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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-173699(P2019-173699A)
(43)【公開日】2019年10月10日
(54)【発明の名称】太陽熱発電システム
(51)【国際特許分類】
   F03G 6/00 20060101AFI20190913BHJP
   F02C 1/05 20060101ALI20190913BHJP
   F24S 60/20 20180101ALI20190913BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20190913BHJP
【FI】
   F03G6/00 521
   F02C1/05
   F24S60/20
   F28D20/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-64751(P2018-64751)
(22)【出願日】2018年3月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】岩間 直樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】神谷 啓志
(57)【要約】
【課題】DSG方式に適した蓄熱装置を備え、昼夜両方において効率よく発電が可能な太陽熱発電システムを提供すること。
【解決手段】太陽熱集熱装置21、22と、蒸気タービン31と、発電機32と、熱媒体との熱交換を行って蓄熱及び放熱を行う蓄熱装置4と、復水器51と、復水された水を貯留する水タンク52と、水タンク52から水を圧送する給水ポンプ53とを有する。太陽熱集熱装置21、22から供給された加熱蒸気により蓄熱装置4への蓄熱と蒸気タービン31の運転とを行う昼運転モードと、蓄熱装置4の放熱を受けて加熱された加熱蒸気により蒸気タービン31の運転を行う夜運転モードとが切り替え可能である。蓄熱装置4は、脱水及び水和反応により蓄熱及び放熱が可能な化学蓄熱材を内蔵し、化学蓄熱材の反応に伴って放出又は導入する反応水として、熱媒体を利用するよう構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集熱した太陽熱により水からなる熱媒体を直接加熱して加熱蒸気を生成する太陽熱集熱装置と、
加熱蒸気により駆動する蒸気タービンと、
該蒸気タービンの動力により発電を行う発電機と、
前記熱媒体との熱交換を行って蓄熱及び放熱を行う蓄熱装置と、
前記蒸気タービンから排出される蒸気を復水する復水器と、
復水された水を貯留する水タンクと、
該水タンクから水を圧送する給水ポンプと、
を有し、
前記太陽熱集熱装置から供給された加熱蒸気により前記蓄熱装置への蓄熱と前記蒸気タービンの運転とを行う昼運転モードと、前記蓄熱装置の放熱を受けて加熱された加熱蒸気により前記蒸気タービンの運転を行う夜運転モードとを切り替え可能に構成されており、
前記蓄熱装置は、化学反応により蓄熱及び放熱が可能な化学蓄熱材を内蔵し、前記蓄熱装置は、前記熱媒体を介して熱を授受する前記化学蓄熱材の反応に伴って放出又は導入する反応水として、前記熱媒体を利用するよう構成されている、太陽熱発電システム。
【請求項2】
前記昼運転モードにおいては、前記太陽熱集熱装置から供給された加熱蒸気が、前記蓄熱装置において蓄熱された後に、前記蒸気タービンに供給される、請求項1に記載の太陽熱発電システム。
【請求項3】
前記昼運転モードにおいては、前記太陽熱集熱装置から供給された加熱蒸気が、前記蓄熱装置において蓄熱された後に、さらに同一又は別個の前記太陽熱集熱装置において再加熱された後に、前記蒸気タービンに供給される、請求項1に記載の太陽熱発電システム。
【請求項4】
前記太陽熱発電システムは、複数の前記太陽熱集熱装置と複数の前記蓄熱装置を備えており、
前記昼運転モードにおいては、前記熱媒体が、少なくとも、第1の前記太陽熱集熱装置、第1の前記蓄熱装置、第2の前記太陽熱集熱装置、及び第2の前記蓄熱装置を順次通過した後、前記蒸気タービンに供給されると共に、第1及び第2の前記蓄熱装置から放出された前記反応水が前記復水器の上流側の前記熱媒体に合流し、
前記夜運転モードにおいては、前記熱媒体の流路が分岐して夜本流と夜分流とを形成し、夜本流の前記熱媒体が第1及び第2の前記蓄熱装置にそれぞれ供給され、加熱された後、合流して前記蒸気タービンに供給されると共に、夜分流の前記熱媒体が第1及び第2の前記蓄熱装置にそれぞれ反応水として供給されるように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽熱発電システム。
【請求項5】
前記太陽熱発電システムは、複数の前記太陽熱集熱装置を備えており、
前記昼運転モードにおいては、第1の前記太陽熱集熱装置を通過した前記熱媒体の流路が分岐して昼本流と昼分流とを形成し、昼本流の前記熱媒体が前記蒸気タービンに供給され、昼分流の前記熱媒体が第2の前記太陽熱集熱装置と前記蓄熱装置を順次通過した後、再び第2の前記太陽熱集熱装置及び前記蓄熱装置を順次通過する繰り返し循環を続けると共に、前記蓄熱装置から放出された反応水が前記復水器の上流側の前記熱媒体に合流し、
前記夜運転モードにおいては、前記熱媒体の流路が分岐して夜本流と夜分流とを形成し、夜本流の前記熱媒体が前記蓄熱装置に供給され、加熱された後、前記蒸気タービンに供給されると共に、夜分流の前記熱媒体が前記蓄熱装置に反応水として供給されるように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽熱発電システム。
【請求項6】
前記蓄熱装置には、さらに別の前記蓄熱装置が少なくとも1個以上直列で連結されており、前記熱媒体からの蓄熱及び前記熱媒体への伝熱を複数段階で実施可能に構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽熱発電システム。
【請求項7】
前記太陽熱発電システムは、前記昼運転モードにおいて前記熱媒体の一部を備蓄するアキュームレータをさらに備え、前記蓄熱装置は、前記夜運転モードにおいて、前記アキュームレータから導出される前記熱媒体を前記反応水として用いて放熱するよう構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽熱発電システム。
【請求項8】
前記給水ポンプから圧送された前記熱媒体が前記復水器を通過して予熱されるように構成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の太陽熱発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自然エネルギーを利用した発電システムの一つとして、太陽から発せられる熱エネルギーを利用して発電を行う太陽熱発電システムがある。太陽熱発電システムは、日照量の多い昼間においては、太陽熱を集熱して直接又は熱媒体を介して間接的に水(水又は蒸気)を加熱して過熱蒸気または飽和蒸気(以下、これらを総称して、「加熱蒸気」という。)を生成し、当該蒸気により蒸気タービンを回し、蒸気タービンに接続された発電機により発電を行うよう構成されている。そして、日照のない夜間においては、昼間に太陽熱の一部を蓄熱装置に蓄熱しておき、当該蓄熱装置からの放熱により加熱蒸気を生成して前記と同様に発電を行うよう構成されることが多い。
【0003】
このような太陽熱発電システムにおいて、太陽熱を伝受する熱媒体として油や溶融塩等の水以外の熱媒体を用い、熱媒体と水との熱交換を行って加熱蒸気を生成する方式と、水を熱媒体として用い、直接的に加熱蒸気を生成する方式とがある。現在は、前者の水以外の熱媒体を利用する方式が主流となっている。
【0004】
太陽熱発電システムを有効活用するには、夜間発電をこれまで以上に効率よく行う必要がある。夜間発電を行うには、昼間に蓄熱し、夜間に放熱して直接又は熱媒体を介して間接的に水を加熱できる蓄熱装置の利用が不可欠である。熱媒体として油や溶融塩等を用いて熱媒体と水との熱交換を行って加熱蒸気を生成する方式では、熱媒体そのものを貯蔵して蓄熱装置とすることができる。一方、熱媒体として水を用いるDSG(Direct Steam Generation)方式を利用したシステムでは加熱蒸気等の熱媒体を貯蔵する蓄熱装置が利用される場合がある。それらは長時間貯蔵・利用には不向きであるにも関わらず、巨大な装置が必要になる。
【0005】
一方で、設備コスト、伝授した太陽熱からの発電効率、環境面及びシステム構成のシンプル化等の観点では、熱媒体として水を用いるDSG方式を利用したシステムが有利であると考えられており、優れた蓄熱装置の開発が望まれている。
【0006】
従来の太陽熱発電システムとしては、例えば、特許文献1〜3に記載のものが知られているが、これらのシステムにおいては改善すべき点が多い。特許文献1の技術は、DSG方式を採用したものであって、蓄熱装置として、水の状態、つまり、過熱蒸気、飽和蒸気、及び飽和水の状態にそれぞれ対応する3種類の蓄熱タンクを備えるものである。しかし、3種類もの蓄熱装置を備えることは、システムが複雑となり、設備コストも高くなってしまう。
【0007】
特許文献2の技術は、DSG方式を採用したものであって、固体顕熱蓄熱材を利用した蓄熱装置を有することを特徴とするものである。固体顕熱材としては、安価なコンクリート、砂、小石、モルタルなどを使用することができる。しかし、長時間貯蔵の場合には、放熱によるロスが発生して蒸気温度が安定せず、給電が不安定となる。また蓄熱材の蓄熱密度が低いために蓄熱装置が巨大で広大な設置スペースが必要となる。
【0008】
特許文献3の技術は、DSG方式を採用したものであって、過熱蒸気で発電する主発電システムと、飽和蒸気で発電する副発電システムとを備えることを特徴とするものである。しかし、主発電システムが昼間のみの発電で夜間は停止してしまうので、主発電システムの効率が低下してしまう。また発電機を主と副と2つ設置が必要なため、投資コストが増加する。さらには蓄熱装置に溶融塩を使用しているため、熱交換器が必要でコスト高になると共に、蓄熱装置が巨大で広大な設置スペースが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014−092086号公報
【特許文献2】特開2017−155667号公報
【特許文献3】特開2017−014971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、太陽熱発電システムとしてDSG方式を採用した技術は従来より種々提案されているものの、DSG方式に適した蓄熱装置を備えているとはいえず、昼夜間を通じて効率よく発電できる状態にはない。
【0011】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、DSG方式に適した蓄熱装置を備え、昼夜間を通じて効率よく発電が可能な太陽熱発電システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、集熱した太陽熱により水からなる熱媒体を直接加熱して加熱蒸気を生成する太陽熱集熱装置と、
加熱蒸気により駆動する蒸気タービンと、
該蒸気タービンの動力により発電を行う発電機と、
前記熱媒体との熱交換を行って蓄熱及び放熱を行う蓄熱装置と、
前記蒸気タービンから排出される蒸気を復水する復水器と、
復水された水を貯留する水タンクと、
該水タンクから水を圧送する給水ポンプと、
を有し、
前記太陽熱集熱装置から供給された加熱蒸気により前記蓄熱装置への蓄熱と前記蒸気タービンの運転とを行う昼運転モードと、前記蓄熱装置の放熱を受けて加熱された加熱蒸気により前記蒸気タービンの運転を行う夜運転モードとを切り替え可能に構成されており、
前記蓄熱装置は、化学反応により蓄熱及び放熱が可能な化学蓄熱材を内蔵し、前記蓄熱装置は、前記熱媒体を介して熱を授受する前記化学蓄熱材の反応に伴って放出又は導入する反応水として、前記熱媒体を利用するよう構成されている、太陽熱発電システムにある。
なお、上記夜運転モードとは夜間に限らず、昼間で曇天等の日照が不十分な場合も含む。
【発明の効果】
【0013】
前記太陽熱発電システムにおいては、前記のごとく、熱媒体として水(水、蒸気、水と蒸気の混合状態を含む。以下、同様。)を用いるDSG方式を採用した上で、化学蓄熱材を内蔵した蓄熱装置を積極的に採用している。化学蓄熱材は、熱媒体からの伝熱を受けて反応水(水、蒸気、水と蒸気の混合状態を含む。以下、同様。)を放出する化学反応を起こして蓄熱し、反応水との化学反応を起こして放熱する特性を有している。そして、その可逆反応を利用して繰り返し蓄熱・放熱が可能であるとともに、蓄熱エネルギー密度も高く、長時間の安定した放熱利用が可能である。
【0014】
ここで、前記太陽熱発電システムにおいては、化学蓄熱材の反応に伴って放出又は導入する反応水として、前記熱媒体を利用するよう構成されている。つまり、前記熱媒体として用いる水を、化学蓄熱材の反応水にも流用している。この構成を積極的に採用することによって、蓄熱装置を含む配管構成がシンプルとなり、かつ、昼運転モードの際は、反応水を熱媒体の一部として取り込み、夜運転モードの際には、熱媒体の一部を反応水として供給することにより、容易に蓄熱及び放熱を制御することができる。
【0015】
そして、上述したごとく、化学蓄熱材の優れた蓄熱特性を十分に発揮させることにより、従来のDSG方式の太陽熱発電システムよりも、昼夜間を通じて効率よく発電が可能な太陽熱発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1における、太陽熱発電システムの構成を示す説明図。
図2】実施例2における、太陽熱発電システムの構成を示す説明図。
図3】実施例3における、太陽熱発電システムの構成を示す説明図。
図4】実施例4における、太陽熱発電システムの構成を示す説明図。
図5】実施例5における、太陽熱発電システムの構成を示す説明図。
図6】実施例6における、太陽熱発電システムの構成を示す説明図。
図7】実施例7における、太陽熱発電システムの構成を示す説明図。
図8】実施例8における、太陽熱発電システムの構成を示す説明図。
図9】実施例9における、太陽熱発電システムの構成を示す説明図。
図10】実施例10における、太陽熱発電システムの構成を示す説明図。
図11】実施例11における、太陽熱発電システムの構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
前記太陽熱発電システムにおいて、太陽熱集熱装置としては、トラフ型、フレネル型、タワー型、ディッシュ型等の種々の形式を採用することができる。その他、蒸気タービン、発電機、復水器、給水ポンプ、配管構成その他の構成物についても、公知の種々のものを採用することができる。
【0018】
また、前記蓄熱装置としては、上述したごとく、化学反応により蓄熱及び放熱を行う化学蓄熱材を内蔵したものを採用する。この種の化学蓄熱材としては、例えば、石灰(CaO/Ca(OH)2)、MgO/Mg(OH)2等がある。
【0019】
また、前記太陽熱発電システムにおける昼運転モードにおいては、前記太陽熱集熱装置から供給された加熱蒸気を用いて前記蓄熱装置に蓄熱するとともに、前記太陽熱集熱装置から供給された加熱蒸気を用いて前記蒸気タービンの運転を行う。この場合、太陽熱集熱装置において加熱する水は、常温の水からなる熱媒体であっても、予め蓄熱装置において予熱された熱媒体であっても、別の太陽熱集熱装置によって予熱されたものでもよい。また、蒸気タービンに供給される加熱蒸気は、太陽熱集熱装置から直接送られたものであっても、一旦蓄熱装置を通過して一部の熱が奪われた後のものでもよい。
【0020】
すなわち、例えば、前記昼運転モードにおいては、前記太陽熱集熱装置から供給された加熱蒸気が、前記蓄熱装置において蓄熱された後に、前記蒸気タービンに供給される構成にすることができる。
【0021】
また、例えば、前記昼運転モードにおいては、前記太陽熱集熱装置から供給された加熱蒸気が、前記蓄熱装置において蓄熱された後に、さらに同一又は別個の前記太陽熱集熱装置において再加熱された後に、前記蒸気タービンに供給される構成にすることもできる。
【0022】
また、前記太陽熱発電システムは、複数の前記太陽熱集熱装置と複数の前記蓄熱装置を備えており、
前記昼運転モードにおいては、前記熱媒体が、少なくとも、第1の前記太陽熱集熱装置、第1の前記蓄熱装置、第2の前記太陽熱集熱装置、及び第2の前記蓄熱装置を順次通過した後、前記蒸気タービンに供給されると共に、第1及び第2の前記蓄熱装置から放出された前記反応水が前記復水器の上流側の前記熱媒体に合流し、
前記夜運転モードにおいては、前記熱媒体の流路が分岐して夜本流と夜分流とを形成し、夜本流の前記熱媒体が第1及び第2の前記蓄熱装置にそれぞれ供給され、加熱された後、合流して前記蒸気タービンに供給されると共に、夜分流の前記熱媒体が第1及び第2の前記蓄熱装置にそれぞれ反応水として供給されるように構成してもよい。
【0023】
この場合には、複数の太陽熱集熱装置と複数の蓄熱装置とを組み合わせることによって、個々の太陽熱集熱装置及び蓄熱装置の小型化及び低能力化を図ることが可能となる。これにより、大型の太陽熱集熱装置及び大型の蓄熱装置を備える場合よりも、昼夜の発電量のバランスを最適化することが可能となり、昼夜を通じてタービン規模に合わせた蒸気供給が可能となるため、エネルギー効率を向上することができ、かつ設備コストを低減することができる。
【0024】
なお、前記太陽熱集熱装置と蓄熱装置の数は同じである必要はなく、また、さらに能力の異なるものを直列又は並列に組み合わせるなど、具体的な装置の個数や配列は適宜調整してもよい。以下、同様である。
【0025】
また、前記太陽熱発電システムは、複数の前記太陽熱集熱装置を備えており、
前記昼運転モードにおいては、第1の前記太陽熱集熱装置を通過した前記熱媒体の流路が分岐して昼本流と昼分流とを形成し、昼本流の前記熱媒体が前記蒸気タービンに供給され、昼分流の前記熱媒体が第2の前記太陽熱集熱装置と前記蓄熱装置を順次通過した後、再び第2の前記太陽熱集熱装置及び前記蓄熱装置を順次通過する繰り返し循環を続けると共に、前記蓄熱装置から放出された反応水が前記復水器の上流側の前記熱媒体に合流し、
前記夜運転モードにおいては、前記熱媒体の流路が分岐して夜本流と夜分流とを形成し、夜本流の前記熱媒体が前記蓄熱装置に供給され、加熱された後、前記蒸気タービンに供給されると共に、夜分流の前記熱媒体が前記蓄熱装置に反応水として供給されるように構成してもよい。
【0026】
この場合には、熱媒体の流路として循環経路を形成し、その循環経路内に太陽熱集熱装置と蓄熱装置を配置することとなる。これにより、循環経路内の太陽熱集熱装置の能力が高くなくても、蓄熱装置が1回の熱交換によって蓄熱する熱量分だけ集熱すればよいため、その太陽熱集熱装置を小型化及び低能力化することができ、設備コストの低減を図ることができる。
【0027】
また、前記蓄熱装置には、さらに別の前記蓄熱装置が少なくとも1個以上直列で連結されており、前記熱媒体からの蓄熱及び前記熱媒体への伝熱を複数段階で実施可能に構成することもできる。例えば、前記熱媒体への伝熱においては、上流側から順に、液水の温度を沸点付近まで上げるための蓄熱装置、液水を飽和蒸気に加熱するための蓄熱装置、飽和蒸気を過熱蒸気に加熱するための蓄熱装置というように構成してもよい。こうすることで、曇天時など、理想的な連続運転が難しく、断続的な運転となる場合においても、蒸気タービンに送られる蒸気の温度、圧力を安定させることが可能となり、発電効率を向上させることができる。この場合、上流側の2つの蓄熱装置間には液水のみが送られるため、気液分離装置を配置する必要はない。また、個々の蓄熱装置の小型化及び低能力化が可能となり、設備コストの低減を図ることができる。
【0028】
また、前記太陽熱発電システムは、前記昼運転モードにおいて前記熱媒体の一部を備蓄するアキュームレータをさらに備え、前記蓄熱装置は、前記夜運転モードにおいて、前記アキュームレータから導出される前記熱媒体を前記反応水として用いて放熱するよう構成してもよい。この場合には、前記反応水の高温、高圧化が可能となり、かつ、前記反応水の供給量が安定するため、タービン効率の向上、および安定化が可能となるというメリットを得ることができる。
【0029】
また、前記給水ポンプから圧送された前記熱媒体が前記復水器を通過して予熱されるように構成してもよい。この場合には、復水器によって回収する熱を有効利用することができ、さらに、エネルギー効率の向上を図ることが可能となる。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
本願の太陽熱発電システムに係る実施例につき、図1を用いて説明する。
本例の太陽熱発電システム101は、図1に示すごとく、集熱した太陽熱により水からなる熱媒体を加熱して加熱蒸気を生成する太陽熱集熱装置21、22と、加熱蒸気により駆動する蒸気タービン31と、蒸気タービン31の動力により発電を行う発電機32と、熱媒体との熱交換を行って蓄熱及び放熱を行う蓄熱装置4と、蒸気タービン31から排出される蒸気を復水する復水器51と、復水された水を貯留する水タンク52と、水タンク52から水を圧送する給水ポンプ53とを有し、太陽熱集熱装置21、22から供給された加熱蒸気により蓄熱装置4への蓄熱と蒸気タービン31の運転を行う昼運転モードと、蓄熱装置4の放熱を受けて加熱された加熱蒸気により蒸気タービン31の運転を行う夜運転モードとを切り替え可能に構成されている。そして、蓄熱装置4は、脱水及び水和反応により蓄熱及び放熱が可能な化学蓄熱材を内蔵し、蓄熱装置4は、熱媒体を介して熱を授受する化学蓄熱材の反応に伴って放出又は導入する反応水として、熱媒体を利用するよう構成されている。
以下、さらに詳説する。
【0031】
本例の太陽熱発電システム101は、上述したごとく、2つの太陽熱集熱装置21、22を直列で並べ、1つの蓄熱装置4を備えたシンプルな構成のものである。そして、太陽熱集熱装置21、22及び蓄熱装置4と、蒸気タービン31、復水器51、水タンク52及び給水ポンプ53とを繋ぐように、熱媒体を流通させる配管8が多数の開閉弁9を介在しながら配設されている。
【0032】
本例の蓄熱装置4は、化学蓄熱材として石灰を内蔵している。石灰は、酸化カルシウム(CaO)又は水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を指し、両者は可逆的に変化可能な特性を有している。具体的には、石灰は、蓄熱時には式1の脱水反応を起こし、放熱時には式2の水和反応を起こす。
式1:(Ca(OH)2)+熱 → CaO+水(水又は水蒸気)
式2:CaO+水(水又は水蒸気) → (Ca(OH)2)+熱
【0033】
そして、この蓄熱装置4は、化学蓄熱材との熱交換を行う熱媒体を内部において流通させる熱媒体流路45と、化学蓄熱材の化学反応時の反応水を放出及び導入する反応水流路46とを備えており、これらの熱媒体流路45と反応水流路46は、いずれも、前記の配管8に連結されている。
【0034】
この構成における熱媒体の流動経路の詳細については、太陽熱発電システム101の昼運転モードと夜運転モードにわけて、以下に説明する。また、本実施例1及び以降の他の実施例において、図を用いてシステムの構成を示し、以下の説明文においては、わかりやすくするために、熱媒体の温度も記載するが、これは例示であって、実際には、各機器の能力の設定等によって変更されうることは言うまでもない。
【0035】
太陽熱発電システム101の昼運転モードにおいては、まず、水タンク52内の熱媒体が給水ポンプ53により圧送され、矢印Aの流路に沿って、太陽熱集熱装置21に送られる。太陽熱集熱装置21においては、集熱した太陽熱により、30℃の熱媒体が加熱され500℃の加熱蒸気となり、次の太陽熱集熱装置22に送られる。太陽熱集熱装置22においては、集熱した太陽熱により、500℃の加熱蒸気からなる熱媒体が600℃の加熱蒸気に加熱される。
【0036】
太陽熱集熱装置22において加熱された加熱蒸気からなる熱媒体は、矢印Aの流路に従って、蓄熱装置4の熱媒体流路45に送られる。蓄熱装置4においては、600℃の熱媒体から100℃分の熱が蓄熱される。そして、500℃となった加熱蒸気が蓄熱装置4の熱媒体流路45から蒸気タービン31に送られる。供給された加熱蒸気により蒸気タービン31が駆動され、その動力により発電機32が発電を行う。蒸気タービン31から排出された蒸気(熱媒体)は、復水器51により復水されて水タンク52に戻されて貯留される。
【0037】
ここで、昼運転モードにおいては、上述したごとく、蓄熱装置4においては、100℃分の熱が蓄熱される。このとき、蓄熱装置4が内蔵する化学蓄熱材は上述した式1の化学反応を起こし、反応水を放出することとなる。この反応水は、反応水流路46において矢印aの方向に沿って排出され、復水器51の上流側の熱媒体に合流して熱媒体の一部となる。
【0038】
次に、太陽熱発電システム101の夜運転モードにおいては、太陽熱集熱装置21、22につながる配管8の流路は開閉弁9の閉鎖によって止められる。そして、水タンク52の熱媒体が給水ポンプ53により圧送され、矢印Bの流路に沿って、蓄熱装置4に向かう。
【0039】
矢印Bの流路は分岐して、矢印B1に沿った夜本流と矢印B2に沿った夜分流とが形成される。矢印B1に沿った夜本流の熱媒体は、蓄熱装置4の熱媒体流路45に供給され、化学蓄熱材との熱交換によって500℃に加熱された後、蒸気タービン31に供給され発電機32による発電がなされる。蒸気タービン31から排出された蒸気(熱媒体)は、復水器51により復水されて水タンク52に戻されて貯留される。一方、矢印B2に沿った夜分流の熱媒体は、反応水流路46を通って反応水として化学蓄熱材に供給される。蓄熱装置4においては、この反応水と化学蓄熱材による水和反応で生じた熱によって上記のごとく熱媒体が加熱される。
【0040】
以上のような昼運転モード及び夜運転モードにおいて、熱媒体及び反応水が通過した配管8における開閉弁9は開となり、それ以外の開閉弁9は閉となる。
【0041】
本例の太陽熱発電システム101は、上述したごとくDSG方式を採用した上で、化学蓄熱材を内蔵した蓄熱装置4を積極的に採用している。そして、化学蓄熱材の反応に伴って放出又は導入する反応水として、水からなる熱媒体を利用するよう構成されている。この構成を積極的に採用することによって、蓄熱装置4を含む配管8の構成がシンプルとなり、かつ、昼運転モードの際は、反応水を熱媒体の一部として取り込み、夜運転モードの際には、熱媒体の一部を反応水として供給することにより、容易に蓄熱及び放熱を制御することができる。
【0042】
そして、太陽熱発電システム101は、化学蓄熱材の優れた蓄熱特性を十分に発揮させることにより、従来のDSG方式の太陽熱発電システムよりも、昼夜両方において効率よく発電が可能となる。
【0043】
(実施例2)
本例の太陽熱発電システム102は、実施例1の構成を基本として、太陽熱集熱装置及び蓄熱装置を増やした例である。すなわち、図2に示すごとく、太陽熱集熱装置21及び太陽熱集熱装置22の下流側に1つ目の蓄熱装置41を設け、その下流側に3つ目の太陽熱集熱装置23を設け、さらに、その下流側に2つめの蓄熱装置42を設ける。なお、説明の都合上、実施例1と同様の機能を有する構成要素については、実施例1と同じ符号を用いて説明する。以下、実施例3以降も同様とする。
【0044】
本例における昼運転モードにおいては、水タンク52内の熱媒体が給水ポンプ53により圧送され、矢印Aの流路に沿って、太陽熱集熱装置21に送られる。太陽熱集熱装置21においては、集熱した太陽熱により、30℃の熱媒体が500℃の加熱蒸気に加熱され、次の太陽熱集熱装置22に送られる。太陽熱集熱装置22においては、集熱した太陽熱により、さらに、500℃の加熱蒸気が600℃まで加熱される。ここまでは、実施例1と同様である。
【0045】
次に、太陽熱集熱装置22において加熱された加熱蒸気からなる熱媒体は、矢印Aの流路に従って、蓄熱装置41の熱媒体流路415に送られる。蓄熱装置41においては、600℃の熱媒体から100℃分の熱が蓄熱される。そして、500℃となった加熱蒸気は、その下流の太陽熱集熱装置23に送られ、再度600℃まで加熱される。そして、さらに、下流の蓄熱装置42の熱媒体流路425に送られて、600℃の熱媒体から100℃分の熱が蓄熱される。その後、加熱蒸気は、蓄熱装置42の熱媒体流路425から蒸気タービン31に送られ、前記と同様に発電が行われる。蒸気タービン31から排出された蒸気(熱媒体)は、復水器51により復水されて水タンク52に戻されて貯留される。
【0046】
また、昼運転モードにおいては、2つの蓄熱装置41、42において、それぞれ約100℃分の熱が蓄熱される。このとき、蓄熱装置41、42から放出される反応水は、それぞれの反応水流路416、426において矢印aの方向に沿って排出され、復水器51の上流側の熱媒体に合流して熱媒体の一部となる。
【0047】
次に、太陽熱発電システム102の夜運転モードにおいては、太陽熱集熱装置21、22、23につながる配管8の流路は開閉弁9の閉鎖によって止められる。そして、水タンク52内の熱媒体が給水ポンプ53により圧送され、矢印Bの流路に沿って、蓄熱装置41、42に向かう。
【0048】
矢印Bの流路は2つに分岐した後にさらに分岐して、それぞれ、矢印B1に沿った夜本流と矢印B2に沿った夜分流とが形成される。矢印B1に沿った2つの夜本流の熱媒体は、それぞれ、蓄熱装置41の熱媒体流路415及び蓄熱装置42の熱媒体流路425に供給され、それぞれ、化学蓄熱材との熱交換によって500℃に加熱される。
【0049】
蓄熱装置41において加熱された熱媒体は、矢印B1に沿って、太陽熱集熱装置23に送られることなく、バイパス路8(b)を通って蓄熱装置42において加熱された熱媒体と合流して蒸気タービン31に供給され発電機32による発電がなされる。蒸気タービン31から排出された蒸気(熱媒体)は、復水器51により復水されて水タンク52に戻されて貯留される。
【0050】
一方、矢印B2に沿った2つの夜分流の熱媒体は、反応水流路416、426を通って反応水として化学蓄熱材に供給される。蓄熱装置41、42においては、この反応水と化学蓄熱材による水和反応で生じた熱によって前記のごとく熱媒体が加熱される。
【0051】
本例の場合には、複数の蓄熱装置41、42を備え、かつ、これらの間に太陽熱集熱装置23をさらに備えることにより、実施例1に示した作用効果に加え、さらに、昼夜の発電量のバランスを最適化することが可能となり、昼夜を通じてタービン規模に合わせた蒸気供給が可能となるため、エネルギー効率が向上するという効果を得ることができる。また、個々の前記太陽集熱装置および前記蓄熱装置の小型化、および低能力化を図ることができるため、設備コストを低減できる。
【0052】
(実施例3)
本例の太陽熱発電システム103は、昼運転モードにおいて、太陽熱集熱装置と蓄熱装置を順次通過した後、再び太陽熱集熱装置及び蓄熱装置を順次通過する繰り返し循環流動を可能としたものである。すなわち、図3に示すごとく、蓄熱装置4の下流側と太陽熱集熱装置22の上流側とが循環路8(c)により連結されている。
【0053】
本例における昼運転モードにおいては、水タンク52内の熱媒体が給水ポンプ53により圧送され、矢印Aの流路に沿って、太陽熱集熱装置21に送られる。太陽熱集熱装置21においては、集熱した太陽熱により、30℃の熱媒体が500℃の加熱蒸気に加熱される。
【0054】
太陽熱集熱装置21を通過した熱媒体の流路は、分岐して矢印A1の昼本流と矢印A2の昼分流とを形成し、昼本流の熱媒体が矢印A1に沿って蒸気タービン31に供給され発電が行われる。昼分流の熱媒体は矢印A2に沿ってまず太陽熱集熱装置22を通過して600℃まで加熱され、次に、蓄熱装置4を通過して100℃分の蓄熱がなされて500℃になり、その後、循環路8(c)を進み、矢印A2に沿って再び太陽熱集熱装置22及び蓄熱装置4を順次通過する繰り返し循環を続ける。また、蓄熱時の蓄熱装置4における化学蓄熱材から放出された反応水は、矢印aに沿って反応水流路46を通り、復水器51の上流側の熱媒体に合流する。
【0055】
本例の夜運転モードにおいては、太陽熱集熱装置21、22につながる配管8の流路は開閉弁9の閉鎖によって止められる。そして、水タンク52内の熱媒体が給水ポンプ53により圧送され、矢印Bの流路に沿って、蓄熱装置4に向かう。矢印Bの流路は分岐して、矢印B1に沿った夜本流と矢印B2に沿った夜分流とが形成される。矢印B1に沿った夜本流の熱媒体は、蓄熱装置4の熱媒体流路45に供給され、化学蓄熱材との熱交換によって500℃に加熱された後、蒸気タービン31に供給され発電機32による発電がなされる。蒸気タービン31から排出された蒸気(熱媒体)は、復水器51により復水されて水タンク52に戻されて貯留される。一方、矢印B2に沿った夜分流の熱媒体は、反応水流路46を通って反応水として化学蓄熱材に供給される。蓄熱装置4においては、この反応水と化学蓄熱材による水和反応で生じた熱によって上記のごとく熱媒体が加熱される。
【0056】
以上のように、本例の場合には、昼運転モードにおいて、太陽熱集熱装置22と蓄熱装置4を順次通過した後、再び太陽熱集熱装置22及び蓄熱装置4を順次通過する繰り返し循環流動を可能としたことにより、実施例1に示した作用効果に加え、さらに、昼夜の発電量のバランスを最適化することが可能となり、昼夜を通じてタービン規模に合わせた蒸気供給が可能となるため、エネルギー効率が向上するという効果を得ることができる。また、蓄熱装置を介さずに、太陽集熱装置から蒸気タービンへ向かう経路を設けているため、昼間の曇天時において、蒸気加熱が不十分であっても、蓄熱装置での熱損失を伴わない経路を確保できる。
【0057】
(実施例4)
本例の太陽熱発電システム104は、図4に示すごとく、実施例1の構成を基本として、蓄熱装置4を、直列に接続した2つの蓄熱装置41、42に置き換えた例である。その他の構成は実施例1と同様である。
【0058】
この場合には、昼運転モードにおいては、2つの太陽熱集熱装置21、22(図1参照)を通過して600℃となった熱媒体が、矢印Aの流路に従って、蓄熱装置41の熱媒体流路415に送られる。蓄熱装置41においては、600℃の熱媒体から50℃分の熱が蓄熱される。そして、550℃となった加熱蒸気は次の蓄熱装置42に送られる。蓄熱装置42においては、550℃の熱媒体から50℃の熱が蓄熱され、500℃となった加熱蒸気が蒸気タービン31に送られる。
【0059】
また、昼運転モードにおいては、蓄熱装置41、42が内蔵する化学蓄熱材から放出される反応水が、それぞれ反応水流路416、426において矢印aの方向に沿って排出され、復水器51の上流側の熱媒体に合流して熱媒体の一部となる。
【0060】
次に、夜運転モードにおいては、太陽熱集熱装置21、22につながる配管8の流路は開閉弁9の閉鎖によって止められ、水タンク52の熱媒体が給水ポンプ53により圧送され(図1参照)、矢印Bの流路に沿って、蓄熱装置41、42に向かう。
【0061】
矢印Bの流路は分岐して、矢印B1に沿った夜本流と矢印B2に沿った夜分流とが形成される。矢印B1に沿った夜本流の熱媒体は、蓄熱装置41の熱媒体流路415に供給され、化学蓄熱材との熱交換によって加熱され、300℃の加熱蒸気となる。この熱媒体は、さらに、蓄熱装置42の熱媒体流路425に供給され、化学蓄熱材との熱交換によって加熱され、500℃の加熱蒸気となり、蒸気タービン31に供給される。
【0062】
また、夜分流の一つである矢印B2に沿って流れる熱媒体は、一つ目の蓄熱装置41の反応水流路416を通って反応水として蓄熱装置41の内部に供給される。また、矢印B1に沿った夜本流の熱媒体は、蓄熱装置41の熱媒体流路415を通過した後に矢印B3に沿って流れる別の夜分流に再度分岐し、矢印B3に沿って、蓄熱装置42の反応水流路426を通って反応水として蓄熱装置42の内部に供給される。その他は実施例1と同様である。
【0063】
以上のように、本例の場合には、実施例1の蓄熱装置4を、直列に接続した2つの蓄熱装置41、42に置き換えた。これにより、実施例1に示した作用効果に加え、さらに、曇天時など、理想的な連続運転が難しく、断続的な運転となる場合においても蒸気タービンに送られる蒸気の温度、圧力を安定させることが可能となり、発電効率を向上させることができる。
【0064】
(実施例5)
本例の太陽熱発電システム105は、図5に示すごとく、実施例1の構成を基本として、さらに、昼運転モードにおいて熱媒体の一部を備蓄するアキュームレータ6を備えた例である。本例においては、蓄熱装置4は、夜運転モードにおいて、アキュームレータ6から導出される熱媒体を反応水として用いて放熱するよう構成されている。
【0065】
すなわち、本例の昼運転モードにおいては、矢印Aに沿って圧送されてきた熱媒体が太陽熱集熱装置21を通過して300℃に加熱され、その後、熱媒体の流路が矢印A1に沿った昼本流と矢印A2に沿った昼分流とが形成される。矢印A1に沿った昼本流の熱媒体は、さらに太陽熱集熱装置22に供給され、600℃まで加熱されてから、蓄熱装置4の熱媒体流路45に供給される。蓄熱装置4においては、600℃の熱媒体から100℃分の熱が蓄熱される。そして、500℃となった加熱蒸気が蒸気タービン31に送られる。蓄熱装置4が内蔵する化学蓄熱材から放出される反応水は、反応水流路46において矢印aの方向に沿って排出され、復水器51の上流側の熱媒体に合流して熱媒体の一部となる。
【0066】
また、昼運転モードにおいて、太陽熱集熱装置21を通過して300℃に加熱された熱媒体の一部は、矢印A2に沿った昼分流となり、アキュームレータ6に供給され、蓄積される。
【0067】
次に、夜運転モードにおいては、太陽熱集熱装置21、22につながる配管8の流路は開閉弁9の閉鎖によって止められ、水タンク52の熱媒体が給水ポンプ53により圧送され、矢印Bの流路に沿って、蓄熱装置4に向かう。矢印Bに沿って流れた熱媒体は、蓄熱装置4の熱媒体流路45に供給され、化学蓄熱材との熱交換によって加熱され、500℃の加熱蒸気となり、蒸気タービン31に供給される。
【0068】
また、夜運転モードにおいては、アキュームレータ6に備蓄していた300℃の熱媒体が放出され、矢印Cに沿って蓄熱装置4の反応水流路46を通って反応水として蓄熱装置4の内部に供給される。その他は実施例1と同様である。
【0069】
以上のように、本例の場合には、蓄熱装置4に供給する反応水となる熱媒体を昼運転モードにおいて備蓄しておくアキュームレータ6を備えている。これにより、実施例1に示した作用効果に加え、さらに、反応水の高温、高圧化が可能となり、かつ、反応水の供給量が安定するため、タービン効率の向上、および安定化が可能となるという効果を得ることができる。
【0070】
(実施例6)
本例の太陽熱発電システム106は、図6に示すごとく、実施例1の構成を基本として、さらに、給水ポンプ53から圧送された熱媒体が復水器51を通過して予熱されるように構成した例である。
【0071】
すなわち、本例の昼運転モードにおいては、矢印Dに沿って圧送されてきた熱媒体が、まず復水器51を通過して予熱され150℃となり、矢印Aに沿って太陽熱集熱装置21に供給される。太陽熱集熱装置21においては、150℃の熱媒体が500℃の加熱蒸気に加熱され、次の太陽熱集熱装置22に送られる。太陽熱集熱装置22においては、さらに、500℃の加熱蒸気が600℃まで加熱される。この加熱蒸気は、蓄熱装置4の熱媒体流路45に送られて、100℃分の熱が蓄熱され、500℃となって蒸気タービン31に送られる。その後の熱媒体及び反応水の流れは、実施例1の場合と同様である。
【0072】
次に、本例の夜運転モードにおいては、太陽熱集熱装置21、22につながる配管8の流路は開閉弁9の閉鎖によって止められ、給水ポンプ53により矢印Dに沿って圧送されてきた熱媒体が、まず復水器51を通過して予熱され150℃となり、矢印Bに沿って流れた後、矢印B1に沿った夜本流と矢印B2に沿った夜分流とに分岐し、矢印B1に沿った夜本流は、蓄熱装置4において500℃に加熱された後、蒸気タービン31に送られる。夜分流は矢印B2に沿って蓄熱装置4の反応水流路46に反応水として供給される。その他は、実施例1と同様である。
【0073】
以上のように、本例の場合には、給水ポンプ53から圧送された熱媒体が復水器51を通過して予熱されるように構成されている。これにより、実施例1に示した作用効果に加え、さらに、実施例1では系外へ排出されていた熱を再利用することが可能となるため、システム全体のエネルギー効率が向上するという効果を得ることができる。
【0074】
(実施例7)
本例の太陽熱発電システム107は、図7に示すごとく、実施例1の構成を基本として、さらに、実施例2、4及び6の特徴等を組み合わせた例である。
【0075】
すなわち、本例の昼運転モードにおいては、矢印Dに沿って圧送されてきた熱媒体が、まず復水器51を通過して予熱され150℃となり、矢印Aに沿って太陽熱集熱装置21に供給され500℃に加熱され、さらに、次の太陽熱集熱装置22に送られる。太陽熱集熱装置22においては、600℃の加熱蒸気にまで加熱される。
【0076】
太陽熱集熱装置22において加熱された熱媒体は、矢印Aの流路に従って、蓄熱装置41の熱媒体流路415に送られる。蓄熱装置41においては、600℃の熱媒体から50℃分の熱が蓄熱される。550℃となった加熱蒸気は次の蓄熱装置42の熱媒体流路425に送られる。蓄熱装置42においては、550℃の熱媒体から50℃の熱が蓄熱され、500℃となった熱媒体が次の太陽熱集熱装置23に送られて、再び600℃の加熱蒸気にまで加熱される。600℃の加熱蒸気は、矢印Aに沿って、蓄熱装置43の熱媒体流路435に送られる。蓄熱装置43では50℃分の熱が蓄熱され、さらに次の蓄熱装置44の熱媒体流路445に送られ、50℃分の熱が蓄熱され、500℃の加熱蒸気が蒸気タービン31に供給される。蒸気タービン31から排出された蒸気(熱媒体)は、復水器51により復水されて水タンク52に戻されて貯留される。
【0077】
また、各蓄熱装置41〜44において生成した反応水は、それぞれの反応水流路416、426、436、446から矢印aに沿って排出され、順次合流して復水器51の上流側の熱媒体に合流して熱媒体の一部となる。
【0078】
次に、本例の夜運転モードにおいては、太陽熱集熱装置21〜23につながる配管8の流路は開閉弁9の閉鎖によって止められ、給水ポンプ53により矢印Dに沿って圧送されてきた熱媒体が、まず復水器51を通過して150℃となり、2つの矢印Bの流路に沿って、それぞれ蓄熱装置41、43に向かう。
【0079】
2つの矢印Bの流路は分岐して、それぞれ、矢印B1に沿った夜本流と矢印B2に沿った夜分流とが形成される。矢印B1に沿った2つの夜本流の熱媒体は、それぞれ、蓄熱装置41の熱媒体流路415及び蓄熱装置43の熱媒体流路435に供給され、それぞれ、化学蓄熱材との熱交換によって300℃に加熱される。
【0080】
蓄熱装置41において加熱された熱媒体は、さらに、蓄熱装置42の熱媒体流路425に供給され、化学蓄熱材との熱交換によって加熱され、500℃の加熱蒸気となり、太陽熱集熱装置23に送られることなく、矢印B1に沿って、バイパス路8(b)を通って蓄熱装置44の下流側において蓄熱装置42を通過した熱媒体と合流して蒸気タービン31に供給される。
【0081】
また、蓄熱装置43において加熱された熱媒体は、さらに、蓄熱装置44の熱媒体流路445に供給され、化学蓄熱材との熱交換によって加熱され、500℃の加熱蒸気となり、先に説明したように、蓄熱装置42を通過した熱媒体と合流して蒸気タービン31に供給される。蒸気タービン31から排出された蒸気(熱媒体)は、復水器51により復水されて水タンク52に戻されて貯留される。
【0082】
一方、矢印B2に沿った2つの夜分流の熱媒体は、反応水流路416、436を通って反応水として蓄熱装置41、43における化学蓄熱材に供給される。また、2つの矢印B1に沿った夜本流の熱媒体は、蓄熱装置41の熱媒体流路415及び蓄熱装置43の熱媒体流路435をそれぞれ通過した後に矢印B3に沿って流れる別の夜分流に再度分岐し、蓄熱装置42、44の反応水流路426、446を通って反応水として蓄熱装置42、44の内部に供給される。その他は実施例1と同様である。
【0083】
以上のように、本例の場合には、上述した実施例1、2、4及び6の作用効果を全て加えた優れた作用効果を得ることが可能となる。
【0084】
(実施例8)
本例の太陽熱発電システム108は、図8に示すごとく、実施例1の構成を基本として、さらに、実施例2、5、6、の特徴等を組み合わせた例である。
【0085】
すなわち、本例の昼運転モードにおいては、矢印Dに沿って圧送されてきた熱媒体が、まず復水器51を通過して予熱され150℃となり、矢印Aに沿って太陽熱集熱装置21に供給されて300℃まで加熱される。その後、熱媒体の流路として、矢印A1に沿った昼本流と矢印A2に沿った昼分流とが形成される。矢印A1に沿った昼本流の熱媒体は、さらに太陽熱集熱装置22に供給され、600℃程度まで加熱されてから、蓄熱装置41の熱媒体流路415に供給される。
【0086】
蓄熱装置41においては、600℃の熱媒体から100℃分の熱が蓄熱される。そして、500℃となった加熱蒸気が次の太陽熱集熱装置23に送られて再度600℃まで加熱され、次の蓄熱装置42の熱媒体流路425に送られる。蓄熱装置42では、100℃分の熱が蓄熱され、500℃となった加熱蒸気が蒸気タービン31に送られる。蓄熱装置41、42が内蔵する化学蓄熱材から放出される反応水は、反応水流路416、426においてそれぞれ矢印aの方向に沿って排出され、復水器51の上流側の熱媒体に合流して熱媒体の一部となる。
【0087】
また、昼運転モードにおいては、太陽熱集熱装置21を通過して300℃に加熱された熱媒体の一部は、矢印A2に沿った昼分流となり、アキュームレータ6に供給され、蓄積される。
【0088】
次に、本例の夜運転モードにおいては、太陽熱集熱装置21〜23につながる配管8の流路は開閉弁9の閉鎖によって止められ、給水ポンプ53により矢印Dに沿って圧送されてきた熱媒体が、まず復水器51を通過して予熱され150℃となり、2つの矢印Bの流路に沿って、それぞれ蓄熱装置41、42に向かう。矢印Bに沿って流れた熱媒体は、蓄熱装置41、42の熱媒体流路415、425にそれぞれ供給され、化学蓄熱材との熱交換によって加熱され、500℃の加熱蒸気となる。蓄熱装置41の熱媒体流路415を出た熱媒体は、バイパス路8(b)を通って蓄熱装置42を出た熱媒体と合流し、蒸気タービン31に供給される。
【0089】
また、夜運転モードにおいては、アキュームレータ6から備蓄していた300℃の熱媒体を矢印Cに沿って放出し、分岐され、それぞれ矢印Cに沿って蓄熱装置41、42の反応水流路416、426を通って反応水として蓄熱装置41、42の内部に供給される。
【0090】
以上のように、本例の場合には、上述した実施例1、2、5及び6の作用効果を全て加えた優れた作用効果を得ることが可能となる。
【0091】
(実施例9)
本例の太陽熱発電システム109は、図9に示すごとく、実施例1の構成を基本として、さらに、実施例3、4、6の特徴等を組み合わせた例である。
【0092】
すなわち、本例の昼運転モードにおいては、矢印Dに沿って圧送されてきた熱媒体が、まず復水器51を通過して予熱され150℃となり、矢印Aに沿って太陽熱集熱装置21に供給されて500℃まで加熱される。その後、熱媒体は、分岐して矢印A1の昼本流と矢印A2の昼分流とを形成し、昼本流の熱媒体が矢印A1に沿って蒸気タービン31に供給され発電が行われる。
【0093】
昼分流の熱媒体は矢印A2に沿って太陽熱集熱装置22を通過して600℃程度まで加熱され、次に、蓄熱装置41の熱媒体流路415を通過して50℃分の蓄熱がなされて550℃程度になり、さらに蓄熱装置42の熱媒体流路425を通過して50℃分の蓄熱がなされ、500℃となる。その後、循環路8(c)を利用し、矢印A2に沿って再び太陽熱集熱装置22、蓄熱装置41、42を順次通過する繰り返し循環を続ける。また、蓄熱時の蓄熱装置41、42における化学蓄熱材から放出された反応水は、それぞれ矢印aに沿って反応水流路416、426を通り、復水器51の上流側の熱媒体に合流する。
【0094】
次に、本例の夜運転モードにおいては、太陽熱集熱装置21、22につながる配管8の流路は開閉弁9の閉鎖によって止められ、給水ポンプ53により矢印Dに沿って圧送されてきた熱媒体が、まず復水器51を通過して予熱され150℃となり、矢印Bの流路に沿って流れ、矢印B1に沿った夜本流と矢印B2に沿った夜分流とが形成される。
【0095】
矢印B1に沿った夜本流の熱媒体は、蓄熱装置41の熱媒体流路415に供給され、化学蓄熱材との熱交換によって加熱され、300℃の加熱蒸気となる。この熱媒体は、さらに、蓄熱装置42の熱媒体流路425に供給され、化学蓄熱材との熱交換によって加熱され、500℃の加熱蒸気となり、蒸気タービン31に供給される。
【0096】
また、夜分流の一つである矢印B2に沿って流れる熱媒体は、一つ目の蓄熱装置41の反応水流路416を通って反応水として蓄熱装置41の内部に供給される。また、矢印B1に沿った夜本流の熱媒体は、蓄熱装置41の熱媒体流路415を通過した後に矢印B3に沿って流れる別の夜分流に再度分岐し、蓄熱装置42の反応水流路426を通って反応水として蓄熱装置42の内部に供給される。
【0097】
以上のように、本例の場合には、上述した実施例1、3、4及び6の作用効果を全て加えた優れた作用効果を得ることが可能となる。
【0098】
(実施例10)
本例の太陽熱発電システム110は、図10に示すごとく、実施例1の構成における第2の太陽熱集熱装置22の位置を蓄熱装置4の下流側に変更した例である。
【0099】
太陽熱発電システム110の昼運転モードにおいては、まず、水タンク52内の熱媒体が給水ポンプ53により圧送され、矢印Aの流路に沿って、太陽熱集熱装置21に送られる。太陽熱集熱装置21においては、集熱した太陽熱により、30℃の熱媒体が600℃程度の加熱蒸気にまで加熱され、矢印Aの流路に従って、蓄熱装置4の熱媒体流路45に送られる。蓄熱装置4においては、600℃の熱媒体から100℃分の熱が蓄熱される。500℃となった加熱蒸気は、太陽熱集熱装置22において再度加熱され、600℃となって蒸気タービン31に送られる。蒸気タービン31から排出された蒸気(熱媒体)は、復水器51により復水されて水タンク52に戻されて貯留される。
【0100】
また、蓄熱装置4における蓄熱により生じた反応水は、反応水流路46において矢印aの方向に沿って排出され、復水器51の上流側の熱媒体に合流して熱媒体の一部となる。
【0101】
次に、太陽熱発電システム110の夜運転モードにおいては、太陽熱集熱装置21、22につながる配管8の流路は開閉弁9の閉鎖によって止められる。そして、水タンク52内の熱媒体が給水ポンプ53により圧送され、矢印Bの流路に沿って進み、矢印Bの流路は分岐して、矢印B1に沿った夜本流と矢印B2に沿った夜分流とが形成される。矢印B1に沿った夜本流の熱媒体は、蓄熱装置4の熱媒体流路45に供給され、化学蓄熱材との熱交換によって500℃に加熱された後、蒸気タービン31に供給される。蒸気タービン31から排出された蒸気(熱媒体)は、復水器51により復水されて水タンク52に戻されて貯留される。一方、矢印B2に沿った夜分流の熱媒体は、反応水流路46を通って反応水として化学蓄熱材に供給される。蓄熱装置4においては、この反応水と化学蓄熱材による水和反応で生じた熱によって前記のごとく熱媒体が加熱される。
【0102】
以上のように、本例においては、2つめの太陽熱集熱装置22の設置位置を実施例1と変更している。これにより、昼運転モードにおいて、蒸気タービン31へ送られる熱媒体の温度を上げることが可能となるため、発電効率が向上するという効果を得ることができる。
【0103】
(実施例11)
本例の太陽熱発電システム111は、図11に示すごとく、実施例7の構成を基本として、さらに、実施例10の特徴等を組み合わせた例である。
【0104】
すなわち、本例の昼運転モードにおいては、矢印Dに沿って圧送されてきた熱媒体が、まず復水器51を通過して予熱され150℃となり、矢印Aに沿って太陽熱集熱装置21に供給され500℃に加熱され、さらに、次の太陽熱集熱装置22に送られる。太陽熱集熱装置22においては、集熱した太陽熱により、熱媒体が600℃程度の加熱蒸気にまで加熱される。
【0105】
太陽熱集熱装置22において加熱された熱媒体は、矢印Aの流路に従って、蓄熱装置41の熱媒体流路415に送られる。蓄熱装置41においては、600℃の熱媒体から50℃分の熱が蓄熱される。550℃となった加熱蒸気は次の蓄熱装置42の熱媒体流路425に送られる。蓄熱装置42においては、550℃の熱媒体から50℃の熱が蓄熱され、500℃となった熱媒体が次の太陽熱集熱装置23に送られて、再び600℃程度の加熱蒸気にまで加熱される。600℃の加熱蒸気は、矢印Aに沿って、蓄熱装置43の熱媒体流路435に送られる。50℃分の熱が蓄熱され、さらに次の蓄熱装置44の熱媒体流路445に送られ、50℃分の熱が蓄熱され、500℃の加熱蒸気となり、さらに次の太陽熱集熱装置24に送られ、600℃の加熱蒸気に加熱された後、蒸気タービン31に供給される。蒸気タービン31から排出された蒸気(熱媒体)は、復水器51により復水されて水タンク52に戻されて貯留される。
【0106】
各蓄熱装置41〜44において生成した反応水は、それぞれの反応水流路416、426、436、446から矢印aに沿って排出され、順次合流して復水器51の上流側の熱媒体に合流して熱媒体の一部となる。
【0107】
次に、本例の夜運転モードにおいては、太陽熱集熱装置21〜24につながる配管8の流路は開閉弁9の閉鎖によって止められ、給水ポンプ53により矢印Dに沿って圧送されてきた熱媒体が、まず復水器51を通過して予熱され150℃となり、2つの矢印Bの流路に沿って、それぞれ蓄熱装置41、43に向かう。
【0108】
2つの矢印Bの流路は分岐して、それぞれ、まず、矢印B1に沿った夜本流と矢印B2に沿った夜分流とが形成される。矢印B1に沿った2つの夜本流の熱媒体は、それぞれ、蓄熱装置41の熱媒体流路415及び蓄熱装置43の熱媒体流路435に供給され、それぞれ、化学蓄熱材との熱交換によってそれぞれ300℃に加熱される。
【0109】
蓄熱装置41において加熱された熱媒体は、さらに、蓄熱装置42の熱媒体流路425に供給され、化学蓄熱材との熱交換によって加熱され、500℃の加熱蒸気となり、太陽熱集熱装置23に送られることなく、バイパス路8(b)を通って蓄熱装置44の下流側において蓄熱装置42を通過した熱媒体と合流して蒸気タービン31に供給される。また、蓄熱装置43において加熱された熱媒体は、さらに、蓄熱装置44の熱媒体流路445に供給され、化学蓄熱材との熱交換によって加熱され、500℃の加熱蒸気となり、先に説明したように、蓄熱装置42を通過した熱媒体と合流して蒸気タービン31に供給される。蒸気タービン31から排出された蒸気(熱媒体)は、復水器51により復水されて水タンク52に戻されて貯留される。
【0110】
一方、矢印B2に沿った2つの夜分流の熱媒体は、反応水流路416、436を通って反応水として蓄熱装置41、43における化学蓄熱材に供給される。また、2つの矢印B1に沿った夜本流の熱媒体は、蓄熱装置41の熱媒体流路415及び蓄熱装置43の熱媒体流路435をそれぞれ通過した後に矢印B3に沿って流れる別の夜分流に再度分岐し、蓄熱装置42、44の反応水流路426、446を通って反応水としてそれぞれ蓄熱装置42、44の内部に供給される。その他は実施例1と同様である。
【0111】
以上のように、本例の場合には、上述した実施例7及び10の作用効果を全て加えた優れた作用効果を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0112】
101〜111 太陽熱発電システム
21、22、23、24 太陽熱集熱装置
31 蒸気タービン
32 発電機
4、41、42、43、44 蓄熱装置
415、425、435、445、45 熱媒体流路
416、426、436、446、46 反応水流路
51 復水器
52 水タンク
53 給水ポンプ
6 アキュームレータ
8 配管
9 開閉弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11