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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-173056(P2019-173056A)
(43)【公開日】2019年10月10日
(54)【発明の名称】真空処理装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/56 20060101AFI20190913BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20190913BHJP
   H01L 21/673 20060101ALI20190913BHJP
【FI】
   C23C14/56 G
   H01L21/68 A
   H01L21/68 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-59796(P2018-59796)
(22)【出願日】2018年3月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岡 正
(72)【発明者】
【氏名】箱守 宗人
(72)【発明者】
【氏名】清水 豪
(72)【発明者】
【氏名】松岡 隆滋
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康正
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 重光
(72)【発明者】
【氏名】江藤 謙次
(72)【発明者】
【氏名】立川 晋輔
【テーマコード(参考)】
4K029
5F131
【Fターム(参考)】
4K029AA02
4K029AA09
4K029AA24
4K029BA43
4K029BC09
4K029CA05
4K029JA01
4K029JA05
4K029KA01
4K029KA09
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131AA33
5F131AA34
5F131BA03
5F131BA19
5F131BA23
5F131BB03
5F131CA15
5F131DA02
5F131DA09
5F131DA22
5F131DA33
5F131DA36
5F131DA42
5F131DA63
5F131DA68
5F131DB72
5F131DB76
5F131DC22
5F131EA03
5F131EA04
5F131EA05
5F131EA17
5F131EB11
5F131EB54
5F131EB72
5F131GA05
5F131GA22
5F131GA24
5F131GA26
5F131GA32
5F131GA52
5F131HA05
5F131HA06
5F131HA13
5F131HA22
5F131HA24
5F131HA35
(57)【要約】
【課題】トレイに対する水の吸着を抑えることを可能とした真空処理装置を提供する。
【解決手段】トレイ組立体Tに対する処理前の基板Sの取り付けと、トレイ組立体Tからの処理後の基板Sの取り外しとを行う着脱部を備える着脱室13と、トレイ組立体Tに取り付けられた処理前の基板Sに対して薄膜を形成するスパッタ室16とを備える。着脱部は、略水平の処理前の基板Sを略水平の第1トレイに取り付けた後に、処理前の基板Sが取り付けられたトレイ組立体Tを起立させた状態でトレイ搬送部32に受け渡し、かつ、処理後の基板Sが取り付けられた起立したトレイ組立体Tをトレイ搬送部32から受け取り、第1トレイを略水平に倒した後に、処理後の基板Sを第1トレイから取り外す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空中において、トレイに対する処理前の処理対象の取り付けと、前記トレイからの処理後の前記処理対象の取り外しとを行う着脱部を備える着脱室と、
真空中において、前記トレイに取り付けられた処理前の前記処理対象に対して所定の処理を行う処理室と、
処理前の前記処理対象を略水平の状態で前記着脱室に搬入して前記着脱部に受け渡し、かつ、処理後の前記処理対象を前記着脱部から受け取り、略水平の状態で前記着脱室から搬出する第1搬送部と、
前記処理対象が取り付けられた前記トレイを起立させた状態で前記着脱室と前記処理室との間で真空中を搬送する第2搬送部と、を備え、
前記着脱部は、略水平の処理前の前記処理対象を略水平の前記トレイに取り付けた後に、処理前の前記処理対象が取り付けられた前記トレイを起立させた状態で前記第2搬送部に受け渡し、かつ、処理後の前記処理対象が取り付けられた起立した前記トレイを前記第2搬送部から受け取り、前記トレイを略水平に倒した後に、処理後の前記処理対象を前記トレイから取り外す
真空処理装置。
【請求項2】
前記トレイは、第1トレイであり、
前記第1トレイは、前記第1トレイの外側において前記第1トレイを支持する第2トレイとともにトレイ組立体を構成し、
前記着脱部は、略水平の前記第1トレイに略水平の処理前の前記処理対象を取り付けた後に、処理前の前記処理対象が取り付けられた前記第1トレイを起立させ、前記第2トレイに前記第1トレイを取り付け、かつ、処理後の前記処理対象が取り付けられた起立した前記第1トレイを前記第2トレイから取り外し、前記第1トレイを略水平に倒した後に、前記第1トレイから処理後の前記処理対象を取り外す
請求項1に記載の真空処理装置。
【請求項3】
前記第2搬送部は、前記着脱室から前記処理室に向けて前記トレイを搬送するための第1レーンと、前記処理室から前記着脱室に向けて前記トレイを搬送するための前記第1レーンとは異なる第2レーンと、を含み、
前記着脱部は、処理前の前記処理対象を前記トレイ組立体とともに前記第1レーンに配置することによって、処理前の前記処理対象を前記第2搬送部に受け渡し、かつ、処理後の前記処理対象を前記トレイ組立体とともに前記第2レーンにおいて前記第2搬送部から受け取り、
前記真空処理装置は、前記処理対象を前記トレイ組立体とともに前記第1レーンから前記第2レーンに移載する移載部をさらに備える
請求項2に記載の真空処理装置。
【請求項4】
前記第1レーンと前記第2レーンとが並ぶ方向において、前記第1レーンおよび前記第2レーンとは異なる位置が着脱位置であり、
前記着脱部は、前記着脱位置において、前記第2トレイに前記第1トレイを取り付け、かつ、前記第2トレイから前記第1トレイを取り外す
請求項3に記載の真空処理装置。
【請求項5】
前記第1レーンと前記第2レーンとが並ぶ方向において、前記第1レーンの位置、または、前記第2レーンの位置が支持位置であり、
前記着脱部は、前記支持位置で前記第2トレイを支持し、処理前の前記処理対象が取り付けられた前記第1トレイを起立させて前記着脱位置に配置した後に、前記第2トレイの位置を前記支持位置から前記着脱位置に変更し、前記着脱位置において前記第1トレイに前記第2トレイを取り付ける
請求項4に記載の真空処理装置。
【請求項6】
前記処理室は、前記処理対象に対して透明導電性酸化物を主成分とする薄膜を形成する成膜部を備える
請求項1から5のいずれか一項に記載の真空処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタ装置には、搬入室、成膜室、および、搬出室が、1つの方向に沿って連結されたインライン型のスパッタ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。インライン型のスパッタ装置では、大気に開放された領域である移載領域においてトレイに取り付けられた成膜対象が、搬入室を介して減圧された成膜室に搬入される。そして、成膜室において、例えば透明導電性酸化物(Transparent Conductive Oxide:TCO)の薄膜が成膜対象に形成される。成膜後の成膜対象およびトレイは、搬出室を介して移載領域に搬出され、成膜対象がトレイから取り外される。成膜対象が取り外されたトレイには、成膜前の成膜対象が再び取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−129436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、成膜対象に対してTCOなどの薄膜が形成されるときには、成膜対象に加えてトレイにもTCOなどのスパッタ粒子が付着する。トレイの付着物は、トレイが大気に開放されると、大気中の水を吸着する。水を吸着した付着物がトレイとともに減圧された成膜室に搬入されると、トレイが配置された環境での水の飽和蒸気圧が変わることによって、付着物に吸着された水が、成膜室内に放出される。これにより、成膜室内の水の圧力が、付着物から放出された水によって左右され、結果として、成膜室の状態にばらつきが生じる。こうしたばらつきは、成膜対象に形成されるTCOなどの特性がばらつく一因であるため、トレイに対する水の吸着を抑えることが求められている。
【0005】
なお、こうした事象は、インライン型のスパッタ装置に限らず、処理対象を支持するトレイを繰り返し用いる真空処理装置に共通している。
本発明は、トレイに対する水の吸着を抑えることを可能とした真空処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための真空処理装置は、真空中において、トレイに対する処理前の処理対象の取り付けと、前記トレイからの処理後の前記処理対象の取り外しとを行う着脱部を備える着脱室と、真空中において、前記トレイに取り付けられた処理前の前記処理対象に対して所定の処理を行う処理室と、処理前の前記処理対象を略水平の状態で前記着脱室に搬入して前記着脱部に受け渡し、かつ、処理後の前記処理対象を前記着脱部から受け取り、略水平の状態で前記着脱室から搬出する第1搬送部と、前記処理対象が取り付けられた前記トレイを起立させた状態で前記着脱室と前記処理室との間で真空中を搬送する第2搬送部と、を備える。前記着脱部は、略水平の処理前の前記処理対象を略水平の前記トレイに取り付けた後に、処理前の前記処理対象が取り付けられた前記トレイを起立させた状態で前記第2搬送部に受け渡し、かつ、処理後の前記処理対象が取り付けられた起立した前記トレイを前記第2搬送部から受け取り、前記トレイを略水平に倒した後に、処理後の前記処理対象を前記トレイから取り外す。
【0007】
上記構成によれば、処理対象が取り付けられるトレイが大気に暴露されることなく、トレイに対する処理前の処理対象の取り付けと、トレイからの処理後の処理対象の取り外しとが行われる。それゆえに、トレイに大気中に含まれる水が吸着することが抑えられる。
【0008】
上記真空処理装置において、前記トレイは、第1トレイであり、前記第1トレイは、前記第1トレイの外側において前記第1トレイを支持する第2トレイとともにトレイ組立体を構成し、前記着脱部は、略水平の前記第1トレイに略水平の処理前の前記処理対象を取り付けた後に、処理前の前記処理対象が取り付けられた前記第1トレイを起立させ、前記第2トレイに前記第1トレイを取り付け、かつ、処理後の前記処理対象が取り付けられた起立した前記第1トレイを前記第2トレイから取り外し、前記第1トレイを略水平に倒した後に、前記第1トレイから処理後の前記処理対象を取り外してもよい。
【0009】
上記構成によれば、第1トレイと第2トレイとによって処理対象を支持することにより、処理対象をより強固に支持することが可能である。しかも、第2トレイは、真空処理装置内において起立した状態に維持されるため、処理対象を強固に支持しつつも、第2トレイが第1トレイとともに略水平に倒される構成と比べて、真空処理装置の設置面積が大きくなることが抑えられる。
【0010】
上記真空処理装置において、前記第2搬送部は、前記着脱室から前記処理室に向けて前記トレイを搬送するための第1レーンと、前記処理室から前記着脱室に向けて前記トレイを搬送するための前記第1レーンとは異なる第2レーンと、を含み、前記着脱部は、処理前の前記処理対象を前記トレイ組立体とともに前記第1レーンに配置することによって、処理前の前記処理対象を前記第2搬送部に受け渡し、かつ、処理後の前記処理対象を前記トレイ組立体とともに前記第2レーンにおいて前記第2搬送部から受け取り、前記真空処理装置は、前記処理対象を前記トレイ組立体とともに前記第1レーンから前記第2レーンに移載する移載部をさらに備えてもよい。
【0011】
上記構成によれば、真空処理装置が、第1レーン、第2レーン、および、移載部を備えるため、着脱室から処理室の間において、複数の処理対象を搬送することが可能である。これにより、第2搬送部が1つのレーンしか有しない構成と比べて、真空処理装置での処理の効率を高めることができる。
【0012】
上記真空処理装置において、前記第1レーンと前記第2レーンとが並ぶ方向において、前記第1レーンおよび前記第2レーンとは異なる位置が着脱位置であり、前記着脱部は、前記着脱位置において、前記第2トレイに前記第1トレイを取り付け、かつ、前記第2トレイから前記第1トレイを取り外してもよい。
【0013】
上記構成によれば、第2トレイに対する第1トレイの着脱が着脱位置において行われるため、第1レーンでのトレイ組立体の搬送と、第2レーンでのトレイ組立体の搬送とに、第2トレイに対する第1トレイの着脱が干渉することが抑えられる。
【0014】
上記真空処理装置において、前記第1レーンと前記第2レーンとが並ぶ方向において、前記第1レーンの位置、または、前記第2レーンの位置が支持位置であり、前記着脱部は、前記支持位置で前記第2トレイを支持し、処理前の前記処理対象が取り付けられた前記第1トレイを起立させて前記着脱位置に配置した後に、前記第2トレイの位置を前記支持位置から前記着脱位置に変更し、前記着脱位置において前記第1トレイに前記第2トレイを取り付けてもよい。
【0015】
上記構成によれば、第2トレイが着脱位置とは異なる支持位置に配置されているため、処理前の処理対象が取り付けられた第1トレイが起立したときに、第1トレイが第2トレイに衝突することが抑えられる。
【0016】
上記真空処理装置において、前記処理室は、前記処理対象に対して透明導電性酸化物を主成分とする薄膜を形成する成膜部を備えてもよい。上記構成によれば、処理室が、大気中の水を吸着しやすい透明導電性酸化物の薄膜を形成するため、トレイが大気に暴露されないことによる効果をより顕著に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】真空処理装置の一実施形態であるスパッタ装置における概略構成を示すブロック図。
図2】着脱室の構成を模式的に示すブロック図。
図3】着脱室の動作を模式的に示すブロック図。
図4】着脱室の動作を模式的に示すブロック図。
図5】着脱室の動作を模式的に示すブロック図。
図6】着脱室の動作を模式的に示すブロック図。
図7】着脱室の動作を模式的に示すブロック図。
図8】着脱室の動作を模式的に示すブロック図。
図9】着脱室の動作を模式的に示すブロック図。
図10】着脱室の動作を模式的に示すブロック図。
図11】着脱室の動作を模式的に示すブロック図。
図12】着脱室の動作を模式的に示すブロック図。
図13】着脱室の動作を模式的に示すブロック図。
図14】着脱室の動作を模式的に示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1から図14を参照して、真空処理装置をスパッタ装置として具体化した一実施形態を説明する。以下では、スパッタ装置の全体構成、着脱部の構成、および、着脱部の動作を順に説明する。
【0019】
[スパッタ装置の全体構成]
図1を参照して、スパッタ装置の全体構成を説明する。
図1が示すように、スパッタ装置10は、複数の真空室が一列に並んだインライン型のスパッタ装置である。スパッタ装置10は、搬出入室11、搬送室12、着脱室13、加熱室14、搬送室15、スパッタ室16、および、移載室17を備えている。これら真空室のなかで、搬出入室11と搬送室12との間、着脱室13と加熱室14との間、および、加熱室14と搬送室15との間には、ゲートバルブ21が位置している。各ゲートバルブ21は、ゲートバルブ21が開くことによって、ゲートバルブ21に接続した2つの真空室の間におけるトレイの移動を可能にする一方で、ゲートバルブ21が閉じることによって、ゲートバルブ21に接続した2つの処理室の間におけるトレイの移動を制限する。
【0020】
なお、搬送室12と着脱室13とは互いに連結されている。また、搬送室15、スパッタ室16、および、移載室17は、1つの方向である連結方向に沿って記載の順に連結されている。
【0021】
各真空室には、各真空室内を真空、すなわち大気圧に対して減圧するための排気部22が接続されている。排気部22は、各種のバルブおよび各種のポンプを含み、真空室内の圧力を大気圧未満の圧力に減圧する。なお、各真空室には、真空室内に所定の流量でガスを供給するガス供給部が接続されてもよい。この場合には、各真空室の圧力は、排気部による排気と、ガス供給部によるガスの供給とによって、大気圧未満の圧力に保たれる。
【0022】
搬出入室11は、処理前の基板Sをスパッタ装置10の外部から搬入し、処理後の基板Sをスパッタ装置10の外部に搬出する。基板Sは成膜対象の一例であり、例えばガラス基板や金属基板である。搬出入室11は、処理前の基板Sをスパッタ装置10の外部から搬出入室11に搬入するとき、および、処理後の基板Sを搬出入室11からスパッタ装置10の外部に搬出するときに、大気圧に昇圧される。一方で、搬出入室11は、処理前の基板Sを搬出入室11から搬送室12に搬出するとき、および、処理後の基板Sを搬送室12から搬出入室11に搬入するときに、真空に減圧される。
【0023】
着脱室13は、真空中において、トレイ組立体Tに対する処理前の基板Sの取り付けと、トレイ組立体Tからの処理後の基板Sの取り外しとを行う着脱部を備えている。トレイ組立体Tは基板Sの縁を取り囲む枠状を有し、基板Sの縁において基板Sを支持する。トレイ組立体Tは、処理前の基板Sに所定の薄膜が形成される間にわたって、スパッタ装置10内にて基板Sを支持する。トレイ組立体Tは金属製であり、トレイ組立体Tを形成する材料には、例えばステンレス鋼などを用いることができる。
【0024】
搬送室12には、第1搬送部の一例である搬送ロボット31が位置している。搬送ロボット31は、処理前の基板Sを略水平の状態で着脱室13に搬入して着脱部に受け渡し、かつ、処理後の基板Sを着脱部から受け取り、略水平の状態で着脱室13から搬出する。トレイ組立体Tによって支持されていない基板Sは、搬送ロボット31によって略水平の状態で搬送される。そのため、基板Sが起立した状態で搬送される場合に比べて、基板Sを基板Sの自重によって撓んだり変形したりすることを抑えながら搬送する機構を簡素化することができる。また、基板Sを支持する部材に基板Sを取り付けるための機構も簡素化することができる。搬送ロボット31は、搬出入室11に位置する処理前の基板Sを受け取り、搬送室12に搬入する。また、搬送ロボット31は、搬送室12に搬入した処理前の基板Sを搬送室12から着脱室13まで搬送する。
【0025】
スパッタ装置10は、処理室の一例としてスパッタ室16を備えている。スパッタ室16は、真空中において、トレイ組立体Tに取り付けられた処理前の基板Sに対して所定の処理を行う。本実施形態では、スパッタ室16は、カソード23を備え、スパッタ法を用いて基板Sの被成膜面に所定の薄膜を形成する。スパッタ室16は、基板Sに対して透明導電性酸化物(TCO)を主成分とする薄膜を形成するカソード23を備えることができる。カソード23は、成膜部の一例である。カソード23は、TCOを主成分とするターゲットを含んでいる。TCOには、例えば、IGZO、ITO、および、ZnOなどを挙げることができる。TCOは、トレイ組立体Tを構成する金属に比べて、大気中に含まれる水を吸着しやすい。
【0026】
加熱室14は、スパッタ室16において薄膜が形成される前の基板Sを所定の温度に加熱する。加熱室14は、基板Sを加熱するための加熱部を加熱室14の内部に有してもよいし、加熱室14の外部に有してもよい。なお、加熱室14は、スパッタ室16において薄膜が形成された後の基板Sを所定の温度に加熱してもよい。また、スパッタ装置10は、加熱室14に代えて、薄膜が形成される前の基板Sに所定の前処理を行う真空室、または、薄膜が形成された後の基板Sに所定の後処理を行う真空室、または、前処理と後処理との両方を行う真空室を備えてもよい。
【0027】
搬送室15は、加熱室14にて加熱された基板Sをスパッタ室16に搬送する。スパッタ装置10では、加熱室14とスパッタ室16との間に搬送室15が位置する。そのため、後述する第2レーン32Bは、基板Sが取り付けられたトレイ組立体Tを、移載室17からスパッタ室16に入るときから、スパッタ室16から搬送室15に出るまでの間において、一定の速度で搬送することができる。これにより、トレイ組立体Tが一定の速度で移動する間に基板Sの全体に薄膜を形成することができる。それゆえに、トレイ組立体Tの搬送速度に起因して、基板Sに形成された薄膜の状態、例えば薄膜の厚さなどがばらつくことが抑えられる。
【0028】
スパッタ装置10は、第2搬送部の一例であるトレイ搬送部32を備えている。トレイ搬送部32は、基板Sが取り付けられたトレイ組立体Tを起立させた状態で着脱室13とスパッタ室16との間で真空中を搬送する。本実施形態では、トレイ搬送部32は、着脱室13から移載室17までの間においてトレイ組立体Tを起立させた状態で搬送する。
【0029】
トレイ搬送部32は、第1レーン32Aと第2レーン32Bとを備えている。第1レーン32Aは、着脱室13からスパッタ室16に向けてトレイ組立体Tを搬送するためのレーンである。第2レーン32Bは、スパッタ室16から着脱室13に向けてトレイ組立体Tを搬送するためのレーンである。第2レーン32Bは、第1レーン32Aとは異なるレーンである。
【0030】
スパッタ装置10は、移載部24をさらに備えている。移載部24は、基板Sをトレイ組立体Tとともに第1レーン32Aから第2レーン32Bに移載する。第1レーン32A、第2レーン32B、および、移載部24を備えるため、着脱室13からスパッタ室16の間において、複数の基板Sを搬送することが可能である。これにより、トレイ搬送部32が1つのレーンしか有しない構成と比べて、スパッタ装置10での処理の効率を高めることができる。本実施形態では、スパッタ装置10は、移載室17に移載部24を備えている。
【0031】
本実施形態では、第1レーン32Aおよび第2レーン32Bは、それぞれ着脱室13から移載室17まで連結方向に沿って延びている。第1レーン32Aと第2レーン32Bとは、互いにほぼ平行である。第1レーン32Aと第2レーン32Bとが並ぶ方向が、配列方向である。配列方向において、第2レーン32Bとカソード23との間の距離は、第1レーン32Aとカソード23との間の距離よりも小さい。
【0032】
第1レーン32Aおよび第2レーン32Bは、例えば以下のように具体化される。第1レーン32Aおよび第2レーン32Bは、それぞれ連結方向に沿って並ぶ複数のローラーと、ローラーを回転させるためのモーターとを備えている。トレイ組立体Tは、各レーン32A,32Bが備えるローラーに配置されると、ローラーが回転することによって各レーン32A,32Bに沿って搬送される。なお、各レーン32A,32Bは、磁気によりトレイ組立体Tを浮上させた状態でトレイ組立体Tを搬送するように構成されてもよい。
【0033】
本実施形態では、第2レーン32Bを搬送される基板Sに対してスパッタ室16にて薄膜が形成されるが、第1レーン32Aを搬送される基板Sに対してスパッタ室16にて薄膜が形成されてもよい。この場合には、第1レーン32Aが、第1レーン32Aと第2レーン32Bとが並ぶ方向において、第2レーン32Bとカソード23との間に位置することが好ましい。言い換えれば、第1レーン32Aとカソード23との間の距離が、第2レーン32Bとカソード23との間の距離よりも小さいことが好ましい。
【0034】
第1レーン32Aでのトレイ組立体Tの搬送速度と、第2レーン32Bでのトレイ組立体Tの搬送速度とは、互いに同じでもよいし、互いに異なってもよい。本実施形態では、第1レーン32Aでのトレイ組立体Tの搬送速度が、第2レーン32Bでのトレイ組立体Tの搬送速度よりも高い。これにより、第1レーン32A上において、複数の処理前の基板Sを移載室17またはスパッタ室16内に並べることができる。言い換えれば、スパッタ室16での成膜処理の直前にて、複数の基板Sを待機させることができる。これにより、単位時間あたりに薄膜が形成される基板Sの枚数を多くすることができる。
【0035】
スパッタ装置10では、搬出入室11からスパッタ装置10内に基板Sが搬入されると、搬送ロボット31によって基板Sが着脱室13に搬送され、着脱室13にて基板Sがトレイ組立体Tに取り付けられる。そして、処理前の基板Sが取り付けられたトレイ組立体Tが、第1レーン32Aによって移載室17に搬送された後、移載部24によって第2レーン32Bに移載される。第2レーン32Bに移載されたトレイ組立体Tはスパッタ室16に搬送され、スパッタ室16内を搬送されている間に、基板Sに薄膜が形成される。薄膜が形成された基板Sを有するトレイ組立体Tが着脱室13に搬送された後、着脱室13にてトレイ組立体Tから基板Sが取り外される。トレイ組立体Tには、処理前の基板Sが着脱室13にて再び取り付けられる。
【0036】
スパッタ装置10において成膜処理が行われている間において、搬送室12から移載室17までの空間は、真空に保たれる。そのため、トレイ組立体Tは真空中において搬送されるのみであり、大気には暴露されない。
【0037】
[着脱部の構成]
図2を参照して、着脱室13が備える着脱部の構成を説明する。なお、以下では、着脱部の一例における構成を説明する。また、上述したトレイ組立体Tが、第1トレイと第2トレイとから構成され、第2トレイが、第1トレイの外側で第1トレイを支持する例を説明する。
【0038】
図2が示すように、第1レーン32Aと第2レーン32Bとが並ぶ方向が配列方向DAであり、複数の真空室が並ぶ方向が連結方向DCである。
着脱部40は、ステージ41、昇降ピン42、支持台43、回転軸44、トレイ支持部45、および、位置変更部46を備えている。ステージ41は、第1トレイT1と、基板Sとを支持する。ステージ41は、支持部41aと接続部41bとを備えている。支持部41aは、所定の平面に沿って広がる板状を有し、第1トレイT1と基板Sとを支持する。接続部41bは、支持部41aの一端において支持部41aに対して略直角に折れ曲がった部分である。接続部41bは、回転軸44に接続されている。
【0039】
ステージ41は、第1状態と第2状態とを有している。回転軸44の回転によって、ステージ41の状態は、第1状態と第2状態との間で変わる。第1状態は、支持部41aが略水平な面に沿って広がる状態であり、第2状態は、支持部41aが起立した状態である。なお、支持部41aが起立した状態であるとき、支持部41aは、垂直方向に対して1°以上10°以下の角度で傾いている。これにより、支持部41aによって支持された第1トレイT1および基板Sが、垂直方向に対して1°以上10°以下の角度で傾く。図2では、第1状態のステージ41が実線で示され、第2状態のステージ41が二点鎖線で示されている。
【0040】
ステージ41は、ステージ41の状態が第2状態であるときに、第1トレイT1を支持することが可能であり、かつ、第1トレイT1の支持を解除することが可能に構成されている。なお、例えば、以下の少なくとも1つの構成によって、ステージ41が第1トレイT1を支持することができる。ステージ41が、第1トレイT1の縁に位置する支持部を備えてもよい。また、ステージ41が、第1トレイT1の縁を支持する複数の支持ピンを備えてもよい。支持ピンは、第1状態と第2状態とを含む。第1状態は、基板Sの表面と対向する平面視において、支持ピンと第1トレイT1の一部とが重なる状態、すなわち、支持ピンが第1トレイT1を支持することが可能な状態である。第2状態は、基板Sの表面と対向する平面視において、支持ピンが第1トレイT1とは重ならない状態である。また、ステージ41が、基板Sを静電的に吸着する機構を備えてもよい。
【0041】
昇降ピン42は、垂直方向に沿った移動が可能に構成されている。昇降ピン42は、第1状態と第2状態とを有している。昇降ピン42は、昇降ピン42を垂直方向に沿って移動させるための昇降機構に接続されているが、図2では、昇降機構の図示が省略されている。
【0042】
昇降ピン42が第1状態であるとき、昇降ピン42は、昇降ピン42が第2状態であるときよりも垂直方向における下方に位置している。ステージ41が第1状態であり、かつ、昇降ピン42が第1状態であるとき、昇降ピン42の先端は、垂直方向において支持部41aの表面以下に位置している。これに対して、ステージ41が第1状態であり、かつ、昇降ピン42が第2状態であるとき、昇降ピン42の先端は、垂直方向において支持部41aの表面よりも上方に位置している。ステージ41が第1状態であり、かつ、昇降ピン42が第2状態であるとき、昇降ピン42は、第1トレイT1を支持部41aに位置させた状態で、基板Sのみを第1トレイT1から取り外す、言い換えれば基板Sを第1トレイT1よりも上方に位置させることができる。
【0043】
支持台43には、回転軸44が、回転軸44の中心軸を中心とする回転が可能な状態で取り付けられている。支持台43は、回転軸44を介して支持台43に接続されたステージ41を支持している。支持台43は、昇降ピン42が第1状態であるときに昇降ピン42を支持している。
【0044】
トレイ支持部45は、第1トレイT1と、第2トレイT2とが互いに接続されたトレイ組立体Tを支持可能に構成されている。トレイ支持部45は、起立したトレイ組立体Tを支持可能に構成されている。トレイ支持部45は、例えば着脱室13が備える真空槽に固定され、着脱室13における所定の位置にてトレイ組立体Tを支持する。
【0045】
位置変更部46は、第2トレイT2およびトレイ組立体Tを支持し、かつ、配列方向DAにおける第2トレイT2およびトレイ組立体Tの位置を変えることが可能に構成されている。配列方向DAにおいて、第1レーン32Aの位置が第1位置P1であり、第2レーン32Bの位置が第2位置P2である。第1位置P1と第2位置P2とは互いに異なる位置である。配列方向DAにおいて、第1位置P1および第2位置P2とは異なる位置が着脱位置PRである。着脱位置PRにおいて、第2トレイT2に対する第1トレイT1の取り付け、および、第2トレイT2からの第1トレイT1の取り外しが行われる。配列方向DAにおいて、着脱位置PR、第1位置P1、および、第2位置P2が、記載の順に並んでいる。
【0046】
位置変更部46は、トレイ組立体Tを支持した状態で、トレイ組立体Tの位置を着脱位置PRと第1位置P1との間、および、第2位置P2と着脱位置PRとの間で変える。位置変更部46は、位置変更部46が支持しているトレイ組立体Tを第1位置P1に位置させることによって、第1レーン32Aに配置する。位置変更部46は、位置変更部46が支持しているトレイ組立体Tを着脱位置PRに位置させることによって、第2状態であるステージ41にトレイ組立体Tを配置する。また、位置変更部46は、第2トレイT2を支持した状態で、第2トレイT2の位置を第1位置P1と着脱位置PRとの間で変える。
【0047】
[着脱部の動作]
図3から図14を参照して、着脱部40の動作を説明する。以下では、基板Sがトレイ組立体Tによって支持される場合の着脱部40の動作を、着脱部40の動作の一例として説明する。また、以下では、スパッタ室16において形成される薄膜が、TCO膜である例を説明する。なお、図3から図14では、図示および説明の便宜上、第1トレイT1、第2トレイT2、および、基板Sの断面構造をブロック図によって示している。
【0048】
着脱部40は、略水平の第1トレイT1に略水平の処理前の基板Sを取り付けた後に、処理前の基板Sが取り付けられた第1トレイT1を起立させ、第1トレイT1の外側において第1トレイT1を支持する第2トレイT2に第1トレイT1を取り付ける。着脱部40は、処理後の基板Sが取り付けられた起立した第1トレイT1を第2トレイT2から取り外し、第1トレイT1を略水平に倒した後に、第1トレイT1から処理後の基板Sを取り外す。
【0049】
これにより、基板Sが取り付けられるトレイ組立体Tが大気に暴露されることなく、トレイ組立体Tに対する処理前の基板Sの取り付けと、トレイ組立体Tからの処理後の基板Sの取り外しとが行われる。それゆえに、トレイ組立体Tに大気中に含まれる水が吸着することが抑えられる。以下、図3から図14を参照して、着脱部40の動作のより詳しく説明する。
【0050】
図3は、処理後の基板Sが取り付けられた第1トレイT1をステージ41が支持している状態を模式的に示している。
図3が示すように、ステージ41は第1状態であり、昇降ピン42も第1状態である。ステージ41は、略水平な支持部41aによって処理後の基板Sが取り付けられた第1トレイT1を支持している。位置変更部46は、配列方向DAにおける第1位置P1にて、起立した第2トレイT2を支持している。このとき、基板S上にはTCO膜が形成されている。加えて、第1トレイT1の一部、および、第2トレイT2の一部には、TCOを含む付着物が付着している。
【0051】
図4が示すように、昇降ピン42の状態が、第1状態から第2状態に変わる。これにより、昇降ピン42の先端が、支持部41aの表面よりも上方に突き出る。昇降ピン42の状態が第1状態から第2状態に変わる途中において、基板Sが第1トレイT1よりも上方に持ち上げられることによって、基板Sが第1トレイT1から取り外される。
【0052】
図5が示すように、搬送ロボット31が、処理後の基板Sを昇降ピン42から受け取り、処理後の基板Sを略水平の状態で着脱室13から搬送室12に向けて搬出する。次いで、搬送ロボット31は、搬送室12から着脱室13に搬入した処理前の基板Sを、昇降ピン42の先端に載置する。これにより、搬送ロボット31が、昇降ピン42を含む着脱部40に略水平の処理前の基板Sを受け渡す。なお、図5では、説明の便宜上、搬送ロボット31が処理後の基板Sを受け取る状態と、搬送ロボット31が処理前の基板Sを着脱部40に受け渡す状態とが同時に示されている。
【0053】
図6が示すように、着脱部40は位置決め部47をさらに備えている。位置決め部47は、例えば、位置決め部47が有する基準に対して基板Sを押し当てることによって、第1トレイT1の位置に対する基板Sの位置を合わせる。これにより、第1トレイT1の位置に対して基板Sの位置がずれることが抑えられる。
【0054】
図7が示すように、昇降ピン42の状態が、第2状態から第1状態に変わる。これにより、昇降ピン42の先端が、支持部41aの表面以下になるように、昇降ピン42が垂直方向における下方に移動する。昇降ピン42の状態が第2状態から第1状態に変わる途中において基板Sが第1トレイT1に載置されることによって、基板Sが第1トレイT1に取り付けられる。
【0055】
なお、例えば、以下の少なくとも1つの構成によって、第1トレイT1が基板Sを支持することができる。第1トレイT1が、第1トレイT1に載置された基板Sの縁に位置する支持部を備えてもよい。また、第1トレイT1が、第1トレイT1に載置された基板Sの縁を支持する複数の支持ピンを備えてもよい。支持ピンは、第1状態と第2状態とを含む。第1状態は、基板Sの表面と対向する平面視において、支持ピンと基板Sの一部とが重なる状態、すなわち、支持ピンが基板Sを支持することが可能な状態である。第2状態は、基板Sの表面と対向する平面視において、支持ピンが基板Sとは重ならない状態である。昇降ピン42が昇降するときには、支持ピンが第2状態であることによって、第1トレイT1に基板Sを取り付けること、および、第1トレイT1から基板Sを取り外すことに対して支持ピンが干渉しない。
【0056】
また、第1トレイT1が、基板Sを静電的に吸着する機構を備えてもよい。また、第1トレイT1と、第1トレイT1の縁を覆う枠状を有するマスクとによって、基板Sを挟んでもよい。この場合には、昇降ピン42が、基板Sを支持する基板用ピンと、マスクを支持するマスク用ピンとを含み、垂直方向において、基板Sよりも上方においてマスクを支持することが可能に構成されていればよい。これにより、昇降ピン42の昇降によって、第1トレイT1に基板Sとマスクとを取り付けること、および、第1トレイT1から基板Sとマスクとを取り外すことが可能である。
【0057】
図8が示すように、回転軸44が回転することによって、ステージ41の状態が、第1状態から第2状態に変わる。これにより、第1トレイT1が処理前の基板Sとともに起立する。このとき、第1トレイT1、ひいては基板Sは、垂直方向に対して1°以上10°以下の角度で傾いている。ステージ41は、処理前の基板Sが取り付けられた第1トレイT1を起立させることによって、第1トレイT1を配列方向DAにおける着脱位置PRに配置する。
【0058】
このとき、上述したように、位置変更部46は、第1位置P1において第2トレイT2を支持している。すなわち、配列方向DAにおける第1位置P1が支持位置の一例である。なお、位置変更部46は、第2位置P2において第2トレイT2を支持してもよい。第2トレイT2が着脱位置PRとは異なる第1位置P1または第2位置P2に配置されているため、処理前の基板Sが取り付けられた第1トレイT1が起立したときに、第1トレイT1が第2トレイT2に衝突することが抑えられる。
【0059】
図9が示すように、位置変更部46は、第2トレイT2の位置を第1位置P1から着脱位置PRに変更する。そして、位置変更部46とトレイ支持部45との協働によって、着脱部40は、着脱位置PRにおいて第1トレイT1に第2トレイT2を取り付ける。例えば、第2トレイT2が、第1トレイT1に取り付けられる嵌合部を含み、かつ、第1トレイT1が、第2トレイT2が取り付けられる被嵌合部を含んでいれば、嵌合部と被嵌合部とを嵌合させることによって、第2トレイT2に第1トレイT1を取り付けることができる。第1トレイT1が第2トレイT2に取り付けられた後、ステージ41による第1トレイT1の支持が解除される。
【0060】
図10が示すように、位置変更部46が、処理前の基板Sを第1トレイT1および第2トレイT2とともに、第1レーン32Aに配置する。これによって、着脱部40は、処理前の基板Sをトレイ搬送部32に受け渡す。次いで、トレイ組立体Tが処理前の基板Sとともに、第1レーン32Aに沿って移載室17まで搬送される。移載室17において、移載部24が、トレイ組立体Tを第1レーン32Aから第2レーン32Bに移載する。トレイ組立体Tは、第2レーン32Bに沿って搬送されることによって、スパッタ室16内を通過する。このとき、トレイ組立体Tに取り付けられた処理前の基板Sにスパッタ粒子が到達することによって、基板Sの被成膜面にTCO膜が形成される。加えて、トレイ組立体Tにも、TCOを主成分とするスパッタ粒子が付着する。
【0061】
図11が示すように、処理後の基板Sが取り付けられたトレイ組立体Tが着脱室13に到着するまでに、位置変更部46は、第1位置P1から第2位置P2に移動する。これにより、位置変更部46は、第2レーン32Bに沿って搬送されたトレイ組立体Tをトレイ搬送部32から受け取ることが可能である。
【0062】
図12が示すように、第2レーン32Bが着脱室13までトレイ組立体Tを搬送した後、位置変更部46が、第2レーン32Bからトレイ組立体Tを受け取る。言い換えれば、着脱部40が、処理後の基板Sをトレイ組立体Tとともに第2レーン32Bにおいてトレイ搬送部32から受け取る。
【0063】
図13が示すように、位置変更部46は、トレイ組立体Tの位置を第2位置P2から着脱位置PRに変える。次いで、第1トレイT1がステージ41によって支持され、かつ、第1トレイT1と第2トレイT2との接続が解除される。上述したように、第1トレイT1が被嵌合部を含み、かつ、第2トレイT2が嵌合部を含む場合には、嵌合部と被嵌合部との嵌合が解除される。
【0064】
図14が示すように、位置変更部46が、第2トレイT2の位置を着脱位置PRから第1位置P1に変更する。このように、着脱部40は、着脱位置PRにおいて、第2トレイT2に第1トレイT1を取り付け、かつ、第2トレイT2から第1トレイT1を取り外す。
【0065】
第2トレイT2に対する第1トレイT1の着脱が着脱位置PRにおいて行われるため、第1レーン32Aでのトレイ組立体Tの搬送と、第2レーン32Bでのトレイ組立体Tの搬送とに、第2トレイT2に対する第1トレイT1の着脱が干渉することが抑えられる。また、第1トレイT1と第2トレイT2とによって基板Sを支持することにより、基板Sをより強固に支持することが可能である。しかも、第2トレイT2は、スパッタ装置10内において起立した状態に維持されるため、基板Sを強固に支持しつつも、第2トレイT2が第1トレイT1とともに略水平に倒される構成と比べて、スパッタ装置10の設置面積が大きくなることが抑えられる。
【0066】
次いで、回転軸44が回転することによって、ステージ41の状態が第2状態から第1状態に変わる。なお、位置変更部46は、処理前の基板Sが取り付けられた第1トレイT1が着脱位置PRに配置されるまで、第1位置P1において、第2トレイT2を支持し続ける。図3から図14を参照して先に説明した着脱部40の動作が、スパッタ装置10における成膜処理が終了するまで繰り返される。
【0067】
このように、第1トレイT1および第2トレイT2は、スパッタ装置10のなかにおいて真空に維持される空間内を循環し、大気には暴露されない。そのため、第1トレイT1および第2トレイT2が、スパッタ装置10内にて複数回用いられることによって、TCOが付着した各トレイT1,T2は、真空に保たれた空間内に位置し続ける。それゆえに、トレイ組立体Tに水が吸着することが抑えられる。また、トレイ組立体Tが配置される空間の圧力が大きくは変動しないため、真空槽内、特にスパッタ室16内に、TCOを含む付着物から水が放出されることも抑えられる。スパッタ室16が、大気中の水を吸着しやすいTCOの薄膜を形成する構成であるため、トレイ組立体Tが大気に暴露されないことによる効果をより顕著に得ることができる。
【0068】
以上説明したように、真空処理装置の一実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)基板Sが取り付けられるトレイ組立体Tが大気に暴露されることなく、トレイ組立体Tに対する処理前の基板Sの取り付けと、トレイ組立体Tからの処理後の基板Sの取り外しとが行われる。それゆえに、トレイ組立体Tに大気中に含まれる水が吸着することが抑えられる。
【0069】
(2)第1トレイT1と第2トレイT2とによって基板Sを支持することにより、基板Sをより強固に支持することが可能である。しかも、第2トレイT2は、スパッタ装置10内において起立した状態に維持されるため、基板Sを強固に支持しつつも、第2トレイT2が第1トレイT1とともに略水平に倒される構成と比べて、スパッタ装置10の設置面積が大きくなることが抑えられる。
【0070】
(3)第1レーン32A、第2レーン32B、および、移載部24を備えるため、着脱室13からスパッタ室16の間において、複数の基板Sを搬送することが可能である。これにより、トレイ搬送部32が1つのレーンしか有しない構成と比べて、スパッタ装置10での処理の効率を高めることができる。
【0071】
(4)第2トレイT2に対する第1トレイT1の着脱が着脱位置PRにおいて行われるため、第1レーン32Aでのトレイ組立体Tの搬送と、第2レーン32Bでのトレイ組立体Tの搬送とに、第2トレイT2に対する第1トレイT1の着脱が干渉することが抑えられる。
【0072】
(5)第2トレイT2が着脱位置PRとは異なる第1位置P1に配置されているため、処理前の基板Sが取り付けられた第1トレイT1が起立したときに、第1トレイT1が第2トレイT2に衝突することが抑えられる。
【0073】
(6)スパッタ室16が、大気中の水を吸着しやすいTCOの薄膜を形成する構成であれば、トレイ組立体Tが大気に暴露されないことによる効果をより顕著に得ることができる。
【0074】
なお、上述した実施形態は、以下のように適宜変更して実施することができる。
[移載部]
・移載部24は、スパッタ室16以降において基板Sを第1レーン32Aから第2レーン32Bに移載することが可能であればよい。そのため、移載部24は、スパッタ室16内に配置されてもよい。この場合には、移載室17を省略することができる。
【0075】
[トレイ搬送部]
・トレイ搬送部32は、スパッタ室16において基板Sに薄膜を形成するときに、基板Sの位置をスパッタ室16内における所定の位置に固定してもよい。
【0076】
・トレイ搬送部32は、トレイ組立体Tを搬送するレーンを1つのみ備えてもよい。この場合であっても、トレイ搬送部32によって搬送されている基板Sに対して処理を行うことは可能である。また、この場合には、移載部24を省略することができる。
【0077】
[着脱部]
・着脱部40は、第1位置P1において第2トレイT2に対する第1トレイT1の着脱を行ってもよい。この場合であっても、着脱部40は、第1レーン32Aにトレイ組立体Tを受け渡すことは可能である。
【0078】
・着脱部40は、第1トレイT1が取り付けられる前の第2トレイT2を着脱位置PRに位置させ、かつ、第1トレイT1を起立させると同時に、第1トレイT1を第2トレイT2に取り付けることが可能でもよい。
【0079】
[スパッタ室]
・スパッタ室16は、TCO以外の薄膜を基板Sに形成してもよい。スパッタ室16が形成する薄膜には、金属、半導体、絶縁体、および、金属化合物などを挙げることができる。
【0080】
[トレイ]
・基板Sは第1トレイT1のみによって支持されてもよい。この場合には、着脱部40は、第1トレイT1に処理前の基板Sを取り付けた後に、第1トレイT1と基板Sとを起立させることによって着脱位置PRに位置させる。そして、着脱部40は、第1レーン32Aに第1トレイT1と基板Sとを配置することによって、基板Sをトレイ搬送部32に受け渡す。また、着脱部40は、処理後の基板Sを支持する第1トレイT1をトレイ搬送部32から受け取り、着脱位置PRにおいて第1トレイT1を略水平に倒した後、第1トレイT1から処理後の基板Sを取り外す。
【0081】
[真空処理装置]
・真空処理装置は、上述したスパッタ装置10に限らず、スパッタ法とは異なる成膜法によって基板Sに薄膜を形成する成膜装置であってもよい。成膜装置には、例えば、蒸着装置、および、CVD装置などを挙げることができる。
【0082】
・真空処理装置は、上述したスパッタ装置10に限らず、処理対象に対して真空下にて所定の処理を行う装置であってもよい。真空処理装置が行う処理には、例えば、イオンビームや各種の光を照射する照射処理、および、エッチング処理などを挙げることができる。こうした処理では、基板Sに対する処理によってトレイには付着物が付着しない。しかしながら、トレイも付着物よりは少ないものの大気中の水を吸着するため、これらの処理を行う処理装置であっても、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【符号の説明】
【0083】
S…基板、T…トレイ組立体、T1…第1トレイ、T2…第2トレイ、10…スパッタ装置、11…搬出入室、12,15…搬送室、13…着脱室、14…加熱室、16…スパッタ室、17…移載室、21…ゲートバルブ、22…排気部、23…カソード、24…移載部、31…搬送ロボット、32…トレイ搬送部、32A…第1レーン、32B…第2レーン、40…着脱部、41…ステージ、41a…支持部、41b…接続部、42…昇降ピン、43…支持台、44…回転軸、45…トレイ支持部、46…位置変更部、47…位置決め部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14