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特開2019-157023共沸組成物、擬共沸組成物および混合組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-157023(P2019-157023A)
(43)【公開日】2019年9月19日
(54)【発明の名称】共沸組成物、擬共沸組成物および混合組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20190823BHJP
   C11D 7/30 20060101ALI20190823BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20190823BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20190823BHJP
【FI】
   C09K5/04 F
   C09K5/04 D
   C11D7/30
   C11D7/50
   C09K3/00 111B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-47719(P2018-47719)
(22)【出願日】2018年3月15日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「地熱発電技術研究開発/低温域の地熱資源有効活用のための小型バイナリー発電システムの開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 博志
(72)【発明者】
【氏名】濱田 隆史
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003ED21
4H003ED26
4H003FA46
(57)【要約】
【課題】環境への影響が小さく、安全性が高く、使用中や保管中における組成変化が少ない、1,1,2,2−テトラフルオロ−3−ブタノンを含む共沸組成物、擬共沸組成物および混合組成物の提供。
【解決手段】1,1,2,2−テトラフルオロ−3−ブタノン(HFK−354pc)23.3質量%と、trans−1,2−ジクロロエチレン(tDCE)76.7質量%とからなる共沸組成物、15.3〜32.0質量%のHFK−354pcと68.0〜84.7質量%のtDCEとからなる擬共沸組成物、10〜40質量%のHFK−354pcおよび60〜90質量%のtDCEを含有する混合組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1,2,2−テトラフルオロ−3−ブタノン23.3質量%と、trans−1,2−ジクロロエチレン76.7質量%とからなる共沸組成物。
【請求項2】
1,1,2,2−テトラフルオロ−3−ブタノン15.3〜32.0質量%と、trans−1,2−ジクロロエチレン68.0〜84.7質量%とからなる擬共沸組成物。
【請求項3】
1,1,2,2−テトラフルオロ−3−ブタノン10〜40質量%および、trans−1,2−ジクロロエチレン60〜90質量%を含有する混合組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒、発泡剤、溶剤、洗浄剤、伝熱媒体、作動流体、反応溶媒、塗料用溶剤、抽出剤、水切り剤、乾燥剤等に用いられる共沸組成物、擬共沸組成物および混合組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷媒、発泡剤、溶剤、洗浄剤、伝熱媒体、作動流体、反応溶媒、塗料用溶剤,抽出剤、水切り剤、乾燥剤等の用途にハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)類、ハイドロフルオロカーボン(HFC)類、パーフルオロカーボン(PFC)類が広く使われている。HCFC類はオゾン破壊係数(ODP)を有するため先進国においては2020年に生産が全廃されることが決まっている。また、HFC類、PFC類はODPが低いものの地球温暖化係数(GWP)が高いため、オゾン層保護および地球温暖化防止の目的からこれらに代わる物が求められてきた。
【0003】
そのため、ODPがゼロとなり、GWPをより低くすることができるハイドロフルオロエーテル(HFE)類を使用することが検討され、一部のHFE類が広く使用されるようになっている。しかしながら、現在多く使用されているHFE類はGWPが十分に低いとは言えない。例えば、量産されている1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル(以下、「HFE−347pc−f」と記す。)ではGWPが580程度で、将来要求されるGWP100〜150程度との間には大きな差がある。
【0004】
また、HFE類は、多くの用途で単独で使用するが、他成分と混合することにより溶解性、洗浄性、熱伝導性等の物性などを改善して使用するケースも多い。例えば、HFE−347pc−fにtrans−1,2−ジクロロエチレンを混合する例(特許文献1参照)、HFE−347pc−fにメタノールを混合する例(特許文献2参照)、HFE−347pc−fに塩化メチレンを混合する例(特許文献3参照)、HFE−347pc−fにシクロペンタンを混合する例(特許文献4参照)等が知られている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献に記載された例ではいずれも、使用するHFE−347pc−fのGWPが高いため、混合物のGWPも高くなる問題がある。したがって、GWPが高いHFE類に代わり、GWPが低い含ハロゲン化合物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−324652号公報
【特許文献2】特開平10−324897号公報
【特許文献3】特開平11−92411号公報
【特許文献4】特開2000−7603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、GWPが高いHFE類に代えて、ODPとGWPのいずれも低いハイドロフルオロケトン(HFK)類を使用することが考えられる。HFK類は分子構造中に二重結合を持つことからGWPを低くする点で有利である。ただし、HFK類はGWPが低いほど強い燃焼性を持つことが多いので、より安全性を高くするためには、GWPが低いHFK類に、別の燃焼性が低い成分を混合することにより燃焼性を抑制し、これらの混合物をもってGWPが高いHFE類に代えて使用することが考えられる。
【0008】
しかしながら、一般的な混合物においては蒸発により発生した気相の組成が液相の組成と異なるため、使用中の蒸発で組成が変化し、安定して使用できない問題がある。例えば、発泡剤の用途では、発泡の前半と後半で発生する気相の組成が変化して、製品の品質が不均一になる可能性がある。また、溶剤、洗浄剤、反応溶媒、抽出剤、水切り剤等の用途では、使用中に発生する蒸気を回収、凝縮して再利用することがよく行われているが、その際に回収、凝縮した液の組成が元の液の組成と異なることにより、装置の運転や製品の品質が不安定になる可能性がある。
【0009】
また、冷媒、伝熱媒体、作動流体等の用途では、混合物を用いた装置から混合物の一部が蒸発して散逸することにより混合物の組成が変化して、装置の性能が低下する可能性がある。いずれの用途においても、混合物の保管中にその一部が蒸発して散逸することにより、混合物の組成が変化する可能性がある。
【0010】
これに対し、もし混合物が共沸組成物または擬共沸組成物であった場合は、蒸発により発生した気相の組成が液相の組成と同じかまたは同じと見なすことができるため、使用中や保管中における組成変化が少なく、安定して使用することができる。
【0011】
本発明は、ODPとGWPが低いことにより環境への影響が小さく、また燃焼性が低いことにより安全性が高く、冷媒、発泡剤、溶剤、洗浄剤、伝熱媒体、作動流体、反応溶媒、塗料用溶剤,抽出剤、水切り剤、乾燥剤等の用途において使用中や保管中における組成変化が少なく、安定して使用することができる共沸組成物、擬共沸組成物および混合組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の共沸組成物は、1,1,2,2−テトラフルオロ−3−ブタノン23.3質量%と、trans−1,2−ジクロロエチレン76.7質量%とからなる。
【0013】
また、本発明の擬共沸組成物は、1,1,2,2−テトラフルオロ−3−ブタノン15.3〜32.0質量%と、trans−1,2−ジクロロエチレン68.0〜84.7質量%とからなる。
【0014】
さらに、本発明の混合組成物は、1,1,2,2−テトラフルオロ−3−ブタノン10〜40質量%および、trans−1,2−ジクロロエチレン60〜90質量%を含有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の共沸組成物、擬共沸組成物および混合組成物は、環境への影響が小さく、安全性が高く、冷媒、発泡剤、溶剤、洗浄剤、伝熱媒体、作動流体、反応溶媒、塗料用溶剤,抽出剤、水切り剤、乾燥剤等の用途において使用中や保管中における組成変化が少なく、安定して使用することができる組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】1,1,2,2−テトラフルオロ−3−ブタノンとtrans−1,2−ジクロロエチレンからなる組成物の気液平衡測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[共沸組成物および擬共沸組成物]
本発明は1,1,2,2−テトラフルオロ−3−ブタノン(以下、「HFK−354pc」という。)とtrans−1,2−ジクロロエチレン(以下、「tDCE」という。)からなる共沸組成物および擬共沸組成物を提供する。
【0018】
本発明の共沸組成物は、本発明者らが見出した1気圧(圧力1.01325×10Pa)において、HFK−354pcの含有割合が23.3質量%であり、tDCEの含有割合が76.7質量%である組成物である。また、本発明のHFK−354pcとtDCEからなる共沸組成物は1気圧における沸点が46℃である。
【0019】
HFK−354pcは、CFH−CF−C(=O)−CHで示されるHFKである。HFK−354pcは、ODPがゼロで、二重結合を持ち水素元素が多く含まれる分子構造からGWPが100以下と予想されるHFK類である。HFK−354pcは、沸点が約68℃である。
【0020】
tDCEは、trans−CHCl=CHClで示される、炭素原子−炭素原子間に二重結合を有するオレフィンである。tDCEは、ODPがゼロに近く、GWPは100よりも大幅に低い。tDCEは、沸点が約49℃である。tDCEは、表面張力や粘度が低く、室温でも容易に蒸発する。tDCEは、分子内に塩素を有するため加工油等の有機物に対する溶解性が非常に高い。
【0021】
HFK−354pcは強い燃焼性があるが、tDCEは空気との混合比において燃焼を起こす範囲(燃焼範囲)の上限〜下限の幅がきわめて小さいため、両者を混合することにより、HFK−354pc単独の場合に比べ燃焼性を大幅に低下させることができる。
【0022】
なお、共沸組成物とは、平衡状態において液相の組成と気相の組成に差がない組成物である。共沸組成物は比揮発度が1の組成物であり、本発明の共沸組成物については、以下の式で示される比揮発度が1.00である。
【0023】
(比揮発度を求める式)
比揮発度=(気相部におけるHFK−354pcの質量%/気相部におけるtDCEの質量%)/(液相部におけるHFK−354pcの質量%/液相部におけるtDCEの質量%)
【0024】
本発明の共沸組成物は、該組成物を繰り返し蒸発、凝縮させた場合に組成変化がない。共沸組成物は、使用中や保管中における組成変化がなく、安定して使用することができる。
【0025】
本発明のHFK−354pcとtDCEからなる擬共沸組成物は、1気圧において、HFK−354pcの含有割合が15.3〜32.0質量%であり、tDCEの含有割合が68.0〜84.7質量%の組成物である。
【0026】
擬共沸組成物とは、平衡状態において液相の組成と気相の組成が近く、実用においてその組成が同じと見なすことができる組成物である。本発明のHFK−354pcとtDCEからなる擬共沸組成物は、蒸発、凝縮を繰り返した場合の組成の変動が小さい。なお、本明細書において、擬共沸組成物とは、上記式で求められる比揮発度が0.83〜1.20の範囲にある組成物をいう。また、本発明のHFK−354pcとtDCEからなる擬共沸組成物は、1気圧における沸点が46〜47℃である。
【0027】
本発明の擬共沸組成物は、上記本発明の共沸組成物とほぼ同等に取り扱える。本発明の擬共沸組成物は、比揮発度が0.83〜1.20の範囲にあり、共沸点(比揮発度が1)の近傍であるので、使用中や保管中における組成変化が少なく、安定して使用することができる。
【0028】
本発明の共沸組成物および擬共沸組成物は、上記のとおり蒸発、凝縮を繰り返した場合の組成の変動が全くない、または殆どない。そのため、本発明の共沸組成物および擬共沸組成物は、冷媒、発泡剤、溶剤、洗浄剤、伝熱媒体、作動流体、反応溶媒、塗料用溶剤,抽出剤、水切り剤、乾燥剤等の用途に用いた場合も安定して使用できる、蒸発した組成物を回収しリサイクルするのが容易である、といった利点を有する。
【0029】
本発明の共沸組成物および擬共沸組成物においては、1気圧における沸点は46〜47℃である。これは広く使用されているGWPが高いHFE類の例であるHFE−347pc−fの沸点(約56℃)と大きく違わない。そのため、本発明の共沸組成物および擬共沸組成物は、冷媒、発泡剤、溶剤、洗浄剤、伝熱媒体、作動流体、反応溶媒、塗料用溶剤,抽出剤、水切り剤、乾燥剤等の用途に好適である。
【0030】
本発明の共沸組成物および擬共沸組成物は、HFK−354pcとtDCEからなる組成物であり、実質的にこの2成分からなる。なお、本発明の共沸組成物または擬共沸組成物に、後述する任意の安定化剤等の添加剤を加えて用いてもよい。添加剤を加える場合の添加剤の添加量は後述のとおりである。
【0031】
[混合組成物]
本発明の混合組成物は、10〜40質量%のHFK−354pcおよび、60〜90質量%のtDCEを含有する。また、混合組成物は、性状や物性を調節する等、目的に応じて、HFK−354pcおよびtDCE以外の他の成分と組み合わせて、混合物として用いてもよい。他の成分としては、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類、エステル類、グリコールエーテル類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0032】
混合組成物と他の成分を組み合わせて混合物とする場合、混合物100質量%中の混合組成物の含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。他の成分の含有量は、混合物100質量%中、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。また、他の成分を添加して混合物とする場合、混合物は共沸組成乃至擬共沸組成であれば、さらに好ましい。
【0033】
炭化水素類としては、炭素数5〜15の鎖状または環状の飽和または不飽和炭化水素類が好ましく、n−ペンタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,4−ジメチルペンタン、n−オクタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、4−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,3−ジメチルヘキサン、2−メチル−3−エチルペンタン、3−メチル−3−エチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2−メチルヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、n−デカン、n−ドデカン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ビシクロヘキサン等が挙げられる。
【0034】
アルコール類としては、炭素数1〜16の鎖状または環状のアルコール類が好ましく、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンチルアルコール、2−ペンチルアルコール、1−エチル−1−プロピルアルコール、2−メチル−1−ブチルアルコール、3−メチル−1−ブチルアルコール、3−メチル−2−ブチルアルコール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキシルアルコール、2−メチル−1−ペンチルアルコール、4−メチル−2−ペンチルアルコール、2−エチル−1−ブチルアルコール、1−ヘプチルアルコール、2−ヘプチルアルコール、3−ヘプチルアルコール、1−オクチルアルコール、2−オクチルアルコール、2−エチル−1−ヘキシルアルコール、1−ノニルアルコール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキシルアルコール、1−デキルアルコール、1−ウンデキルアルコール、1−ドデキルアルコール、シクロヘキシルアルコール、1−メチルシクロヘキシルアルコール、2−メチルシクロヘキシルアルコール、3−メチルシクロヘキシルアルコール、4−メチルシクロヘキシルアルコール、α−テルピネオール、2,6−ジメチル−4−ヘプチルアルコール、テトラデシルアルコール等が挙げられる。
【0035】
ケトン類としては、炭素数3〜9の鎖状または環状のケトン類が好ましく、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0036】
ハロゲン化炭化水素類としては、炭素数1〜6の飽和または不飽和のハロゲン化炭化水素類が好ましく、塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、cis−1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,2−ジクロロプロパン、ジクロロペンタフルオロプロパン、ジクロロフルオロエタン、デカフルオロペンタン、ペンタフルオロブタン、ヘプタフルオロシクロペンタン等が挙げられる。
【0037】
エーテル類としては、炭素数2〜8の鎖状または環状のエーテル類が好ましく、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アニソール、フェネトール、メチルアニソール、ジオキサン、フラン、メチルフラン、テトラヒドロフラン、(パーフルオロブトキシ)メタン、(パーフルオロブトキシ)エタン等が挙げられる。
【0038】
エステル類としては、炭素数2〜19の鎖状または環状のエステル類が好ましく、具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸メトキシブチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル等が挙げられる。
【0039】
グリコールエーテル類としては、炭素数2〜4である2価アルコールの2〜4量体の一方または両方の水酸基の水素原子が炭素数1〜6のアルキル基で置換されたグリコールエーテル類が好ましく、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメトキシメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0040】
また、本発明の共沸組成物、擬共沸組成物、または、混合組成物に安定化剤を加えて用いてもよい。その場合の安定化剤の添加量は、共沸組成物、擬共沸組成物、または、混合組成物と安定化剤の合計量に対して、0.001〜5質量%が好ましい。安定化剤の添加量が上記範囲内であれば、本発明の共沸組成物、擬共沸組成物および混合組成物の安定性をより高めることができる。
【0041】
安定化剤としては、例えば、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物類:ジエチルアミン、トリエチルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン等のアミン類:フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、チモール、p−t−ブチルフェノール、t−ブチルカテコール、カテコール、イソオイゲノール、o−メトキシフェノール、ビスフェノールA、サリチル酸イソアミル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸メチル、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等のフェノール類:2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−[(N,N−ビス−2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類等が挙げられる。これら安定化剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例について具体的に説明するが、この説明が本発明を限定するものではない。
【0043】
<気液平衡測定>
HFK−354pcおよびtDCEを種々の質量比で混合した各組成物を、オスマー型気液平衡測定装置の試料容器に入れ、大気圧で還流をかけた。気相凝縮液の滴下速度が適正になるように加熱を調整し、安定した沸騰を各部の組成が収束して一定になるのに十分な時間保ち、沸点が安定していることを確認した後、液相側と気相側のサンプルを採取し、ガスクロマトグラフでHFK−354pcとtDCEの組成を分析した。液相および気相のHFK−354pcの組成(質量%)、比揮発度および沸点を表1に示す。
【0044】
なお、表1において◇の記号を付した値は、実測データを6次多項式で誤差が最少となるように近似することにより実測データ間を補完した値である。
【0045】
表1に示す液相および気相のHFK−354pcの組成(質量%)の関係を図1に実線で示す。また、破線は気相と液相における組成が一致する比揮発度1.00となる直線を示す。図1において実線で示す曲線と破線で示す直線の交点が共沸組成である。
【0046】
【表1】
【0047】
表1および図1より、HFK−354pcが23.3質量%、tDCEが76.7質量%である組成物は、気相および液相の組成が一致した共沸組成物であった。また、沸点(共沸点)は46℃であった。
【0048】
さらに、HFK−354pcが15.3〜32.0質量%である組成物は、比揮発度が0.83〜1.20の擬共沸組成物であった。また、沸点は46〜47℃であった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の組成物は、冷媒、発泡剤、溶剤、洗浄剤、伝熱媒体、作動流体、反応溶媒、塗料用溶剤,抽出剤、水切り剤、乾燥剤等の用途に適用できる。
図1