特開2019-180636(P2019-180636A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2019180636-縫合針及びそれに用いる縫合糸 図000003
  • 特開2019180636-縫合針及びそれに用いる縫合糸 図000004
  • 特開2019180636-縫合針及びそれに用いる縫合糸 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-180636(P2019-180636A)
(43)【公開日】2019年10月24日
(54)【発明の名称】縫合針及びそれに用いる縫合糸
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/06 20060101AFI20190927BHJP
【FI】
   A61B17/06 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-73223(P2018-73223)
(22)【出願日】2018年4月5日
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】横田 和典
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160BB12
4C160BB30
(57)【要約】
【課題】縫合糸の装着が容易であり、生体縫合の際に組織損傷を引き起こすことや針自体の破損を防止できて且つ低コストである縫合針を提供する。
【解決手段】生体縫合用の縫合針は、針体10の先端部と基端部との間に位置する針体腹部11に形成された、縫合糸を通すための切欠溝12を備えている。切欠溝12は、針体10の軸方向と垂直な方向に開口し、その開口部13から針体10の中心軸位置に向かって針体10の先端部側に傾斜し、針体の中心軸位置から針体の先端部側に延びるように形成されている。切欠溝12の傾斜部分よりも先端部側において、切欠溝12の壁面に、対向する壁面側に向かって且つ該対向する壁面に接触しないように突出する突部15が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
針体の先端部と基端部との間に位置する針体腹部に形成された、縫合糸を通すための切欠溝を備え、
前記切欠溝は、前記針体の軸方向と垂直な方向に開口し、該開口部から前記針体の中心軸位置に向かって前記針体の先端部側に傾斜し、前記針体の中心軸位置から前記針体の先端部側に延びるように形成されており、
前記切欠溝の傾斜部分よりも先端部側において、前記切欠溝の壁面に、対向する壁面側に向かって且つ該対向する壁面に接触しないように突出する突部が設けられていることを特徴とする生体縫合用の縫合針。
【請求項2】
前記突部は、前記切欠溝の互いに対向する両壁面に設けられており、それらは互いに対向して且つ互いに接触せずに突出するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の縫合針。
【請求項3】
前記針体の基端部は、丸みを帯びていることを特徴とする請求項1又は2に記載の縫合針。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の縫合針に装着される縫合糸であって、
端部が拡径されていることを特徴とする縫合糸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫合針及びそれに用いる縫合糸に関し、特に、生体縫合用の縫合針及びそれに用いる縫合糸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、外科的手術等における生体縫合には、専用の縫合針が用いられている。従来の縫合針は、針本体の基端部(尾部、スウェッジ部)に弾機と呼ばれる構造が設けられており、当該弾機に縫合糸を通して使用される。具体的に、弾機は、縫合針の基端部から先端方向に向かって形成された切欠溝により構成され、切欠溝の側壁の中央部辺りに、バネ効果を有する孔柱が形成され、孔柱間に形成されたスリットから縫合糸を弾機孔に入れることで縫合針に縫合糸が装着される(例えば特許文献1等を参照)。
【0003】
しかしながら、このような従来の縫合針を用いた場合、縫合針に縫合糸を装着するのに一手間かかることとなり、また、生体縫合中に弾機部分が生体の組織と接触することにより、組織損傷を引き起こすおそれがある。さらに、生体縫合中に縫合糸が縫合針から脱落するおそれもあり、使用中に注意を要する。
【0004】
近年では、これらの問題を解決するために、縫合針のスウェッジ部に縫合糸が一体的に接続した一体型の縫合針が用いられている。このような一体型の縫合針は、当然に上記装着の手間が生じず、縫合糸が縫合針から脱落することもない。さらに、縫合針のスウェッジ部に弾機が存在しないため、上記のような組織損傷も防止できる。
【0005】
このような一体型の縫合針は上記利点があるものの、縫合針のスウェッジ部に縫合針を一体的に接続する加工が必要で製造コストが高くなり、販売価格も高くなる。また、使用する病院には、通常、滅菌されて納品され、使用期限が定められているため、期限内に使用する必要がある。なお、別体型の縫合針の場合は、通常、使用する各施設で滅菌が行われており、使用期限はない。また、医療現場では、高度な医療を提供すべく最も適した針糸を選択したいというニーズも存在し、多種の針糸を常時使用できる状態にしたいという事情が存在する。
【0006】
そこで、縫合糸と別体の縫合針でありながら、上記問題を解決できる縫合針が望まれる。上記問題のうち、縫合糸の装着を容易にできる縫合針が特許文献2に開示されている。特許文献2の縫合針は、針のスウェッジ部よりも先端寄りの針体腹部に、開口切欠溝により構成された糸の装着部分を設けている。これにより、例えば縫合糸を縫合針の腹部に沿わせることで、容易に縫合糸を縫合針に装着できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2706677号公報
【特許文献2】特開2005−118351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2の縫合針は、生体縫合用に特化した縫合針を想定していない。具体的に、外科的手術等における生体縫合の際には、縫合針は、持針器と呼ばれるハサミ形状の器具によって、スウェッジ部よりも先端寄り部分が挟まれて術者に使用される。従って、特許文献2の縫合針の場合、スウェッジ部よりも先端寄りの針体腹部に糸の装着部が設けられているため、この部分が持針器に挟まれて用いられることとなる。当該装着部は、上記の通り開口切欠溝で構成されているため、この部分の強度は低いので、持針器で挟んで用いられることにより、縫合針が破損するおそれがある。
【0009】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、縫合糸の装着が容易であり、生体縫合の際に組織損傷を引き起こすことや針自体の破損を防止できて且つ低コストである縫合針を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、縫合針において、針のスウェッジ部よりも先端寄りの針体腹部に、開口切欠溝により構成された縫合糸の装着部分を設けるとともに、開口切欠溝の内側面に互いに対向する方向に突出する突部を設けた。
【0011】
具体的に、本発明に係る縫合針は、生体縫合用であって、針体の先端部と基端部との間に位置する針体腹部に形成された、縫合糸を通すための切欠溝を備え、前記切欠溝は、前記針体の軸方向と垂直な方向に開口し、該開口部から前記針体の中心軸位置に向かって前記針体の先端部側に傾斜し、前記針体の中心軸位置から前記針体の先端部側に延びるように形成されており、前記切欠溝の傾斜部分よりも先端部側において、前記切欠溝の壁面に、対向する壁面側に向かって且つ該対向する壁面に接触しないように突出する突部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る縫合針によると、従来の弾機の代わりに、縫合糸を通すための切欠溝が針体腹部に形成されており、切欠溝がその開口部から先端部側に傾斜しているため、縫合糸を針体の基端部(スウェッジ部)側から先端部側に沿って滑らせるだけで縫合糸が切欠溝内に案内されるので、容易に縫合針に縫合糸を装着できる。また、基端部に弾機がないため、生体縫合時における基端部における弾機と組織との接触による生体組織の損傷を防止できる。さらに、前記切欠溝の傾斜部分よりも先端部側において、前記切欠溝の壁面に突部が設けられているため、突部により縫合糸が開口部側に移動することを防止できて縫合糸が脱落することを防止できる。さらに、突部が設けられた位置は、切欠溝が設けられた部分のうちで他の部分よりも肉厚で針体の強度を高くすることができるため、持針器により挟まれることで破損することを抑制できる。また、本発明に係る縫合針は、縫合糸と別体であるため、一体型のものよりもコストを低減できる。
【0013】
本発明に係る縫合針において、突部は、前記切欠溝の互いに対向する両壁面に設けられており、それらは互いに対向して且つ互いに接触せずに突出するように形成されていることが好ましい。
【0014】
このようにすると、切欠溝の互いに対向する両壁面に突部が設けられているため、該突部よりも奥に通された縫合糸が切欠溝の入口側(開口部側)に抜けることを防止でき、すなわち縫合糸の脱落防止効果を向上できる。また、互いに対向する突部が設けられた位置における針体の強度を向上することができる。
【0015】
本発明に係る縫合針において、針体の基端部は丸みを帯びていることが好ましい。
【0016】
このようにすると、生体縫合時において、針体の基端部が生体組織を通る際に生じる生体組織の損傷を抑制することができる。
【0017】
本発明に係る縫合糸は、上記本発明に係る縫合針に装着される縫合糸であって、端部が拡径されていることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る縫合糸は、端部が拡径されているため縫合針からの脱落を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る縫合針によると、縫合糸の装着を容易にでき、生体縫合の際に組織損傷を引き起こすことや針自体の破損を防止できて且つ低コスト化が可能となる。また、本発明に係る縫合糸によると、縫合針からの脱落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る縫合針の基端部を示す図である。
図2】本発明の一実施形態の一変形例に係る縫合針の基端部を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る縫合糸の基端部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用方法或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
まず、本発明の一実施形態に係る生体縫合用の縫合針について図1を参照しながら説明する。図1は本実施形態の縫合針の基端部を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る縫合針において、針体10の先端部と基端部との間に位置する針体腹部11に縫合糸を通すための切欠溝12が形成されている。切欠溝12は、針体10の軸方向(中心軸方向)と垂直な方向に開口し、その開口部13から針体10の中心軸位置に向かって針体10の先端部側に傾斜している。すなわち、切欠溝12の壁面は開口部13から中心軸位置までの間に傾斜面14を有する。さらに、切欠溝12は、当該中心軸位置から針体10の先端部方向に延びている。この中心軸位置から針体10の先端部方向に延びる領域において、一方の壁面から他方の壁面側に向かって突出した突部15が設けられている。突部15は、当該他方の壁面とは接触しておらず、それらの間には間隙が設けられている。
【0023】
本実施形態に係る縫合針では、上述の通り、針体腹部11に切欠溝12が形成され、その開口部13から切欠溝12の奥に向かって傾斜した傾斜面14が形成されているため、縫合糸を針体10の基端側から先端部側に向かって針体腹部11に沿わせることによって、縫合糸が開口部13から傾斜面14によって切欠溝12の奥に向かって案内される。その後、さらに縫合糸を針体10の先端部側に滑らせることにより、突部15と壁面との間の間隙を通過して、切欠溝12の最奥部にまで到達させることができる。このように、本実施形態に係る縫合針を用いると、容易に縫合糸を装着することができる。また、突部15によって、縫合糸が開口部13側に抜けることを防止できる。さらに、切欠溝12が設けられた領域において、突部15が配置された部分は針体10の強度を他の部分よりも向上できるため、この部分を持針器に挟んで使用した場合に、針体10の破損を防止することができる。
【0024】
また、本実施形態に係る縫合針の基端部は丸みを帯びている。このため、この縫合針を用いて生体縫合を行う場合、従来の弾機が基端部にある縫合針と比較して、縫合針の基端部が生体組織を通過する際に生じる生体組織の損傷を軽減又は防止できる。
【0025】
次に、本実施形態に係る縫合針の一変形例について、図2を参照しながら説明する。本変形例に係る縫合針は、図1に示す上記縫合針と同様に、針体20の先端部と基端部との間に位置する針体腹部21に縫合糸を通すための切欠溝22が形成されており、切欠溝22の壁面は開口部23から中心軸位置までの間に傾斜面24を有する。但し、本変形例に係る縫合針は、図1に示す上記縫合針とは異なり、切欠溝22が中心軸位置から針体10の先端部方向に延びる領域において、両方の壁面から互いに対向するように突出した突部25がそれぞれ設けられている。なお、突部25は互いに接触しない程度に、それらの間に間隙が設けられるように突出している。
【0026】
このような構成により、図1に示す縫合針と比較して、切欠溝22の両方の壁面から互いに対向するように突出した突部25がそれぞれ設けられているため、縫合糸の脱落防止効果、及び突部位置における針体の強度をより向上することができる。
【0027】
次に、上記本発明の一実施形態に係る縫合糸について図3を参照しながら説明する。本実施形態に係る縫合糸は、その糸体30端部に、他の部分よりも径が拡大された拡径部31が設けられている。この拡径部31は、例えば縫合糸の端部に加熱処理を施して溶融し、その部分を拡径するように変形させた後に冷却することで形成できるが、この方法に限られない。
【0028】
本実施形態に係る縫合糸によると、その端部に拡径部31が形成されているため、縫合糸が縫合針から脱落することを防止できる。上記本発明の一実施形態又はその一変形例に係る縫合針と組み合わせて用いることでその効果をより向上できる。
【0029】
以上の通り、本発明に係る縫合針及び縫合糸によると、上述のような利点を有する上に、針と糸との一体型のものと比較して、それらの一体化加工を必要としないため製造コストを低減できて販売価格を低減できる。さらに、針と糸とが別体であるため、種々の組合せが可能となり利便性も向上できる。
【符号の説明】
【0030】
10、20 針体
11、21 針体腹部
12、22 切欠溝
13、23 開口部
14、24 傾斜面
15、25 突部
30 糸体
31 拡径部

図1
図2
図3