【解決手段】ループ状の管路17と、管路17に封入された作動液Cと、蒸発器13と、凝縮器14と、蒸気管15と、液管16と、管路17の管壁を画定する管壁部22xと、蒸気管15の内部に設けられた支柱部22aとを備え、各々が積層された複数の中間金属層22と、複数の中間金属層22の各々の支柱部22aによって蒸気管15に沿って延びるように形成され、平面視で管路17を第1の流路17aと第2の流路17bとに分けると共に、第1の流路17aと第2の流路17bとを接続する第1の開口部26が形成された支柱25と、管路17を下から塞ぐ下側金属層21と、管路17を上から塞ぐ上側金属層23とを有するループ型ヒートパイプ11による。
上下に隣接する前記支柱部において、上側の前記支柱部が備える前記第1の穴と、下側の前記支柱部が備える前記第2の穴とが、平面視で相互に重なりつつ互いの位置がずれていることを特徴とする請求項3に記載のループ型ヒートパイプ。
最下層の前記支柱部に、前記下側金属層の表面と相対する凹部が形成され、前記凹部によって前記第1の流路と前記第2の流路とが接続されたことを特徴とする請求項1に記載のループ型ヒートパイプ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本実施形態の説明に先立ち、本願発明者が検討した事項について説明する。
【0012】
図1は、検討に使用したループ型ヒートパイプの上面図である。
【0013】
このループ型ヒートパイプ1は、スマートフォンやデジタルカメラ等の筐体2に収容されており、蒸発器3と凝縮器4とを備える。
【0014】
蒸発器3と凝縮器4には蒸気管5と液管6とが接続されており、これらの管5、6によって作動液Cが流れるループ状の管路9が形成される。また、蒸発器3にはCPU(Central Processing Unit)等の発熱部品7が固着されており、その発熱部品7の熱により作動液Cの蒸気Cvが生成される。
【0015】
その蒸気Cvは、蒸気管5を通って凝縮器4に導かれ、凝縮器4において液化した後に液管6を通って再び蒸発器3に供給される。
【0016】
このようにループ型ヒートパイプ1の内部を作動液Cが循環することにより発熱部品7で発生した熱が凝縮器4に移動し、発熱部品7の冷却を促すことができる。
【0017】
図2は、
図1のI−I線に沿った蒸気管5の断面図である。
【0018】
図2に示すように、この例では複数の金属層8の積層体を加熱しながら上下から加圧し、各金属層8同士を金属間接合により接合して管路9を形成する。また、最下層と最上層とを除いた各金属層8には支柱部8aが形成されており、各支柱部8aの積層体によって支柱10が形成される。支柱10は、上記のように各金属層8を加圧する際に蒸気管5が潰れるのを防止するように機能する。また、後述のように管路9を曲げる場合であっても、曲げたときに管路9が潰れるのを防止するのを支柱10で防止できる。そして、その支柱10によって管路9が第1の流路9aと第2の流路9bとに分けられる。
【0019】
なお、金属層8はウエットエッチングにより銅層等をパターニングすることにより形成されるが、そのウエットエッチング時に支柱部8aが金属層8から脱離するのを防止するための接続部8bが各金属層8に設けられる。
【0020】
図3は、支柱部8aが形成された一枚の金属層8の拡大平面図である。
【0021】
図3に示すように、支柱部8aは管路9に沿って延びるように形成される。また、支柱部8aが接続部8bを介して金属層8に支持されるため、支柱部8aと金属層8とを一体的に扱うことができる。
【0022】
なお、接続部8bの位置を全ての金属層8で同一とすると、接続部8bによって管路9が閉塞してしまうため、金属層8ごとに接続部8bの位置を変えるのが好ましい。
【0023】
このようなループ型ヒートパイプ1によれば、上記のように金属層8を積層することでループ型ヒートパイプ1の厚さを薄くすることができ、筐体2の薄型化を推し進めることが可能となる。
【0024】
しかも、蒸気管5の内部に支柱10を形成したため、各金属層8を加圧して接合するときの圧力で蒸気管5が潰れるのを支柱10で防止することが可能となり、蒸気管5が潰れて蒸気Cvの流れがループ型ヒートパイプ1内で滞るのを防止できる。
【0025】
しかしながら、このように支柱10を形成すると、蒸気管5における蒸気Cvの流れが支柱10で阻害されてしまうため、蒸気管5における圧力損失が上昇し、ループ型ヒートパイプ1の熱輸送効率が低下することになる。
【0026】
更に、接続部8bが形成された部分の蒸気管5においては、接続部8bによって管路9の断面積が狭くなり、蒸気管5の圧力損失が更に上昇してしまう。
【0027】
以下に、ループ型ヒートパイプの熱輸送能力が低下するのを抑制することが可能な本実施形態について説明する。
【0028】
(本実施形態)
図4は、本実施形態に係るループ型ヒートパイプの上面図である。
【0029】
このループ型ヒートパイプ11は、電子機器の筐体12に収容されており、蒸発器13と凝縮器14とを備える。電子機器は、冷却対象の発熱部品を有する機器であれば特に限定されず、スマートフォン、デジタルカメラ、人工衛星、車載電子機器、及びサーバ等を電子機器として採用し得る。
【0030】
蒸発器13と凝縮器14には蒸気管15と液管16とが接続されており、これらの管15、16によって作動液Cが流れるループ状の管路17が形成される。また、蒸発器13にはCPU等の発熱部品18が固着されており、その発熱部品18の熱により作動液Cの蒸気Cvが生成される。
【0031】
蒸気Cvは、蒸気管15を通って凝縮器14に導かれ、凝縮器14において液化した後に液管16を通って再び蒸発器13に供給される。
【0032】
ループ型ヒートパイプ11の内部をこのように作動液Cが循環することにより発熱部品18で発生した熱が凝縮器14に移動し、発熱部品18の冷却を促すことができる。
【0033】
図5は、
図4のII−II線に沿った蒸気管15の断面図である。
【0034】
図5に示すように、本実施形態では下側金属層21、複数の中間金属層22、及び上側金属層23をこの順に積層してループ型ヒートパイプ11を作製する。
【0035】
これらの金属層のうち、複数の中間金属層22の各々には支柱25を構成する支柱部22aが形成されており、その支柱25によって管路17が第1の流路17aと第2の流路17bとに分けられる。
【0036】
また、各中間金属層22には管路17の管壁17xを画定する管壁部22cが設けられており、更に下側金属層21がその管路17を下側から塞ぐと共に、上側金属層23が管路17を上から塞ぐ。なお、最上層の中間金属層22には、支柱部22aに接続された接続部22bが設けられる。そのような接続部22bは、最上層の中間金属層22だけでなく、各々の中間金属層22にも形成される。
【0037】
そして、下側金属層21と上側金属層23の各々は支柱25に接合されており、これにより各金属層21〜23を積層するときの圧力で管路17が潰れるのを防止できる。また、接続部22bにより各中間金属層22と支柱部22aとを接続したため、一枚の金属層に中間金属層22と支柱部22aとを形成しても、その支柱部22aが中間金属層22から脱離するのを防止できる。
【0038】
なお、管路17において支柱25を形成する部位は特に限定されないが、この例のように内部が空洞で潰れやすい蒸気管15に支柱25を形成するのが好ましい。同じ理由により凝縮器14(
図4参照)における管路17にも支柱25を形成してもよい。
【0039】
一方、液管16(
図4参照)の内部には、液相の作動液Cを毛細管力で蒸発器13に移動させるための不図示のウィックが形成されており、そのウィックで液管16が補強されているため、液管16には支柱25を設けなくてもよい。
【0040】
また、管路17の幅W1は、ループ型ヒートパイプ11に求められる熱輸送性能等にもよるが、この例では例えば5mm〜10mm程度とする。
【0041】
各金属層21〜23の材料も特に限定されず、熱伝導性と加工性が良好な銅層を各金属層21〜23として採用し得る。なお、銅層に代えてアルミニウム層やステンレス層を各金属層21〜23として採用してもよい。
【0042】
更に、各金属層21〜23のそれぞれの厚さは100μm〜300μm、例えば100μm程度であり、各金属層21〜23を合わせた合計の厚さTは600μm〜1800μm程度である。
【0043】
このように厚さが薄い各金属層21〜23を積層することでループ型ヒートパイプ11の厚さを薄くすることができ、ループ型ヒートパイプ11が収容される筐体12の薄型化に寄与することができる。
【0044】
また、この例では支柱部22aや接続部22bによって管路17における圧力損失が上昇するのを防止するために、支柱部22aに第1の開口部26を形成すると共に、接続部22bに第2の開口部27を形成する。
【0045】
図6は、蒸気管15における中間金属層22の拡大平面図である。
【0046】
図6に示すように、支柱部22aは、管路17の延在方向Xに沿って延びるように形成される。支柱部22aの幅W2は特に限定されないが、この例では幅W2を500μm〜3000μm程度とする。
【0047】
そして、第1の開口部26は、第1の流路17aと第2の流路17bとを接続するように支柱部22aに形成される。これにより、第1の開口部26を通じて蒸気Cvが各流路17a、17bの間を流通できるようになると共に、第1の開口部26の分だけ管路17の断面積が増加するため、管路17における蒸気Cvの圧力損失を低減することができる。
【0048】
一方、接続部22bは、延在方向Xに直交する方向Yに沿って延びており、その幅W3は例えば500μm〜2000μm程度である。そして、第2の開口部27は、延在方向Xに沿って接続部22bを貫くように形成されており、その内部を蒸気Cvが延在方向Xに沿って流れる。
【0049】
これにより、第2の開口部27がない場合と比較して各流路17a、17bを蒸気Cvが流れ易くなるため、管路17における蒸気Cvの圧力損失を更に低減することができる。
【0050】
各開口部26、27の形状は特に限定されない。
【0051】
図7(a)は第1の開口部26の拡大平面図であり、
図7(b)は
図7(a)のIII-III線に沿った断面図である。
【0052】
図7(a)に示すように、支柱部22aには第1の開口部26を構成する第1の穴22eと第2の穴22fとが形成される。これらの穴22e、22fは、いずれも有底であって、平面視で概略円形である。
【0053】
この例では、各穴22e、22fを相互に接続しつつ、各穴22e、22fの各々の中心Pを前述の方向Yに沿ってずらすことにより、方向Yに沿って蒸気Cvが第1の開口部26を流れるようにする。
【0054】
なお、各穴22e、22fの大きさは特に限定されないが、この例ではこれらの穴22e、22fの直径を200μm程度とする。
【0055】
また、
図7(b)に示すように、第1の穴22eは支柱部22aの下面22gに形成されており、下面22gに相対する上面22hに第2の穴22fが形成される。これらの穴22e、22fは、銅層等の金属層をウエットエッチングで等方的にエッチングすることにより形成されるため、丸みを帯びた断面形状となる。
【0056】
一方、
図8(a)は、第2の開口部27の拡大平面図であり、
図8(b)は
図8(a)のIV-IV線に沿った断面図である。
【0057】
図8(a)、(b)に示すように、第2の開口部27も前述の第1の穴22eと第2の穴22fにより構成される。
【0058】
但し、各穴22e、22fの各々の中心Pは前述の延在方向Xにずれており、これにより延在方向Xに沿って蒸気Cvが第2の開口部27を流れるようになる。
【0059】
図9(a)は、各穴22e、22fが形成された一枚の中間金属層22の拡大写真を基にして描いた図であり、
図9(b)は、その中間金属層22の断面の拡大写真を基にして描いた図である。
【0060】
図9(a)に示すように、各穴22e、22fは、各々の中心をずらしながら相互に重複するように形成される。このうち、第1の穴22eの直径は前述のように200μm程度であり、第1の穴22eのピッチは300μm程度である。第2の穴22fもこれと同じ直径とピッチとを有する。
【0061】
また、
図9(b)に示されるように、各穴22e、22fは断面視で概略半球状である。
【0062】
図10は、上下に隣接する中間金属層22において、上側の中間金属層22における第1の穴22eと、下側の中間金属層22における第2の穴22fとの位置関係を示す平面図である。
【0063】
図10に示すように、この例では上側の中間金属層22における第1の穴22eと、下側の中間金属層22における第2の穴22fとを平面視で相互に重ねつつ互いの位置をずらす。
【0064】
これにより、各穴22e、22fの内部を蒸気Cvが三次元的に流れるようになり、上記の支柱25や接続部22bから蒸気Cvが受ける抵抗を低減することができるようになる。
【0065】
図11は、蒸気管15の分解斜視図である。
【0066】
図11に示すように、支柱部22aと接続部22bの各々には複数の開口部26、27が形成されており、これにより支柱部22aと接続部22bは多孔質となる。その結果、各流路17a、17bのうちの一方に溜まった液相の作動液Cを他方に排出するような毛細管力が多孔質状の支柱部22aから作動液Cに働くようになる。そのため、外気温の低下等によって各流路17a、17bのいずれか一方に液相の作動液Cが結露しても、その作動液Cが他方の流路に排出され易くなるため、管路17内に液溜まりが発生し難くなり、その液溜まりで管路17内の圧力損失が高まるのを防止できる。
【0067】
一方、接続部22bによって管路17が閉塞するのを防止するために、接続部22bは中間金属層22ごとに異なる位置に設けられる。
【0068】
以上説明した本実施形態によれば、
図5に示したように、各流路17a、17bを接続する第1の開口部26を支柱25に形成したため、第1の開口部26の分だけ管路17の断面積が増加し、管路17における蒸気Cvの圧力損失を低減することができる。
【0069】
しかも、接続部22bに第2の開口部27を形成したことで各流路17a、17bを蒸気Cvが流れ易くなり、管路17における蒸気Cvの圧力損失を更に低減することができる。
【0070】
そして、このように管路17における圧力損失が低減することでループ型ヒートパイプ11の熱輸送効率が向上し、発熱部品18(
図4参照)の温度上昇を効率的に抑制することが可能となる。
【0071】
なお、第1の開口部26のみで管路17における圧力損失を十分に低減できる場合には、接続部22bに第2の開口部27を形成しなくてもよい。
【0072】
次に、本実施形態に係るループ型ヒートパイプ11の製造方法について説明する。
【0073】
図12〜
図14は、中間金属層22の製造方法について説明するための平面図である。また、
図15及び
図16は、中間金属層22の製造方法について説明するための断面図であって、
図12〜
図14のV-V線に沿った断面図に相当する。
【0074】
まず、
図12及び
図15(a)に示すように、金属層22yとして銅層を用意し、その両面に第1のレジスト層31と第2のレジスト層32を形成する。これらのレジスト層31、32は、平面視で中間金属層22と同じ輪郭を有すると共に、各穴22e、22fに対応した円形の第1のレジスト開口31aと第2のレジスト開口32aとを有する。
【0075】
次に、
図13及び
図15(b)に示すように、各レジスト層31、32をマスクにしながら、金属層22yをその両面からウエットエッチングする。これにより、金属層22yがパターニングされて中間金属層22になると共に、各レジスト開口31a、32aの下に相互に接続された穴22e、22fが形成される。また、そのウエットエッチングは等方的に進行するため、各穴22e、22fは半球状となる。
【0076】
更に、この工程では、第1のレジスト層31と第2のレジスト層32の両方が形成されている部分の金属層22yがエッチングされずに管壁部22cとして残される。
【0077】
その後に、
図14及び
図16に示すように各レジスト層31、32を除去し、中間金属層22の基本構造を完成させる。
【0078】
これ以降の工程について
図17及び
図18を参照しながら説明する。
【0079】
図17及び
図18は、本実施形態に係るループ型ヒートパイプ11の製造途中の断面図である。
【0080】
まず、
図17に示すように、下側金属層21、複数の中間金属層22、及び上側金属層23をこの順に積層する。
【0081】
次に、
図18に示すように、各金属層21〜23を500℃以上の温度、例えば700℃に加熱しながら、10MPa程度の圧力で各金属層21〜23同士をプレスする。これにより、各金属層21〜23同士が金属間接合によって接合すると共に、下側金属層21と上側金属層23によって管路17が上下から塞がれる。
【0082】
その後に、不図示の注入口から管路17に作動液Cとして水を注入し、本実施形態に係るループ型ヒートパイプ11の基本構造を完成させる。
【0083】
以下に、本実施形態の様々な変形例について説明する。
【0084】
(第1変形例)
図19は、第1変形例に係るループ型ヒートパイプ11の側面図である。
【0085】
この例では、回路基板35にCPU等の発熱部品18を搭載すると共に、発熱部品18よりも高さが高い電子部品36を回路基板35に搭載する。そのような電子部品36としては、例えばチップコンデンサがある。
【0086】
そして、曲げ加工により蒸発管15に屈曲部15aを設け、蒸発管15と電子部品26とが接触しないようにする。
【0087】
このように蒸発管15を曲げても、支柱25(
図11参照)によって蒸発管15が補強されているため、蒸発管15が潰れて蒸気Cvの圧力損失が上昇するのを抑制することができる。
【0088】
(第2変形例)
図20は、第2変形例に係るループ型ヒートパイプ11の側面図である。
【0089】
この例では、蒸発管15に対して曲げ加工を行うことにより、側面視で90°程度に屈曲した屈曲部15aを蒸発管15に設け、筐体12の側面12aに凝縮器14を密着させる。これにより、凝縮器14の熱が側面12aを介して外部に放熱されるため、側面12aを有効活用することができる。
【0090】
更に、第1変形例と同様に支柱25(
図11参照)によって蒸発管15が補強されているため、曲げ加工に伴って蒸気管15が潰れるのを防止することもできる。
【0091】
(第3変形例)
図21は、第3変形例に係るループ型ヒートパイプ11の蒸気管15の分解斜視図である。
【0092】
この例では、複数の中間金属層22の各々の支柱部22aに凹部22kを設ける。凹部22kは、中間金属層22を下面22g側からハーフエッチングすることにより形成され、その深さは例えば50μm〜100μm程度である。
【0093】
そして、上下に隣接する二つの中間金属層22のうち、下側の中間金属層22の上面22hと、上側の中間金属層22の凹部22kとにより第1の開口部26を形成する。
【0094】
これにより、中間金属層22を多孔質にする
図11の例と比較して第1の開口部26が大きく開口するため、第1の開口部26を蒸気Cvが流通し易くなり、蒸気管15における蒸気Cvの圧力損失を低減し易くなる。
【0095】
また、凹部22kの横の中間金属層22は柱22mとして機能する。この例では、複数の中間金属層22の各々の柱22mを上下に接続することにより、各柱22mで蒸気管15の強度を確保する。
【0096】
(第4変形例)
図22は、第4変形例に係るループ型ヒートパイプ11の蒸気管15の分解斜視図である。
【0097】
本変形例では、蒸気管15の延在方向Xに沿った凹部22kの個数を第3変形例よりも多くする。これにより、第3変形例と比較して柱22mの本数が増えるため、第1の開口部26で蒸気管15の圧力損失を低減しつつ、複数の柱22mにより蒸気菅15の強度を高めることが可能となる。
【0098】
(第5変形例)
図23は、第5変形例に係るループ型ヒートパイプ11の蒸気管15の分解斜視図である。
【0099】
本変形例では、上下に隣接する二つの支柱部22aのうち、下側の支柱部22aの上面22hに第1の凹部22rを形成し、かつ上側の支柱部22aの下面22gに第2の凹部22sを形成する。そして、これら二つの凹部22r、22sにより第1の開口部26を画定する。
【0100】
なお、各凹部22r、22sは、支柱部22aをハーフエッチングすることによりそれぞれ50μm〜100μm程度の深さに形成される。
【0101】
このように二つの凹部22r、22sで第1の開口部26を画定することにより第1の開口部26が大きく開口するようになるため、第1の開口部26を蒸気Cvが流れ易くなり、第3変形例や第4変形例と比較して蒸気管15の圧力損失を更に低減できる。
【0102】
また、最上層の支柱部22aの上面22hには凹部は形成されておらず、当該上面22hは蒸気管15の延在方向Xに沿って延びたストライプ状となる。その上面22hは上側金属層23に接合されており、これにより上側金属層23が補強されるため、蒸気管15が潰れるのを効果的に防止することができる。
【0103】
同様に、最下層の支柱部22aの下面22gも延在方向Xに沿って延びたストライプ状であり、その下面22gが下側金属層21に接合することにより下側金属層21が補強される。
【0104】
更に、上側金属層23及び下側金属層21と、最上層及び最下層の支柱部22aとの接触面積が大きくなることで接合強度が高くなるため、蒸気管15の強度を確保することもできる。
【0105】
しかも、上記構造であっても、後述のように上側金属層23又は下側金属層21と相対する凹部を有した接続部22bを採用することで、液だまりが生じても作動液を流通させることができる。
【0106】
(第6変形例)
図24は、第6変形例に係るループ型ヒートパイプ11の蒸気管15の分解斜視図である。
【0107】
第5変形例と同様に、本変形例でも第1の凹部22rと第2の凹部22sにより第1の開口部26を画定する。
【0108】
但し、本変形例では、下側金属層21の表面に相対するように最下層の第2の凹部22sを設け、その第2の凹部22sで第1の流路17aと第2の流路17bとを接続する。これにより、外気温が下がって下側金属層21の表面に液相の作動液Cが結露しても、最下層の第1の凹部22sを介して作動液Cが各流路17a、17bを相互に流通できるようになるため、蒸気管15内に作動液Cの液溜まりCdが形成され難くなる。その結果、蒸気管15における蒸気Cvの流れが液溜まりCdによって阻害されるのを防止でき、液溜まりCdに起因して蒸気管15の圧力損失が高まるのを抑制することができる。
【0109】
同様に、上側金属層23の表面に相対するように最上層の第1の凹部22rを設け、上側金属層23の表面に結露した液相の作動液Cをその第1の凹部22rに流通させることにより、液溜まりCdの発生を抑制してもよい。
【0110】
更に、最下層の接続部22bを50μm〜100μm程度の深さだけハーフエッチングすることにより、下側金属層21の表面と相対する凹部22tを当該接続部22bに形成してもよい。これにより凹部22tを液相の作動液Cが流通できるようになるため、作動液Cの液溜まりCdが形成されるのを更に効果的に防止することが可能となる。
【0111】
同様の理由により、上側金属層23の表面と相対するように最上層の接続部22bに凹部22tを形成してもよい。
【0112】
(第7変形例)
図25は、第7変形例に係るループ型ヒートパイプ11の蒸気管15の分解斜視図である。
【0113】
この例では、最下層や最上層の接続部22bだけでなく、各層の接続部22bをハーフエッチングして凹部22tを形成し、その凹部22tを下側金属層21の表面に相対させる。
【0114】
これにより、蒸気管15を流れる蒸気Cvが凹部22tにも流れるようになるため、蒸気管15における圧力損失を更に低減することができる。
【0115】
また、凹部22tを下側金属層21の表面に相対させたため、当該表面に蒸気Cvの結露が発生したとしても、その表面に凝縮した作動液Cが凹部22tを流通することができるため、第6変形例と同様に蒸気管15内に液溜まりが発生するのを防止できる。
【0116】
なお、上側金属層23に各凹部22tを相対させることにより、上側金属層23の表面に結露した作動液Cを各凹部22tに流通させて、当該表面に液溜まりが発生するのを防止するようにしてもよい。
【0117】
(第8変形例)
図26は、第8変形例に係るループ型ヒートパイプ11の蒸気管15の分解斜視図である。
【0118】
図26に示すように、本変形例では、各々の支柱部22aの下面22gをハーフエッチングすることにより、蒸気管15の延在方向Xに沿って交互に連なる凹部22pと凸部22qとを下面22gに形成する。これらのうち、各々の凹部22pは、50μm〜100μm程度の深さを有しており、その下の支柱部22aの上面22hと共に複数の第1の開口部26を画定する。
【0119】
また、各々の凸部22qは、その下の上面22hと金属間接合により接続される。但し、各々の凸部22qと上面22hとの接触面積は、これらの間で金属が十分に拡散するのには小さいため、凸部22qと上面22hとは金属間接合をしていないか、金属間接合をしていてもその接合強度は上下に隣接する管壁部22c同士の接合強度よりも弱い。
【0120】
図27は、このように凸部22qと上面22hとの接合強度を弱くしたことで得られる利点について説明する断面図であって、蒸気管15の延在方向Xに沿った支柱部22aの断面図である。
【0121】
図27に示すように、上記のように凸部22qと上面22hとの接合強度を弱くしたため、蒸気管15を曲げ加工するときに上面22hの上で凸部22qが可動になると共に、曲げ加工時に応力が集中する部分では凸部22qが潰れる。これにより蒸発管15の曲げ加工が容易となり、
図19や
図20のように蒸発管15を曲げるのが容易となる。しかも、曲げ加工時に第1の開口部26が潰れるのが凸部22qによって抑制されるため、第1の開口部26の開口面積を十分に維持し、蒸気管15の圧力損失を低減することも可能となる。
【0122】
凹部22pの形状は特に限定されない。
【0123】
図28(a)、(b)は、凹部22pの断面形状の様々な例について示す断面図である。
【0124】
図28(a)の例では凹部22pを断面視で台形状とし、
図28(b)の例では凹部11qを断面視で半球状とする。
【0125】
図28(a)、(b)のいずれの例においても、凸部22qと上面22hとの接合強度が弱いため、蒸気管15を曲げ加工するのが容易となる。