【解決手段】乳脂肪を含む最内油相が水相中に乳化し、水相を最外油相に乳化した油中水中油型の二重乳化油脂組成物の、水相と最内油相における乳脂肪が48重量%以下であり、最内油相のメディアン径を0.9μm以下とする。
乳脂肪を含む最内油相が水相中に乳化し、前記水相が最外油相に乳化した油中水中油型の二重乳化油脂組成物であり、前記水相と前記最内油相とからなる水中油型の一次乳化物における乳脂肪が48重量%以下であり、前記最内油相のメディアン径が0.9μm以下であることを特徴とする二重乳化油脂組成物。
乳脂肪を含む最内油相となる油脂、カゼインナトリウム及び水を含む混合液を圧力式ホモジナイザーで乳化することで水中油型の一次乳化物を生成する第1乳化ステップと、
前記一次乳化物を最外油相となる油脂中に乳化する第2乳化ステップと
を有し、
前記第1乳化ステップは、前記一次乳化物における乳脂肪の配合比を48重量%以下とし、前記一次乳化物における前記最内油相のメディアン径を0.9μm以下とする
ことを特徴とする二重乳化油脂組成物の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなバターを最内油相に配合した二重乳化油脂組成物では、二重乳化が壊れると、最内油相中の乳脂肪が連続相である最外油相側に移行するため、柔らかさが低下してしまい、パンの様な対象物に塗り難くなる、チューブ状の容器の場合は、チューブ状の容器から絞り出せなくなるといった問題があった。なお、上記特許文献2のようにジグリセリドを含有させる手法は、乳化を安定に保つことが難しく、O1/W構造の液滴の乳化を強固にするあまり、その液滴(水相)の最外油相に対する乳化の安定性が低下し、二重乳化油脂組成物の均一性が失われる可能性が高い。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、柔らかさが維持される二重乳化油脂組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の二重乳化油脂組成物は、乳脂肪を含む最内油相が水相中に乳化し、前記水相が最外油相に乳化した油中水中油型の二重乳化油脂組成物であり、前記水相と前記最内油相とからなる水中油型の一次乳化物における乳脂肪が48重量%以下であり、前記最内油相のメディアン径が0.9μm以下である。
【0008】
本発明の二重乳化油脂組成物は、乳脂肪を含む最内油相が水相中に乳化し、前記水相が最外油相に乳化した油中水中油型の二重乳化油脂組成物において、油溶性の規定量のアナトー色素を用いて前記最内油相の油脂にのみ着色して生成された際に、油中水中油型に乳化された直後から10分間撹拌された時点における前記最外油相に対して測定される特定波長の吸光度に基づいて定まる二重乳化率が88%以上である。
【0009】
本発明の二重乳化油脂組成物の製造方法は、乳脂肪を含む最内油相となる油脂、カゼインナトリウム及び水を含む混合液を圧力式ホモジナイザーで乳化することで水中油型の一次乳化物を生成する第1乳化ステップと、前記一次乳化物を最外油相となる油脂中に乳化する第2乳化ステップとを有し、前記第1乳化ステップは、前記一次乳化物における乳脂肪の配合比を48重量%以下とし、前記一次乳化物における前記最内油相のメディアン径を0.9μm以下とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の二重乳化油脂組成物によれば、水相と最内油相とからなる水中油型の一次乳化物における乳脂肪を48重量%以下とし、最内油相のメディアン径を0.9μm以下とすることにより二重乳化油脂組成物の柔らかさが維持される。
【0011】
本発明の二重乳化油脂組成物によれば、油中水中油型に乳化された直後から10分間撹拌された時点における最外油相に対して測定される特定波長の吸光度に基づいて定まる二重乳化率が88%以上とすることで、二重乳化油脂組成物の柔らかさが維持される。
【0012】
本発明の二重乳化油脂組成物の製造方法によれば、柔らかさを維持できる二重乳化油脂組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[二重乳化油脂組成物]
本発明の一実施形態に係る食品としての二重乳化油脂組成物は、最内油相(O1)をこれに対して連続相となる水相(W)に乳化した水中油(O1/W)型の一次乳化物を、これを分散相として連続相となる最外油相(O2)に乳化した油中水中油(O1/W/O2)型の二重乳化物である。
【0014】
最内油相は、乳脂肪を成分として含むものである。最内油相を構成する成分としては、乳脂肪を含むバター、クリーム、バターオイル、乳、練乳、クリームチーズ等の単体またはこれらの組み合わせを用いることができる。風味および乳化安定性の点から、最内油相を構成する油脂としてバター、クリーム、バターオイルを用いることが好ましい。また、最内油相の油脂は、コーン油、大豆油、菜種油、米油、ひまわり油、べに花油等の植物性の食用油脂を含有することができ、好ましくは、コーン油、大豆油、菜種油である。植物性の食用油脂を最内油相に含有させることで、作業性を向上させることができるだけでなく、バター等の代替とすることができる。
【0015】
O1/W/O2型の二重乳化油脂組成物は、まず最内油相の原料となる油脂を水相となる水中に分散することによってO1/W型の一次乳化物を生成し、次に、生成されたO1/W型の一次乳化物を、最外油相を構成する食用の油脂に分散することで生成される。
【0016】
一次乳化物の生成の際に、最内油相の原料となる油脂の他に、乳化剤としての例えばカゼインナトリウム(以下、カゼインNaとも言う)等が加えられる。また、呈味物質として例えば食塩等を加えることができる。一次乳化物は、乳脂肪を48重量%以下とし、かつ最内油相のメディアン径を0.9μm以下とする。このように一次乳化物における最内油相のメディアン径を0.9μm以下とすることは、二重乳化油脂組成物における最内油相のメディアン径を0.9μm以下とすることである。
【0017】
最内油相の重量をMO1、最内油相中の乳脂肪の重量をM1、水相の重量をMWとするときに、一次乳化物における乳脂肪の重量割合(単位は重量%)は、{M1/(MO1+MW)}×100で求める。
【0018】
上記のように一次乳化物が乳脂肪を48重量%以下の重量割合で含有し、かつ最内油相のメディアン径を0.9μm以下とすることにより、一次乳化物から二重乳化油脂組成物とされるまでの間、また二重乳化油脂組成物となった以降において、せん断等の力が加わっても二重乳化油脂組成物におけるO1/W構造の液滴が破壊され難い。これにより、二重乳化油脂組成物の最外油相に移行する最内油相の乳脂肪の量を少なく抑えることができる。この結果、食品としての二重乳化油脂組成物の柔らかさの低下を小さくでき、取り扱い易さが保たれる。
【0019】
一次乳化物における乳脂肪の重量割合は、25重量%以上48重量%以下の範囲内であることが好ましく、30重量%以上46重量%以下の範囲内であることがより好ましく、35重量%以上44重量%以下の範囲内であることがさらに好ましい。最内油相のメディアン径は、0.4μm以上0.9μm以下の範囲内であることが好ましく、0.5μm以上0.8μm以下の範囲内であることがより好ましく、0.6μm以上0.7μm以下の範囲内であることがさらに好ましい。最内油相のメディアン径が0.4μm以上であることにより、最内油相中の乳脂肪の風味を確実に感じることができる。
【0020】
最内油相のメディアン径は、一次乳化物において求め、これを、得られた二重乳化油脂組成物における最内油相のメディアン径とみなしてよい。一次乳化物における最内油相のメディアン径は、市販の粒度分布測定装置により求めることができる。本例では、(株)島津製作所製の粒度分布測定装置SALD−2200を用いて求めている。
【0021】
最外油相を構成する食用の油脂は、動物性油脂または植物性油脂あるいはこれらの組み合わせとすることができる。動物性油脂としては、例えばバター、クリーム、バターオイル、豚脂、牛脂、植物性油脂としては、例えばコーン油、大豆油、菜種油、米油、ひまわり油、べに花油等が挙げられる。また、最外油相に、乳化剤や香料等を含有することができる。
【0022】
二重乳化油脂組成物を生成する場合、上記のように、まず一次乳化物を生成する。一次乳化物における乳脂肪を48重量%以下とするために、最内油相の原料となる油脂、水相となる水、カゼインNa等の乳化剤、必要に応じて呈味物質としての食塩等、を加えた原材料に対して、その原材料中の乳脂肪の配合比が48重量%以下となるように調製し、この原材料を乳化装置で乳化する。
【0023】
上記の乳化の処理では、一次乳化物の原材料における乳脂肪の脂肪球を微細化し、最内油相となる油相が水相に均一に分散(乳化)した状態になるように処理する。したがって、この乳化の処理により、脂肪球のサイズが小さくなる。この乳化の際に、生成される一次乳化物の最内油相のメディアン径が目的のものとなるように乳化装置を調整する。
【0024】
上記乳化装置は、例えばホモジナイザー(均質化装置)、分散装置、微粒化装置等と称される公知の装置を用いることができる。この乳化装置としては、特に限定されないが、例えば、キャビテーター、高速回転型乳化装置、高圧乳化装置、超音波乳化装置、ロールミル及びコロイドミルが挙げられ、ホモジナイザーによる乳化が好ましく、高圧ホモジナイザーによる乳化が特に好ましい。乳化装置は、バッチ処理用であっても連続処理用であってもよい。
【0025】
キャビテーターは、高速回転する円板状の回転体(ローター)と回転体を囲んでいる固定体(インレット)により構成される。ローターは外周面に複数の穴を備えており、ローターの外周面とインレットの内周面との間に隙間をあけて回転すると、ローターが外周から回転中心に向かって有する穴に、流体力学的キャビテーションが生成される。ローターの外周面とインレットの内周面との間に隙間をあけて回転している状態で、被処理物がこの隙間を通過するように流動させることで、微細なキャビテーション気泡が生成され、それらが破壊すると衝撃波が被処理物中に放出され、被処理物はせん断力を受ける。これにより、脂肪球が微細化される。キャビテーターとしては、例えば、APV(登録商標)キャビテータ(APV社製)が挙げられる。
【0026】
高速回転型乳化装置及びコロイドミルは、高速回転する回転体で被処理物にせん断力を与え、脂肪球を小さく粉砕する。高速回転型乳化装置としては、例えば、ホモミキサー、断続ジェット流発生型乳化装置及びローター・ステーター式乳化装置が挙げられる。
【0027】
ホモミキサーは、高速回転する回転体(タービン)と、それを囲むように配置された固定環(ステーター)により構成される。被処理物は、回転体と固定環間に存在する空隙を通過する際に、回転体外周の表面近傍で速度勾配により生じるせん断力を受ける。ホモミキサーとしては、例えば、TKホモミキサー(プライミクス(株)製)が挙げられる。
【0028】
断続ジェット流発生型乳化装置は、高速回転する回転体(ローター)と微小な間隔で配置された数十ものスリットを有するスクリーンにより構成される。高速回転するローターにより運動エネルギーを与えられた被処理物は、スリット部を通過することによる速度増加から、被処理物内で断続ジェット流を形成し、せん断力を生じさせる。断続ジェット流発生型乳化装置としては、例えば、クレアミックスW−モーション(エム・テクニック(株))が挙げられる。
【0029】
ローター・ステーター式乳化装置は、高速回転する回転体(ローター)と固定環(ステーター)により構成される。通常ステーターの内側にローターが配置されており、ローターが回転することにより被処理物がローターとステーターの間の間隙において内側から外側へ通過する際にせん断力を受け、スリット部のずれによる圧力変動からキャビテーションを生ずる。
【0030】
ローター・ステーター式乳化装置のローター及びステーターはそれぞれ櫛歯型であってよい。ローター・ステーターのセットの数は特に制限されないが、1〜5組であってよく、1〜4組であってよく、1〜3組であってよい。1組のローター・ステーターを有するローター・ステーター式乳化装置としては、例えばキャビトロン(太平洋機工(株))が挙げられる。3組のローター・ステーターを有するローター・ステーター式乳化装置としては、例えばIKAインラインミキサー(IKA社製)が挙げられる。
【0031】
ローターとステーターの間の間隙は、例えば、0.1〜5mmであってよく、0.5〜3mmであってよく、1〜2mmであってよい。ステーターと、ローターとが、ローターの回転軸が延びている方向で相互に近付く、又は離れることができるように構成されていてもよい。このような特徴を備えたローター・ステーター式乳化装置としては、例えばMハイエストV(小松川化工機社製)が挙げられる。
【0032】
ローター・ステーター式乳化装置は、多機能タンクであってよい。多機能タンクとしては、例えば、ターボミキサー(スカニマ社製)、Dinex(FrymaKoruma社製)及びFlexMix(APV社製)が挙げられる。
【0033】
多機能タンクのステーターは可動式であるものが撹拌や微細化には効果的であり、具体的には、ダイナミックステーター(スカニマ社製)があり、ステーターが上下に動き、循環モードと高剪断モードを切り替えられるシステムとなっている。
【0034】
高圧乳化装置としては、一般的な高圧ホモジナイザーを挙げることができる。高圧ホモジナイザーは、高圧力に加圧した被処理物を、微小間隙に通すことで、高圧力を運動エネルギーに変換し、被処理物を粉砕する。高圧ホモジナイザーとしては、例えば、ホモゲナイザーHV−A((株)イズミフードマシナリ製)、ホモゲナイザーH−20型(三和機械(株)製)が挙げられる。
【0035】
超音波乳化装置は、超音波を発振し、キャビテーションによりせん断力を与える。超音波乳化装置としては、例えば、超音波分散機((株)エスエムテー製)が挙げられる。
【0036】
ロールミルは、異なる回転速度を持つローター上でせん断力を与える。ロールミルとしては、例えば、Trias(ビューラー(株)製)が挙げられる。
【0037】
例えば高圧ホモジナイザーを含む圧力式ホモジナイザーを用いた場合、ホモ圧(均質化圧)の増減により、最内油相の径を所望とするものにでき、ホモ圧を高くするほど最内油相の径を小さくすることができる。また、乳化剤の配合比(重量割合)は、適宜調整されるが、通常最内油相の径を小さくするほど配合比を大きくし、同一のホモ圧下であれば配合比が大きいほど最内油相の径が小さくなる傾向がある。乳化剤としてカゼインNaを用いた場合には、その配合比を0.6%以上とすることが好ましく、0.8%以上とすることがより好ましい。カゼインNaの配合比(単位は重量%)は、カゼインNaの重量をM2とし、二重乳化油脂組成物の重量をM3とするときに、(M2/M3)×100で求める。
【0038】
上記のように生成されたO1/W型の一次乳化物を、最外油相を構成する油脂に乳化させてO1/W/O2型の二次乳化物である二重乳化油脂組成物を生成する。この生成の際に、最外油相を構成する油脂に乳化剤や香料等を添加しておく。最外油相を構成する油脂に一次乳化物を乳化する際には、各種の乳化装置を用いることができるが、O1/W構造を壊さないものが好ましく、特に一次乳化物の乳化状態を維持するとともに、二重乳化油脂組成物を均一に形成させるため、プロペラ翼、パドル翼、タービン翼などの撹拌翼を有する複合型の撹拌式のものを用いることが好ましく、例えば槽型撹拌装置(青木(株)製)等を用いることが好ましい。
【0039】
二重乳化油脂組成物の二重乳化率は、次のような手法で測定することができる。ここで、二重乳化率は、二重乳化油脂組成物内に残存するO1/W構造の液滴の割合を示す指標であり、一次乳化物に配合された最内油相の重量を100%として、二重乳化油脂組成物内に残存するO1/W構造の最内油相の重量割合を示す指標である。
【0040】
上記二重乳化率は、油溶性のアナトー色素を用いて最内油相となる油脂を予め着色して一次乳化物を生成し、当該一次乳化物を用いて生成された測定用二重乳化油脂組成物を用いて測定される。測定用二重乳化油脂組成物は、アナトー色素を用いて最内油相となる油脂を着色する以外は、食品として提供される二重乳化油脂組成物と同じ材料、配合比、手順で生成される。したがって、測定用二重乳化油脂組成物の二重乳化率を測定することは、食品として提供される二重乳化油脂組成物の二重乳化率を測定することに相当する。なお、最内油相となる油脂をアナトー色素で着色する場合は、最内油相となる油脂の量に対して一定の比率となるアナトー色素の規定量を用いる。
【0041】
まず、二重乳化率を測定するタイミングで、測定用二重乳化油脂組成物の一部をサンプリングする。このサンプリングした測定用二重乳化油脂組成物を60℃のウォータバスで1時間温浴させて、最外油相を上澄みとして抽出し、上澄みを測定液として採取する。採取した測定液の特定波長、この例では波長450nmに対する吸光度を測定し、得られた吸光度を参照値と比較して二重乳化率を求める。
【0042】
二重乳化率100%の参照値は、アナトー色素で着色されていない状態の最外油相の吸光度とする。また、二重乳化油脂組成物の最内油相となる油脂をアナトー色素で着色したものと、最外油相となる油脂とを混合した混合油脂について測定した波長450nmに対する吸光度を二重乳化率0%の参照値とする。このときに、最内油相となる油脂と最外油相となる油脂との混合比は、二重乳化油脂組成物のものと同じにする。さらに、アナトー色素で着色した最内油相となる油脂と最外油相となる油脂との混合比を調整して、0%と100%の間の例えば10%、20%・・・の各二重乳化率に対する吸光度を参照値として得る。参照値以外の吸光度については、補間することによって求めることができる。
【0043】
本発明の一実施形態に係る食品としての二重乳化油脂組成物は、上記のようにアナトー色素を用いて測定される二重乳化率が、生成された直後から10分間撹拌された時点で88%以上となることが好ましい。すなわち、撹拌を用いた加速劣化試験によって、二重乳化油脂組成物のO1/W構造の液滴の破壊の進行を検証したときに、上記の二重乳化率の条件を満たすようにすれば、食品としての二重乳化油脂組成物は、柔らかさの低下が小さく、取り扱い易さが保たれる。
【実施例】
【0044】
[実施例1]〜[実施例6]
一次乳化物における乳脂肪の重量割合が互いに同じであり、カゼインNaの配合比が異なる2種の処方タイプで、それぞれ3つの異なる製造条件としてのホモ圧により、圧力式ホモジナイザー(H100型HA6471(三和機械株式会社製))を用いて全6種の一次乳化物をつくり、実施例1〜6とした。実施例1〜6における一次乳化物の乳脂肪の重量割合、二重乳化油脂組成物のカゼインNa配合比、ホモ圧(MPa)は、表1に示す通りである。また、2種の処方タイプは、表2に示す処方タイプA、Bの2種とした。なお、表2中の菜種油、バター,食塩、カゼインNa,水の重量割合は、二重乳化油脂組成物の重量を100とした時の百分率である。また、表2中の乳脂肪、TS(総固形分)の重量割合は、一次乳化物における重量割合である。後述の表3についても同様である。
【0045】
得られた一次乳化物について、総固形分を求めた。求めた総固形分(実測TS(Total solid))は、表1の「実測TS」欄に示す。実測TSは、スマートシステム(CEM社)により求めた。また、一次乳化物のそれぞれについて、最内油相のメディアン径と、粒径の標準偏差とを求めた。メディアン径と粒径の標準偏差は、前述の(株)島津製作所製の粒度分布測定装置SALD−2200を用いて求めた。
【0046】
得られた各一次乳化物から、二重乳化油脂組成物を生成した。この生成に際してそれぞれ用いた最外油相の成分は同じである。安定した二重乳化油脂組成物ができた時のそれぞれの硬度は45g/cm
2であった。二重乳化油脂組成物を、温度調整した環境下に一定時間静置した後、二重乳化油脂組成物の温度と、その温度を維持した状態での硬度を、以下の基準を定めて評価した。硬度は、EZ−TEST((株)島津製作所製)により求めた。二重乳化油脂組成物の温度と、硬度の評価結果とは、それぞれ表1の「温度」欄と「硬度評価」欄とに示す。なお、硬度は,その数値が大きいほど硬いことを示す。
○:硬度が50g/cm
2以下
△:硬度が50g/cm
2超100g/cm
2以下
×:硬度が100g/cm
2超
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
[比較例1]〜[比較例3]
実施例1〜6と異なる処方タイプで、異なる製造条件としてのホモ圧により、実施例1〜6と同じホモジナイザーを用いて全3種の一次乳化物をつくり、比較例1〜3とした。一次乳化物における乳脂肪の重量割合、二重乳化油脂組成物のカゼインNa配合比、ホモ圧(MPa)は、表1に示す通りである。また、処方タイプは、表2に示す処方タイプCとした。
【0050】
得られた一次乳化物について、実施例1〜6と同様に実測TSと、最内油相のメディアン径と、粒径の標準偏差とを求めた。
【0051】
得られた一次乳化物と、実施例1〜6と同じ最外油相とを用いて二重乳化油脂組成物を生成し、得られた二重乳化油脂組成物について、実施例1〜6と同様の方法で、硬度を評価した。二重乳化油脂組成物の温度と、硬度の評価結果とは、それぞれ表1の「温度」欄と「硬度評価」欄とに示す。
【0052】
表1の硬度評価より、一次乳化物(水相と最内油相)における乳脂肪を48重量%以下とし、最内油相のメディアン径を0.9μm以下とすることによって、柔らかな二重乳化油脂組成物を得られることが分かる。また、製造時はもちろん製造後においても、O1/W構造が壊れにくく、二重乳化油脂組成物の柔らかさを維持できることがわかる。
【0053】
[実施例7]、[実施例8]
表3に示すように乳脂肪の重量割合などの処方が互いに異なる2種の一次乳化物をつくり、実施例7、8とした。最内油相には、アナトー色素を含ませた。2種の処方タイプは、表3に示す処方タイプDとEとの2種とした。得られた一次乳化物について、実施例1〜6と同様に、最内油相のメディアン径を求めた。メディアン径は表3に示す。なお、一次乳化物の生成の際に用いたホモジナイザーは、実施例1〜6と同じであり、ホモ圧は25MPaである。また、下記比較例4についても同様である。
【0054】
得られた一次乳化物と、実施例1〜6と同じ最外油相とを用いて二重乳化油脂組成物を生成した。得られた二重乳化油脂組成物について、硬度を求めた。硬度は、二重乳化油脂組成物の温度を5℃に維持した状態で求めた以外は、実施例1〜6と同様の方法で求めた。硬度は表3に示す通りである。
【0055】
【表3】
【0056】
得られた二重乳化油脂組成物をタンクに入れ、二重乳化油脂組成物を温度65℃に維持し、攪拌装置で攪拌した。攪拌は、プロペラ状の撹拌子により、周速3m/秒で実施した。表4に示す攪拌時間毎に、タンクから二重乳化油脂組成物をサンプリングし、そのサンプルを用いて前述の方法により二重乳化率を求めた。得られた二重乳化率を表4に示す。
【0057】
【表4】
【0058】
[比較例4]
乳脂肪の重量割合などの処方が表3の処方タイプFとなる一次乳化物をつくり、比較例4とした。最内油層にはアナトー色素を含ませた。得られた一次乳化物について、実施例1〜6と同様に、最内油相のメディアン径を求めた。メディアン径は表3に示す。
【0059】
得られた一次乳化物を用いて、実施例7、8と同様の方法で二重乳化油脂組成物を生成し、実施例7、8と同様の方法及び条件で硬度を求めた。硬度は表3に示す通りである。また、二重乳化油脂組成物について、実施例7、8と同様の方法で、攪拌時間毎に、二重乳化率を求めた。二重乳化率は表4に示す通りである。
【0060】
表3の硬度及び表4の二重乳化率の結果から、アナトー色素を用いて測定される二重乳化率が、二重乳化油脂組成物が生成された直後から10分間撹拌された時点で88%以上となる二重乳化油脂組成物は、柔らかさの低下が小さく、取り扱い易さが保たれることがわかる。