【課題】短時間での大気硬化が可能であり、耐擦傷性および透明性等に優れたハードコーティング材として有用な硬化性樹脂組成物から成るハードコーティング液を用いた積層体を提供する。
下記(A)成分と(B)成分の部分加水分解縮合物であって、エポキシ当量(g/eq)が200〜4000である部分加水分解縮合物、(C)成分の硬化触媒、及び(D)成分の有機溶剤を含むハードコーティング液から形成される硬質樹脂層と、基材層とを有する積層体:
樹脂層が、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリ尿素樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シロキサン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂の単独または2種以上を併用してなる請求項2に記載の積層体。
基材の表面処理層が、アンカー処理、カップリング剤処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、コロナ放電処理、ブラスト処理、ブラシ処理、研磨処理、エッチング処理、化成処理、陽極酸化から選ばれる処理で形成される請求項3に記載の積層体。
請求項1に記載の積層体を製造する方法であって、ハードコーティング液を基材に塗布後、乾燥した後、活性エネルギー線照射又は加熱により硬化することを特徴とする積層体の製造方法。
請求項2に記載の積層体を製造する方法であって、ハードコーティング液を基材上の樹脂層に塗布後、乾燥した後、活性エネルギー線照射又は加熱により硬化することを特徴とする積層体の製造方法。
ハードコーティング液をフローコート法、ローラーコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、カーテンコート法およびディッピング法から選択される何れかの方法で塗工する請求項16または17に記載の積層体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の積層体は、基材層に、必要に応じて別の樹脂層を介して、ハードコーティング被膜としての硬質シロキサン樹脂層を形成してなる。
ハードコーティング被膜は、上記(A)成分と(B)成分の部分加水分解縮合物を含むシロキサン系硬化性樹脂と、硬化触媒(C)及び有機溶剤(D)を含むハードコーティング液から形成される。
【0013】
本発明のハードコーティング被膜を形成するために使用されるハードコーティング液において、シロキサン系硬化性樹脂組成物は、上記(A)成分と(B)成分の部分加水分解縮合物を含む。この部分加水分解縮合物は、エポキシ当量が200〜4000(g/eq)である。本発明のシロキサン系硬化性樹脂組成物は、他の成分を含んでいてもよい。
【0014】
(A)成分は、上記一般式(i)で表されるイソシアヌレート環構造を有するアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物である。イソシアヌレート環構造を有する(A)成分によって、縮合物や硬化物が多分岐構造になることから、結合が三次元的に長く広がり、脆さが改善されると考えられる。
一般式(i)において、R
1は炭素数1〜15の有機基を示し、R
2は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、R
3は炭素数1〜6の有機基を示し、aは0〜2の数を示し、Xは独立に水素原子、炭素数1〜15の有機基又は式(ii)で表されるシリルアルキル基を示す。式(i)と式(ii)において、共通する記号は同じ意味を有する。
R
1、R
2、R
3及びXにおいて、これらが有機基である場合は、好ましくは炭化水素基であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基である。なお、炭素数が6以上の場合は芳香族炭化水素基であってもよい。
Xとしては、好ましくは少なくとも一つが式(ii)で表されるシリルアルキル基であり、より好ましくはXの二つがいずれも式(ii)で表されるシリルアルキル基である。aは好ましくは0又は1である。
【0015】
ここで、上記部分加水分解縮合物とは、2量体以上であって、アルコキシシラン基の一部が加水分解して部分的に縮合し、アルコキシシラン基又は水酸基を有する縮合物を意味する。一方、完全加水分解縮合物は水酸基が縮合反応によってほぼ消費され、これ以上縮合反応が進行しないことで区別される。
【0016】
一般式(i)で表されるイソシアヌレート環構造を有するアルコキシシランの例としては、1,3,5‐トリス(メチルジメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5‐トリス(メチルジエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5‐トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5‐トリス(トリメトキシシリルエチル)イソシアヌレート、1,3‐(ジ‐2-プロペン-1-イル)-5-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1‐(2-プロペン-1-イル)-3,5-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3‐ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1-グリシジルメチル-3,5-ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3-ビス(グリシジルメチル)-5-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1-グリシジルメチル-3-(2−プロペン-1-イル)-5-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3‐ジメチル-5-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。好ましくは、1,3,5‐トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5‐トリス(メチルジエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5‐トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5‐トリス(トリメトキシシリルエチル)イソシアヌレートである。
【0017】
上記(B)成分は、上記式(iii)で表されるエポキシ基又はオキセタン基を有するアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物であるシロキサン樹脂である。エポキシ基又はオキセタン基を有する(B)成分によって、耐擦傷性や保存安定性が改善されると考えられる。
【0018】
式(iii)において、R
4はエポキシ基又はオキセタン基を含む炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10の有機基である。R
5はエポキシ基及びオキセタン基をいずれも含まない炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜4の有機基である。R
6は水素または炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜2のアルキル基を示す。R
4、R
5における有機基としてはアルキル基が好ましく、R
4における有機基としては末端にグリシジル基、脂環エポキシ基、オキセタン基を有するアルキル基が好ましい。R
4における有機基の炭素数の計算には、エポキシ基又はオキセタン基が有する炭素数は含まない。エポキシ基又はオキセタン基が有する炭素数を含む場合は、上記炭素数に2から3が加えられる。
【0019】
式(iii)において、b、cはそれぞれ0<b≦1、0≦c≦2の数(平均値)を示し、b+cは0<b+c≦2を満足する。4−b−cは2又は3の数であることが好ましい。bは好ましくは0.1以上である。
【0020】
式(iii)で表されるエポキシ基又はオキセタン基を有するアルコキシシランとしては、例えば、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、4−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシ(2−エチル)プロピルトリメトキシシラン、4−グリシジルブチルトリメトキシシラン、8−グリシドキシオクチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリエトキシシラン、3−[(3−エチルオキセタンー3−イル)メトキシ]プロピルトリメトキシシランなどの環状エーテルを有するシラン化合物が例示できる。好ましくは、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−[(3−エチルオキセタンー3−イル)メトキシ]プロピルトリメトキシシランである。
【0021】
式(iii)のアルコキシシランの部分加水分解縮合物は、式(i)のアルコキシシランと同様にこれを部分加水分解して得られる。
【0022】
配合割合(モル比)は、(B)成分1モルに対して、(A)成分0.01〜7モルが好ましく、0.01〜1.5モルがより好ましい。
【0023】
(A)成分と(B)成分の部分加水分解縮合物は、(A)成分と(B)成分を含む混合物の部分加水分解縮合物である。(A)成分と(B)成分を含む混合物中には、本発明の目的を阻害しない限り、その他のシラン化合物またはその(部分)加水分解物を含むことができる。
その他のシラン化合物として、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシシラン、3−メタクロキシプロピルメチルジメトキシシランなどのアルコキシシランが挙げられる。これらのオルガノシランは単独で又は2種以上を併用して使用できる。
【0024】
(A)成分と(B)成分の部分加水分解縮合物は、(A)成分と(B)成分を含む混合物の部分加水分解縮合物である。加水分解はアルコキシ基の全部が加水分解されOH基となる程度になされていることが好ましいが、Si-OH基が縮合してシロキサン結合となる縮合は部分的になされている状態である。縮合が進み過ぎるとゲル化して、溶媒に溶解又は分散させることができない。また、(A)、(B)成分を単独で部分加水分解した後、混合して更に加水分解縮合されたものでもよい。
【0025】
これらの加水分解縮合物はシロキサン樹脂であり、その平均分子量(Mw)が、好ましくは300〜60000、より好ましくは400〜30000である。
【0026】
(A)成分と(B)成分の部分加水分解縮合物は、エポキシ基又はオキセタンを有し、且つエポキシ当量が200〜4000であり、好ましくは200〜1000、より好ましくは200〜500である。このエポキシ当量からも、分子量が計算可能である。
本発明において、上記部分加水分解縮合物は、加水分解の際に加えられた触媒や溶剤、未反応で残る水、縮合で生じる水を含まず、部分加水分解縮合で生じたSi含有化合物だけ、いわゆるシロキサン樹脂成分をいう。
エポキシ当量(g/eq)は、エポキシ当量が下限未満であると、耐擦傷性や保存安定性が低下してしまう。エポキシ当量が上限を超えると、得られる膜は脆くなり靱性が低下する。本発明の樹脂組成物において、エポキシ当量とは、1当量のエポキシ基を有するシロキサン樹脂の質量をいい、溶剤等の質量は含まない。なお、(B)成分がエポキシ基ではなくオキセタン基を有する場合であっても、オキセタン当量はエポキシ当量と同じ値になることから、エポキシ当量として理解できる。
なお、(B)成分とともに、エポキシ樹脂を添加することにより、組成物におけるエポキシ当量を調整してもよい。こうしたエポキシ樹脂としては、汎用の二官能エポキシ樹脂例えばビスフェノール型エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂例えばフェノールノボラックエポキシ樹脂を使用できる。
【0027】
加水分解する方法は、鎖状のシロキサン構造を得るため、溶液をpH1〜7、好ましくはpH2〜5の酸性水で加水分解させることがよい。このpH調整には、塩酸、硝酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、クエン酸、マレイン酸、安息香酸、マロン酸、グルタール酸、グリコール酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの有機酸又は無機酸を用いることができる。また、表面にカルボン酸基やスルホン酸基を有する陽イオン交換樹脂等を用いてもよい。上記酸又は酸触媒の使用量は、生成物(部分加水分解縮合物)に対して0.0001〜20重量%であることが好ましい。
【0028】
加水分解反応においては水の存在が必要である。水の量は、上記シラン化合物における加水分解性基(の一部)を加水分解するのに十分な量以上であればよく、加水分解性基の数の理論量(モル)の0.5〜2.0倍モルに相当する量であることが好ましい。より好ましくは0.7〜1.5倍モルである。また、酸又は触媒が水溶液として加えられる場合は、その水を計算に加える。水が少ない場合は、十分な加水分解が進行せず、多い場合には、残存する水により塗工性や乾燥効率が低下する。
【0029】
加水分解と同時に生成したシラノール基の脱水縮合反応が生じて、シロキサン樹脂組成物となる。この縮合を行う温度は、常温または120℃以下の加熱下であり、より好ましくは30℃以上100℃以下である。温度が低い場合には、加水分解および縮合反応の時間が長く、生産性が低くなり、温度が範囲を超えて高い場合には、不溶化する恐れがある。
【0030】
上記加水分解及び縮合の反応速度および生成する樹脂組成物の分子量を調整する目的で、各種の有機溶媒を混合しても良い。例えば、アルコール類としては、メタノール、エタノール、ブタノール、イソブタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、t−ブタノール、sec−ブタノール、ベンジルアルコール、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エステル系としては、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、エーテル類としては、イソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリコールエステル系としては、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メトキシプロピルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、グリコールエーテル系としては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ブチルジグリコール、メチルトリグリコール、1-メトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、芳香族炭化水素系としては、ベンゼン、トルエン、キシレンが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で又は2種以上を併用して使用できる。
【0031】
有機溶剤の混合量は、加水分解する成分の全体量を100重量部とした場合、10重量部〜2000重量部であることが好ましい。ただし、(B)成分の配合量が多い場合には、有機溶剤を使用しない無溶剤にて加水分解及び縮合することもできる。
【0032】
本発明のハードコーティング被膜(硬質シロキサン樹脂層)を形成するために使用されるハードコーティング液組成物は、(A)成分と(B)成分の部分加水分解縮合物がエポキシ基又はオキセタン基を有し、エポキシ樹脂類でもあるため、これを硬化させるための硬化触媒を(C)成分として配合することがよい。
硬化触媒(C)は、加熱又は活性エネルギー線照射によって酸または塩基を発生する発生剤、あるいは硬化促進剤を適用できる。発生剤として例えば、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、オキソニウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。具体的には、サンエイドSIシリーズ(三新化学社製)、TAまたはCPI、IKシリーズ(サンアプロ社製)、アデカアークルズSPシリーズ(ADEKA社製)、WPIシリーズ(和光純薬工業社製)、WPBGシリーズ(和光純薬工業社製)、イルガキュアシリーズ(BASF社製)、O0395、A2502(東京化成)等が例示できる。活性エネルギー線による硬化の場合には、開始剤と組み合わせて効果を発揮する増感剤やラジカル重合開始剤等の光開始助剤や鋭感剤を併用する事もできる。
加熱による硬化促進剤としては、アミンアダクト系、ヒドラジド系、イミダゾール系が挙げられる。具体的には、アミキュアPNシリーズ(味の素ファインテクノ社製)、フジキュアーFXRシリーズ(TOKA社製)、イミダゾール化合物シリーズ(四国化成社製)等が例示できる。
【0033】
(C)成分の添加量は、上記(A)成分と(B)成分の部分加水分解縮合物100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは1〜7重量部の範囲である。この範囲に満たないと架橋が不十分になって弾性率が低下し、所望する表面高度が得られない。この範囲を超えて添加しても更なる反応率の向上は望めない。
【0034】
ハードコーティング液組成物に配合される(D)成分は、有機溶剤である。有機溶剤(D)としては、加水分解時に混合する有機溶媒と同じものが例示でき、加水分解時に混合する溶媒と同じでも異なっていてもよい。(D)成分の配合量は、上記部分加水分解縮合物100重量部に対して、10重量部から5000重量部であることが好ましく、100〜1000重量部がより好ましい。なお(D)成分の配合量は、加水分解時に混合する溶媒の量も含めた量である。
【0035】
本発明のハードコーティング液組成物には、必要によりその他の成分を配合することができる。その他の成分としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、有機/無機フィラー、可塑剤、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線遮蔽剤、表面調整剤、密着付与剤、滑剤、帯電防止剤、離型剤、発泡剤、核剤、着色剤、架橋剤、分散助剤、さらには、反応を促進させる目的で他の樹脂成分例えば他のシロキサン樹脂、有機アクリレート又はビニル化合物等を例示することができる。
【0036】
基材または基材に別の樹脂層を介してのハードコーティング被膜の形成は、基材または樹脂層の上に、上記各成分を含むハードコーティング液を、塗布してから、乾燥後、これを紫外線照射により光硬化させるか又は加熱により熱硬化させることが望ましい。この硬化は、エポキシ基又はオキセタン基が重合して起こる他、エポキシ基又はオキセタン基とシラノール基の付加反応およびシラノール基の縮合による架橋反応も寄与する。光硬化させる場合は、シラノール基の縮合を十分に進行させるため、加熱硬化工程を設けることが望ましい。
【0037】
ハードコーティング被膜を形成する方法として、上記ハードコーティング液を使用し、例えば、流涎法、ローラーコート法、バーコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、フローコート法、カーテンコート法およびディッピング法が挙げられる。なお、塗工膜厚は、乾燥、活性エネルギー線の照射による硬化後の形成膜厚を考慮して、固形分濃度により調整する。
【0038】
ハードコーティング液の塗布後は、溶剤を乾燥等により除去することが好ましい。乾燥温度は、用いる基材が変形しない条件とし、乾燥時間は、生産性の観点から1時間以下が好ましい。
【0039】
本発明の積層体において、耐擦傷性および付着性の観点から、ハードコーティング被膜の厚みは0.5〜50μm、好ましくは1〜20μmである。
【0040】
ハードコーティング被膜形成工程では、光活性の硬化触媒を用いる場合には、活性エネルギー線は照度が100mW/cm
2以上で、積算光量が1000mJ/cm
2以上の条件で照射することが好ましい。照射量が低い場合は、架橋形成が不十分であり、所望の耐擦傷性の性能が得られない。
【0041】
また、活性エネルギー線の照射による硬化の後、加熱処理を施してもよい。硬化温度は、用いる基材が変形しない条件とし、シロキサン樹脂の加水分解縮合を促進させ、更には、発生した酸または塩基を拡散しエポキシ基又はオキセタン基の硬化反応を促進させるために行う。温度条件としては、70〜150℃、好ましくは80〜120℃である。
【0042】
一方、熱活性の硬化触媒を用いる場合には、硬化温度は、用いる基材が変形しない条件とし、硬化時間は、生産性の観点から1時間以下が好ましい。
【0043】
基材としては、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、金属、ガラス、木材、紙、石の何れかが適用できる。具体的には、熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合樹脂、ポリメチルメタクリル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、シクロオレフィンコポリマー、エラストマー等が挙げられる。硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、シロキサン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。金属としては、アルミニウム、マグネシウム、銅、鉄等の鋼板やこれらの合金鋼板、各種メッキ鋼板が挙げられる。木材としては、ケヤキ、ヒノキ、スギ、アカマツ、アボジラ、ローズウッド、ウォルナット、チーク、マホガニー、ホワイトオーク、アイアンウッド、チェリー、ブナ、メイプル、ラバーウッド、クリ、クルミ、ナラ、タモ、パイン、ホウ等の各種木材が挙げられる。紙としては、人工セルロール繊維由来、ユーカリ、アカシア等の木材由来、アサ、コウゾ、竹等の非木材由来が挙げられ、更にこれと無機微粒子との複合物、または樹脂との複合物からなるものなどが挙げられる。ガラスとしては、フロートガラス、強化ガラス、耐熱ガラス、防火ガラス、デザインガラス、色ガラス、合わせガラス、熱線反射ガラス等の各種ガラスが挙げられる。石としては、火成岩、堆積岩、変成岩などの天然石や人工大理石等が挙げられる。
【0044】
硬質樹脂層と基材との間に、接着性や耐候性などの機能性、あるいは意匠性を付与する目的で、単層または複数層の樹脂層を介してもよく、この樹脂層は単層の場合には基材に適した、複数層の場合には下地樹脂層に適した市販のプライマー材や接着材、印刷材等の硬化性樹脂を用いることができる。樹脂として、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリ尿素樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シロキサン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などが例示できる。上記樹脂層の樹脂種として、具体的に下記に例示するが、特に限定するものではない。
【0045】
アクリル樹脂としては、分子量500以下の多官能アクリルモノマーを含むアクリル組成物を硬化してなる硬化樹脂が好ましい。多官能アクリルモノマーとしては、多官能(メタ)アクリレートが挙げられ、例えば分子内に2個または3個の(メタ)アクリル基を有する多官能アクリレートが好ましく、脂肪族アクリレート、脂環式アクリレート、エポキシアクリレート等が挙げられる。また、多官能アクリルモノマーを含むアクリル組成物中には、エポキシ基を有する化合物を含むことが望ましく、エポキシアクリレート等のエポキシ基含有多官能アクリルモノマーであることがより望ましい。
【0046】
上記多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジシクロペンタニルジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール型エポキシアクリレート、トリメチロールプロパン型エポキシアクリレート、イソシアネートと水酸基を有するアクリレートを反応させたウレタンアクリレート等が挙げられる。これ
らの(メタ)アクリレートは単独でも、二種類以上を混合して使用してもよい。
【0047】
上記アクリル組成物を硬化する際には、重合開始剤としての光重合開始剤を添加することが好ましく、この添加量は樹脂組成物の合計100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲であることが好ましい。この範囲に満たないと架橋が不十分になって弾性率が低下し、所望する表面高度が得られない。反対にこの範囲を超えて含有しても更なる反応率の向上は望めない。
【0048】
ウレタン樹脂としては、脂肪族または芳香族のポリエステルポリオール化合物とジ、トリまたはポリイソシアネート化合物またはメラミン樹脂の硬化樹脂が挙げられる。
【0049】
上記ポリオールとしては、例えば多塩基酸と多価アルコールを重縮合して得られるポリエステルポリオール、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシド、テトラヒドロフラン、アルキル置換テトラヒドロフラン等の環状エーテルの重合体又はこれらの2種以上の共重合体であるポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0050】
ポリイソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4 −ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロペンタジエンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等が挙げられる。
【0051】
ウレタン樹脂は、上記反応性基の他に反応性基を有していてもよく、例えば、アミノ基、(メタ)アクリレート基、ビニル基、メルカプト基、エポキシ基等が挙げられる。
【0052】
ポリ尿素樹脂としては、ポリアミンとポリイソシアネートの硬化樹脂が挙げられる。ポリアミンとしては、アミノ基を少なくとも2個以上有し、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンであってもよい、脂肪族アミン、芳香族アミン、変性アミンが上げられる。具体的には、1,2−ジアミノプロパン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、1,3−ジアミノペンタン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,6−ジアミノヘキサン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、3−(シクロヘキシルアミノ)プロピルアミン、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’−[1,4−ブタンジイルビス−(オキシ)ビス]−1−プロパンアミン、メンタンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、ジエチレンテトラアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、メンセンジアミン、イソフルオロジアミン、m−キシレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。ポリイソシアネートについては、前記ウレタン樹脂に記載したものと同じものが挙げられる。
【0053】
エポキシ樹脂としては、エポキシ基を少なくとも2個以上有するエポキシ樹脂をイソシアネートもしくはメラミン樹脂で硬化させた硬化性樹脂が挙げられ、脂肪族エポキシ、芳香族エポキシ、変性エポキシなどの公知のエポキシ基含有樹脂を使用することができる。具体的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂等を挙げることができる。ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等およびこれらの臭素化物、水添加物が例示される。ノボラック型エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が例示される。芳香族エポキシ樹脂としては、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等が例示される。変性エポキシ樹脂としては、エポキシ基含有樹脂のエポキシ基の一部に、乾性油脂肪酸を反応させたエポキシエステル樹脂、各種エポキシ基含有樹脂のエポキシ基にアクリル酸又はメタクリル酸などを含有する重合性不飽和モノマー成分を反応させたエポキシアクリレート樹脂、水酸基を有するエポキシ基含有樹脂にポリイソシアネート化合物とポリオール化合物を反応させたウレタン変性エポキシ基含有樹脂、水酸基を有するエポキシ基含有樹脂にポリオキシアルキレン化合物を反応させたポリオキシアルキレン変性エポキシ基含有樹脂などを挙げることができる。
【0054】
フェノール樹脂としては、ノボラック型樹脂とレゾール型が挙げられるが、レゾール型が好ましく、エポキシ樹脂と併用してすることが好ましい。
【0055】
シロキサン樹脂としては、本発明の請求項に含まれないシロキサン結合が1つ以上結合した、ラダー型、ランダム型、かご型、はしご型などの硬化性樹脂であり、アルコキシ基含有シロキサン、シラノール基含有シロキサン、(メタ)アクリル基含有シロキサン、エポキシ基含有シロキサン、メルカプト基含有シロキサン、アミノ基含有シロキサン、スチリル基含有シロキサン、イソシアネート基含有シロキサン、ウレイド基含有シロキサン、ビニル基含有シロキサン、スルフィド基含有シロキサン等が挙げられる。これらの反応性官能基は単独または2個以上混在していてもよい。
【0056】
ポリイミド樹脂としては、酸無水物と芳香族ジアミンから誘導される樹脂、酸無水物と脂肪族ジアミンから誘導される樹脂、またはこれらを2種以上併用しても良く、樹脂層が複数層ある場合には下地層、あるいは基材の外観を損なわないために透明ポリイミド樹脂が好ましい。ピロメリット酸二無水物(PMDA)、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、ベンゾフェノン‐3,4,3’,4’‐テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン‐3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2’−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物等である。一方、ジアミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−アミノベンジルオキシフェニル)プロパン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0057】
本発明の積層体において、上記樹脂層に用いる樹脂組成物は、硬化を促進させる目的で、光硬化の場合には、光重合開始剤、光酸発生剤、光塩基発生剤を併用することが好ましく、熱硬化の場合には、熱重合開始剤、熱酸発生剤、アミン系硬化剤、カプロラクトン系硬化剤などを併用することが好ましい。これら硬化促進剤の配合量としては樹脂組成物100重量部に対して、0.1重量部から20重量部が好ましく、0.1から10重量部が望ましい。
【0058】
上記樹脂層に用いる樹脂組成物は、溶剤に溶解して、溶液として基材等に塗布して層を形成してから、硬化させることが望ましい。
溶剤としては、固形分濃度調整、分散安定性向上、塗布性向上、基材への密着性向上等を目的として、有機溶媒が挙げられる。例えば、アルコール類としては、メタノール、エタノール、ブタノール、イソブタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、t−ブタノール、sec−ブタノール、ベンジルアルコール、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エステル系としては、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、エーテル類としては、イソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリコールエステル系としては、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メトキシプロピルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、グリコールエーテル系としては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ブチルジグリコール、メチルトリグリコール、1-メトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、炭酸水素系としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、その他としてN−メチルー2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ―ブチロラクトンなどが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で又は2種以上を併用して使用できる。
【0059】
基材への樹脂層の形成方法は、各種樹脂の溶液を塗布して乾燥後、加熱あるいは活性エネルギー線照射の何れかで形成することができる。硬化条件としては、後に塗工するハードコーティング被膜形成工程で白濁や溶出が生じない程度の架橋が形成されていればよく、完全に架橋を形成させないことが好ましい。
【0060】
樹脂層を形成する方法として、例えば、流涎法、ローラーコート法、バーコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、フローコート法、カーテンコート法およびディッピング法が挙げられる。なお、塗工膜厚は、乾燥と硬化後の形成膜厚を考慮して、固形分濃度により調整する。
【0061】
上記樹脂層には、柔軟性や密着性などを改善する目的で、熱可塑性樹脂、ゴム粒子などを混合してもよい。配合量としては、硬化性樹脂の硬化性を損なわない範囲で配合することが望ましく、硬化性樹脂100重量部に対して、熱可塑性樹脂0〜50重量部が望ましい。
【0062】
本発明の積層体において、基材は表面処理して表面処理層を形成してもよい。基材の表面処理としては、硬質樹脂層あるいは樹脂層と化学的結合、静電結合や凹凸によるアンカー効果により接着性を付与する目的で施されるものであり、一般的なアンカー処理、カップリング剤処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、コロナ放電処理、ブラスト処理、ブラシ処理、研磨処理、エッチング処理、化成処理、陽極酸化などが挙げられる。
【0063】
基材が樹脂である場合、樹脂基材は、必要に応じて金属光沢を付与する無機材料の薄膜被膜や電子回路等の各種配線を施されていてもよい。
【0064】
本発明の積層体は、硬質シロキサン樹脂層からなるハードコーティング被膜を表面に備えることから、耐擦傷性および透明性に優れ、しかも短時間での大気硬化によって形成できることから、多種多様な用途に適用できる。例えば、タッチパネル、導電性フィルム、反射防止フィルム、反射フィルム、拡散フィルム、飛散防止フィルム、保護フィルム、前面板、筐体、ボタン、センサーなどのディスプレイや電子機器部材や、窓、インストルメントパネル、内外装、パーティション窓、風防、ヘッドランプ、コンデンサー、絶縁フィルム、熱線遮蔽フィルム、加飾・転写フィルムなどの車両部材や、家具の扉や表面部材。床用化粧材、扉、窓枠、窓、壁、ドアノブ、屋根、玄関床、タイル、橋梁、防水シート、ウンドウフィルム、調光フィルム等の建築や土木部材。レンズや偏光板、波長変換素子、センサーなどの光学部材や、家電製品のボタンや表面部材や、太陽電池や風力発電、燃料電池、圧電フィルムなどのエネルギー関連部材。バッファーコート、非導電性フィルム、カバーフィルム、離型フィルム、レジストなどの半導体部材や、カード、インクジェット用紙、感熱紙、マーキングフィルム、意匠フィルム、看板、広告、装飾用素材、標識サイン、プリンター用サプライ、複写機ロール、ヒートシーラーなどの記録やグラフィック部材や、キッチンカウンター、シンク、化粧台、浴槽の壁や天井などのキッチン・サニタリー部材や、屋内外で使用する各種ハードコーティング材に適用できる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0066】
合成例1
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に1,3,5‐トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(信越化学工業社製:KBM9659)2.5g(4.0ミリモル)と3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM−403)26.0g(0.1モル)を入れ撹拌し、滴下ロートに0.05%塩酸水溶液6.7g(水分量:加水分解性基の1倍モル)を投入し、室温で撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃に昇温して1時間撹拌した後、冷却しプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)11gを加え、目的物である部分加水分解縮合物の溶液(シロキサン樹脂溶液A1)を得た。得られた部分加水分解縮合物のエポキシ当量は220であった。
【0067】
合成例2
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に1,3,5‐トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(信越化学工業社製:KBM9659)2.5g(4.0ミリモル)と2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM−303)26.0g(0.1モル)を入れ撹拌し、滴下ロートに0.05%塩酸水溶液6.7g(水分量:加水分解性基の1倍モル)を投入し、室温で撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃に昇温して1時間撹拌した後、冷却しプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)11gを加え、目的物である部分加水分解縮合物の溶液(シロキサン樹脂溶液A2)を得た。得られた部分加水分解縮合物のエポキシ当量は250であった。
【0068】
合成例3
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(XIAMETER OFS6030:東レ・ダウコーニング社製)30.0g(0.12モル)、滴下ロートに0.05%塩酸水溶液9.3gを投入し、室温で撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃に昇温して1時間撹拌した後、冷却しPGME 5.8gを加え、目的物であるシロキサン縮合物(シロキサン樹脂溶液A3)を得た。
【0069】
調整例1〜5
上記合成例で得たシロキサン樹脂溶液A1〜A3、重合開始剤及び溶剤を表1に示す割合(重量部)で配合し、シロキサン系硬化性樹脂組成物(ハードコーティング液)H1〜H5を得た。
ここで、硬化触媒として使用したWPI−116(和光純薬社製)は光酸発生剤、WPBG−266(和光純薬社製)は光塩基発生剤、SI−80(三新化学工業社製)はカチオン重合開始剤、Irg184(IGM社製)はラジカル光重合開始剤であり、溶剤はPGMEである。
【0070】
【表1】
【0071】
樹脂剤の調整
ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学社製:ライトアクリレートDCP−A)30重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学社製:UA-306H)70重量部、重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)―フェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン社製;Irgaqure819)3重量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル333重量部を配合し、樹脂組成物(P−1)を得た。
【0072】
表面処理剤の調整
アミノシラン系カップリング剤KBP−40(信越化学工業社製:30重量部,溶剤としてエタノール35重量部、水35重量部を配合し、表面処理組成物(S−1)を得た。
【0073】
実施例1
調整例1で得られたハードコーティング液H−1をPET基材(厚さ100μm、長さ10cm、幅10cm)にスピンコート法により塗布し、80℃で6分乾燥させた後、室温下5分冷却した。その後、酸素雰囲気下、2kW/cm
2の高圧水銀ランプを用い、1000mJ/cm
2積算露光量(365nm換算)で成膜し、PET基材表面にハードコーティング(HC)被膜を形成してなるHC被膜付PET積層体を得た。
【0074】
実施例2、3、比較例1
ハードコーティング液を表2に示す組成とした他は、実施例1と同様にしてPET基材表面にハードコーティング被膜を形成してなるHC被膜付PET積層体を得た。
【0075】
実施例4
調整例4で得られたハードコーティング液H−4をPET基材(厚さ100μm、長さ10cm、幅10cm)にスピンコート法により塗布し、80℃で6分乾燥させた後、更に、100℃30分加熱して成膜し、PET基材表面にハードコーティング被膜を形成してなるHC被膜付PET積層体を得た。
【0076】
実施例5
樹脂組成物(P−1)のコーティング液をPC基材(厚さ3mm、長さ10cm、幅10cm)にスピンコート法により塗布し、80℃で6分乾燥させた後、室温下5分冷却した。その後、酸素雰囲気下、2kW/cm
2の高圧水銀ランプを用い、100mJ/cm
2積算露光量(365nm換算)で樹脂層を成膜した。ついで、調整例1で得られたハードコーティング液H−1を樹脂層にスピンコート法により塗布し、80℃で6分乾燥させた後、室温下5分冷却した。その後、酸素雰囲気下、2kW/cm
2の高圧水銀ランプを用い、1000mJ/cm
2積算露光量(365nm換算)で成膜し、PC基材に樹脂層を介してハードコーティング被膜を形成してなるHC被膜付PC積層体を得た。
【0077】
実施例6
表面処理剤(S−1)の溶液をアルミ板にスピンコート法により塗布してアルミ板を表面処理し、100℃で5分乾燥した。ついで、調整例1で得られたハードコーティング液H−1を樹脂層にスピンコート法により塗布し、80℃で6分乾燥させた後、室温下5分冷却した。その後、酸素雰囲気下、2kW/cm
2の高圧水銀ランプを用い、1000mJ/cm
2積算露光量(365nm換算)で成膜し、表面処理したアルミ基材にハードコーティング被膜を形成してなるHC被膜付アルミ積層体を得た。
【0078】
実施例7
調整例1で得られたハードコーティング液H−1をアルミ基材(厚さ500μm、長さ10cm、幅10cm)にスピンコート法により塗布し、80℃で6分乾燥させた後、室温下5分冷却した。その後、酸素雰囲気下、2kW/cm
2の高圧水銀ランプを用い、1000mJ/cm
2積算露光量(365nm換算)で成膜し、アルミ基材にハードコーティング被膜を形成してなるHC被膜付アルミ積層体を得た。
【0079】
ハードコーティング被膜の評価
[耐擦傷性]
ハードコーティング被膜を成形したフィルム試験片を、#0000スチールウールを用いて荷重1.0kg下で10往復試験を行い、目視で傷の本数を評価した。
〇:傷なし
×:傷が1本以上
【0080】
[付着性]
ハードコーティング被膜を成形したフィルム試験片を、カミソリ刃を用いて、塗膜に2mm間隔で縦、横11本ずつ切れ目を入れて100個の碁盤目を作成し、セロハンテープを付着させた後、60度の角度で勢いよく剥がした時の剥離の有無を目視で観察し、剥離マス目数/100マスで評価した。
〇:0/100
△:1/100〜50/100
×:50/100〜100/100
【0081】
【表2】