル骨格、3,4’−ビフェニル骨格、4,4’−ビフェニル骨格のいずれでもよいが、好ましくは4,4’−ビフェニル骨格である。また、R
5が直接結合以外の場合、芳香環に対する結合位置は、2,2’位、2,3’位、2,4’位、3,3’位、3,4’位、4,4’位のいずれでもよいが、好ましくは4,4’位である。
R
6はそれぞれ独立に炭素数1〜11の炭化水素基であり、式(3a)のR
3と同様の基が好ましい。m3はそれぞれ独立に0〜4の整数であり、0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。
【0034】
式(4b)、式(4c)において、R
7、R
8は、上記R
6の説明と同様である。m4は0〜4の整数であり、0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。m5は0〜6の整数であり、0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。
【0035】
式(1)のXにおいて、リン不含基(X2)を導入することにより、難燃性以外の特性、例えば、溶剤溶解性、低線膨張、伸び性、高熱伝導性、低誘電率、低誘電正接等の改良や、耐熱性、低吸水性のより向上に役立つことがあるので、目的応じて導入量を決めることが好ましい。リン不含基(X2)の含有量は、X全体のモル数に対して、好ましくは25〜75モル%である。
以下、リン不含基(X2)を基(X2)と、P含有基を基(X3)と略記することがある。
【0036】
Xには、基(X1)、基(X2)及び基(X3)があり得るが、基(X1)は必須であり、1分子に1個以上含まれる。別の観点からは1モル%以上含まれることがよい。
基(X3)は基(X1)と同様に難燃性を向上させるが、基(X1)は基(X3)よりその効果が大きいので少量で十分な効果を示す。しかしながら、基(X3)の導入には市販品があって入手が容易という利点がある。
基(X2)は、基(X1)と基(X3)が有する特性とは、別の特性を向上させる。フェノキシ樹脂は用途によって、上記のような特性が望まれるので、基(X2)の種類や量によって、所望の特性を付与できる。基(X1)と基(X3)が少量で効果が発揮できれば、基(X2)を十分含有させることができ、所望の性質を十分に与える。
【0037】
例えば、熱可塑性樹脂の難燃剤として用途の場合、リン不含基(X2)を含まずに、基(X1)と基(X3)のみが好ましく、難燃性の観点からは基(X1)のみが好ましいが、生産性の観点からは、基(X1)と基(X3)の混合が好ましい。
また、リン不含基(X2)と基(X3)からなる従来のリン含有フェノキシ樹脂において、新たな特性の付与や、ある特性の向上のために、基(X2)を増やす必要はあるが難燃性に余裕が無い場合では、今まで、フェノキシ樹脂自体の特性付与をあきらめて、配合で対応するしか方法がなかった。このような場合、基(X3)の一部又は全部を基(X1)にすることで難燃性に余裕ができるため、基(X2)の導入が可能となり、フェノキシ樹脂自体で必要な特性を有することが可能となる。
【0038】
リン不含基(X2)の構造は付与したい特性によっては選択すればよい。例えば、耐熱性をさらに向上させるためには、ノルボルニレン基、アダマンチレン基等を有する2価の基や9H−フルオレン−9−イリデン基等が挙げられる。溶剤溶解性の向上には、メチル置換基を有するビフェニレン基、メチレンビストリル基、メチレンビスキシリル基等が挙げられる。誘電特性の改良用途では、テトラヒドロジシクロペンタジエン構造、テトラヒドロトリシクロペンタジエン構造等を有する2価の基やトリフルオロメチル基、ベンジル置換基、1−フェニルエチル置換基等を有する2価の基が挙げられる。吸湿特性の向上には、トリフルオロメチル基を有する2価の基や9H−フルオレン−9−イリデン基等が挙げられる。
【0039】
このような観点から、基(X1)のX中の含有量は、上記範囲が好ましい。
リン不含基(X2)の含有量は、用途によって異なるが、0〜99モル%、好ましくは上記の範囲、より好ましくは45〜55モル%である。
基(X3)の含有量は、好ましくは0〜50モル%であり、より好ましくは20〜40モル%である。
そして、フェノキシ樹脂を構成するXに由来するリン含有率は、リン原子に換算してフェノキシ樹脂の1〜10質量%、好ましくは1〜8質量%の範囲であることがよい。
【0040】
本発明のフェノキシ樹脂は、エポキシ基末端、フェノール性水酸基末端、又はその混合した形態をとることができる。通常、フェノキシ樹脂はエポキシ基での反応を考慮しないため、エポキシ当量(g/eq.)は特に規定する必要はないが、5,000以上であればよい。5,000未満ではフィルム製膜性や伸び性が劣り好ましくない。また、フェノール性水酸基末端になった場合、エポキシ基濃度は0になるため、エポキシ当量は無限の値になる。そのため、エポキシ当量の上限を規定することは、実質的に臨界的意味を持たない。しかしながら、取り扱い性を良好なものとする観点から、100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、30,000以下がさらに好ましく、20,000以下が特に好ましい。
【0041】
本発明のリン含有フェノキシ樹脂の製造方法として、次に示す一段法(直接法)と二段法(間接法)があるがこれらに限定されない。
【0042】
一段法は、エピクロルヒドリンやエピブロムヒドリン等のエピハロヒドリンと、下記式(6a)で表されるリン含有2官能フェノール化合物を含むフェノール化合物とを、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下で反応させる方法である。原料のフェノール化合物は、上記リン含有2官能フェノール化合物の他に、下記式(6b)で表されるリン不含有2官能フェノール化合物や、下記式(6c)で表される他のリン含有2官能フェノール化合物を含むことができる。
【0043】
H−X
1−H (6a)
H−X
2−H (6b)
H−X
3−H (6c)
ここで、X
1、X
2、X
3は、それぞれ上記基(X1)、基(X2)、基(X3)と同義である。
【0044】
二段法は、2官能フェノール化合物と2官能エポキシ樹脂を通常、触媒の存在下で反応させる方法である。
2官能フェノール化合物、及び2官能エポキシ樹脂としては、上記基(X1)、基(X2)又は基(X3)を有するフェノール化合物、又はエポキシ樹脂の1種又は2種以上が使用される。この場合、2官能フェノール化合物又は2官能エポキシ樹脂の少なくとも1種は上記基(X1)を含む。
2官能フェノール化合物の例としては、上記式(6a)〜(6c)で表されるフェノール化合物が挙げられる。2官能エポキシ樹脂としては、上記式(6a)〜(6c)で表されるフェノール化合物をエポキシ化して得られるエポキシ樹脂が挙げられる。上記2官能エポキシ樹脂、フェノール化合物は分子中に基(X1)、基(X2)又は基(X3)の2以上を同時に含んでもよい。
これらの原料の使用割合を変化させることにより、フェノキシ樹脂中の基(X1)、基(X2)又は基(X3)の割合を制御できる。
【0045】
リン含有フェノキシ樹脂のMwやエポキシ当量は、一段法ではエピハロヒドリンと2官能フェノール化合物の仕込みモル比を、二段法では2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール化合物の仕込みモル比を調整することで目的の範囲のものを製造することができる。本発明のリン含有フェノキシ樹脂はいずれの製造方法により得られるものであってもよいが、一般的にフェノキシ樹脂は一段法よりも二段法の方が得やすいため、二段法を用いることが好ましい。
【0046】
上記式(6a)で表されるリン含有2官能フェノール化合物の製造方法としては特に限定されないが、下記式(7)で表される有機リン化合物1モルに対し、キノン化合物0.5モル以上1.0モル未満の範囲で使用し、有機リン化合物1モルに対して0.05〜0.5モルの水分を存在させた有機溶媒中で、反応温度100〜200℃、好ましくは還流状態下で反応させる製造方法が好ましい。
【0047】
【化10】
式(7)において、R
1、R
2、k1、及びk2は、式(3)のR
1、R
2、k1、及びk2とそれぞれ同義である。
【0048】
上記反応では、上記式(5)で表される構造を有するリン化合物が副生する。目的のリン含有2官能フェノール化合物を単離するためには、反応終了後、反応生成物を良溶媒と混合して、目的のリン含有2官能フェノール化合物を溶解させると共に、副生したリン化合物を不溶性成分として取り除くことがよい。固形分分離後の溶液に存在するのは目的生成物であるリン含有2官能フェノール化合物がほとんどだが、若干量の副生したリン化合物が残存している場合があるため、高純度とするためにはさらに精製することが好ましい。精製方法としては、上記溶液を貧溶媒と混合して、目的生成物であるリン含有2官能フェノール化合物の結晶を析出させる。そして、副生物等は貧溶媒溶液に中に溶解させる。また、これ以外の精製方法として、抽出、洗浄、蒸留等の精製操作等を行うことも可能である。なお、上記式(5)で表される構造を有するリン化合物は、基(X3)を与えるので、難燃性をもたらす有用成分として一部又は全部を分離することなく、混合物のまま使用することも可能である。
【0049】
上記反応で使用できる有機溶媒としては、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール類や、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類や、安息香酸メチル等の安息香酸エステル類や、メチルセロソルブ等のセロソルブ類や、ブチルカルビトール等のカルビトール類や、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類や、トルエン等の芳香族炭化水素類や、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド類や、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N−メチルピロリドン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの有機溶媒は単独でも2種類以上混合して使用してもよい。
【0050】
上記反応で使用できるキノン化合物は工業製品として純度が90%以上であれば問題なく使用できる。
式(2)中のAがベンゼン環になる場合は、使用するキノン化合物として、例えば、ベンゾキノン、メチルベンゾキノン、エチルベンゾキノン、ブチルベンゾキノン、ジメチルベンゾキノン、ジエチルベンゾキノン、ジブチルベンゾキノン、メチルイソプロピルベンゾキノン、ジエトキシベンゾキノン、メチルメトキシベンゾキノン、フェニルベンゾキノン、トリルベンゾキノン、エトキシフェニルベンゾキノン、ジフェニルベンゾキノン等が挙げられる。
【0051】
式(2)中のAがナフタレン環になる場合は、使用するキノン化合物として、例えば、ナフトキノン、メチルナフトキノン、シクロヘキシルナフトキノン、メトキシナフトキノン、エトキシナフトキノン、ジメチルナフトキノン、ジメチルイソプロピルナフトキノン、メチルメトキシナフトキノン等が挙げられる。
式(2)中のAがアントラセン環になる場合は、使用するキノン化合物として、例えば、アントラキノン、メチルアントラキノン、エチルアントラキノン、メトキシアントラキノン、ジメトキシアントラキノン、ジフェノキシアントラキノン等が挙げられる。
式(2)中のAがフェナントレン環になる場合は、使用するキノン化合物として、例えば、フェナントレンキノン、メチルフェナントレンキノン、イソプロピルフェナントレンキノン、メトキシフェナントレンキノン、ブトキシフェナントレンキノン、ジメトキシフェナントレンキノン等が挙げられる。
これらキノン化合物は単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0052】
上記式(7)で表される有機リン化合物としては、例えば、ジメチルホスフィンオキシド、ジエチルホスフィンオキシド、ジブチルホスフィンオキシド、ジフェニルホスフィンオキシド、ジベンジルホスフィンオキシド、シクロオクチレンホスフィンオキシド、トリルホスフィンオキシド、ビス(メトキシフェニル)ホスフィンオキシド等や、フェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸エチル、トリルホスフィン酸トリル、ベンジルホスフィン酸ベンジル等や、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(DOPO)、8−メチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、8−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、8−フェニル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、2,6,8−トリ−t−ブチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、6,8−ジシクロヘキシル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド等や、ホスホン酸ジフェニル、ホスホン酸ジトリル、ホスホン酸ジベンジル、5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン等が挙げられる。これらの有機リン化合物は単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0053】
上記良溶媒としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサノン、ベンジルアルコール、酢酸エステル、及び安息香酸エステル等が挙げられる。これらの溶媒は単独でも2種類以上混合して使用してもよい。これらの溶媒の内、酢酸エステルが好ましく、酢酸ベンジルがより好ましい。
上記貧溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール、及びアセトン等が挙げられる。これらの溶媒は単独でも2種類以上混合して使用してもよい。これらの溶媒の内、メタノール、エタノール、アセトンが好ましく、メタノール、エタノールがより好ましい。これらの溶媒は含水品であってもよく、この場合、溶媒100質量部に対して水を100質量部まで含んでいてもよい。
【0054】
上記一段法及び二段法の製造で使用される2官能フェノール化合物としては、式(6a)で表されるリン含有2官能フェノール化合物を必須とするが、その他の2官能フェノール化合物を併用してもよい。
例えば、式(4a)〜(4c)で表される2価の基を有するフェノール化合物のような上記式(6b)で表されるリン不含有2官能フェノール化合物や、式(3)で表されるリン含有基を1個有するフェノール化合物のような式(6c)で表されるリン含有2官能フェノール化合物を併用してもよい。
式(3)で表されるリン含有基を1個有するリン含有2官能フェノール化合物は、式(7)で表される有機リン化合物とキノン化合物とを、公知の合成方法を用いて反応することで得られる。合成方法としては、例えば、特開昭60−126293号公報、特開昭61−236787号公報、zh.Obshch.Khim,42(11),第2415−2418頁(1972)等に示されている方法があるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0055】
上記併用してもよいリン不含有2官能フェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールB、ビスフェノールE、ビスフェノールC、ビスフェノールZ、ビスフェノールアセトフェノン、ビスフェノールフルオレノン等のビスフェノール類、ノルボルナン構造、テトラヒドロジシクロペンタジエン構造、テトラヒドロトリシクロペンタジエン構造、又はアダマンタン構造を有するジヒドロキシ化合物、ビフェノール類、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン等の単環2官能フェノール類、ジヒドロキシナフタレン類等が挙げられる。
【0056】
併用してもよいリン含有2官能フェノール化合物としては、例えば、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(以下、DOPO−HQと略す)、10−(2,7−ジヒドロキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(以下、DOPO−NQと略す)、ジフェニルホスフィニルヒドロキノン、ジフェニルホスフェニル−1,4−ジオキシナフタリン、1,4−シクロオクチレンホスフィニル−1,4−フェニルジオール、1,5−シクロオクチレンホスフィニル−1,4−フェニルジオール等が挙げられる。
また、これらはアルキル基、アリール基等の悪影響のない置換基で置換されていてもよい。これらの2官能フェノール化合物は複数種を併用してもよい。
【0057】
まず、一段法について説明する。
一段法の場合は、2官能フェノール化合物1モルに対して、エピハロヒドリン0.985〜1.015モル、好ましくは0.99〜1.012モル、より好ましくは0.995〜1.01モルを、アルカリ金属水酸化物の存在下、非反応性溶媒中で反応させ、エピハロヒドリンが消費され、Mwが10,000以上になるように縮合反応させることにより、リン含有フェノキシ樹脂を得ることができる。なお、反応終了後に、副生した塩を濾別又は水洗により除去する必要がある。
【0058】
原料として用いられる式(6a)で表される2官能フェノール化合物は、原料2官能フェノール化合物中に、1〜100モル%が好ましく、2〜75モル%がより好ましく、5〜50モル%がさらに好ましく、10〜40モル%が特に好ましく、15〜35モル%が最も好ましい。
難燃性以外の特性を付与するために式(6b)で表される2官能フェノール化合物を使用するが、0〜75モル%が好ましく、25〜75モル%がより好ましく、45〜55モル%がさらに好ましい。
難燃性の特性を付与するために式(6c)で表される2官能フェノール化合物を併用するが、0〜50モル%が好ましく、10〜40モル%がより好ましい。通常、式(6c)で表される2官能フェノール化合物を併用する場合は、式(6a)で表される2官能フェノール化合物を単離せず、混合物として使用することが有利である。
【0059】
この反応は常圧下又は減圧下で行うことができる。反応温度は通常、常圧下の反応の場合は20〜200℃が好ましく、30〜170℃がより好ましく、40〜150℃がさらに好ましく、50〜100℃が特に好ましい。減圧下の反応の場合は20〜100℃が好ましく、30〜90℃がより好ましく、35〜80℃がさらに好ましい。反応温度がこの範囲内であれば、副反応が起こしにくく反応を進行させやすい。反応圧力は通常、常圧である。また、反応熱の除去が必要な場合は、通常、反応熱により使用溶媒の蒸発・凝縮・還流法、間接冷却法、又はこれらの併用により行われる。
【0060】
非反応性溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類や、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類や、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール類や、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類や、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類等が挙げられるが、特にこれらに限定されるわけではなく、これらの溶媒は単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0061】
また、触媒を使用することができる。使用できる触媒としては、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩や、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第三級アミンや、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類や、エチルトリフェニルホスホニウムアイオダイド等のホスホニウム塩や、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0062】
次に、二段法について説明する。
二段法の原料エポキシ樹脂となる2官能エポキシ樹脂としては、好ましくは上記式(6b)で表されるリン不含有2官能フェノール化合物とエピハロヒドリンとを反応させて得られる下記式(8)で表される2官能エポキシ樹脂である。なお、リン含有の2官能エポキシ樹脂の場合は、式(8)のX
2をX
1又はX
3に置き換えた構造になる。
【0063】
【化11】
式(8)において、X
2は式(6b)のX
2と同義であり、上記式(4a)〜(4c)で表される2価の基が好ましい。Gはグリシジル基である。jは繰り返し数で、その平均値は0〜6であり、0〜3が好ましく、0〜1がより好ましい。
【0064】
二段法の原料エポキシ樹脂を得るための2官能フェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応には、2官能フェノール化合物中の官能基に対して0.8〜1.2倍モル、好ましくは0.85〜1.05倍モルの水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が用いられる。これより少ないと残存する加水分解性塩素の量が多くなり好ましくない。金属水酸化物としては、水溶液、アルコール溶液又は固体の状態で使用される。
【0065】
エポキシ化反応に際しては、2官能フェノール化合物に対しては過剰量のエピハロヒドリンが使用される。通常、2官能フェノール化合物中の官能基1モルに対して、1.5〜15倍モルのエピハロヒドリンが使用されるが、好ましくは2〜10倍モル、より好ましく5〜8倍モルである。これより多いと生産効率が低下し、これより少ないとエポキシ樹脂の高分子量体の生成量が増え、リン含有フェノキシ樹脂の原料に適さなくなる。
【0066】
エポキシ化反応は、通常、120℃以下の温度で行われる。反応の際、温度が高いと、いわゆる難加水分解性塩素量が多くなり高純度化が困難になる。好ましくは100℃以下であり、さらに好ましくは85℃以下の温度である。
【0067】
二段法の原料となる2官能エポキシ樹脂としては、式(8)で表わされる2官能エポキシ樹脂が好ましく、上記式(4a)〜(4c)の2価の基を有するエポキシ樹脂がより好ましい。また、これらのエポキシ樹脂はアルキル基、アリール基等の悪影響のない置換基で置換されていてもよい。なお、本発明の目的を損なわない限り、アルキレングリコール型エポキシ樹脂、脂肪族環状エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂を使用してもよい。
【0068】
原料の使用割合(モル比)は、2官能エポキシ樹脂/2官能フェノール化合物として、好ましくは0.95〜1.10、より好ましくは1.00〜1.05である。
【0069】
二段法の場合は、触媒を使用することができ、エポキシ基とフェノール性水酸基との反応を進めるような触媒能を持つ化合物であればどのようなものでもよい。例えば、アルカリ金属化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、環状アミン類、イミダゾール類等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0070】
アルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウム、等のアルカリ金属塩、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、等のアルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属フェノキシド、水素化ナトリウム、水素化リチウム、等、酢酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
有機リン化合物としては、例えば、トリ−n−プロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリメトキシフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、テトラメチルホスフォニウムブロミド、テトラメチルホスフォニウムアイオダイド、テトラメチルホスフォニウムハイドロオキサイド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムクロリド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムブロミド、トリメチルベンジルホスホニウムクロリド、トリメチルベンジルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、トリフェニルメチルホスホニウムブロミド、トリフェニルメチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルエチルホスホニウムクロリド、トリフェニルエチルホスホニウムブロミド、トリフェニルエチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロリド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロミド等が挙げられる。
第3級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン等が挙げられる。第4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリエチルメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、フェニルトリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
イミダゾール類としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール等が挙げられる。
環状アミン類としては、例えば、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン(DBN)、テトラヒドロ−1,4−オキサジン(モルホリン)、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)等が挙げられる。
【0071】
通常、触媒の使用量は反応固形分に対して0.001〜1質量%である。触媒としてアルカリ金属化合物を使用する場合、リン含有フェノキシ樹脂中にアルカリ金属分が残留し、それを使用した電子・電気部品やプリント配線板の絶縁特性を悪化させるため、リン含有フェノキシ樹脂中のリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属含有量の合計は100ppm以下が好ましく、60ppm以下がより好ましく、50ppm以下がさらに好ましい。
また、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、環状アミン類、イミダゾール類等を触媒として使用した場合も、リン含有フェノキシ樹脂中に触媒残渣として残留し、アルカリ金属分の残留と同様に電子・電気部品やプリント配線板の絶縁特性を悪化させるので、リン含有フェノキシ樹脂中のリン原子又は窒素原子の含有量は300ppm以下が好ましく、200ppm以下がより好ましく、100ppm以下がさらに好ましい。
【0072】
二段法の場合、溶媒を用いても良く、その溶媒としてはリン含有フェノキシ樹脂を溶解し、反応に悪影響のないものであればどのようなものでもよい。例えば、芳香族系炭化水素、ケトン類、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、グリコールエーテル系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0073】
芳香族系炭化水素類としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等が挙げられる。
エステル系溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、バレロラクトン、ブチロラクトン等が挙げられる。
エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
アミド系溶媒としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、DMF、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
グリコールエーテル系溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0074】
使用する溶媒の量は反応条件に応じて適宜選択することができるが、例えば二段法製造時の場合は固形分濃度が35〜95質量%が好ましい。また、反応中に高粘性生成物が生じる場合は反応途中で溶媒を添加して反応を続けることができる。反応終了後、溶媒は必要に応じて蒸留等により除去することもできるし、さらに追加することもできる。
【0075】
二段法の場合の反応温度は、使用する触媒が分解しない程度の温度範囲で行う。反応温度が高すぎると生成するリン含有フェノキシ樹脂が劣化する恐れがあり、低すぎると反応が進まずに目的の分子量にならない恐れがある。そのため反応温度は、50〜230℃が好ましく、120〜200℃より好ましい。また、反応時間は通常1〜12時間であり、3〜10時間が好ましい。アセトンやメチルエチルケトンのような低沸点溶媒を使用する場合には、オートクレーブを使用して高圧下で反応を行うことで反応温度を確保することができる。また、反応熱の除去が必要な場合は、通常、反応熱による使用溶媒の蒸発・凝縮・還流法、間接冷却法、又はこれらの併用により行われる。
【0076】
本発明のリン含有フェノキシ樹脂は、それ自体で難燃性を有し、さらに可撓性のある熱可塑性樹脂であり単独で用いることもできる。式(1)のXがほとんど基(X1)の場合はリン含有率が高くなるため、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂の難燃剤として使用することが有用である。
また、硬化性樹脂成分を配合して熱硬化性の樹脂組成物にすることもできる。この場合、Xの一部にリン不含基(X2)を導入することで、樹脂組成物に必要な特性を予め有する難燃性フェノキシ樹脂にすることが可能である。
【0077】
次に本発明の樹脂組成物について説明する。
本発明の樹脂組成物は、上記リン含有フェノキシ樹脂に硬化性樹脂成分を配合してなる。
【0078】
硬化性樹脂成分としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル酸エステル樹脂、フェノール樹脂、メラニン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、アルキド樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの内、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラニン樹脂、イソシアネート樹脂が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。これらの硬化性樹脂成分は単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
硬化性樹脂成分は、例えば、エポキシ樹脂を硬化剤で硬化させる樹脂組成物、アクリル酸エステル樹脂をラジカル重合開始剤で硬化させる樹脂組成物、フェノール樹脂、メラニン樹脂、イソシアネート樹脂等を熱で自己重合させる樹脂成分等が挙げられる。硬化性樹脂が硬化するために硬化剤や触媒や促進剤等を必要とする場合は、硬化性樹脂成分はそれらを含むと解される。
【0079】
硬化性樹脂成分の配合量は、リン含有フェノキシ樹脂/硬化性樹脂成分(質量比)として、1/99〜99/1が好ましく、10/90〜90/10がより好ましく、25/75〜75/25がさらに好ましい。硬化性樹脂成分を配合することで、さらに耐熱性に優れた材料を得ることができる。
【0080】
硬化性樹脂成分がエポキシ樹脂の場合、従来公知のエポキシ樹脂が使用可能である。なお、エポキシ樹脂とは、少なくとも1個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を指すが、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が好ましく、3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂がより好ましい。具体的には、ポリグリシジルエーテル化合物、ポリグリシジルアミン化合物、ポリグリシジルエステル化合物、脂環式エポキシ化合物、その他変性エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独で使用してもよく、同一系のエポキシ樹脂を2種類以上併用してもよく、また、異なる系のエポキシ樹脂を組み合わせて使用してもよい。
【0081】
ポリグリシジルエーテル化合物としては、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルスルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルノボラック型エポキシ樹脂、スチレン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β−ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレンジオールアラルキル型エポキシ樹脂、α−ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アルキレングリコール型エポキシ樹脂、脂肪族環状エポキシ樹脂等が挙げられる。
ポリグリシジルアミン化合物としては、具体的には、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、メタキシレンジアミン型エポキシ樹脂、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、アニリン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
ポリグリシジルエステル化合物としては、具体的には、ダイマー酸型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロフタル酸型エポキシ樹脂、トリメリット酸型エポキシ樹脂等が挙げられる。
脂環式エポキシ化合物としては、セロキサイド2021(ダイセル化学工業株式会社製)等の脂肪族環状エポキシ樹脂等が挙げられる。
その他変性エポキシ樹脂としては、具体的には、ウレタン変性エポキシ樹脂、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリブタジエンゴム誘導体、カルボキシル基末端ブタジエンニトリルゴム(CTBN)変性エポキシ樹脂、ポリビニルアレーンポリオキシド(例えば、ジビニルベンゼンジオキシド、トリビニルナフタレントリオキシド等)、リン含有エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0082】
エポキシ樹脂を配合する場合は硬化剤も含む。硬化剤とは、エポキシ樹脂のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質のことである。
【0083】
硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、0.1〜100質量部が必要に応じて用いられ、1〜80質量部が好ましく、5〜60質量部がより好ましく、10〜60質量部がさらに好ましい。
【0084】
硬化剤としては、特に制限はなく一般的にエポキシ樹脂硬化剤として知られているものはすべて使用できる。耐熱性を高める観点から好ましいものとしてフェノール系硬化剤、アミド系硬化剤及びイミダゾール類が挙げられる。また吸水性を低下する観点からは、好ましいものとして活性エステル系硬化剤が挙げられる。その他に、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、有機ホスフィン類、ホスホニウム塩、ベンゾオキサジン化合物、テトラフェニルボロン塩、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体、ポリメルカプタン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤等が挙げられる。これらの硬化剤は単独で使用してもよく、同種類を2種類以上併用してもよく、他種類を組み合わせて使用してもよい。
【0085】
フェノール系硬化剤としては、えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ジヒドロキシジフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ジヒドロキシジフェニルケトン、ジヒドロキシジフェニルスルホン、フルオレンビスフェノール、ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、t−ブチルカテコール、t−ブチルヒドロキノン、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン等の2価のフェノール化合物や、フェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、クレゾールノボラック、キシレノールノボラック、トリスヒドロキシフェニルメタンノボラック、ジシクロペンタジエンフェノール、ナフトールノボラック、スチレン化フェノールノボラック、テルペンフェノール、重質油変性フェノール、フェノールアラルキル、ナフトールアラルキル、ポリヒドロキシスチレン、フルオログリシノール、ピロガロール、t−ブチルピロガロール、ベンゼントリオール、トリヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシアセトフェノン等の3価以上のフェノール化合物や、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド等のリン含有フェノール化合物が挙げられる。これらのフェノール化合物にインデン、スチレン等の芳香族化合物を付加反応させたものを硬化剤に用いてもよい。フェノール系硬化剤は、エポキシ樹脂中のエポキシ基に対する硬化剤中の活性水酸基のモル比で、0.8〜1.5の範囲で用いることが好ましい。
アミド系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド及びその誘導体、ポリアミド樹脂等が挙げられる。アミド系硬化剤は、全エポキシ樹脂成分100質量部に対して0.1〜25質量部の範囲で用いることが好ましい。
イミダゾール類としては、例えば、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノ−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加体、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、及びエポキシ樹脂と上記イミダゾール類との付加体等が挙げられる。イミダゾール類は、全エポキシ樹脂成分100質量部に対して0.1〜25質量部の範囲で用いることが好ましい。なお、イミダゾール類は触媒能を有するため、一般的には後述する硬化促進剤にも分類されるが、本発明においては硬化剤として分類する。
活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく、中でも、特許5152445号公報に記載されているような多官能フェノール化合物と芳香族カルボン酸類とを反応させたフェノールエステル類がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール性水酸基を有する芳香族化合物としては、例えば、カテコール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。市販品では、エピクロンHPC−8000−65T(DIC株式会社製)等があるがこれらに限定されるものではない。活性エステル系硬化剤は、樹脂組成物中のエポキシ基に対する硬化剤中の活性エステル基のモル比で0.2〜2.0の範囲で用いることが好ましい。
アミン系硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジフェニルエーテル、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジシアンジアミド、ダイマー酸等の酸類とポリアミン類との縮合物であるポリアミドアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。アミン系硬化剤は、樹脂組成物中のエポキシ基に対する硬化剤中の活性水素基のモル比で0.5〜1.5の範囲で用いることが好ましい。
酸無水物系硬化剤としては、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水メチルナジック酸、無水マレイン酸等が挙げられる。酸無水物系硬化剤は、樹脂組成物中のエポキシ基に対する硬化剤中の酸無水物基のモル比で0.5〜1.5の範囲で用いることが好ましい。
【0086】
なお、活性水素基とは、エポキシ基と反応性の活性水素を有する官能基(加水分解等により活性水素を生ずる潜在性活性水素を有する官能基や、同等な硬化作用を示す官能基を含む。)のことであり、具体的には、酸無水物基やカルボキシル基やアミノ基やフェノール性水酸基等が挙げられる。なお、活性水素基に関して、カルボキシル基(−COOH)やフェノール性水酸基(−OH)は1モルと、アミノ基(−NH
2)は2モルと計算される。また、活性水素基が明確ではない場合は、測定によって活性水素当量を求めることができる。例えば、フェニルグリシジルエーテル等のエポキシ当量が既知のモノエポキシ樹脂と活性水素当量が未知の硬化剤を反応させて、消費したモノエポキシ樹脂の量を測定することによって、使用した硬化剤の活性水素当量を求めることができる。
【0087】
また、エポキシ樹脂を配合する場合は必要に応じて、硬化促進剤を使用することができる。硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール誘導体、第3級アミン類、ホスフィン類等のリン化合物、金属化合物、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。これら硬化促進剤は単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0088】
イミダゾール誘導体としては、イミダゾール骨格を有する化合物であればよく、特に限定されない。例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、ビス−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−メチル−2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のアルキル置換イミダゾール化合物や、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−(2’−シアノエチル)イミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール等のアリール基やアラルキル基等の環構造を含有する炭化水素基で置換されたイミダゾール化合物等が挙げられる。
第3級アミン類としては、例えば、2−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)等が挙げられる。
ホスフィン類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等が挙げられる。
金属化合物としては、例えば、オクチル酸スズ等が挙げられる。
アミン錯塩としては、例えば、3フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体、3フッ化ホウ素ジエチルアミン錯体、3フッ化ホウ素イソプロピルアミン錯体、3フッ化ホウ素クロロフェニルアミン錯体、3フッ化ホウ素ベンジルアミン錯体、3フッ化ホウ素アニリン錯体、又はこれらの混合物等の3フッ化ホウ素錯体類等が挙げられる。
【0089】
これらの硬化促進剤の内、ビルドアップ材料用途や回路基板用途として使用する場合には、耐熱性、誘電特性、耐ハンダ性等に優れる点から、2−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジンやイミダゾール類が好ましい。また、半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、トリフェニルホスフィンやDBUが好ましい。
【0090】
硬化促進剤の配合量は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、樹脂組成物中のエポキシ樹脂成分100質量部に対して、0.01〜15質量部が必要に応じて使用され、0.01〜10質量部が好ましく、0.05〜8質量部がより好ましく、0.1〜5質量部がさらに好ましい。硬化促進剤を使用することにより、硬化温度を下げることや、硬化時間を短縮することができる。
【0091】
硬化性樹脂組成分としてのアクリル酸エステル樹脂をラジカル重合開始剤で硬化させる樹脂組成物には、(メタ)アクリレート系化合物の熱硬化性樹脂組成物や光硬化性樹脂組成物が挙げられる。(メタ)アクリレート系化合物は、粘度調整や硬化成分として用いられる分子中に少なくとも1個以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレートである。(メタ)アクリレート系化合物の一部は、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有することが望ましい。この場合の樹脂組成物は、(メタ)アクリレート系化合物と、熱重合開始剤、光重合開始剤、又はその両方を必須成分とする。
【0092】
これらの(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、シクロへキサン−1,4−ジメタノールモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフロフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルポリエトキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールモノエトキシ(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート、p−クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリル酸エステル、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2ーヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート及びジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、ポリオール化合物にポリイソシアネート化合物を反応させ、(メタ)アクリレートと反応することで得られるウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ化合物と(メタ)アクリレートの反応で得られるエポキシアクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリレート系化合物を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0093】
また、(メタ)アクリレート系化合物の重合開始剤として使用できる化合物としては、加熱や活性エネルギー線光の照射等の手段により、ラジカルを発生させるものであれば特に限定せずに使用することができる。重合開始剤としては、例えば、加熱により硬化させる場合は、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等のアゾ系、過酸化物系開始剤等の通常のラジカル熱重合に使用できるものはいずれも使用することができる。またラジカル重合を光ラジカル重合によって行う場合は、ベンゾイン類、アセトフェノン類、アントラキノン類、チオキサントン類、ケタール類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキサイド類等の通常の光ラジカル重合に使用できるものはいずれも使用することができる。これらの重合光開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上の混合物として使用してもよい。さらには、光ラジカル重合開始剤に対しては、第3級アミン類化合物、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等の促進剤等と組み合わせて使用してもよい。
【0094】
また、本発明の樹脂組成物には、粘度調整用として有機溶媒又は反応性希釈剤を使用することができる。これらの有機溶媒又は反応性希釈剤は、単独で使用してもよく、2種類以上を混合してもよい。
【0095】
有機溶媒としては、例えば、DMF、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類や、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシジエチレングリコール、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類や、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルジグリコール、パインオイル等のアルコール類や、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、メチルセロソルブアセテート、セロソルブアセテート、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、ベンジルアルコールアセテート等の酢酸エステル類や、安息香酸メチル、安息香酸エチル等の安息香酸エステル類や、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類や、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類や、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類や、ヘキサン、シクロヘキサン等のアルカン類や、アセトニトリル、N−メチルピロリドン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
反応性希釈剤としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、トリルグリシジルエーテル等の単官能グリシジルエーテル類や、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等の二官能グリシジルエーテル類や、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、トリメチロールエタンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等の多官能グリシジルエーテル類や、ネオデカン酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル類や、フェニルジグリシジルアミン、トリルジグリシジルアミン等のグリシジルアミン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
有機溶媒は、単独又は複数種類を混合したものを、不揮発分として20〜90質量%で使用することが好ましく、その適正な種類や使用量は用途によって適宜選択される。例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、1−メトキシ−2−プロパノール等の沸点が160℃以下の極性溶媒であることが好ましく、その使用量は不揮発分で40〜80質量%が好ましい。また、接着フィルム用途では、例えば、ケトン類、酢酸エステル類、カルビトール類、芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を使用することが好ましく、その使用量は不揮発分で30〜60質量%が好ましい。
反応性希釈剤は、主に無溶媒系で粘度の低減やゲルタイムの調整をする場合に使用される。この使用量が多いと、硬化反応が十分に進行せずに未反応成分が硬化物からブリードアウトする恐れや、機械強度等の硬化物物性を低下させる恐れがあるため、必要以上に使用しないことが好ましい。そのため、エポキシ樹脂中に30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0098】
本発明の樹脂組成物には、得られる硬化物の難燃性の向上を目的に、信頼性を低下させない範囲で、実質的にハロゲン原子を含有しない各種非ハロゲン系難燃剤を併用することができる。使用できる非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられる。これらの非ハロゲン系難燃剤は使用に際してもなんら制限されるものではなく、単独で使用してもよく、同一系の難燃剤を2種類以上併用してもよく、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて使用してもよい。
本発明のリン含有フェノキシ樹脂は難燃性が優れるので、難燃剤の配合を不要又は大幅に減少させることができる。
【0099】
リン系難燃剤としては、無機リン系化合物、有機リン系化合物のいずれも使用できる。無機リン系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の含窒素無機リン系化合物が挙げられる。
【0100】
また、赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(1)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(2)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(3)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
【0101】
有機リン系化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物、縮合リン酸エステル類、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物等の汎用有機リン系化合物や、含窒素有機リン系化合物や、ホスフィン酸金属塩等の他、リン原子に直結した活性水素基を有するリン化合物(例えば、DOPO、ジフェニルホスフィンオキシド等)やリン含有フェノール化合物(例えば、DOPO−HQ、DOPO−NQ、ジフェニルホスフィニルヒドロキノン、ジフェニルホスフェニル−1,4−ジオキシナフタリン、1,4−シクロオクチレンホスフィニル−1,4−フェニルジオール、1,5−シクロオクチレンホスフィニル−1,4−フェニルジオール等)等の有機リン系化合物や、それら有機リン系化合物をエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。
【0102】
また、使用できるリン含有エポキシ樹脂やリン含有硬化剤に使用される反応性リン化合物としては、式(3)で表されるリン含有基を1個又は2個有するリン含有2官能フェノール化合物や式(7)で表される有機リン化合物が好ましい。
リン含有エポキシ樹脂としては、特開平04−11662号公報、特開平05−214070号公報、特開2000−309624号公報、及び特開2002−265562号公報等で開示されている。リン含有エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、エポトートFX−305、エポトートFX−289B、エポトートFX−1225、YDFR−1320、TX−1328(以上、新日鉄住金化学株式会社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらのリン含有エポキシ樹脂のエポキシ当量(g/eq.)は、200〜800が好ましく、300〜780がより好ましく、400〜760がさらに好ましい。リン含有率は、0.5〜7質量%が好ましく、1〜6質量%がより好ましく、2〜5.5質量%がさらに好ましく、3〜5質量%が特に好ましい。
リン含有硬化剤としては、上記のリン含有2官能フェノール化合物の他に、特表3008−501063号公報や特許第4548547号公報に示すような製造方法で、式(3)で表される構造部を有するリン化合物を、アルデヒド類とフェノール化合物とを反応することでリン含有フェノール化合物を得ることができる。この場合、式(3)で表される構造部を有するリン化合物は、フェノール化合物の芳香族環にアルデヒド類と介し縮合付加して分子内に組み込まれる。また、特開2013−185002号公報に示すような製造方法で、さらに芳香族カルボン酸類の反応させることで、式(3)で表される構造部を有するリン化合物フェノール化合物から、リン含有活性エステル化合物を得ることができる。また、特再公表WO2008/010429号公報に示すような製造方法で、式(3)で表される構造部を有するリン含有ベンゾオキサジン化合物を得ることができる。
【0103】
併用するリン化合物の配合量は、リン化合物の種類やリン含有率、樹脂組成物の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択される。リン化合物が反応性のリン化合物、即ち、リン含有エポキシ樹脂やリン含有硬化剤の場合、リン含有フェノキシ樹脂、硬化性樹脂成分、難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した樹脂組成物中の全固形分(通常、樹脂組成物中の全固形分とは樹脂組成物中の溶媒を除く成分の合計をさす。)に対して、リン含有率として、0.2〜6質量%が好ましく、0.4〜4質量%がより好ましく、0.5〜3.5質量%がさらに好ましく、0.6〜質量%が特に好ましい。リン含有率が少ないと難燃性の確保が難しくなる恐れがあり、多すぎると耐熱性や溶剤溶解性に悪影響を与える恐れがある。そのため実際の配合量は、樹脂組成物中の全固形分に対して、赤リンを使用する場合は0.1〜2質量%の範囲が好ましく、有機リン系化合物を使用する場合は0.1〜10質量%の範囲が好ましく、0.5〜6質量%の範囲がより好ましい。
【0104】
また、本発明の樹脂組成物には、難燃助剤として、例えば、ハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ素化合物、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛等を併用してもよい。
【0105】
本発明においては、難燃剤を併用する場合はリン系難燃剤を使用することが好ましいが、以下に記載する難燃剤を併用することもできる。
【0106】
窒素系難燃剤としては、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。窒素系難燃剤の配合量は、窒素系難燃剤の種類、樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、樹脂組成物中の全固形分に対して、0.05〜10質量%の範囲で配合することが好ましく、特に0.1〜5質量%の範囲で配合することが好ましい。また窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
シリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。シリコーン系難燃剤の配合量は、シリコーン系難燃剤の種類、樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、樹脂組成物中の全固形分に対して、0.05〜20質量%の範囲で配合することが好ましい。またシリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。無機系難燃剤の配合量は、無機系難燃剤の種類、樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、フェノキシ樹脂、硬化性樹脂成分、難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した樹脂組成物中の全固形分に対して、0.05〜20質量%の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜15質量部の範囲で配合することが好ましい。
有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。有機金属塩系難燃剤の配合量は、有機金属塩系難燃剤の種類、樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、フェノキシ樹脂、硬化性樹脂成分、難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した樹脂組成物の全固形分に対して、0.005〜10質量%の範囲で配合することが好ましい。
【0107】
また、樹脂組成物には、必要に応じて、特性を損ねない範囲で、充填材、熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂、カップリング剤、酸化防止剤、離型剤、消泡剤、乳化剤、揺変性付与剤、平滑剤、顔料等のその他の添加剤を配合することができる。
【0108】
充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、硫酸バリウム、炭素等の無機充填剤や、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、アラミド繊維、セラミック繊維等の繊維状充填剤や、微粒子ゴム等が挙げられる。
【0109】
これらの中でも、硬化物の表面粗化処理に使用される過マンガン酸塩の水溶液等の酸化性化合物により、分解又は溶解しないものが好ましく、特に溶融シリカや結晶シリカが微細な粒子が得やすいため好ましい。また、充填材の配合量を特に大きくする場合には溶融シリカを使用することが好ましい。溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高めつつ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に使用する方がより好ましい。さらに球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。なお、充填剤は、シランカップリング剤処理やステアリン酸等の有機酸処理を行ってもよい。一般的に充填材を使用する理由としては、硬化物の耐衝撃性の向上効果や、硬化物の低線膨張性化が挙げられる。また、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物を使用した場合は、難燃助剤として作用し難燃性が向上する効果がある。熱伝導性を向上させる場合は、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、溶融シリカ、結晶シリカが好ましく、アルミナ、窒化ホウ素、溶融シリカ、結晶シリカがより好ましい。導電ペースト等の用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を使用することができる。
【0110】
充填材の配合量は、硬化物の低線膨張性化や難燃性を考慮した場合、高い方が好ましい。樹脂組成物中の全固形分に対して、1〜98質量%が好ましく、3〜90質量%がより好ましく、5〜80質量%がさらに好ましく、10〜60質量%が特に好ましい。配合量が多いと積層板用途として必要な接着性が低下する恐れがあり、さらに硬化物が脆く、十分な機械物性を得られなくなる恐れがある。また配合量が少ないと、硬化物の耐衝撃性の向上等、充填剤の配合効果がでない恐れがある。
【0111】
また、無機充填剤は、その粒径が大き過ぎると硬化物中にボイドが残留しやすくなり、小さ過ぎると凝集しやすくなり分散性が悪くなる。平均粒子径は、0.01〜5μmが好ましく、0.05〜1.5μmがより好ましく、0.1〜1μmがさらに好ましい。無機充填剤の平均粒子径がこの範囲であれば、樹脂組成物の流動性を良好に保てる。なお、平均粒子径は、粒度分布測定装置により測定することができる。
【0112】
本発明の樹脂組成物には本発明のリン含有フェノキシ樹脂以外の熱可塑性樹脂を併用しても良い。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリテトラフロロエチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリビニルホルマール樹脂等が挙げられる。相溶性の面からはフェノキシ樹脂が好ましく、低誘電特性面からはポリフェニレンエーテル樹脂や変性ポリフェニレンエーテル樹脂が好ましい。
【0113】
本発明の樹脂組成物には、カップリング剤を配合してもよい。カップリング剤を配合することにより、基材との接着性やマトリックス樹脂と無機フィラーとの接着性を向上させることができる。カップリング剤としてはシランカップリング剤、チタネートカップリング剤等が挙げられる。これらのカップリング剤は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。なお、カップリング剤の配合量は、樹脂組成物中の全固形分に対して0.1〜2.0質量%程度とするのが好ましい。カップリング剤の配合量が少な過ぎると、カップリング剤を配合したことによるマトリックス樹脂と無機フィラーとの密着性の向上効果を十分に得ることができず、一方、カップリング剤の配合量が多過ぎると得られる硬化物からカップリング剤がブリードアウトするおそれがある。
【0114】
シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン、さらに、エポキシ系、アミノ系、ビニル系の高分子タイプのシラン等が挙げられる。
チタネートカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、ジイソプロピルビス(ジオクチルホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
【0115】
その他の添加剤としては、キナクリドン系、アゾ系、フタロシアニン系等の有機顔料や、酸化チタン、金属箔状顔料、防錆顔料等の無機顔料や、ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤や、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系、ヒドラジド系等の酸化防止剤や、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、ハジキ防止剤、消泡剤等の添加剤等が挙げられる。これらのその他の添加剤の配合量は、樹脂組成物中の全固形分に対して、0.01〜20質量%の範囲が好ましい。
【0116】
本発明の樹脂組成物は、上記各成分を均一に混合することにより得られる。リン含有フェノキシ樹脂、硬化性樹脂成分、さらに必要により各種添加剤の配合された樹脂組成物は、従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。硬化物としては、積層物、注型物、成型物、接着層、絶縁層、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。硬化物を得るための方法としては、公知の樹脂組成物と同様の方法をとることができ、注型、注入、ポッティング、ディッピング、ドリップコーティング、トランスファー成形、圧縮成形等や樹脂シート、樹脂付き銅箔、プリプレグ等の形態とし積層して加熱加圧硬化することで積層板とする等の方法が好適に使用される。樹脂組成物の硬化方法は、樹脂組成物中の配合成分や配合量によっても異なるが、通常、硬化温度は80〜300℃で、硬化時間は10〜360分間である。この加熱は80〜180℃で10〜90分の一次加熱と、120〜200℃で60〜150分の二次加熱との二段処理で行うことが好ましく、また、ガラス転移温度(Tg)が二次加熱の温度を超える配合系においてはさらに150〜280℃で60〜120分の三次加熱を行うことが好ましい。このような二次加熱、三次加熱を行うことで硬化不良を低減することができる。樹脂シート、樹脂付き銅箔、プリプレグ等の樹脂半硬化物を作製する際には、通常、加熱等により形状が保てる程度に樹脂組成物の硬化反応を進行させる。樹脂組成物が溶媒を含んでいる場合には、通常、加熱、減圧、風乾等の手法で大部分の溶媒を除去するが、樹脂半硬化物中に5質量%以下の溶媒を残量させてもよい。
【0117】
本発明の樹脂組成物が使用される用途としては、回路基板用材料、封止材料、注型材料や、導電ペースト、接着剤、絶縁材料等、様々な分野に適用可能であり、特に、電気・電子分野における絶縁注型、積層材料、封止材料等として有用である。用途の一例としては、プリント配線基板、フレキシルブル配線基板、キャパシタ等の電気・電子回路用積層板、樹脂付き金属箔、フィルム状接着剤、液状接着剤等の接着剤、半導体封止材料、アンダーフィル材料、3D−LSI用インターチップフィル、回路基板用絶縁材料、絶縁シート、プリプレグ、放熱基板、レジストインキが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
これら各種用途のうち、プリント配線板材料や回路基板用絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム用途では、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ、いわゆる電子部品内蔵用基板用の絶縁材料として使用することができる。これらの中でも、高難燃性、高耐熱性、及び溶媒溶解性といった特性からプリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料等の回路基板(積層板)用材料及び半導体封止材料に使用することが好ましい。
【0118】
樹脂組成物を積層板等の板状とする場合、使用する充填材としては、その寸法安定性、曲げ強度等の点で、繊維状のものが好ましく、ガラス布、ガラスマット、ガラスロービング布がより好ましい。
【0119】
樹脂組成物は繊維状の補強基材に含浸させることにより、プリント配線板等で使用されるプリプレグを作成することができる。繊維状の補強基材としては、例えば、ガラス等の無機繊維や、ポリエステル樹脂等、ポリアミン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂等の有機質繊維の織布又は不織布を使用することができるがこれに限定されるものではない。
【0120】
樹脂組成物からプリプレグを製造する方法としては、特に限定するものではなく、例えば、上記有機溶媒を含むワニス状の樹脂組成物を、さらに有機溶媒を配合して適切な粘度に調整した樹脂ワニスに作成し、その樹脂ワニスを上記繊維状基材に含浸した後、加熱乾燥して樹脂成分を半硬化(Bステージ化)させることによって得られる。加熱温度としては、使用した有機溶媒の種類に応じ、50〜200℃が好ましく、100〜170℃がより好ましい。加熱時間は、使用した有機溶媒の種類やプリプレグの硬化性によって調整を行い、1〜40分間が好ましく、3〜20分間がより好ましい。この際、使用する樹脂組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜80質量%となるように調整することが好ましい。
【0121】
本発明の樹脂組成物は、シート状又はフィルム状に成形して使用することができる。この場合、従来公知の方法を使用してシート化又はフィルム化することが可能である。樹脂シートを製造する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、(イ)樹脂組成物を押出機にて混練した後に押出し、Tダイやサーキュラーダイ等を用いてシート状に成形する押出成形法、(ロ)樹脂組成物を有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させた後、キャスティングしてシート状に成形するキャスティング成形法、(ハ)従来公知のその他のシート成形法等が挙げられる。また、樹脂シートの膜厚は、特に限定はされないが、例えば10〜300μm、好ましくは25〜200μm、より好ましくは40〜180μmである。ビルドアップ法で使用する場合は40〜90μmが最も好ましい。膜厚が10μm以上であれば絶縁性を得ることができるし、300μm以下であれば電極間の回路の距離が必要以上に長くならない。なお、樹脂シートの溶媒の含有量は特に限定はされないが、樹脂組成物全体に対し、0.01〜5質量%であることが好ましい。フィルム中の溶媒の含有量が樹脂組成物全体に対し、0.01質量%以上であれば、回路基板へ積層する際に密着性や接着性が得られ易く、5質量%以下であれば加熱硬化後の平坦性が得られ易い。
【0122】
より具体的な接着シートの製造方法としては、上記有機溶媒を含むワニス状の樹脂組成物を有機溶媒に溶解しない支持ベースフィルム上に、リバースロールコータ、コンマコータ、ダイコーター等の塗布機を使用して塗布した後、加熱乾燥して樹脂成分をBステージ化することで得られる。また、必要に応じて、塗布面(接着剤層)に別の支持ベースフィルムを保護フィルムとして重ね、乾燥することにより接着剤層の両面に剥離層を有する接着シートが得られる。
支持ベースフィルムとしては、銅箔等の金属箔、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフインフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、シリコンフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられ、これらの中では、つぶ等、欠損がなく、寸法精度に優れコスト的にも優れるポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。また、積層板の多層化が容易な金属箔、特に銅箔が好ましい。支持ベースフィルムの厚さは、特に限定されないが、支持体としての強度があり、ラミネート不良を起こしにくいことから10〜150μmが好ましく、25〜50μmがより好ましい。
保護フィルムの厚さは、特に限定されないが、5〜50μmが一般的である。なお、成型された接着シートを容易に剥離するため、あらかじめ離型剤にて表面処理を施しておくことが好ましい。また、樹脂ワニスを塗布する厚みは、乾燥後の厚みで、5〜200μmが好ましく、5〜100μmがより好ましい。
加熱温度としては、使用した有機溶媒の種類に応じ、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは100〜170℃である。加熱時間は、使用した有機溶媒の種類やプリプレグの硬化性によって調整を行い、好ましくは1〜40分間であり、より好ましくは3〜20分間である。
【0123】
このようにして得られた樹脂シートは通常、絶縁性を有する絶縁接着シートとなるが、樹脂組成物に導電性を有する金属や金属コーティングされた微粒子を混合することで、導電性接着シートを得ることもできる。なお、上記支持ベースフィルムは、回路基板にラミネートした後に、又は加熱硬化して絶縁層を形成した後に、剥離される。接着シートを加熱硬化した後に支持ベースフィルムを剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。ここで、上記絶縁接着シートは絶縁シートでもある。
【0124】
本発明の樹脂組成物により得られる樹脂付き金属箔について説明する。金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の単独、合金、複合の金属箔を用いることができる。厚みとして9〜70μmの金属箔を用いることが好ましい。リン含有エポキシ樹脂を含んでなる難燃性樹脂組成物及び金属箔から樹脂付き金属箔を製造する方法としては、特に限定するものではなく、例えば上記金属箔の一面に、上記リン含有樹脂組成物を溶剤で粘度調整した樹脂ワニスを、ロールコーター等を用いて塗布した後、加熱乾燥して樹脂成分を半硬化(Bステージ化)して樹脂層を形成することにより得ることができる。樹脂成分を半硬化するにあたっては、例えば、100〜200℃で1〜40分間加熱乾燥することができる。ここで、樹脂付き金属箔の樹脂部分の厚みは5〜110μmに形成することが望ましい。
【0125】
また、プリプレグや絶縁接着シートを硬化するには、一般にプリント配線板を製造するときの積層板の硬化方法を使用することができるがこれに限定されるものではない。
例えば、プリプレグを使用して積層板を形成する場合は、一枚又は複数枚のプリプレグを積層し、片側又は両側に金属箔を配置して積層物を構成し、この積層物を加圧加熱することでプリプレグを硬化、一体化させて、積層板を得ることができる。ここで金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の単独、合金、複合の金属箔を使用することができる。
【0126】
積層物を加熱加圧する条件としては、樹脂組成物が硬化する条件で適宜調整して加熱加圧すればよいが、加圧の圧量があまり低いと、得られる積層板の内部に気泡が残留し、電気的特性が低下する場合があるため、成型性を満足する条件で加圧することが望ましい。加熱温度は、160〜250℃が好ましく、170〜220℃がより好ましい。加圧圧力は、0.5〜10MPaが好ましく、1〜5MPaがより好ましい。加熱加圧時間は、10分間〜4時間が好ましく、40分間〜3時間がより好ましい。加熱温度が低いと硬化反応が十分に進行しない恐れがあり、高いと硬化物の熱分解が起こる恐れがある。加圧圧力が低いと得られる積層板の内部に気泡が残留し、電気的特性が低下する場合があり、高いと硬化する前に樹脂が流れてしまい、希望する厚みの積層板が得られない恐れがある。また、加熱加圧時間が短いと硬化反応が十分に進行しない恐れがあり、長いと硬化物の熱分解が起こる恐れがある。
【0127】
さらにこのようにして得られた単層の積層板を内層材として、多層板を作成することができる。この場合、まず積層板にアディティブ法やサブトラクティブ法等にて回路形成を施し、形成された回路表面を酸溶液で処理して黒化処理を施して、内層材を得る。この内層材の、片面又は両側の回路形成面に、プリプレグや樹脂シート、絶縁接着シートや樹脂付き金属箔にて絶縁層を形成するとともに、絶縁層の表面に導体層を形成して、多層板形成するものである。
【0128】
また、プリプレグを使用して絶縁層を形成する場合は、内層材の回路形成面に、プリプレグを一枚又は複数枚を積層したものを配置し、さらにその外側に金属箔を配置して積層体を形成する。そしてこの積層体を加熱加圧して一体成型することにより、プリプレグの硬化物を絶縁層として形成するとともに、その外側の金属箔を導体層として形成するものである。ここで、金属箔としては、内層板として使用される積層板に使用したものと同様のものを使用することができる。また加熱加圧成形は、内層材の成型と同様の条件にて行うことができる。このようにして成形された多層積層板の表面に、さらに、アディティブ法やサブトラクティブ法にてバイアホール形成や回路形成を施して、プリント配線板を成型することができる。また、このプリント配線板を内層材として上記の工法を繰り返すことにより、さらに多層の多層板を形成することができる。
【0129】
例えば、絶縁接着シートにて絶縁層を形成する場合は、複数枚の内層材の回路形成面に絶縁接着シートを配置して積層物を形成する。あるいは内層材の回路形成面と金属箔の間に絶縁接着シートを配置して積層物を形成する。そしてこの積層物を加熱加圧して一体成型することにより、絶縁接着シートの硬化物を絶縁層として形成するとともに、内層材の多層化を形成する。あるいは内層材と導体層である金属箔を絶縁接着シートの硬化物を絶縁層として形成する。ここで、金属箔としては、内層材として使用される積層板に使用したものと同様のものを使用することができる。また加熱加圧成形は、内層材の成型と同様の条件にて行うことができる。
【0130】
また、積層板に樹脂組成物を塗布して絶縁層を形成する場合は、樹脂組成物を好ましくは5〜100μmの厚みに塗布した後、100〜200℃、好ましくは150〜200℃で、1〜120分間、好ましくは30〜90分間、加熱乾燥してシート状に形成する。一般にキャスティング法と呼ばれる方法で形成されるものである。乾燥後の厚みは5〜150μm、好ましくは5〜80μmに形成することが望ましい。なお、樹脂組成物の粘度は、十分な膜厚が得られ、塗装むらやスジが発生しにくいことから、25℃において10〜40000mPa・sが好ましく、200〜30000mPa・sがさらに好ましい。このようにして形成された多層積層板の表面に、さらに、アディティブ法やサブトラクティブ法にてバイアホール形成や回路形成を施して、プリント配線板を形成することができる。また、このプリント配線板を内層材として上記の工法を繰り返すことにより、さらに多層の積層板を形成することができる。
【0131】
本発明の樹脂組成物を使用して得られる封止材としては、テープ状の半導体チップ用、ポッティング型液状封止用、アンダーフィル用、半導体の層間絶縁膜用等があり、これらに好適に使用することができる。例えば、半導体パッケージ成形としては、樹脂組成物を注型、又はトランスファー成形機、射出成形機等を使用して成形し、さらに50〜200℃で2〜10時間に加熱することにより成形物を得る方法が挙げられる。
【0132】
樹脂組成物を半導体封止材料用に調製するためには、樹脂組成物に、必要に応じて配合される、無機充填材等の配合剤や、カップリング剤、離型剤等の添加剤を予備混合した後、押出機、ニーダ、ロール等を使用して均一になるまで充分に溶融混合する手法が挙げられる。その際、無機充填剤としては、通常シリカが使用されるが、その場合、樹脂組成物中、無機質充填剤を70〜95質量%となる割合で配合することが好ましい。
【0133】
このようにして得られた樹脂組成物を、テープ状封止材として使用する場合には、これを加熱して半硬化シートを作製し、封止材テープとした後、この封止材テープを半導体チップ上に置き、100〜150℃に加熱して軟化させ成形し、170〜250℃で完全に硬化させる方法を挙げることができる。また、ポッティング型液状封止材として使用する場合には、得られた樹脂組成物を必要に応じて溶媒に溶解した後、半導体チップや電子部品上に塗布し、直接、硬化させればよい。
【0134】
また、本発明の樹脂組成物は、さらにレジストインキとして使用することも可能である。この場合は、樹脂組成物に、エチレン性不飽和二重結合を有するビニル系モノマーと、硬化剤としてカチオン重合触媒を配合し、さらに、顔料、タルク、及びフィラーを加えてレジストインキ用組成物とした後、スクリーン印刷方式にてプリント基板上に塗布した後、レジストインキ硬化物とする方法が挙げられる。この時の硬化温度は、20〜250℃程度の温度範囲が好ましい。
【0135】
本発明の樹脂組成物から得られる硬化物は、耐熱性や難燃性が優れるため、リン含有フェノキシ樹脂にさまざまな特性を付与するための骨格の導入が容易となる。そのため、特に、難燃性とともに、誘電特性、低吸水性、溶剤溶解性等の特定の特性が必要な多層プリント配線基板、フィルム状接着剤、アンダーフィル材料、絶縁シート、プリプレグ等として有用である。
【実施例】
【0136】
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。特に断りがない限り、部は質量部を表し、%は質量%を表す。
分析方法、測定方法を以下に示す。
【0137】
(1)エポキシ当量:
JIS K7236規格に準拠して測定を行い、単位はg/eq.である。
不揮発分から固形分換算値としての数値を算出した。
(2)重量平均分子量(Mw):
GPC測定により求めた。具体的には、本体(東ソー株式会社製、HLC−8320GPC)にカラム(東ソー株式会社製、TSKgel SuperH−H、SuperH2000、SuperHM−H、SuperHM−H)を直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にした。また、溶離液はDMF(20mM臭化リチウム含有品)を使用し、0.3mL/分の流速とし、検出器はRI検出器を使用した。測定試料は固形分で0.1gを10mLのDMFに溶解し、0.45μmのマイクロフィルターでろ過したものを20μL使用した。標準ポリエチレンオキシド(東ソー株式会社製、SE−2、SE−5、SE−8、SE−15、SE−30、SE−70、SE−150)より求めた検量線より換算して、Mwを求めた。なお、データ処理は東ソー株式会社製GPC−8020モデルIIバージョン6.00を使用した。
【0138】
(3)リン含有率:
試料に硫酸、塩酸、過塩素酸を加え、加熱して湿式灰化し、全てのリン原子をオルトリン酸とした。硫酸酸性溶液中でメタバナジン酸塩及びモリブデン酸塩を反応させ、生じたリンバナードモリブデン酸錯体の420nmにおける吸光度を測定し、予め作成した検量線により求めたリン含有率を%で表した。
(4)ガラス転移温度(Tg):
IPC−TM−650 2.4.25.cに準じて測定した。具体的には、示差走査熱量測定の2サイクル目に得られたDSCチャートの補外ガラス転移開始温度(Tig)で表した。示差走査熱量測定装置は、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の「EXSTAR6000 DSC6200」を使用した。測定試料は、樹脂フィルムをパンチングし、積層、アルミニウム製カプセルにパッキングして使用した。測定は、10℃/分の昇温速度で室温から240℃までを2サイクル行った。
(5)難燃性:
UL94VTM(Underwriters Laboratories Inc.の安全認証規格)に準じ、垂直法により評価した。評価はVTM−0、VTM−1、VTM−2で記した。難燃性はVTM−0が最も優れており、VTM−1、VTM−2の順に劣っていく。但し、完全に燃焼したものは、Xと記した。
(6)吸水率:
樹脂フィルムを50mm×50mm角に切り出した試験片5枚を用いて測定を行った。熱風循環式オーブンを用いて空気雰囲気下100℃にて試験片を10分間乾燥させた後直ちに質量を測定し、その試験片を50℃の温水に浸水させ、48時間後の質量増分から吸水率を求めた。
【0139】
合成例1
撹拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、冷却管及び水分離器を備えた反応装置に、室温下で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを200部、DOPOを108部、水を4.2部(水/DOPOのモル比=0.47)仕込み、窒素雰囲気下で70℃まで昇温して完全に溶解した。そこに、NQ78.9部(NQ/DOPOのモル比=0.999)を30分かけて仕込んだ。仕込み終了後、還流が開始する145℃まで昇温し、還流温度を保ちながら5時間反応を継続した。
得られた生成物を室温まで冷却しで吸引濾過により濾別した。濾滓に2500部の酢酸ベンジルを加え加熱し完全に溶解した後、室温まで冷却し1日静置し、生成した沈殿物を吸引濾過により濾別した。濾液を39%含水メタノール中に投入し、生成した沈殿物を吸引濾過により濾別し、濾滓として、下記式(9)で表されるリン含有2官能フェノール化合物(純度99%以上)を得た。
【0140】
【化12】
【0141】
合成例2
合成例1と同様な装置に、室温下で、DOPOを108部、BQを53部(BQ/DOPOのモル比=0.98)、水を1.8部(水/DOPOのモル比=0.20)、PMAを200部仕込み、窒素雰囲気下で還流が開始する145℃まで昇温し、還流状態を保ちながら3時間反応を継続した。
得られた生成物を室温まで冷却しで吸引濾過により濾別した。濾滓に2500部の酢酸ベンジルを加え加熱し完全に溶解した後、室温まで冷却し1日静置し、生成した沈殿物を吸引濾過により濾別した。濾液を39%含水メタノール中に投入し、生成した沈殿物を吸引濾過により濾別し、濾滓として下記式(10)で表されるリン含有2官能フェノール化合物(純度99%以上)を得た。
【0142】
【化13】
【0143】
実施例及び比較例で使用した略号の説明は以下のとおりである。
【0144】
[2官能エポキシ樹脂]
(A−1):ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、製品名:YD−8125、エポキシ当量:172、式(8)の繰返し数j≒0.01)
(A−2):3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールのエポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、製品名:YX−4000、エポキシ当量:186、j≒0.06)
(A−3):4,4’−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ビスフェノールのエポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、製品名:TX−1468、エポキシ当量:218、j≒0.04)
(A−4):ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、製品名:YDF−170、エポキシ当量:169)
(A−5):フェノールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、製品名:YDPN−638、エポキシ当量:177)
【0145】
[2官能フェノール化合物]
(B−1):合成例1で得られたリン含有2官能フェノール化合物(水酸基当量:294、リン含有率10.5%)
(B−2):合成例2で得られたリン含有2官能フェノール化合物(水酸基当量:269、リン含有率11.5%)
(B−3):リン含有化合物、DOPO−HQ(三光化学株式会社製、製品名:HCA−HQ、水酸基当量:162、リン含有率9.5%)
(B−4):リン含有化合物、DOPO−NQ(三光化学株式会社製、製品名:HCA−NQ、水酸基当量:187、リン含有率8.3%)
(B−5):ビスフェノールA(新日鉄住金化学株式会社製、水酸基当量:114)
【0146】
[触媒]
(C−1):2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、製品名:キュアゾール2E4MZ)
(C−2):トリフェニルホスフィン(試薬)
(C−3):トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン(試薬)
【0147】
[硬化剤]
DICY:ジシアンジアミド(日本カーバイド工業株式会社製、製品名:DIHARD、活性水素当量21)
【0148】
実施例1
撹拌装置、温度計、窒素ガス導入装置及び冷却管を備えた反応装置に、室温下で、(A−1)561部、(B−2)130部、(B−5)309部、ジエチレングリコールジメチルエーテル430部を仕込み、窒素ガスを流し撹拌しながら145℃まで昇温し、(C−1)0.1部を添加した後、165℃まで昇温し、同温度で10時間反応を行った。メチルセロソルブ800部、シクロペンタノン800部で希釈混合して、不揮発分33%のリン含有フェノキシ樹脂の樹脂ワニス1を得た。この樹脂ワニスを離型フィルム(ポリイミドフィルム製)に溶剤乾燥後のフィルムの厚みが60μmになる様にローラーコーターにて塗布し、150℃で10分間乾燥した後、離形フィルムから乾燥フィルムをはがした。乾燥フィルム2枚を重ねて、真空プレス機を使用して、真空度0.5kPa、乾燥温度180℃、プレス圧力2MPaの条件で60分間プレスして、厚さ100μmの樹脂フィルムを得た。なお、厚み調整のために、厚さ100μmのスペーサーを使用した。
樹脂ワニスを用いてエポキシ当量及びMwを、樹脂フィルムを用いてリン含有率、Tg、燃焼性及び吸水率をそれぞれ測定し、その結果を表1に示す。なお、表中のモル比は、(原料エポキシ樹脂のエポキシ基)/(原料2官能フェノール化合物の水酸基)のモル比を表す。X1(モル%)は、式(1)のX全体モル数における基(X1)の割合をモル%で表したものである。
【0149】
実施例2〜7
表1に記載の配合比率(部)により、実施例1と同様の装置を使用して、同様の操作で、樹脂ワニス2〜7及び樹脂フィルムを得た。エポキシ当量、Mw、リン含有率、Tg、燃焼性、及び吸水率の測定結果を表1に示す。
【0150】
比較例1〜6
表2に記載の配合比率(部)により、実施例1と同様の装置を使用して、同様の操作で、樹脂ワニスH1〜H6及び樹脂フィルムを得た。エポキシ当量、Mw、リン含有率、Tg、燃焼性、及び吸水率の測定結果を表2に示す。
【0151】
【表1】
【0152】
【表2】
【0153】
実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、実施例5と比較例4、実施例6と比較例5及び実施例7と比較例6は、いずれも式(3)で表されるリン含有基を含有し、リン含有率、エポキシ当量及びMwをほぼ同等にした場合の比較で、比較例は基(X1)を有さない点で相違するが、全ての場合で、実施例が比較例より難燃性、耐熱性が優れることが分かる。また、実施例5、実施例6及び実施例7から、基(X2)の種類を変化させても、難燃性に優れることが分かる。
実施例3と比較例3は、難燃性がVTM−0を満足するまでリン含有率を高めた場合での比較であって、基(X1)を有する実施例は耐熱性、耐水性に優れることが分かる。
実施例4と比較例3は、吸水率を同じにした場合での比較であって、基(X1)を有する実施例は耐熱性、耐水性に優れること、リン含有率を高くすることができることが分かる。
これらから、基(X2)の導入範囲が広くなり、すなわちさまざまな特性の付与が可能であることが分かる。
【0154】
実施例8
実施例1で得られた樹脂ワニス1を303部、エポキシ樹脂として(A−4)を100部、硬化剤としてDICYを6.2部、硬化促進剤として(C−1)を0.2部、溶剤としてメチルセロソルブを50部とDMFを50部加えて均一に撹拌混合して、組成物ワニスを得た。この組成物ワニスを離型フィルムに溶剤乾燥後の乾燥フィルムの厚みが60μmになる様にローラーコーターにて塗布し、150℃で10分間乾燥した後、離形フィルムから乾燥フィルムをはがした。乾燥フィルム2枚を重ねて、真空プレス機を使用して、真空度0.5kPa、加熱温度200℃、プレス圧力2MPaの条件で60分間プレスして、厚さ100μmの硬化フィルムを得た。なお、厚み調整のために、厚さ100μmのスペーサーを使用した。
【0155】
実施例9〜11比較例7〜8
表3に記載の配合比率(部)により、実施例8と同様の操作で、エポキシ樹脂組成物ワニス及び硬化フィルムを得た。硬化フィルムについて、Tg、燃焼性及び吸水率の測定し、その結果を表3に示す。
【0156】
【表3】
【0157】
実施例8と比較例7、実施例9と比較例8は、同じ配合であるが、実施例は耐熱性、吸水性が優れることが分かる。