特開2019-14880(P2019-14880A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-14880(P2019-14880A)
(43)【公開日】2019年1月31日
(54)【発明の名称】ガスバリア性部材用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 81/02 20060101AFI20190104BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20190104BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20190104BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20190104BHJP
   H01G 2/10 20060101ALI20190104BHJP
【FI】
   C08L81/02
   C08K7/00
   H01M2/02 Z
   H01G11/78
   H01G2/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-124405(P2018-124405)
(22)【出願日】2018年6月29日
(31)【優先権主張番号】特願2017-131720(P2017-131720)
(32)【優先日】2017年7月5日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】増田 深
(72)【発明者】
【氏名】丸山 幸祐
【テーマコード(参考)】
4J002
5E078
5H011
【Fターム(参考)】
4J002CN011
4J002DL006
4J002FA016
4J002FD016
4J002GP00
4J002GQ00
5E078AA12
5E078AB01
5E078HA13
5H011AA10
5H011CC02
5H011CC05
5H011CC09
5H011KK01
5H011KK02
5H011KK06
(57)【要約】
【課題】水蒸気その他のガスに対する遮断性に優れ、ガスバリア性部材の材料として好適なガスバリア性部材用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】溶融粘度が5〜100Pa・sのポリアリーレンスルフィド樹脂と、ガラスフレークとを含むガスバリア性部材用樹脂組成物である。ガスバリア性部材としては、リチウム電池等の一次電池用、リチウムイオン電池等の二次電池用、コンデンサケース用、及び光学部品用等の部材が挙げられ、これらは車載用として好適に使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融粘度が5〜100Pa・sのポリアリーレンスルフィド樹脂と、ガラスフレークとを含むガスバリア性部材用樹脂組成物。
【請求項2】
前記ガラスフレークのアスペクト比が30〜900である請求項1に記載のガスバリア性部材用樹脂組成物。
【請求項3】
前記ガラスフレークのアスペクト比が70〜500である請求項1又は2に記載のガスバリア性部材用樹脂組成物。
【請求項4】
前記ガラスフレークの平均厚みが10μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア性部材用樹脂組成物。
【請求項5】
前記ガラスフレークの平均厚みが、0.2〜2μmである請求項4に記載のガスバリア性部材用樹脂組成物。
【請求項6】
前記ガラスフレークの含有量が、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して5〜110質量部である請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスバリア性部材用樹脂組成物。
【請求項7】
前記ガラスフレークの含有量が、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して20〜90質量部である請求項1〜6のいずれか1項に記載のガスバリア性部材用樹脂組成物。
【請求項8】
前記ガスバリア性部材が、一次電池用、二次電池用、コンデンサケース用、及び光学部品用からなる群から選択されるいずれかである請求項1〜7のいずれか1項に記載のガスバリア性部材用樹脂組成物。
【請求項9】
前記ガスバリア性部材が車載用である請求項1〜8のいずれか1項に記載のガスバリア性部材用樹脂組成物。
【請求項10】
前記一次電池がリチウム電池であり、前記二次電池がリチウムイオン電池である請求項8又は9に記載のガスバリア性部材用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルケース、電池電槽、コンデンサケース、光学部品等のガスバリア性が要求される部材に好適に用いられるガスバリア性部材用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
キャパシタやリチウムイオン電池等のセルケース又は電極と電解液を収容する電池電槽(容器)であって、電解液の溶媒として有機溶媒を用いたものは、内部への水分の浸入を抑えるため水蒸気等のガスを遮断する性能(ガスバリア性)が要求される。そのような要求を満足するため、従来、セルケース等の材料としてはガスバリア性に優れる金属が用いられている(例えば、特許文献1、2参照)。金属は絶縁性に劣ることから、短絡等が生じるおそれがあるため、セルケース等は、本来、絶縁性に優れる樹脂で構成することが好ましい。しかし、従来、樹脂ではガスバリア性を十分に確保することができなかった。
【0003】
一方、例えば、上記のようなキャパシタや電池が自動車部品に用いられる場合、セルケース等には耐熱性も要求される。そこで、耐熱性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂(以下、「PAS樹脂」とも呼ぶ)を用いた樹脂組成物は、上記のようなセルケース等の作製に有用である。そして、セルケース等のガスバリア性能を向上させるためPAS樹脂組成物に板状無機フィラーを配合することが考えられる。当該板状無機フィラーが、液体やガスの透過を防止する壁の役割を果たすと考えられるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−204437号公報
【特許文献2】特開2007−200795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来、セルケース等において、板状無機フィラーを配合したPAS樹脂組成物を用いて作製したとしても必ずしもガスバリア性が十分とは言えず、改善の余地が残されていた。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その課題は、水蒸気その他のガスに対する遮断性に優れ、ガスバリア性部材の材料として好適なガスバリア性部材用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明の一態様は以下の通りである。
(1)溶融粘度が5〜100Pa・sのポリアリーレンスルフィド樹脂と、ガラスフレークとを含むガスバリア性部材用樹脂組成物である。
【0008】
(2)前記ガラスフレークのアスペクト比が30〜900である前記(1)に記載のガスバリア性部材用樹脂組成物である。
【0009】
(3)前記ガラスフレークのアスペクト比が70〜500である前記(1)又は(2)に記載のガスバリア性部材用樹脂組成物である。
【0010】
(4)前記ガラスフレークの平均厚みが10μm以下である前記(1)〜(3)のいずれかに記載のガスバリア性部材用樹脂組成物である。
【0011】
(5)前記ガラスフレークの平均厚みが、0.2〜2μmである前記(4)に記載のガスバリア性部材用樹脂組成物である。
【0012】
(6)前記ガラスフレークの含有量が、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して5〜110質量部である前記(1)〜(5)のいずれかに記載のガスバリア性部材用樹脂組成物である。
【0013】
(7)前記ガラスフレークの含有量が、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して20〜90質量部である前記(1)〜(6)のいずれかに記載のガスバリア性部材用樹脂組成物である。
【0014】
(8)前記ガスバリア性部材が、一次電池用、二次電池用、コンデンサケース用、及び光学部品用からなる群から選択されるいずれかである前記(1)〜(7)のいずれかに記載のガスバリア性部材用樹脂組成物である。
【0015】
(9)前記ガスバリア性部材が車載用である前記(1)〜(8)のいずれかに記載のガスバリア性部材用樹脂組成物である。
【0016】
(10)前記一次電池がリチウム電池であり、前記二次電池がリチウムイオン電池である前記(8)又は(9)に記載のガスバリア性部材用樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、水蒸気その他のガスに対する遮断性に優れ、ガスバリア性部材の材料として好適なガスバリア性部材用樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態のガスバリア性部材用樹脂組成物は、溶融粘度が5〜100Pa・sのポリアリーレンスルフィド樹脂と、ガラスフレークとを含むことを特徴とする。以下、本実施形態の「PAS樹脂を含むガスバリア性部材用樹脂組成物」を、単に「PAS樹脂組成物」とも呼ぶ。
本実施形態のPAS樹脂組成物は、水蒸気その他のガスに対する遮断性に優れ、ガスバリア性部材の材料として好適な樹脂組成物である。また、PAS樹脂組成物であるが故に耐熱性に優れる。以下に先ず、PAS樹脂組成物中の各成分について説明する。
【0019】
[ポリアリーレンスルフィド樹脂]
PAS樹脂は、機械的性質、電気的性質、耐熱性その他物理的・化学的特性に優れ、且つ加工性が良好であるという特徴を有する。
PAS樹脂は、主として、繰返し単位として−(Ar−S)−(但しArはアリーレン基)で構成された高分子化合物であり、本実施形態では一般的に知られている分子構造のPAS樹脂を使用することができる。
【0020】
上記アリーレン基としては、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、置換フェニレン基、p,p’−ジフェニレンスルフォン基、p,p’−ビフェニレン基、p,p’−ジフェニレンエーテル基、p,p’−ジフェニレンカルボニル基、ナフタレン基等が挙げられる。PAS樹脂は、上記繰返し単位のみからなるホモポリマーでもよいし、下記の異種繰返し単位を含んだコポリマーが加工性等の点から好ましい場合もある。
【0021】
ホモポリマーとしては、アリーレン基としてp−フェニレン基を用いた、p−フェニレンスルフィド基を繰返し単位とするポリフェニレンスルフィド樹脂が好ましく用いられる。また、コポリマーとしては、前記のアリーレン基からなるアリーレンスルフィド基の中で、相異なる2種以上の組み合わせが使用できるが、中でもp−フェニレンスルフィド基とm−フェニレンスルフィド基を含む組み合わせが特に好ましく用いられる。この中で、p−フェニレンスルフィド基を70モル%以上、好ましくは80モル%以上含むものが、耐熱性、成形性、機械的特性等の物性上の点から適当である。また、これらのPAS樹脂の中で、2官能性ハロゲン芳香族化合物を主体とするモノマーから縮重合によって得られる実質的に直鎖状構造の高分子量ポリマーが、特に好ましく使用できる。尚、本実施形態に用いるPAS樹脂は、異なる2種類以上の分子量のPAS樹脂を混合して用いてもよい。
【0022】
尚、直鎖状構造のPAS樹脂以外にも、縮重合させるときに、3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物等のモノマーを少量用いて、部分的に分岐構造または架橋構造を形成させたポリマーや、低分子量の直鎖状構造ポリマーを酸素等の存在下、高温で加熱して酸化架橋または熱架橋により溶融粘度を上昇させ、成形加工性を改良したポリマーも挙げられる。
【0023】
本実施形態に使用する基体樹脂としてのPAS樹脂の溶融粘度(310℃・せん断速度1216sec−1)は、上記混合系の場合も含め5〜100Pa・sのものを用いる。当該溶融粘度が5Pa・s未満であると、製造又は入手が困難であり、100Pa・sを超えると、ガスバリア性を十分に確保することができない。当該溶融粘度は、5〜80Pa・sが好ましく、6〜50Pa・sがより好ましく、7〜25Pa・sが更に好ましい。
【0024】
なお、本実施形態のPAS樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、樹脂成分として、上述のPAS樹脂に加えて、その他の樹脂成分を含んでもよい。その他の樹脂成分としては、特に限定はなく、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶樹脂、弗素樹脂、環状オレフィン系樹脂(環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー等)、熱可塑性エラストマー、シリコーン系ポリマー、各種の生分解性樹脂等が挙げられる。また、2種類以上の樹脂成分を併用してもよい。その中でも、機械的性質、電気的性質、物理的・化学的特性、加工性等の観点から、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、液晶樹脂、弗素樹脂等が好ましく用いられ、耐熱性の観点から、液晶樹脂、弗素樹脂等が特に好ましく用いられる。
【0025】
[ガラスフレーク]
ガラスフレークは、上述した通り、ガスや水分の透過を防止する壁の役割を果たすと考えられる。これは、板状無機フィラーたるガラスフレークは、その板状面が粒状や繊維状の無機フィラーよりも面積が広く、ガスや水分に対する遮蔽効果が大きいからである。
【0026】
本実施形態においては、ガスや水分の透過を妨げ、ガスバリア性を十分に確保するため、ガラスフレークのアスペクト比は、4以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましく、70以上(例えば80以上)であることが更に好ましい。当該アスペクト比は大きい程より好ましいが、成形性を考慮して、1500以下が好ましく、例えば、900以下、500以下、400以下、300以下であることが好ましい。なお、本明細書において、アスペクト比とは、繊維状又は板状等の形状の異方性を表す指標として用いるものであり、最大長と最大垂直長の比(アスペクト比=最大長/最大垂直長)である。例えば繊維状フィラーであれば、長軸方向の長さと、長軸に対して垂直な方向の長さの最大値との比をアスペクト比とする。また、本明細書において、ガラスフレークのアスペクト比は、初期形状(溶融混練前の形状)における数値である。
【0027】
ガラスフレークの厚みは薄いほど好ましい。これは、異なる厚みのガラスフレークを用いた場合において、厚みが薄い程、同質量部添加した場合の枚数の絶対数が増えるため、比表面積が大きくなり、ガスバリア効果が高まるからである。同様に、厚みが薄い程、同じ平均粒子径である場合のアスペクト比が大きくなるので、ガスバリア効果が高まるからである。なお、本明細書においてガラスフレークの厚みは、最大垂直長を指し、例えばCCDカメラで撮影した画像を解析し、加重平均により算出することができる。具体的には、株式会社セイシン企業製、動的画像解析法/粒子(状態)分析計PITA−3等により測定することができる。また、電子顕微鏡等を用いた直接観察により最大垂直長を計測し、その平均値を求めてもよい。ガラスフレークの厚みは、初期形状(溶融混練前の形状)において、平均厚みが10μm以下であることが好ましく、6μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることが更に好ましく、下限は通常0.2μmである。
【0028】
ガラスフレークの平均粒子径は、5μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることが更に好ましい(例えば150μm以上)。また、当該平均粒子径は、650μm以下であることが好ましく、例えば400μm以下、300μm以下、200以下であることが好ましい。なお、本明細書において、平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法により測定した粒度分布における積算値50%の粒径を意味する。また、本明細書において、ガラスフレークの平均粒子径は、初期形状(溶融混練前の形状)における数値である。
【0029】
ガラスフレークの中でも、ガスバリア性の効果に特に優れることから、平均厚みが0.2〜2μmのものが好ましく、中でも0.4〜1μmのもの(例えば、日本板硝子(株)製、ファインフレーク)が好ましい。
【0030】
本実施形態のPAS樹脂組成物において、ガスバリア性を十分に発揮するため、ガラスフレークの含有量は、PAS樹脂100質量部に対して5〜110質量部であることが好ましく、20〜90質量部であることがより好ましく、35〜80質量部以下であることが更に好ましい。
【0031】
本実施形態のPAS樹脂組成物においては、以上のガラスフレークと、溶融粘度が5〜100Pa・sといった低粘度のPAS樹脂とを併用することによりガスバリア性に優れる。その理由は定かではないが、成形する際、低粘度のPAS樹脂を用いた場合のガラスフレークの配向状態が影響しているものと推察される。
【0032】
[他の成分]
本実施形態においては、本発明の効果を害さない範囲で、上記各成分の他、一般に熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂に添加される公知の添加剤、即ち、バリ抑制剤、離型剤、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、染料や顔料等の着色剤、結晶化促進剤、結晶核剤、各種酸化防止剤、熱安定剤、耐候性安定剤、腐食防止剤等を配合してもよい。
【0033】
本実施形態において、ガスバリア性部材としては、リチウム電池等の一次電池用、リチウムイオン電池等の二次電池用、コンデンサケース用、及び光学部品用からなる群から選択される用途が挙げられる。本実施形態のPAS樹脂組成物は、ガスバリア性及び耐熱性に優れることから、耐熱性が要求される車載用に好適であり、特に、車載用の二次電池(特にリチウムイオン電池)のセルケース、電池電槽、コンデンサケース、光学部品に好適に用いられる。光学部品としては、例えば、ヘッドアップディスプレイ部品、カメラ部品、プロジェクタ部品等が挙げられる。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
[実施例1〜4、比較例1〜16]
各実施例・比較例において、表1〜3に示す部数(質量部)で、ベース樹脂(PAS樹脂(PPS樹脂))と、フィラーと(フィラーは押出機のサイドフィード部より別添加)を、30mmφのスクリュを有する2軸押出機((株)日本製鋼所製)にてシリンダ温度320℃で溶融混練し、ペレット状のPAS樹脂組成物を得た。
なお、上記各成分の詳細は以下の通りである。
【0036】
(1)ベース樹脂(PAS樹脂)
PPS樹脂1((株)クレハ製、フォートロンKPS、溶融粘度:10Pa・s)
PPS樹脂2((株)クレハ製、フォートロンKPS、溶融粘度:30Pa・s)
PPS樹脂3((株)クレハ製、フォートロンKPS、溶融粘度:130Pa・s)
【0037】
(PPS樹脂の溶融粘度の測定)
上記PPS樹脂1〜3の溶融粘度は以下のようにして測定した。
東洋精機製作所製キャピログラフを用い、キャピラリーとして1mmφ×20mmL/フラットダイを使用し、バレル温度310℃、せん断速度1216sec−1での溶融粘度を測定した。
【0038】
(2)フィラー
ガラスフレーク1(板状無機フィラー):日本板硝子(株)製、ファインフレーク(MEG160FY−M01)、平均厚み0.7μm、平均粒子径(50%d)169μm、アスペクト比241
ガラスフレーク2(板状無機フィラー):日本板硝子(株)製、REFG−108、平均厚み5μm、平均粒子径(50%d)623μm、アスペクト比125
マイカ(板状無機フィラー):白マイカ、(株)ヤマグチマイカ製、ミカレット21PU(11)、平均厚み0.5μm、平均粒子径(50%d)22.5μm、アスペクト比45
ガラス繊維(断面円形状):チョップドガラス繊維、日本板硝子(株)製、ECS03T−747H 平均繊維径10.5μm、平均繊維長3mm、アスペクト比286
ガラスビーズ(粒状無機フィラー):ポッターズ・バロティーニ(株)製、EGB 731A、平均粒子径(50%d)21μm、アスペクト比1
【0039】
[評価]
得られた樹脂ペレットを用いて以下の評価を行った。
(1)ガスバリア性
上記のようにして得られた、各実施例・比較例の樹脂ペレットを、射出成形機((株)日本製鋼所製、J−55AD)に投入して、直径60mmφ、厚さ1.0mmの円盤状試験片を成形した。成形した試験片を用い、ISO15106−4に準拠し、GTRテック(株)製GTR−30XAP G6800Tを用いて、差圧法により、60℃、90%RH雰囲気において、厚さ1mm、面積1m、透過時間24時間あたりに換算した透湿度量を測定した。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
表1より、実施例1〜4のPAS樹脂組成物は、比較例1〜16と比較して、透湿度が低くガスバリア性に優れていることが分かる。これに対して、低粘度のPPS樹脂を用いつつも、ガラスフレーク以外のフィラーを添加した比較例1〜10(ただし、比較例5及び10はフィラー無添加)はいずれも透湿度が高かった。また、高粘度のPPS樹脂を用いた比較例11〜16は、フィラーの形状及びフィラーの有無を問わず透湿度が高かった。特に、比較例11はガラスフレークを用いているものの、PPS樹脂が高粘度であるため透湿度が高かった。これらの結果から、低粘度のPAS樹脂とガラスフレークとを併用することにより、ガスバリア性が向上することが分かる。