【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・2017年度日本冷凍空調学会年次大会講演論文集CD(F113−1〜F113−6)発行日 平成29年9月26日 ・2017年度日本冷凍空調学会年次大会 開催日 平成29年9月27日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「再生可能エネルギー熱利用技術開発/地中熱利用トータルシステムの高効率化技術開発及び規格化、および再生可能エネルギー熱利用のポテンシャル評価技術の開発/低コスト・高効率を実現する間接型地中熱利用熱回収ヒートポンプシステムの開発と地理地盤情報を利用した設計・性能予測シミュレーションツール・ポテンシャル評価システムの開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【解決手段】配管系統13は、第1配管21と、第1配管21を通過した熱媒を複数のヒートポンプ12それぞれに供給する複数の第2配管22と、複数のヒートポンプ12それぞれを通過した熱媒が供給される複数の第3配管23と、複数の第3配管23それぞれを通過した熱媒が供給される複数の第4配管24および複数の第5配管25と、複数の第4配管24それぞれを通過した熱媒を合流させて第1配管21に供給する第6配管26と、複数の第5配管25それぞれを通過した熱媒を合流させて地中熱交換器11に供給する第7配管27と、地中熱交換器11を通過した熱媒を第1配管21に供給する第8配管28と、を備え、流量調整部17は、第4配管24および第5配管25への第3配管23からの熱媒の流量を調整する。
前記制御部は、前記複数のヒートポンプのうち、冷房を行い前記熱媒へ放熱運転している前記ヒートポンプにおける放熱量の合計値である合計放熱量と、暖房を行い前記熱媒から採熱運転している前記ヒートポンプにおける採熱量の合計値である合計採熱量と、の比較結果に基づいて、前記流量調整部を制御する第1工程を実施し、
前記制御部は、前記第1工程で、
前記合計放熱量の絶対値が前記合計採熱量の絶対値よりも高い場合には、前記採熱運転の前記ヒートポンプを通過した前記熱媒の全量を前記第4配管に供給しつつ、前記放熱運転の前記ヒートポンプを通過した前記熱媒の前記第4配管および前記第5配管への供給量を制御する第2工程を実施し、
前記合計採熱量の絶対値が前記合計放熱量の絶対値よりも高い場合には、前記放熱運転の前記ヒートポンプを通過した前記熱媒の全量を前記第4配管に供給しつつ、前記採熱運転の前記ヒートポンプを通過した前記熱媒の前記第4配管および前記第5配管への供給量を制御する第3工程を実施し、
前記制御部は、前記第2工程および前記第3工程のいずれの工程においても、前記第6配管における前記熱媒の温度と、前記第8配管における前記熱媒の温度と、が同等になるように、前記供給量を制御する請求項2に記載の地中熱利用熱回収ヒートポンプシステム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1から
図10を参照し、本発明の一実施形態に係る地中熱利用熱回収ヒートポンプシステムを説明する。なお本実施形態では、「地中熱利用熱回収ヒートポンプ」を「HR−GSHP」ということがある。「地中熱ヒートポンプ」を「GSHP」や「ヒートポンプ」ということがある。「地中熱交換器」を「GHEX」ということがある。
【0010】
図1に制御対象となるHR−GSHPシステム10の構成を示す。制御対象となるHR−GSHPシステム10は、用途の異なる複数種類のGSHP12(熱源機)と、システムの各点の計測、構成機器の運転制御を行うプログラマブルコントローラー(PLC15)と、で構成される。
【0011】
[HR−GSHPシステムの構成]
図1に示すように、地中熱利用熱回収ヒートポンプシステム(HR−GSHPシステム10)は、負荷対象1の負荷(熱負荷)を賄う。HR−GSHPシステム10は、地中熱交換器(GHEX11)と、GHEX11との間で熱媒を循環させる複数のヒートポンプ(GSHP12)と、GHEX11と複数のGSHP12とを接続する配管系統13と、HR−GSHPシステム10(GSHP12)を制御する制御部14と、を備えている。制御部14は、例えば、前述のPLC15と、コンピュータに実装されPLC15に制御用パラメータを送るソフトウエア16と、により構成することができる。HR−GSHPシステム10は、負荷対象1に対して温熱や冷熱を供給する。
【0012】
図2に示すように、GSHP12は、GHEX11(GHEX11)との間で熱媒を循環させることで、熱媒の温度を調整する。
配管系統13は、熱媒が通過する第1配管21から第8配管28を備えている。第2配管22から第5配管25は、それぞれ複数設けられている。
複数の第2配管22は、第1配管21を通過した熱媒を複数のGSHP12それぞれに供給する。第2配管22には、温度計31が設けられている。
【0013】
第3配管23から第5配管25は、複数のGSHP12それぞれを通過した熱媒が供給される。
第3配管23は、各GSHP12に直結され、GSHP12を通過した熱媒が直接供給される。第3配管23には、ポンプ32、温度計31、流量計33が設けられている。
第4配管24および第5配管25は、第3配管23を介してGSHP12に接続されており、GSHP12を通過した熱媒が間接的に供給される。
【0014】
第4配管24は、第6配管26に接続され、第5配管25は、第7配管27に接続されている。第4配管24および第5配管25には、流量調整弁34が設けられている。流量調整弁34は、配管系統13における熱媒の流量を調整する流量調整部17を形成している。
【0015】
第6配管26は、複数の第4配管24それぞれを通過した熱媒を合流させて第1配管21に供給する。第6配管26は、温度が異なる熱媒を混合して直接熱回収する配管である。言い換えると、第6配管26は、複数の第4配管24が合流し、第1配管21に接続されるまでの冷房温排熱と暖房冷排熱とを相互排熱回収を行い、直接熱回収を行う配管である。第6配管26には、温度計31が設けられている。
【0016】
第7配管27は、複数の第5配管25それぞれを通過した熱媒を合流させてGHEX11に供給する。第7配管27には、温度計31、流量計33および第1ヘッダー35が、上流側(第5配管25側)から下流側(GHEX11側)に向けてこの順に設けられている。
第8配管28は、GHEX11を通過した熱媒を第1配管21に供給する。第8配管28には、第2ヘッダー36および温度計31が、上流側(GHEX11側)から下流側(第1配管21側)に向けてこの順に設けられている。
【0017】
第7配管27および第8配管28は、複数のGSHP12からの熱媒が合流した後、GHEX11に送り込む配管、およびGHEX11の出口から第1配管21と合流するまでの、地中と熱交換を行い、間接熱回収を行う配管である。
第1配管21は、上述した直接熱回収および間接熱回収の効果を合流させる。本実施形態では、第6配管26および第8配管28それぞれを通過した熱媒を第1配管21で合流させた後、合流された熱媒を、第2配管22により分岐させて複数のGSHP12それぞれに供給する。
【0018】
[HR−GSHPシステム10の制御]
本実施形態に示すHR−GSHPシステム10のように、HR−GSHPシステム10においては個々のGSHP12(熱源機)の循環流量の合計値が、GHEX11に循環可能な流量(ボアホールシングルUチューブ型でUチューブ口径が25Aの場合、1本あたり40L/min程度)を超えることが想定される。GHEX11に循環可能な流量を超える流量が流れる場合には、GHEX11での圧力損失が大きくなり、それによりシステム全体、ひいては熱源機の循環流量の不足が生じる。
【0019】
上述のGHEX11への過度な流量の循環を防ぎ適正な流量とするため、
図2に示す通り、HR−GSHPシステム10の一次側にバイパスを設置する。そして、
図3に示す制御フローによりバイパスへの循環流量を制御することで、同じ熱量の冷熱供給側のGSHP12の排熱と温熱供給側のGSHP12の冷熱をGHEX11に熱源水を送り込む前に吸収する。
【0020】
バイパス制御フローの手順を以下で説明する。
【0021】
(1)用途の異なる2種類のGSHP12(GSHP−1(温熱供給運転)、GSHP−2(冷熱供給運転))の一次側のそれぞれの採熱量、放熱量をQhp1,1、Qhp1,2 とする。GSHP−1の一次側の循環流量をVhp1,1、GSHP−2の一次側の循環流量をVhp1,2 とする。
【0022】
(2)Qhp1,1とQhp1,2の絶対値を比較する(ステップS1)。
【0023】
(3)Qhp1,1がQhp1,2より大きい場合(採熱運転の場合、ステップS1:YES)は以下の手順で制御を行う。
まず、Qhp1,2=0であるか否かを判定する(ステップS2)。Qhp1,2が0でない場合(ステップS2:NO)、GSHP−2(放熱運転側)の一次側循環水を全てバイパス側に送り出す。即ちVhp1b,2=Vhp1,2 となる(ステップS3)。GSHP−1(採熱運転側)の一次側循環水のうちバイパス側への流量Vhp1b,1 をTmix=Tpout になるように調整する(ステップS4)。残りのGHEX11側への循環流量Vhp1o,1=Vhp1,1―Vhp1b,1 がGHEX11の循環流量Vf1 となる(ステップS5)。なお、循環流量の調整は、例えば流量調整部17を制御することにより実施することができる。流量調整部17としては、前述の構成に限られず、例えば2方弁を採用し、循環流量の調整を、2方弁の開度の調整にて行うこともできる。
ただし、Qhp1,2=0 の場合(ステップS2:YES)には、バイパス運転は行わずVf1=Vhp1,1となる(ステップS6)。
【0024】
(4)逆にQhp1,2がQhp1,1より大きい場合(放熱運転の場合、ステップS1:NO)には、以下の手順で制御を行う。
まず、Qhp1,1=0であるか否かを判定する(ステップS7)。Qhp1,2が0でない場合(ステップS7:NO)、GSHP−1(採熱運転側)の一次側循環水を全て還りバイパス側に送り出す。即ちVhp1b,1=Vhp1,1 となる(ステップS8)。GSHP−2(放熱運転側)の一次側循環水のうちバイパス側への流量Vhp1b,2をTmix= Tpoutになるように調整する(ステップS9)。残りのGHEX11側への循環流量Vhp1o,2=Vhp1,2―Vhp1b,2 がGHEX11の循環流量LVf1 となる(ステップS10)。なお、循環流量の調整は2 方弁の開度の調整にて行う。
ただし、Qhp1,1=0 の場合(ステップS7:YES)には、バイパス運転は行わずVf1=Vhp1,1 となる(ステップS11)。
【0025】
以上により、採熱(冷房運転)および放熱(暖房運転)それぞれに用いられた熱媒同士を混合させ、直接的に熱回収する直接熱回収の最大化を図りつつ、残りの熱媒を地中と熱交換させて熱回収をする間接熱回収の最小化を図ることができる。間接熱回収の最小化を図ることにより、熱媒と地中熱との間で最小限の採放熱をすることに留めることが可能になり、HR−GSHPシステム10全体での効率を高めることができる。
また、Tmix= Tpoutとなり、結果として、GHEX11に供給される熱媒(第7配管27内の熱媒)の温度の変動を抑えることができる。その結果、GHEX11の運転性能を安定させることができる。
【0026】
なお、本文では2種類のGSHP12で説明を行っているが、3 種類以上のGSHP12を使用した場合にもGSHP12の一次側の合計採放熱量の計算を行い、採熱運転か放熱運転を判定し、それに応じて(3)の運転(放熱運転側の一次側循環水全てのバイパス運転)もしくは(4)の運転(採熱運転側の一次側循環水全てのバイパス運転)を行う。
【0027】
[本実施形態に係るHR−GSHPシステム10、運転方法のまとめ]
<構成要件>
本実施形態に係るHR−GSHPシステム10は、用途の異なる複数台のGSHP12をGHEX11に接続したHR−GSHPシステム10において、異なるGSHP12でそれぞれ冷熱供給、温熱供給を行った場合において、GSHP12の一次側(熱源側)の循環水をバイパスで混合させて、冷熱供給側のGSHP12の温排熱と温熱供給側のGSHP12の冷排熱を吸収させる熱回収運転(直接熱回収)を行うことで、片側の温排熱もしくは冷排熱の余剰分のみをGHEX11で処理(間接熱回収)するHR−GSHPシステム10、およびその熱源水バイパス配管および循環流量制御システムに関する。
【0028】
上記のHR−GSHPシステム10において、GSHP12の合計循環流量がGHEX11の循環可能な流量よりも大きくなる場合に、GHEX11おける循環流量を適正に制御し、過度な循環流量による圧力損失増大による熱源機の循環流量の低下を防ぐことができる、HR−GSHPシステム10、およびその熱源水バイパス配管および循環流量制御システムに関する。
【0029】
本実施形態では、制御部14が、第6配管26における熱媒の温度と第8配管28における熱媒の温度とに基づいて、流量調整部17を制御する。
また、制御部14が、複数のGSHP12のうち、冷房を行い熱媒へ放熱運転しているGSHP12における放熱量の合計値である合計放熱量と、暖房を行い熱媒から採熱運転しているGSHP12における採熱量の合計値である合計採熱量と、の比較結果に基づいて、流量調整部17を制御する第1工程を実施する。制御部14は、第1工程で、合計放熱量の絶対値が合計採熱量の絶対値よりも高い場合には、採熱運転のGSHP12を通過した熱媒の全量を第4配管24に供給しつつ、放熱運転のGSHP12を通過した熱媒の第4配管24および第5配管25への供給量を制御する第2工程を実施する。制御部14は、第1工程で、合計採熱量の絶対値が合計放熱量の絶対値よりも高い場合には、放熱運転のGSHP12を通過した熱媒の全量を第4配管24に供給しつつ、採熱運転のGSHP12を通過した熱媒の第4配管24および第5配管25への供給量を制御する第3工程を実施する。制御部14は、第2工程および第3工程のいずれの工程においても、第6配管26における熱媒の温度と、第8配管28における熱媒の温度と、が同等になるように、供給量を制御する。
【0030】
<作用効果>
本実施形態に係るHR−GSHPシステム10においては、HR−GSHPシステム10について、異なるGSHP12でそれぞれ冷熱供給、温熱供給を行った場合において、GSHP12の一次側(熱源側)の循環水をバイパスで混合させて、冷熱供給側のGSHP12の温排熱と温熱供給側のGSHP12の冷排熱を吸収させる熱回収運転(直接熱回収)を行うことで、片側の温排熱もしくは冷排熱の余剰分のみをGHEX11で処理(間接熱回収)するものとなり、GSHP12処理負荷に対しGHEX11採放熱量を大幅に低減することが可能となる。
【0031】
また、本発明では、HR−GSHPシステム10について、GSHP12の合計循環流量がGHEX11の循環可能な流量よりも大きくなる場合に、GHEX11における循環流量を適正に制御し、過度な循環流量による圧力損失増大による熱源機の循環流量の低下を防ぐことができる。
GSHP12毎にバイパス回路を設けたことが最大のポイントである。GHEX11循環可能流量に制御するだけならば、GSHP12出口合流後でGHEX11循環可能流量以上はバイパスさせれば済むが、それでは適正な直接熱回収、間接熱回収が行えない。
【0032】
他の熱源と比較して効率の高いGSHP12について、採放熱量を調整することが可能となり、その結果、長期的に運転可能な範囲で、かつ省エネルギー効果を最大限に得られる条件で運転できるようになるため、HR−GSHPシステム10の導入の費用対効果を最大化することや、コスト回収年数を最小化することが可能となる。
【0033】
流量調整部17が、第4配管24、第5配管25への熱媒の流量を調整する。そのため、各GSHP12を通過した熱媒全てをGHEX11に戻す場合と異なり、各GSHP12で生じた冷房による放熱(冷房温排熱)と暖房による採熱(暖房冷排熱)を吸収した熱媒を第6配管26に送りその熱媒同士を合流させ、第6配管26内で相互の排熱を直接熱回収させることができる。
また、第4配管24や第5配管25が、各GSHP12に個別に対応して複数ずつ設けられている。そのため、例えば、冷房による放熱量に比べ暖房による採熱量が大きい場合には、放熱側のGSHP12における熱媒は全て第4配管24を通して第6配管26に送りつつ、採熱側のGSHP12においては、放熱量と等しい採熱量相当の熱媒を、第4配管24を通して第6配管26に送り、合流させることにより直接熱回収による完全な相互排熱回収が行える。これにより、第6配管26を通して第1配管21に合流し、GHEX11に送られる熱媒(採放熱量)と間接熱回収(地盤への負担)を最小限にすることができ、大幅にGHEXの必要長さや本数を削減することができる。HR−GSHPシステム10の運転効率を高めることができる。
【0034】
<比較例と本実施形態との比較>
本実施形態のHR−GSHPシステム10の主要構成を
図8に示す。
【0035】
これに対して
図9に示す第1の比較例に係るシステム10Aでは、配管系統13が、第2配管22、第5配管25、第7配管27および第8配管28によって形成されている。GHEX11および第8配管28を通過した熱媒は、第2配管22を通してGSHP12に供給される。GSHP12を通過した熱媒は、第5配管25および第7配管27を通してGHEX11に供給される。
この比較例に係るシステム10Aでは、本実施形態と異なり、相互の排熱を直接熱回収させることができないまま、第7配管27および第8配管28を熱媒の全量が通過させることとなる。そのため、HR-GSHPシステムにおける短期熱回収効果で削減したGHEX本数では適正流量を大幅に超過し、圧力損失過大により配管設計的に成立せず、多量の熱媒が循環可能な配管やGHEX11を過剰に形成する必要が生じてGHEX11の大型化が必要になったり、場合によってはそのような設備を実現することができなかったりするおそれがある。
【0036】
また
図10に示す第2の比較例に係るシステム10Bでは、配管系統13が、第2配管22、第5配管25、第7配管27、第8配管28に加えて、第1配管21および第6配管26を備えている。第6配管26は、第7配管27内の熱媒を第1配管21に供給する。言い換えると、このシステム10Bでは、第1の比較例に係るシステム10Aにおける第7配管27と第8配管28との間を、第6配管26によりバイパスしている。
この比較例に係るシステム10Bは、システム10Aにおける圧力損失過大における流量阻害対策だけを考え、GHEXの許容流量以上の流量は第6配管26に逃がそうとするものであるが、本実施形態と異なり、第6配管26が、第7配管27内で全量合流した熱媒の一部を第1配管21に第6配管26を通して供給し、残りの熱媒をGHEX11に供給している。そのため、本実施形態の場合に比べると、全量合流させてしまったため直接熱回収はできておらず、さらに例えば採熱量が放熱量に勝っている状況であれば第6配管26と第8配管28が合流して第1配管21に供給される熱媒温度はシステム10に比べ低下してしまい、冷房運転の効率が低下するとともに、システム10と同等の設計をしていれば冷房能力不足が生じる可能性もある。
【実施例】
【0037】
上記に説明した制御運転を北海道大学構内に設置したフィールド試験装置により検証を行った。
図4にフィールド試験系統図を、表1に試験装置構成機器概要を示す。
【0038】
【表1】
【0039】
フィールド試験装置は主に複数台のGSHP12と、補助熱源機である空気熱源ヒートポンプ(ASHP)、GHEX11と、任意に設定した暖房・冷房負荷を模擬できる模擬負荷装置(模擬負荷タンクとASHP)と、で構成される。
【0040】
表2に設定負荷を示す。
【0041】
【表2】
【0042】
暖房負荷を15 kW、冷房負荷を9 kW と設定して、2 台のGSHP12の一次側において熱回収が発生するようにした。また、ボアホール地中熱交換器の使用本数は1本とした。
【0043】
図5にGSHP12の出力を、
図6にGSHP12の一次側の採放熱量とGHEX11の採放熱量を、
図7に一次側の温度変化を示す。
【0044】
図6に示す通りGSHP12の一次側の採放熱量(Qph-hp1、Qhp-hp2、Qph-hp3)の合計値Qph-sum はGHEX11の採放熱量Qghexと同等の値となっており、本制御運転によりGSHP12側の採放熱の余りの分のみがGHEX11の採放熱量となっていることが確認できた。
【0045】
また、
図7より、
図2に示されるバイパス側の熱回収後の温度TmixとGHEX11出口温度Tpoutとはほぼ等しくなっているため、このことからも本制御の運転状況が良好であることが確認できた。
また、GHEX11の出入口温度差(TpinとToutとの温度差)も生じており、GHEX11の採熱も行えていることが確認できた。