【解決手段】 蒸着マスクは、複数の開口部を有する金属層と、金属層に積層されており、開口部の開口範囲内に位置する貫通孔を有する単層又は複数層のポリイミド層と、を備えている。蒸着マスクは、金属層の熱膨張係数(CTE)が5ppm/K以上15ppm/K以下の範囲内であり、ポリイミド層の熱膨張係数(CTE)が金属層の熱膨張係数(CTE)に対して±5ppm/Kの範囲内であり、かつ、ポリイミド層の引張弾性率が4.5GPa以上8GPa未満の範囲内である。金属層は、セミアディティブ工法により形成することが好ましい。
前記ポリイミド層の長手(MD)方向の熱膨張係数(CTE−MD)と、幅(TD)方向の熱膨張係数(CTE−TD)との差が±2.5ppm/K以下である請求項1に記載の蒸着マスク。
複数の開口部を有する金属層と、前記金属層に積層されており、前記開口部の開口範囲内に位置する貫通孔を有するとともに、該貫通孔が前記薄膜パターンに対応する開口パターンを形成している、単層又は複数層のポリイミド層と、を備え、被蒸着体上に一定形状の薄膜パターンを蒸着形成するための蒸着マスクにおける前記ポリイミド層の形成に用いられる蒸着マスク形成用ポリアミド酸であって、
前記金属層の熱膨張係数(CTE)が5ppm/K以上15ppm/K以下の範囲内であり、
前記ポリイミド層の熱膨張係数(CTE)が、前記金属層の熱膨張係数(CTE)に対して±5ppm/Kの範囲内であり、かつ、前記ポリイミド層の引張弾性率が4.5GPa以上8GPa未満の範囲内であることを特徴とする蒸着マスク形成用ポリアミド酸。
前記ポリイミド層の長手(MD)方向の熱膨張係数(CTE−MD)と、幅(TD)方向の熱膨張係数(CTE−TD)との差が±2.5ppm/K以下である請求項6に記載の蒸着マスク形成用ポリアミド酸。
前記ポリイミド層の長手(MD)方向の熱膨張係数(CTE−MD)と、幅(TD)方向の熱膨張係数(CTE−TD)との差が±2.5ppm/K以下である請求項9に記載の蒸着マスク形成用積層体。
前記ポリイミド層の長手(MD)方向の熱膨張係数(CTE−MD)と、幅(TD)方向の熱膨張係数(CTE−TD)との差が±2.5ppm/K以下である請求項14に記載の蒸着マスクの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のとおり、従来技術では、金属層と樹脂層を積層した積層体において、樹脂層のCTEを制御することが行われている。特に反りの抑制という観点からは、樹脂層のCTEを金属層のCTEに極力近づけることが好ましいと考えられている。しかし、樹脂層のCTEは、積層体の製造やその加工の際の熱履歴によって大きな影響を受けるため、現実の製造プロセスでは、樹脂層のCTEを金属層のCTEに近似させることには自ずと限界があり、反りへの対策が重要な課題となっている。
【0008】
従って、本発明は、蒸着マスクなどの積層体において、反りの発生を効果的に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の蒸着マスクは、被蒸着体上に一定形状の薄膜パターンを蒸着形成するためのものである。
この蒸着マスクは、複数の開口部を有する金属層と、前記金属層に積層されており、前記開口部の開口範囲内に位置する貫通孔を有するとともに、該貫通孔が前記薄膜パターンに対応する開口パターンを形成している、単層又は複数層のポリイミド層と、を備えている。
そして、本発明の蒸着マスクは、前記金属層の熱膨張係数(CTE)が5ppm/K以上15ppm/K以下の範囲内であり、
前記ポリイミド層の熱膨張係数(CTE)が、前記金属層の熱膨張係数(CTE)に対して±5ppm/Kの範囲内であり、かつ、前記ポリイミド層の引張弾性率が4.5GPa以上8GPa未満の範囲内である。
【0010】
また、本発明の蒸着マスクは、前記ポリイミド層の長手(MD)方向の熱膨張係数(CTE−MD)と、幅(TD)方向の熱膨張係数(CTE−TD)との差が±2.5ppm/K以下であってもよい。
【0011】
また、本発明の蒸着マスクは、前記ポリイミド層を構成するポリイミドが、酸無水物成分から誘導される酸無水物残基と、ジアミン成分から誘導されるジアミン残基と、を含有するものであってもよい。
そして、前記酸無水物残基の合計100モル部に対して、ピロメリット酸二無水物から誘導される酸無水物残基を50モル部以上含有するものであってもよい。
また、前記ジアミン残基の合計100モル部に対して、下記一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を50モル部以上90モル部以下の範囲内、及び下記一般式(a)〜(d)で表される少なくとも1種のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を10モル部以上50モル部以下の範囲内で含有するものであってもよい。
【0012】
【化1】
【0013】
一般式(1)中、置換基Yは独立にハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜3のアルキル素基若しくはアルコキシ基又は炭素数2〜3のアルケニル基を示し、p及びqは独立に0〜4の整数を示す。
【0014】
【化2】
【0015】
一般式(a)〜(d)において、置換基R
1は独立に炭素数1〜4の1価の炭化水素基若しくはアルコキシ基を示し、連結基Aは独立に−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO
2−、−COO−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−NH−又は−CONH−を示し、連結基Bは単結合又は−C(CH
3)
2−を示し、n1は独立に0〜4の整数を示す。
【0016】
また、本発明の蒸着マスクは、前記ポリイミド層が単層からなるものであってもよい。
【0017】
また、本発明の蒸着マスクは、前記金属層がニッケル元素を主成分として含有するものであってもよい。
【0018】
本発明の蒸着マスク形成用ポリアミド酸は、上記蒸着マスクにおける前記ポリイミド層の形成に用いられる蒸着マスク形成用ポリアミド酸である。
【0019】
また、本発明の蒸着マスク形成用ポリアミド酸は、酸無水物成分から誘導される酸無水物残基と、ジアミン成分から誘導されるジアミン残基と、を含有するものであってもよい。そして、前記酸無水物残基の合計100モル部に対して、ピロメリット酸二無水物から誘導される酸無水物残基を50モル部以上含有するものであってもよい。また、前記ジアミン残基の合計100モル部に対して、上記一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を50モル部以上90モル部以下の範囲内、及び上記一般式(a)〜(d)で表される少なくとも1種のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を10モル部以上50モル部以下の範囲内で含有するものであってもよい。
【0020】
本発明の蒸着マスク形成用積層体は、被蒸着体上に一定形状の薄膜パターンを蒸着形成するための蒸着マスクの形成に用いられるものである。
そして、本発明の蒸着マスク形成用積層体は、
金属層と、
前記金属層に積層された、単層又は複数層のポリイミド層と、
を備えている。
本発明の蒸着マスク形成用積層体は、前記金属層の熱膨張係数(CTE)が5ppm/K以上15ppm/K以下の範囲内であり、
前記ポリイミド層の熱膨張係数(CTE)が、前記金属層の熱膨張係数(CTE)に対して±5ppm/Kの範囲内であり、かつ、前記ポリイミド層の引張弾性率が4.5GPa以上8GPa未満の範囲内である。
【0021】
また、本発明の蒸着マスク形成用積層体は、前記ポリイミド層の長手(MD)方向の熱膨張係数(CTE−MD)と、幅(TD)方向の熱膨張係数(CTE−TD)との差が±2.5ppm/K以下であってもよい。
【0022】
また、本発明の蒸着マスク形成用積層体は、前記ポリイミド層を構成するポリイミドが、酸無水物成分から誘導される酸無水物残基と、ジアミン成分から誘導されるジアミン残基と、を含有するものであってもよい。
そして、前記酸無水物残基の合計100モル部に対して、ピロメリット酸二無水物から誘導される酸無水物残基を50モル部以上含有してもよい。
また、前記ジアミン残基の合計100モル部に対して、上記一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を50モル部以上90モル部以下の範囲内、及び上記一般式(a)〜(d)で表される少なくとも1種のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を10モル部以上50モル部以下の範囲内で含有するものであってもよい。
【0023】
また、本発明の蒸着マスク形成用積層体は、前記ポリイミド層が単層からなるものであってもよい。
【0024】
また、本発明の蒸着マスク形成用積層体は、前記金属層がニッケル元素を主成分として含有するものであってもよい。
【0025】
本発明の蒸着マスクの製造方法は、被蒸着体上に一定形状の薄膜パターンを蒸着形成するための蒸着マスクを製造する方法である。本発明の蒸着マスクの製造方法は、下記の工程I〜III;
I)ポリアミド酸の溶液を支持基材上に塗工した後、熱処理することにより、単層又は複数層のポリイミド層を形成し、第1の積層体を得る工程、
II)前記第1の積層体上に複数の開口部を有する金属層を形成し、第2の積層体を得る工程、
III)前記金属層の前記開口部に重なる範囲内の前記ポリイミド層に複数の貫通孔を形成し、前記薄膜パターンに対応する開口パターンを形成する工程、
を含んでいる。
そして、本発明の蒸着マスクの製造方法は、前記金属層の熱膨張係数(CTE)が5ppm/K以上15ppm/K以下の範囲内であり、
前記ポリイミド層の熱膨張係数(CTE)が、前記金属層の熱膨張係数(CTE)に対して±5ppm/Kの範囲内であり、かつ、前記ポリイミド層の引張弾性率が4.5GPa以上8GPa未満の範囲内である。
【0026】
また、本発明の蒸着マスクの製造方法は、前記ポリイミド層の長手(MD)方向の熱膨張係数(CTE−MD)と、幅(TD)方向の熱膨張係数(CTE−TD)との差が±2.5ppm/K以下であってもよい。
【0027】
また、本発明の蒸着マスクの製造方法は、前記工程Iで用いる前記ポリアミド酸が、酸無水物成分から誘導される酸無水物残基と、ジアミン成分から誘導されるジアミン残基と、を含有するものであってもよい。
そして、前記酸無水物残基の合計100モル部に対して、ピロメリット酸二無水物から誘導される酸無水物残基を50モル部以上含有するものであってもよい。
前記ジアミン残基の合計100モル部に対して、上記一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を50モル部以上90モル部以下の範囲内、及び上記一般式(a)〜(d)で表される少なくとも1種のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を10モル部以上50モル部以下の範囲内で含有するものであってもよい。
【0028】
また、本発明の蒸着マスクの製造方法において、前記工程IIは、前記金属層をセミアディティブ工法により形成してもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ポリイミド層と金属層とが積層した構造の積層体の反りを効果的に抑制できる。この積層体は、例えば蒸着マスクとして有用であり、有機EL表示装置などの表示装置の生産効率の向上や、更なる高精細化等への対応も可能である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[蒸着マスク]
本発明の一実施の形態に係る蒸着マスクは、被蒸着体上に一定形状の薄膜パターンを蒸着形成するためのものであり、複数の開口部を有する金属層と、この金属層に積層された単層又は複数層のポリイミド層と、を備えている。また、ポリイミド層は、金属層の開口部の開口範囲内に位置する貫通孔を有する。この貫通孔は、前記薄膜パターンに対応する開口パターンを形成している。
【0031】
<金属層>
ポリイミド層が積層される相手方となる金属層は、CTEが5ppm/K以上15ppm/K以下の範囲内であり、10ppm/K以上15ppm/K以下の範囲内が好ましい。CTEが上記範囲内となる金属層の材質としては、例えばニッケル、鉄、ステンレス、チタン等の金属もしくはそれらの合金を挙げることができ、好ましくはニッケル元素を主成分として含有する金属がよい。ここで、「主成分」とは、金属層に含まれる全ての元素の中で、ニッケル元素の含有量が最も多いことを意味し、好ましくはニッケル元素を50重量%以上含有することを意味する。これらの中でも、CTEが約13ppm/Kであるニッケル、もしくはその合金が好ましい。なお、合金は、CTEが上記範囲内であれば、ニッケル等の含有量は問わない。
【0032】
<ポリイミド層>
ポリイミド層は、そのCTEが、金属層のCTEに対して±5ppm/Kの範囲内であり、±3ppm/Kの範囲内であることが好ましい。ポリイミド層と金属層とのCTE差が±5ppm/Kの範囲内であることによって、金属層との間で内部応力が生じにくくなり、蒸着マスクとした場合に、金属層とのポリイミド層における開口部の位置精度が保たれるほか、大きな反りも抑制できるので有利である。また、ポリイミド層と金属層とのCTE差が±5ppm/Kの範囲内であれば、次に述べる引張弾性率の制御によって反りの発生を効果的に抑制できる。CTE差が±5ppm/Kを超える場合は、引張弾性率の制御による反りの抑制効果が十分に得られない。
【0033】
ポリイミド層は、引張弾性率が4.5GPa以上8GPa未満の範囲内であり、5GPa以上7GPa以下の範囲内であることが好ましい。ポリイミド層の引張弾性率が8GPa以上であると、柔軟性が低くなるため、CTE差に起因する熱処理後の金属層とポリイミド層との応力差を吸収しきれず、反りの発生を効果的に抑制することが困難になる。一方、ポリイミド層の引張弾性率が4.5GPa未満であると、ポリイミド層の柔軟性が高くなり過ぎてCTEの制御が困難になるほか、例えば積層体を蒸着マスクとして使用する場合に、リサイクルのために溶剤洗浄を繰り返すとフィルムに変形が生じ、蒸着時のパターン精度が低下することがある。
【0034】
また、ポリイミド層は、長手(MD)方向の熱膨張係数(CTE−MD)と、幅(TD)方向の熱膨張係数(CTE−TD)との差が、±2.5ppm/K以下であることが好ましく、±1.5ppm/K以下であることがより好ましい。CTE−MDとCTE−TDとの差が、上記範囲内であれば、MD方向とTD方向における寸法変化を抑制し、蒸着マスクとして使用する場合に蒸着による薄膜パターンの精度を維持することができる。特に、ポリイミド層をキャスト法で形成することによって、MD方向とTD方向のポリマー鎖の配向性に差が生じにくくなるため、面内での寸法ばらつきを抑制できる。なお、ポリイミド層のCTEは、CTE−MD及びCTE−TDのそれぞれと同義である。従って、ポリイミド層についてCTEの範囲を規定している場合は、CTE−MD及びCTE−TDの両方が、当該範囲を満たしていることを意味する。
【0035】
また、ポリイミド層のガラス転移温度(Tg)は、特に制限されないが、高温での寸法精度を向上させる場合には、300℃以上とすることが好ましく、一方で、例えばラミネート等での金属層との接着強度を向上させる場合には、300℃未満であることが好ましい。
【0036】
[蒸着マスク形成用積層体]
本実施の形態の蒸着マスク形成用積層体は、上記蒸着マスクの形成に用いられる。本実施の形態の蒸着マスク形成用積層体は、金属層と、前記金属層に積層された、単層又は複数層のポリイミド層と、を備えている。蒸着マスク形成用積層体における金属層は、上記蒸着マスクにおける金属層と同様の構成であってよいが、上記開口部を有していてもよいし、有していなくてもよい。また、蒸着マスク形成用積層体におけるポリイミド層は、上記貫通孔を有しない点を除き、上記蒸着マスクにおけるポリイミド層と同様の構成であってよい。
【0037】
[ポリアミド酸]
本実施の形態のポリアミド酸は、金属層に積層されるポリイミド層を形成するために使用される。より具体的には、ポリアミド酸は、金属層と、該金属層に積層されたポリイミド層とを有する積層体において、ポリイミド層を形成するために使用される。ここで、積層体として、上記蒸着マスクや、上記蒸着マスク形成用積層体が例示される。本実施の形態のポリアミド酸は、FHMにおけるポリイミド層をキャスト法によって形成するための材料として特に好ましく用いられる。なお、「ポリイミド層」とは、上記積層体においてポリイミド層を形成している、もしくは、形成するための「ポリイミドフィルム」を含むものとする。
【0038】
本実施の形態のポリアミド酸は、酸無水物成分から誘導される酸無水物残基と、ジアミン成分から誘導されるジアミン残基と、を含有する。このポリアミド酸は、一般に、酸無水物とジアミンとを反応させて製造されるので、酸無水物とジアミンを説明することにより、ポリアミド酸の具体例が理解される。以下、好ましいポリアミド酸を酸無水物とジアミンにより説明する。
【0039】
(原料モノマー)
酸無水物成分:
本実施の形態で用いるポリアミド酸は、PMDAを主な原料モノマーとして製造することが好ましい。PMDAは、他の一般的な酸無水物成分に比べて、ポリイミド中の分子の配向性の制御が可能であり、熱膨張係数(CTE)の抑制とガラス転移温度(Tg)の向上効果がある。このような観点から、原料モノマーの酸無水物成分100モル部に対して、好ましくはPMDAを50モル部以上、例えば50モル部から100モル部の範囲内、より好ましくは75モル部から100モル部の範囲内で使用することがよい。原料の全酸無水物成分の100モル部に対し、PMDAの仕込み量が50モル部未満であると、分子の配向性が低下し、低CTE化が困難となる。
【0040】
なお、PMDA以外に使用可能な酸無水物成分としては、一般にポリアミド酸/ポリイミドの原料として使用されている酸二無水物から適宜選択することができるが、芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えば、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、2,3',3,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-、2,3,3',4'-又は3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3'',4,4''-、2,3,3'',4''-又は2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物等が挙げられる。
【0041】
ジアミン成分:
本実施の形態で用いるポリアミド酸は、ビフェニル骨格を有するジアミン化合物を、ジアミン成分中の主な原料モノマーとして製造することが好ましい。すなわち、原料モノマーのジアミン成分100モル部に対して、下記一般式(1)で表されるジアミン化合物を好ましくは50モル部以上90モル部以下の範囲内、より好ましくは50モル部以上80モル部以下の範囲内で使用することがよい。また、下記一般式(a)〜(d)で表される少なくとも1種のジアミン化合物を好ましくは10モル部以上50モル部以下の範囲内、より好ましくは20モル部以上50モル部以下の範囲内で使用することがよい。
【0044】
上記一般式(1)において、置換基Yは独立にハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜3のアルキル素基若しくはアルコキシ基又は炭素数2〜3のアルケニル基を示し、p及びqは独立に0〜4の整数を示す。
また、上記一般式(a)〜(d)において、置換基R
1は独立に炭素数1〜4の1価の炭化水素基若しくはアルコキシ基を示し、連結基Aは独立に−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO
2−、−COO−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−NH−又は−CONH−を示し、連結基Bは単結合又は−C(CH
3)
2−を示し、n1は独立に0〜4の整数を示す。ここで、「独立に」とは、上記式(a)から(d)の内の一つ又は二つ以上において、連結基A、基R
1、整数n1が、同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。
なお、本発明において、「ジアミン化合物」は、末端の二つのアミノ基における水素原子が置換されていてもよく、例えば−NR
3R
4(ここで、R
3,R
4は、独立にアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
【0045】
一般式(1)で表されるジアミン化合物は、ビフェニル骨格を有するジアミン化合物(2つの芳香環からなるジアミン化合物を意味し、3つ以上の芳香環を有するものは含まない。以下、同様である)である。ビフェニル骨格を有するジアミン化合物は、秩序構造を形成しやすく、ポリイミド層の低CTE化に寄与する。ビフェニル骨格を有するジアミン化合物の好ましい具体例としては、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−TB)、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−EB)、2,2’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(m−EOB)、2,2’−ジプロポキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(m−POB)、2,2’−n−プロピル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−NPB)、2,2’−ジビニル−4,4’−ジアミノビフェニル(VAB)、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)等のジアミン化合物が挙げられる。これらの中でも特に、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−TB)は、秩序構造を形成しやすく、低CTE化に効果が大きいので特に好ましい。
【0046】
一方、一般式(a)〜(d)で表されるジアミン化合物は、屈曲性が高い分子構造を有していることから、ポリイミド層の柔軟性を高め、引張弾性率を低く抑える作用を有する。従って、上記範囲内で使用することによって、金属層とポリイミド層にCTE差が存在する場合であっても、応力を緩和し、反りの発生を効果的に抑制できる。一般式(a)〜(d)で表されるジアミン化合物の合計量が、ジアミン化合物の合計100モル部に対して10モル部未満では、ポリイミド層の弾性率が高くなり、金属層とポリイミド層との応力を緩和する作用が十分に得られなくなり、一方、合計量が50モル部を超えると、CTEが大きくなり過ぎるため、金属層のCTE差が大きくなり、いずれも反りの発生原因となる。
【0047】
一般式(a)において、基R
1の好ましい例としては、炭素数1〜4のアルキル基、あるいは炭素数1〜3のアルコキシ基若しくはアルケニル基を挙げることができる。式(a)で表されるジアミン化合物としては、例えば、m−フェニレンジアミン(m−PDA)、2,4−ジエチル−6−メチル−1,3−ベンゼンジアミン、4,6−ジエチル−2−メチル−1,3−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン等を挙げることができる。
【0048】
一般式(b)において、基R
1の好ましい例としては、炭素数1〜4のアルキル基、あるいは炭素数1〜3のアルコキシ基若しくはアルケニル基を挙げることができる。また、一般式(b)において、連結基Aの好ましい例としては、−O−、−S−、−CH
2−、−SO
2−又は−CO−を挙げることができる。一般式(b)で表されるジアミン化合物の好ましい具体例としては、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル(4,4'-DAPE)、3,3'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル(3,4'-DAPE)、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジアミノジフェニルメタン、3,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルプロパン、3,3'−ジアミノジフェニルプロパン、3,4'−ジアミノジフェニルプロパン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,3'−ジアミノベンゾフェノン等のジアミン化合物が挙げられる。
【0049】
一般式(c)において、基R
1の好ましい例としては、炭素数1〜4のアルキル基、あるいは炭素数1〜3のアルコキシ基若しくはアルケニル基を挙げることができる。また、一般式(c)において、連結基Aの好ましい例としては、−O−、−S−、−CH
2−、−SO
2−又は−CO−を挙げることができる。一般式(c)で表されるジアミン化合物の好ましい具体例としては、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)、1,4−ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−Q)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、ビス(4‐アミノフェノキシ)−2,5−ジ−tert−ブチルベンゼン(DTBAB)、4,4−ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゾフェノン(BAPK)、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン等のジアミン化合物が挙げられる。
【0050】
一般式(d)において、基R
1の好ましい例としては、炭素数1〜4のアルキル基、あるいは炭素数1〜3のアルコキシ基若しくはアルケニル基を挙げることができる。また、一般式(d)において、連結基Aの好ましい例としては、−O−、−S−、−CH
2−、−SO
2−又は−CO−を挙げることができる。連結基Bの好ましい例としては、単結合若しくは−C(CH
3)
2−を挙げることができる。一般式(d)で表されるジアミン化合物の好ましい具体例としては、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)等のジアミン化合物が挙げられる。
【0051】
一般式(b)から(d)で表されるジアミン化合物は、2〜4個のベンゼン環を有しているので、CTEの増加を抑制するために、ベンゼン環に結合する少なくとも片側の末端基はパラ位とすることが好ましい。従って、好ましい態様として、ジアミン化合物の合計100モル部に対して、下記一般式(a1)〜(d1)で表される少なくとも1種のジアミン化合物を10モル部以上50モル部以下の範囲内で含有することがよい。なお、一般式(a1)は一般式(a)に、一般式(b1)は一般式(b)に、一般式(c1)は一般式(c)に、一般式(d1)は一般式(d)に、それぞれ包含される。
【0053】
一般式(a1)〜(d1)において、置換基R
1は独立に炭素数1〜4の1価の炭化水素基もしくはアルコキシ基を示し、連結基Aは独立に−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO
2−、−COO−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−NH−若しくは−CONH−から選ばれる2価の基を示し、連結基Bは単結合若しくは−C(CH
3)
2−から選ばれる2価の基を示し、n1は独立に0〜4の整数を示す。
【0054】
なお、上記一般式(1)で表されるジアミン化合物及び上記一般式(a)〜(d)で表されるジアミン化合物以外に使用可能なジアミン成分としては、一般にポリアミド酸/ポリイミドの原料として使用されているジアミン化合物を挙げることができるが、芳香族ジアミン化合物が好ましい。芳香族ジアミン化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン(p−PDA)、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’-メチレンジ-o-トルイジン、4,4’-メチレンジ-2,6-キシリジン、3,3’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジアミノビフェニル、3,3''-ジアミノ-p-テルフェニル、4,4'-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4'-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン等が挙げられる。
【0055】
本実施の形態の特に好ましいポリアミド酸は、下記一般式(2)で表される構造単位を50モル%以上含有することがよい。
【0057】
一般式(2)中、置換基Yは独立にハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜3のアルキル基若しくはアルコキシ基又は炭素数2〜3のアルケニル基を示し、pおよびqは独立して0〜4の整数を示す。
【0058】
例えば、ポリアミド酸を構成する構造単位100モル部に対して、一般式(2)で表される構造単位を50モル部以上80モル部以下の範囲内で含むことが好ましい。ここで、「構造単位(ユニット)」とは、1つのジアミン残基と1つの酸無水物残基がアミド結合を介して連結された単位を意味する。一般式(2)で表される構造単位は、ビフェニル骨格を有するジアミン化合物から誘導される残基とピロメリット酸二無水物(PMDA)から誘導される残基(PMDA残基)の両方を含むことから、ポリイミド層の低CTE化に寄与する。ポリアミド酸の構造単位100モル部に対して、一般式(2)で表される構造単位が50モル部未満であると、ポリイミドの面内配向性制御による低CTE化が困難となり、更に樹脂組成中の芳香環の割合が低下するため、エキシマレーザー(308nm)やUV−YAGレーザー(355nm)の透過率が増加し、レーザー加工時の加工形状に悪化が生じやすい。一方、ポリアミド酸の構造単位100モル部に対して、一般式(2)で表される構造単位が80モル部を超えると、ポリイミドの弾性率が上昇しやすい。
【0059】
本実施の形態で用いるポリアミド酸において、一般式(2)で表される構造単位は、単独重合体中に存在しても、共重合体の構造単位として存在してもよい。構造単位を複数有する共重合体である場合は、ブロック共重合体として存在しても、ランダム共重合体として存在してもよい。置換基の種類によって、一般式(2)で表される構造単位は複数種類が存在し得るが、1種類であっても2種類以上であってもよい。
【0060】
以上のように、本実施の形態のポリアミド酸は、ポリイミド層のCTEを低く抑えるための酸無水物残基及びジアミン残基と、ポリイミド層の柔軟性を高め、引張弾性率を低く抑えるためのジアミン残基を所定の比率で含んでいるので、CTEが5ppm/K以上15ppm/K以下の範囲内の金属層に対して、ポリイミド層のCTEを±5ppm/Kの範囲内に制御すると同時に、引張弾性率を4.5GPa以上8GPa未満の範囲内に制御することができる。そして、ポリイミド層の引張弾性率を上記範囲内とすることによって、金属層とポリイミド層のCTE差が±5ppm/Kの範囲内であれば、熱処理後の応力差を緩和できるので、反りを効果的に抑制できる。
【0061】
上記酸無水物残基及びジアミン残基の種類や、2種以上の酸無水物残基及びジアミン残基を適用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、ポリイミドの熱膨張係数、引張弾性率、ガラス転移温度等を制御することができる。
【0062】
ポリイミドの重量平均分子量は、例えば10,000〜400,000の範囲内が好ましく、50,000〜350,000の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、ポリイミド層の強度が低下して脆化しやすい傾向となる。一方、重量平均分子量が400,000を超えると、過度に粘度が増加して塗工作業の際にフィルム厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
【0063】
(ポリアミド酸・ポリイミドの合成)
一般にポリイミドは、酸無水物成分と、ジアミン成分を溶媒中で反応させ、ポリアミド酸を生成したのち加熱閉環させることにより製造できる。例えば、酸無水物成分とジアミン成分をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0〜100℃の範囲内の温度で30分〜24時間撹拌し重合反応させることでポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5〜30重量%の範囲内、好ましくは10〜20重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、2−ブタノン、ジメチルスホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。また、このような有機溶媒の使用量としては特に制限されるものではないが、重合反応によって得られるポリアミド酸溶液の濃度が5〜30重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
【0064】
合成されたポリアミド酸は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、ポリアミド酸は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。ポリアミド酸の溶液の粘度は、500cps〜100,000cpsの範囲内であることが好ましい。この範囲を外れると、コーター等による塗工作業の際にフィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。ポリアミド酸をイミド化させてポリイミドを合成する方法は、特に制限されず、例えば前記溶媒中で、80〜400℃の範囲内の温度条件で1〜24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。
【0065】
<溶媒>
また、本実施の形態のポリアミド酸は、溶媒を含有するワニスの状態でポリアミド酸組成物として使用することが好ましい。溶媒としては、ポリアミド酸の重合反応に用いる上記例示の有機溶媒を挙げることができる。溶媒は、1種若しくは2種以上併用して使用することもできる。
【0066】
<任意成分>
ポリアミド酸組成物は、発明の効果を損なわない範囲で、例えば、難燃化剤、充填材などの任意成分を含有することができる。
【0067】
[蒸着マスクの製造方法]
本実施の形態の蒸着マスクの製造方法は、上記ポリアミド酸組成物を任意の支持基材の表面に塗布して塗布膜を形成した後、ポリアミド酸をイミド化することによってポリイミド層を形成する方法(キャスト法)を含むことが好ましい。キャスト法で形成されるポリイミド層は、長手方向(MD方向)と幅方向(TD方向)のポリマー鎖の配向性に差が生じにくくなるため、面内での寸法ばらつきが小さい、という長所がある。
【0068】
以下、キャスト法とセミアディティブ法の組み合わせによって、金属層と該金属層に積層されたポリイミド層とを有する蒸着マスクを製造する方法について、具体的に説明する。
【0069】
本実施の形態の蒸着マスクの製造方法は、以下の工程(1)〜(9)を含むことができる。
工程(1):
工程(1)は、ポリアミド酸組成物を得る工程である。この工程では、まず、上記のとおり、原料のジアミン成分と酸無水物成分を適宜の溶媒中で反応させることにより、ポリアミド酸を合成する。ポリアミド酸は、溶媒を含む溶液の状態でポリアミド酸組成物として使用される。
【0070】
工程(2):
工程(2)は、任意の支持基材の表面に、工程(1)で得られたポリアミド酸組成物を塗布し、塗布膜を形成する工程である。支持基材としては、例えばガラス基板、金属箔、樹脂フィルムなどを挙げることができる。
【0071】
塗布膜は、溶液状のポリアミド酸組成物を支持基材の上に直接塗布した後に乾燥することで形成できる。塗布方法は、特に制限されず、例えばコンマ、ダイ、ナイフ、リップ、スピン、スリット等のコーターにて塗布することが可能である。
【0072】
ポリイミド層は、ポリアミド酸組成物の塗布と乾燥を繰り返して、複数層からなる構成とすることも可能であるが、CTEと引張弾性率の制御を容易にするため、単層による構成とすることが好ましい。
【0073】
工程(3):
工程(3)は、塗布膜を熱処理してイミド化し、ポリイミド層を形成する工程である。イミド化の方法は、特に制限されず、例えば80〜400℃の範囲内の温度条件で1〜200分間の範囲内の時間加熱するといった熱処理が好適に採用される。熱処理により、塗布膜中のポリアミド酸がイミド化し、ポリイミドが形成される。
【0074】
ポリイミド層の厚みについては特に制限はないが、破断やピンホールの発生を抑制できる厚みにするのがよく、蒸着シャドウの発生を考慮した厚みにするのがよい。好ましくは2〜25μmである。
【0075】
工程(4):
ポリイミド層の表面に、例えばパラジウム、ニッケル、ニッケル−クロム合金、ニッケル−リン合金、ニッケル−ホウ素合金、ニッケル−銅合金等の金属によるシード層を形成する。シード層を形成するための方法は、特に制限されず、例えば無電解めっき、スパッタ、イオンプレーティング等の方法で形成できる。なお、必要に応じて、シード層を形成するための前処理として、例えばプラズマ処理やアルカリ処理によるポリイミド層の改質処理などを行ってもよい。
【0076】
工程(5):
シード層の表面に、レジストを塗布し、フォトリソグラフィー技術によって露光、現像することによって、所定の形状のレジストパターンを形成する。
【0077】
工程(6):
パターン形成したレジストの開口部に、金属を埋め込むことによって、金属層を形成する。金属層を形成するための方法は、特に制限されず、例えば電気めっき等の方法で行うことができる。金属層となる金属部材の材料については、CTEが5ppm/K以上15ppm/K以下の範囲内であれば特に制限はなく、公知の蒸着マスクに用いられるものでもよいが、ニッケル及びニッケル合金が好ましい。
【0078】
金属層の厚みは、特に制限はないが、破断や変形を抑制できるとともに、蒸着シャドウの発生を考慮した厚みにするのがよく、好ましくは2〜100μmである。
【0079】
工程(7):
レジストを剥離するとともに、シード層をエッチングにより除去することによって、ポリイミド層の上にパターン形成された金属層を備えた積層体が得られる。積層体のパターン化された金属層の開口部の底には、ポリイミド層が露出している。
【0080】
工程(8):
工程(7)で得られた積層体のポリイミド層に対し、開口範囲内に対応させて、好ましくは開口幅よりも狭い幅で複数の貫通開口パターンを加工する。この貫通開口パターンは、被蒸着体上に蒸着形成される薄膜パターンに対応する。
【0081】
ポリイミド層に貫通開口を設けて開口パターンを形成する方法については特に制限されず、例えば、レーザーを照射して貫通開口を形成する方法、メカニカルドリルで貫通開口を形成する方法等を挙げることができる。精度や生産性等の観点から、レーザー照射が好ましい。レーザー照射により、薄膜パターンに対応した開口パターンを形成する場合、レーザーの波長でのポリイミド層の透過率が高いと良好な開口パターン形状を得られないことがある。そのため、レーザーの波長でのポリイミド層の光透過率は50%以下であるのがよく、好ましくは10%以下、より好ましくは0%であるのがよい。ここで、レーザー照射によりポリイミド層に貫通開口を形成するのに用いられるレーザーとしては、例えば、UV−YAGレーザー(波長355nm)、エキシマレーザー(波長308nm)等を用いることが可能であり、これらの中でも、UV−YAGレーザー(波長355nm)が好ましい。
【0082】
工程(9):
支持基材を剥離することによって、ポリイミド層と金属層とを有する蒸着マスクが得られる。支持基材を剥離する方法は特に制限されるものではなく、例えばレーザーリフトオフ法などの方法で行うことができる。なお、支持基材の剥離は、工程(7)の後、工程(8)の前に実施することもできる。
【0083】
以上のようにして、ポリイミド層と金属層とを有する蒸着マスクを製造することができる。
【0084】
<作用>
金属層と樹脂層を積層した積層体において、反りを抑制するためには、樹脂層のCTEを金属層のCTEに極力近づけ、可能ならば一致させることが望ましい。しかし、現実の製造プロセスでは、樹脂層のCTEを金属層のCTEに近似させることが困難な場合が多い。そこで、本発明では、樹脂層の引張弾性率に着目し、金属層と樹脂層との間に不可避的にCTE差が生じる場合であっても、CTE差を一定範囲内に制御しながら、樹脂層の弾性率を低下させることとした。すなわち、金属層と樹脂層との積層体のように、比較的大きな弾性率差が存在している異種材料の積層体では、CTEを近似させることが困難な場合であっても、樹脂層の弾性率を下げることによって、金属層への追従性が高まる結果、応力が緩和され、反りを効果的に抑制できる。
従って、本発明における金属層のCTEの範囲と、反りを抑制するための樹脂層のCTEの範囲及び引張弾性率の範囲は、金属層を構成する金属種や金属層の厚み、金属層の引張弾性率と、樹脂層を構成する樹脂種や樹脂層の厚みに応じて様々に設定することができる。
【実施例】
【0085】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
【0086】
[粘度の測定]
粘度の測定は、E型粘度計(ブルックフィールド社製、商品名;DV−II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。トルクが10%〜90%になるよう回転数を設定し、測定を開始してから2分経過後、粘度が安定した時の値を読み取った。
【0087】
[熱膨張係数(CTE)の測定]
3mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、サーモメカニカルアナライザー(Bruker社製、商品名;4000SA)を用い、5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度で30℃から250℃まで昇温させ、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、250℃から100℃までの平均熱膨張係数(熱膨張係数)を求めた。なお、測定は、長手方向(MD方向)及び幅方向(TD方向)について実施した。
【0088】
[フィルムの弾性率測定]
フィルムの弾性率は、幅12.7mm×長さ127mmにカットしたポリイミドフィルムについて、テンションテスター(オリエンテック製テンシロン)を用いて、50mm/minで引張り試験を行い、25℃におけるフィルム弾性率を求めた。
【0089】
[ガラス転移温度(Tg)の測定]
ガラス転移温度は、5mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、動的粘弾性測定装置(DMA:ユー・ビー・エム社製、商品名;E4000F)を用いて、30℃から400℃まで昇温速度4℃/分、周波数11Hzで測定を行い、弾性率変化(tanδ)が最大となる温度をガラス転移温度とした。
【0090】
[反りの測定]
積層体の反りは、50mm×50mmのサイズのサンプルを23℃、湿度50%で、20時間調湿後、サンプルの中央部の凸面が平らな面上に接するよう静置し、サンプルの4角の静置面からの浮き上がりの有無を目視によって観察し、1か所でも浮き上がりがある場合を「反りが有り」、浮き上がりが10mm以下である場合を「反りが無い」と判定した。
【0091】
(レーザーリフトオフ;LLO)
ポリイミド層とガラス基板との積層体に、エキシマレーザー加工機(波長308nm)を用いて、ビームサイズ14mm×1.2mm、移動速度6mm/sのレーザーを支持基材(ガラス基板)側から照射し、ガラス基板とポリイミド層が完全に分離された状態(カッターで剥離範囲を決め、切り口を1周入れてからポリイミドフィルムがガラス基板から自然剥離)とした。この際、レーザー照射エネルギー密度を110(mJ/cm
2)とした。
【0092】
実施例及び比較例に用いた略号は、以下の化合物を示す。
m−PDA:メタフェニレンジアミン
p−PDA:パラフェニレンジアミン
3,4’−DAPE:3,4’−ジアミノジフェニルエーテル
4,4’−DAPE:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
m−TB:2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル
TPE−R:1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン
TPE−Q:1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン
APB:1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン
BAPB:1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル
PMDA:ピロメリット酸二無水物
s−BPDA:3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
【0093】
(合成例1)
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、固形分濃度が15重量%となるように、4.338gのm−PDA(0.0401モル)、8.515gのm‐TB(0.0401モル)及び170.0gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、17.148gのPMDA(0.0786モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液aを調製し、粘度は8900cPであった。
【0094】
(合成例2)
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、固形分濃度が15重量%となるように、7.188gの4,4’−DAPE(0.0359モル)、7.621gのm‐TB(0.0359モル)及び170.0gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、15.191gのPMDA(0.0696モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液bを調製し、粘度は10800cPであった。
【0095】
(合成例3)
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、固形分濃度が15重量%となるように、9.453gのTPE−Q(0.0323モル)、6.865gのm‐TB(0.0323モル)及び170.0gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、13.683gのPMDA(0.0627モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液cを調製し、粘度は11200cPであった。
【0096】
(合成例4)
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、固形分濃度が15重量%となるように、9.408gのTPE−R(0.0322モル)、6.832gのm‐TB(0.0322モル)及び170.0gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、13.759gのPMDA(0.0631モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液dを調製し、粘度は8900cPであった。
【0097】
(合成例5)
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、固形分濃度が15重量%となるように、3.679gのTPE−R(0.0126モル)、10.686gのm‐TB(0.0503モル)及び170.0gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、6.656gのPMDA(0.0305モル)及び8.979gのs−BPDA(0.0305モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液eを調製し、粘度は13100cPであった。
【0098】
(合成例6)
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、固形分濃度が15重量%となるように、6.760gのAPB(0.0231モル)、9.117gのm‐TB(0.0430モル)及び170.0gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、14.123gのPMDA(0.0648モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液fを調製し、粘度は6900cPであった。
【0099】
(合成例7)
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、固形分濃度が15重量%となるように、8.048gのBAPB(0.0218モル)、8.612gのm‐TB(0.0406モル)及び170.0gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、13.341gのPMDA(0.0612モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液gを調製し、粘度は13700cPであった。
【0100】
(合成例8)
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、固形分濃度が15重量%となるように、6.568gの3,4’-DAPE(0.0328モル)、6.963gのm‐TB(0.0328モル)及び170.0gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、7.011gのPMDA(0.0321モル)及び9.458gのs−BPDA(0.0321モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液hを調製し、粘度は8600cPであった。
【0101】
(合成例9)
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、固形分濃度が15重量%となるように、13.745gのm‐TB(0.0648モル)及び170.0gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、6.920gのPMDA(0.0317モル)及び9.335gのs−BPDA(0.0317モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液iを調製し、粘度は9800cPであった。
【0102】
(合成例10)
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに、固形分濃度が15重量%となるように、1.466gのp−PDA(0.0136モル)、11.514gのm‐TB(0.0542モル)及び170.0gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、7.246gのPMDA(0.0332モル)及び9.774gのs−BPDA(0.0332モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液jを調製し、粘度は11500cPであった。
【0103】
[実施例1-1]
ポリアミド酸溶液aについて、ガラス基板(コーニング社製、商品名;E−XG、サイズ;150mm×150mm、厚み;0.7mm)上に、スピンコーターを用いて、硬化後のポリイミド層の厚みが約7.5μmになるように塗工した。続いて、空気雰囲気下で、120℃、2分間加熱を行った。
【0104】
そして、空気雰囲気中で、一定の昇温速度(5℃/min)で室温から360℃まで昇温させ、ガラス基板上にポリイミド層(ポリイミドa)を形成し、ポリイミド積層体aを得た。
【0105】
得られたサンプルについて、レーザーリフトオフ(LLO)によりガラス基板からポリイミドフィルムを剥離することで、ポリイミドフィルムAを得た。この際、MD方向のCTEが12.3ppm/K、TD方向のCTEが11.7ppm/Kであり、ガラス転移温度(Tg)が388℃、弾性率が6.5GPaであった。
【0106】
[実施例1-2]
得られたポリイミド積層体aを0.5Nの水酸化カリウム水溶液(50℃)中に5分間浸漬した。その後、浸漬したポリイミド積層体aを水洗し、ポリイミド積層体aの表面にアルカリ改質層を形成した。
【0107】
次に、10mM濃度の酢酸パラジウムと60mM濃度のアンモニアを混合した水溶液(25℃)に60分間浸漬し、アルカリ改質層にパラジウムイオンを含浸することで、パラジウムイオン含浸層を形成した。
【0108】
前記含浸層を形成したポリイミド積層体aを、50mM濃度のジメチルアミンボラン水溶液(30℃)中に5分間浸漬することで含浸層のパラジウムイオンを還元しパラジウム析出層の形成を行い、さらに無電解ニッケルめっき(ニッケル−リン合金系)水溶液(90℃)へ20秒間浸漬し、ニッケルめっきを行った。
【0109】
無電解めっき後のポリイミド積層体aについて、めっき表面にドライフィルムレジストを90℃にてラミネートし、フォトマスクを介して紫外線露光し、0.5重量%の炭酸ナトリウム水溶液にて現像することにより、マスクパターンが形成された表面改質ポリイミドフィルム積層体Aを得た。
【0110】
次に、ニッケルのめっき浴に浸漬して電気めっきすることで、レジストマスクで被覆されていない部分に、電気めっきによるニッケル層(厚み;10μm)を形成したニッケルパターン形成ポリイミド積層体Aを得た。
得られたニッケルパターン形成ポリイミド積層体Aを2重量%の水酸化ナトリウム水溶液(25℃)に3分間浸漬後、水洗することでレジストパターンの剥離を行った。
【0111】
その後、窒素雰囲気下で、10分間、360℃で加熱することで、アルカリ改質層の再イミド化を完了し、さらにフラッシュエッチング液を用いた無電解ニッケルめっき層の除去を実施した。得られた積層体のポリイミド露出部について、355nmのYAGレーザーを用いて一定間隔でポリイミドに貫通孔を形成した後、レーザーリフトオフによりガラス基板から剥離し、ニッケル層及びポリイミド層に貫通開口パターンを有するポリイミドフィルムAを形成した。このポリイミドフィルムAに反りは確認されなかった。
【0112】
[実施例2-1〜8-1及び比較例1-1、比較例2-1]
ポリアミド酸溶液aに代えて、ポリアミド酸溶液b〜jを使用した以外は、実施例1-1と同様にしてポリイミドフィルムB〜Jを作製した。作製したフィルムの物性を表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
[実施例2-2〜8-2及び比較例1-2、比較例2-2]
実施例2-1〜8-1及び比較例1-1、比較例2-1に基づき、実施例1-2と同様にして、ニッケル及びポリイミドにパターン形成をしたポリイミドフィルムB〜Jを作製した。この際、ニッケルパターン形成ポリイミドフィルムB〜Hについては、フィルムの反りは確認されなかった。また、ニッケルパターン形成ポリイミドフィルムI〜Jについては反りが確認された。
【0115】
以上のように、本実施の形態のポリアミド酸を使用することによって、ポリイミド層と金属層とが積層した構造を有し、反りが抑制された積層体を製造できる。この積層体は、例えば蒸着マスクとして有用であり、例えば有機EL表示装置などの表示装置の生産効率の向上や、更なる高精細化等への対応も可能である。
【0116】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。例えば、本発明のポリアミド酸は、セミアディティブ法以外の方法で蒸着マスクを製造する場合においても適用可能である。すなわち、開口部が形成されていない金属層と樹脂層とを有する金属張積層板を作製した後、エッチング等により開口部を形成して蒸着マスクを製造する場合にも、本発明のポリアミド酸を使用できる。