【解決手段】拘束部材5は、全固体電池20の積層方向に対して交差する方向に延在する斜行部601aを備える。斜行部601aが弾性変形することにより、全固体電池20に積層方向から拘束力を加える。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の拘束部材および全固体電池アセンブリの実施の形態について説明する。
【0013】
(全固体電池アセンブリの構成)
まず、本実施形態の全固体電池アセンブリの構成について説明する。
図1に、本実施形態の全固体電池アセンブリの斜視図を示す。
図2に、同全固体電池アセンブリの分解斜視図を示す。
図3に、同全固体電池アセンブリの上面図を示す。
【0014】
図1〜
図3に示すように、全固体電池アセンブリ1は、電池スタック2と、拘束治具3と、を備えている。なお、
図3においては、拘束部材5にハッチングを施す。電池スタック2は、複数の全固体電池(電池セル)20を備えている。複数の全固体電池20は、左右方向(積層方向)に積層されている。全固体電池20は、全固体リチウムイオン二次電池である。
図3に示すように、全固体電池20は、Al合金の箔からなる正極集電体200と、LiCoO
2を含む正極層201と、Li
7P
3S
11製の固体電解質層202と、黒鉛を含む負極層203と、Cu製の負極集電体204と、Al−Mn合金製の電池ケース205と、を備えている。正極集電体200、正極層201、固体電解質層202、負極層203、負極集電体204は、各々、固体である。正極集電体200、正極層201、固体電解質層202、負極層203、負極集電体204は、この順で、左側から右側に向かって積層されている。正極集電体200、正極層201、固体電解質層202、負極層203、負極集電体204は、電池ケース205に収容されている。
【0015】
拘束治具3は、左右一対の端板4と、上下一対の拘束部材5と、12本のボルト8と、を備えている。端板4は、ステンレス鋼製であって平板状を呈している。端板4には、6つの固定孔40が形成されている。一対の端板4は、電池スタック2の左右方向両側に配置されている。
【0016】
拘束部材5は、ばね鋼(SUP10)製であって、板状を呈している。上下一対の拘束部材5のうち、上側の拘束部材5は、部材本体6と、左右一対の係止部7と、を備えている。部材本体6は、電池スタック2の上側(面方向外側)に配置されている。部材本体6は、平板状を呈している。部材本体6は、複数の波状部60と、左端部61と、右端部62と、を備えている。左端部61は、本発明の「第一端部」の概念に含まれる。右端部62は、本発明の「第二端部」の概念に含まれる。波状部60は、前後方向に蛇行しながら(うねりながら)、左右方向に延在する波線状を呈している。複数の波状部60は、所定間隔ずつ離間して、前後方向に並置されている。複数の波状部60は、互いの波形が揃う向きに並置されている。
【0017】
図4に、
図3の枠IV内の拡大図を示す。
図4に示すように、波状部60は、複数の頂部600と、複数の連結部601と、を備えている。複数の頂部600と複数の連結部601とは、交互に連なっている。上側から見て、頂部600の湾曲内縁600aは、曲率半径Rが一定の曲線状(部分円弧状)を呈している。上側から見て、頂部600の湾曲外縁600bは、左右方向に延在する直線状を呈している。ここで、頂部600を挟んで左右方向に隣り合う一対の連結部601の外縁の延長線同士の交点を、仮想頂点Pとする。湾曲外縁600bは、仮想頂点Pから振幅A内側にカット幅Cだけシフトした位置に配置されている。左右方向に隣り合う一対の頂部600は、前後方向に互いにずれて配置されている。連結部601は、左右方向に隣り合う一対の頂部600同士を連結している。連結部601は、斜行部601aを備えている。上側から見て、斜行部601aは、左右方向および前後方向に対して交差する方向に延在する、直線状を呈している。
図3に示すように、左端部61は、前後方向に延在する直線状を呈している。左端部61は、複数の波状部60の左端(積層方向一端)同士を連結している。右端部62は、前後方向に延在する直線状を呈している。右端部62は、複数の波状部60の左端(積層方向他端)同士を連結している。
【0018】
図2に示すように、係止部7は、平板状を呈している。係止部7には、3つの貫通孔70が開設されている。左右一対の係止部7のうち、左側の係止部7は、左端部61から下側に屈曲して延在している。左側の係止部7の右面(積層方向内面)は、左側の端板4の左面(積層方向外面)に当接している。係止部7の3つの貫通孔70と、端板4の6つの固定孔40のうち上側の3つの固定孔40と、は左右方向に連なっている。ボルト8は、拘束部材5を端板4に固定する「固定部材」である。ボルト8は、貫通孔70に挿通され、固定孔40に固定(ねじ止め)されている。右側の係止部7は、右端部62から下側に屈曲して延在している。左側の係止部7同様に、右側の係止部7の左面(積層方向内面)は、右側の端板4の右面(積層方向外面)に当接している。ボルト8は、貫通孔70に挿通され、固定孔40に固定(ねじ止め)されている。
【0019】
下側の拘束部材5の材質は、上述した上側の拘束部材5の材質と同じである。下側の拘束部材5の形状、配置は、上側の拘束部材5の形状、配置と上下対称である。ここでは説明を割愛する。
【0020】
(拘束部材の製造方法)
次に、本実施形態の拘束部材の製造方法について簡単に説明する。拘束部材5の製造方法は、打ち抜き工程と、屈曲工程と、を有している。打ち抜き工程においては、ばね鋼製の平板状の鋼板に打ち抜き加工を施すことにより、部材本体6の複数の波状部60、左端部61、右端部62を形成する。並びに、係止部7の3つの貫通孔70を形成する。屈曲工程においては、平板状の鋼板に曲げ加工を施すことにより、部材本体6の左右方向両端から、左右一対の係止部7を立ち上がらせる。このようにして、拘束部材5は製造される。
【0021】
(全固体電池アセンブリの動き)
次に、本実施形態の全固体電池アセンブリの動きについて説明する。以下、電池スタック2に拘束治具3を組み付ける前の状態を「無荷重状態」と、電池スタック2に拘束治具3を組み付けた後の状態であって電池スタック2の完全放電状態を「放電状態」と、電池スタック2に拘束治具3を組み付けた後の状態であって電池スタック2の満充電状態を「充電状態」とする。
【0022】
図5(A)に無荷重状態における上側の拘束部材の上面図を示す。
図5(B)に放電状態における全固体電池アセンブリの上面図を示す。
図5(C)に充電状態における全固体電池アセンブリの上面図を示す。なお、
図5(A)に示す無荷重状態における拘束治具3の左右一対の端板4内面間の距離をL0と、
図5(B)に示す放電状態における電池スタック2の左右方向長さをL1と、
図5(C)に示す充電状態における電池スタック2の左右方向長さをL2とする。また、
図5(A)〜
図5(C)においては、電池スタック2、拘束部材5の変形を誇張して示す。
【0023】
図5(A)に示すように、無荷重状態においては、拘束部材5に荷重が加わっていない。このため、拘束部材5は弾性変形していない。
図5(A)、
図5(B)に示すように、長さL1は距離L0よりも大きい。このため、電池スタック2に拘束治具3を組み付ける場合は、拘束部材5に左右方向両側から荷重F1を加え、拘束部材5を伸張量ΔL10(=L1−L0)だけ左右方向に弾性的に伸張させる。したがって、放電状態(全固体電池アセンブリ1が停止している停止状態も同様)において、電池スタック2は、拘束治具3から、拘束力(荷重F1の反力。左右方向両側からの圧縮力)を受けている。
【0024】
充電状態においては、正極層201から負極層203へのリチウムイオンの移動に伴い、負極層203が左右方向に膨張する。このため、
図5(B)、
図5(C)に示すように、長さL2は長さL1よりも大きくなる。したがって、充電状態においては、電池スタック2から拘束部材5に荷重F2が加わり、拘束部材5が伸張量ΔL21(=L2−L1)だけ左右方向に弾性的に伸張する。よって、充電状態において、電池スタック2は、拘束治具3から、拘束力(荷重F2の反力。左右方向両側からの圧縮力)を受けている。
【0025】
このように、拘束部材5は、左右方向に弾性変形可能である。拘束部材5の弾性変形は、主に、
図4に示す波状部60の弾性変形に起因している。
図4に示すように、拘束部材5に対して左右方向外向きに荷重F(
図5(B)のF1、
図5(C)のF2に対応)が加わる場合(例えば、
図5(A)→
図5(B)、
図5(B)→
図5(C))、斜行部601aは左右方向に倣うように弾性変形する。このため、
図4に示す斜行部601aの傾斜角度θ(詳しくは、左右方向に対する斜行部601aの傾斜角度θ)は小さくなる。したがって、波状部60の波長λは大きくなる。他方、波状部60の振幅Aは小さくなる。このようにして、波状部60つまり拘束部材5は、左右方向外向きに弾性的に伸張する。なお、拘束部材5が伸張すると、頂部600の湾曲内縁600aには引張荷重f1が、湾曲外縁600bには圧縮荷重f2が、各々加わる。
【0026】
伸張後の拘束部材5には、左右方向内向きの弾性復元力(荷重F1、F2の反力)が蓄積されている。充電後の電池スタック2を放電させる場合(
図5(C)→
図5(B))や電池スタック2から拘束治具3を取り外す場合(
図5(B)→
図5(A))、斜行部601aは前後方向に倣うように弾性変形する。このため、
図4に示す斜行部601aの傾斜角度θは大きくなる。したがって、波状部60の波長λは小さくなる。他方、波状部60の振幅Aは大きくなる。このようにして、波状部60つまり拘束部材5は、左右方向内向きに弾性的に収縮する。
【0027】
(作用効果)
次に、本実施形態の拘束部材および全固体電池アセンブリの作用効果について説明する。
図4に示すように、本実施形態の拘束部材5および全固体電池アセンブリ1によると、斜行部601aの弾性変形に起因する弾性復元力(荷重Fの反力)を利用して、全固体電池20に拘束力を加えることができる。このため、左右方向(積層方向)に隣り合う部材同士(例えば、
図3に示すように、左右方向に隣り合う一対の全固体電池20同士や、任意の全固体電池20を構成する複数の層同士(詳しくは、正極集電体200、正極層201、固体電解質層202、負極層203、負極集電体204のうち、左右方向に隣り合う一対の層同士))の接触を確保することができる。
【0028】
図5(B)、
図5(C)に示すように、充電時においては、斜行部601aが、「左右方向に対して交差する方向」から「左右方向」に近づくように、言い換えると左右方向に倣うように、弾性変形する。この際、前記した従来技術のタイロッドに比べ、弾性変形量を大きく確保することができる。このため、本実施形態の拘束部材5および全固体電池アセンブリ1は、全固体電池20の膨張に追従して、弾性的に伸張することができる。したがって、充電時における全固体電池20の膨張を規制しにくい。
【0029】
図2に示すように、拘束部材5は、全固体電池20の上下方向(面方向)外側に配置されている。
図3、
図4に示すように、拘束部材5は、複数の斜行部601aを有し左右方向に延在する複数の波状部60と、複数の波状部60の左端同士を連結する左端部61と、複数の波状部60の右端同士を連結する右端部62と、を備えている。すなわち、拘束部材5は、左端部61と右端部62との間に、複数のばね部(波状部60)が並列接続された、伸縮構造を呈している。このため、任意の波状部60の振幅A、波長λ、波数(複数でも、単一でも、単一未満(1/2、1/4など)でもよい)、横断面積(波状部60の延在方向に対して直交する方向の断面積)などを調整することにより、波状部60の左右方向の剛性を調整することができる。また、左端部61と右端部62との間における波状部60の並置数を調整することにより、拘束部材5の左右方向の剛性を調整することができる。
【0030】
また、
図5(A)に示す無荷重状態における斜行部601aの延在方向により、拘束部材5の左右方向の弾性変形量、左端部61と右端部62との間における波状部60の並置数などを調整することができる。例えば、
図4に示す傾斜角度θを大きくすることにより、左右方向の弾性変形量を大きくすることができる。また、傾斜角度θを小さくすることにより、波状部60の並置数を多くすることができる。
【0031】
図3に示すように、複数の波状部60同士は、互いの波形が揃う方向に並置される。このため、前後方向に隣り合う一対の波状部60間の間隔を狭くすることができる。したがって、拘束部材5における波状部60の配置密度を大きくすることができる。
【0032】
図4に示すように、波状部60は、振幅Aの両端に配置される一対の頂部600と、一対の頂部600同士を連結し斜行部601aを有する連結部601と、を備えている。頂部の湾曲内縁600aは曲線状を呈している。このため、波状部60が弾性的に伸張する際(
図5(A)→
図5(B)、
図5(B)→
図5(C))の頂部600への応力集中を緩和することができる。頂部600の湾曲外縁600bは左右方向に延在する直線状を呈している。このため、前後方向に隣り合う一対の波状部60間の間隔を狭くすることができる。したがって、拘束部材5における波状部60の配置密度を大きくすることができる。
【0033】
図2に示すように、前記方法で製造した拘束部材5は、一枚の金属板製である。すなわち、拘束部材5は一体物である。このため、拘束部材5が複数の部材の合体物である場合と比較して、拘束部材5の部品点数が少なくなる。また、一体物の拘束部材5は、接合部(溶接部、接着部、締結部、係合部など)を有していないため、所望の剛性を確保しやすい。また、拘束部材5の製造方法は、打ち抜き工程を有している。このため、一枚の金属板に、所望の形状の波状部60を、簡単に配置することができる。したがって、拘束部材5の生産性が高い。
【0034】
(その他)
以上、本発明の拘束部材および全固体電池アセンブリの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0035】
本発明の拘束部材5は、前記の通り打ち抜きで加工することで、一体物として生産性良く製造しても良いが、複数の波状部60を別々に製造した後、複数の波状部60と左端部61と右端部62とをボルト等の固定部材で固定することにより、製造することもできる。すなわち、拘束部材5は、複数の部材の合体物であってもよい。大きな弾性変形量を確保するのに適切な波状部60の形状を有している限り、上記実施形態の拘束部材5と同様の効果を得ることができるからである。
【0036】
図6(A)〜
図6(C)に、その他の実施形態(その1〜その3)の全固体電池アセンブリの上面図を示す。なお、
図5(B)と対応する部位については、同じ符号で示す。
図6(A)〜
図6(C)に示すのは、いずれも放電状態である。
【0037】
図6(A)に示すように、その他の実施形態(その1)の全固体電池アセンブリ1の拘束部材5の部材本体6は、面状格子部63と、左端部61と、右端部62と、を備えている。面状格子部63は、格子状を呈している。面状格子部63は、複数の単位格子630を備えている。複数の単位格子630は、左右方向および前後方向に互いに連なっている。
【0038】
電池スタック2が左右方向に膨張する場合、面状格子部63は、左右方向に伸張し、前後方向に収縮する。電池スタック2が左右方向に収縮する場合、面状格子部63は、左右方向に収縮し、前後方向に伸張する。このように、面状格子部63は、電池スタック2の膨張、収縮に応じて、弾性変形可能である。本実施形態の拘束部材5によると、
図5(B)に示す拘束部材5と比較して、面状格子部63の弾性変形が規制されやすい。このため、左右方向の剛性を高くすることができる。
【0039】
図6(B)に示すように、その他の実施形態(その2)の全固体電池アセンブリ1の拘束部材5の部材本体6は、複数の線状格子部64と、左端部61と、右端部62と、を備えている。線状格子部64は、本発明の「ばね部」の概念に含まれる。線状格子部64は、複数の単位格子640を備えている。複数の単位格子640は、左右方向に互いに連なっている。複数の単位格子640は、前後方向に互いに独立している。
【0040】
電池スタック2が左右方向に膨張する場合、線状格子部64は、左右方向に伸張し、前後方向に収縮する。電池スタック2が左右方向に収縮する場合、線状格子部64は、左右方向に収縮し、前後方向に伸張する。このように、線状格子部64は、電池スタック2の膨張、収縮に応じて、弾性変形可能である。本実施形態の拘束部材5によると、
図6(A)に示す拘束部材5と比較して、線状格子部64の弾性変形が規制されにくい。このため、左右方向の剛性を低くすることができる。
【0041】
図6(C)に示すように、その他の実施形態(その3)の全固体電池アセンブリ1の拘束部材5の部材本体6は、複数の波状部60と、左端部61と、右端部62と、を備えている。複数の波状部60は、前後方向に互いに独立している。
【0042】
電池スタック2が左右方向に膨張する場合、波状部60は、左右方向に伸張し、前後方向に収縮する。電池スタック2が左右方向に収縮する場合、波状部60は、左右方向に収縮し、前後方向に伸張する。このように、波状部60は、電池スタック2の膨張、収縮に応じて、弾性変形可能である。本実施形態の拘束部材5によると、
図6(B)に示す拘束部材5と比較して、波状部60(
図6(B)の線状格子部64に対応)の弾性変形が規制されにくい。このため、左右方向の剛性を低くすることができる。また、
図5(B)に示す拘束部材5と比較して、波状部60の配置密度が小さい。このため、左右方向の剛性を低くすることができる。
【0043】
図5(C)に示すように、充電時の電池スタック2の長さL2は、充電状態(満充電状態)において最大になる。このため、充電状態において、斜行部601aは左右方向に延在していてもよい。また、
図5(A)に示す無荷重状態における斜行部601aの形状を、
図5(C)に示す充電状態における電池スタック2の長さL2に応じて、設計してもよい。
【0044】
波状部60の形状は特に限定しない。正弦波状、矩形波状、三角波状などであってもよい。振幅Aの方向は、前後方向および上下方向(面方向)のうち、少なくとも一方を含む方向であればよい。例えば、波状部60は、上下方向に蛇行しながら、左右方向に延在していてもよい。こうすると、拘束部材5における波状部60の配置密度を大きくすることができる。
【0045】
頂部600の形状は特に限定しない。湾曲内縁600aは、曲線状であっても、折れ線状(複数の直線が連なる形状)であってもよい。曲線状の場合、その曲率半径Rは、一定であっても、一定でなくてもよい。湾曲外縁600bについても同様である。また、湾曲内縁600aの形状と湾曲外縁600bの形状とは、一致していても、相違していてもよい。斜行部601aの形状は特に限定しない。直線状、曲線状などであってもよい。斜行部601aが曲線状(C字状、S字状など)の場合、その曲率は、一定であっても、一定でなくてもよい。
【0046】
電池スタック2に対する拘束部材5の配置数は特に限定しない。電池スタック2の全ての側面(上面、下面、前面、後面)に、拘束部材5の部材本体6を配置してもよい。電池スタック2の形状、大きさ、配置方向は特に限定しない。複数の全固体電池20の積層方向が上下方向であってもよい。電池スタック2における全固体電池20の積層数は特に限定しない。単一であっても、複数であってもよい。端板4に対する拘束部材5の固定方法は特に限定しない。ボルト8による締結、接着、溶接などであってもよい。拘束部材5の製造方法(
図5(B)、
図6(C)に示す波状部60、
図6(A)に示す面状格子部63、
図6(B)に示す線状格子部64の形成方法)は特に限定しない。打ち抜き加工やレーザ加工を用いてもよい。打ち抜き加工の場合、複数枚の金属板を積層配置し、打ち抜き加工を施してもよい。こうすると、複数の拘束部材5に、一度に波状部60、面状格子部63、線状格子部64を形成することができる。また、打ち抜き加工時に金属板が変形しにくいため、波状部60、面状格子部63、線状格子部64の形状精度を高くすることができる。
【0047】
拘束部材5の材質は特に限定しないが、所定以上の拘束力を確保しつつ大きな弾性変形量が得られることが本発明の効果を得る上で好ましい。また、大量生産するには、コスト面で安価なことも要求される。以上の点を考慮すると、他の材質に比べ安価な鉄鋼材料の中でも、特に高い耐力を確保可能なばね鋼が最も適していると考えられる。ばね鋼は、焼入れ焼もどしにより高い耐力を確保するため、JISのばね鋼に限定されることなく成分の最適化を行うと共に焼もどし温度の調整により、より高い耐力が得られる条件に調整して、拘束部材を製造することが好ましい。また、端板4は、拘束力を負荷できさえすれば良く、特に材質は限定されない。前記したステンレス鋼以外に、鋼材全般(普通鋼、高張力鋼、ばね鋼等)の使用が可能である。
【0048】
正極集電体200の材質は特に限定しないが、成形性、耐食性の観点から考えると、AlまたはAl合金の箔を使用するのが好ましい。正極層201の材質は特に限定しない。例えば、LiCoO
2、LiNiO
2、LIMn
2O
4などであってもよい。固体電解質層202の材質は特に限定しない。例えば、無機硫化物(Li
7P
3S
11)等の無機固体電解質材料であってもよい。負極層203の材質は特に限定しない。例えば、黒鉛、Li
4Ti
5O
12などであってもよい。負極集電体204の材質は特に限定しない。例えば、Cu、Cu合金などであってもよい。電池ケースの材質は特に限定しない。例えば、ステンレス鋼などであってもよい。
【0049】
電池スタック2の膨張、収縮の原因(例えば、充電、放電、停止、環境温度変化など)は特に限定しない。電池スタック2の膨張、収縮の原因によらず、拘束部材5は、電池スタック2の変形に追従して弾性変形することができる。拘束部材5および全固体電池アセンブリ1の用途は特に限定しない。自動車、航空機、船舶、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、携帯端末などに用いてもよい。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の拘束部材に対して行ったCAE(Computer Aided Engineering)解析について説明する。
【0051】
(解析モデル)
解析モデルとしては、
図1〜
図5(C)に示す拘束部材5(実施例1〜5)の左半分部分(
図5(A)に示すL/2部分)、および従来の拘束部材(比較例)を用いた。比較例は、中実の平板である。サンプル(実施例1〜5、比較例)の材質は、ヤング率205.8GPa、ポアソン比0.3の高張力鋼である。解析ソフトとしては、有限要素解析ソフトウェアであるAbaqus(ダッソー・システムズ社製)を用いた。
【0052】
表1に、各サンプルの寸法を示す。なお、
図5(A)に示すように、拘束部材5の左右方向長さをL、拘束部材5の前後方向幅をWとする。また、拘束部材5の上下方向板厚をTとする。また、
図4に示すように、斜行部601aの短手方向幅をWS、仮想頂点Pから湾曲外縁600bまでのカット幅をC、波状部60の振幅をA、斜行部601aの長さをLS、湾曲内縁600aの曲率半径をRとする。
【表1】
【0053】
表1に示すように、全サンプルの左右方向長さL、前後方向幅W、上下方向板厚Tは一致している。実施例1〜5の斜行部601aの短手方向幅WS、仮想頂点Pから湾曲外縁600bまでのカット幅Cは一致している。
【0054】
解析においては、
図5(A)〜
図5(C)に示す拘束部材5の弾性変形を想定し、各サンプルに、左右方向両側から所定の引張荷重を加えた。なお、荷重値は、
図2に示す係止部7に加わる面圧(言い換えると、係止部7から電池スタック2に加わる拘束圧力)350MPaに相当する値とした。また、各サンプルの変形方向は、左右方向のみとした。
【0055】
図7に、解析結果をグラフで示す。縦軸に拘束部材5の最大主応力を、横軸に拘束部材5の左右方向片側(左側または右側)の伸びを、各々示す。なお、縦軸の「最大主応力」とは、せん断応力が0になる座標系を基準としたときの垂直応力3成分のうち最大のものをいう。また、横軸は、解析モデルの左右方向長さ(
図5(A)に示すL/2)を100%とした場合の、伸びである。
図7に点線で示すように、ばね鋼(SUP10)の0.2%耐力(0.2%の永久歪みが表れる点)は、1530MPaである。
【0056】
図7に示すように、実施例1〜5の方が、比較例よりも、剛性が低いことが判った。また、任意の最大主応力における伸びを比較すると、実施例1〜5の方が、比較例よりも、よく伸張することが判った。また、任意の伸びにおける最大主応力を比較すると、実施例1〜5の方が、比較例よりも、最大主応力が小さいことが判った。
【0057】
比較例の場合、0.18%程度の伸びで、0.2%耐力(1530MPa)に到達してしまい、除荷後に塑性変形が残留してしまう。これに対して、実施例1〜5の場合、最小でも1.14%程度伸びないと、0.2%耐力に到達しない。特に、実施例3の場合、3.43%程度伸びないと、0.2%耐力に到達しない。このように、実施例1〜5の方が、比較例よりも、弾性変形領域が広い。したがって、実施例1〜5によると、電池スタック2の状態によらず、継続的に全固体電池20に拘束力を加えることができる。また、全固体電池20の膨張に追従して、弾性的に伸張することができる。