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特開2019-156767抗微生物性組成物とその製造方法、抗微生物性エマルション塗料とその製造方法および塗膜の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-156767(P2019-156767A)
(43)【公開日】2019年9月19日
(54)【発明の名称】抗微生物性組成物とその製造方法、抗微生物性エマルション塗料とその製造方法および塗膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/16 20060101AFI20190823BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20190823BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20190823BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20190823BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20190823BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20190823BHJP
   A01N 43/90 20060101ALI20190823BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20190823BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20190823BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20190823BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20190823BHJP
【FI】
   A01N59/16 A
   C09D5/14
   C09D5/02
   C09D201/00
   C09D7/63
   C09D7/61
   A01N43/90 105
   A01N25/00 102
   A01P3/00
   A01P1/00
   B05D7/24 301F
   B05D7/24 303E
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-46049(P2018-46049)
(22)【出願日】2018年3月13日
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】大橋 文彦
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 はるか
(72)【発明者】
【氏名】四ッ▲柳▼ 雄太
(72)【発明者】
【氏名】芝原 敦
(72)【発明者】
【氏名】高木 基之
【テーマコード(参考)】
4D075
4H011
4J038
【Fターム(参考)】
4D075CA45
4D075DA06
4D075DC02
4D075DC05
4D075DC13
4D075DC50
4D075EA06
4D075EA13
4D075EB07
4D075EB12
4D075EB13
4D075EB14
4D075EB15
4D075EB16
4D075EB19
4D075EB32
4D075EB33
4D075EB35
4D075EB37
4D075EB38
4D075EB39
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4D075EB56
4D075EC08
4D075EC11
4D075EC13
4D075EC33
4D075EC47
4D075EC49
4D075EC54
4H011AA02
4H011AA03
4H011BA06
4H011BB09
4H011BB18
4H011DA16
4H011DC11
4J038CG121
4J038JC38
4J038MA10
4J038PA19
4J038PB05
(57)【要約】
【課題】優れた抗菌性と防カビ性を有し、樹脂と混練した場合も、樹脂(塗膜)の変色の発生を抑制することができる抗微生物性組成物を提供すること。
【解決手段】金属とサイトカイニン化合物との錯化反応物である有機金属錯体粒子を含む抗微生物性組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
金属塩の水溶液とサイトカイニン化合物を含む有機溶媒液とを滴下混合して、第1の懸濁液を得る混合工程;および
前記第1の懸濁液を10℃〜50℃の温度で撹拌して、金属とサイトカイニン化合物との錯化反応物である有機金属錯体粒子を含む第2の懸濁液を得る錯化工程;
を含むことを特徴とする抗微生物性組成物の製造方法。
【請求項2】
さらに、前記第2の懸濁液を濃縮して、有機金属錯体粒子を含む濃縮物を得る濃縮工程を含むことを特徴とする請求項1の抗微生物性組成物の製造方法。
【請求項3】
前記混合工程において、前記金属塩の水溶液の濃度が1mmol/L〜10mol/Lであり、前記サイトカイニン化合物を含む有機溶媒溶液の濃度が1mmol/L〜10mol/Lであることを特徴とする請求項1または2の抗微生物性組成物の製造方法。
【請求項4】
前記金属化合物に対する前記サイトカイニン化合物のモル比が、1.0〜3.0であることを特徴とする請求項1から3のいずれかの抗微生物性組成物の製造方法。
【請求項5】
前記混合工程において、前記金属塩の水溶液と、前記サイトカイニン化合物の有機溶媒溶液を、10mL/min〜1000mL/minで滴下混合することを特徴とする請求項1から4のいずれかの抗微生物性組成物の製造方法。
【請求項6】
前記金属塩の金属が銀であり、前記有機金属錯体粒子が銀−サイトカイニン錯体粒子であることを特徴とする請求項1から5のいずれかの抗微生物性組成物の製造方法。
【請求項7】
前記銀−サイトカイニン錯体粒子は、前記銀に対する前記サイトカイニン化合物のモル比が1.8〜2.2であることを特徴とする請求項6の抗微生物性組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項2の方法で得られた抗微生物性組成物である前記濃縮物と、樹脂エマルションとを配合して抗微生物性エマルション塗料を得る配合工程を含むことを特徴とする抗微生物性エマルション塗料の製造方法。
【請求項9】
前記抗微生物性エマルション塗料の固形分に対する前記有機金属錯体粒子の質量比が0.1〜7.0であることを特徴とする請求項8の抗微生物性エマルション塗料の製造方法。
【請求項10】
金属とサイトカイニン化合物との錯化反応物である有機金属錯体粒子を含むことを特徴とする抗微生物性組成物。
【請求項11】
請求項10の抗微生物性組成物と樹脂エマルションとを含むことを特徴とする抗微生物性エマルション塗料。
【請求項12】
前記エマルション塗料に対して、相溶しない意匠材を含まないことを特徴とする請求項11の抗微生物性エマルション塗料。
【請求項13】
請求項11または12の抗微生物性エマルション塗料を塗装対象物に塗布して塗膜を形成する工程を含むことを特徴とする塗膜の形成方法。
【請求項14】
前記塗膜の膜厚が1〜50μmであることを特徴とする請求項13の塗膜の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗微生物性組成物とその製造方法、抗微生物性エマルション塗料とその製造方法および塗膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長寿命・高気密・高断熱住宅の普及による建物価値の向上と生活様式の変遷、また急速な高齢化に伴う福祉施設の衛生設備拡充の必要性など、今後人々の財産維持・創出及び快適・衛生指向は更に高まると予測される。建築物の長寿命化・高気密化は、建物価値を維持し、快適な住空間の創出に寄与している一方、新たに微生物繁殖による汚染を顕在化させている。
【0003】
特にカビ類は、屋内外を問わず高湿度下での繁殖力が強い上に外部刺激に対する抵抗性も高いことから、衛生面はもとより建築物の美観を損なう原因にもなっており、その対策が求められている。
【0004】
このような背景から、有害微生物による様々な弊害を排除するため、天然由来成分や金属イオン由来の活性酸素を機能発現物質とした、抗微生物剤を含有した塗料が開発されている。
【0005】
具体的には、酸化チタン等の触媒活性を利用した抗菌材料、例えば酸化チタン光触媒に銅を物理担持させた材料(特許文献1)や、酸化チタンと電荷移動型触媒を混合した材料(特許文献2)等が提案されている。
【0006】
また、抗菌性を有する有機化合物である第4級アンモニウム塩を有効成分として使用した抗ウイルス性塗膜が提案されている(特許文献3)。
【0007】
さらに、抗菌性を有する金属として知られている銀等を用いた材料として、銀担持ケイ酸塩に界面活性剤を混合した材料(特許文献4)や、アモルファスシリカに銀や亜鉛を吸着した材料(特許文献5)、銀にアミノ酸を配位させた材料(特許文献6)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−95977号公報
【特許文献2】特開2013−173903号公報
【特許文献3】特開2013−71031号公報
【特許文献4】特開2004−26841号公報
【特許文献5】特開2002−179515号公報
【特許文献6】特開2005−145923公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1、2の抗菌材料は、触媒能による微生物の制御のために、混練する媒体である樹脂(塗膜)の分解劣化も惹起する。このため、触媒表面が樹脂と物理的に接触することで、接触部位が分解されて塗膜の劣化を引き起こす可能性があるという問題がある。また、特許文献3−6の材料では、細菌類に対しての効果が示されているのみであり、建築用途塗料として重要なカビ類への効果発現については確認されていない。
【0010】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、優れた抗菌性と防カビ性を有し、樹脂と混練した場合も、樹脂(塗膜)の変色の発生を抑制することができる抗微生物性組成物と、その製造方法を提供することを課題としている。
【0011】
また、抗微生物性組成物を用いた抗微生物性エマルション塗料とその製造方法および塗膜の形成方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明の抗微生物性組成物とその製造方法は、以下のことを特徴としている。
【0013】
抗微生物性組成物の製造方法は、以下の工程:
金属塩の水溶液とサイトカイニン化合物を含む有機溶媒液とを滴下混合して、第1の懸濁液を得る混合工程;および
前記第1の懸濁液を10℃〜50℃の温度で撹拌して、金属とサイトカイニン化合物との錯化反応物である有機金属錯体粒子を含む第2の懸濁液を得る錯化工程;
を含む。
【0014】
抗微生物性組成物の製造方法は、さらに、前記第2の懸濁液を濃縮して、有機金属錯体粒子を含む濃縮物を得る濃縮工程を含む。
【0015】
抗微生物性組成物の製造方法は、前記混合工程において、金属塩の水溶液の濃度が1mmol/L〜10mol/Lであり、前記サイトカイニン化合物を含む有機溶媒溶液の濃度が1mmol/L〜10mol/Lである。
【0016】
抗微生物性組成物の製造方法は、前記金属化合物に対する前記サイトカイニン化合物のモル比が、1.0〜3.0である。
【0017】
抗微生物性組成物の製造方法は、前記混合工程において、前記金属塩の水溶液と、前記サイトカイニン化合物の有機溶媒溶液を、10mL/min〜1000mL/minで滴下混合する。
【0018】
抗微生物性組成物の製造方法は、前記金属塩の金属が銀であり、前記有機金属錯体粒子が銀−サイトカイニン錯体粒子である。
【0019】
抗微生物性組成物の製造方法は、前記銀−サイトカイニン錯体粒子は、前記銀に対する前記サイトカイニン化合物のモル比が1.8〜2.2である。
【0020】
本発明の抗微生物性組成物は、金属とサイトカイニン化合物との錯化反応物である有機金属錯体粒子を含むことを特徴としている。
【0021】
抗微生物性エマルション塗料とその製造方法は、以下のことを特徴としている。
【0022】
抗微生物性エマルション塗料の製造方法は、前記方法で得られた前記濃縮物と、樹脂エマルションとを配合して抗微生物性エマルション塗料を得る配合工程を含む。
【0023】
抗微生物性エマルション塗料の製造方法は、前記抗微生物性エマルション塗料の固形分に対する前記有機金属錯体粒子の質量比が0.1〜7.0である。
【0024】
本発明の抗微生物性エマルション塗料は、以下のことを特徴としている。
【0025】
抗微生物性エマルション塗料は、前記抗微生物性組成物と樹脂エマルションとを含む。
【0026】
抗微生物性エマルション塗料は、前記エマルション塗料に対して、相溶しない意匠材を含まない。
【0027】
本発明の塗膜の形成方法は、以下のことを特徴としている。
【0028】
塗膜の形成方法は、前記抗微生物性エマルション塗料を塗装対象物に塗布して塗膜を形成する工程を含む。
【0029】
塗膜の形成方法は、前記塗膜の膜厚が1〜50μmである。
【発明の効果】
【0030】
本発明の抗微生物性組成物によれば、優れた抗菌性と防カビ性を有し、例えば樹脂と混練した場合も、樹脂(塗膜)の変色の発生を抑制することができる。本発明の抗微生物性組成物の製造方法によれば、前記抗微生物性組成物を確実かつ効率的に得ることができる。
【0031】
本発明の抗微生物性エマルション塗料によれば、優れた抗菌性と防カビ性を有し、塗膜の変色の発生を抑制することができる。本発明の抗微生物性エマルション塗料の製造方法によれば、前記抗微生物性エマルション塗料を確実かつ効率的に得ることができる。
【0032】
本発明の塗膜の形成方法によれば、抗菌性と防カビ性に優れる塗膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】抗カビ試験後(グループI、4週間培養後)の試験片の写真と、対照区であるブランクの写真である。
図2】抗カビ試験後(グループI、4週間培養後)の試験片の顕微鏡用CCD写真である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明者らは、上記のような従来技術の課題を解決するため、抗菌性と防カビ性の両性能に優れる抗微生物性組成物を開発し、これを用いて、塗膜の変色を引き起こさない抗微生物性エマルション塗料の開発することを目標として鋭意研究を重ねた。
【0035】
そして、本発明者らは、抗菌性を有する金属イオンと、防カビ性に優れ、ポストハーベスト薬剤として使用されている安全性の高いサイトカイニン化合物とを複合化して得られる有機金属錯体に着目した。その結果、明確な抗菌効果と防カビ効果を示し、塗料に対して分散性が高く、かつ塗膜の変色を引き起こさない有機金属錯体粒子をフィラーとして使用することにより、優れた抗微生物性塗膜を形成することが可能なエマルション塗料を製造することが可能であるとの新規な知見を見出し、本発明を完成するに至った。なお、本明細書において、数値範囲を「〜」を用いて表す場合、両端の数値を含む。
【0036】
本発明の抗微生物性組成物の製造方法の一実施形態について説明する。
【0037】
本発明の抗微生物性組成物の製造方法は、以下の工程を含む。
【0038】
金属塩の水溶液とサイトカイニン化合物を含む有機溶媒液とを滴下混合して、第1の懸濁液を得る混合工程。
【0039】
第1の懸濁液を10℃〜50℃の温度で撹拌して、金属とサイトカイニン化合物との錯化反応物である有機金属錯体粒子を含む第2の懸濁液を得る錯化工程。
【0040】
以下、本発明の抗微生物性組成物の製造方法の各工程について説明する。
【0041】
混合工程では、金属塩の水溶液とサイトカイニン化合物を含む有機溶媒液とを滴下混合して、第1の懸濁液を得る。
【0042】
金属塩の金属(金属イオン)は、銀、銅、亜鉛、アルミニウムなどの抗菌性を有する金属(金属イオン)のうちの1種または2種以上を例示することができる。なかでも、金属は、銀または銅であることが好ましく、抗菌性能が高いことから、銀であることが特に好ましい。また、金属塩は、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩などのいずれの形態であってもよい。
【0043】
サイトカイニン化合物とは、植物ホルモンの一種であり、カイネチン様の生理活性を示す物質群の総称である。サイトカイニン化合物は、植物細胞の分裂、茎葉への分化、不定芽の形成、葉の成長促進作用を示すと共にアミノ酸の集積、老化・落葉・落果の防止、葉緑素形成促進及び分解阻害など、植物成長にとって最も重要な作用物質である。サイトカイニン化合物は、使用する金属に対して、HSAB則および錯体の安定度定数を考慮して安定に結合するものを適宜選択することができる。例えば、銀イオンは「軟らかい酸」として定義されるので、「軟らかい塩基」として定義される分極し易く、パイ結合をつくり易い官能基を持つサイトカイニン化合物(有機配位子)を選択することができる。具体的には、サイトカイニン化合物としては、例えば、6−ベンジルアミノプリン(6−BAP)、ゼアチン、ゼアチンリポシド、イソペンテニルアデニンなどのうちの1種または2種以上を例示することができる。
【0044】
サイトカイニン化合物を溶解させる有機溶媒液は特に限定されないが、ジメチルスルホキシド、エタノール、メタノールのうちの1種または2種以上であることが好ましい。
【0045】
金属塩の水溶液およびサイトカイニン化合物の有機溶媒溶液は、それぞれ濃度が1mmol/L〜10mol/Lであることが好ましく、100mmol/L〜0.5mol/Lであることがさらに好ましい。これにより、均一な錯化反応を達成することができる。
【0046】
金属塩の水溶液とサイトカイニン化合物の有機溶媒溶液とを滴下混合する際は、10mL/min〜1000mL/minで滴下混合することが好ましく、100mL/min〜300mL/minで滴下混合することがさらに好ましい。これにより、未反応凝集物の生成を抑制し、均一に反応させることができる。この混合の際には、水溶液成分または有機溶媒溶液成分とともに、凝集阻止剤として、ポリエチレングリコールやポリビニルアルコール、界面活性剤等の試剤を添加することもできる。
【0047】
この実施形態の抗微生物性組成物の製造方法では、混合工程において、条件によっては、金属塩の金属とサイトカイニン化合物との錯化反応物である有機金属錯体粒子またはその前駆体が一部に生成される。
【0048】
混合工程において、金属塩に対するサイトカイニン化合物のモル比は、1.0〜3.0であることが好ましく、金属が銀の場合は、モル比は1.8〜2.2であることが好ましい。これにより、有機金属錯体粒子の構造を制御することができる。金属塩の金属が銀である場合、モル比が1.8を下回ると、錯体形成に関与できなかった銀イオンが凝集・還元し、塗膜の変色原因となる可能性がある。また、モル比が2.2を上回ると、錯体形成に関与できないサイトカイニン化合物が遊離する環境となるため、抗微生物性組成物をクリア塗膜に配合する場合は、塗膜の透明度に影響を与える可能性がある。
【0049】
錯化工程では、混合工程で得た第1の懸濁液を10℃〜50℃の温度で撹拌して、金属とサイトカイニン化合物との錯化反応物である有機金属錯体粒子を含む第2の懸濁液を得る。
【0050】
錯化工程では、第1の懸濁液の撹拌によって金属とサイトカイニン化合物との錯化反応を完結することができ、これによって有機金属錯体粒子が合成される。例えば、混合工程で使用する金属塩が銀化合物である場合は、有機金属錯体粒子として、銀−サイトカイニン錯体粒子が合成される。
【0051】
錯化工程における撹拌の方法は特に限定されない。具体的には、例えば、棒・板・プロペラ状などの撹拌子を用いて第1の懸濁液を含む槽内で回転させて撹拌する方法や、第1の懸濁液を収容した容器を振盪することで撹拌する方法などを例示することができる。
【0052】
また、第1の懸濁液の撹拌の際の温度は、10〜50℃であることが好ましく、20〜40℃であることがさらに好ましい。また、撹拌の時間は、0.1〜48時間であることが好ましく、1〜12時間であることがさらに好ましい。撹拌の際の温度、撹拌時間がこの範囲であると、確実かつ効率的に金属とサイトカイニン化合物との錯化反応を完結させることができる。
【0053】
有機金属錯体粒子の粒径は特に限定されないが、例えば、0.1〜100μmの範囲を例示することができ、0.1〜10μmの範囲を好ましく例示することができる。有機金属錯体粒子の粒径は、混合工程における金属塩に対するサイトカイニン化合物のモル比などを調整することで制御することができる。例えば、抗微生物性組成物を抗微生物性エマルション塗料に使用する場合は、有機金属錯体粒子の粒径は塗膜の膜厚以下であることが好ましい。
【0054】
また、錯化工程で得た第2の懸濁液について、有機金属錯体粒子を形成していない未反応物を除去することもできる。未反応物を除去する方法は特に制限されないが、例えば、透析膜、限外濾過、遠心分離などの公知の手段を採用することができる。
【0055】
さらに、混合工程において、金属塩の水溶液または有機溶媒液とともに凝集阻止剤を添加している場合は、これらを有機溶媒中、100℃以下で1時間以上抽出除去する工程を含むこともできる。このような有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、トルエン、キシレン、ベンゼンなどを例示することができる。
【0056】
また、第2の懸濁液は、純水あるいは有機溶媒で適宜洗浄した後に使用することもできる。
【0057】
第2の懸濁液には、金属とサイトカイニン化合物との錯化反応物である有機金属錯体粒子が含まれるため、優れた抗菌性と防カビ性を有し、抗微生物性組成物として使用することができる。
【0058】
さらに、この実施形態の抗微生物性組成物の製造方法では、錯化工程に続いて、濃縮工程を含むことができる。
【0059】
濃縮工程では、錯化工程を経て得られた第2の懸濁液を濃縮して、有機金属錯体粒子を含む濃縮物を得る。第2の懸濁液を濃縮する方法および条件は特に限定されないが、例えば、遠心分離、濾過、限外濾過、加熱濃縮、減圧濃縮、噴霧濃縮、通風濃縮などの方法を例示することができる。
【0060】
濃縮工程で第2の懸濁液が濃縮された抗微生物性組成物を得ることで、これを環境浄化材料や樹脂塗膜に配合することで、より優れた抗菌性と防カビ性を付与することができる。
【0061】
この実施形態の製造方法で製造される抗微生物性組成物は、金属とサイトカイニン化合物との錯化反応物である有機金属錯体粒子を含む。この有機金属錯体粒子を含む第2の懸濁液やその濃縮物を抗微生物性組成物として環境浄化材料に混練等して使用することで、優れた抗菌性と防カビ性を付与することができる。
【0062】
環境浄化材料としては、例えば、ポリエチレンやナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルアセタール樹脂、ポリアセテート、ABS樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロース、セルロース誘導体、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスチレン、尿素樹脂、フッ素樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フェノール樹脂、セルロイド、キチン、デンプンシート等の、あらゆる種類の合成繊維やプラスチックス、あるいはそれらの共重合体などを例示することができる。例えば、光触媒材料の場合、従来、混合媒体(環境浄化材料)の光劣化が問題とされていたが、この実施形態の抗微生物性組成物を環境浄化材料に混練して使用する場合には、不活性な有機官能基であるため、環境浄化材料の分解が抑制される。
【0063】
特に、有機金属錯体粒子が、銀−サイトカイニン錯体粒子である場合、中心金属である銀に対して、有機配位子が2分子配位している構造であり、銀が有機物に包囲されているため、樹脂等の環境浄化材料に対して親和性が高く、さらに配位結合により環境浄化材料との混練後の安定性や耐久性が向上する。
【0064】
次に、本発明の抗微生物性エマルション塗料とその製造方法の一実施形態について説明する。抗微生物性組成物およびその製造方法として説明した部分と共通する内容については説明を省略する。
【0065】
この実施形態の抗微生物性エマルション塗料の製造方法では、上述した抗微生物性組成物の製造方法において、濃縮工程で第2の懸濁液を濃縮して得た濃縮物と、樹脂エマルションとを配合して抗微生物性エマルション塗料(以下、単に「エマルション塗料」と記載する場合がある)を得る配合工程を含む。
【0066】
このエマルション塗料の製造方法によれば、有機金属錯体粒子を簡便に合成することができるため、生産性が良好である。
【0067】
樹脂エマルションを構成する樹脂としては、エマルション塗料に適用することが可能であれば、特に制限されない。具体的には、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂、フッ素樹脂等の合成樹脂を例示することができる。なかでも、アクリルシリコーン樹脂が好ましい。
【0068】
アクリルシリコーン樹脂中のシリコーン成分の含有率は、0.1〜60質量%であることが好ましく、0.5〜40質量%であることがさらに好ましい。アクリルシリコーン樹脂中のシリコーン成分の含有率が0.1質量%以上であることにより、塗膜の耐候性を向上させることができる。一方、アクリルシリコーン樹脂中のシリコーン成分の含有率が60質量%以下であることにより、エマルション塗料を重ね塗りした場合に、先に形成された塗膜上にエマルション塗料が付着しやすくなると共に、塗膜が割れにくくる。
【0069】
エマルション塗料の固形分100に対する有機金属錯体粒子の質量比は、特に制限されないが、エマルション塗料の形態及び意匠にもよるが、0.1〜7.0であることが好ましい。エマルション塗料の固形分100に対する有機金属錯体粒子の質量比が0.1未満であると抗菌、防カビ効果が十分でない場合がある。一方、エマルション塗料の固形分100に対する有機金属錯体粒子の質量比が7.0を超えると、それ以上の抗菌、防カビ効果が期待できないとともに、コストが高くなる。
【0070】
エマルション塗料の固形分濃度は、2〜70質量%であることが好ましく、2〜60質量%であることがさらに好ましく、3〜50質量%であることが特に好ましい。これにより、塗膜の造膜性を向上させることができる。
【0071】
エマルション塗料は、必要に応じて、造膜助剤を含んでいてもよい。造膜助剤としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコール系エーテル変性物、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコール系エーテル変性物、テキサノールなどを例示することができる。
【0072】
また、エマルション塗料は、必要に応じて、消泡剤、粘度調整剤、凍結抑止剤、湿潤剤、水溶性樹脂、浸透助剤、防腐剤、表面調整剤、艶消剤、ゲル化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤の他、着色顔料、体質顔料、輝度顔料、遮熱顔料、寒水石、着色石、着色ビーズ、艶消ビーズ、着色樹脂チップ等のエマルション塗料に相溶しない意匠材をさらに含んでいてもよい。
【0073】
このエマルション塗料は、配合される抗微生物性組成物に、金属とサイトカイニン化合物との錯化反応物である有機金属錯体粒子を含んでおり、優れた抗菌性と防カビ性を有している。また、抗微生物性エマルション塗料は、不活性な有機官能基を有する有機金属錯体粒子を含むため、樹脂エマルションを構成する樹脂の分解が抑制され、塗膜の変色の発生を抑制することができる。さらに、この抗微生物性エマルション塗料は、樹脂の凝集も抑制され、貯蔵安定性にも優れている。
【0074】
また、エマルション塗料の具体的な形態は、特に制限されるものではないが、透明性を有するクリア塗料の形態であることが好ましい。クリア塗料の形態であると、塗布する際のベース層となる被塗面のデザインを損なわないため、トップクリアコートとして適用範囲を広げることができる。
【0075】
次に、本発明の塗膜の形成方法の一実施形態について説明する。
【0076】
この実施形態の塗膜の形成方法は、上述した抗微生物性エマルション塗料を塗装対象物に塗布して塗膜を形成する工程を含む。
【0077】
塗装対象物は、抗菌性や防カビ性が求められる各種の物であってよく、具体的に限定されない。具体的には、例えば、建物外壁・内壁、標識・看板、自動車内装などを例示することができる。
【0078】
エマルション塗料の塗布方法としては、例えば、刷毛、ローラー、エアースプレー、エアーレススプレー等の公知の方法を用いることができる。なお、膜厚を均一にするために、エマルション塗料を複数回重ね塗りしてもよい。また、エマルション塗料を塗装対象物に塗布した後、自然乾燥させてもよいし、必要に応じて、加熱乾燥させてもよい。
【0079】
塗膜の膜厚は、1μm以上であればその上限は制限されるものではない。塗膜の膜厚が1μm以上であれば、有機金属錯体粒子は塗膜中に固定化される。また、特に、エマルション塗料に対して、相溶しない意匠材を含まない、透明度の高いクリア塗膜を得たい場合は、塗膜の膜厚は1〜50μmであることが好ましい。クリア塗膜の膜厚が50μm以下であることにより、ベース層のデザインを損なわず、安定に塗膜外観を維持するトップクリアコートとして用いることができる。
【0080】
このエマルション塗料により形成される塗膜は、塗膜表面に付着する微生物を早期の段階で排除しコロニー形成を阻害することで、微生物による美観の低下を低減するとともに、樹脂の劣化を低減することができるため、塗膜の安定性を向上させることができる。
【0081】
本発明の抗微生物性組成物とその製造方法、抗微生物性エマルション塗料とその製造方法および塗膜の形成方法は、以上の実施形態に限定されることはない。
【実施例】
【0082】
次に、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例では、「部」は、質量部を意味する。
【0083】
<実施例1>有機金属錯体粒子の濃縮物の調製
金属塩の水溶液として硝酸銀水溶液を使用し、サイトカイニン化合物を含む有機溶媒液として、6−ベンジルアミノプリン(6−BAP)エタノール溶液を使用した。
【0084】
0.3mol/Lの硝酸銀水溶液と、0.03mol/Lの6−ベンジルアミノプリン(6−BAP)エタノール溶液を調製した。次に、銀に対する6−BAPのモル比が2.0となるように、硝酸銀水溶液に6−BAPエタノール溶液を室温で滴下混合して1時間撹拌し、有機金属錯体粒子の前駆体を含む第1の懸濁液を得た(混合工程)。
【0085】
その後、懸濁液温度を30〜40℃に調節して1時間撹拌し、有機金属錯体粒子の錯化生成反応を十分に完結させ、有機金属錯体粒子を含む第2の懸濁液を得た。
【0086】
そして、遠心分離機を用いて、エタノールで充分に第2の懸濁液を洗浄し、未反応物を除去した後、固形分29.6%の有機金属錯体粒子の濃縮物とした(濃縮工程)。
【0087】
次に、有機金属錯体粒子の化学組成を測定した。
【0088】
(化学組成比)
有機金属錯体粒子を一部乾燥させ、示差熱重量分析装置DTG−50H(島津製作所社製)を用いて、有機金属錯体粒子の6−BAP/銀の比率(モル比)を測定した。
【0089】
有機金属錯体粒子の熱減量比から、有機配位子は全て熱分解したものとし、残渣を酸化銀とすると、その結果、有機金属錯体粒子中の銀に対する6−BAPのモル比が1.95であることが明らかとなった。
【0090】
(有機金属錯体粒子の抗菌抗カビ試験用試料の調製)
有機金属錯体粒子の2次加工品を調製し、抗菌防カビ試験を行った。
【0091】
微生物に不活性なケイ酸塩粉末を分散させた水性懸濁液を調製した。これに実施例1の方法で調製した有機金属錯体の懸濁液を添加した。十分に撹拌した後に水洗し、40℃で乾燥した。この時の銀含有率は7〜8wt%程度である。得られた複合体を粉体化し、抗菌防カビ試験に供した。これを加工例1とする。
【0092】
(最小発育阻止濃度測定試験)
塗膜に対する評価方法とは異なり、粉体に対しては、微生物の発育を阻止するために用いた粉体の最小濃度を測定する評価方法を採用した。粉体の濃度が2倍希釈系列になるように作製した培地に試験菌を接種し、その後培養し、微生物の発育を阻害する一番低い濃度を最小発育阻止濃度として判定した。
【0093】
(細菌類)
菌種:黄色ブドウ球菌(S.aureus NBRC12732)
大腸菌(E.coli NBRC3972)
試験菌液接種量:0.1ml
コロニー形成単位:104CFU/ml
各濃度段階において、37℃で24時間培養後に細菌類の発育が確認されない濃度を最小発育阻止濃度とした。
【0094】
(カビ類)
菌種:A.niger(NBRC6341)
試験菌液接種量:0.1ml
コロニー形成単位:104CFU/ml
各濃度段階において、25℃で4日間培養後にカビ類の発育が確認されない濃度を最小発育阻止濃度とした。
【0095】
(最小発育阻止濃度測定結果)
表1に最小発育阻止濃度測定結果を示す。
【0096】
【表1】
【0097】
表1の結果より、全ての菌株に対して、有機金属錯体を含有した複合体の最小発育阻止濃度は100ppm以下であった。抗菌製品技術協議会の推奨する最小発育阻止濃度の自主規格基準値が800ppm以下であることを考えると、抗菌性に優れた銀イオンと、防カビ能力の高い6−BAPとの組み合わせにより、有機金属錯体を含有した複合体は抗菌性と防カビ性にバランスの取れた、明確な抗微生物活性を示すことが明らかとなった。
【0098】
次に、この有機金属錯体粒子を含む濃縮物と樹脂エマルションとを配合して、エマルション塗料を調製した。
【0099】
(エマルション塗料ベースの調製)
樹脂エマルションとして、固形分が42質量%のポリデュレックスG−659(旭化成社製)、成膜助剤として、エチレングリコールモノブチルエーテル(KHネオケム社製)、および水を、70.0:10.0:20.0(質量比)の割合で混合し、レットダウンベースを得た。
【0100】
(エマルション塗料の調製)
エマルション塗料の、樹脂固形分に対する有機金属錯体粒子の質量比が100:5となるように、レットダウンベースと有機金属錯体粒子の濃縮物とを混合し、さらに消泡剤としてBYK−028(ビックケミー社製)、粘度調整剤としてアデカノールUH−420(ADEKA社製)を適量添加し、エマルション塗料を得た。この時のエマルション塗料の粘度は6.2Pa・s、固形分は32.9%であった。
【0101】
(塗膜の形成)
調製したエマルション塗料を、アプリケーター(10mil)を用いてポリエチレンテレフタレートフィルムに塗工し、室温で12時間自然乾燥させ、さらに50℃で3日間加熱乾燥させた。得られた塗膜のドライ膜厚は75μmであった。この塗膜の評価結果を以下に示す。
【0102】
成膜の状態:A
塗膜の外観:B(色調(透明度)に低下が認められる)
凝集物の有無:B(一部認められる)
評価の判断基準は以下のとおりである。
【0103】
A:異常は認められず、良好なレベル
B:一部異常が認められるが、使用上問題ないレベル
C:著しい異常が認められ、使用困難なレベル
以上の通り、得られた塗膜は使用上問題なく、成膜の状態も良好であった。
【0104】
次に、以上の塗膜を50mm×50mmに切り出し、抗菌防カビ試験を行った。
【0105】
(試験片の抗菌試験)
試験片の抗菌試験(JIS Z 2801:2010 抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果5項)を以下の条件で実施した。
【0106】
検体:試験片50mm×50mm(試験数:n=3)
菌種:黄色ブドウ球菌(S.aureus NBRC12732)
大腸菌(E.coli NBRC3972)
試験菌液接種量:0.4ml
試験菌液の生菌数:7.0×10個/ml(黄色ブドウ球菌)
8.5×10個/ml(大腸菌)
被覆フィルムの面積:16cm(強化ポリエチレンフィルムを使用)
(抗菌試験結果)
表2に抗菌試験結果、表3に試験成立条件、及び表4に抗菌活性値を示した。
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
max:生菌数対数値の最大値
min:生菌数対数値の最小値
mean:試験片の生菌数対数値の平均値
MAX:生菌数の最大値
MIN:生菌数の最小値
MEAN:生菌数の平均値
【0110】
【表4】
【0111】
抗菌活性値(R)=(U−U)−(A−U)=U−A
:対照区試験片の接種直後の生菌数の対数値の平均値
:対照区試験片の24時間経過後の生菌数の対数値の平均値
:実施例1試験片の24時間経過後の生菌数の対数値の平均値
表2の結果より、対照区と比較して、実施例1の試料(抗微生物性エマルション塗料)は、黄色ブドウ球菌及び大腸菌に対して明確な抗菌効果を示すことが判る。表3は抗菌試験の成立条件を示している。これらの数値から判定された結果、本方法で行われた抗菌試験結果は適正であり、信頼性に足ると判断できる。また一般に、抗菌効果の程度を判定する指標の値である抗菌活性値は、対照区の24時間培養後菌数を、抗菌加工材料の24時間培養後菌数で除した数の対数値で算出され、抗菌活性値2.0以上(99%以上の死滅率)で抗菌効果があると規定されている。表4より、実施例1の試料(抗微生物性エマルション塗料)の黄色ブドウ球菌及び大腸菌に対する抗菌活性値は、4.9及び5.7であり(99.99%以上の死滅率)、両菌株に対して高い抗菌効果を示すことが明らかとなった。
【0112】
(試験片のカビ抵抗性試験)
試験片の抗菌試験(JIS Z 2911:2010 プラスチック製品の試験 方法A)を以下の条件で実施した。
【0113】
検体:試験片25mm×25mm
菌種:A.niger NBRC105639
P.pinophilum NBRC33285
P.variotti NBRC33284
T.virens NBRC635
C.globosum NBRC6347
検体は以下のグループに分けて試験を行った。
【0114】
グループI(接種区分):カビを接種し、培養する(試験数:n=5)
グループS(殺菌区分):殺菌後の試料をグループIと同一条件で保存する(試験数:n=5)
グループ0(ゼロ対比):実験室にそのまま保存する(試験数:n=2)。
【0115】
(カビ抵抗性試験結果)
表5にカビ発育状態の評価結果、表6にカビ発育の評価段階を示した。
【0116】
【表5】
【0117】
【表6】
【0118】
表7に検体材質の評価結果、表8に検体材質の評価段階を示した。
【0119】
【表7】
【0120】
【表8】
【0121】
表5の結果より、いずれの条件下で4週間培養或いは保存後(グループI、S並びに0)においても、実施例1の試料表面にカビの発育は認められず、明確な防カビ効果を有することが判った。
【0122】
さらに表7の結果より、実施例1の塗膜自体は、カビの栄養源とはならず、カビの発育を抑制する効果の有ることが明らかとなった。
【0123】
図1は、抗カビ試験後(グループI、4週間培養後)の試験片の写真と、対照区であるブランクの写真である。図2は、抗カビ試験後(グループI、4週間培養後)の試験片の顕微鏡用CCD写真である。
【0124】
図1図2に示したように、顕微鏡用CCDによる観察では、カビ培養条件下であるグループIにおいて、実施例1の試料(抗微生物性エマルション塗料)以外の箇所(シャーレ内部にコロニー多数点在)のみにカビの一部発生が確認されたが、試料表面にはカビの発生が確認されず、実施例1の試料(抗微生物性エマルション塗料)は明確な抗カビ性能を有することが判った。
【0125】
以上のことから、有機金属錯体である銀−6−BAP錯体を含有するエマルション塗料は、優れた抗菌性と明確な防カビ性を発現することが示された。
【0126】
これらのことから、高齢化社会を取り巻く状況において、養護施設や住環境における衛生空間を提供するために、日和見感染を惹起する緑膿菌や、院内感染の原因となるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌等の、重篤な健康被害を引き起こす病原菌に対しても、本案塗料の抗菌防カビ作用が有効であると考えられる。
【0127】
<実施例2>
実施例1のエマルション塗料が、クリア塗膜として応用可能であるかを検討するために、以下の条件で塗膜を作成し評価を行った。
【0128】
上記調製したエマルション塗料を、アプリケーター(6mil)を用いてポリエチレンテレフタレートフィルムに塗工し、室温で12時間自然乾燥させ、さらに50℃で3日間加熱乾燥させた。得られた塗膜のドライ膜厚は44μmであった。この塗膜の評価結果を以下に示す。
【0129】
成膜の状態:A
塗膜の外観:A
凝集物の有無:B(一部認められる)
評価の判断基準は以下のとおりである。
【0130】
A:異常は認められず、良好なレベル
B:一部異常が認められるが、使用上問題ないレベル
C:著しい異常が認められ、使用困難なレベル
以上の通り、得られた塗膜は膜厚が50μm以下であることと、成膜の状態に加え、塗膜の外観(色調(透明性))も良好であり、クリア塗膜(クリアトップコート)としても十分に使用可能と判断できる外観を有することが明らかとなった。
【0131】
実施例1のエマルション塗料は、基材のデザインや色彩を損なうことなく、抗菌性と防カビ性を付与できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の抗微生物性組成物は、優れた抗菌活性と防カビ活性を有するため、空気清浄機や浄水用フィルタなど、環境、浄化分野で利用することが可能である。さらに、混合する樹脂の色調や透明性を阻害することなく、抗菌性および防カビ性を発現するため、フィラーの一部として、合成繊維、プラスチックス等の媒体に添加することも可能であることから、広範な産業分野に応用することが可能である。
また、本発明の抗微生物性エマルション塗料は、添加されている有機金属錯体粒子の特性を利用して、外観、美観維持を必要とする建物外壁や表示物等の他、衛生性を必要とする建物内壁や自動車内装等の広範な分野で利用することが可能である。
図1
図2