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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-175057(P2019-175057A)
(43)【公開日】2019年10月10日
(54)【発明の名称】通信装置及び環境変化の検知方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/07 20060101AFI20190913BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20190913BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20190913BHJP
【FI】
   G06K19/07 170
   G06K19/07 230
   G06K19/077 280
   G08C17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-61494(P2018-61494)
(22)【出願日】2018年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079119
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 元彦
(74)【代理人】
【識別番号】100147728
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 信司
(72)【発明者】
【氏名】小田 大輔
【テーマコード(参考)】
2F073
【Fターム(参考)】
2F073AA19
2F073AA40
2F073AB01
2F073AB02
2F073BB01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CC12
2F073CD11
2F073DE02
2F073DE13
2F073EE12
2F073FF01
2F073FG01
2F073FG02
2F073FG04
2F073FH07
2F073FH20
2F073GG01
2F073GG04
2F073GG05
2F073GG09
(57)【要約】
【目的】低消費電力にて、周囲の環境変化を検知し、その検知結果を表す情報を送信することが可能な通信装置及び環境変化の検知方法を提供することを目的とする。
【構成】本発明は、周囲の環境の変化に応じて光学特性が変化し、変化後の光学特性を維持する機能性色素材料を含む部材と、部材を介した光が自身の受光部に入射されるように設置されており、この受光部に入射された光の照度を検出する光センサと、光センサで検出された照度を表す情報を送信する通信制御部と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の環境の変化に応じて光学特性が変化し、変化後の前記光学特性を維持する機能性色素材料を含む部材と、
受光部を有し、前記部材を介した光が前記受光部に入射されるように設置されており、前記受光部に入射された光の照度を検出する光センサと、
前記光センサで検出された前記照度を表す情報を送信する通信制御部と、を有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
受信した無線高周波電力に基づき電源電圧を生成する電源回路を含み、
前記光センサ及び前記通信制御部は、前記電源回路で生成された前記電源電圧を受けて動作することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記周囲の環境は温度環境であり、
前記機能性色素材料は、前記周囲の温度が所定の温度閾値を境にして変化したときに色が変化し、前記色の変化後は前記周囲の温度に拘わらず変化後の色の状態を維持する不可逆性の感温材料であり、
前記光センサは、前記機能性色素材料の前記変化後の色の波長に対する前記照度の検出感度と、前記機能性色素材料の変化前の色の波長に対する前記照度の検出感度とが異なることを特徴とする請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
基準照度を表す情報が記憶されているメモリを含み、
前記通信制御部は、前記光センサで検出された前記照度と前記メモリに記憶されている前記基準照度との大きさを比較した比較結果に基づき前記環境に変化が生じていたか否かを表す環境変化情報を送信することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の通信装置。
【請求項5】
前記受光部に入射する光の経路中に、特定の波長範囲外の光の透過を抑制する光学フィルタが設置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の通信装置。
【請求項6】
前記部材に光を照射する発光素子を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の通信装置。
【請求項7】
前記部材に光を照射する発光素子を含み、
前記部材は、前記周囲の温度が所定の温度閾値を境にして変化したときに光反射率が変化し、前記光反射率の変化後は前記周囲の温度に拘わらず変化後の前記光反射率の状態を維持する前記機能性色素材料を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項8】
前記部材に光を照射する発光素子を含み、
前記部材は、前記周囲の温度が所定の温度閾値を境にして変化したときに吸光率が変化し、前記吸光率の変化後は前記周囲の温度に拘わらず変化後の前記吸光率の状態を維持する前記機能性色素材料を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項9】
前記発光素子によって前記部材に照射された光のうちで前記部材を透過した光を前記部材に向けて反射する反射板を設けたことを特徴とする請求項8に記載の通信装置。
【請求項10】
前記発光素子から照射された光以外の光が前記光センサに入射するのを阻止する遮光板を設けたことを特徴とする請求項8に記載の通信装置。
【請求項11】
前記周囲の環境は、特定のガスが存在する環境、所定の湿度以上又は未満の湿度環境、紫外線の照射を受ける環境、所定照度以上の光を受ける環境、又は物理的な衝撃を受ける環境であることを特徴とする請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項12】
周囲の環境の変化を検知する環境変化の検知方法であって、
前記周囲の環境の変化に応じて光学特性が変化し、変化後の前記光学特性を維持する機能性色素材料を含む部材を介した光の照度を検出し、
検出した前記照度と基準照度との大きさの比較結果に基づき前記環境の変化を検知することを特徴とする環境変化の検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報データの通信を行う通信装置及び環境変化の検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IoT(Internet of Things)を用いたシステム構築が盛んに研究・開発されている。IoTを普及する鍵は、無線通信による容易なアクセサビリティと、周辺の情報を収集するセンシング技術にある。IoTデバイスとしては、無線デバイスとセンサデバイスと、を組み合わせたものが考案されているが、消費電流が大きいことから大きな電源が必要となり、高価になるという問題があった。
【0003】
そこで、このような無線デバイスとして、記憶素子と共に、センサデバイスとして受光素子を備えたパッシブ型のRFID(Radio Frequency Identification)タグが提案されている(例えば、特許文献1参照)。当該パッシブ型のRFIDタグでは、リーダーライタ(読み出し機器)から出力された電波によって、自身を動作させるための電源電圧を生成する、いわゆる無線給電が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−172214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、パッシブ型のRFIDタグは、バッテリなどの電源自体を搭載していないので、低消費電力、低価格、小型化を実現することができるものの、リーダーライタとの通信可能領域外では、給電が行われないので、センサデバイスの動作が停止する。
【0006】
よって、パッシブ型のRFIDタグでは、リーダーライタとの通信が不可となる状況では、センサデバイスによって周囲の環境を検知することができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、低消費電力且つ小規模な構成で、周囲の環境変化を検知し、その検知結果を表す情報を送信することが可能な通信装置及び環境変化の検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る通信装置は、周囲の環境の変化に応じて光学特性が変化し、変化後の前記光学特性を維持する機能性色素材料を含む部材と、受光部を有し、前記部材を介した光が前記受光部に入射されるように設置されており、前記受光部に入射された光の照度を検出する光センサと、前記光センサで検出された前記照度を表す情報を送信する通信制御部と、を有する。
【0009】
また、本発明に係る環境変化の検知方法は、周囲の環境の変化を検知する環境変化の検知方法であって、前記周囲の環境の変化に応じて光学特性が変化し、変化後の前記光学特性を維持する機能性色素材料を含む部材を介した光の照度を検出し、検出した前記照度と基準照度との大きさの比較結果に基づき前記環境の変化を検知する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る通信装置では、周囲の環境変化に応じて光学特性が変化し、変化後の光学特性を維持する機能性色素材料を含む光学部材の光学特性の状態によって、環境の変化を検知すると共にその検知結果を記憶する。その後、給電が行われた際に当該光学部材を介した光の照度を検出し、これを環境変化の検知結果を表す情報として送信する。
【0011】
かかる構成によれば、電力供給を受けていない状態で周囲の環境変化を検知しこれを記憶することができる。よって、本発明によれば、バッテリ等の電源を不要とすることができるので、低消費電力且つ小規模な構成で、周囲の環境変化を検知し、その検知結果を表す情報を送信することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る通信装置としてのRFIDセンサータグ200を、アンテナ形成面の上方から眺めた平面図である。
図2図1に示す領域a1を抜粋して、基板15の表面側からRFIDチップ10の一方の面を眺めた平面図である。
図3図2に示すW−W線でのRFIDセンサータグ200の断面構造を示す断面図である。
図4図2に示すW−W線でのRFIDセンサータグ200の断面構造の変形例を示す断面図である。
図5図2に示すW−W線でのRFIDセンサータグ200の断面構造の変形例を示す断面図である。
図6】RFIDセンサータグ200及びリーダーライタ300間で無線通信を行う際の形態を示す図である。
図7】通信回路100の構成を示すブロック図である。
図8】RFIDセンサータグ200の周囲温度、色素プレート30の色の状態、及び受光部LRが受ける光の照度の推移の一例を表す図である。
図9】光センサ105の受光部LRが、特定の波長範囲内にある波長Wrfの光を発する光源LSから照射された光を受ける場合と、特定の波長範囲外にある波長Wxの光を発する光源LQから照射された光を受ける場合と、を表す図である。
図10】光学フィルタ40を設けた場合における、図2に示すW−W線でのRFIDセンサータグ200の断面構造の一例を示す断面図である。
図11】光学フィルタ40を設けた場合における、図2に示すW−W線でのRFIDセンサータグ200の断面構造の他の一例を示す断面図である。
図12】光学フィルタ40を設けた場合における、図2に示すW−W線でのRFIDセンサータグ200の断面構造の他の一例を示す断面図である。
図13】光学フィルタ40の作用を説明するための図である。
図14図1に示す領域a1を抜粋して、基板15の表面側から、他の実施例によるRFIDチップ10の一方の面を眺めた平面図である。
図15図14に示すW−W線でのRFIDセンサータグ200の断面構造を示す断面図である。
図16図14及び図15に示されるRFIDチップ10に含まれる通信回路100Aの構成を示すブロック図である。
図17図14図16に示す構成を有するRFIDセンサータグ200の周囲温度、色素プレート30Aの光反射率、及び受光部LRが受ける反射光の照度の推移の一例を表す図である。
図18図14に示すW−W線でのRFIDセンサータグ200の断面構造の他の一例を示す断面図である。
図19図14に示すW−W線でのRFIDセンサータグ200の断面構造の他の一例を示す断面図である。
図20図14に示すW−W線でのRFIDセンサータグ200の断面構造の他の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る通信装置としてのパッシブ型のRFIDセンサータグ200を、アンテナ形成面の上方から眺めた平面図である。
【0015】
RFIDセンサータグ200は、光センサを備えた通信回路を含むRFID(Radio Frequency Identification)チップ10、基板15、通信用のアンテナ20a、20b、及び色素プレート30を含む。
【0016】
アンテナ20a及び20bは、夫々が例えば導電性の配線材料からなり、基板15の一方の面上において蛇行した形態でプリントされている。図1に示すように、アンテナ20aの端部Ea及びアンテナ20bの端部Ebは、互いに所定の距離を隔てて対向している。基板15は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)等からなるフレキシブル基板である。
【0017】
RFIDチップ10は、これらアンテナ20aの端部Ea及びアンテナ20bの端部Ebの上部において、両者を連結するような形態で配置されている。
【0018】
図2は、図1において破線にて囲まれた領域a1を抜粋して、基板15の表面側からRFIDチップ10の一方の面(以下、表面と称する)を眺めた平面図であり、図3は、図2に示されるW−W線でのRFIDセンサータグ200の断面構造を示す断面図である。
【0019】
図2及び図3に示すように、RFIDチップ10における基板15の一方の面に対向した面(以下、RFIDチップ10の表面と称する)上には、光センサ(後述する)の受光部LR、及び外部端子としてのパッドPa及びPbが設けられている。受光部LRは、RFIDチップ10の表面上において、図2及び図3に示すようにアンテナ20aの端部Eaと、アンテナ20bの端部Ebとの間の領域内に配置されている。尚、図2に示す一例では、パッドPa及びPbは共に、RFIDチップ10の表面上における外郭の一片に沿って配置されているが、RFIDチップ10の表面の対角線上に夫々が配置されていても良い。要するに、受信又は送信特性が良好となる位置にパッドPa及びPbを夫々配置しておけば良い。
【0020】
図3に示すように、パッドPaはバンプ材Baを介してアンテナ20aと電気的に接続されており、パッドPbはバンプ材Bbを介してアンテナ20bと電気的に接続されている。RFIDチップ10の表面の周囲、及びRFIDチップ10の表面と基板15との間には、アンダーフィル材UFが形成されている。尚、基板15及びアンダーフィル材UFとしては、光センサが受光対象としている所定の波長範囲内の光を透過することが可能な材料が用いられる。
【0021】
RFIDチップ10は、上記したバンプ材Ba及びBb、並びにアンダーフィル材UFによって、基板15及びアンテナ20a及び20bに固着されている。ただし、耐久性が確保できるのであれば、RFIDチップ10の表面と基板15との間には、アンダーフィル材UFを設ける必要はない。
【0022】
図4は、かかる点に鑑みて為された、図2に示すW−W線でのRFIDセンサータグ200の断面構造の変形例を示す断面図である。図4に示す構成を採用すれば、受光部LRと基板15との間の領域が単なる空間となるので、アンダーフィル材UFの材料として、光センサが受光対象とする光の波長特性を考慮する必要がなくなる。
【0023】
RFIDセンサータグ200には、図1及び図3に示すように、基板15の他方の面(アンテナ20a及び20bが形成されていない方の面)上におけるRFIDチップ10と対向する位置に色素プレート30が貼着されている。
【0024】
色素プレート30は、周囲の環境変化に応じて光学特性が変化する機能性色素(functional dye)材料を含む光学部材である。機能性色素としては、例えば、時間温度インジケータ、いわゆるTTI(Time Temperature Indicator)で採用されている色素材料を用いる。つまり、当該機能性色素材料としては、周囲の温度が、所定の温度閾値を境にして変化したときに色が変化し、この色の変化後は周囲の温度に拘わらず変化後の色の状態を維持する不可逆性感温材料が用いられる。このような不可逆性感温材料としては、例えばアゾメチン、ポリアセチレン、P-ベンゾキノン誘電体、イミダゾール、コレステリック液晶、トリフェニルメン等のサーモクロミック色素等が知られている。
【0025】
ここで、図3に示す一例では、色素プレート30を基板15の他方の面に貼付しているが、基板15の一方の面上における、アンテナ20aの端部Eaと、アンテナ20bの端部Ebとの間の領域内に設けるようにしても良い。
【0026】
図5は、かかる点に鑑みて為された、図2に示すW−W線でのRFIDセンサータグ200の断面構造の変形例を示す断面図である。図5に示す構成を採用すれば、図3及び図4に示す構成を採用した場合に比べて、色素プレート30の面積を小さくすることができるので、低価格を図ることが可能となる。
【0027】
次に、RFIDセンサータグ200の動作について説明する。
【0028】
尚、RFIDセンサータグ200は、図6に示すように、リーダーライタ300との間で、例えばUHF帯、HF(High Frequency)帯、又はLF(Low Frequency)帯の通信電波を用いた近距離無線通信を行う。つまり、RFIDセンサータグ200は、リーダーライタ300から例えば半径10メートル以内の通信可能領域TA内のみで、リーダーライタ300から放射された電波によって電力の供給を受け、引き続きリーダーライタ300との間で情報通信を行う。
【0029】
図7は、RFIDセンサータグ200のRFIDチップ10に含まれている通信回路100の構成を示す回路図である。
【0030】
図7に示すように、通信回路100は、送受信部RF、センサ部CEB、制御部CNT、及びメモリ部MEMを含む。
【0031】
送受信部RFは、整流回路101、電源回路102、復調回路103及び変調回路104を含む。
【0032】
整流回路101は、パッドPa及びPbを介してアンテナ20a及び20bに接続されている。アンテナ20a及び20bは、リーダーライタ300から放出された電波を受信して得た、受信情報を表す高周波信号、及び給電の為の高周波電流を、パッドPa及びPbを介して整流回路101に供給する。
【0033】
整流回路101は、高周波電流を整流して得た直流電圧DSを電源回路102に供給すると共に、当該高周波信号に整流及び検波を施して得た信号を受信信号RSとして復調回路103に供給する。
【0034】
電源回路102は、かかる直流電圧DSに基づき電圧値一定の電源電圧VDDを生成し、この電源電圧VDDを、復調回路103、変調回路104、センサ部CEB、制御部CNT、及びメモリ部MEMに供給する。すなわち、電源回路102は、受信した高周波電力に基づいて電源電圧VDDを生成し、これを復調回路103、変調回路104、センサ部CEB、制御部CNT、及びメモリ部MEMに供給する。
【0035】
電源電圧VDDを受けている間、復調回路103、変調回路104、センサ部CEB、制御部CNT、及びメモリ部MEMは以下の動作を行う。
【0036】
復調回路103は、受信信号RSに対して復調処理を施すことによって取得したコマンドコードCOMを制御部CNTに供給する。
【0037】
変調回路104は、上記した通信電波の帯域に対応した搬送波信号を、制御部CNTから供給された識別情報ID、照度情報IL、又は環境変化情報TEDに基づき変調した変調信号MSを整流回路101に供給する。この際、整流回路101は、当該変調信号MSを、パッドPa及びPbを介してアンテナ20a及び20bに供給する。これにより、アンテナ20a及び20bは、識別情報ID、照度情報IL、又は環境変化情報TEDを表す通信電波を空間に放出する。
【0038】
センサ部CEBは、光センサ105及びA/D変換回路106を含む。光センサ105は、図2に示す受光部LRを有し、色素プレート30を介して受光部LRで受けた光のうちの特定の波長範囲内の光の照度を検出する。光センサ105は、この検出した照度に対応した信号レベルを有する照度信号Yを生成し、これをA/D変換回路106に供給する。A/D変換回路106は、照度信号Yをディジタル値に変換して得られた照度情報ILを制御部CNTに供給する。
【0039】
メモリ部MEMには、製品としての各RFIDセンサータグ200に個別に割り当てられている識別番号を表す識別情報と、所定の温度閾値に対応した基準照度を表す基準照度情報が予め記憶されている。メモリ部MEMは、例えば不揮発性の半導体メモリであり、制御部CNTから供給された識別情報読出指令に応じて、自身に記憶されている識別情報を読み出し、これを識別情報IDとして制御部CNTに供給する。
【0040】
制御部CNTは、復調回路103から供給されたコマンドコードCOMが識別情報の読出要求を示す場合に、上記した識別情報読出指令をメモリ部MEMに供給することにより、このメモリ部MEMから識別情報IDを読み出す。そして、引き続き制御部CNTは、メモリ部MEMから読み出された識別情報IDを変調回路104に供給する。
【0041】
また、コマンドコードCOMが照度情報の要求を示す場合には、制御部CNTは、センサ部CEBから供給された照度情報ILを取り込み、これを変調回路104に供給する。
【0042】
また、制御部CNTは、コマンドコードCOMが環境変化情報の要求を示す場合には、先ず、メモリ部MEMから上記した基準照度情報を読み出す。次に、制御部CNTは、この基準照度情報にて示される基準照度と、センサ部CEBから供給された照度情報ILにて示される照度と、の大きさを比較する。ここで、照度情報ILにて示される照度が基準照度以下である場合には、制御部CNTは、RFIDセンサータグ200が温度閾値よりも低い温度環境下にあったことを表す環境変化情報TEDを生成する。一方、照度情報ILにて示される照度が基準照度よりも高い場合には、制御部CNTは、RFIDセンサータグ200が温度閾値よりも高い温度環境下に晒されていたことを表す環境変化情報TEDを生成する。
【0043】
すなわち、制御部CNTは、RFIDセンサータグ200の周囲の環境としての温度が、温度閾値より低い状態から高い状態に変化したか否かを表す情報を、環境変化情報TEDとして生成するのである。そして、制御部CNTは、上記のように生成した環境変化情報TEDを変調回路104に供給する。
【0044】
次に、上記した構成を有するRFIDセンサータグ200と、リーダーライタ300との間で行われる情報通信のシーケンスについて説明する。
【0045】
先ず、リーダーライタ300が、上記した識別情報の読出要求を表すコマンドコードを表す通信電波を送信する。識別情報の読出要求を表す通信電波を受信すると、RFIDセンサータグ200は、自身の識別情報IDを表す通信電波を送信する。リーダーライタ300は、識別情報IDを表す通信電波を受信すると、この識別情報IDを取り込み、引き続き、照度情報の要求又は環境変化情報の要求を表すコマンドコードを表す通信電波を送信する。
【0046】
ここで、照度情報の要求を表す通信電波を受信すると、RFIDセンサータグ200は、光センサ105により、色素プレート30を介して受光部LRで受けた光の照度(Y)を検出する。そして、RFIDセンサータグ200は、この検出した照度を示す照度情報ILを通信電波によって送信する。すなわち、RFIDセンサータグ200は、光センサ105によって検出した照度を、このRFIDセンサータグ200の周囲の環境としての温度が所定の温度閾値より低い状態から高い状態に変化したか否かを表す情報として送信する。
【0047】
リーダーライタ300は、この照度情報ILを表す通信電波を受信すると、上記した温度閾値に対応した基準照度と、照度情報ILにて示される照度と、の大きさを比較する。かかる比較の結果、照度情報ILにて示される照度が基準照度よりも低い場合には、リーダーライタ300は、RFIDセンサータグ200が継続的に温度閾値よりも低い温度環境下にあったことを表す画像を表示部に表示する。一方、照度情報ILにて示される照度が基準照度以上となる場合には、リーダーライタ300は、RFIDセンサータグ200が、温度閾値より高い温度環境下に晒されていたことを表す画像を表示部に表示する。
【0048】
つまり、リーダーライタ300は、RFIDセンサータグ200から送信された照度情報に基づき、このRFIDセンサータグ200の周囲の温度が所定の温度閾値より低い状態から高い状態に変化したか否かを表す情報をユーザに通知するのである。
【0049】
以下に、RFIDセンサータグ200を、例えば周囲の温度が50℃以上になると品質低下を招く物品又は食品等に貼着して輸送する場合を例にとって、RFIDセンサータグ200の動作について説明する。
【0050】
この際、色素プレート30に含まれる機能性色素の材料としては、例えば50℃の温度閾値未満の温度下では視覚上の色が「白色」であり、この温度閾値以上の温度下に所定期間以上に亘り晒されると「白色」から「赤色」に遷移し、その後は温度変化に拘らず「赤色」の状態が維持される不可逆性感温材料を用いる。
【0051】
また、光センサ105としては、機能性色素材料の変化後の色、つまり赤色の波長に対する照度の検出感度と、変化前の色、つまり白色の波長に対する照度の検出感度とが異なるものを採用する。具体的には、光センサ105として、白色光に比べて赤色光の波長に対する照度の検出感度が低いものを採用する。
【0052】
尚、輸送中は、RFIDセンサータグ200は、リーダーライタ300からの電力供給を受けることができないので、通信回路100の全ての動作が停止状態となる。
【0053】
図8に示すように、輸送開始の時刻t0から時刻t1の時間帯では、周囲の温度が所定の温度閾値CM(例えば50℃)未満であるので、色素プレート30に含まれる機能性色素は「白色」である。よって、時刻t0から時刻t1の時間帯において、色素プレート30を介して受光部LRが受ける光の照度はY1となる。
【0054】
そして、時刻t1を過ぎた時点で図8に示すように周囲の温度が温度閾値CM以上となりその状態が所定期間twに亘り継続する。そして、当該所定期間twが経過した時刻t2にて、温度閾値CM未満の温度に遷移する。このように、所定期間twに亘り温度閾値CM以上の温度に晒されると、色素プレート30に含まれる機能性色素の色が図8に示すように「白色」から「赤色」に遷移する。ここで、図8に示すように、時刻t2以降、周囲温度は温度閾値CM未満の状態に戻るが、色素プレート30に含まれる機能性色素の色は「赤色」の状態を維持する。よって、時刻t2以降は、周囲温度の変化に拘らず、色素プレート30を介して受光部LRが受ける光の照度は、図8に示すように照度Y1よりも低い照度Y2の状態を維持する。
【0055】
尚、前述したように輸送中は、リーダーライタ300からの電力供給を受けることができないので、この間、RFIDセンサータグ200の光センサ105は照度信号Yの生成は行わない。
【0056】
その後、図8に示す時刻t3にて、RFIDセンサータグ200を図6に示すように、リーダーライタ300の通信可能領域TA内に配置する。これにより、RFIDセンサータグ200の通信回路100は、リーダーライタ300からの無線による電力供給を受けて、以下の動作を行う。
【0057】
つまり、先ず、リーダーライタ300が照度情報の要求を示すコマンドコードをRFIDセンサータグ200に送信する。照度情報の要求を受けると、RFIDセンサータグ200は、色素プレート30を介して受光部LRが受けた光の照度として図8に示す照度Y2を表す照度情報ILをリーダーライタ300に送信する。かかる照度情報ILを受信したリーダーライタ300は、この照度情報ILにて示される照度Y2と、図8に示す基準照度Yrfとの大きさを比較する。
【0058】
この際、照度情報ILにて示される照度Y2が基準照度Yrfより低いことから、リーダーライタ300は、周囲温度が温度閾値CMよりも高い温度環境下にRFIDセンサータグ200が晒されていたと判断する。そして、リーダーライタ300は、その旨を通知する画像を表示する。
【0059】
これにより、ユーザは、輸送中において、物品又は食品が温度閾値CMよりも高い温度に晒されていたことを知り、それ故、物品又は食品には品質低下が生じていると判断することが可能となる。
【0060】
一方、仮に図8に示す時刻t1において、RFIDセンサータグ200を図6に示すリーダーライタ300の通信可能領域TA内に配置した場合には、RFIDセンサータグ200は、図8に示す照度Y1を表す照度情報ILをリーダーライタ300に送信する。かかる照度情報ILを受信したリーダーライタ300は、この照度情報ILにて示される照度Y1と、図8に示す基準照度Yrfとの大きさを比較する。この際、照度情報ILにて示される照度Y1が基準照度Yrf以上であることから、リーダーライタ300は、RFIDセンサータグ200が継続的に温度閾値CMよりも低い温度環境下にあったことを通知する画像を表示する。
【0061】
これにより、ユーザは、輸送中において物品又は食品が温度閾値CMよりも高い温度には晒されていないことを知り、それ故、物品又は食品には品質低下が生じていないと判断することが可能となる。
【0062】
尚、RFIDセンサータグ200は、リーダーライタ300から送信された環境変化情報の要求を表す通信電波を受信した場合には、制御部CNTが生成した環境変化情報TEDをリーダーライタ300に送信する。この環境変化情報TEDを受信すると、リーダーライタ300は、環境変化情報TEDにて表される内容、つまりRFIDセンサータグ200が温度閾値CM以下の温度環境下にあったか、或いは温度閾値CMより高い温度環境下に晒されていていたかを表す情報を表示部に表示する。
【0063】
以上、詳述したように、RFIDセンサータグ200は、周囲の温度変化に応じて色が変化し、変化後の色の状態を維持する機能性色素材料を含む色素プレート30の色の状態により、周囲の温度変化の検知及びその検知結果の記憶を行う。そして、RFIDセンサータグ200は、色素プレート30を介して受けた光の照度を、周囲の温度変化の検知結果を表す情報として、これを無線送信する。
【0064】
よって、RFIDセンサータグ200によれば、電力供給を受けていない状態で周囲の温度変化を検知しこれを記憶することができるので、低消費電力化を図ることが可能となる。また、RFIDセンサータグ200によれば、バッテリ等の電源を不要とすることができるので、低消費電力化と共に小型化を図ることが可能となる。
【0065】
尚、図8に示す実施例では、周囲の温度が温度閾値CMを超えた場合に、色素プレート30は、受光部LRに入射する光の照度を照度Y1から照度Y2に低下させている。しかしながら、色素プレート30としては、周囲の温度が温度閾値CMを超えた場合に、受光部LRに入射する光の照度を照度Y1から、この照度Y1よりも高い所定の照度に高めるような光学特性を有する機能性色素材料を含むものを採用しても良い。この際、基準照度Yrfとしては、照度Y1よりも高く且つ上記した所定の照度よりも低い値に設定する。また、色素プレート30としては、周囲の温度が温度閾値CM(例えば0℃)を下回った場合に、受光部LRに入射する光の照度を照度Y1から、この照度Y1よりも低い又は高い照度に変化させるような光学特性を有する機能性色素材料を含むものを採用しても良い。
【0066】
ところで、図6に示すようなRFIDセンサータグ200及びリーダーライタ300間の通信は、屋内又は屋外の様々な光源、例えば蛍光灯、LED照明、赤外線証明、白熱電球、太陽光、ハロゲンランプ等の光源下で行われることが想定される。
【0067】
しかしながら、このような各種光源は夫々波長成分が異なるため、光センサ105の特性及び色素プレート30に含まれる色素の特性によっては、特定の波長範囲外の光をノイズとして検出してしまい、誤った検知結果を招く虞がある。
【0068】
例えば、図9に示すように、光センサ105の受光部LRが、特定の波長範囲内にある波長Wrfの光を発する光源LSから照射された光を受けた場合には誤検知を起こさない。しかしながら、受光部LRが、特定の波長範囲外にある波長Wxの光を発する光源LQから照射された光を受けた場合には誤検知する虞がある。
【0069】
そこで、このような誤検知を防止するために、ノイズとして検出される虞がある特定の波長範囲外の光の透過を抑制する光学フィルタを、受光部LRに入射する光の経路中に設けるようにしても良い。
【0070】
図10図12は、かかる点に鑑みて為された、図2に示されるW−W線でのRFIDセンサータグ200の断面構造の他の一例を示す断面図である。
【0071】
尚、図10は、特定の波長範囲外の光の透過を抑制する光学フィルタとして、受光部LRを全て覆うような表面積を有する光学フィルタ40を、RFIDチップ10の表面に貼着したRFIDセンサータグ200の断面構造を示す。図11は、この光学フィルタ40を、基板15の一方の面上における受光部LRと対向した領域を含み且つアンテナ20aの端部Eaと20bの端部Ebとの間の領域を全て覆うように基板15の一方の面上に貼着したRFIDセンサータグ200の断面構造を示す。図12は、この光学フィルタ40を、色素プレート30の面上における受光部LRと対向した領域を含み且つアンテナ20aの端部Eaと20bの端部Ebとの間の領域を覆うように基板15の一方の面上に貼着したRFIDセンサータグ200の断面構造を示す。
【0072】
図10図12に示すように、特定の波長範囲外の光の透過を抑制する光学フィルタ40を設けることにより、様々な波長の光源下にあっても、誤検知を回避した信頼性の高い温度変化の検知結果を得ることが可能となる。
【0073】
また、上記実施例では、図6に示すようなRFIDセンサータグ200及びリーダーライタ300間の無線通信を行う際に、周辺に光源が無い場合には、光センサ105によって色素プレート30の状態を検出することができない。
【0074】
そこで、暗所においても、色素プレート30の状態を検出可能にするために、RFIDセンサータグ200のRFIDチップ10自体に光源としての発光素子を設けるようにしても良い。
【0075】
図14は、かかる点に鑑みて為された、RFIDチップ10の表面の他の形態を表す平面図であり、図15は、図14に示されるW−W線でのRFIDセンサータグ200の断面構造を示す断面図である。また、図16は、RFIDチップ10に含まれる通信回路100の変形例としての通信回路100Aの構成を示すブロック図である。
【0076】
図14図16に示される実施例では、上記した色素プレート30に代えて色素プレート30Aを採用し、且つ色素プレート30Aに光を照射する発光部EMを有する発光素子108及び発光制御回路107をRFIDチップ10に設けた点を除く他の構成は、図2及び図3に示すものと同一である。尚、図14において、発光部EMは、RFIDチップ10の表面における、アンテナ20aの端部Eaと20bの端部Ebとの間の領域内に配置されていれば、その位置は限定されない。
【0077】
色素プレート30Aは、例えば周囲の温度が所定の温度閾値以上(又は温度閾値以下)になった場合に光反射率が変化し、その後、周囲温度が温度閾値未満(又は以上)に戻っても変化後の光反射率を維持する不可逆性の機能性色素材料を含む光学部材である。
【0078】
色素プレート30Aは、色素プレート30と同様に、基板15の他方の面(アンテナ20a及び20bが形成されていない方の面)上における、RFIDチップ10と対向する位置に貼着されている。
【0079】
図16に示す通信回路100Aは、センサ部CEBに代えてセンサ部CEBaを採用すると共に、制御部CNTに代えて制御部CNTaを採用した点を除く他の構成は、図7に示すものと同一である。
【0080】
また、センサ部CEBaの内部については、発光制御回路107と、上記した発光部EMを含む発光素子108と、を新たに追加して点を除く他の構成(光センサ105、A/D変換回路106)は、図7に示すものと同一である。
【0081】
発光制御回路107は、制御部CNTaから供給された発光指令Loに応じて所定の発光期間に亘り発光素子108を発光させる発光駆動電圧Lvを発光素子108に供給する。
【0082】
発光素子108は、かかる発光駆動電圧Lvに応じて発光部EMから発した光を色素プレート30Aに向けて照射する。
【0083】
制御部CNTaは、復調回路103から供給されたコマンドコードCOMが照度情報の要求を示す場合又は環境変化情報の要求を示す場合に、発光指令Loを発光制御回路107に供給し、その後、照度情報ILを取り込んでこれを変調回路104に供給する。
【0084】
尚、制御CNTaは、上記した動作を行う点を除き、前述した制御部CNTと同様な動作を行う。
【0085】
更に、図14図16に示す構成を有するRFIDセンサータグ200と、リーダーライタ300との間で行われる情報通信のシーケンスについても、前述した動作と同一である。
【0086】
ただし、図14図16に示す構成を有するRFIDセンサータグ200は、リーダーライタ300から送信された照度情報又は環境変化情報の要求を表すコマンドコードを受信した場合に、以下の動作を行う点が、図2図3及び図7に示す構成を有するRFIDセンサータグ200を用いた場合と異なる。
【0087】
すなわち、図14図16に示す構成を有するRFIDセンサータグ200では、先ず、発光素子108を発光させ、その光を発光部EMから色素プレート30Aに向けて照射する。引き続き、RFIDセンサータグ200は、光センサ105により、色素プレート30Aからの反射光の照度(Y)を検出し、この検出した照度を示す照度情報IL、又は当該検出した照度に基づき前述したように生成した環境変化情報をリーダーライタ300に送信する。
【0088】
以下に、RFIDセンサータグ200を、例えば周囲の温度が50℃以上になると品質低下を招く物品又は食品等に貼着して輸送する場合を例にとって、図14図16に示す構成を有するRFIDセンサータグ200の動作について説明する。
【0089】
尚、色素プレート30Aに含まれる機能性色素の材料としては、例えば温度閾値(例えば50℃)CM未満の温度下では第1の光反射率となり、温度閾値CM以上の温度下に所定期間以上に亘り晒されると第1の光反射率よりも高い第2の光反射率に遷移し、その後は温度変化に拘らず第2の光反射率の状態が維持される、不可逆性感温材料を用いる。すなわち、色素プレート30Aとしては、周囲の温度が所定の温度閾値を境にして変化したときに光反射率が変化し、この光反射率の変化後は周囲の温度に拘わらず変化後の光反射率の状態を維持する機能性色素材料を含むものを採用する。
【0090】
尚、輸送中においては、RFIDセンサータグ200は、リーダーライタ300からの無線による電力供給を受けることができないので、通信回路100Aの全ての動作が停止状態にある。
【0091】
図17に示すように、輸送開始の時刻t0から時刻t1の時間帯では、周囲の温度が温度閾値CM(例えば50℃)未満であるので、色素プレート30Aの光反射率はfr1である。よって、時刻t0から時刻t1の時間帯において、色素プレート30Aを介して受光部LRが受ける光の照度はY1となる。
【0092】
そして、時刻t1を過ぎた時点で図17に示すように周囲の温度が温度閾値CM以上となりその状態が所定期間twに亘り継続する。当該所定期間twが経過した時刻t2にて、温度閾値CM未満の温度に遷移する。
【0093】
このように、所定期間twに亘り温度閾値CM以上の温度に晒されると、色素プレート30Aの光反射率が図17に示すように、光反射率fr1から、この光反射率よりも高い光反射率fr2に遷移する。
【0094】
ここで、図17に示すように、時刻t2以降、周囲温度は温度閾値CM未満の状態に戻るが、色素プレート30Aは光反射率fr2の状態を維持する。よって、時刻t2以降は、周囲温度の変化に拘らず、受光部LRが受ける色素プレート30Aからの反射光の照度は、図17に示すように照度Y1よりも高い照度Y2の状態を維持する。尚、前述したように輸送中は、リーダーライタ300から電力供給を受けることができないので、この間、RFIDセンサータグ200の光センサ105は照度信号Yの生成は行わない。
【0095】
その後、図17に示す時刻t3において、RFIDセンサータグ200を、図6に示すようにリーダーライタ300の通信可能領域TA内に配置する。これにより、RFIDセンサータグ200の通信回路100Aは、リーダーライタ300からの無線による電力供給を受け、引き続き以下の動作を行う。
【0096】
つまり、先ず、リーダーライタ300が、照度情報の要求を示すコマンドコードをRFIDセンサータグ200に送信する。照度情報の要求を受けると、RFIDセンサータグ200は、先ず、発光素子108を発光させる。この際、発光素子108の発光部EMから色素プレート30Aに向けて光が照射され、当該色素プレート30Aからの反射光が受光部LRに入射する。これにより、時刻t3では、RFIDセンサータグ200は、光センサ105によって検出した色素プレート30Aからの反射光の照度として、図17に示す照度Y2を表す照度情報ILをリーダーライタ300に送信する。かかる照度情報ILを受信したリーダーライタ300は、この照度情報ILにて示される照度Y2と、図17に示す基準照度Yrfとの大きさを比較する。
【0097】
この際、照度情報ILにて示される照度Y2が基準照度Yrfより高いことから、リーダーライタ300は、周囲温度が温度閾値CMよりも高い温度にRFIDセンサータグ200が晒されていたことを表す画像を表示する。
【0098】
これにより、ユーザは、輸送中において、物品又は食品が温度閾値CMよりも高い温度に晒されていたことを知り、それ故、物品又は食品には品質低下が生じていると判断することが可能となる。
【0099】
一方、仮に図17に示す時刻t1において、RFIDセンサータグ200を図6に示すリーダーライタ300の通信可能領域TA内に配置した場合には、RFIDセンサータグ200は、図17に示す照度Y1を表す照度情報ILをリーダーライタ300に送信する。かかる照度情報ILを受信したリーダーライタ300は、この照度情報ILにて示される照度Y1と、図17に示す基準照度Yrfとの大きさを比較する。この際、照度情報ILにて示される照度Y1が基準照度Yrf未満であることから、リーダーライタ300は、RFIDセンサータグ200が継続的に温度閾値CMよりも低い温度環境下にあったことを通知する画像を表示する。
【0100】
これにより、ユーザは、輸送中において物品又は食品が温度閾値CMよりも高い温度には晒されていないことを知り、それ故、物品又は食品には品質低下が生じていないと判断することが可能となる。
【0101】
尚、図17に示す一例では、周囲の温度が温度閾値CMを超えた場合に、色素プレート30Aが、受光部LRに入射する光の照度を照度Y1から照度Y2に増加させている。しかしながら、色素プレート30Aとしては、周囲の温度が温度閾値CMを超えた場合に、受光部LRに入射する光の照度を照度Y1から、この照度Y1よりも低い所定の低照度に低下させるような反射率の遷移特性を有する機能性色素材料を含むものを採用しても良い。この際、基準照度Yrfとしては、照度Y1よりも低く且つ上記した低照度よりも高い値に設定する。
【0102】
また、色素プレート30Aとしては、周囲の温度が温度閾値CM(例えば0℃)を下回った場合に、受光部LRに入射する光の照度を照度Y1から、この照度Y1よりも低い又は高い照度に変化させるような反射率の遷移特性を有する機能性色素材料を含むものを採用しても良い。
【0103】
ところで、図14図16に示す構成では、色素プレート30Aとして温度変化に応じて光の光反射率が変化する機能性色素材料を含むものを採用しているが、温度変化に応じて吸光率が変化する機能性色素材料を含む色素プレートを採用しても良い。
【0104】
図18は、かかる点に鑑みて為された、図14に示すW−W線でのRFIDセンサータグ200の断面構造の他の一例を示す断面図である。
【0105】
図18に示す構成では、色素プレート30Aに代えて色素プレート30Bを採用している。色素プレート30Bは、周囲の温度が所定の温度閾値未満の場合には第1の吸光率を有し、周囲の温度が温度閾値以上に変化した場合には第2の吸光率に変化し、その後、周囲温度が温度閾値未満に戻っても変化後の吸光率を維持する不可逆性の機能性色素材料を含む。すなわち、色素プレート30Bとしては、周囲の温度が所定の温度閾値を境にして変化したときに吸光率が変化し、この吸光率の変化後は周囲の温度に拘わらず変化後の吸光率の状態を維持する機能性色素材料を含むものを採用する。
【0106】
色素プレート30Bは、色素プレート30Aと同様に、基板15の他方の面(アンテナ20a及び20bがプリントされていない方の面)上における、RFIDチップ10と対向する位置に貼着されている。
【0107】
更に、図18に示す構成では、色素プレート30Bの表面上における、受光部LR及び発光部EMに対向しており且つアンテナ20aの端部Eaとアンテナ20bの端部Ebとの間に挟まれる領域を覆うように、反射板60が貼着されている。反射板60は、発光部EMから照射された光のうちで、受光部LR及び光センサ105で検知することが可能な波長の光を所定率以上の反射率で反射する特性を有する。よって、光センサ105は、色素プレート30Bの吸光率が低い場合には高い照度の反射光を検知し、色素プレート30Bの吸光率が高くなると、低い照度の反射光を検知することになる。
【0108】
また、図14図16に示される構成において、RFIDセンサータグ200の外部からのノイズとなる光や、反射板60を透過するような波長を有する光が、色素プレート30Bを介してRFIDチップ10の表面に到るのを阻止する構造を採用しても良い。
【0109】
図19は、かかる点に鑑みて為された、図14に示すW−W線でのRFIDセンサータグ200の断面構造の他の一例を示す断面図である。
【0110】
尚、図19に示す構成では、反射板60に代えて光を遮断する遮光板70aを設けた点を除く他の構成は、図18に示すものと同一である。
【0111】
また、RFIDチップ10の他方の面(受光部IR及び発光部EMが設けられていない方の面)にも遮光板を設けることにより、このRFIDチップ10の他方の面の上方の光源から照射された光のまわり込みを遮断するようにしても良い。
【0112】
図20は、かかる点に鑑みて為された、図14に示すW−W線でのRFIDセンサータグ200の断面構造の他の一例を示す断面図である。
【0113】
尚、図20に示す構成では、光を遮断する遮光板70bを新たに設けた点を除く他の構成は、図19に示すものと同一である。
【0114】
ここで、図18に示される反射板60、図19及び図20に示される遮光板70aについては、RFIDチップ10の表面を覆う程度の表面積を有するものを採用すれば良い。色素プレート30Bの表面積を反射板60(遮光板70b)よりも大きくすることで、色素プレート30Bの色変化等を、目視で視認することが可能となる。
【0115】
尚、上記した実施例では、色素プレート30、30A、30B、反射板60、遮光板70a及び70bとしては、必ずしも板状である必要はない。つまり、これら色素プレート30、30A、30B、反射板60、遮光板70a及び70bとしては、板状又は膜状等の各種の形状の光学部材を用いればよい。
【0116】
また、上記した実施例では、色素プレート30、30A及び30Bとして、周囲の温度変化によって自身の光学特性(色、光反射率、吸光率)が変化し、変化後の光学特性を維持する不可逆性感温材料を含む光学部材を採用している。
【0117】
しかしながら、色素プレート30、30A及び30Bとしては、特定のガスが存在する環境、所定の湿度以上又は未満の環境、紫外線の照射を受ける環境、又は所定照度以上の光を受ける環境に所定期間以上晒された場合、又は物理的な衝撃を受けた場合に、自身の光学特性が変化する機能性色素材料を含む光学部材を採用しても良い。
【0118】
要するに、RFIDセンサータグ200は、以下のような部材、光センサ、及び通信制御部を含むものであれば良い。すなわち、部材(30、30A及び30B)は、 周囲の環境の変化に応じて光学特性(色、光反射率、吸光率等)が変化し、変化後の光学特性を維持する機能性色素材料を含む。光センサ(105、LR)は、受光部(LR)を有し、部材を介した光がこの受光部に入射されるように設置されており、この受光部に入射された光の照度(Y)を検出する。通信制御部(CNT、CNTa、104)は、光センサで検出された照度を表す情報(IL)を送信する。
【符号の説明】
【0119】
10 RFIDチップ10
30、30A、30B 色素プレート
100、100A 通信回路
105 光センサ
108 発光素子
200 RFIDセンサータグ
CNT、CNTa 制御部
EM 発光部
LR 受光部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20