【解決手段】 流体の流動経路上に配置される一対の電気加熱式発熱体が電気的に接続された加熱ユニットにおいて、前記一対の電気加熱式発熱体は、前記流体の流動方向である所定方向に延びる第1中心電極の周りに平箔と波箔とを積層した積層シートを巻き回してなる第1電気加熱式発熱体と、前記所定方向に延びる第2中心電極の周りに平箔と波箔とを積層した積層シートを巻き回してなる第2電気加熱式発熱体と、により構成されており、
前記第1中心電極及び前記第2中心電極は、前記第1電気加熱式発熱体及び前記第2電気加熱式発熱体よりも電気抵抗値が低い抵抗体によって電気的に接続されていることを特徴とする。
前記抵抗体における前記波箔の波高さは、前記第1電気加熱式発熱体における前記波箔の波高さ及び前記第2電気加熱式発熱体における前記波箔の波高さよりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の加熱ユニット。
前記第1中心電極及び前記第2中心電極の外径をH1、前記抵抗体の外径をH2としたときに、以下の条件式(1)を満足することを特徴とする請求項2又は3に記載の加熱ユニット。
H2≦1.2H1・・・・・・・・・・・・・・・(1)
前記抵抗体の前記波箔における最外周部には、前記所定方向に管状に延びる延出部が設けられており、前記延出部は前記第2中心電極の径方向における外面に接続されていることを特徴とする請求項4に記載の加熱ユニット。
前記第1電気加熱式発熱体及び前記第2電気加熱式発熱体は、排ガス浄化用の触媒を担持させるための触媒基材であることを特徴とする請求項1乃至9のうちいずれか一つに記載の加熱ユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、従来の電気加熱式触媒装置は、個々の電気加熱式発熱体の電気抵抗値が互いに等しいことを前提として設計されている。しかしながら、実際には、誤差により箔厚、箔幅、材料組成等が互いに異なるため、個々の電気加熱式発熱体における電気抵抗値にばらつきが生じ、結果的に触媒装置全体の電気抵抗値が所望の電気抵抗値を満足しない場合があった。電気加熱式発熱体は、径が比較的大きいため、誤差の累積により、実際の電気抵抗値が目標電気抵抗値から乖離し易い。
【0005】
箔厚、箔幅、材料組成等を厳密に制御できれば、同一抵抗値の電気加熱式発熱体を製造できるが、この方法では製造管理が煩雑となり、コストも増大する。
【0006】
そこで、本発明は、個々の電気加熱式発熱体が設計上の電気抵抗値を満足しない場合であっても、加熱ユニットの目標電気抵抗値を満足させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願発明に係る加熱ユニットは、(1)流体の流動経路上に配置される一対の電気加熱式発熱体が電気的に接続された加熱ユニットにおいて、前記一対の電気加熱式発熱体は、前記流体の流動方向である所定方向に延びる第1中心電極の周りに平箔と波箔とを積層した積層シートを巻き回してなる第1電気加熱式発熱体と、前記所定方向に延びる第2中心電極の周りに平箔と波箔とを積層した積層シートを巻き回してなる第2電気加熱式発熱体と、により構成されており、前記第1中心電極及び前記第2中心電極は、前記第1電気加熱式発熱体及び前記第2電気加熱式発熱体よりも電気抵抗値が低い抵抗体によって電気的に接続されていることを特徴とする。
【0008】
(2)前記抵抗体は、前記所定方向に延びる抵抗体中心電極の周りに平箔と波箔とを積層した積層シートを巻き回してなることを特徴とする(1)に記載の加熱ユニット。
【0009】
(3)前記抵抗体における前記波箔の波高さは、前記第1電気加熱式発熱体における前記波箔の波高さ及び前記第2電気加熱式発熱体における前記波箔の波高さよりも小さいことを特徴とする(2)に記載の加熱ユニット。
【0010】
(4)前記第1中心電極及び前記第2中心電極の外径をH1、前記抵抗体の外径をH2としたときに、以下の条件式(1)を満足することを特徴とする(2)又は(3)に記載の加熱ユニット。
H2≦1.2H1・・・・・・・・・・・・・・・(1)
【0011】
(5)前記抵抗体の前記波箔における最外周部には、前記所定方向に管状に延びる延出部が設けられており、前記延出部は前記第2中心電極の径方向における外面に接続されていることを特徴とする(4)に記載の加熱ユニット。
【0012】
(6)前記第1電気加熱式発熱体に含まれる前記平箔及び前記波箔の間には絶縁層が介在しており、前記第2電気加熱式発熱体に含まれる前記平箔及び前記波箔の間には絶縁層が介在しており、前記抵抗体に含まれる前記平箔及び前記波箔の間には絶縁層が介在しており、前記第1加熱式発熱体の前記波箔の最外周部には、電源の第1端子に接続するための第1接続部が設けられており、前記第2加熱式発熱体の前記波箔の最外周部には、前記第1端子とは極性が異なる前記電源の第2端子に接続するための第2接続部が設けられていることを特徴とする(2)乃至(5)のうちいずれか一つに記載の加熱ユニット。
【0013】
(7)前記第1中心電極と前記抵抗体との間には、第1絶縁板が介在しており、前記抵抗体と前記第2中心電極との間には、第2絶縁板が介在しており、前記抵抗体中心電極は、前記第1絶縁板に形成された貫通孔部を貫通して、前記第1中心電極の端部に形成された嵌合開口部に嵌合していることを特徴とする(2)乃至(6)のうちいずれか一つに記載の加熱ユニット。
【0014】
(8)前記第1中心電極及び前記第2中心電極は、絶縁性の棒状部材により連結されており、前記棒状部材に捲き回された線状又は帯状の導電部材における一端が前記第1中心電極に接続され、前記導電部材における他端が前記第2中心電極に接続されていることを特徴とする(1)に記載の加熱ユニット。
【0015】
(9)前記第1中心電極、前記第2中心電極及び前記棒状部材の外径は、略同じであることを特徴とする(8)に記載の加熱ユニット。
【0016】
(10)前記第1電気加熱式発熱体及び前記第2電気加熱式発熱体は、排ガス浄化用の触媒を担持させるための触媒基材であることを特徴とする(1)乃至(9)のうちいずれか一つに記載の加熱ユニット。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、個々の電気加熱式発熱体が設計上の電気抵抗値を満足しない場合であっても、加熱ユニットの目標電気抵抗値を満足させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
図1は、加熱ユニットの概略断面図である。
図1に示す白抜きの矢印は、排ガス(流体に相当する)の導通方向(加熱ユニットの軸方向)を示している。矢印の定義は、
図4、7及び8においても同様である。
図2は、第1触媒コンバータを軸方向から見た図である。本実施形態の加熱ユニット1は、排ガス浄化装置であり、車両の排ガス経路を形成する配管Xの内部に設置することができる。車両には、ガソリン自動車、ディーゼル自動車、ハイブリッド自動車が含まれる。
【0020】
加熱ユニット1は、第1触媒コンバータ2(第1電気加熱式発熱体に相当する)、第2触媒コンバータ3(第2電気加熱式発熱体に相当する)及び抵抗体5を含み、第1触媒コンバータ2及び第2触媒コンバータ3は抵抗体5を介して電気的及び機械的に接続されている。第1触媒コンバータ2は、平箔21及び波箔22を積層した積層シートを第1中心電極41周りに巻き回すことにより構成されている。つまり、第1触媒コンバータ2は、軸方向に延びるガス流路を多数備えたハニカム構造により構成されている。波箔22は、波の位相が変化しないストレート形状、軸方向に並ぶ波の位相が互いに異なるオフセット形状等により形成することができる。第1中心電極41は、上述のハニカム構造体の軸方向における両端部から突出している。
【0021】
平箔21及び波箔22には、耐熱合金からなる金属箔を用いることができる。耐熱合金は特に限定しないが、例えば、Fe−20Cr−5Al系ステンレス鋼を用いることができる。
【0022】
平箔21の両面には、絶縁層が形成されている。絶縁層は、例えば酸化被膜により形成することができる。この酸化被膜は、平箔21を加熱することにより形成することができる。すなわち、平箔21を加熱すると、平箔21に含まれる金属由来の酸化被膜が平箔21の表面に形成される。ただし、本発明はこれに限るものではなく、絶縁性材料を平箔21の表面に塗布することにより、絶縁層を形成してもよい。平箔21の両面に絶縁層を形成することにより、平箔21及び波箔22が短絡することを防止できる。なお、平箔21及び波箔22の間に絶縁シートを介在させたり、波箔22の両面に絶縁層を形成することにより、絶縁処理を施してもよい。
【0023】
波箔22の最外周部に位置する一端部22a(第1接続部に相当する)は、第1触媒コンバータ2から延出しており、この一端部22aには図示しない電源の正極端子(第1端子に相当する)が電気的に接続されている。つまり、波箔22の一端部22aは、加熱ユニット1の総プラス端子として機能する。電源には、車両走行用のバッテリや補機バッテリを用いることができる。波箔22の最内周部に位置する他端部22bは、第1中心電極41に対して電気的及び機械的に接続されている。なお、これらの一端部22a及び他端部22bに絶縁処理が施されていないことは言うまでもない。
【0024】
平箔21及び波箔22には、触媒が担持されている。触媒は、ウォッシュコート液(γアルミナと添加剤及び貴金属触媒を成分とする溶液)が貯留された触媒浴に平箔21及び波箔22を浸漬させることにより、平箔21及び波箔22に担持させることができる。なお、第1触媒コンバータ2は、図示しない外筒の内部に収められていてもよい。この点については、第2触媒コンバータ3も同様である。
【0025】
上述の構成おいて、電源から第1触媒コンバータ2に向かって電力を供給すると、波箔22に電流が流れ、第1触媒コンバータ2を発熱させることができる。これにより、平箔21及び波箔22に担持された触媒が活性化され、触媒による排ガス浄化作用を高めることができる。すなわち、各ガス流路に流入した排ガスが触媒に接触することにより、排ガスに含まれるCOガス、CHガス、NO
Xガスが無害化される。
【0026】
第2触媒コンバータ3は、平箔及び波箔を積層した積層シートを第2中心電極42周りに巻き回すことにより構成されている。すなわち、第2触媒コンバータ3は、第1触媒コンバータ2と概ね同一の構造により構成されている。「概ね」とは、平箔21及び波箔22の金属組成、箔幅、箔厚等にバラツキがあることを意味する。つまり、第1触媒コンバータ2及び第2触媒コンバータ3は、設計上の構造が同一である一方で、金属組成、箔幅、箔厚等にバラツキ(誤差)があるため、少なくとも一方の電気抵抗値が所望の電気抵抗値から乖離する場合がある。そのため、第1触媒コンバータ2及び第2触媒コンバータ3だけを直列に接続しても、設計上の電気抵抗値が得られない場合がある。そこで、本実施形態では、第1触媒コンバータ2及び第2触媒コンバータ3の間に抵抗体5を介在させることにより、加熱ユニット1の抵抗値を調整している。
【0027】
第2触媒コンバータ3の波箔の最外周部には、軸方向に延びる不図示の延出端部(第2接続部に相当する)が設けられており、この延出端部には前記電源の負極端子(第2端子に相当する)が電気的に接続されている。つまり、第2触媒コンバータ3の波箔の前記延出端部は、加熱ユニット1の総マイナス端子として機能する。
【0028】
次に、
図1乃至6を参照しながら、第1触媒コンバータ2及び第2触媒コンバータ3の間に設けられる抵抗体5について詳細に説明する。
図3は、抵抗体を軸方向から見た図である。
図4は、
図1において破線で示した領域Aの拡大図である。
図5は、
図2において破線で示した領域Bの拡大図である。
図6は、
図3において破線で示した領域Cの拡大図である。
【0029】
抵抗体5は、平箔21´及び波箔22´を積層した積層シートを、軸方向に延びる抵抗体中心電極52の周りに巻き回すことで構成されている。ここで、抵抗体5のうち抵抗体中心電極52以外の部分(つまり、捲回体の部分)をハニカム状抵抗体51と称するものとする。抵抗体5は、第1触媒コンバータ2及び第2触媒コンバータ3よりも小径に形成されており、電気抵抗値が第1触媒コンバータ2及び第2触媒コンバータ3のよりも小さくなっている。平箔21´及び波箔22´には、耐熱合金からなる金属箔を用いることができる。耐熱合金については、上述したから説明を繰り返さない。
【0030】
平箔21´の両面には、絶縁層が形成されている。絶縁層は、例えば酸化被膜により形成することができる。酸化被膜の形成方法は、上述したから説明を繰り返さない。平箔21´の両面に絶縁層を形成することにより、平箔21´及び波箔22´が電気的に短絡することを防止できる。ただし、平箔21´及び波箔22´の間に絶縁シートを介在させたり、波箔22´の両面に絶縁層を形成することにより、絶縁処理を施してもよい。なお、平箔21´及び波箔22´には、触媒が担持されていない。
【0031】
抵抗体中心電極52は、ハニカム状抵抗体51よりも長尺に形成されており、一端がハニカム状抵抗体51から突出し、他端がハニカム状抵抗体51の軸方向端部と面一になっている。ハニカム状抵抗体51と第1中心電極41との間には、第1絶縁リング61(第1絶縁板に相当する)が配置されている。これにより、第1触媒コンバータ2からハニカム状抵抗体51に直接電流が流れることを防止できる。第1絶縁リング61には、セラミックスを用いることができる。
【0032】
抵抗体中心電極52の前記突出部は、第1絶縁リング61の貫通穴部を貫通して、第1中心電極41の端部に形成された嵌合開口部41aに嵌合されている。これにより、第1中心電極41及び抵抗体中心電極52を電気的及び機械的に接続することができる。第1中心電極41の端部に形成された嵌合開口部41aに対して抵抗体中心電極52を嵌合するだけで、第1触媒コンバータ2及び抵抗体5を電気的に接続できるため、接続時の位置決めが容易となり、配線の引き回し作業などを省略することができる。
【0033】
抵抗体中心電極52には、波箔22´の最内周部が電気的及び機械的に接続されている。これにより、第1触媒コンバータ2から出力される電流を、抵抗体中心電極52を介して波箔22´に流すことができる。
【0034】
ここで、第1中心電極41及び第2中心電極42の外径をH1、抵抗体5の外径をH2としたときに、以下の条件式(1)を満足することが好ましい。
H2≦1.2H1・・・・・・・・・・・・(1)
抵抗体5の外径H2が第1中心電極41(第2中心電極42)の外径H1の1.2倍を超過すると、軸方向視において、抵抗体5が第1中心電極41(第2中心電極42)の外周面から大きく張り出すため、排ガスの流れが妨げられ、圧力損失が増大する。抵抗体5の外径H2を第1中心電極41(第2中心電極42)の外径H1の1.2倍以下に設定しておければ、圧力損失が過度に増大することを抑制できる。
【0035】
波箔22´の最外周部には、管状の延出部221が軸方向に延びて形成されている。すなわち、延出部221は、抵抗体中心電極52の径方向において第2中心電極42と向き合う位置まで延びており、第2中心電極42に対して電気的及び機械的に接続されている。抵抗体5及び第2触媒コンバータ3の電気的接続を行うタブ等が不要となるため、接続作業が容易であり、コストの増大も抑制することができる。なお、延出部221に絶縁処理が施されていないことは言うまでもない。
【0036】
延出部221の径方向内側には、第2絶縁板62が配置されている。この第2絶縁板62は、抵抗体5と第2中心電極42との間に介在しており、抵抗体5及び第2中心電極42の電気的な接続位置を延出部221のみに制限している。第2絶縁板62には、セラミックスを用いることができる。
【0037】
抵抗体5の電気抵抗値は、
図6に示す波箔22´の波高さT2及び巻き数を変更することにより調整できる。ここで、波箔22´の波高さT2を小さくするとともに巻き数を少なくすることにより、抵抗体5の径寸法の拡大を抑制しながら、容易に電気抵抗値を所望の値に設定することができる。具体的には、抵抗体中心電極52の外径をH3、第1触媒コンバータ2(第2触媒コンバータ3)の波箔22の波高さをT1(
図5参照)、抵抗体5の波箔22´の波高さをT2(
図6参照)としたとき、T2は0.5T1以上1.0T1以下に設定するのが好ましい。また、抵抗体5の波箔22´の巻き数をS2としたときに、以下の条件式を満足することが好ましい。
S2≦(0.6H1−0.5H3)/T2・・・・・・・・・(2)
これにより、抵抗体5の外径H2が第1中心電極41(第2中心電極42)の外径H1の1.2倍超になることを抑制しながら、抵抗体5の電気抵抗値を所望の値に設定することができる。
【0038】
次に、加熱ユニット1の電気抵抗値の設定方法について、説明する。本実施形態では、第1触媒コンバータ2及び第2触媒コンバータ3の夫々の電気抵抗値が、加熱ユニット1の目標電気抵抗値の1/2未満になるように製造しておき、不足する電気抵抗値を抵抗体5で補うという設計思想に基づき、加熱ユニット1を製造する。目標電気抵抗値は、加熱ユニット1が搭載される車両のサイズ等に応じて適宜設定することができる。
【0039】
ここで、第1触媒コンバータ2及び第2触媒コンバータ3は、径が抵抗体5よりも大きいため、製造誤差による電気抵抗値のバラツキが大きくなる。つまり、第1触媒コンバータ2及び第2触媒コンバータ3だけで、電気抵抗値の調整を行うことは容易でない。第1触媒コンバータ2及び第2触媒コンバータ3を構成する波箔22の板幅、箔厚等を厳密に制御できれば、抵抗体5がなくても加熱ユニットの抵抗値を目標電気抵抗値に設定することができるが、この方法では製造管理が煩雑となり、コストも増大する。本実施形態によれば、製造誤差による電気抵抗値のバラツキが相対的に小さい抵抗体5により、電気抵抗値を調整しているため、電気抵抗値の調整を容易に行うことができる。すなわち、抵抗体5は、第1触媒コンバータ2及び第2触媒コンバータ3よりも小径に形成されており、誤差の積み上げが少ないため、製造誤差による電気抵抗値のバラツキを相対的に小さくできる。
【0040】
ここで、本願発明の比較例として、抵抗体5を第2触媒コンバータ3の下段に設ける方法が考えられる。しかしながら、この方法では、第2触媒コンバータ3の波箔22における径方向外側端部と小径の抵抗体5とを電気的に接続する必要があるため、排ガス経路を横切って配線しなければならない。そのため、配線作業が煩雑化し、圧力損失を増大させるおそれがある。これに対して、本実施形態では、抵抗体5を第1触媒コンバータ2及び第2触媒コンバータ3の間に配置して、波箔22´の延出部221を第2中心電極42に接続することにより、抵抗体5及び第2触媒コンバータ3を電気的に接続しているため、配線が不要であり、圧力損失の増大も抑制することができる。
【0041】
図1乃至4を参照しながら、排ガス浄化時における加熱ユニット1の挙動について説明する。上述の構成において、電源を投下すると、第1触媒コンバータ2の一端部22aから波箔22に向かって電流が流れる。これにより、第1触媒コンバータ2が発熱する。電源を投下するタイミングは、例えば、エンジン始動時に設定することができる。エンジン始動時は、第1触媒コンバータ2及び第2触媒コンバータ3の温度が低いため、これらを加熱することにより、触媒を活性化する必要があるからである。
【0042】
波箔22に流入した電流は、第1中心電極41及び抵抗体中心電極52を介して抵抗体5の波箔22´に流入し、抵抗体5を発熱させる。抵抗体5が発熱すると、抵抗体中心電極52及び第1絶縁リング61を介して、抵抗体5の熱が第1中心電極41に伝熱し、第1触媒コンバータ2を加熱することができる。これにより、第1触媒コンバータ2に担持された触媒をより活性化することができる。同様に、抵抗体5が発熱すると、延出部221及び第2絶縁リング62を介して、抵抗体5の熱が第2中心電極42に伝熱し、第2触媒コンバータ3を加熱することができる。これにより、第2触媒コンバータ3に担持された触媒をより活性化することができる。
【0043】
抵抗体5の波箔22´に流入した電流は、延出部221を介して第2触媒コンバータ3の波箔22に流入し、第2触媒コンバータ3を発熱させる。これにより、第2触媒コンバー3に担持された触媒を活性化することができる。
【0044】
抵抗体のない加熱ユニット(比較例1)と、抵抗体を有する加熱ユニット(実施例1)との電気抵抗値をそれぞれ測定し、目標電気抵抗値を満足するかを調べた。目標電気抵抗値は、24〜25Ωに設定した。
【0045】
<比較例1>
第1触媒コンバータに用いられる金属箔として、厚さ50μmのYUS205−M1材を使用し、波箔の波高さを1.25mm、波ピッチを2.5mmとした。第1中心電極は直径10mm、軸方向長さ20mmとし、ハニカム構造体は直径68mm、軸方向長さ13mmとした。なお、上述の値は、設計値である。第2触媒コンバータは、第1触媒コンバータと同様の設計値に基づき製造した。なお、第1中心電極及び第2中心電極を互いに直接接続することにより、第1触媒コンバータ及び第2触媒コンバータを接続した。
【0046】
<実施例1>
第1触媒コンバータに用いられる金属箔として、厚さ50μmのYUS205−M1材を使用し、波箔の波高さを1.25mm、波ピッチを2.5mmとした。第1中心電極は、直径10mm、軸方向長さ17.5mmとし、ハニカム構造体は直径68mm、軸方向長さ13mmとした。なお、上述の値は、設計値である。第2触媒コンバータは、第1触媒コンバータと同様の設計値に基づき製造した。次に第1触媒コンバータ及び第2触媒コンバータの直列合成抵抗値を測定し、加熱ユニットの目標抵抗値との差分を算出した。次に抵抗体として、厚さ50μmの平箔と、波ピッチ1.66mmの波箔と、を積層した積層シートを、直径3mm、軸方向長さ10mmの抵抗体中心電極の周りに巻き回して、前記目標抵抗値との差分を設計値とする直径10mm、軸方向長さ5mmのハニカム状抵抗体を有する抵抗体を製造した。これらの第1触媒コンバータ、抵抗体及び第2触媒コンバータを接続して、上記実施形態の加熱ユニットを製造した。
【0047】
つまり、比較例1及び実施例1の加熱ユニットの搭載容積が互いに同じになるように、製造した。なお、搭載容積は、軸方向視における第1触媒コンバータ(第2触媒コンバータ)の最外周に囲まれた面積(円形の面積)に加熱ユニットの軸方向長さを乗じた値と定義した。
【0048】
比較例1及び実施例1の加熱ユニットを其々複数作成し、電気抵抗値に関する製造ばらつきを評価した。比較例1における加熱ユニットの電気抵抗値に関する製造ばらつきを示す標準偏差σ‘は目標抵抗値の2.5%であった。これに対して、実施例1における加熱ユニットの電気抵抗値の製造ばらつきを示す標準偏差σは、抵抗体により電気抵抗値が補正されたため、目標抵抗値の0.5%となり、全ての加熱ユニットが所望の電気抵抗値範囲(ここでは例として目標抵抗値を100%としたとき、±2.0%以下)を満足した。すなわち、本発明に係る加熱ユニットは、搭載容積が同じで、かつ、抵抗体を有しない従来の加熱ユニットと比べて、目標電気抵抗値が得られやすいことがわかった。
【0049】
(変形例1)
上述の実施形態では、抵抗体5をハニカム構造により構成したが、本発明はこれに限るものではなく、他の構造であってもよい。
図7は、本変形例1に係る抵抗体5´の概略図である。なお、上記実施形態と機能が共通する要素には、同一符号を付している。第1中心電極41と第2中心電極42との間には、これらと同一外径の棒状に形成された絶縁体7(絶縁性の棒状部材に相当する)が設けられている。絶縁体7の外面にはコイル状の抵抗体5´が巻き付けられており、抵抗体5´の一端は第1中心電極41に対して接続され、他端は第2中心電極42に対して接続されている。この抵抗体5´は、第1触媒コンバータ2、第2触媒コンバータ3よりも電気抵抗値が小さい。なお、コイル状の抵抗体5´に変えて、帯状に延びる板状の抵抗体5´を絶縁体7に巻き付ける構成であってもよい。抵抗体5´が導電性の材料によって構成されていることは言うまでもない。
【0050】
本変形例1では、抵抗体5´の巻き数を調整することにより、電気抵抗値を容易に調整することができる。第1触媒コンバータ2、第2触媒コンバータ3よりも電気抵抗値が小さい抵抗体5´により、加熱ユニット1の電気抵抗値を調整しているため、上記実施形態と同様に電気抵抗値の調整を容易に行うことができる。
【0051】
本変形例1によれば、第1中心電極41及び第2中心電極42と同一外径の絶縁体7に線状又は帯状の抵抗体5´を巻き付けているため、抵抗体5´が排ガス経路に大きく張り出すことがない。これにより、圧力損失の増大を抑制することができる。
【0052】
(変形例2)
上述の実施形態では、第1触媒コンバータ2、第2触媒コンバータ3及び抵抗体5に含まれる波箔を導電路として用いたが、本発明はこれに限るものではなく、平箔及び波箔の双方を導電路として用いてもよい。この構成によれば、第1触媒コンバータ2、第2触媒コンバータ3及び抵抗体5それぞれの導電路が並列になるため、波箔のみを導電路に設定した場合と比べて、金属箔の劣化等に起因する電気抵抗値の変動を抑制することができる。
【0053】
(変形例3)
上述の実施形態では、抵抗体5の抵抗体中心電極52を第1中心電極41に嵌合させたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、第1中心電極41の端面をフラットに形成し、ここに抵抗体中心電極52の端部を接合する構成であってよい。また、
図8に示すように、抵抗体5の軸中心に空洞部513を設けるとともに、この空洞部513に第1中心電極41の軸端部から突出する第1中心電極突出部411を嵌合する構成であってもよい。この場合、第1中心電極突出部411と抵抗体5の波箔とを接続することにより、第1触媒コンバータ2及び抵抗体5を電気的に接続することができる。
【0054】
(変形例4)
上述の実施形態では、ハニカム状抵抗体51の最外周箔を波箔22´によって構成したが、本発明はこれに限るものではなく、平箔21´によって構成してもよい。この場合、平箔21´の一部を延出して、この延出部を第2中心電極42に接合することができる。
【0055】
(変形例5)
上述の実施形態では、第1触媒コンバータ2から第2触媒コンバータ3に向かって排ガスが流れる構成であるが、本発明はこれに限るものではなく、第2触媒コンバータ3から第1触媒コンバータ2に向かって排ガスが流れる構成であってもよい。
【0056】
(変形例6)
上述の実施形態では、第1触媒コンバータ2から第2触媒コンバータ3に向かって電流を流したが、本発明はこれに限るものではなく、逆向きに電流を流してもよい。
【0057】
(変形例7)
上述の実施形態では、排ガス浄化に用いられる加熱装置について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、家庭用スチーム発生装置や水素改質装置に用いることもできる。この場合、加熱装置に触媒を担持させる必要はない。
【0058】
(変形例8)
図9は、変形例8に係る波箔の拡大図であり、
図5に対応している。上述の実施形態では、第1触媒コンバータ2(第2触媒コンバータ3)の波箔22の断面形状を台形状に形成したが、本発明はこれに限るものではなく、
図9に図示するようにサインカーブ状に形成してもよい。なお、抵抗体5の波箔22´についても同様にサインカーブ状に形成してもよい。