特開2019-182934(P2019-182934A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2019-182934ポリマー複合材料及びポリマー複合材料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-182934(P2019-182934A)
(43)【公開日】2019年10月24日
(54)【発明の名称】ポリマー複合材料及びポリマー複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 45/00 20060101AFI20190927BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20190927BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20190927BHJP
【FI】
   C08L45/00
   C08L65/00
   C08K9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-71966(P2018-71966)
(22)【出願日】2018年4月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】呉 承俊
(72)【発明者】
【氏名】大澤 正人
(72)【発明者】
【氏名】橋本 夏樹
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BK001
4J002CE001
4J002DE046
4J002DE076
4J002DE147
4J002FA016
4J002FA017
4J002FB236
4J002FB237
(57)【要約】
【課題】可視光透過率が高く且つ水蒸気透過係数が低い水蒸気封止膜を形成可能なポリマー複合材料及びポリマー複合材料の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のポリマー複合材料は、樹脂と扁平状の無機フィラーとを含有するポリマー複合材料において、前記樹脂は、シクロオレフィンポリマーであり、前記無機フィラーは、炭素数10以上の脂肪酸で表面修飾されたMg−Al系層状複水酸化物である。前記脂肪酸としてオレイン酸が用いられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と扁平状の無機フィラーとを含有するポリマー複合材料において、
前記樹脂は、シクロオレフィンポリマーであり、
前記無機フィラーは、炭素数10以上の脂肪酸で表面修飾されたMg−Al系層状複水酸化物であることを特徴とするポリマー複合材料。
【請求項2】
前記Mg−Al系層状複水酸化物は、前記シクロオレフィンポリマー10重量部に対して10〜15重量部含有されることを特徴とする請求項1記載のポリマー複合材料。
【請求項3】
前記脂肪酸がオレイン酸であることを特徴とする請求項1又は2記載のポリマー複合材料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のポリマー複合材料を製造するポリマー複合材料の製造方法であって、
硝酸マグネシウムと硝酸アルミニウムと水酸化ナトリウムとを含有する第1水溶液を準備する工程と、
炭素数10以上の脂肪酸を含有する第2水溶液のpHを所定範囲に維持しながら当該第2水溶液を滴下することで、前記脂肪酸で表面修飾されたMg−Al系層状複水酸化物を得る工程と、
前記表面修飾されたMg−Al系層状複水酸化物を溶媒に分散させた分散液を得る工程と、
前記分散液とシクロオレフィンポリマーとを混合する工程とを含むことを特徴とするポリマー複合材料の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載のポリマー複合材料の製造方法であって、前記脂肪酸がオレイン酸であるものにおいて、
前記pHを8〜10.5の範囲に維持することを特徴とするポリマー複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂と扁平状の無機フィラーとを含有するポリマー複合材料及びポリマー複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のポリマー複合材料は、例えば、特許文献1で知られている。このものでは、樹脂として(メタ)アクリル樹脂やエポキシ樹脂等が用いられ、扁平状の無機フィラーとしてシリカ、アルミナや酸化亜鉛等の金属酸化物が用いられている。このポリマー複合材料を例えばアプリケータを用いて基材に塗布し、乾燥することで得られる透明シートは水蒸気バリア性を有することから、有機EL素子の有機発光層を封止する水蒸気封止膜として用いることが考えられる。
【0003】
ところで、有機EL素子の可視光透過率を高めるためには、水蒸気封止膜の厚みは出来るだけ薄いことが好ましい。然しながら、水蒸気封止膜としての透明シートは、水蒸気透過率(0.03g/m・day)を厚みで除することで求められる水蒸気透過係数が0.8gmm/m・dayと高い。このため、透明シートの厚みを薄くすると、十分な水蒸気バリア性が得られなくなるという問題がある。上記従来例では、水蒸気バリア性を高めるために、透明シートにガスバリア層を積層することが提案されているが、これでは、製造工程数の増加や可視光透過率の低下を招来する。そこで、可視光透過率が高く且つ水蒸気透過係数が低い水蒸気封止膜を形成可能なポリマー複合材料の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−57867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、可視光透過率が高く且つ水蒸気透過係数が低い水蒸気封止膜を形成可能なポリマー複合材料及びポリマー複合材料の製造方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のポリマー複合材料は、樹脂と扁平状の無機フィラーとを含有するポリマー複合材料において、前記樹脂は、シクロオレフィンポリマーであり、前記無機フィラーは、炭素数10以上の脂肪酸で表面修飾されたMg−Al系層状複水酸化物であることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、当該ポリマー複合材料をアプリケータを用いて塗布し、乾燥することで得られる水蒸気封止膜を例に説明すると、水蒸気封止膜に水分子が侵入すると、水分子は層状複水酸化物の扁平面に沿って拡散移動する(所謂メイズ効果)と共に層状複水酸化物の層間に取り込まれる。ここで、層状複水酸化物の表面は脂肪酸で修飾されているため、樹脂に対して層状複水酸化物は凝集せず分散しているため、層状複水酸化物の層間に効率良く水分子が取り込まれる。これにより、水蒸気封止膜の内部と外部との間で水分子の見かけ濃度の差が小さくなり、水蒸気封止膜に水分子が侵入するケミカルポテンシャルが下がる。その結果として、上記従来例のものと比較して水蒸気透過係数を低くすることができる。ところで、層状複水酸化物を構成する金属イオンの種類によっては、層状複水酸化物を表面修飾する際に反応副生成物として金属酸化物が生成し易く、この金属酸化物に起因して可視光透過率が低下する場合がある。本発明では、層状複水酸化物をMg−Al系のものとすることで、金属酸化物の生成を抑制でき、可視光透過率の低下を抑制することができる。このため、樹脂としてシクロオレフィンポリマーを用いることと相俟って、高い可視光透過率を実現することができる。後述する実験では、80%以上の可視光透過率と、上記従来例よりも1桁低い水蒸気透過係数(0.013g・mm/m・day)とを達成できることが確認された。尚、脂肪酸の炭素数が10より小さいと、層状複水酸化物の分散性が低下する場合があり、脂肪酸の炭素数の上限は、表面修飾反応用の水溶液(例えば水酸化ナトリウム水溶液)に対する溶解性を考慮して設定することができる。
【0008】
本発明においては、前記Mg−Al系層状複水酸化物は、前記シクロオレフィンポリマー10重量部に対して10〜15重量部含有されることが好ましい。この範囲を外れると、水蒸気バリア性が低下したり、可視光透過率が低下するという不具合が生じる。
【0009】
また、本発明において、前記脂肪酸としてオレイン酸を用いることで、オレイン酸でMg−Al系層状複水酸化物を確実に表面修飾できることが確認された。これにより、シクロオレフィンポリマーに対してMg−Al系層状複水酸化物を安定して分散させることができる。
【0010】
上記ポリマー複合材料を製造する本発明のポリマー複合材料の製造方法は、硝酸マグネシウムと硝酸アルミニウムと水酸化ナトリウムとを含有する第1水溶液を準備する工程と、炭素数10以上の脂肪酸を含有する第2水溶液のpHを所定範囲に維持しながら当該第2水溶液を滴下することで、前記脂肪酸で表面修飾されたMg−Al系層状複水酸化物を得る工程と、前記表面修飾されたMg−Al系層状複水酸化物を溶媒に分散させた分散液を得る工程と、前記分散液とシクロオレフィンポリマーとを混合する工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、Mg−Al系層状複水酸化物を用いることで、Zn−Al系層状複水酸化物のような他の層状複水酸化物を用いる場合と比較して、層状複水酸化物を表面修飾する際に反応副生成物としての金属酸化物が生成し難くなり、金属酸化物を取り除く工程を行う必要がなく、上記ポリマー複合材料を生産性良く製造することができる。
【0012】
本発明においては、前記脂肪酸としてオレイン酸を用いることで、オレイン酸でMg−Al系層状複水酸化物を確実に表面修飾することができ、シクロオレフィンポリマーに対して分散性良く層状複水酸化物を分散させることができることが確認された。この場合、前記脂肪酸で表面修飾する際にpHを8〜10.5の範囲に調整すれば、反応副生成物としての金属酸化物の生成を抑制することができることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態のポリマー複合材料の製造方法を説明する工程図。
図2】実施例1で作製したポリマー複合材料のX線回折スペクトル。
図3】実施例1で作製した水蒸気封止シートの構造を示す模式図。
図4】比較例1で作製したポリマー複合材料のX線回折スペクトル。
図5】実施例1及び比較例1で作製した水蒸気封止シートの透過率を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態のポリマー複合材料について説明する。ポリマー複合材料は、樹脂と、扁平状の無機フィラーとを含有する。樹脂としては、比較的高い透明性を有するシクロオレフィンポリマーが用いられる。無機フィラーとしては、炭素数10以上の脂肪酸で表面修飾されたMg−Al系層状複水酸化物が用いられる。Mg−Al系層状複水酸化物は、正の電荷をもつ正八面体が並んだ二次元基本層[Mg2+1−xAl3+(OH)]と、負の電荷をもつ中間層[Cl・mHO]x−とからなる。xは、0.2〜0.33の範囲である。Mg−Al系層状複水酸化物(以下「層状複水酸化物」ともいう)を表面修飾することで、層状複水酸化物を低極性のシクロオレフィンポリマーに安定して分散させることができる。脂肪酸の炭素数が10より小さいと、アルキル鎖が短いため、シクロオレフィンポリマーに対する層状複水酸化物の分散性が低下する場合があり、脂肪酸の炭素数の上限は、表面修飾反応用の水溶液(例えば水酸化ナトリウム水溶液)に対する溶解性を考慮して設定することができる。炭素数10以上の脂肪酸としては、炭素数10のデカン酸、ネオデカン酸(2,2−ジメチルオクタン酸);炭素数11のウンデカン酸、炭素数12のドデカン酸、炭素数14のミリスチン酸、炭素数16のパルミチン酸、炭素数18のステアリン酸、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸を用いることができ、このうち、オレイン酸を特に好ましく用いることができる。
【0015】
層状複水酸化物は、シクロオレフィンポリマー10重量部に対して10〜15重量部含有されることが好ましい。層状複水酸化物が10重量部未満であると、水分子が移動する扁平面が不足すると共に層間に取り込める水分子の量が減少するため、水蒸気バリア性が低下するという不具合が生じる一方で、層状複水酸化物が15重量部を超えると、可視光透過率が低下するという不具合が生じる。
【0016】
上記ポリマー複合材料をアプリケータを用いて透明フィルム等の透明基材の表面に塗布し、乾燥することで、水蒸気封止膜が得られる。この水蒸気封止膜に水分子が侵入すると、水分子は層状複水酸化物Hの扁平面に沿って拡散移動すると共に層状複水酸化物の層間に取り込まれる。層状複水酸化物は脂肪酸で表面修飾されているため樹脂Rたるシクロオレフィンポリマーに対して凝集せず分散しているため、層状複水酸化物の層間に効率良く水分子を取り込むことができる。これにより、水蒸気封止膜の内部と外部との間で水分子の見かけ濃度の差が小さくなり、水蒸気封止膜に水分子が侵入するケミカルポテンシャルが下がる。その結果として、上記従来例のものと比較して水蒸気透過係数を低くすることができる。
【0017】
以下、図1を参照して、上記ポリマー複合材料の製造方法について、炭素数10以上の脂肪酸としてオレイン酸を用いて層状複水酸化物を表面修飾する場合を例に説明する。
【0018】
先ず、硝酸マグネシウム六水和物と硝酸アルミニウム九水和物とを蒸留水に溶かした水溶液(以下「第1水溶液」という)と、2Mの水酸化ナトリウム水溶液(以下「第2水溶液」という)とを別々に予め用意する。フラスコやビーカー等の反応容器に蒸留水とオレイン酸と水酸化ナトリウム物とを入れて60〜80℃に保持しながら、pHを10以下に維持しつつ上記予め用意した第1水溶液及び第2水溶液を夫々反応容器に滴下し、撹拌しながら2〜24時間反応させる。
【0019】
反応終了後、十分な量の蒸留水で洗浄し、25〜90℃で乾燥することで、オレイン酸で表面修飾されたMg−Al系層状複水酸化物が得られる。得られたMg−Al系層状複水酸化物を溶媒に分散させて分散液を得る。溶媒としては、この分散液とシクロオレフィンポリマー樹脂とをホモジナイザーを用いて十分に(例えば10分以上)撹拌、混合することで、ポリマー複合材料が得られる。
【0020】
このようにして得られたポリマー複合材料を基材の表面にアプリケータを用いて塗布し、乾燥させることで透明シートが形成される。この透明シートに水分子が侵入すると、水分子は層状複水酸化物の扁平面に沿って拡散移動する(所謂メイズ効果)と共に層状複水酸化物の層間に取り込まれる。脂肪酸で表面修飾された層状複水酸化物は凝集せず分散しているため、層状複水酸化物の層間に効率良く水分子が取り込まれる。これにより、透明シートの内部と外部との間で水分子の見かけ濃度の差が小さくなり、透明シートに水分子が侵入するケミカルポテンシャルが下がる。その結果として、上記従来例のものと比較して単位厚さ当たりの水蒸気透過係数を低くすることができる。
【0021】
ここで、層状複水酸化物を構成する金属イオンの種類によっては、層状複水酸化物を表面修飾する際に反応副生成物としての金属酸化物が層状複水酸化物の表面に生成し易く、この金属酸化物に起因して可視光透過率が低下する場合がある。例えば、Zn2+とAl3+で構成される場合、層状複水酸化物が合成されるpHは7〜9であるが、この合成と同時に行われる層状複水酸化物が表面修飾されるpHは9〜10である。このため、Zn−Al系層状複水酸化物を合成しながら表面修飾を行うためには、pHを8に維持する必要があり、合成中の一時的なpHの変化に対して敏感であり、反応副生成物として金属酸化物が生成してしまい、その結果として、透過率が低下する。生成した金属酸化物を除去する工程を追加すると、製造工程数が増加してしまう。それに対して、本実施形態では、層状複水酸化物として、合成pHが8〜10.5であるMg−Al系層状複水酸化物を用いることで、合成中に一時的にpHが変化しても、金属酸化物が生成することがなく、有利である。
【0022】
以下、本発明の実施形態をより具体化した実施例及び実施例に対する比較例について説明する。
【0023】
(実施例1)
先ず、Mg(NO・6HO(硝酸マグネシウム六水和物)5.128gとAl(NO・9HO(硝酸アルミニウム九水和物)3.751gとを蒸留水40mlに溶かした水溶液(以下「第1水溶液」という)と、2Mの水酸化ナトリウム水溶液(以下「第2水溶液」という)とを別々に予め用意する。次いで、反応容器としてのフラスコに蒸留水100mlとオレイン酸2.825gと水酸化ナトリウム0.4gとを入れて60℃に保持しながら、第1水溶液と第2水溶液とを滴下し、撹拌しながら、pH10に維持して20時間合成した。合成後、十分な量の蒸留水で洗浄し、80℃で24時間乾燥することで層状複水酸化物を得た。このようにして得た層状複水酸化物をX線回折分析(XRD)により評価した結果を図2に示す。これによれば、Mg−Al系層状複水酸化物に対応するピークが観察され、Mg−Al系層状複水酸化物が得られたことが確認された。また、それ以外のピークが観察されていないことから、Mg−Al系層状複水酸化物の扁平面が水平に配置されていることが判った。次いで、上記得られたMg−Al系層状複水酸化物を溶媒に分散させて分散液を得た。シクロオレフィンポリマーと層状複水酸化物との重量比が1:1となるように、この分散液とシクロオレフィンポリマー樹脂とをホモジナイザーを用いて十分に(例えば10分以上)撹拌、混合することで、ポリマー複合材料を得た。次に、片面に0.03mm厚のPP(ポリプロピレン)膜が設けられた100mm×100mm×0.1mmの第1COP(シクロオレフィンポリマー)シートを用意し、PP膜の表面に上記ポリマー複合材料をアプリケータを用いて塗布した。その後、片面に0.03mm厚のPP膜が設けられた100mm×100mm×0.05mmの第2COPシートを用意し、この第2COPシートのPP膜が上記塗布したポリマー複合材料に重なるように第2COPシートを被せてサンドイッチ構造にし、200℃、10MPaで30分間熱プレス処理を行うことで、図3に示すような全体の厚みが0.22mmである水蒸気封止シートを得た。このうち水蒸気封止膜の厚みは10μmであった。
【0024】
(比較例1)
本比較例1では、硝酸マグネシウム六水和物に代えて硝酸亜鉛六水和物5.95gを用いて、Zn−Al系層状複水酸化物を合成する点を除き、上記実施例1と同様の方法でポリマー複合材料を得た。合成した層状複水酸化物をX線回折分析により評価した結果を図4に示す。これによれば、Zn−Al系層状複水酸化物に対応するピークのほかに、反応副生成物である酸化亜鉛(ZnO)のピークが観察された。また、上記実施例1と同様の方法で水蒸気封止シートを得た。
【0025】
(比較例2)
本比較例2では、フラスコにオレイン酸と水酸化ナトリウムとを入れない点、即ち、Mg−Al系層状複水酸化物をオレイン酸で表面修飾しない点を除き、上記実施例1と同様の方法でポリマー複合材料を得て、上記実施例1と同様の方法で水蒸気封止シートを得た。
【0026】
次に、上記実施例1及び比較例1で得た水蒸気封止シートに対して紫外可視近赤外分光法を用いて可視光透明性評価を行った結果を図5に示す。550nmにおける透過率は、実施例1のものでは85%であるのに対して、比較例1のものでは69%であることが確認された。これは、比較例1で生じた反応副生成物たる金属酸化物に起因するものであると考えられる。尚、比較例2のものでは、樹脂に対して層状複水酸化物が十分に分散せず、乾燥しても不透明であることが確認された。
【0027】
また、上記実施例1、比較例1及び比較例2で得た水蒸気封止シートに対して、温度40℃、湿度90%の環境で、水蒸気透過試験機(MOCON社製「PERMATRAN W3/33」)を用いて水蒸気透過度(g/mday)を測定し、測定した水蒸気透過度から水蒸気封止膜の水蒸気透過係数(g mm/mday)を求めた。その結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1の水蒸気封止膜の水蒸気透過係数は0.013g mm/mdayであり、上記従来例の水蒸気透過係数(0.8g mm/mday)と比べて水蒸気バリア性が約80倍増加することが判った。また、比較例1が実施例1に比べて水蒸気透過係数が高いのは、上記反応副生成物たる金属酸化物に起因するためであると考えられる。なお、表2を参照して、実施例1で得た水蒸気封止シート(全体)の水蒸気透過度の測定値は0.41g/mdayであり、また、PP膜付きの第2のCOPシートの上記環境での水蒸気透過度の測定値は1.69g/mdayであった。これらから求めた水蒸気封止膜の水蒸気透過係数は上記の通り0.013g mm/mdayであり、第1及び第2のCOPシートの水蒸気透過係数は、0.1g mm/mdayであり、PP膜の水蒸気透過係数は0.327g mm/mdayであった。
【0028】
(表1)
【0029】
(表2)
【0030】
なお、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。上記実施例で得た水蒸気封止膜及び水蒸気封止シートは一例であり、他の構造や厚みを持つ水蒸気封止膜及び水蒸気封止シートに対して本発明のポリマー複合材料を適用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5