【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0035】
<実施例1>
実施例1では、生乳630g、生クリーム10g、脱脂濃縮乳230g、乳たんぱく質濃縮物30g、乳清たんぱく質分離物(WPI)6g、原料水64gを混合し、発酵乳ベース(SNF 15.5%、FAT 3.0%)を調製した。
【0036】
次いで、調製した発酵乳ベースを95℃で、5分間殺菌した後、明治ブルガリアヨーグルトLB81から分離した乳酸菌を10%脱脂粉乳培地で培養した乳酸菌スタータを30g添加して、43℃で3〜5時間、pHが4.4になるまで発酵させた。
【0037】
得られた発酵乳のカードを、均質機(イズミフードマシナリ社製)を用いて、135L/hの流量、5MPaの圧力で破砕し、均質化した。次いで、破砕した発酵乳を容器に充填して25℃で1時間保持することで再セット化し、実施例1の発酵乳を製造した。
【0038】
<実施例2>
実施例2は、上述した実施例1と乳たんぱく質の含有量を変えるため、生クリーム、脱脂濃縮乳、及び原料水の含有量を変えた。具体的には、実施例2では、生乳630g、生クリーム13g、脱脂濃縮乳80g、乳たんぱく質濃縮物30g、乳清たんぱく質分離物(WPI)6g、原料水211gを混合し、発酵乳ベース(SNF 11.4%、FAT 3.0%)を調製した。
【0039】
次いで、調製した発酵乳ベースを95℃で、5分間殺菌した後、乳酸菌スタータを30g添加して、43℃で3〜5時間、pHが4.4になるまで発酵させた。
【0040】
得られた発酵乳のカードを、上記と同じ均質機を用いて、135L/hの流量、5MPaの圧力で破砕し、均質化した。次いで、破砕した発酵乳を容器に充填して25℃で1時間保持することで再セット化し、実施例2の発酵乳を製造した。
【0041】
<比較例1>
比較例1は、上述した実施例1と同じ発酵乳ベースを用い、上述した実施例1とは破砕の手法を変えた。具体的には、実施例1と同じ発酵乳ベースを用意し、95℃で5分間殺菌した後、乳酸菌スタータを30g添加して、43℃で3〜5時間、pHが4.4になるまで発酵させた。
【0042】
そして、得られた発酵乳のカードを、60メッシュのフィルタを用いて破砕した。その後、フィルタを通した発酵乳を容器内において25℃で1時間保持することで再セット化し、比較例1の発酵乳を製造した。
【0043】
<比較例2>
比較例2は、乳清たんぱく質分離物を含有していない発酵乳ベースを用意した。具体的には、生乳630g、生クリーム13g、脱脂濃縮乳80g、乳たんぱく質濃縮物30g、原料水217gを混合し、発酵乳ベース(SNF 11.4%、FAT 3.0%)を調製した。
【0044】
次いで、調製した発酵乳ベースを、95℃で5分間殺菌した後、乳酸菌スタータを30g添加して、43℃で3〜5時間、pHが4.4になるまで発酵させた。
【0045】
そして、得られた発酵乳のカードを、上記と同じ均質機を用いて、135L/hの流量、5MPaの圧力で破砕し、均質化した。次いで、粉砕した発酵乳を容器に充填して25℃で1時間保持することで再セット化し、比較例2の発酵乳を調製した。
【0046】
<乳たんぱく質及び乳清たんぱく質の含有量>
実施例1、2及び比較例1、2においてそれぞれ得られた発酵乳について、発酵乳全体に対して乳たんぱく質が占める割合(%)(表1中、「乳たんぱく質」と表記)と、発酵乳全体に対して乳清たんぱく質が占める割合(%)(表1中、「乳清たんぱく質」と表記)と、乳たんぱく質全体に対して乳清たんぱく質が占める割合(%)(表1中、「乳清たんぱく質/乳たんぱく質」と表記)と、をケルダール法により調べたところ、下記の表1に示すような結果が得られた。なお、ケルダール法を用いる際、窒素・たんぱく質換算係数は6.38とした。
【0047】
<平均粒子径>
次に、上述した実施例1、2及び比較例1、2について平均粒子径を測定した。ここで、発酵乳の平均粒子径は、レーザー回折式の粒度分布測定装置SALD−2200(島津製作所製)を用いて測定した。具体的には、発酵乳をイオン交換水で希釈し、この回折・散乱の光強度の分布の最大値が35〜75%(絶対値:700〜1500)になるように調整した。そして、粒度分布測定装置用のソフトウェアWingSALD IIを用いて、この光強度の分布を解析し、発酵乳中の固形分を構成する粒子の粒度分布を求め、平均粒子径を特定した。その結果、下記の表1に示すような結果が得られた。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示すように、破砕にフィルタを用いた比較例1では、発酵乳の平均粒子径が55μmとなり、20μm以上となった。一方、破砕に均質機を用いた実施例1、2及び比較例2では、発酵乳の平均粒子が20μm以下となり、フィルタを用いた場合よりも細かな粒子となることが確認できた。
【0050】
<粘度>
次に、上述した実施例1、2及び比較例1、2について粘度を測定したところ、上記の表1に示すような結果が得られた。本明細書中、発酵乳の粘度は、回転式B型粘度計(例えば、東機産業社製の「TVB10形粘度計」)を用いて、測定温度10℃で、No.4ローター(コードM23)を測定対象物中に侵入及び回転(60rpm、30秒間)させた後の測定値である。
【0051】
表1の比較例2から、乳たんぱく質全体に対して乳清たんぱく質が占める割合を25%未満にすると、均質機を用いてカードを均質化した後に、再セット化し難く、10℃における粘度が460mPa・sとなり、ほぼ液状になってしまうことが確認できた。一方、実施例1、2に示すように、乳たんぱく質全体に対して乳清たんぱく質が占める割合を25%以上にすることで、均質機を用いても、発酵乳が再セット化されて、10℃のときに1000mPa・s以上の高い粘度が得られることが確認できた。
【0052】
<官能評価試験>
次に、上述した実施例1、2及び比較例1、2の各発酵乳について、10人による官能評価検査を行い、食感について評価を行った。この官能評価試験では、実施例1、2及び比較例1、2の各発酵乳について、それぞれ70gずつ食し、そのときの舌先や口腔内での食感について評価した。その結果を表1に示す。
【0053】
表1に示すように、平均粒子径が55μm、10℃における粘度が3300mPa・sである比較例1の発酵乳の食感は、平均粒子径が30μm超と大きいため、強いザラツキが感じられた。このことから、カード破砕にフィルタを用い、破砕強度を低く抑えると、粘度が高く食べごたえがあるものの、平均粒子径も大きくなるため、食感のザラツキがあることが確認された。
【0054】
一方、カード破砕に均質機を用いてカードに高い破砕強度を与えた比較例2では、平均粒子径が小さく、食感にザラツキを感じず、滑らかさが増すものの、粘度が1000mPa・s未満に低下してしまっているため濃厚感等の食べごたえについて低下してしまった。
【0055】
これに対して、平均粒子径が5μm、10℃における粘度が5690mPa・sの実施例1の発酵乳では、平均粒子径が小さく、食感にザラツキを感じず滑らかであった。さらには、食感が滑らかであるにもかかわらず、粘度も高く、濃厚感等の食べごたえを感じた。平均粒子径が10μm、10℃における粘度が4200mPa・sの実施例2の発酵乳でも、食感は滑らかで、かつ濃厚感等の食べごたえがあった。
【0056】
実施例1、2では、カード破砕について、均質機を用いて高い破砕強度で実施しているものの、乳清たんぱく質を含有させていることで、破砕後の保持工程で再セット化が起こり、増径・増粘を誘発させることができた。その結果、緻密でなめらかな粘性と、濃厚でボディ感のある食感との両立を実現できた。
【0057】
以上より、安定剤・増粘剤を使用せずに、乳清たんぱく質の添加と、高い破砕強度でカード破砕とを行うことによって、緻密で滑らかな粘性と濃厚感を両立した発酵乳を実現できることが確認できた。