【解決手段】ポリオレフィン系樹脂、オレフィン系軟質樹脂成分、及び密着性付与剤を必須成分とするポリオレフィン系樹脂組成物であって、オレフィン系軟質樹脂成分として、(1)23℃での曲げ弾性率が100〜1600MPaであること、(2)230℃、21.18Nで測定した場合のMFRが5〜150g/10minであること、及び(3)ポリオレフィン系樹脂と混合したときのモルフォロジーが、ポリオレフィン系樹脂を連続相とし、オレフィン系軟質樹脂成分を分散相とした海島構造を形成し、かつ分散相の平均長さが0.1〜10μmであるものを使用することを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物。
ポリオレフィン系樹脂、オレフィン系軟質樹脂成分、及び密着性付与剤を必須成分とするポリオレフィン系樹脂組成物であって、上記オレフィン系軟質樹脂成分が、下記条件
(1)23℃での曲げ弾性率が100〜1600MPaであること、
(2)230℃、21.18Nにおけるメルトマスフローレイトが5〜150g/10minであること、及び
(3)上記ポリオレフィン系樹脂と混合したときのモルフォロジーが、ポリオレフィン系樹脂を連続相とし、オレフィン系軟質樹脂成分を分散相とした海島構造を形成し、かつ分散相の平均長さが0.1〜10μmであること、
を満たすことを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物。
上記密着性付与剤が、酸変性ポリオレフィン系樹脂単位及びエポキシ樹脂単位を有し、酸変性ポリオレフィン系樹脂単位とエポキシ樹脂単位がエステル構造で結合されていること、及びエポキシ樹脂単位中に2級水酸基が含有されている請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
上記オレフィン系軟質樹脂成分が、エチレン−プロピレンブロックコポリマー及び/又は酸変性ポリプロピレンである請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
上記ポリオレフィン系樹脂、オレフィン系軟質樹脂成分、及び密着性付与剤を、それぞれ(A)、(B)、及び(C)とするとき、それぞれの配合率が、(A)、(B)、及び(C)の合計に対し、(A)0.1〜97.5質量%、(B)2〜75質量%、及び(C)0.5〜70質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
上記配合率が、(A)、(B)、及び(C)の合計に対し、(A)40〜97質量%、(B)2〜49質量%、及び(C)1〜20質量%である請求項5に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書において、ポリオレフィン系樹脂を(A)成分ともいい、オレフィン系軟質樹脂成分を(B)成分ともいい、密着性付与剤を(C)成分ともいう。
【0018】
まず、(B)成分のオレフィン系軟質樹脂成分について説明する。なお以下は、煩雑な多数の例示を避けて代表的化合物のみ記載するものであり、本発明は、これら化合物に限定して解釈されるものではない。オレフィン系軟質樹脂成分は、耐衝撃性向上剤として機能する。
【0019】
オレフィン系軟質樹脂成分は、オレフィン類を主成分として含むモノマーを重合して得られる樹脂であり、それを構成するモノマー単位中にオレフィン類の単位を含む。ここで、軟質とはガラスや炭素といった無機系材料よりも延性が高く、軟らかく弾性を有する性質のことをいう。
オレフィン系軟質樹脂成分を構成するオレフィンの具体的な例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、1−オクテン等を挙げることができる。
【0020】
これらの化合物を1種類だけ重合させた単独重合体(ホモポリマー)でもよいし、2種類以上を組み合わせて重合させた共重合体(コポリマー)でもよいが、酸変性等の変性や異相共重合等の反応を行った変性タイプのものが適する。そして、少なくともプロピレンをモノマー単位に含む熱可塑性樹脂であることが好ましい。なお、異相共重合とはポリオレフィン系樹脂の製造過程で多段の反応槽を使って製造される特殊な共重合のことを指し、これにより製造された異相共重合体は通常の共重合体(コポリマー)とは異なるものとして扱う。例えば、エチレン−プロピレンブロックコポリマー(ブロックPP)は異相共重合体(異相コポリマー)であり、通常のエチレン−プロピレン共重合体(コポリマー)とは異なる共重合体として扱う。ブロックPPは(B)成分となり、通常のコポリマーは(A)成分となる。
【0021】
プロピレンをモノマー単位に含まない場合は、ポリオレフィン系樹脂組成物としたときにポリオレフィン系樹脂との相溶性が低下し、ポリオレフィン系樹脂組成物の成形物として、これに負荷をかけた際に、後述する連続相と分散相との界面が容易に破壊され強度等の物性が低下する恐れがあるとか、あるいは密着性付与剤との相溶性が良すぎるものとなって密着性付与剤の機能発現を妨げて、ポリオレフィン系樹脂組成物の成形物としたときの強度等の物性が不足する恐れがある。一方、プロピレンをモノマー単位に含む場合は、ポリオレフィン系樹脂とも密着性付与剤とも適度な相溶性又は非相溶性を保つことができる。
【0022】
また、オレフィン系軟質樹脂成分は熱を加えることで容易に塑性変形を生じる熱可塑性樹脂であることが好ましい。例えば、熱可塑性の乏しいネットワークポリマー等だと、流動性が不足し成形加工性が悪くなり生産効率が低下する。
【0023】
さらに、オレフィン系軟質樹脂成分は、ブロックPP及び/又は酸変性PPであることが好ましい。これらの樹脂成分は上記の他成分との相溶性の程度が適するだけでなく、剛性等の力学特性や耐衝撃性を比較的高いレベルで両立できる。
【0024】
酸変性PPの場合は、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性されたポリプロピレンであることがよく、ポリプロピレン中にカルボキシル基や無水カルボン酸基を有するものである。不飽和カルボン酸で変性させる場合は、その不飽和結合がポリプロピレンと反応することにより、ポリプロピレンにカルボキシル基や無水カルボン酸基が結合した酸変性PPとなる。
【0025】
ポリプロピレンを酸変性するために用いる不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、ソルビン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸等の不飽和カルボン酸が挙げられる。また、その不飽和カルボン酸の誘導体としては、酸無水物等があり、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水ナジック酸等が挙げられる。これらの中でも、不飽和ジカルボン酸及びその誘導体が好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0026】
オレフィン系軟質樹脂成分は23℃での曲げ弾性率が100〜1600MPaである。曲げ弾性率が100MPaより低すぎると、ポリオレフィン系樹脂組成物としたとき、炭素繊維強化複合材料及びその成形物としたときの高温時の寸法安定性が低下する恐れがあり、一方1600MPaより高すぎるとこれらの耐衝撃性が不足する恐れがある。耐衝撃性が不足するメカニズムは定かではないが硬脆い性質を有するため衝撃負荷を加えた際にオレフィン系軟質樹脂成分が塑性変形することでエネルギーを吸収する機能が低下するためと考えられる。
【0027】
オレフィン系軟質樹脂成分は230℃、21.18N(2.16kg)で測定した場合のMFRが5〜150g/10minである。好ましい範囲は5.5〜120g/10minである。MFRが5g/10minより低すぎると混練性が乏しいためポリオレフィン系樹脂組成物とした際に組成物内にムラができやすく、その結果成形品とした際の品質安定性が低下する恐れがある。一方でMFRが150g/minより高すぎると流動性が良いため成型加工性は良いものの、分子量が低いことに起因し成形物の強度等が低下する恐れがある。
【0028】
(B)成分のオレフィン系軟質樹脂成分は、(A)成分のポリオレフィン系樹脂と混合したときのモルフォロジーが、ポリオレフィン系樹脂を海とし、オレフィン系軟質樹脂成分を島とした海島構造を形成し、かつ分散相の平均長さが0.1〜10μmである。
この海島構造とは、ポリオレフィン系樹脂からなる相が連続相をなし、オレフィン系軟樹脂質成分からなる相が連続相中に分散して分散相となっている構造を意味する。海島構造となることは、両者は完全には相溶しないことを意味する。
【0029】
ここでモルフォロジーとは樹脂の微細構造のことを指し、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、走査型透過電子顕微鏡(STEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等の電子顕微鏡や、原子間力顕微鏡(AFM)、走査型プローブ顕微鏡(SPM)等により、ポリオレフィン系樹脂とオレフィン系軟質樹脂成分を溶融混合した組成物の断面を観察することで確認することができる。具体的な方法は、ミクロトームを使って樹脂組成物の表面を平滑化する面出しを行った後、BrukerAXS製Dimension Icon型SPM装置を用いて、プローブには先端曲率半径が10nm、ばね定数42N/mのBruker製TESPA NCHVをセットしタッピングモードでスキャンして観察することができる。なお、海島構造の確認は、実施例に記載の方法による。
【0030】
分散相の2次元形状は特に限定されないが、代表的な例を挙げると円状、だ円状、雫状、棒状、紐状、針状、角状、不定形状、が挙げられる。この中では特に円状乃至楕円状といった尖った部分を有さない形状で分散しているものが好ましい。好ましい理由は、局所的に過度に応力が集中することなく比較的等方的に分散するためである。
【0031】
分散相の平均長さは上記方法により観察して得られた位相差イメージをそのまま、又は位相差のコントラストを強調したイメージから読み取ることができる。オレフィン系軟質樹脂成分からなる分散相の平均長さは、100個以上の分散相長さを測定し、その分散相長さを算術平均して算出される。なお本発明では、ある1個の分散相の最大長さと最小長さの合計を2で割った値をその分散相の分散相長さと定義する。なお、分散相の最大長さ、最小長さとは、例えば、
図1中の符号121、122でそれぞれ表した距離のことである。
【0032】
また、オレフィン系軟質樹脂成分からなる分散相の平均長さは0.1〜10μmである。平均長さが0.1μmよりも小さいとポリオレフィン系樹脂組成物が破壊される過程で発生、進展するクラック端部の大きさと比較して小さすぎるため、破壊に対する抵抗が発揮されずに耐衝撃性等の物性が発現できなくなる恐れがある。一方10μmより大きいとポリオレフィン系樹脂組成物、ならびに炭素繊維強化複合材料及びその成形物としたときの剛性が低下する恐れがある。
【0033】
オレフィン系軟質樹脂成分は、メカニズムは定かではないが、下記のような機構により本発明の効果を発現すると思われる。すなわち、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物に負荷が加わった際にオレフィン系軟質樹脂成分自体が塑性変形に伴いエネルギーを吸収、又はオレフィン系軟質樹脂成分とポリオレフィン系樹脂との界面を起点に発生するクレイズを誘発する現象を経る過程でエネルギーを吸収することで耐衝撃性等の物性を発現するものと思われる。加えてポリオレフィン系樹脂との相溶性のバランスが適度な範囲に制御されたモルフォロジーを形成することでポリオレフィン系樹脂組成物とした際に、剛性等の力学特性を損なうことを極力抑制することができる。
【0034】
このようなオレフィン系軟質樹脂成分としては、市販品から適宜選択することができる。かかる市販品としては、ノバテックBC6C、BC4BSW、BC3AD、BC3L、BC2E、BC03C、BC03B、BC03GS、BC05B、BC06C、BC08F、BC10HRF(日本ポリプロ株式会社製)や、プライムTPO R110MP、R110E、T310E、M142E(株式会社プライムポリマー製)や、プライムポリプロBJS−MU、J704LB、J704UG、J705UG、J715M、J707G、J707EG、J830HV、J708UG、J709QG(株式会社プライムポリマー製)や、PM472W、PM671A、PM761A、PM854X、PM870A,PM870Z、PM970A、PM970W、PM972Z、PMA60Z、PMB60W、PMB60W、VMD81M、PB170A、PB270A、VB170A、VB370A、W、PC480A、PC684S(サンアロマー株式会社製)等のブロックPPや、モディックP502、P553A、P565、P555、P664V(三菱ケミカル株式会社製)や、OREVAC G 18720、18722、18725、18729、18732、18732P、18750、18751、CA100(アルケマ株式会社製)や、トーヨータックPMA−H1000P、PMA−H1100P、PMA−F2、M−100、M−300、M−213(東洋紡株式会社製)や、リケエイドREO−070−1、MG−250P、MG−400P(理研ビタミン株式会社製)や、ユーメックス100TS、110TS、1001、1010(三洋化成工業株式会社製)等の酸変性PPがある。
【0035】
次に、(A)成分のポリオレフィン系樹脂について説明する。
ポリオレフィン系樹脂は単純なエチレンやプロピレン等のオレフィンを含むモノマーから得られる樹脂であり、酸変性等の変性や異相共重合等の反応が行われていない未変性タイプのものが適する。
【0036】
モノマーとしてのオレフィンの具体的な例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、1−オクテン等を挙げることができる。
これらのオレフィンを1種類だけ重合させた単独重合体(ホモポリマー)でもよいし、2種類以上を共重合させた共重合体(コポリマー)でもよい。共重合体の例としては、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−ペンテン共重合体、プロピレン−ヘキセン共重合体、プロピレン−オクテン共重合体のような二元共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ヘキセン共重合体のような三元共重合体等が挙げられる。この中でもプロピレンの単独重合体であるプロピレンホモポリマーが特に好ましい。
【0037】
プロピレンホモポリマーは、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物が適切な流動性を保ち良好な成形性を示し、ポリオレフィン系樹脂組成物を成形物としたときの剛性の指標である曲げ弾性率が高いという効果がある。
【0038】
プロピレンホモポリマーは、重合触媒を用いてプロピレン等をスラリー重合、気相重合、又は液相塊状重合することにより製造でき、このようなプロピレン重合体を製造する重合方式としては、バッチ重合、連続重合のいずれの方式も使用することができる。
【0039】
なお、プロピレンホモポリマーを得るために用いられる触媒は、特に限定されるものではなく、公知の触媒が使用可能である。例えば、チタン化合物と有機アルミニウムを組み合わせた、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒、あるいは、メタロセン触媒が使用できる。この中でチーグラー・ナッタ触媒が好ましい。
【0040】
チーグラー・ナッタ触媒を使用することでポリマーに高い立体規則性を持たせることができ、なおかつ比較的高分子量のものが得られる。そのため、構造材料用途として必要な剛性、耐熱性(融点)、強度といった点で好適なプロピレンホモポリマーが得られる。
【0041】
このようなプロピレンホモポリマーは、市販品を適宜選択して使用することができる。市販品としては、プライムポリプロJ105G、J106G、J106MG、J108M、J−700GP(株式会社プライムポリマー製)や、ノバテックMA3 MA3H MA1B、SA08(日本ポリプロ株式会社製)や、PM600A、PM600D、PM801A、PM802A、PM900A、PM900C、PL400A、PL500A、PL801C、PLA00A、PLB00A、PS412M、VS200A、PC412A、PC600A、PC600S、PF600R、PHA03A(サンアロマー株式会社製)等が挙げられる。
【0042】
本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂のMFRの範囲は特に限定されるものではないが、5〜150g/10minの範囲が好ましい。MFRが5g/10minより低すぎると流動性が悪く成形加工性を損なうだけでなく、流動性が悪いと例えば炭素繊維とのコンパウンド時に繊維に過度な応力が加わることで繊維の折損を招き、炭素繊維強化複合材料としたときの物性低下の恐れがある。一方、MFRが150g/minより高すぎると流動性が良すぎるため溶融加工時に樹脂ダレが発生して外観が悪化する恐れがあるだけでなく、例えば炭素繊維とのコンパウンド時に繊維濃度が一定に保てずに強度がバラつく原因となる恐れがある。
本明細書において、MFRの測定条件は特に断らない限り、(B)成分の条件と同じである。
【0043】
次に、(C)成分の密着性付与剤について説明する。
密着性付与剤は、樹脂と繊維の密着性を改善する作用を有する。したがって、ポリオレフィン系樹脂と相溶性を有する単位と、繊維との接着性を高める単位、好ましくは水酸基のような極性基含有単位とを有するものであればよい。しかし、(B)成分のオレフィン系軟質樹脂成分であることはない。
【0044】
好適には、密着性付与剤は、ポリオレフィン系樹脂との相溶性を有する骨格と、密着作用を有するエポキシ樹脂単位との両方を、1分子中に含む構造のものである。このため、通常は相溶性が低いといわれる非極性ポリオレフィン系樹脂中に対して、エポキシ樹脂成分を分散性良く配置することができるので樹脂組成物に均一性を与える。その結果、応力集中による局部的な破壊を軽減することができ、安定して高い機械強度を発現することに寄与する。
より好ましくは、酸変性ポリオレフィン系樹脂単位及びエポキシ樹脂単位を有し、酸変性ポリオレフィン系樹脂単位とエポキシ樹脂単位がエステル構造で結合されていて、しかもエポキシ樹脂単位中に2級水酸基が含有される樹脂である。
【0045】
かかる樹脂は、酸変性ポリオレフィン系樹脂とエポキシ樹脂から得ることができる。
酸変性ポリオレフィン系樹脂の好ましい変性内容は上記の酸変性PPに対するものと同様であり、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0046】
一方の原料であるエポキシ樹脂は、エポキシ基を有するものであれば特に制限はなく、エポキシ基を2個以上含有する多官能エポキシ樹脂が好ましく、2級水酸基を有する2官能エポキシ樹脂が特に好ましい。例えば、ポリグリシジルエーテル化合物、ポリグリシジルアミン化合物、ポリグリシジルエステル化合物、脂環式エポキシ化合物、その他変性エポキシ樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらのエポキシ樹脂は単独で使用してもよいし、同一系のエポキシ樹脂を2種類以上併用して使用しても良く、また、異なる系のエポキシ樹脂を組み合わせて使用してもよい。なお、上記エポキシ樹脂には、いわゆるフェノキシ樹脂と称する高分子量エポキシ樹脂も含まれる。また、フェノキシ樹脂の骨格は特に制限はなく、様々な構造が使用できるが、ビスフェノールA骨格の構造が好ましい。
【0047】
ポリグリシジルエーテル化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルスルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルノボラック型エポキシ樹脂、芳香族変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β−ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレンジオールアラルキル型エポキシ樹脂、α−ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アルキレングリコール型エポキシ樹脂、脂肪族環状エポキシ樹脂等が挙げられる。
ポリグリシジルアミン化合物としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、メタキシレンジアミン型エポキシ樹脂、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、アニリン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
ポリグリシジルエステル化合物としては、例えば、ダイマー酸型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロフタル酸型エポキシ樹脂、トリメリット酸型エポキシ樹脂等が挙げられる。
脂環式エポキシ化合物としては、セロキサイド2021(ダイセル化学工業株式会社製)等の脂肪族環状エポキシ樹脂等が挙げられる。
その他変性エポキシ樹脂としては、例えば、ウレタン変性エポキシ樹脂、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリブタジエンゴム誘導体、CTBN変性エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、エポキシ変性メラミン樹脂、ポリビニルアレーンポリオキシド(例えば、ジビニルベンゼンジオキシド、トリビニルナフタレントリオキシド等)、リン含有エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0048】
酸変性ポリオレフィン系樹脂単位とエポキシ樹脂単位は、エステル構造で結合されており、エポキシ樹脂単位中に上記2級水酸基を含有する。エステル構造は、酸変性ポリオレフィン系樹脂のカルボキシル基又は酸無水物基と、エポキシ樹脂のエポキシ基又はヒドロキシ基から生じる結合単位であり、酸変性ポリオレフィン系樹脂単位とエポキシ樹脂単位は結合単位に係る部分を除いた単位であると理解される。なお、エポキシ樹脂は、エステル構造を形成する際、エポキシ基が開環するが、開環で生成した部位で、エステル構造に関与しない部位は、エポキシ樹脂単位に含まれる。
【0049】
反応生成物のエステル結合の存在は、IR吸収スペクトル測定によって、その有無を確認することができる。反応生成物を溶解する溶媒は通常無いため、IR吸収スペクトルの測定は、フィルム状にした後、反射法によって行われる。そのため、吸収スペクトルのピークの定量性はないが、エステル結合のピークの有無は確認可能であるので、エステル構造の存在はこれにより判定される。
エステル結合は、IR吸収スペクトルを測定することで、C=O伸縮による吸収が1735〜1750cm
−1に観測できることで確認できる。
エポキシ樹脂単位中に含まれる2級水酸基の有無は、IR吸収スペクトルを測定することで、O−H伸縮による吸収が3200〜3600cm
−1にブロードなピークとして観測できることで確認できる。
【0050】
密着性付与剤は、上記構造単位を有し、これらがエステル構造で結合し、エポキシ樹脂構造単位中に2級水酸基の構造を有しているものであることが好ましいが、これはどのような製法で得られたものでも良い。例えば、酸変性ポリオレフィン系樹脂とエポキシ樹脂との付加反応で得ることができるが、この方法に限定されない。
【0051】
次に、必須成分である(A)〜(C)成分、すなわちポリオレフィン系樹脂、オレフィン系軟質樹脂成分、及び密着性付与剤の配合率について説明する。
【0052】
ポリオレフィン系樹脂の配合率は0.1〜97.5質量%であることが好ましく、好ましくは5〜95質量%であり、さらに好ましくは10〜90質量%である。ポリオレフィン系樹脂は汎用の市販品が使用可能であるので、配合率が高いほどコスト的に有利であり、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上、有利には60質量%以上であることがさらに好ましい。しかし、オレフィン系軟質樹脂成分や密着性付与剤の配合率が少ないと、本発明の効果を好適に得ることができなくなる。
【0053】
オレフィン系軟質樹脂成分の配合率は2〜75質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜70質量%であり、さらに好ましくは10〜65質量%、最も好ましくは2〜49質量%である。2質量%未満だとポリオレフィン系樹脂組成物中での分散相の存在頻度が低すぎ、局所的に負荷をかけたときに負担がかかる場所に分散相が存在する確率が安定せず、結果として成形物としたときの力学特性の評価結果がバラつく原因となる恐れがあるため好ましくない。一方、75質量%より多いと成形物としたときの剛性低下を招く恐れがある。
【0054】
密着性付与剤の配合率は0.5〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜50質量%であり、さらに好ましくは1〜20質量%、あるいは2〜30質量%である。0.5質量%未満だと炭素繊維強化複合材料としたときの炭素繊維とポリオレフィン系樹脂組成物の強固な密着が担保できず強度等の力学特性を満足することができない恐れがある。一方、70質量%より多いと炭素繊維との相互作用が強すぎ、例えば炭素繊維強化複合材料の成形物を成形する際の成形物中の良好な炭素繊維の分散性を阻害する可能性が考えられる。
また、コスト的には(A)成分を主成分とし、(B)成分を50質量%未満、好ましくは2質量%以上、30質量%未満とし、(C)成分を10質量%未満、好ましくは2質量%以上、10質量%未満とすることが有利である。
【0055】
なお、ポリオレフィン系樹脂とオレフィン系軟質樹脂成分からなるポリマーブレンドが相分離し、かつ海島構造を形成する条件は、ポリオレフィン系樹脂の種類や、オレフィン系軟質樹脂成分の種類、及びその組み合わせによって異なるため、オレフィン系軟質樹脂成分が上記条件(3)を満たさない場合であっても、実際の配合時に条件(3)を満たせば、本発明の効果は得られる。
【0056】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物のMFRは特に限定するものではないが、50〜100g/10minが好ましい。50g/minより低すぎると、ポリオレフィン系樹脂組成物自体の成形加工性が悪化し、例えば成形体としたときにショートショットや、ウェルド強度の低下に繋がる恐れがある。加えて炭素繊維強化複合材料とする際に、炭素繊維への樹脂の含浸性が低すぎるため製造方法や製造条件が著しく限定されてしまう。一方で100g/minより高すぎると、例えば成形体としたときにバリが生じ、外観品質の悪化に繋がる恐れがある。
【0057】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、強化繊維、好ましくは炭素繊維を配合して繊維強化複合材料やその成形物とすることで本発明の効果を好適に発現することができる。
【0058】
強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維等が使用されるが、好ましくは炭素繊維である。炭素繊維としては、従来公知の種々の炭素繊維を使用することができ、市販のものを好適に用いることできる。例えば、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、気相成長系炭素繊維、及びこれらの黒鉛化繊維が挙げられる。なお、PAN系炭素繊維は、ポリアクリロニトリル繊維を原料とする炭素繊維であり、ピッチ系炭素繊維は、石油タールや石油ピッチを原料とする炭素繊維であり、セルロース系炭素繊維は、ビスコースレーヨンや酢酸セルロース等を原料とする炭素繊維であり、気相成長系炭素繊維は、炭化水素等を原料とする炭素繊維である。炭素繊維の種類は、特に制限はない。また、この炭素繊維は単独で使用するのみならず、複数の種類のものを混合して使用しても良い。
【0059】
また、ポリオレフィン系樹脂組成物には、必須成分の他に用途に応じて様々な熱可塑性樹脂や添加剤、例えば、分散剤、滑剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤(フェノール系酸化防止剤、リン酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤)、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶化促進剤(増核剤)、発泡剤、架橋剤、抗菌剤等の改質用添加剤、顔料、染料等の着色剤、カーボンブラック、酸化チタン、ベンガラ、アゾ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、クレー等の粒子状充填剤、ワラストナイト等の短繊維状充填剤、チタン酸カリウム等のウィスカー等を添加することができる。これらの添加剤は、ペレット製造時に添加してペレット中に含有させるか、ペレットから成形体を製造するときに添加してもよい。
【0060】
また、炭素繊維強化複合材料及びその成形体とする場合には、組成割合を調整するために、繊維強化樹脂組成物と同じポリプロピレン系樹脂等の熱可塑性樹脂からなる希釈剤を配合することができる。希釈剤との配合は、ドライブレンド方式を用いることができる。組成物中の繊維長を保持し、より高い剛性、耐衝撃性、耐久性の改良効果を得るために、ドライブレンド方式は、成形体を製造する際に適用する方が好ましい。
【0061】
次に本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を製造する方法について説明する。
【0062】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を製造する方法は特に限定されるものではないが、2種類以上の重合体を化学結合させブレンドポリマーを作成するいわゆるポリマーアロイの製造方法を好適に用いることができる。特に、各成分を均一に混合反応させる方法が好ましい。例えば、単軸又は二軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、又はミキシングロール等、公知の溶融混練機を用いることができる。
【0063】
混合温度は特に限定しないが、150〜250℃であり、好ましくは160〜240℃、より好ましくは165〜235℃である。ポリオレフィン系樹脂の融点より15〜20℃高い温度が特に好ましい。混合温度が150℃未満の場合、ポリオレフィン系樹脂が融解しないため均一に溶融混合できない恐れがある。また、混合温度が250℃を越える場合、分子鎖の切断による分子量低下が生じ、成形物としたときの強度低下を招く恐れがある。
【0064】
混合時間は特に限定しないが、通常の溶融混錬の場合は1〜30分間程度であればよい。混合温度にもよるが短すぎる場合は各成分が溶解又は溶融してからの時間が短すぎるため系内が均一な状態に達していない可能性があることから、ポリオレフィン系樹脂組成物が不均一となる恐れがある。一方、混合温度にもよるが長すぎる場合は各成分が分解等の劣化を生じる恐れがある。分子量が低下することにより、成形物とした際の機械強度が低下する恐れや、副生成物が生成することで分子鎖構造に架橋点が増えることにより、成形物とした際に耐疲労特性の悪化を招いたりする恐れがある。
【0065】
また、炭素繊維強化複合材料、ならびにその成形体の製造方法については、特に限定するものではないが、従来公知の方法を好適に用いることができる。
【0066】
成形する方法としては例えば、射出成形法、押出成形法、中空成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法、ガス注入射出成形法、発泡射出成形法等の公知の成形法をなんら制限なく適用できる。特に射出成形法、圧縮成形法、及び射出圧縮成形法が、短時間での成形が可能なことや2次加工性を有することも含めた良成形性といったCFRTPの特徴を活かすことができるの。
【0067】
成形温度は特に定めないが、樹脂組成物が分解等の劣化が生じない適切な温度が選定される。一方、樹脂組成物は、そうした成形温度域において適切な溶融粘度を示す材料が選定される。
【実施例】
【0068】
実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に、断りがない限り部は質量部を表し、%は質量%を表す。また、各種物性は、それぞれ以下の方法により測定した。
【0069】
(1)MFR:
JIS K 7210−1999に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
(2)引張降伏強さ、引張破壊強さ、引張弾性率、引張破壊歪:
万能材料試験機(インストロン社製、5582型)を使用した。室温にて、掴み部を含めた全長215mm、幅10mm、厚み4mmの寸法のダンベル試験片を、チャック間114mm、速度50mm/min.で引張試験を行い、得られた応力−歪線図から引張降伏強さ、引張破壊強さ、引張弾性率、引張破壊歪を求めた。
(3)曲げ強さ、曲げ弾性率:
全自動曲げ試験機(株式会社東洋精機製作所製、ベンドグラフ試験機)を使用した。室温にて、長さ80mm、幅10mm、厚み4mmの寸法の棒状試験片を速度2mm/min.で3点曲げ試験を行い、得られた応力−歪線図から曲げ強さ、曲げ弾性率を求めた。
(4)衝撃強さ:
シャルピー衝撃試験機(株式会社安田精機製作所製、No.258PC−S)を使用した。室温にて、試験片長手方向をMD方向とし、板厚を貫通する深さ2mmのVノッチを有した、長さ80mm、幅10mm、厚み4mmの衝撃試験片でシャルピー衝撃試験を行った。試験片の破壊前後でのハンマー位置エネルギーの差から吸収エネルギーを求め、シャルピー衝撃値とした。
(5)荷重たわみ温度:
荷重たわみ温度試験機(株式会社安田精機製作所製、No.148−HDPC−3)を使用した。長さ80mm、幅10mm、厚み4mmの多目的試験片に対し、スパン64mmで曲げ応力を与えた状態で油槽の温度を120℃/min.の速度で昇温し、規定のたわみ量(0.34mm)に達した時の温度を荷重たわみ温度とした。
【0070】
使用した材料の略号と物性値を以下に示す。
【0071】
(ポリオレフィン系樹脂)
(A−1):ポリプロピレンホモポリマー、日本ポリプロ株式会社製、SA08(MFR85g/10min)
【0072】
(オレフィン系軟質樹脂成分)
(B−1):ブロックPP、日本ポリプロ株式会社製、BC10HRF(曲げ弾性率1100MPa、MFR111g/10min)
(B−2):無水マレイン酸変性PP、三菱ケミカル株式会社製、モディックP565(曲げ弾性率600MPa、MFR5.7g/10min)
(B−3):無水マレイン酸変性PP、三菱ケミカル株式会社製、モディックP555(曲げ弾性率1200MPa、MFR6.2g/10min)
(B−4):水添スチレン系熱可塑性エラストマー、旭化成株式会社製、タフテックH1062(曲げ弾性率26MPa、MFR4.5g/10min)
【0073】
(その他)
PMA−H1000P:無水マレイン酸変性PP、東洋紡株式会社製、PMA−H1000P(曲げ弾性率1400MPa、MFR200g/10min以上)
YP−70:BPA/BPF共重合型フェノキシ樹脂、新日鉄住金化学株式会社製、フェノトートYP−70
2E4MZ−A:イミダゾール系触媒、四国化成工業株式会社製、キュアゾール2E4MZ−A
【0074】
(モルフォロジー)
オレフィン系軟質樹脂成分(B−1)〜(B−4)20部とポリオレフィン系樹脂(A−1)80部とをそれぞれドライブレンドした混合物を、2軸混錬押出成形機(日本製鋼所製、TEM26SS)に投入した後、200℃での溶融混合を行った。バレル先端のダイス口から吐出されたストランドを水槽で冷却した後、ペレタイザーで凡そ3mm長にカットし、さらに放冷してオレフィン系軟質樹脂成分とポリオレフィン系樹脂の混合物のペレットを得た。得られたペレットを、射出成形機(株式会社日本製鋼所製、J180AD)を用い、シリンダー温度230℃、金型温度40℃で射出成型して成形物を得た。得られた成形物の表面を、ミクロトームを使って平滑化する面出しを行って、モルフォロジー観察用及び分散相長さ測定用の試験片を得た。得られた試験片をBrukerAXS製Dimension Icon型SPM装置を用いて、23℃にて観察を行った。なおプローブには先端曲率半径が10nm、ばね定数42N/mのBruker製TESPA NCHVをセットしタッピングモードでスキャンして観察した。観察の結果得られた位相イメージから100個の分散相長さを測定し、各分散相長さを算術平均して平均長さを算出した。その結果を表1に示した。
ここで、モルフォロジーを模式的に表した
図1で説明する。100が海島構造であり、110が連続相を、120が分散相を表している。また、分散相の最大長さ及び最小長さとは、121及び122でそれぞれ表した距離のことである。
【0075】
【表1】
【0076】
合成例1
PMA−H1000Pを70部、YP−70を30部、2E4MZ−Aを1部ドライブレンドして混合物を得た後、その混合物を予めバレル内を170〜200℃に予備加熱しておいた2軸混錬押出成形機(上記)に投入して溶融混合を行った。溶融混合終了後、バレル先端のダイス口から吐出されたストランドを水槽で冷却したあと、ペレタイザーで凡そ3mm長にカットし、さらに放冷して、密着性付与剤(C−1)を得た。得られた密着性付与剤のエステル結合に由来するピーク、及び密着性付与剤の原料であるエポキシ樹脂の2級水酸基に由来するピークが有ることをFT−IRで確認した。
【0077】
実施例1
ポリオレフィン系樹脂として(A−1)72部、オレフィン系軟質樹脂成分として(B−1)23部、密着性付与剤として(C−1)5部をドライブレンドして混合物を得た後、その混合物を用いて、合成例1と同様な装置に、同様な操作を行い、組成物(P1)を得た。得られた組成物の機械物性を表2に示した。
【0078】
実施例2〜10
表2に示した配合比に変更した以外は実施例1と同様な操作を行い、組成物(P2)〜(P10)を得た。得られた組成物の機械物性を表2に示した。
【0079】
比較例1〜6
表3に示した配合比に変更した以外は実施例1と同様な操作を行い、組成物(HP1)〜(HP6)を得た。得られた組成物の機械物性を表3に示した。
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
実施例11
予めバレル内を170〜230℃に予備加熱しておいた2軸混錬押出成形機(上記)に、メーンホッパーからポリオレフィン系樹脂組成物として(P1)を70部供給し、次いでその下流のサイドホッパーから炭素繊維を30部となるよう供給し、溶融混合を行った。バレル先端のダイス口から吐出されたストランドを水槽で冷却したあと、ペレタイザーで凡そ3mm長にカットし、さらに放冷して、炭素繊維含有ポリオレフィン系樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを、射出成形機(上記)を用い、シリンダー温度230℃、金型温度40℃で射出成型することで成形物を得た。得られた成形物の機械物性を表4に示した。
【0083】
実施例12〜20
表4に示した組成物に変更した以外は実施例11と同様な操作を行い、成形物を得た。得られた成形物の機械物性を表4に示した。
【0084】
比較例7〜12
表5に示した組成物に変更した以外は実施例11と同様な操作を行い、成形物を得た。得られた成形物の機械物性を表5に示した。
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】
【0087】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を使用した炭素繊維強化ポリオレフィン系樹脂組成物の成形物は、比較例のポリオレフィン系樹脂組成物を使用した場合よりも曲げ特性や耐衝撃性等の機械物性が高いレベルで両立できていることがわかる。