【実施例】
【0020】
以下、本発明の試験例を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
〔試験例1〕
試験例1では、ゲル状食品の特性に対するタンパク質の含量の影響を評価した。
1.試験方法
表1に示す配合の試験品を調製した。表1の乳製品とは、食品衛生法における乳及び乳製品の成分規格等に関する省令第二条において定義されるものを指す。分散は、ローターステーター型攪拌機を用い、5000rpm、5分間の条件とした。遠心分離は、5000g、5分間の条件とした。
本試験例のゲル状食品の製造方法を次に示す。
[工程a]第一の組成物の予備乳化工程
第一の組成物は、水(約70℃の溶解水)に卵由来成分以外の原材料を溶解または分散させて調製した。攪拌は、ローターステーター型攪拌機を用い、5000rpm、5分間の条件とした。
[工程b]第一の組成物を加熱殺菌する工程
第一の組成物を熱湯に浸漬し、90℃に加熱殺菌した。殺菌後の第一の組成物は氷冷水に浸漬し、60℃以下に冷却した。
[工程c]卵由来成分を添加し、第二の組成物を得る工程
工程bを経た第一の組成物に、卵由来成分を攪拌により混合し、第二の組成物を得た。
[工程d]第二の組成物の均質
第二の組成物を温湯に浸漬し、60℃に加温した。第二の組成物を均質機により、圧力10MPaで均質化した。その後、容器に充填し、密閉した。
[工程e]第二の組成物の加熱凝固および冷却
工程dを経た第二の組成物を、蒸し機を用いて加熱凝固した。加熱条件は90℃、60分間とし、第二の組成物の中心温度を85℃、20分間以上保持し加熱凝固物を得た。加熱終了後、第二の組成物は氷冷水に浸漬し速やかに10℃まで冷却した。氷冷水で冷却後は、10℃庫で保存した。
【0022】
2.評価方法
(1)ゲル状食品の硬さの測定
本発明のゲル状食品の硬さは、TAによる貫入試験により得られる硬度(gf)として測定することができる。測定には、TA.XT plus(Stable Micro Systems製)を用いた。
測定は、ゲル状食品を10℃で1時間以上保温後、容器のまま測定部にセットし、直径16mm円柱型(プラスチック製)のプランジャーを使用し、貫入深さ10mm、速度1mm/secの条件で行う。この時の硬度が0gf以上60gf未満のものをしっかりとした硬さ「不適」、60gf以上600gf以下をしっかりとした硬さ「可」、このうちでも100gf以上500gf以下をしっかりとした硬さ「良好」とした。
硬度は品温の影響を受けるため、測定に用いる試料は、測定時だけでなく保存中も適切な条件(10℃以下で冷蔵保存された賞味期限内のもの)で保存されているものを対象に行った。硬度の測定は、製造後20日で実施した。
(2)ゲル状食品の締まった食感の測定
本発明のゲル状食品の締まった食感は、TAによる貫入試験により得られる硬度測定の貫入深さ2mmにおける硬度(gf)から算出される硬度の傾き(gf/mm)を用いて評価することができる。測定には、TA.XTplus(Stable MicroSystems製)を用いた。測定は、ゲル状食品を10℃で1時間以上保温後、容器のまま測定部にセットし、直径16mm円柱型(プラスチック製)のプランジャーを使用し、貫入深さ10mm、速度1mm/secの条件で行った。
硬度の傾きが15gf/mm未満又は250gf/mmより大きいものを締まった食感を「不適」、15gf/mm以上250gf/mm以下のものを締まった食感「可」、20gf/mm以上200gf/mm以下を締まった食感「良」、このうちでも40gf/mm以上200gf/mm以下を締まった食感「優」とした。
硬度の傾きは品温の影響を受けるため、測定に用いる試料は、測定時だけでなく保存中も適切な条件(10℃以下で冷蔵保存された賞味期限内のもの)で保存されているものを対象に行った。硬度の傾きの測定は、製造後20日で実施した。
(3)ゲル状食品の口溶けの測定
本発明のゲル状食品の口溶けは、動的粘弾性測定装置による測定で得られた貯蔵弾性率G’(Pa)の温度依存性により評価することができる。動的粘弾性測定装置はARES(TA Instruments製)を使用した。
測定は、ゲル状食品を10℃で1時間以上保温後、25mmチタン平板プレートで厚さ2mmにセットし、10℃で1分間静置し、その後45℃まで2℃/分の速度で昇温させながら、線形性を有する周波数3.14rad/s、歪0.3%の条件で行った。
本発明では、(30℃のG’)/(10℃のG’)×100をG’比(%)と称し、これにより口溶けを評価した。本発明では、G’比が20%以上100%以下を口溶け「不適」、0.01%以上20%未満の場合を口溶け「可」、このうちでも0.01%以上10%以下の場合を口溶け「良好」とした。G’の測定は、製造後20日で実施した。
(4)その他の測定
(i)ゲル状食品中のタンパク質
ゲル状食品中のタンパク質含量はケルダール法により測定した。
(ii)脂質の含量
ゲル状食品中の脂質含量は酸分解法により測定した。
(iii)抽出脂質のSFCの傾き、ラウリン酸含量
ゲル状食品中の脂質の抽出は、50gの試料と抽出溶媒(ヘキサンとイソプロパノールを3:2で混合)50mlを添加し、ホモジナイザーを用い10000rpm、5分間の条件で分散させ、遠心分離機を用い5000g、5分間の条件で浮上させた油相画分を分画し、エバポレータを用いた抽出溶媒の除去により行った。
前記抽出により得られた脂質のSFCは、核磁気共鳴法により測定した。10℃〜30℃におけるSFCの傾きは以下の式で算出した。
10℃〜30℃におけるSFCの傾き=
(10℃におけるSFC−30℃におけるSFC)/(30−10)
また、抽出脂質のラウリン酸含量は、3フッ化ホウ素メタノールメチルエステル化ガスクロマトグラフィー法により測定した。
【0023】
3.測定結果
表1に本試験例1の各試験品の硬度(しっかりとした硬さ)、G’比(口溶け)、硬度の傾き(締まった食感)を示す。
しっかりとした硬さは、実施例1−1、実施例1−2、実施例1−3で「可」、実施例1−4、実施例1−5、実施例1−6、比較例1−2で「良好」であった。
口溶けは、実施例1−1、実施例1−2、実施例1−6で「可」、実施例1−3、実施例1−4、実施例1−5で「良好」であった。
したがって、しっかりとした硬さ「可」、口溶け「可」である水準は、実施例1−1、実施例1−2、しっかりとした硬さ「可」、口溶け「良好」である水準は実施例1−3、しっかりとした硬さ「良好」、口溶け「可」である水準は実施例1−6、しっかりとした硬さ「良好」、口溶け「良好」である水準は、実施例1−4、実施例1−5であった。
以上より、ゲル状食品のタンパク質含量が1.5重量%以上6.5重量%以下の範囲ではゲル状食品は、しっかりとした硬さ、口溶けともに所望の食品が得られることがわかった。
ならびに、締まった食感は実施例1−1で「可」、実施例1−2、実施例1−3で「良」、実施例1−4、実施例1−5、実施例1−6、比較例1−2で「優」であった。
したがって、ゲル状食品のタンパク質含量が1.5重量%以上6.5重量%以下の範囲ではゲル状食品は、しっかりとした硬さ、口溶けならびに締まった食感ともに所望の食品が得られることがわかった。
【0024】
〔試験例2〕
試験例2では、ゲル状食品の特性に対する脂質の種類の影響を評価した。
1.試験方法、評価方法
表2に示す配合の試験品を調製した。ゲル状食品の製造方法および評価方法は試験例1と同様である。
【0025】
2.測定結果
表2に試験品の硬度、G’比を示す。
しっかりとした硬さは、実施例2−1、実施例2−2、実施例2−3で「良好」であった。
口溶けは、実施例2−1、実施例2−2、実施例2−3で「良好」であった。
したがって、しっかりとした硬さ「良好」、口溶け「良好」である水準は、実施例2−1、実施例2−2、実施例2−3であった。
以上より、ゲル状食品中に用いた脂質のSFCの傾きが2.1以上5以下、かつ、ラウリン酸量が0.01%以上45%以下である場合は、しっかりとした硬さ、口溶けともに所望の食品が得られることがわかった。
ならびに、締まった食感は、実施例2−1、実施例2−2、実施例2−3で、「優」であった。
したがって、ゲル状食品中に用いた脂質のSFCの傾きが2.1以上5以下、かつ、ラウリン酸量が0.01%以上45%以下である場合は、しっかりとした硬さ、口溶けならびに締まった食感ともに所望の食品が得られることがわかった。
【0026】
〔試験例3〕
試験例3では、ゲル状食品の特性に対する脂質の含量の影響を評価した。
1.試験方法、評価方法
表3に示す配合の試験品を調製した。ゲル状食品の製造方法および評価方法は試験例1と同様である。
【0027】
2.測定結果
表3に試験品の硬度、G’比を示す。
しっかりとした硬さは、実施例3−1で「可」、実施例3−2、実施例3−3、実施例3−4、実施例3−5で「良好」であった。
口溶けは、実施例3−1で「可」、実施例3−2、実施例3−3、実施例3−4、実施例3−5、比較例3−3で「良好」であった。
したがって、しっかりとした硬さ「可」、口溶け「可」である水準は、実施例3−1、しっかりとした硬さ「良好」、口溶け「良好」である水準は、実施例3−2、実施例3−3、実施例3−4、実施例3−5であった。
以上より、ゲル状食品の脂質の含量が6重量%以上15重量%以下の範囲ではゲル状食品は、しっかりとした硬さ、口溶けともに所望の食品が得られることがわかった。
ならびに、締まった食感は、実施例3−1、実施例3−5で「可」、実施例3−2で「良」、実施例3−3、実施例3−4で「優」であった。
したがって、ゲル状食品の脂質の含量が6重量%以上15重量%以下の範囲ではゲル状食品は、しっかりとした硬さ、口溶けならびに締まった食感ともに所望の食品が得られることがわかった。
【0028】
〔試験例4〕
試験例4では、ゲル状食品の特性に対する乳化剤及び/又はリン脂質の種類の影響を評価した。
1.試験方法、評価方法
表4に示す配合の試験品を調製した。ゲル状食品の製造方法および評価方法は試験例1と同様である。
【0029】
2.測定結果
表4に試験品の硬度、G’比を示す。
しっかりとした硬さは、実施例4−1、実施例4−2、実施例4−7で「可」、実施例4−3、実施例4−4、実施例4−5、実施例4−6で「良好」であった。
口溶けは、実施例4−1、実施例4−2、実施例4−3、実施例4−4、実施例4−5、実施例4−6、実施例4−7で「良好」であった。
したがって、しっかりとした硬さ「可」、口溶け「良好」である水準は、実施例4−1、実施例4−2、実施例4−7、しっかりとした硬さ「良好」、口溶け「良好」である水準は、実施例4−3、実施例4−4、実施例4−5、実施例4−6であった。
以上より、有機酸モノグリセリド、モノグリセリド、SE(HLB10未満)、PGPR及びリン脂質から選択される乳化剤及び/又はリン脂質の組合せではゲル状食品は、しっかりとした硬さ、口溶けともに所望の食品が得られることがわかった。また、モノグリセリド、大豆レシチン、PGPR、SE(HLB2.5以上10未満)から選択される乳化剤及び/又はリン脂質の組合せではではさらに優れた食品が得られることがわかった。
ならびに、締まった食感は、実施例4−1、実施例4−2、実施例4−3、実施例4−4、実施例4−5、実施例4−6、実施例4−7で「良」であった。
したがって、有機酸モノグリセリド、モノグリセリド、SE(HLB10未満)、PGPR及びリン脂質から選択される乳化剤及び/又はリン脂質の組合せではゲル状食品は、しっかりとした硬さ、口溶けならびに締まった食感ともに所望の食品が得られることがわかった。
【0030】
〔試験例5〕
試験例5では、ゲル状食品の特性に対する乳化剤及び/又はリン脂質の含量の影響を評価した。
1.試験方法、評価方法
表5に示す配合の試験品を調製した。ゲル状食品の製造方法および評価方法は試験例1と同様である。
【0031】
2.測定結果
表5に試験品の硬度、G’比を示す。
しっかりとした硬さは、実施例5−1、実施例5−5で「可」、実施例5−2、実施例5−3、実施例5−4で「良好」であった。
口溶けは、実施例5−1、実施例5−5で「可」、実施例5−2、実施例5−3、実施例5−4で「良好」であった。
したがって、しっかりとした硬さ「可」、口溶け「可」である水準は、実施例5−1、実施例5−5、しっかりとした硬さ「良好」、口溶け「良好」である水準は、実施例5−2、実施例5−3、実施例5−4であった。
以上より、ゲル状食品の乳化剤及び/又はリン脂質含量が0.1重量%以上2.0重量%以下の範囲ではゲル状食品は、しっかりとした硬さ、口溶けともに所望の食品が得られることがわかった。
ならびに、締まった食感は、実施例5−1で「可」、実施例5−2、実施例5−5で「良」、実施例5−3、実施例5−4で「優」であった。
したがって、ゲル状食品の乳化剤及び/又はリン脂質含量が0.1重量%以上2.0重量%以下の範囲ではゲル状食品は、しっかりとした硬さ、口溶けならびに締まった食感ともに所望の食品が得られることがわかった。
【0032】
〔試験例6〕
試験例6では、ゲル状食品の特性に対する乳化剤及び/又はリン脂質のうち、最も配合比が低い乳化剤又はリン脂質の、乳化剤及び/又はリン脂質全体に対する配合比率の影響を評価した。
1.試験方法、評価方法
表6に示す配合の試験品を調製した。ゲル状食品の製造方法および評価方法は試験例1と同様である。
【0033】
2.測定結果
表6に試験品の硬度、G’比を示す。( )内の%は、乳化剤及び/又はリン脂質のうち、最も配合比が低い乳化剤又はリン脂質の、乳化剤及び/又はリン脂質全体に対する配合比率を示す。
しっかりとした硬さは、実施例6−1(20%)、実施例6−5(20%)で「可」、実施例6−2(30%)、実施例6−3(50%)、実施例6−4(30%)で「良好」であった。
口溶けは、実施例6−1(20%)で「可」、実施例6−2(30%)、実施例6−3(50%)、実施例6−4(30%)、実施例6−5(20%)で「良好」であった。
したがって、しっかりとした硬さ「可」、口溶け「可」は、実施例6−1(20%)、しっかりとした硬さ「可」、口溶け「良好」は、実施例6−5(20%)、しっかりとした硬さ「良好」、口溶け「良好」は、実施例6−2(30%)、実施例6−3(50%)、実施例6−4(30%)であった。
以上より、最も配合比が低い乳化剤又はリン脂質の、乳化剤及び/又はリン脂質全体に対する配合比率が15重量%以上では、ゲル状食品は、しっかりとした硬さ、口溶けともに所望の食品が得られることがわかった。
ならびに、締まった食感は、実施例6−1で「可」、実施例6−2、実施例6−3、実施例6−5で「良」、実施例6−4で「優」であった。
したがって、最も配合比が低い乳化剤又はリン脂質の、乳化剤及び/又はリン脂質全体に対する配合比率が15重量%以上では、ゲル状食品は、しっかりとした硬さ、口溶けならびに締まった食感ともに所望の食品が得られることがわかった。
【0034】
〔試験例7〕
試験例7では、ゲル状食品の特性に対するタンパク質、脂質の含量の影響を評価した。
1.試験方法、評価方法
表7に示す配合の試験品を調製した。ゲル状食品の製造方法および評価方法は試験例1と同様である。
【0035】
2.測定結果
表7に試験品の硬度、G’比を示す。
しっかりとした硬さは、実施例7−1、実施例7−2、実施例7−3、比較例7−3で「可」、実施例7−4、比較例7−4で「良好」であった。
口溶けは、実施例7−1、実施例7−2、実施例7−3で「可」、実施例7−4で「良好」であった。
したがって、しっかりとした硬さ「可」、口溶け「可」である水準は実施例7−1、実施例7−2、実施例7−3、しっかりとした硬さ「良好」、口溶け「良好」である水準は、実施例7−4であった。
ならびに、締まった食感は、実施例7−1で「可」、実施例7−2、実施例7−3、比較例7−4で「良」、実施例7−4で「優」であった。
したがって、しっかりとした硬さ、口溶けならびに締まった食感ともに所望の食品が、実施例7−1、実施例7−2、実施例7−3、実施例7−4で得られた。
【0036】
3.官能評価
試験例7の試験品を対象に、機器測定結果による評価のほかに、官能評価専用パネラーによる官能評価を実施した。
官能評価専用パネラーは、12名で、しっかりとした硬さ、口溶け、風味それぞれについて、「不適」、「可」、「良好」の3段階で評価した。
その結果、しっかりとした硬さは実施例7−1、実施例7−2、実施例7−3、比較例7−3で「可」、実施例7−4、比較例7−4で「良好」であった。
口溶けは、実施例7−1、実施例7−2、実施例7−3で「可」、実施例7−4で「良好」であった。
風味は、比較例7−1、実施例7−1、実施例7−2、実施例7−3、実施例7−4、比較例7−2、比較例7−3、比較例7−4で「良好」であった。
以上より、しっかりとした硬さ「可」、口溶け「可」である水準は実施例7−1、実施例7−2、実施例7−3、しっかりとした硬さ「良好」、口溶け「良好」である水準は、実施例7−4であった。これらの評価から、機器による測定結果と官能評価の整合性が確認された。
ならびに官能評価における締まった食感は、官能評価パネラー12名により、「不適」、「可」、「良」、「優」の4段階で評価した。
その結果、締まった食感は、実施例7−1で「可」、実施例7−2、実施例7−3、比較例7−4で「良」、実施例7−4で「優」であった。これらの評価から、機器による測定結果と官能評価の整合性が確認された。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
【表6】
【0043】
【表7】