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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-15629(P2019-15629A)
(43)【公開日】2019年1月31日
(54)【発明の名称】測定用治具
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/04 20060101AFI20190104BHJP
   G01N 3/00 20060101ALI20190104BHJP
   G01N 3/24 20060101ALI20190104BHJP
   G01N 3/20 20060101ALI20190104BHJP
【FI】
   G01N3/04 P
   G01N3/00 M
   G01N3/24
   G01N3/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-133799(P2017-133799)
(22)【出願日】2017年7月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594018267
【氏名又は名称】株式会社中研コンサルタント
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】青木 真材
(72)【発明者】
【氏名】三鍋 一誠
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA07
2G061AA11
2G061AB01
2G061AB08
2G061BA04
2G061CA08
2G061CB03
2G061CC01
2G061DA16
2G061EA01
2G061EA02
2G061EA03
(57)【要約】
【課題】構造物の一方向の両端部間の長さ(該両端部同士を結ぶ直線長さ)が変化するような場合であっても、構造物の物性の測定を正確に行うことができる。
【解決手段】一方向に沿って接離自在であると共に構造物を前記一方向から挟み込むことで該構造物を前記一方向に沿って加圧する一対の接離部と、該一対の接離部の外側に配置されると共に前記一方向に沿って一方の接離部を他方の接離部側へ押圧することで一対の接離部によって構造物が加圧された状態を維持する加圧状態維持部と、前記一方向に弾性変形する弾性部とを備えており、前記加圧状態維持部は、前記一方向に沿って一方の接離部を他方の接離部側へ押圧した状態で、前記一方向の所定位置に固定可能に構成されており、前記一方の接離部と加圧状態維持部と弾性部とは、前記一方向において重なるように配置されると共に、一方の接離部と加圧状態維持部との間に弾性部が挟み込まれている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の物性を測定する際に用いる測定用治具であって、
一方向に沿って接離自在であると共に構造物を前記一方向から挟み込むことで該構造物を前記一方向に沿って加圧する一対の接離部と、該一対の接離部の外側に配置されると共に前記一方向に沿って一方の接離部を他方の接離部側へ押圧することで一対の接離部によって構造物が加圧された状態を維持する加圧状態維持部と、前記一方向に弾性変形する弾性部とを備えており、
前記加圧状態維持部は、前記一方向に沿って一方の接離部を他方の接離部側へ押圧した状態で、前記一方向の所定位置に固定可能に構成されており、
前記一方の接離部と加圧状態維持部と弾性部とは、前記一方向において重なるように配置されると共に、一方の接離部と加圧状態維持部との間に弾性部が挟み込まれている測定用治具。
【請求項2】
構造物の物性を測定する際に用いる測定用治具であって、
一方向に沿って接離自在であると共に前記一方向における構造物の両端部に連結される一対の接離部と、該一対の接離部の内側に配置されると共に前記一方向に沿って一方の接離部を他方の接離部から離間する方向へ押圧することで一対の接離部によって構造物が前記一方向に沿って引っ張られた状態を維持する引っ張り状態維持部と、前記一方向に弾性変形する弾性部とを備えており、
前記引っ張り状態維持部は、前記一方向に沿って一方の接離部を他方の接離部から離間する方向へ押圧した状態で、前記一方向の所定位置に固定可能に構成されており、
前記一方の接離部と引っ張り状態維持部と弾性部とは、前記一方向において重なるように配置されると共に、一方の接離部と引っ張り状態維持部との間に弾性部が挟み込まれている測定用治具。
【請求項3】
前記加圧状態維持部は、一対の接離部によって構造物が前記一方向に沿って加圧された状態で構造物に生じる応力を測定する応力測定部を備えており、
前記一方の接離部と応力測定部との間に弾性部が挟み込まれる請求項1に記載の測定用治具。
【請求項4】
前記引っ張り状態維持部は、一対の接離部によって構造物が前記一方向に沿って引っ張られた状態で構造物に生じる応力を測定する応力測定部を備えており、
前記一方の接離部と応力測定部との間に弾性部が挟み込まれる請求項2に記載の測定用治具。
【請求項5】
前記弾性部は、皿ばねで構成される請求項1乃至4の何れか一項に記載の測定用治具。
【請求項6】
前記一方向に沿って延びる軸線を中心として構造物の周囲に間隔を空けて配置されると共に前記一方向に沿って延びる複数の棒状部を備えており、
前記一対の接離部は、前記一方向に沿って接離自在に複数の棒状部に取り付けられる請求項1乃至5の何れか一項に記載の測定用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の物性を測定する際に用いられる測定用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリート構造物等の構造物に対して、何らかの物性の測定と評価が行われている。
【0003】
例えば、図12(a)に示すように、一方向が長手となる構造物Xの長手方向の一端部から中央部を超える位置までの部分を載置部A上に配置すると共に、構造物Xにおける長手方向の他端部から中央部を超える位置までの部分に上方から荷重部Bを当接させる。そして、荷重部Bによって構造物Xに下方へ向かって荷重を加えることで、構造物Xの長手方向の中央部及びその周辺に上下方向のせん断応力を生じさせる。これにより、押圧を開始した直後から構造物Xに亀裂が生じるまでのせん断応力の変化を測定することで、構造物Xのせん断強度の評価を行うことができる。
【0004】
また、他の方法としては、図12(b)に示すように、一方向が長手となる構造物Xの両端部を一方向に間隔を空けて配置された一対の載置部C,C上に配置すると共に、構造物Xの長手方向の中央部に上方から荷重部Dを当接させる。そして、荷重部Dによって構造物Xに下方へ向かって荷重を加えることで、構造物Xに曲げ方向に対する応力を生じさせる。これにより、押圧を開始した直後から構造物Xが湾曲して亀裂が生じるまでの応力の変化を測定することで、構造物Xの曲げ強度の評価を行うことができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−298089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の各測定の例のように、構造物を押圧して機械的物性の測定を行う場合、構造物の前記一方向の両端部間の長さ(両端部同士を結ぶ直線長さ)が押圧によって変化する場合がある。
【0007】
例えば、既存のコンクリート構造物に新たなコンクリートを打設した(継ぎ足した)構造物を構造物として用いる場合がある。斯かる構造物では、既存部分と継ぎ足し部分との境界に位置する既存部分の端面の凹凸と継ぎ足し部分の端面の凹凸とがかみ合った状態になる。そして、斯かる構造物の既存部分と継ぎ足し部分との境界部分に対して、上記のようなせん断強度の測定を行うと、測定中に既存部分の前記端面と継ぎ足し部分の前記端面とがせん断方向に僅かにズレることになる。このようなズレが生じると、既存部分の前記端面の凹凸と継ぎ足し部分の前記端面の凹凸とがかみ合わなくなるため、構造物の一方向の両端部間の長さ(両端部同士を結ぶ直線長さ)が僅かに長くなる。
【0008】
また、上記のように、曲げ強度の測定を行う場合、測定中に構造物が僅かながら湾曲するため、構造物の一方向の両端部間の長さ(両端部同士を結ぶ直線長さ)が短くなる。
【0009】
また、構造物が温度変化によって膨張したり収縮したりする場合にも、構造物の一方向の両端部間の長さ(両端部同士を結ぶ直線長さ)が変化する。
【0010】
ところで、コンクリート構造物等の構造物の物性を測定する場合、構造物を一方向に沿って加圧した状態で測定が行われる場合がある。このような測定を行う場合には、前記一方向に接離自在であると共に構造物を一方向から挟み込んで加圧する一対の接離部を備える測定用治具が用いられる。該測定用治具では、一対の接離部が構造物を一方向から挟み込んで加圧した状態で、前記一方向における一対の接離部の間隔が固定される。これにより、構造物の物性の測定中に、加圧状態が維持されるように構成されている。
【0011】
しかしながら、上記のように、構造物の前記一方向の両端部間の長さが測定中に変化すると、一対の接離部によって構造物が加圧されることによって構造物に生じる応力が変化するため、構造物の物性を正確に測定することができない。
【0012】
そこで、本発明は、構造物の物性を測定する際に用いる測定用治具であって、構造物の一方向の両端部間の長さ(該両端部同士を結ぶ直線長さ)が変化するような場合であっても、構造物の物性の測定を正確に行うことができる測定用治具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る測定用治具は、構造物の物性を測定する際に用いる測定用治具であって、一方向に沿って接離自在であると共に構造物を前記一方向から挟み込むことで該構造物を前記一方向に沿って加圧する一対の接離部と、該一対の接離部の外側に配置されると共に前記一方向に沿って一方の接離部を他方の接離部側へ押圧することで一対の接離部によって構造物が加圧された状態を維持する加圧状態維持部と、前記一方向に弾性変形する弾性部とを備えており、前記加圧状態維持部は、前記一方向に沿って一方の接離部を他方の接離部側へ押圧した状態で、前記一方向の所定位置に固定可能に構成されており、前記一方の接離部と加圧状態維持部と弾性部とは、前記一方向において重なるように配置されると共に、一方の接離部と加圧状態維持部との間に弾性部が挟み込まれている。
【0014】
斯かる構成によれば、前記一方の接離部と加圧状態維持部と弾性部とは、前記一方向において重なるように配置されると共に、一方の接離部と加圧状態維持部との間に弾性部が挟み込まれている。
【0015】
これにより、一対の接離部によって構造物が前記一方向から挟み込まれて前記一方向に沿って加圧された状態(以下、加圧状態とも記す)において、構造物の前記一方向の両端部間の長さ(該両端部を結ぶ前記一方向に沿った直線の長さであって、以下では、構造物長さとも記す)が変化した際にも、構造物に生じる応力(具体的には、一対の接離部によって構造物が加圧されることで生じる応力であって、以下では、構造物加圧応力とも記す)が変化するのを抑制することができる。
【0016】
例えば、構造物長さが長くなるように変化した場合、構造物が一方の接離部を他方の接離部から前記一方向に沿って相対的に離間する方向へ押圧する力(即ち、構造物加圧応力)が増加する。この際、弾性部は、前記一方向の所定位置に固定された加圧状態維持部と一方の接離部とに挟まれた状態であるため、一方の接離部によって加圧状態維持部側へ押圧されて前記一方向に沿って縮むように弾性変形する。これにより、構造物加圧応力が増加するのを弾性部の弾性変形によって抑制することができる。
【0017】
また、構造物長さが短くなるように変化した場合、構造物が一方の接離部を他方の接離部から前記一方向に沿って相対的に離間する方向へ押圧する力(即ち、構造物加圧応力)が減少する。この際、弾性部は、前記一方向の所定位置に固定された加圧状態維持部と一方の接離部との間で、前記一方向に沿って伸びるように弾性変形する。これにより、一方の接離部は、弾性部によって他方の接離部側へ前記一方向に沿って押圧されるため、構造物加圧応力が減少するのを弾性部の弾性変形によって抑制することができる。
【0018】
以上のように、構造物長さの変化によって弾性部が弾性変形することで、構造物加圧応力が変化するのを抑制することができるため、構造物の物性の測定を正確に行うことができる。
【0019】
本発明に係る他の測定用治具は、構造物の物性を測定する際に用いる測定用治具であって、一方向に沿って接離自在であると共に前記一方向における構造物の両端部に連結される一対の接離部と、該一対の接離部の内側に配置されると共に前記一方向に沿って一方の接離部を他方の接離部から離間する方向へ押圧することで一対の接離部によって構造物が前記一方向に沿って引っ張られた状態を維持する引っ張り状態維持部と、前記一方向に弾性変形する弾性部とを備えており、前記引っ張り状態維持部は、前記一方向に沿って一方の接離部を他方の接離部から離間する方向へ押圧した状態で、前記一方向の所定位置に固定可能に構成されており、前記一方の接離部と引っ張り状態維持部と弾性部とは、前記一方向において重なるように配置されると共に、一方の接離部と引っ張り状態維持部との間に弾性部が挟み込まれている。
【0020】
斯かる構成によれば、前記一方の接離部と引っ張り状態維持部と弾性部とは、前記一方向において重なるように配置されると共に、一方の接離部と引っ張り状態維持部との間に弾性部が挟み込まれている。
【0021】
これにより、一対の接離部によって構造物が前記一方向に沿って引っ張られた状態(以下、引っ張り状態とも記す)で、構造物の前記一方向の両端部間の長さ(該両端部を結ぶ前記一方向に沿った直線の長さであって、以下では、構造物長さとも記す)が変化した際にも、構造物に生じる応力(具体的には、一対の接離部によって構造物が引っ張られることで生じる応力であって、以下では、構造物引っ張り応力とも記す)が変化するのを抑制することができる。
【0022】
例えば、構造物長さが長くなるように変化した場合、構造物が一方の接離部を他方の接離部から前記一方向に沿って相対的に離間する方向へ押圧するため、一対の接離部が構造物を引っ張る力(即ち、構造物引っ張り応力)が減少する。この際、前記一方向の所定位置に固定された引っ張り状態維持部と一方の接離部とに挟まれた弾性部が前記一方向に沿って伸びるように弾性変形する。これにより、一方の接離部は、弾性部によって他方の接離部から前記一方向に沿って離間する方向へ押圧されるため、構造物引っ張り応力が減少するのを弾性部の弾性変形によって抑制することができる。
【0023】
また、構造物長さが短くなるように変化した場合、構造物が一対の接離部を引っ張る力(即ち、構造物引っ張り応力)が増加する。この際、弾性部は、前記一方向の所定位置に固定された引っ張り状態維持部と一方の接離部とに挟まれた状態であるため、一方の接離部によって引っ張り状態維持部側へ押圧されて前記一方向に沿って縮むように弾性変形する。これにより、引っ張り応力が増加するのを弾性部の弾性変形によって抑制することができる。
【0024】
以上のように、構造物長さの変化によって弾性部が弾性変形することで、構造物引っ張り応力が変化するのを抑制することができるため、構造物の物性の測定を正確に行うことができる。
【0025】
前記加圧状態維持部は、一対の接離部によって構造物が前記一方向に沿って加圧された状態で構造物に生じる応力を測定する応力測定部を備えており、前記一方の接離部と応力測定部との間に弾性部が挟み込まれることが好ましい。
【0026】
斯かる構成によれば、一方の接離部と応力測定部との間に弾性部が挟み込まれることで、弾性部が弾性変形する前後における構造物加圧応力の測定を正確に行うことができる。
【0027】
前記引っ張り状態維持部は、一対の接離部によって構造物が前記一方向に沿って引っ張られた状態で構造物に生じる応力を測定する応力測定部を備えており、前記一方の接離部と応力測定部との間に弾性部が挟み込まれることが好ましい。
【0028】
斯かる構成によれば、前記一方の接離部と応力測定部との間に弾性部が挟み込まれることで、弾性部が弾性変形する前後における構造物引っ張り応力の測定を正確に行うことができる。
【0029】
前記弾性部は、皿ばねで構成されることが好ましい。
【0030】
前記一方向に沿って延びる軸線を中心として構造物の周囲に間隔を空けて配置されると共に前記一方向に沿って延びる複数の棒状部を備えており、前記一対の接離部は、前記一方向に沿って接離自在に複数の棒状部に取り付けられることが好ましい。
【0031】
斯かる構成によれば、前記一方向に沿って延びる軸線を中心として構造物の周囲に間隔を空けて配置されると共に前記一方向に沿って延びる複数の棒状部に一対の接離部が接離自在に取り付けられることで、一対の接離部が構造物を加圧する力、又は、一対の接離部が構造物を引っ張る力を前記一方向に沿って安定して加えることができる。
また、前記一方向に延びる軸線を中心として構造物の周囲に間隔を空けて複数の棒状部が配置されることで、前記軸線を中心とする構造物の外周面に他の部材(例えば、一方向に直交する他方向における構造物の変位を測定するロードセルなど)を容易に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0032】
以上のように、本発明によれば、構造物の一方向の両端部間の長さ(該両端部同士を結ぶ直線長さ)が変化するような場合であっても、物性の測定を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】(a)は、本発明の第一実施形態に係る測定用治具を水平方向から見た側面図、(b)は、同実施形態に係る測定用治具を上方から見た平面図。
図2図1(b)のI−I断面の部分断面図であって構造物のせん断強度の試験を行う状態を示す図。
図3】(a)は、同実施形態に係る測定用治具を用いた構造物のせん断強度の試験において、構造物の長さが変化する前の構造物の一端部の近傍を示した拡大断面図、(b)は、同実施形態に係る測定用治具を用いた構造物のせん断強度の試験において、構造物の長さが変化した後の構造物の一端部の近傍を示した拡大断面図。
図4図1(b)のI−I断面の部分断面図であって構造物の曲げ強度の試験を行う状態を示す図。
図5】(a)は、同実施形態に係る測定用治具を用いた構造物の曲げ強度の試験において、構造物の長さが変化する前の構造物の一端部の近傍を示した拡大断面図、(b)は、同実施形態に係る測定用治具を用いた構造物の曲げ強度の試験において、構造物の長さが変化した後の構造物の一端部の近傍を示した拡大断面図。
図6】(a)は、本発明の第二実施形態に係る測定用治具を水平方向から見た側面図、(b)は、同実施形態に係る測定用治具を上方から見た平面図。
図7】同実施形態に係る測定用治具を水平方向から見た側面図であって、一対の接離部によって構造物が引っ張られた状態を形成する際の図。
図8図6(b)のII−II断面の部分断面図であって構造物のせん断強度の試験を行う状態を示す図。
図9】(a)は、同実施形態に係る測定用治具を用いた構造物のせん断強度の試験において、構造物の長さが変化する前の構造物の一端部の近傍を示した拡大断面図、(b)は、同実施形態に係る測定用治具を用いた構造物のせん断強度の試験において、構造物の長さが変化した後の構造物の一端部の近傍を示した拡大断面図。
図10図6(b)のII−II断面の部分断面図であって構造物の曲げ強度の試験を行う状態を示す図。
図11】(a)は、同実施形態に係る測定用治具を用いた構造物の曲げ強度の試験において、構造物の長さが変化する前の構造物の一端部の近傍を示した拡大断面図、(b)は、同実施形態に係る測定用治具を用いた構造物の曲げ強度の試験において、構造物の長さが変化した後の構造物の一端部の近傍を示した拡大断面図。
図12】(a)は、従来のせん断強度の試験の模式図、(b)は、従来の曲げ強度の試験の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。また、以下の説明では、一方向(以下、第一方向とも記す)は、各図のx軸に沿った方向であり、前記一方向に直交する他方向(以下)、第二方向とも記す)は、各図のy軸に沿った方向であり、第一方向及び第二方向に直交する第三方向は、各図のz軸に沿った方向である。
【0035】
<第一実施形態>
第一実施形態に係る測定用治具1は、図1(a)(b)に示すように、第一方向に沿って接離自在であると共に構造物Xを第一方向から挟み込むことで該構造物Xを第一方向に沿って加圧する一対の接離部2,2と、一対の接離部2,2によって構造物Xが加圧された状態を維持する加圧状態維持部3と、第一方向に弾性変形する弾性部4とを備える。
【0036】
本実施形態では、測定用治具1は、第一方向に沿って延びる複数の棒状部5を更に備える。具体的には、前記棒状部5は、第一方向に沿って延びる軸線を中心として構造物Xの周囲に間隔を空けて複数(本実施形態では、4本)配置される。また、測定用治具1は、一対の接離部2,2の少なくとも一方を第一方向に沿って押圧することで一対の接離部2,2が構造物Xを加圧した状態にする押圧部6を更に備える。
【0037】
前記一対の接離部2,2は、板状に形成される。また、一対の接離部2,2は、第一方向における構造物Xの両端部と当接するように配置される。また、一対の接離部2,2は、第一方向に沿って接離自在な状態で複数の(本実施形態では、4本の)棒状部5に取り付けられる。具体的には、一対の接離部2,2は、外周端部(より詳しくは、第一方向において構造物Xと重ならない部分)に各棒状部5が挿通されることで、第一方向に沿って接離自在な状態で各棒状部5に取り付けられる。本実施形態では、第三方向における各接離部2の両端部に第二方向に間隔を空けて棒状部5が挿通される。そして、各接離部2は、第三方向における両端部(棒状部5を挿通する両端部)の間の領域に第一方向における構造物Xの両端部が当接するように構成される。
【0038】
前記加圧状態維持部3は、第一方向における一対の接離部2,2の外側に配置される。また、加圧状態維持部3は、第一方向において一対の接離部2,2と重なるように配置される。また、加圧状態維持部3は、第一方向に間隔を空けて複数配置される。本実施形態では、複数(具体的には、4つの)加圧状態維持部3からなる二つの群が第一方向に間隔を空けて配置される。そして、複数の加圧状態維持部3(具体的には、各加圧状態維持部3の二つの群)の間に一対の接離部2,2が位置する。
【0039】
また、各加圧状態維持部3は、第一方向の所定位置に固定可能に構成される。具体的には、各加圧状態維持部3は、第一方向において各棒状部5に固定可能に構成される。本実施形態では、各加圧状態維持部3は、一対の接離部2,2の外側で各棒状部5と螺合することで、第一方向の所定位置に固定される。
【0040】
また、第一方向における一方の接離部2a側に配置される加圧状態維持部3(以下では、一方の加圧状態維持部3aとも記す)は、該一方の接離部2aから第一方向に離間した位置に配置される。一方の加圧状態維持部3aは、一対の接離部2,2によって構造物Xが第一方向に沿って加圧された状態で構造物Xに生じる応力(以下では、構造物加圧応力とも記す)を測定する応力測定部3bと、棒状部5に固定(具体的には、螺合)される加圧状態維持部本体3cとを備える。そして、第一方向において加圧状態維持部本体3cと一方の接離部2aとの間に応力測定部3bが配置される。また、応力測定部3bは、一方の接離部2aから第一方向に離間した位置に配置される。応力測定部3bとしては、特に限定されるものではなく、例えば、ロードセル等のセンサーを用いることができる。
【0041】
また、第一方向における他方の接離部2b側に配置される加圧状態維持部3(以下では、他方の加圧状態維持部3dとも記す)は、他方の接離部2と当接するように配置される。本実施形態では、他方の加圧状態維持部3dは、棒状部5に固定(具体的には、螺合)される加圧状態維持部本体3cを備え、該加圧状態維持部本体3cが他方の接離部2bと当接するように配置される。
【0042】
一方の加圧状態維持部3aが備える加圧状態維持部本体3c、及び、他方の加圧状態維持部3dが備える加圧状態維持部本体3cは、棒状部5を軸に回動させることで第一方向(具体的には、棒状部5)に沿って移動し、回動させないことで第一方向(具体的には、棒状部5)の所定位置に固定される。
【0043】
前記弾性部4は、第一方向において一対の接離部2,2と重なるように配置される。また、弾性部4は、一方の接離部2aと一方の加圧状態維持部3a(具体的には、応力測定部3b)との間に挟み込まれるように配置される。本実施形態では、弾性部4としては、皿バネを用いることができる。該皿バネは、中心部に開口部を備える円盤状の板を円錐状に形成したもので、高さ方向に沿って高さを低くする方向に荷重が加わることで弾性変形するように構成されている。本実施形態では、弾性部4を構成する皿バネの中央部の開口部に棒状部5が挿通され、該開口部が一方の加圧状態維持部3a(具体的には、応力測定部3b)と当接し、該開口部から拡開する側の端部が一方の接離部2aに当接するように配置される。
【0044】
前記押圧部6は、他方の接離部2b(具体的には、他方の接離部2bの略中央部)を第一方向に沿って一方の接離部2a側へ押圧する押圧部本体6aと、該押圧部本体6aを第一方向の所定位置に固定する押圧部本体固定部6bとを備える。押圧部本体6aとしては、特に限定されるものではなく、例えば、油圧ポンプの力によって他方の接離部2bを押圧するものを用いることができる。また、押圧部本体固定部6bは、押圧部本体6aが取り付けられた状態で、棒状部5に固定(具体的には、螺合)される。これにより、押圧部本体6aが第一方向(具体的には、棒状部5)の所定位置に固定される。
【0045】
次に、上記のように構成される測定用治具1を用いて構造物Xの物性を測定する方法について説明する。構造物Xとしては、特に限定されるものではなく、例えば、図2に示すように、一のコンクリート構造物(以下では、既存構造物とも記す)X1の端部に他のコンクリート構造物(以下では、継ぎ足し構造物とも記す)X2を連結したものを用いることができる。斯かる構造物Xとしては、例えば、コンクリートからなる既存構造物X1の端部に新たにコンクリートを打設することで継ぎ足し構造物X2を形成したものを用いることができる。
【0046】
上記のような構造物Xに対して物性の測定と評価を行う際には、まず初めに、一対の接離部2,2の間に構造物Xを配置する。そして、一方の加圧状態維持部3a(具体的には、加圧状態維持部本体3c)のそれぞれ、及び/又は、他方の加圧状態維持部3d(具体的には、加圧状態維持部本体3c)のそれぞれを棒状部5を軸に回転させることで、第一方向における構造物Xの両端部に一対の接離部2,2が当接した状態にする。
【0047】
斯かる状態では、一方の接離部2aと一方の加圧状態維持部3a(具体的には、応力測定部3b)との間に弾性部4(具体的には、皿バネ)が挟み込まれた状態になり、弾性部4(具体的には、皿バネの拡開する側の端部)と一方の接離部2aとが当接し、該弾性部4(具体的には、皿バネの開口部)と一方の加圧状態維持部3a(具体的には、応力測定部3b)とが当接する。また、他方の接離部2bと他方の加圧状態維持部3d(加圧状態維持部本体3c)とが当接する。
【0048】
次に、押圧部6の押圧部本体6aによって他方の接離部2bを第一方向に沿って一方の接離部2a側へ押圧する。これにより、一対の接離部2,2によって第一方向に沿って構造物Xが加圧された状態となる。そして、他方の加圧状態維持部3d(具体的には、加圧状態維持部本体3c)を回転させて一方の接離部2a側へ移動させることで、該他方の加圧状態維持部3d(具体的には、加圧状態維持部本体3c)によって他方の接離部2bが一方の接離部2a側へ第一方向に沿って押圧される。これにより、応力測定部3bで測定される応力(即ち、構造物加圧応力)が上昇する。そして、応力測定部3bで測定される応力(即ち、構造物加圧応力)が所望する応力となった際に、他方の加圧状態維持部3d(加圧状態維持部本体3c)の回転を停止することで、該他方の加圧状態維持部3d(加圧状態維持部本体3c)を第一方向における棒状部5の所定位置に固定する。これにより、一対の接離部2,2によって構造物Xが第一方向に沿って所定圧力で加圧された状態が維持される。この際、弾性部4(具体的には、皿バネ)は、第一方向に沿って縮むように(皿バネの高さが低くなるように)弾性変形した状態で保持される。なお、斯かる状態では、押圧部本体6aによる押圧は停止されてもよい。
【0049】
上記のように加圧された状態の構造物Xに対して行われる物性の測定と評価としては、特に限定されるものではない。例えば、第一方向における構造物Xの一端部から中央部を超える位置までの部分を載置部E上に配置すると共に、第一方向における構造物Xの他端部から中央部を超える位置までの部分に上方から荷重部Fを当接させる。そして、該荷重部Fによって下方へ向かって構造物Xに荷重を加えることで、既存構造物X1と継ぎ足し構造物X2との境界部分に、上下方向に沿ってせん断方向の力が加わることになる。そして、押圧を開始した直後から構造物Xの前記境界部分に亀裂が生じるまでの応力の変化を測定することで、構造物X(具体的には、既存構造物X1と継ぎ足し構造物X2との境界部分)のせん断強度の評価を行うことができる。
【0050】
ここで、上記のような構造物Xでは、既存構造物X1と継ぎ足し構造物X2との境界に位置する既存構造物X1の端面の凹凸と、継ぎ足し構造物X2の端面の凹凸とは、かみ合った状態になる。このため、既存構造物X1と継ぎ足し構造物X2との境界部分に、上記のようなせん断方向の力が加わると、応力の測定中に既存構造物X1の前記端面と継ぎ足し構造物X2の前記端面とがせん断方向に僅かにズレることになる。このようなズレが生じると、既存構造物X1の前記端面の凹凸と継ぎ足し構造物X2の前記端面の凹凸とがかみ合わなくなる。このため、構造物の第一方向の両端部間の長さ(両端部同士を結ぶ直線長さ)が僅かに長くなる。
【0051】
このように、構造物Xの長さが長くなるように変化した場合、構造物Xが一方の接離部2aを他方の接離部2bから第一方向に沿って相対的に離間する方向へ押圧する力(即ち、構造物加圧応力)が増加する。この際、弾性部4は、図3に示すように、第一方向の所定位置に固定された一方の加圧状態維持部3a(具体的には、応力測定部3b)と一方の接離部2aとの間に挟まれた状態であるため、一方の接離部2aによって一方の加圧状態維持部3a側へ押圧されて第一方向に沿って縮むように弾性変形する。これにより、応力測定部3bで測定される応力(即ち、構造物加圧応力)が構造物Xの長さの変化によって増加するのを弾性部4の変形によって抑制することができる。
【0052】
上記のように加圧された状態の構造物Xに対して行われる他の物性の測定と評価としては、図4に示すように、第一方向における構造物Xの両端部を第一方向に間隔を空けて配置された一対の載置部G,G上に配置すると共に、第一方向における構造物Xの中央部に上方から荷重部Hを当接させる。そして、荷重部Hによって構造物Xに下方へ向かって荷重(構造物Xを湾曲させる力)を加えることで、該荷重に対向する応力を構造物Xに生じさせる。これにより、荷重を加えた直後から構造物Xが湾曲して亀裂が生じるまでの応力の変化を測定することで、構造物Xの曲げ強度の評価を行うことができる。
【0053】
ここで、上記のように構造物Xに荷重を加えた場合、応力の測定中に構造物Xが僅かながら湾曲するため、構造物Xの第一方向の両端部間の長さ(両端部同士を結ぶ直線長さ)が僅かに短くなる。
【0054】
このように、構造物Xの長さが短くなるように変化した場合、構造物Xが一方の接離部2aを他方の接離部から第一方向に沿って相対的に離間する方向へ押圧する力(即ち、構造物加圧応力)が減少する。この際、弾性部4は、図5に示すように、第一方向の所定位置に固定された加圧状態維持部3(具体的には、応力測定部3b)と一方の接離部2aとの間で、第一方向に沿って伸びるように弾性変形する。これにより、一方の接離部2aは、弾性部4によって他方の接離部2b側へ第一方向に沿って押圧されるため、構造物加圧応力が減少するのを弾性部4の弾性変形によって抑制することができる。
【0055】
以上のように、本発明に係る測定用治具1によれば、構造物Xの一方向の両端部間の長さ(該両端部同士を結ぶ直線長さ)が変化するような場合であっても、構造物Xの物性の測定を正確に行うことができる。
【0056】
即ち、一方の接離部2aと加圧状態維持部3と弾性部4とは、第一方向において重なるように配置されると共に、一方の接離部2aと加圧状態維持部3との間に弾性部4が挟み込まれている。
【0057】
これにより、一対の接離部2,2によって構造物Xが第一方向から挟み込まれて第一方向に沿って加圧された状態(以下、加圧状態とも記す)において、構造物Xの第一方向の両端部間の長さ(該両端部を結ぶ第一方向に沿った直線の長さであって、以下では、構造物長さとも記す)が変化した際にも、構造物Xに生じる応力(具体的には、一対の接離部2,2によって構造物Xが加圧されることで生じる応力であって、以下では、構造物加圧応力とも記す)が変化するのを抑制することができる。
【0058】
例えば、構造物長さが長くなるように変化した場合、構造物Xが一方の接離部2aを他方の接離部2bから第一方向に沿って相対的に離間する方向へ押圧する力(即ち、構造物加圧応力)が増加する。この際、弾性部4は、第一方向の所定位置に固定された加圧状態維持部3と一方の接離部2aとに挟まれた状態であるため、一方の接離部2aによって加圧状態維持部3側へ押圧されて第一方向に沿って縮むように弾性変形する。これにより、構造物加圧応力が増加するのを弾性部4の弾性変形によって抑制することができる。
【0059】
また、構造物長さが短くなるように変化した場合、構造物Xが一方の接離部2aを他方の接離部2bから第一方向に沿って相対的に離間する方向へ押圧する力(即ち、構造物加圧応力)が減少する。この際、弾性部4は、第一方向の所定位置に固定された加圧状態維持部3と一方の接離部2aとの間で、第一方向に沿って伸びるように弾性変形する。これにより、一方の接離部2aは、弾性部4によって他方の接離部2b側へ第一方向に沿って押圧されるため、構造物加圧応力が減少するのを弾性部4の弾性変形によって抑制することができる。
【0060】
以上のように、構造物長さの変化によって弾性部4が弾性変形することで、構造物加圧応力が変化するのを抑制することができるため、構造物Xの物性の測定を正確に行うことができる。
【0061】
また、一方の接離部2aと応力測定部3bとの間に弾性部4が挟み込まれることで、弾性部4が弾性変形する前後における構造物加圧応力の測定を正確に行うことができる。
【0062】
また、第一方向に沿って延びる軸線を中心として構造物Xの周囲に間隔を空けて配置されると共に第一方向に沿って延びる複数の棒状部5に一対の接離部2,2が接離自在に取り付けられることで、一対の接離部2,2が構造物Xを加圧する力、又は、一対の接離部2,2が構造物Xを引っ張る力を第一方向に沿って安定して加えることができる。
【0063】
また、第一方向に延びる軸線を中心として構造物Xの周囲に間隔を空けて複数の棒状部5が配置されることで、前記軸線を中心とする構造物Xの外周面に他の部材(例えば、一方向に直交する他方向における構造物Xの変位を測定するロードセルなど)を容易に取り付けることができる。
【0064】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について、図6〜11を用いて説明する。第二実施形態に係る測定用治具10は、第一実施形態に係る測定用治具1と比較すると、主に、構造物Xに対して引っ張る力を加えるものである点で異なる。従って、以下では、第一実施形態と異なる点を中心に説明し、同一の構成に対しては同一の符号を付すこととして説明を省略する。
【0065】
測定用治具10は、図6(a)(b)に示すように、第一方向に沿って接離自在であると共に第一方向における構造物Xの両端部に連結される一対の接離部20,20と、該一対の接離部20,20によって構造物が第一方向に沿って引っ張られた状態を維持する引っ張り状態維持部30と、第一方向に弾性変形する弾性部4とを備える。
【0066】
本実施形態では、測定用治具10は、第一方向に沿って延びる複数の棒状部5を更に備える。具体的には、前記棒状部5は、第一方向に沿って延びる軸線を中心として構造物Xの周囲に間隔を空けて複数(本実施形態では、4本)配置される。また、測定用治具10は、一対の接離部20,20の少なくとも一方を第一方向に沿って押圧して一対の接離部20,20よって構造物Xが引っ張られた状態にする押圧部60を更に備える。
【0067】
前記一対の接離部20,20は、板状に形成される。また、一対の接離部20,20は、第一方向における構造物Xの両端部と当接するように配置される。また、一対の接離部20,20は、ボルト等の連結具(図示せず)や接着剤等の連結手段(図示せず)を用いて、第一方向における構造物Xの両端部と連結される。また、一対の接離部20,20は、第一方向に沿って接離自在な状態で複数の(本実施形態では、4本の)棒状部5に取り付けられる。具体的には、一対の接離部20,20は、外周端部(より詳しくは、第一方向において構造物Xと重ならない部分)に各棒状部5が挿通されることで、第一方向に沿って接離自在な状態で各棒状部5に取り付けられる。本実施形態では、第三方向における各接離部20の両端部に第二方向に間隔を空けて棒状部5が挿通される。そして、各接離部20は、第三方向における両端部(棒状部5を挿通する両端部)の間の領域に第一方向における構造物Xの両端部が当接する(連結される)ように構成される。
【0068】
前記引っ張り状態維持部30は、第一方向における一対の接離部20,20の内側に配置される。また、引っ張り状態維持部30は、第一方向において一対の接離部20,20と重なるように配置される。また、引っ張り状態維持部30は、第一方向に間隔を空けて複数配置される。本実施形態では、複数(具体的には、4つの)引っ張り状態維持部30からなる二つの群が第一方向に間隔を空けて配置される。そして、複数の引っ張り状態維持部30(具体的には、各引っ張り状態維持部30の二つの群)の間に一対の接離部20,20が位置する。
【0069】
また、各引っ張り状態維持部30は、第一方向の所定位置に固定可能に構成される。具体的には、各引っ張り状態維持部30は、第一方向において各棒状部5に固定可能に構成される。本実施形態では、各引っ張り状態維持部30は、一対の接離部20,20の内側で各棒状部5と螺合することで、第一方向の所定位置に固定される。
【0070】
また、第一方向における一方の接離部20a側に配置される引っ張り状態維持部30(以下では、一方の引っ張り状態維持部30aとも記す)は、該一方の接離部20aから第一方向に離間した位置に配置される。本実施形態では、一方の引っ張り状態維持部30aは、一対の接離部20,20によって構造物Xが第一方向に沿って引っ張られた状態で構造物Xに生じる応力(以下では、構造物引っ張り応力とも記す)を測定する応力測定部30bと、棒状部5に固定(具体的には、螺合)される引っ張り状態維持部本体30cとを備える。そして、第一方向において引っ張り状態維持部本体30cと一方の接離部20aとの間に応力測定部30bが配置される。また、応力測定部30bは、一方の接離部20aから第一方向に離間した位置に配置される。応力測定部30bとしては、特に限定されるものではなく、例えば、ロードセル等のセンサーを用いることができる。
【0071】
また、第一方向における他方の接離部20b側に配置される引っ張り状態維持部30(以下では、他方の引っ張り状態維持部30dとも記す)は、他方の接離部20と当接するように配置される。本実施形態では、他方の引っ張り状態維持部30dは、棒状部5に固定(具体的には、螺合)される引っ張り状態維持部本体30cを備え、該引っ張り状態維持部本体30cが他方の接離部20bと当接するように配置される。
【0072】
一方の引っ張り状態維持部30aが備える引っ張り状態維持部本体30c、及び、他方の引っ張り状態維持部30dが備える引っ張り状態維持部本体30cは、棒状部5を軸に回動させることで第一方向(具体的には、棒状部5)に沿って移動し、回動させないことで第一方向(具体的には、棒状部5)の所定位置に固定される。
【0073】
前記弾性部4は、第一方向において一対の接離部20,20と重なるように配置される。また、弾性部4は、一方の接離部20aと一方の引っ張り状態維持部30a(具体的には、応力測定部30b)との間に挟み込まれるように配置される。本実施形態でも、第一実施形態と同様に、弾性部4として皿バネを用いることができる。本実施形態では、弾性部4を構成する皿バネの中央部の開口部に棒状部5が挿通され、該開口部が一方の引っ張り状態維持部30a(具体的には、応力測定部30b)と当接し、該開口部から拡開する側の端部が一方の接離部20aに当接するように配置される。
【0074】
前記押圧部60は、他方の接離部20b(具体的には、他方の接離部20bの端部)を第一方向に沿って一方の接離部20aから離間する方向へ押圧する押圧部本体60aと、該押圧部本体60aを第一方向の所定位置に固定する押圧部本体固定部60bとを備える。押圧部本体60aとしては、特に限定されるものではなく、例えば、油圧ポンプの力によって他方の接離部20bを押圧するものを用いることができる。また、押圧部本体固定部60bは、押圧部本体60aが取り付けられた状態で、棒状部5に固定(具体的には、螺合)される。これにより、押圧部本体60aが第一方向(具体的には、棒状部5)の所定位置に固定される。
【0075】
次に、上記のように構成される測定用治具10を用いて構造物Xの物性を測定する方法について説明する。構造物Xとしては、特に限定されるものではなく、例えば、図7に示すように、一のコンクリート構造物(以下では、既存構造物とも記す)X1の端部に他のコンクリート構造物(以下では、継ぎ足し構造物とも記す)X2を連結したものを用いることができる。斯かる構造物Xとしては、例えば、コンクリートからなる既存構造物X1の端部に新たにコンクリートを打設することで継ぎ足し構造物X2を形成したものを用いることができる。
【0076】
上記のような構造物Xに対して物性の測定と評価を行う際には、まず初めに、一対の接離部20,20の間に構造物Xを配置する。そして、第一方向における構造物Xの両端部と一対の接離部20,20とを、ボルト等の連結手段(図示せず)を用いて連結する。
【0077】
斯かる状態では、一方の接離部20aと一方の引っ張り状態維持部30a(具体的には、応力測定部30b)との間に弾性部4(具体的には、皿バネ)が挟み込まれた状態になり、弾性部4(具体的には、皿バネの拡開する側の端部)と一方の接離部20aとが当接し、該弾性部4(具体的には、皿バネの開口部)と一方の引っ張り状態維持部30a(具体的には、応力測定部30b)とが当接する。また、他方の接離部2bと他方の引っ張り状態維持部30d(引っ張り状態維持部本体30c)とが当接する。
【0078】
次に、押圧部60の押圧部本体60aによって他方の接離部20bを第一方向に沿って一方の接離部2aから離間する方向へ押圧する。これにより、一対の接離部20,20によって第一方向に沿って構造物Xが引っ張られた状態となる。そして、他方の引っ張り状態維持部30d(具体的には、引っ張り状態維持部本体30c)を回転させて一方の接離部2aから離間する方向へ移動させることで、該他方の引っ張り状態維持部30d(具体的には、引っ張り状態維持部本体30c)によって他方の接離部20bが一方の接離部20a側から第一方向に沿って離間する方向へ押圧される。これにより、応力測定部30bで測定される応力(即ち、構造物引っ張り応力)が上昇する。そして、応力測定部30bで測定される応力(即ち、構造物引っ張り応力)が所望する応力となった際に、他方の引っ張り状態維持部30d(引っ張り状態維持部本体30c)の回転を停止することで、該他方の引っ張り状態維持部30d(引っ張り状態維持部本体30c)を第一方向(具体的には、棒状部5)の所定位置に固定する。これにより、構造物Xが第一方向に沿って所定の力で引っ張られた状態が維持される。この際、弾性部4(具体的には、皿バネ)は、第一方向に沿って縮むように(皿バネの高さが低くなるように)弾性変形した状態で保持される。なお、斯かる状態では、押圧部本体60aによる押圧は停止されてもよい。
【0079】
上記のように引っ張られた状態の構造物Xに対して行われる物性の測定と評価としては、特に限定されるものではない。例えば、図8に示すように、第一方向における構造物Xの一端部から中央部を超える位置までの部分を載置部E上に配置すると共に、第一方向における構造物Xの他端部から中央部を超える位置までの部分に上方から荷重部Fを当接させる。そして、該荷重部Fによって下方へ向かって構造物Xに荷重を加えることで、既存構造物X1と継ぎ足し構造物X2との境界部分に、上下方向に沿ってせん断方向の力が加わることになる。そして、押圧を開始した直後から構造物Xの前記境界部分に亀裂が生じるまでの応力の変化を測定することで、構造物X(具体的には、既存構造物X1と継ぎ足し構造物X2との境界部分)のせん断強度の評価を行うことができる。
【0080】
ここで、上記のような構造物Xでは、既存構造物X1と継ぎ足し構造物X2との境界に位置する既存構造物X1の端面の凹凸と、継ぎ足し構造物X2の端面の凹凸とは、かみ合った状態になる。このため、既存構造物X1と継ぎ足し構造物X2との境界部分に、上記のようなせん断方向の力が加わると、応力の測定中に既存構造物X1の前記端面と継ぎ足し構造物X2の前記端面とがせん断方向に僅かにズレることになる。このようなズレが生じると、既存構造物X1の前記端面の凹凸と継ぎ足し構造物X2の前記端面の凹凸とがかみ合わなくなる。このため、構造物の第一方向の両端間の長さ(両端部同士を結ぶ直線長さ)が僅かに長くなる。
【0081】
このように、構造物Xの長さが長くなるように変化した場合、構造物Xが一方の接離部20aを他方の接離部20bから第一方向に沿って相対的に離間する方向へ押圧するため、一対の接離部20,20が構造物Xを引っ張る力(即ち、構造物引っ張り応力)が減少する。この際、図9に示すように、第一方向の所定位置に固定された一方の引っ張り状態維持部30a(具体的には、応力測定部30b)と一方の接離部20aとの間で、弾性部4が第一方向に沿って伸びるように弾性変形する。これにより、一方の接離部20aは、弾性部4によって他方の接離部20bから離間する方向へ第一方向に沿って押圧されるため、応力測定部30bで測定される応力(即ち、構造物引っ張り応力)が減少するのを弾性部4の弾性変形によって抑制することができる。
【0082】
上記のように引っ張られた状態の構造物Xに対して行われる他の物性の測定と評価としては、図10に示すように、第一方向における構造物Xの両端部を第一方向に間隔を空けて配置された一対の載置部G,G上に配置すると共に、第一方向における構造物Xの中央部に上方から荷重部Hを当接させる。そして、荷重部Hによって構造物Xに下方へ向かって荷重(構造物Xを湾曲させる力)を加えることで、該荷重に対向する応力を構造物Xに生じさせる。これにより、荷重を加えた直後から構造物Xが湾曲して亀裂が生じるまでの応力の変化を測定することで、構造物Xの曲げ強度の評価を行うことができる。
【0083】
ここで、上記のように構造物Xに荷重を加えた場合、応力の測定中に構造物Xが僅かながら湾曲するため、構造物Xの第一方向の両端部間の長さ(両端部同士を結ぶ直線長さ)が僅かに短くなる。
【0084】
このように、構造物Xの長さが短くなるように変化した場合、構造物Xが一対の接離部20,20を引っ張る力(即ち、構造物引っ張り応力)が増加する。この際、弾性部4は、図11に示すように、第一方向の所定位置に固定された一方の引っ張り状態維持部30a(具体的には、応力測定部30b)と一方の接離部20aとの間に挟まれた状態であるため、一方の接離部20aによって一方の引っ張り状態維持部30a側へ押圧されて第一方向に沿って縮むように弾性変形する。これにより、応力測定部30bで測定される応力(即ち、構造物引っ張り応力)が構造物Xの長さの変化によって増加するのを弾性部4の変形によって抑制することができる。
【0085】
以上のように、本発明に係る測定用治具10によれば、構造物Xの一方向の両端部間の長さ(該両端部同士を結ぶ直線長さ)が変化するような場合であっても、構造物Xの物性の測定を正確に行うことができる。
【0086】
即ち、一方の接離部20aと引っ張り状態維持部30と弾性部4とは、第一方向において重なるように配置されると共に、一方の接離部20aと引っ張り状態維持部30との間に弾性部4が挟み込まれている。
【0087】
これにより、一対の接離部20,20によって構造物Xが第一方向に沿って引っ張られた状態(以下、引っ張り状態とも記す)で、構造物Xの第一方向の両端部間の長さ(該両端部を結ぶ第一方向に沿った直線の長さであって、以下では、構造物長さとも記す)が変化した際にも、構造物Xに生じる応力(具体的には、一対の接離部20,20によって構造物Xが引っ張られることで生じる応力であって、以下では、構造物引っ張り応力とも記す)が変化するのを抑制することができる。
【0088】
例えば、構造物長さが長くなるように変化した場合、構造物Xが一方の接離部20aを他方の接離部20bから第一方向に沿って相対的に離間する方向へ押圧するため、一対の接離部20,20が構造物Xを引っ張る力(即ち、構造物引っ張り応力)が減少する。この際、第一方向の所定位置に固定された引っ張り状態維持部30と一方の接離部20aとに挟まれた弾性部4が第一方向に沿って伸びるように弾性変形する。これにより、一方の接離部20aは、弾性部4によって他方の接離部20bから第一方向に沿って離間する方向へ押圧されるため、構造物引っ張り応力が減少するのを弾性部4の弾性変形によって抑制することができる。
【0089】
また、構造物長さが短くなるように変化した場合、構造物Xが一対の接離部20,20を引っ張る力(即ち、構造物引っ張り応力)が増加する。この際、弾性部4は、第一方向の所定位置に固定された引っ張り状態維持部30と一方の接離部20aとに挟まれた状態であるため、一方の接離部20aによって引っ張り状態維持部30側へ押圧されて第一方向に沿って縮むように弾性変形する。これにより、供試引っ張り応力が増加するのを弾性部4の弾性変形によって抑制することができる。
【0090】
以上のように、構造物長さの変化によって弾性部4が弾性変形することで、構造物引っ張り応力が変化するのを抑制することができるため、構造物Xの物性の測定を正確に行うことができる。
【0091】
また、一方の接離部20aと応力測定部30bとの間に弾性部4が挟み込まれることで、弾性部4が弾性変形する前後における構造物引っ張り応力の測定を正確に行うことができる。
【0092】
また、第一方向に沿って延びる軸線を中心として構造物Xの周囲に間隔を空けて配置されると共に第一方向に沿って延びる複数の棒状部5に一対の接離部20,20が接離自在に取り付けられることで、一対の接離部20,20が構造物Xを加圧する力、又は、一対の接離部20,20が構造物Xを引っ張る力を第一方向に沿って安定して加えることができる。
【0093】
また、第一方向に延びる軸線を中心として構造物Xの周囲に間隔を空けて複数の棒状部5が配置されることで、前記軸線を中心とする構造物Xの外周面に他の部材(例えば、一方向に直交する他方向における構造物Xの変位を測定するロードセルなど)を容易に取り付けることができる。
【0094】
なお、本発明に係る測定用治具は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0095】
例えば、上記実施形態では、一方の接離部2aと一方の加圧状態維持部3a(又は、一方の引っ張り状態維持部30a)との間に弾性部4が配置されているが、これに限定されるものではなく、例えば、他方の接離部2bと他方の加圧状態維持部3d(又は、他方の引っ張り状態維持部30d)との間に弾性部4が配置されてもよい。又は、一方の接離部2aと一方の加圧状態維持部3a(又は、一方の引っ張り状態維持部30a)との間に弾性部4が配置されると共に、他方の接離部2bと他方の加圧状態維持部3d(又は、他方の引っ張り状態維持部30d)との間に弾性部4が配置されてもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、一方の加圧状態維持部3a(又は、一方の引っ張り状態維持部30a)が応力測定部3b(又は、応力測定部30b)を備えているが、これに限定されるものではなく、例えば、他方の加圧状態維持部3d(又は、他方の引っ張り状態維持部30d)が応力測定部3b(又は、応力測定部30b)を備えるように構成されてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、一対の接離部2,2,20,20は、棒状部5を軸に回転させることで、第一方向(具体的には、棒状部5)に沿って移動するように構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、一方の接離部2a,20aが第一方向(具体的には、棒状部5)の所定位置に固定され、他方の接離部2b,20bのみが第一方向(具体的には、棒状部5)に沿って移動するように構成されてもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、測定用治具1,10は、押圧部6,60を備えているが、これに限定されるものではなく、例えば、押圧部6,60を備えない測定用治具であってよい。斯かる場合には、応力測定部3bで測定される応力は、他方の加圧状態維持部3d(又は、引っ張り状態維持部30d)の移動によってのみ所定の値に調節される。
【0099】
また、上記実施形態では、一つの加圧状態維持部3(又は、一つの引っ張り状態維持部30)と、一方の接離部2a,20aとの間に、一つの弾性部4が配置されているが、これに限定されるものではなく、例えば、弾性部4が皿バネである場合には、複数の皿バネが重なるように配置されてもよく、複数の皿バネが重なることなく配置されてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1,10…測定用治具、2,20…接離部、3…加圧状態維持部、3b…応力測定部、3c…加圧状態維持部本体、4…弾性部、5…棒状部、6…押圧部、6a…押圧部本体、6b…押圧部本体固定部、30…引っ張り状態維持部、30b…応力測定部、30c…引っ張り状態維持部本体、60…押圧部、60a…押圧部本体、60b…押圧部本体固定部、A…載置部、B…押圧部、C…載置部、D…押圧部、E…載置部、F…荷重部、G,G…載置部、H…荷重部、X…構造物
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