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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-169511(P2019-169511A)
(43)【公開日】2019年10月3日
(54)【発明の名称】超音波振動子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/332 20130101AFI20190906BHJP
   H04R 31/00 20060101ALI20190906BHJP
   H01L 41/338 20130101ALI20190906BHJP
【FI】
   H01L41/332
   H04R31/00 330
   H01L41/338
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-54172(P2018-54172)
(22)【出願日】2018年3月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹内 治
(72)【発明者】
【氏名】桝本 尚己
(72)【発明者】
【氏名】口地 博行
(72)【発明者】
【氏名】菊池 利克
【テーマコード(参考)】
5D019
【Fターム(参考)】
5D019BB17
5D019FF04
5D019HH01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高い周波数の超音波を放射することができる超音波振動子を安定的に製造する方法を提供する。
【解決手段】圧電基板10の一部を周縁部として残すことによって機械的強度を保ち、周縁部に囲まれた領域を所望の厚さに薄膜化し、個片化することで超音波振動子1を形成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板から超音波振動子を形成する製造方法において、
前記圧電基板の一方の表面に、該圧電基板の周縁部を被覆し、該周縁部に囲まれた前記一方の表面の一部を露出するマスク材を形成する工程と、
前記圧電基板の露出する一方の表面の一部を除去し、前記圧電基板を所望の厚さとする圧電基板の薄膜化工程と、
薄膜化された前記圧電基板の前記一方の表面と他方の表面に、それぞれ電極膜を形成する工程と、
前記電極膜が形成された前記圧電基板を個片化し、前記所望の厚さの超音波振動子を形成する工程と、を含むことを特徴とする超音波振動子の製造方法。
【請求項2】
圧電基板から超音波振動子を形成する製造方法において、
前記圧電基板の一方の表面の周縁部と当接する当接部と、該当接部と共に前記圧電基板を収容する収容部と、前記当接部に囲まれた前記圧電基板の一方の表面の一部を露出する開口部とを備えた治具を用意する工程と、
前記圧電基板の前記一方の表面の周縁部を前記当接部に当接して前記圧電基板を前記収容部に収容し、前記圧電基板の前記一方の表面の一部を前記開口部から露出させる工程と、
前記開口部内に露出する前記圧電基板の前記露出する一方の表面の一部を除去し、前記圧電基板を所望の厚さとする圧電基板の薄膜化工程と、
薄膜化された前記圧電基板の前記一方の表面と他方の表面に、ぞれぞれ電極膜を形成する工程と、
前記電極膜が形成された前記圧電基板を個片化し、前記所望の厚さの超音波振動子を形成する工程と、を含むことを特徴とする超音波振動子の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2いずれか記載の超音波振動子の製造方法において、
前記薄膜化された前記圧電基板の一方の表面あるいは前記他方の表面の電極膜上に、音響整合膜あるいは背面負荷材のいずれか、あるいは両方を形成した後、個片化することを特徴とする超音波振動子の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2いずれか記載の超音波振動子の製造方法において、
前記前記薄膜化された圧電基板の一方の表面あるいは前記他方の表面に、それぞれの電極の引出電極を形成する工程を含むことを特徴とする超音波振動子の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の超音波振動子の製造方法において、
前記電極の引出電極を除く表面に、前記音響整合膜あるいは前記背面負荷材のいずれかを形成した後、個片化することを特徴とする超音波振動子の製造方法。
【請求項6】
請求項2乃至5いずれか記載の超音波振動子の製造方法において、
前記個片化前に前記圧電基板から前記治具を分離することを特徴とする超音波振動子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波振動子の製造方法に関し、特に高解像度が求められる高い周波数の超音波の送受信が可能な超音波振動子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波振動子は、医療用超音波診断装置や非破壊の検査機器などの超音波深触子に用いられている。図7に圧電材料を用いた超音波深触子の概略図を示す。一般的に超音波深触子は、超音波を送受信する圧電素子1と、圧電素子1の表面および裏面に形成された電極2a、2bと、それぞれの電極2a、2bに接続する電極端子3a、3bとを備えている。また超音波を効率よく送受信させるため、圧電素子1の表面に音響整合層4が形成されている。一方圧電素子1の裏面側には、裏面側に到達した不要な超音波を減衰させるため背面負荷材5が形成されている。この種の超音波深触子は、特許文献1に記載されている。
【0003】
一方、医療用超音波診断装置では、心臓や腹部などの診断を行う場合には、2.5MHz〜5MHz程度の超音波が使用され、皮膚に近い領域(甲状腺や乳腺など)の診断を行う場合には、7.5MHz〜12MHz程度の超音波が使用されている。しかしこのような比較的低い周波数の超音波では、直径が20μm以下の毛細血管などを確認することはできず、40MHz〜200MHzの超音波を放射する超音波振動子が求められている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−184497号公報
【特許文献2】特開2008−104497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧電素子を用いた超音波振動子において送受信される超音波の周波数は、圧電素子の厚さによって決まり、高い周波数の超音波を送受信するためには図7に示す圧電素子1の厚さを薄くする必要がある。一例として80MHzの超音波を放射させるためには、一般的な圧電材料であるPZTで、圧電素子1の厚さを20μm程度とする必要がある。さらに高い周波数の超音波を送受信するためにはさらに圧電素子1の厚さを薄くする必要がある。
【0006】
一般的に圧電素子1は、圧電基板上に複数個の圧電素子1を一括して形成し、個片化して個々の圧電素子に分離することで効率よく製造することができる。しかし圧電基板の厚さが30μm以下程度となると、強度不足から圧電基板にクラックや割れなどが生じてしまい安定的に圧電素子を製造することが困難となる。本発明はこのような問題点を解消し、高い周波数の超音波を放射することができる超音波振動子を安定的に製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本願請求項1に係る発明は、圧電基板から超音波振動子を形成する製造方法において、前記圧電基板の一方の表面に、該圧電基板の周縁部を被覆し、該周縁部に囲まれた前記一方の表面の一部を露出するマスク材を形成する工程と、前記圧電基板の露出する一方の表面の一部を除去し、前記圧電基板を所望の厚さとする圧電基板の薄膜化工程と、薄膜化された前記圧電基板の前記一方の表面と他方の表面に、それぞれ電極膜を形成する工程と、前記電極膜が形成された前記圧電基板を個片化し、前記所望の厚さの超音波振動子を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
本願請求項2に係る発明は、圧電基板から超音波振動子を形成する製造方法において、前記圧電基板の一方の表面の周縁部と当接する当接部と、該当接部と共に前記圧電基板を収容する収容部と、前記当接部に囲まれた前記圧電基板の一方の表面の一部を露出する開口部とを備えた治具を用意する工程と、前記圧電基板の前記一方の表面の周縁部を前記当接部に当接して前記圧電基板を前記収容部に収容し、前記圧電基板の前記一方の表面の一部を前記開口部から露出させる工程と、前記開口部内に露出する前記圧電基板の前記露出する一方の表面の一部を除去し、前記圧電基板を所望の厚さとする圧電基板の薄膜化工程と、薄膜化された前記圧電基板の前記一方の表面と他方の表面に、ぞれぞれ電極膜を形成する工程と、前記電極膜が形成された前記圧電基板を個片化し、前記所望の厚さの超音波振動子を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本願請求項3に係る発明は、請求項1または2いずれか記載の超音波振動子の製造方法において、前記薄膜化された前記圧電基板の一方の表面あるいは前記他方の表面の電極膜上に、音響整合膜あるいは背面負荷材のいずれか、あるいは両方を形成した後、個片化することを特徴とする。
【0010】
本願請求項4に係る発明は、請求項1または2いずれか記載の超音波振動子の製造方法において、前記前記薄膜化された圧電基板の一方の表面あるいは前記他方の表面に、それぞれの電極の引出電極を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0011】
本願請求項5に係る発明は、請求項4記載の超音波振動子の製造方法において、前記電極の引出電極を除く表面に、前記音響整合膜あるいは前記背面負荷材のいずれかを形成した後、個片化することを特徴とする。
【0012】
本願請求項6に係る発明は、請求項2乃至5いずれか記載の超音波振動子の製造方法において、前記個片化前に前記圧電基板から前記治具を分離することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の超音波振動子の製造方法は、圧電基板の一部を周縁部として残すことによって機械的強度を保ち、周縁部に囲まれた領域を所望の厚さに薄膜化し、個片化することで超音波振動子を形成する構成としている。このように構成することで、圧電基板を高い周波数の超音波を送受信できるように非常に薄く形成することができる一方、圧電基板に割れ等の不具合を発生させることの無い安定的な製造方法を提案することが可能となる。
【0014】
また、機械的強度を増すために治具を用いることも可能であり、治具の使用により周縁部の歪み等をなくし、さらに安定的が製造方法となる。使用される治具は、薄膜化工程後に圧電基板から分離可能であるが、個片化工程の前で圧電基板から分離するように構成することができ、より安定的な製造方法となる。
【0015】
本発明の超音波振動子の製造方法によれば、個片化前に、圧電基板の表面あるいは裏面に音響整合膜あるいは背面負荷材を形成することも容易となり、音響整合膜あるいは背面負荷材の形成も容易にできるという利点がある。
【0016】
また音響整合膜あるいは背面負荷材を形成する際、圧電素子の両面に形成する電極の引出電極を一方の表面あるいは他方の表面に形成することで、引出電極を音響整合膜あるいは背面負荷材で覆われない位置に形成することも容易となる。引出電極が一方の面に露出するため、医療用超音波診断装置用の深触子を形成する際にも組立が容易であり、さらに小型化を図ることもできるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施例の超音波振動子の製造方法を説明する図である。
図2】本発明の第1の実施例の超音波振動子の製造方法を説明する図である。
図3】本発明の第2の実施例の超音波振動子の製造方法を説明する図である。
図4】本発明の第2の実施例の超音波振動子の製造方法を説明する図である。
図5】本発明の第3の実施例の超音波振動子の製造方法を説明する図である。
図6】本発明の第4の実施例の超音波振動子の製造方法を説明する図である。
図7】従来の超音波振動子の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、例えば高解像度の医療用超音波撮像装置等に用いられる高い周波数の超音波を送受信することができる超音波振動子を製造するため、圧電素子を形成する圧電基板の周縁部を厚い状態として製造することを特徴としている。以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
まず、本発明の第1の実施例について説明する。図1は本発明の第1の実施例の超音波振動子の製造方法の説明図である。図1に示すように、例えば円形で厚さ30〜50μm程度の圧電基板10を用意し、その周縁部分を覆うようにフォトレジスト11をパターニングする。円形の圧電基板10を用いた場合、フォトレジスト11はドーナツ形状となる(図1a)。なお圧電基板10は、水晶、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛等の無機圧電材料に限らず、有機圧電材料やこれらの複合材料であっても良い。
【0020】
その後、フォトレジスト11をエッチングマスクとして使用し、周縁部によって囲まれた中央部分の圧電基板10の一部をエッチング除去し凹部12を形成する(図1b)。このとき凹部12の深さは、除去されずに残る凹部12底部の圧電基板10の厚さが、送受信される超音波信号が所望の周波数となる深さとする。凹部12を形成するためのエッチングは、使用する圧電基板に応じて、ドライエッチング法あるいはウエットエッチング法を適宜選択すればよい。なおウエットエッチング法を採用する際には、圧電基板10の側面や裏面側は、不要なエッチングが行われないように予めエッチングマスクで被覆しておく必要がある。
【0021】
フォトレジスト11を除去すると、圧電基板10の周縁部13は厚く、凹部の形成により所望の厚さに薄膜化した圧電素子形成予定領域14が形成される(図1c)。このような形状とすると、圧電素子形成予定領域14の厚さが20μm程度であっても、周縁部13が圧電基板の形状を保持し、周縁部13をハンドリングして後工程を進めれば、圧電素子形成予定領域14に割れ等が発生することを防止できる。
【0022】
その後、図2(a)に示すように、圧電基板10の両面に金属膜を積層形成し、圧電素子の電極膜15を形成する。凹部12の底部にあたる圧電素子形成予定領域14の表面は、周縁部13により大きな段差があるため、微細な加工は難しいため、全面に電極膜15を形成するのみとするのが好ましい。一方圧電基板10の裏面は平坦な形状であるので、電極膜15を積層した後、通常のフォトリソグラフ法によりパターニングすることも可能である。
【0023】
次に個片化のため、圧電基板10の裏面側をダイシングテープ16に貼り付ける。その後、ダイシングソー17を用いて圧電基板10に格子状の切断溝18を形成することで、個々の圧電素子に個片化することができる。この格子状の切断溝18は、周縁部13にも形成される(図2b)。
【0024】
このように形成された圧電素子1は、圧電基板10の両面に電極膜15が積層した形状となり、この圧電基板10の厚さを、高い周波数の超音波が送受信可能な薄さとすることで超音波振動子となる。本発明の製造方法では、圧電基板10の一部を周縁部13として残すことで、薄膜化した圧電基板10から安定的に超音波振動子を形成することが可能となる。
【実施例2】
【0025】
次に第2の実施例について説明する。上記第1の実施例では、圧電基板10に厚い周縁部13を残して製造工程を進める場合について説明した。しかしながら、圧電基板10が大口径化したり、圧電素子形成予定領域14をさらに薄膜化する場合には、圧電基板10が歪み圧電素子形成予定領域14が破損してしまう場合がある。そこで、第2の実施例では、治具を用いて圧電素子形成予定領域14の破損を防止する例について説明する。
【0026】
まず、上記第1の実施例同様、例えば円形で厚さ30〜50μm程度の圧電基板10を用意する。次に圧電基板10の表面にフォトレジスト11を塗布する。上記第1の実施例と異なり、パターニングは行わない。このフォトレジスト11を接着材として利用し、薄膜化する圧電素子の変形を防止するための治具19に接着させる。図3(a)に示すように治具19は、圧電素子10の表面の周縁部に当接する当接部19aと、凹形状で内部に圧電基板10を収容する収容部19bと、当接部19aに囲まれた圧電基板10の表面の一部を露出する開口部19cを備えている。
【0027】
治具19の開口部19c内に露出するフォトレジスト11を露光、現像し(あるいは治具19をエッチングマスクとして使用し)、開口部19c内に圧電基板10の一部を露出させる(図3b)。
【0028】
圧電素子10を治具19に貼り付けたまま、治具19およびフォトレジスト11をエッチングマスクとして使用し、治具19の当接部19aによって囲まれた中央部分の圧電基板10の一部をエッチング除去し凹部12を形成する(図3c)。このとき凹部12の深さは、除去されずに残る凹部12底部の厚さが、送受信される超音波信号が所望の周波数となる深さとする。凹部12を形成するためのエッチングは、使用する圧電基板に応じて、ドライエッチング法によってもウエットエッチング法によってもよい。なおウエットエッチング法を採用する際には、圧電基板10の側面や裏面側は、不要なエッチングが行われないように予めエッチングマスクで被覆しておく必要がある。当然ながら治具19がエッチングさたり、治具19がエッチング液等に接触することで異常なエッチングが生じることがないようにする。
【0029】
ここで、治具19をフォトレジスト11と共に除去すると、上記実施例1で説明したように圧電基板10の周縁部13は厚く、凹部の形成により所望の厚さに薄膜化した圧電素子形成予定領域14が形成される(図1c)。以下、第1の実施例同様の製造工程を経ることで圧電素子が形成可能となる。
【0030】
ところで、上記実施例1で説明した場合より凹部12の底部の厚さを薄くする場合、治具19を貼り付けた状態で後工程に進むのが好ましい場合がある。その場合には、図3(d)に示すように治具19が貼り付いた圧電基板10の両面に金属膜を積層形成し、圧電素子の電極膜15を形成する。凹部12の底部にあたる圧電素子形成予定領域14の表面は、周縁部13および治具19により大きな段差があるため、微細な加工は難しいため、全面に電極膜15を形成するのみとするのが好ましい。治具19上に積層する電極膜15もそのままにしておく。一方圧電基板10の裏面は治具19が突出せず、圧電基板10の裏面と治具19の裏面がほぼ同一平面となるにで、電極膜15を積層した後、通常のフォトリソグラフ法によりパターニングすることも可能である。
【0031】
次に個片化のため、圧電基板10の裏面側をダイシングテープ16に貼り付ける。治具19が圧電基板10と共に個片化可能な材料、例えばシリコン基板等からなる場合は治具19を取り外す必要は無いが、治具19が金属等で構成される場合には、個片化の前に治具19を取り外す(図4b)。この治具19の取り外しは、接着材として使用していたフォトレジスト11を溶解除去すればよく、治具19と共に治具19上に積層した電極膜15も除去される。
【0032】
個片化は、第1の実施例で説明したように、ダイシングソー17を用いて圧電基板10に格子状の切断溝18を形成することで、個々の圧電素子に個片化することができる(図4c)。
【0033】
このように形成された圧電素子1は、圧電基板10の両側に電極膜15が積層した形状となり、この圧電基板10の厚さは、先に説明した第1の実施例の場合より薄くでき、高い周波数の超音波が送受信可能な薄さとすることで、超音波振動子となる。本発明の製造方法では、圧電基板10の一部を周縁部13として残すだけでなく治具19を貼り付けて残すことで、上記第1の実施例で説明した場合より薄膜化することができ、より高い周波数の超音波を送受信可能な圧電素子を形成することが可能となる。
【実施例3】
【0034】
次に第3の実施例について説明する。医療用超音波診断装置や非破壊の検査機器などの超音波深触子は、図7に示すように超音波を送受信する圧電素子1の表面に音響整合層4が形成されており、さらに裏面には不要な超音波を減衰させる背面負荷材5が形成されている。そこで、個片化の前に音響整合層4、背面負荷材5のいずれか一方あるいは両方を形成した後、個片化してもよい。例えば上記第1の実施例に適用する場合、図2(a)に示すように圧電基板10の表面および裏面に金属膜を積層形成し、圧電素子の電極膜15を形成した後、凹部12が形成されている圧電素子10の表面に音響整合層4を塗布する。また圧電基板10の裏面に背面負荷材5を塗布する(図5a)。その後、音響整合層4および背面負荷材5が形成された圧電基板10の裏面側をダイシングテープ16に貼り付け、ダイシングソー17を用いて圧電基板10に格子状の切断溝18を形成することで個々の圧電素子に個片化することができる(図5b)。音響整合層4と背面負荷材5は圧電基板10の表裏を逆にして形成しても良い。あるいはいずれか一方だけでもよい。
【0035】
圧電基板10の表面に音響整合層4あるいは背面負荷材5を形成することで、圧電素子形成予定領域14の強度が増し好ましい。また、圧電基板10の裏面に音響整合層4あるいは背面負荷材5のいずれかを形成する際、平坦な表面となっているため、パターニングが必要な一方を形成するのが好ましい。
【0036】
音響整合層4あるいは背面負荷材5のいずれか一方を形成する場合は、個片化後の圧電素子を超音波深触子に組み合て後に背面負荷材5あるいは音響整合層4を形成すればよい。
【0037】
同様に上記第2の実施例で説明した治具19を用いた製造方法についても音響整合層4背面負荷材5の形成を付加することが可能である。
【実施例4】
【0038】
次に第4の実施例について説明する。上記第3の実施例で説明したように、音響整合層4あるいは背面負荷材5を形成した後個片化する方法では、例えば図5(a)の音響整合層4のパターニングは難しく、音響整合層4が電極膜15を覆ってしまい、この電極膜15と外部へ電極を引き出すための電極端子との接続が難しくなる。そこで、音響接合層4で被覆された電極膜15を、パターニングが容易な圧電基板10の反対側に引き出すように形成すれば良い。
【0039】
図6は、先に説明した図5に示す個片化後の圧電素子形成予定領域の一部の拡大図を示している。本実施例では、圧電基板10の表面に形成された電極膜15aが、貫通電極21によって圧電基板10の裏面に形成された引出電極22aに接続する構成となっている。一方、圧電基板10の裏面に形成された電極膜15bは、圧電基板10の裏面に形成された電極膜22bに接続する構成となっている。圧電基板10の裏面は、平坦な表面であるから、図6に示すように引出電極22a、22bのパターニングは容易である。
【0040】
圧電基板10の裏面に引出電極22a、22bを形成した後、電極膜15a上に音響整合層4を全面に形成し、電極膜15b上に背面負荷材5を引出電極22a、22bが露出するように形成する。この背面負荷材5のパターニングも、圧電基板10の裏面側が平坦な表面であることから一般的な方法で行うことができる。
【0041】
その後、図5で説明したようにダイシングソーを用いて個片化すれば、圧電素子を形成することが可能となる。なお図6では、ダイシングテープ16、ダイシングソー17の記載は省略している。
【0042】
図6に示す貫通電極21を形成する方法は、周知の技術を適用することが可能であるが、例えば、厚い圧電基板10にドリルを用いて予め貫通孔を形成しておき、その後上記説明のように圧電素子形成予定領域14を形成するための薄膜化を行うことで、貫通孔を備えた薄い圧電基板を容易に形成することができる。
【0043】
また貫通電極21の形成方法は、貫通孔に両面から電極膜15a、15bを形成することで導通させる方法や、メッキ法により電極膜15a、15bを形成すると同時に貫通孔内に電極膜を構成する金属を充填させる等、周知の方法により形成することができる。
【0044】
このように一方の面に圧電基板の両面に形成された電極膜に接続する引出電極を形成すると、その後の超音波深触子の組み立て等が容易となる。
【0045】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものでなく、種々変更可能である。
【符号の説明】
【0046】
1:圧電素子、2a、2b:電極、3a、3b:電極端子、4:音響接合層、5:背面負荷材、10:圧電基板、11:フォトレジスト、12:凹部、13:周縁部、14:圧電素子形成予定領域、15:電極膜、16:ダイシングテープ、17:ダイシングソー、18:切断溝、19:治具、20:収納部、21:貫通電極、22a、22b:引出電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7