【解決手段】電子部品24が搭載される電子部品搭載領域Rを備えた底板22と、電子部品搭載領域Rを囲うように底板22の上に立設された枠体23と、枠体23の一部であって、電子部品24と電気的に接続される配線層32を有すると共に、底板22の法線方向nに延びる溝26bが外周側面26aに形成され、かつ溝26bの内面に配線層32の端面32aが位置する端子部26と、端子部26の側方から法線方向nに向かって屈曲し、該屈曲した部位を溝26bに嵌入して配線層32と電気的に接続されたリード27とを有する電子部品用パッケージ21による。
平面視において、前記スルーホールは、円形、又は前記切断線に垂直な方向を長軸とする楕円形であることを特徴とする請求項6に記載の電子部品用パッケージの製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本実施形態の説明に先立ち、本願発明者が検討した事項について説明する。
【0010】
図1は、検討に使用した電子部品用パッケージの斜視図である。
【0011】
この電子部品用パッケージ1は、底板2とその上に立設された枠体3とを有する。
【0012】
このうち、枠体3は、底板2の上に固着された電子部品4を囲う枠状の部材であって、前枠部5と端子部6とを備える。電子部品4の種類は特に限定されないが、光信号や高周波信号を送受信する通信用のデバイスを電子部品4として使用する。
【0013】
また、端子部6は、アルミナのグリーンシートと配線層との積層体を焼結してなり、複数のリード7が固定される。この例では、端子部6に各リード7を固定する部位を確保するために、各リード7の延在方向に突出した第1の突出部6aを端子部6に設ける。そして、その第1の突出部6aの上面に設けられた導電性の接続パッド15と各リード7とをロウ付けにより接続する。
【0014】
一方、前枠部5は、穴あけ加工が容易な金属を材料としており、開口部5aが形成される。その開口部5aを光信号や高周波信号が通ることで、これらの信号が電子部品4によって送受信されることになる。
【0015】
なお、枠体3の上には、電子部品4を封止する際のカバーが固着されるシールリング8が設けられる。
【0016】
図2は、この電子部品用パッケージ1の断面図である。
【0017】
図2に示すように、端子部6は、電子部品4に向かって突出した第2の突出部6bを有する。そして、底板2には電子部品4が搭載される電子部品搭載領域Rが画定されており、電子部品4と第2の突出部6bとがボンディングワイヤ11により接続される。
【0018】
このような電子部品用パッケージ1によれば、リード7に各種の信号を供給することにより、これらの信号が端子部6とボンディングワイヤ11とを介して電子部品4に供給され、電子部品4において光信号や高周波信号の送受信が行われる。
【0019】
次に、端子部6にリード7を固定する方法について説明する。
【0020】
図3は、端子部6の断面図である。
【0021】
端子部6は、アルミナを材料とする複数のグリーンシートを焼結してなり、その内部に配線層13を備える。また、第1の突出部6aと第2の突出部6bの各々の上面には、タングステンを材料とするボンディングパッド14と接続パッド15とが設けられる。
【0022】
これらのうち、ボンディングパッド14は、前述のボンディングワイヤ11に接続されるパッドである。そして、接続パッド15は、各リード7が接続されるパッドである。なお、これらのパッド14、15は、端子部6に埋め込まれたモリブデンを材料とする導電性ビア16によって配線層13に接続される。
【0023】
端子部6にリード7を固定するには、リード7の先端を銀ロウ等のロウ材9で接続パッド15に接続すればよい。この例では、第1の突出部6aがリード7を固定する土台となり、第1の突出部6aの上面にリード7を接続するエリアを広く確保できる。
【0024】
しかしながら、このように第1の突出部6aを設けると、その突出量ΔZだけ電子部品用パッケージ1が大きくなってしまい、電子部品用パッケージ1の小型化を図るのが困難となる。
【0025】
このような不都合を回避するために、以下のように端子部6に第1の突出部6aを設けないようにすることも考えられる。
【0026】
図4は、端子部6に第1の突出部6aを設けずに、端子部6の外周側面6cにリード7を接続した場合の断面図である。
【0027】
この場合は、外周側面6cに印刷法により導電層17を形成し、その導電層17にL字型のリード7をロウ材9で固定する。このような構造によれば、端子部6に第1の突出部6aを設けない分だけ電子部品用パッケージ1を小型化することができる。
【0028】
図5は、この場合の端子部6の側面図である。
【0029】
図5に示すように、外周側面6cには、各リード7と同じピッチで導電層17が複数形成される。
【0030】
しかしながら、表面積が小さい外周側面6cに印刷法で精度良く導電層17を形成するのは極めて難しく、隣接する導電層17同士が電気的に接続されてしまい、電子部品用パッケージ1の歩留まりが低下してしまう。
【0031】
以下、本実施形態について説明する。
【0032】
(本実施形態)
本実施形態では、通信用パッケージ等の電子部品用パッケージについて説明する。
【0033】
図6は、本実施形態に係る電子部品用パッケージの斜視図である。
【0034】
本実施形態に係る電子部品用パッケージ21は、底板22とその上に立設された枠体23とを有する。
【0035】
このうち、枠体23は、底板22の上に固着された電子部品24を囲う枠状の部材であって、前枠部25と端子部26とを備える。電子部品24の種類は特に限定されない。例えば、光信号や高周波信号を送受信する通信用のデバイスを電子部品24として使用し得る。
【0036】
また、端子部26は、絶縁性のセラミックスを含むグリーンシートと配線層との積層体を焼結してなり、複数のリード27が固定される端子台として機能する。グリーンシートを形成する絶縁性のセラミックスは特に限定されないが、この例ではそのセラミックスとしてアルミナを採用する。
【0037】
図1の例とは異なり、本実施形態では端子部26の外周側面26aに突出部を設けず、外周側面26aに形成された溝26bにL字型のリード27をロウ付けで固定する。
【0038】
リード27は、例えば直線状のリードの先端を折り曲げてL字状とされる。また、リード27は金属からなる。その金属として、例えば鉄−ニッケル合金や、鉄−ニッケル−コバルト合金等がある。
【0039】
一方、前枠部25は、端子部26よりも穴あけ加工が用意な金属の部材であって、開口部25aを有する。その開口部25aを光信号や高周波信号が通ることで、これらの信号が電子部品24によって送受信されることになる。
【0040】
なお、枠体23の上には、電子部品24を封止する際のカバーが固着されるシールリング29が設けられる。
【0041】
また、底板22、前枠部25、及びシールリング29はいずれも金属からなる。その金属として、例えば、鉄、銅、ニッケル、クロム、コバルト、モリブデン、及びタングステン等の単体の金属や、銅−タングステン合金、銅−モリブデン合金、及び鉄−ニッケル−コバルト合金等の合金がある。
【0042】
図7は、端子部26の側面図である。
【0043】
図7に示すように、溝26bは、間隔をおいて複数形成される。また、各々の溝26bは、底板22の法線方向nに沿って延びるように形成される。
【0044】
各部の寸法は特に限定されず、この例ではリード27の幅W1を0.15mm程度とし、溝26bの幅W2をこれよりも広い0.3mm程度とする。また、溝26bの長さLは、例えば1.5mm程度である。
【0045】
図8は、この電子部品用パッケージ21の断面図である。
【0046】
図8に示すように、端子部26は、電子部品24に向かって突出した突出部26cを有する。底板22には電子部品24が搭載される電子部品搭載領域Rが画定されており、電子部品24と突出部26cとがボンディングワイヤ31により相互に接続される。
【0047】
図9は、端子部26の断面図である。
【0048】
端子部26は、アルミナを材料とする複数のグリーンシートを積層して焼結してなる。そして、そのグリーンシートの層間に配線層32が形成されており、更に突出部26cの上面にはボンディングパッド33が設けられる。
【0049】
配線層32とボンディングパッド33は、いずれもタングステンを含む導電性ペーストを焼結してなる厚さが15μm〜30μm程度の導電層である。また、端子部26にはモリブデンを材料とする導電性ビア36が埋め込まれており、その導電性ビア36の上端36aがボンディングパッド33に接続され、かつ導電性ビア36の下端36bが配線層32に接続される。
【0050】
更に、溝26bの内面には配線層32の端面32aが位置する。また、溝26bの内面にはタングステン等の導体層35が形成されており、その導電層35と端面32aとが接続される。
【0051】
そして、リード27は、端子部26の側方から法線方向nに平行な方向に屈曲し、該屈曲した部位を溝26bに嵌入して固定される。固定の方法は特に限定されず、この例では銀ロウ等のロウ材28で溝26内の導電層35にリード27を固定し、これによりリード27と配線層32とを電気的に接続する。
【0052】
そのリード27に各種の信号を供給することにより、これらの信号が端子部26とボンディングワイヤ31を介して電子部品24に供給され、電子部品24において光信号や高周波信号の送受信が行われることになる。
【0053】
以上説明した本実施形態によれば、端子部26の外周側面26aに溝26bを形成し、その溝26bにリード27を嵌入する。これにより、
図1のような第1の突出部6aを設けなくても端子部26にリード27を安定的に固定でき、電子部品用パッケージ21の小型化が可能となる。
【0054】
しかも、外周側面26aに溝26bを設けたことで、ロウ材28が溝26bから溢れ出にくくなり、隣接するリード27同士がロウ材28を介して電気的にショートする危険性を低減できる。更に、リード27を固定するのに十分なメニスカスがロウ材28に形成されるようになり、端子部26にリード17を更に安定して固定することができる。
【0055】
また、ボンディングパッド33を横に延長して溝26bに表出させるのではなく、この例のように配線層32の端面32aを溝26bに位置させることで、領域Sに別の配線層を形成することも可能となる。しかも、配線層32の高さ位置を変えることで、溝26bにおける端面32aの高さを変えることもできるため、電子部品用パッケージ21の設計の自由度を広げることも可能となる。
【0056】
次に、本実施形態に係る電子部品用パッケージ21の製造方法について説明する。
【0057】
図10〜
図14は、本実施形態に係る電子部品用パッケージ21の製造途中の断面図であり、
図15〜
図17はその平面図である。また、
図18〜
図21は、本実施形態に係る電子部品用パッケージの製造途中の斜視図である。
【0058】
まず、
図10(a)に示すように、アルミナ紛体とバインダとを混練してなるスラリをシート状に成型し、それを所定の平面形状に整形することでグリーンシート41を形成する。
【0059】
図15は、そのグリーンシート41の全体平面図である。
【0060】
図15に示すように、グリーンシート41は概略矩形状であって、端子部26を切り出すときの単位となる製品領域Qを複数備える。
【0061】
次に、
図10(b)に示すように、パンチング加工によりグリーンシート41にビアホール41aを形成する。そして、モリブデンを含む導電性ペーストをビアホール41a内に充填し、その導電性ペーストを導電性ビア36とする。
【0062】
続いて、
図11(a)に示すように、グリーンシート41の表面に印刷法で配線層32を形成する。その配線層32として、例えばタングステンを含む導電性ペーストをグリーンシート41の表面に形成する。
【0063】
次に、
図11(b)に示すように、パンチング加工でグリーンシート41に開口部41bを形成することにより、枠体23の内側に相当する部分のグリーンシート41を除去する。また、これと同時に、配線層32に重なる部分のグリーンシート41にパンチング加工によりスルーホール41cを形成する。
【0064】
そして、タングステンを含む導電性ペーストをスルーホール41cの内面に印刷し、当該内面に導電層35を形成する。
【0065】
図16は、本工程を終了した後のグリーンシート41の全体平面図である。
【0066】
図16に示すように、開口部41bは平面視で矩形状であり、一部が製品領域Qからはみ出るように形成される。一方、スルーホール41cは平面視で楕円状の形状を有する。
【0067】
なお、スルーホール41cの形状は楕円状に限定されず、平面視で円形となるようにスルーホール41cを形成してもよい。
【0068】
続いて、
図12に示すように、複数のグリーンシート41を用意し、これらの各々の導電性ビア36やスルーホール41c同士を重ねる。そして、この状態で各グリーンシート41の各々を有機溶剤で接着し、各グリーンシート41の積層体49を得る。
【0069】
なお、これらのグリーンシート41のうち、最上層の導電性ビア36が形成されるグリーンシート41には、配線層32に代えてボンディングパッド33が形成される。
【0070】
次に、
図13に示すように、積層体49を1500℃程度の温度で焼結させることにより、各グリーンシート41同士を一体化させてなる端子部26を形成する。その焼結の後の各グリーンシート41の厚さは0.15mm程度となり、配線層32やボンディングパッド33の厚さは15μm〜30μm程度となる。
【0071】
そして、
図14に示すように、切断線Lに沿ってダイシングソーで端子部26の不要部分を切断し、端子部26を複数個に個片化する。
【0072】
その切断線Lはスルーホール41cを通るように設定されており、これによりスルーホール41cを切り欠いてなる溝26bを形成することができる。
【0073】
図17は、端子部26における切断線Lの位置を示す平面図である。
【0074】
図17の点線円内に示すように、この例では切断線Lに垂直な方向Mを長軸とする楕円形にスルーホール41cを形成する。これにより、ダイシングソーを当てる位置が方向Mに沿って多少ずれても、スルーホール41cにダイシングソーが当たる可能性が高まり、溝26bを確実に形成することができる。
【0075】
また、切断線Lは、矩形状の開口部41bに重なるようにも設定されるため、切断後の端子部26は平面視でコの字型となる。
【0076】
図18は、本工程で得られた端子部26の斜視図である。
【0077】
図18に示すように、端子部26の外周側面26aには複数の溝26bが形成される。
【0078】
これ以降の工程について、
図19〜
図21を参照しながら説明する。
図19〜
図21は、本実施形態に係る電子部品用パッケージの製造途中の斜視図である。
【0079】
まず、
図19に示すように、ロウ材等で端子部26に金属製の前枠部25を接合することにより枠体23を得る。その後、枠体23の表面の必要部分にニッケル層と金層とをこの順にめっき法で形成する。
【0080】
続いて、
図20に示すように、複数のリード27の各々の端部27x同士が接続されたリードフレーム41を用意し、複数のリード27の各々を複数の溝26bの各々に同時に嵌入する。
【0081】
図22は、本工程を終了したときの端子部26の断面図である。
図22に示すように、本工程では溝26bの内部に銀ロウ等のロウ材28が供給される。これにより、そのロウ材28によって導電層35にリード27が固定され、リード27と配線層32とが電気的に接続される。
【0082】
このとき、本実施形態のように複数のリード27の各々を同時に各溝26bに嵌入することにより、各リード27を個別に溝26bに嵌入する場合よりも短時間で本工程を終了することができる。
【0083】
次に、
図21に示すように、銅とタングステンとの合金を材料とする底板22とシールリング29の各々を枠体23にロウ付けする。その後に、各リード27の端部27xを切り落とし、
図6に示した本実施形態に係る電子部品用パッケージ21の基本構造を完成させる。
【0084】
以上説明した本実施形態に係る電子部品用パッケージの製造方法によれば、
図22に示したように、溝26bにリード27を固定する。これにより、溝26bの外にロウ材28が溢れ出にくくなり、隣接するリード27同士がロウ材28で電気的に短絡される危険性を低減できる。