(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-17734(P2019-17734A)
(43)【公開日】2019年2月7日
(54)【発明の名称】発光装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20190111BHJP
H01L 33/60 20100101ALI20190111BHJP
H01L 31/12 20060101ALI20190111BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20190111BHJP
【FI】
A61B5/02 310B
H01L33/60
H01L31/12 E
G01J1/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-139092(P2017-139092)
(22)【出願日】2017年7月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098372
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 保人
(72)【発明者】
【氏名】大野 文昭
【テーマコード(参考)】
2G065
4C017
5F142
5F889
【Fターム(参考)】
2G065AB09
2G065AB28
2G065BA01
2G065BA09
2G065BB11
2G065DA15
4C017AA09
4C017AA12
4C017AB02
4C017AC28
4C017EE01
4C017FF05
4C017FF17
5F142AA82
5F142BA32
5F142CA03
5F142CD02
5F142CD16
5F142CE02
5F142CE06
5F142DB22
5F142FA21
5F142GA40
5F889BA05
5F889BB02
5F889BC02
5F889CA17
5F889DA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】製作容易かつ低コストとなる構成により集光度の高い光が得られ、ヘルスケア機器等に使用される反射型フォトセンサの検出感度を向上できる発光装置を提供する。
【解決手段】発光装置10は、配線用の金属薄膜2を設けた絶縁体基板1に凹部3を形成し、この凹部にその中央部から内壁面に向かう程厚く形成されためっき層からなり、凹部の中央部から内壁面に向かって開口幅が広くなるように傾斜した反射面を持つ反射鏡4を形成し、この反射鏡の底面部に発光素子5をマウントして構成される。この反射鏡では、めっき処理により例えば45度程度の傾斜を持つ曲面の反射面が得られ、これによって集光度の高い光が得られる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部が形成された基板と、
この基板の凹部の中央部から内壁面に向かう程、該凹部の深さ方向の厚さが厚くなり、開口幅が広くなる傾斜した反射面を持つ反射鏡と、
この反射鏡の底面部にマウントされた発光素子と、を備えてなる発光装置。
【請求項2】
発光素子から対象物に投光し、その反射光を受光素子で受光する反射型フォトセンサに適用したことを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
基板に配線用パターン及び凹部を形成する工程と、
めっきにより上記凹部の中央部から内壁面に向かう程、該凹部の深さ方向の厚さが厚くなるめっき層を形成し、上記凹部の中央部から内壁面に向かって開口幅が広くなる傾斜した反射面を持つ反射鏡を形成する工程と、
上記反射鏡の底面部に発光素子をマウントし、上記配線用パターンに対し上記発光素子を接続する工程と、を備えてなる発光装置の製造方法。
【請求項4】
上記反射鏡のめっき層は、無電解めっきによって形成しためっき層を含むことを特徴とする請求項3記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光装置及びその製造方法、特に点光源を必要とするウエアラブル機器に搭載する発光装置の構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、脈波や心拍数、溶存酸素量の測定を行うことのできるヘルスケア機器として、医療機関において使用するバイタルセンサや、日々の運動量や健康状態をチェックするためのスマートウォッチ(ウェアラブル機器)等、種々のものが提供されている。これらバイタルセンサのセンサヘッドやスマートウォッチの背面の肌に面する部分には、反射型フォトセンサが配置されており、光の投受光によって各種の測定が行われる。即ち、血管内を流れる血液に光が吸収される性質や血液の状態により吸収される光の波長が異なる性質を利用し、血液の脈動や溶存酸素量、血糖値等が測定可能となっている。このような反射型フォトセンサとしては、下記特許文献1に示すものがある。
【0003】
しかし、上記反射型フォトセンサには、皮膚表面や骨からの光の反射によるノイズや外来光ノイズなど多くのノイズ(DCノイズ)が影響し、センサ出力から得られる脈動によるAC成分がこれらノイズに埋もれてしまい、環境によって正確な測定ができないという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するため、従来では、発光素子としてレーザダイオードを用いたり、下記特許文献2のように演算処理によるノイズ除去を行ったりしている。即ち、特許文献2では、発光量が大きな場合と小さい場合で得られたデータ同士の差分をとることで、外乱光成分を含むデータを求め、これを検出データから除去して脈拍成分を正確に取得することが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3088148号公報
【特許文献2】特開2008−132012号公報
【特許文献3】特許第4735941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、腕に装着するスマートウォッチ機器等の発光素子として上記のようにレーザダイオードを用いると、その出力が強すぎて、長時間レーザー光を照射する場合には地肌への影響を考慮しなければならなかったり、発光素子としてLEDを用いた場合に比べて高価であったりという別の問題が生じる。
このような問題は、高輝度LEDを用いることによりある程度解決できるが、上述のノイズについては完全には避けられるものではなく、特許文献2に示すような演算処理でノイズを除去する場合は、そのための演算回路が必要になるため回路規模が大きくなり、スマートウォッチのような小型モバイル機器に適さなくなる。
【0007】
上記の問題の解決の1つとして、受光素子に入る光をより多くすることにより、S/N比を高くするよう、発光素子の光を集束させる反射鏡を設けることが考えられる。このような発光装置として、例えば特許文献3に示すものがある。
図3に、特許文献3の構成を用いた場合の発光装置の構成が示されており、符号の20は発光装置、21は絶縁体基板、22は金属薄膜、23はザグリ部、24はめっき被膜、25は発光素子(LED)、26はダイボンド材、27はワイヤである。即ち、絶縁体基板21には、金属薄膜22がパターニングされると共に、45度程度の傾斜壁を持つザグリ部23が形成され、このザグリ部23にめっき被膜24が形成される。
このような構成によれば、めっき被膜24が反射鏡の役割をし、このめっき被膜24によって発光素子25からの光が集光され、発光装置からの放射強度を高めることができる。
【0008】
しかしながら、
図3の構成のように、傾斜壁を持つザグリ部23を製作するためには、NC工作機械等による精密加工が必要なため、ザグリ部形成工程によるコストアップが問題となる。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、製作容易かつ低コストとなる構成により集光度の高い光が得られ、ヘルスケア機器等に使用される反射型フォトセンサの検出感度を向上させることができる発光装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明に係る発光装置は、凹部が形成された基板と、この基板の凹部の中央部から内壁面に向かう程、該凹部の深さ方向の厚さが厚くなり、開口幅が広くなる傾斜した反射面を持つ反射鏡と、この反射鏡の底面部にマウントされた発光素子と、を備えてなることを特徴とする。
請求項2の発明は、発光素子から対象物に投光し、その反射光を受光素子で受光する反射型フォトセンサに適用したことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明に係る発光装置の製造方法は、基板に配線用パターン及び凹部を形成する工程と、めっきにより上記凹部の中央部から内壁面に向かう程、該凹部の深さ方向の厚さが厚くなるめっき層を形成し、上記凹部の中央部から内壁面に向かって開口幅が広くなる傾斜した反射面を持つ反射鏡を形成する工程と、上記反射鏡の底面部に発光素子をマウントし、上記配線用パターンに対し上記発光素子を接続する工程と、を備えてなることを特徴とする。
請求項4の発明は、上記反射鏡のめっき層は、無電解めっきによって形成しためっき層を含むことを特徴とする。
【0012】
以上の構成によれば、基板に形成された凹部に対し、例えば無電解めっき法で、いわゆるビアフィルめっきと同様のめっき法を施すことにより、凹部の中央部から内壁面に向かう程厚くなるめっき層で、凹部の中央部から内壁面に向かって開口幅が広くなるように傾斜した反射面(底面部中央から内壁面側へ向けて緩やかに曲線状に上がる曲面の反射面)を持つ反射鏡が形成される。そして、この反射面の底面部に発光素子が搭載され、この発光素子から反射面へ向かう光は反射面で反射されることで、所定方向に集束させた出力光が得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、発光素子の周囲に反射鏡を簡単に設けることができ、製作容易かつ低コストとなる構成により集光度の高い光が得られ、ヘルスケア機器等に使用される反射型フォトセンサの検出感度を向上させることができる。即ち、発光素子からの光を集束させることにより、発光素子からの不要な拡散光を低減し、反射型フォトセンサの出力信号において検出対象のAC成分をDCノイズ成分から際立たせることによって、感度の向上が図られる。
また、基板凹部に形成された反射鏡に発光素子を埋没させる形となるので、発光装置や反射型フォトセンサの低背化を図ることができ、スマートウォッチ機器等への搭載スペースの削減も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る実施例の発光装置の構成を示す断面図である。
【
図2】実施例の発光装置を適用した反射型フォトセンサの構成を示し、図(a)は上面図、図(b)は図(a)のb−b線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に、実施例の発光装置の構成が示されており、
図1の符号10は発光装置、1は絶縁体基板、2は配線用の金属薄膜、3は凹部、4はめっき層からなる反射鏡、5は発光素子(LED)、6はダイボンド材、7はワイヤである。
上記反射鏡4は、凹部3の底部中央から内壁面側に向かう程厚いめっき層で4で形成され、表面がその底面部中央から凹部3の内壁面に向かって高くなる傾斜の反射面となり、例えば表面からAu,Ni,Cuの順に形成された3層のめっきとされる。この反射鏡4は、凹部3に作製されためっき層からなるので、周囲が曲面を持つ反射面となり、反射面の平滑性、光沢も確保され、発光素子5の光を集束し、集光度を高めることができる。
【0016】
次に、発光装置の製造方法について説明する。
まず、絶縁体基板1に対し配線用パターン(配線と配線用パッド等)の形成(パターニング)が行われ、裏面には配線用の金属薄膜2が設けられる。その後、絶縁体基板1の所定の場所にレーザードリル等によって穴を開けることにより凹部3が作製され、この凹部3の作製では、レーザードリルの出力を調整することによって、金属薄膜2を残して絶縁体基板1の所定部分のみが除去される。
【0017】
次に、絶縁体基板1にレジストパターンを形成した後、露出させた凹部3に対してめっき処理(いわゆるビアフィルめっき)を施すことにより反射鏡4が形成される。即ち、レジストパターンが形成された基板1を無電解めっき液に浸漬し、最初にCuめっき、続いてNi、Auの順でめっきを実行する。このめっき工程では、無電解めっき液の添加剤(促進剤、抑制剤等)の組成や量、温度、浸漬時間等を調整することで、凹部の各場所での成長(厚さ)を制御し、凹部3の中央部は薄く、内壁面(内側面)に向かう程、厚くなるようにする。その結果、
図1に示されるように、中心の底面部から外周へ向かって45度程度の角度で高くなるように傾斜する曲面状(断面で見ると、底面部の直線→下に凸の曲線→変曲点を介して上に凸の曲線を順に結合した曲線状となる)の反射面(表面)を持つ反射鏡4が設けられる。
【0018】
なお、一般的にビアフィルめっきは、凹部をめっき層によって充填する方法であるが、本発明では凹部に完全にめっき層で充填する前にめっき工程を終了することで、
図1に示す断面形状のめっき層を実現している。
【0019】
次いで、上記反射鏡4の底面部に発光素子5の裏面(電極)がダイボンド材6により接続されると共に、発光素子5の表面電極がワイヤ7によって配線用パターンの所定の部位に接続される。実施例では、この発光素子5の裏面電極は、めっき層である反射鏡4を介して配線用の金属薄膜2に接続される。
【0020】
図2には、実施例の発光装置を利用した反射型フォトセンサの構成が示されており、
図2において、符号11は反射型フォトセンサ、12は受光素子(フォトダイオード)、13aは外周壁(遮光壁)、13bは仕切り壁(遮光壁)であり、この仕切り壁13bによって発光部と受光部が仕切られており、例えば発光部には2つの発光装置10、受光部には1つの受光素子12が搭載される。これら発光部と受光部は、透明樹脂14によって覆われている。なお、15は上記反射鏡4のめっき工程で同時に形成されたビアホールである。
【0021】
このような反射型フォトセンサは、スマートウォッチ等に搭載され、例えば発光装置10から集束させた光を手首の所定位置に投光し、血管内からの反射光を受光素子12で受光することにより、脈動や酸素飽和度等の測定が可能となる。このときの発光装置10からの出力光は集光度の高い光となり、集光されない場合と比較すると、拡散光が少なくなるため、検出対象のAC成分をDCノイズ成分から際立たせることができ、検出感度が向上するという利点がある。
また、本発明の発光装置を液晶表示装置、照明装置等の発光装置として用いる場合でも、集光度の高い光を用いることができるという利点がある。
【0022】
実施例では、めっき層からなる反射鏡4の反射面(曲面)を
図1に示されるような45度程度の傾斜を持つようにしたが、この反射面の傾斜及び曲面は、そのめっき処理の条件を選択することにより適宜変えることができ、所望の集光度の反射鏡4とすることが可能である。
また、実施例では、無電解めっきにて反射鏡4を形成したが、電気めっき等のその他のめっきを採用してもよく、更に例えば3層めっき中の1層又は2層(特に凹部内壁側の厚みを厚くする層)を無電解めっき、その他の層を無電解めっき以外のめっきで形成することも可能である。
【0023】
上記実施例の発光装置10では、配線用の金属薄膜2を設けた絶縁体基板1に貫通孔を開けることで、凹部3を形成したが、金属薄膜2を設けない絶縁体基板1自体に凹部を形成し、この凹部に形成した反射鏡4を基板1の表面側の配線用パターンの所定部位に接続することにより、発光素子5の裏面電極を結線するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0024】
10,20…発光装置、 1,21…絶縁体基板、
2,22…金属薄膜、 3…凹部、
4…反射鏡(めっき層)、 5,25…発光素子、
6,26…ダイボンド材、 7,27…ワイヤ、
11…反射型フォトセンサ、12…受光素子、
23…ザグリ部、 24…めっき被膜。