特開2019-188317(P2019-188317A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友金属鉱山株式会社の特許一覧
<>
  • 特開2019188317-反応装置及び薬剤添加方法 図000003
  • 特開2019188317-反応装置及び薬剤添加方法 図000004
  • 特開2019188317-反応装置及び薬剤添加方法 図000005
  • 特開2019188317-反応装置及び薬剤添加方法 図000006
  • 特開2019188317-反応装置及び薬剤添加方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-188317(P2019-188317A)
(43)【公開日】2019年10月31日
(54)【発明の名称】反応装置及び薬剤添加方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/18 20060101AFI20191004BHJP
   B01F 7/18 20060101ALI20191004BHJP
   B01F 7/16 20060101ALI20191004BHJP
   B01F 3/04 20060101ALI20191004BHJP
【FI】
   B01J19/18
   B01F7/18 B
   B01F7/16 L
   B01F3/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-83393(P2018-83393)
(22)【出願日】2018年4月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】本間 剛秀
(72)【発明者】
【氏名】内藤 大志
【テーマコード(参考)】
4G035
4G075
4G078
【Fターム(参考)】
4G035AB10
4G035AE13
4G075AA13
4G075AA35
4G075BA10
4G075BD27
4G075DA02
4G075DA18
4G075EB01
4G075EB24
4G075EC09
4G075ED02
4G075ED08
4G078AA02
4G078AB11
4G078BA05
4G078CA08
4G078DA01
(57)【要約】
【課題】反応液内に添加された薬剤を効率的に分散させることができる反応装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る反応装置は、反応槽と、撹拌機と、バッフル板と、気体導入口と、薬剤添加口とを備え、反応槽は反応液を収容可能であり円筒状であり、撹拌機は反応槽の上部より垂下した撹拌軸と撹拌軸に対して垂直に設けられた撹拌羽根とを有し、バッフル板は反応槽内部に配置され、反応槽を平面視した場合にその幅方向を反応槽の内壁から反応槽の中心に向け配置され、気体導入口は撹拌羽根より下方に配置され、薬剤添加口は反応槽を平面視した場合に、反応槽の内壁と、バッフル板の先端を通る反応槽の同心円のバッフル板の先端における接線と、バッフル板と、バッフル板における撹拌羽根の回転方向に相対する面から撹拌羽根の回転方向と逆方向にバッフル板の幅長の2倍の距離を離間して配置されるバッフル板の平行線とに囲まれてなる箇所に配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽と、撹拌機と、バッフル板と、気体導入口と、薬剤添加口とを備える反応装置であって、
前記反応槽は、反応液を収容可能であり、円筒状であり、
前記撹拌機は、前記反応槽の上部より垂下した撹拌軸と、該撹拌軸に対して垂直に設けられた撹拌羽根とを有し、
前記バッフル板は、前記反応槽内部に配置され、前記反応槽を平面視した場合に、その幅方向を、前記反応槽の内壁から前記反応槽の中心に向けて配置されており、
前記気体導入口は、前記撹拌羽根より下方に配置され、
前記薬剤添加口は、前記反応槽を平面視した場合に、前記反応槽の内壁と、前記バッフル板の先端を通る前記反応槽の同心円の前記バッフル板の先端における接線と、バッフル板と、該バッフル板における前記撹拌羽根の回転方向に相対する面から前記撹拌羽根の回転方向と逆方向に該バッフル板の幅長の2倍の距離を離間して配置される該バッフル板の平行線と、に囲まれてなる箇所に配置される
反応装置。
【請求項2】
前記バッフル板は、高さが前記反応槽に収容される反応液の液高さより高い
請求項1に記載の反応装置。
【請求項3】
前記気体導入口は、リングスパージャーである
請求項1又は2に記載の反応装置。
【請求項4】
前記薬剤添加口を、前記反応槽に収容される反応液の液面より上方に配置する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項5】
前記撹拌羽根によって、前記反応槽に収容される反応液の撹拌流の、前記撹拌軸と平行な成分が前記反応槽の底部に向かうように撹拌される
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の反応装置。
【請求項6】
反応液を収容した円筒状の反応槽と、反応槽の上部より垂下した撹拌軸及び該撹拌軸に対して垂直に設けられた撹拌羽根を有する撹拌機と、前記反応槽内部に配置され、前記反応槽を平面視した場合に、その幅方向を、前記反応槽の内壁から前記反応槽の中心に向けて配置されているバッフル板と、撹拌羽根より下方に配置される気体導入口と、薬剤添加口とを備える反応装置を用いて、該薬剤添加口から薬剤を添加する薬剤添加方法であって、
前記反応槽を平面視した場合に、前記反応槽の内壁と、前記バッフルの先端を通る前記反応槽との同心円の前記バッフル板の先端における接線と、バッフル板と、該バッフル板における前記撹拌羽根の回転方向に相対する面から前記撹拌羽根の回転方向と逆方向に該バッフル板の幅長の2倍の距離を離間して配置される該バッフル板の平行線と、に囲まれてなる箇所に、前記薬剤添加口から薬剤を添加する
薬剤添加方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応装置及び薬剤添加方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学プラント等の反応装置として、撹拌しながら反応容器内の溶液やスラリー等の液相に気体を導入しながら反応させ、化学処理を行うものが多く用いられている。
【0003】
例えば特許文献1には、容器の長手方向軸のまわりに回転可能なシャフトと、そのシャフトに取り付けられ、軸方向に離間して配置された径方向に延びる第1及び第2のインペラとを備えた混合容器が開示されている。具体的に、この混合容器においては、第1のインペラは軸方向に第2のインペラに向けて流体を移動させるように動作可能な複数の湾曲したブレードを含み、第2のインペラは軸方向に第1のインペラに向けて流体を移動させるように動作可能な複数の湾曲したブレードを含み、また、容器底面にガス導入口が設けられている。特許文献1では、このような構成の混合容器を用いることにより、その混合容器の中央部において強い乱流領域を生成させて、容器内の液体の混合を容易に制御できるようにしている。
【0004】
しかしながら、このような混合容器では、中央に大きく設けられた気体導入口から大きな気泡が導入されると、混合容器内で気泡径が小さくならないうちに混合容器の上部の液面まで達してしまうという問題がある。そのため、このような混合容器を化学反応に用いたとしても、反応に寄与しない気体が多くなり、反応効率が低下してしまう。
【0005】
反応容器内で化学反応に用いられる気体は、その反応容器内の液相中でその気泡径を小さくすることが重要であり、小気泡にするほど気液界面の面積が大きくなり、また気泡が液体内を循環滞留する時間が長くなること等から、気体成分が液相に溶け込む量が多くなり、その結果として液相中の気体濃度が高まって反応効率を向上させる効果が期待できる。つまり、反応の効率化のためには、導入する気体を液相中で小気泡にして気泡量を最大化させることが重要となる。
【0006】
液相中での気泡径を小さくする技術として、スパージャー(散気管)を用いる方法や、撹拌翼下に気体を吹き込んで翼で気泡を分断させる方法等が知られている。例えば、気体の吹き込み量が多い場合には、フラッディング現象により撹拌翼が空回りして、気体が液中に溶け込む量が小さくなることが知られており、その対策として、特許文献2には、撹拌翼より大きな径のリングスパージャーを用いて、吹き出た気泡を装置内で循環する液体の流れに乗せる技術が開示されている。
【0007】
ところで、化学プラント等の反応装置においては、その内部で発生させる化学反応によっては、液相に気体を導入するだけでなく、さらに液体や固体である薬剤を液相に添加して反応させることがある。このように、液体や固体である薬剤を液相中に添加する場合には、この薬剤が液相中に分散されることが必要である。例えば液相の上部や液面上方から薬剤を添加する場合には、反応槽内の液流に乗って少なくとも反応槽の底部まで薬剤が到達することが効率的である。
【0008】
そこで、反応槽内の分散状態を高めるために、バッフル板を設置して液流の流れを調整して上下方向の撹拌を促進させることが一般的に行われているが(例えば、特許文献2参照)、このような撹拌翼と気体導入口とバッフル板を備えた反応槽において、薬剤を効率的に液相に分散させることができる薬剤添加口の位置は不明であり、試行錯誤が繰り返されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2009−536095号公報
【特許文献2】特開2014−113564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような実情を鑑みてなされたものであり、バッフル板を備えた反応槽内の液相に気体が供給された状態で、反応液に添加された薬剤を効率的に分散させることができる反応装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、撹拌機と、気体導入口と、薬剤添加口と、バッフル板とを備えた反応装置において、その薬剤添加口位置をバッフル板に対して特定の位置に配置することにより、添加された薬剤を効率的に分散させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
(1)本発明の第1の発明は、反応槽と、撹拌機と、バッフル板と、気体導入口と、薬剤添加口とを備える反応装置であって、前記反応槽は、反応液を収容可能であり、円筒状であり、前記撹拌機は、前記反応槽の上部より垂下した撹拌軸と、該撹拌軸に対して垂直に設けられた撹拌羽根とを有し、前記バッフル板は、前記反応槽内部に配置され、前記反応槽を平面視した場合に、その幅方向を、前記反応槽の内壁から前記反応槽の中心に向けて配置されており、前記気体導入口は、前記撹拌羽根より下方に配置され、前記薬剤添加口は、前記反応槽を平面視した場合に、前記反応槽の内壁と、前記バッフル板の先端を通る前記反応槽の同心円の前記バッフル板の先端における接線と、バッフル板と、該バッフル板における前記撹拌羽根の回転方向に相対する面から前記撹拌羽根の回転方向と逆方向に該バッフル板の幅長の2倍の距離を離間して配置される該バッフル板の平行線と、に囲まれてなる箇所に配置される、反応装置である。
【0013】
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記バッフル板は、高さが前記反応槽に収容される反応液の液高さより高い、反応装置である。
【0014】
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記気体導入口は、リングスパージャーである、反応装置である。
【0015】
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記薬剤添加口を、前記反応槽に収容される反応液の液面より上方に配置する、反応装置である。
【0016】
(5)本発明の第5の発明は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記撹拌羽根によって、前記反応槽に収容される反応液の撹拌流の、前記撹拌軸と平行な成分が前記反応槽の底部に向かうように撹拌される、反応装置である。
【0017】
(6)本発明の第6の発明は、反応液を収容した円筒状の反応槽と、反応槽の上部より垂下した撹拌軸及び該撹拌軸に対して垂直に設けられた撹拌羽根を有する撹拌機と、前記反応槽内部に配置され、前記反応槽を平面視した場合に、その幅方向を、前記反応槽の内壁から前記反応槽の中心に向けて配置されているバッフル板と、撹拌羽根より下方に配置される気体導入口と、薬剤添加口とを備える反応装置を用いて、該薬剤添加口から薬剤を添加する薬剤添加方法であって、前記反応槽を平面視した場合に、前記反応槽の内壁と、前記バッフルの先端を通る前記反応槽との同心円の前記バッフル板の先端における接線と、バッフル板と、該バッフル板における前記撹拌羽根の回転方向に相対する面から前記撹拌羽根の回転方向と逆方向に該バッフル板の幅長の2倍の距離を離間して配置される該バッフル板の平行線と、に囲まれてなる箇所に、前記薬剤添加口から薬剤を添加する、薬剤添加方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、バッフル板を備えた反応槽内の液相に気体が供給された状態で、液面の上方から添加された薬剤を液相内に効率的に分散させることができる反応装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a)反応装置の横断面模式図、(b)反応装置の縦断面模式図である。
図2】薬剤添加口の添加箇所を説明するための反応装置の横断面模式図である。
図3】(a)実施例1及び比較例1における薬剤添加箇所を示すための反応装置の横断面模式図、(b)実施例1及び比較例1における薬剤添加箇所を示すための反応装置の縦断面模式図である。
図4】(a)実施例1における薬剤の流線、(b)実施例1における気泡の分布である。
図5】(a)比較例1における薬剤の流線、(b)比較例1における気泡の分布である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
【0021】
本実施の形態に係る反応装置は、反応槽と、撹拌機と、バッフル板と、気体導入口と、薬剤添加口とを備えるものであり、反応槽に収容された反応液に気体と薬剤を導入して化学反応を生じさせるものである。
【0022】
図1(a)は、反応装置の横断面模式図である。また、図1(b)は、反応装置の縦断面模式図である。図1に示されるように、反応装置1は、反応槽11と、撹拌機12と、バッフル板13と、気体導入口14と、薬剤添加口15とを備える。そして、反応槽内部に反応液Lが収容される。以下、図1(a)及び(b)を用いて、反応装置1の各構成要素とその撹拌メカニズムについて説明する。
【0023】
[反応槽]
反応槽11は、水平方向に切断した横断面図において、円形の断面を有する円筒状であり、その内部に所定の高さまで反応液Lを収容して、この反応液L内で化学反応を生じさせるものである。ここで、上面については、開放されているものを用いることも、閉鎖されているものを用いることもできる。上面(閉鎖されている場合)及び底面としては、それぞれが平面となるものに限定されず、垂直方向に切断した縦断面図において上面や底面に曲率部を有するものや、上面や底面と側面との間に曲率部を有するものを用いることができる。
【0024】
反応槽11に収容される反応液Lとしては、特に限定されず、溶液状のものを用いることも、溶媒に固形分が分散されたスラリー状のものを用いることもできる。また、反応液Lが、化学反応に寄与するものを用いることも、寄与しないものを用いることもできる。さらに、この内部で生じる化学反応の種類についても特に限定されない。
【0025】
[撹拌機]
撹拌機12は、反応槽11に収容された反応液Lを撹拌するものである。この攪拌機12は、上述した反応槽11の上部より垂下した撹拌軸121と、撹拌軸の下端位置にその撹拌軸121に対して垂直に設けられた複数の撹拌羽根122と、を有するものである。具体的には、図1(a)、(b)に示すようにプロペラ形状を用いることができる。
【0026】
このような撹拌機12の撹拌軸121は、反応装置1の横断面図において、その中心が円形の反応槽の中心と一致するように配置されることが好ましい。これにより、後述する気体の気泡や薬剤を、反応液中により効率的に分散させることができる。
【0027】
撹拌機12は、所定の速度で撹拌軸121を回転させ、その撹拌軸121に取り付けられた撹拌羽根によって反応液Lを撹拌する。この撹拌機12による撹拌等によって、反応槽内の反応液Lには所定の方向への液流が発生する。なお、撹拌機により発生する撹拌流を撹拌軸に対して水平方向と垂直方向に分けた時、液流のうち、水平方向の成分は、後述する気体導入口から供給された気体の気泡を反応液L内に効率よく分散させるために、反応槽11の底面に向かって下向きの方向に撹拌流が発生するように撹拌するのが好ましい。なお、液流に対して用いる「成分」とは、特定方向の液流のことをいう。
【0028】
撹拌羽根122の枚数としては、複数(2以上)であれば特に限定されない。また、撹拌軸に対して複数の撹拌羽根122を備えたプロペラ形状を上下に複数組備える撹拌機を用いることもできる。
【0029】
[バッフル板]
バッフル板13(13a,13b,13c)は、反応槽11内に配置されており、横断面図(上方から平面視した場合)において、その幅方向を反応槽11の内壁から反応槽11の中心軸に向けて、起立して配置される。バッフル板13は、撹拌機12により発生した液流のうち、上下方向に向かう成分の比率を高め、反応槽11内の撹拌効率を高めるために用いる。
【0030】
なお、バッフル板13の「高さ」とは、反応槽11の底部に配置した場合におけるバッフル板13の面の垂直方向の長さをいい、バッフル板13の「幅」とは、反応槽11の底部に配置した場合におけるバッフル板13の面の水平方向の長さをいう。
【0031】
バッフル板13の枚数としては、特に限定されず、単数又は複数のいずれでもよいが、通常は複数を用いることが多い。これにより、反応槽11内の撹拌効率をさらに高めることができる。なお、バッフル板13を複数設置する場合には、反応槽11の横断面図における円周方向に対して均等に配置しても不均等に配置してもよいが、撹拌効率をより高める観点から、均等に配置することが好ましい。なお、図1において、バッフル板13が3枚(13a,13b,13c)配置された場合の模式図を示しているが、この模式図に限定されない。
【0032】
バッフル板13としては、特に限定されず、反応液Lとの関係において、反応液Lの液高さ(反応槽11底面から反応液Lの液面までの距離)より高いものや低いものを用いることができる。ただし、反応液Lの液高さよりも高いものを用いることが好ましい。このようなバッフル板13を反応槽11の底面に起立させて配置することで、より多くの液流について、上下方向に向かう成分の比率を高くすることができ、撹拌効率をより高めることができる。
【0033】
[気体導入口]
気体導入口14は、化学反応に寄与する気体を反応液L中に導入するものであり、撹拌機12の撹拌羽根122の下方に配置される。
【0034】
気体導入口14より導入された気体は、反応液L内で気泡となり浮力によって上昇するため、反応液L内に供給した気体を気泡として分散させるためには、気泡同士の合体を抑制して小さい径を維持するとともに、撹拌機12による撹拌流に乗せる必要がある。そのため、気体導入口14を、撹拌羽根122の下方に配置して、そこから導入され浮力によって浮上した気泡を、撹拌流に乗せる。
【0035】
気体導入口14としては、特に限定されず、撹拌機の下部に配置された単数又は複数の配管等の出口を用いることができる。反応液Lに供給された気体を気泡として効率良く分散させるために、リングスパージャーを用いることが好ましい。
【0036】
気体としては、特に限定されず、例えば空気、窒素、酸素等の気体を、反応液L中で所望する化学反応に応じて用いることができる。なお、気体としては、反応液L中での化学反応に直接的に寄与する気体の他に、化学反応に直接的に寄与しない気体を用いることもできる。化学反応に直接的に寄与しない気体としては、例えば、薬剤と反応液Lとが反応する化学反応において、反応液Lの溶存酸素がこの化学反応に影響するため、気体導入口14より窒素を供給して溶存酸素量を制御する場合における窒素がこれに相当する。
【0037】
[薬剤添加口]
薬剤添加口15は、液体や固体やそれらの混合物等の気体以外の状態である薬剤を、反応槽11の反応液L中に添加するものである。
【0038】
図2は、薬剤添加口の添加箇所を説明するための反応装置の横断面模式図である。この図に示すように、薬剤添加口15は、反応槽11の横断面図(平面視した場合)において、反応槽11の内壁Cと、バッフル板13aの先端を通る反応槽11の同心円のバッフル板の先端における接線Tと、バッフル板13aと、そのバッフル板13aにおける撹拌羽根122の回転方向に相対する面131aから撹拌羽根12の回転方向と逆方向にバッフル板131aの幅長(w)の2倍の距離(2w)を離間して配置されるバッフル板131aの平行線Pと、に囲まれてなる箇所(図2において斜線で示す箇所である。以下、「範囲Q」という。)に配置されるものである。なお、ここで「バッフル板の先端」とは、バッフル板において、反応槽の内壁と接触している端と反対の端をいう。
【0039】
詳細なメカニズムは後述するが、この範囲Qにおいては、反応液Lに供給した気体から形成された気泡の浮力により、下方向(反応槽11の上部から底面への向き)への液流が、他の方向への液流に比べて優位である。したがって、反応装置1の横断面図におけるこの箇所に薬剤添加口15の中心を配置すれば、添加された薬剤は下方への液流に乗って反応槽11の下部まで流れることができるので、反応液L中に薬剤を効率的に分散することができる。
【0040】
範囲Q以外の箇所でも、その周囲では、例えば反応液Lに供給する気体の流量や撹拌機12の回転数等の条件によって、その液流が相対的に優位となる箇所が存在する。これに対し、範囲Qでは、このような条件を問わず、添加された薬剤を撹拌羽根122まで到達させることができる。一方で、範囲Q以外の箇所では、液面に添加された薬剤が反応槽下部まで到達しないことがある。
【0041】
薬剤添加口15の配置高さとしては、撹拌羽根122より上方であれば特に限定されないが、添加された薬剤を反応液Lの上部まで効率的に分散させるため、反応液Lの液面よりも上方であることが好ましい。
【0042】
薬剤添加口15としては、特に限定されず、撹拌機の下部に配置された単数又は複数の配管等の出口等、各種の液状物、固形物の添加装置を用いることができる。複数の薬剤添加口15を用いる場合、少なくとも1つの薬剤添加口15を上述した箇所に配置することも、全ての薬剤添加口15を上述した箇所に配置することもできる。
【0043】
薬剤としては、気体以外のものであれば特に限定されず、溶液やスラリー等の液状のものや、固形物等、所望する化学反応に応じたものを用いることができる。
【0044】
[撹拌槽内の液流と気泡密度]
以上のような反応装置1において、撹拌羽根122から、反応槽11の下部に向かって撹拌流が発生するように撹拌すると、その撹拌流のうち、撹拌軸121に平行な成分は撹拌羽根122から反応槽11の底面に向かって下へ向かい、撹拌軸121に垂直な成分は撹拌羽根122から反応槽11の内壁方向へ向かう。
【0045】
撹拌流のうち、撹拌軸121に平行な成分は、反応装置1の縦断面図において、撹拌羽根122から反応槽11の内壁又は底面に向かって斜め下方向への撹拌流である。このうち主要な撹拌流は、最終的に反応槽11底面に衝突し、反転して上方に向かう流れとなる。
【0046】
一方で、撹拌流のうち、撹拌軸121に垂直な成分は、反応槽11の内壁に衝突した後、内壁に沿って旋回しようとするが、バッフル板13が設置されていることにより、その一部がバッフル板13と衝突し流れの向きが変わり、それ以外はバッフル板13の上流側で撹拌軸121のある反応槽11の円形の中心側に流れの向きが変わる。
【0047】
しかしながら、この反応槽11の円形の中心側に曲げられて、上方向に向かう撹拌流と、撹拌羽根122により生じた反応槽11の内壁側へ向かう撹拌流とが衝突し、バッフル板13と衝突し流れの向きが変わった撹拌流と合わせて、範囲Qにおいて反応液Lは乱流状態となり、撹拌流の流速は低下する。
【0048】
気体導入口14から供給された気体は、気泡となって撹拌流に乗って反応液Lを流動させるが、上述のようにして撹拌流の流速が低下すると、撹拌流に乗って移動した気泡がその箇所で滞留し気泡密度が増大する。したがって、範囲Qには、気泡密度が高い箇所が存在する。
【0049】
ここで、気泡は浮力により液面に向かって上昇するので、それと入れ替わるようにして反応液Lが下方向に液流が生じる。
【0050】
範囲Qにおいては、気泡密度が高いため、気泡の浮力要因で発生する下方向への液流が他の箇所に比べて大きい。また、撹拌流が乱流状態となって流速が低下しているので、気泡の浮力要因で発生する下方への液流が撹拌流に比べて優位である。
【0051】
このようにして、反応槽11と、撹拌機12と、バッフル板13と、気体導入口14と、薬剤添加口15とを備える反応装置1において、薬剤添加口15を、範囲Qに配置して、その箇所に薬剤を添加することにより、その薬剤が撹拌羽根122まで到達させることができ、その結果として反応液L中に薬剤を効率的に分散させることができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0053】
図3は、(a)は、実施例1及び比較例1における薬剤添加箇所を示すための反応装置の横断面模式図である。また、図3(b)は、実施例1及び比較例1における薬剤添加箇所を示すための反応装置の縦断面模式図である。これら図3(a)、(b)の模式図に示す装置の構成について検討を行った。
【0054】
具体的に、反応装置1は、底面が平面の直径:0.58m、高さ:0.7mの円柱状であり、底面から液面までの高さを超えて展延し、側面の内壁から中心方向に長さ:72mmで起立するバッフル板13を、円周方向に均等に3枚設置され、またその内部に反応液Lを収容した反応槽11を用いる構成とした。また、反応装置1は、この反応槽11に、上方から垂下した撹拌軸を有する撹拌機12と、その撹拌機の撹拌羽根の下方に、半径が撹拌羽根122よりも大きい気体導入口14としてのリングスパージャーを配し、反応液Lを撹拌しながら空気を供給する構成とした。
【0055】
このような反応装置1を対象として、ANSYS社製の汎用流体計算ソフト「Fluent」を用い、気泡の合体、分裂を考慮したモデルにて空気と反応液L(液相)との気液2相流計算を行い、液面の特定位置からスタートした薬剤の流線を計算した。なお、薬剤は液相を流動中には溶解せず初期の形態を保持するものとして計算した。
【0056】
境界条件としては、連続相である液相の密度:998kg/m、分散相である空気の密度:1.2kg/m、薬剤の密度:998kg/m、空気供給量:1.8kg/h、リングスパージャーから放出された直後の気泡径:2mm、撹拌回転数:83rpmとした。
【0057】
ここで、図3に示すように、実施例1では、反応装置1を平面視して、バッフル板13aにおける撹拌羽根122の回転方向に相対する面131a上で反応槽11の内壁から36mm(バッフル板13aの長さの半分)の位置から、撹拌羽根の回転方向と反対方向に、バッフル板13aと垂直に長さ72mm(バッフル板13aの長さと同じ)離間した位置の液面の上方に薬剤添加口15を設けたとした。この位置は、範囲Qに含まれる。比較例1では、バッフル板13bにおける撹拌羽根122の回転方向と逆の方向に相対する面131bから離間させる方向を撹拌羽根の回転方向と順方向として、薬剤添加口15’を設定した以外は、実施例1と同一条件とした。この位置は、範囲Qに含まれない。
【0058】
図4(a)は、実施例1における薬剤の流線である。実施例1において、薬剤の流線は反応槽11の反応液Lの液面から反応槽11の底部まで反応液Lの広い領域に渡って描かれており、薬剤が反応液Lに広く分散されることが分かった。バッフル板13aにおける撹拌羽根122の回転方向に相対する面131aの上流側には、液面から反応槽底面の方向に流れる下方向の液流があり、薬剤がその液流に乗ったためであると考えられる。
【0059】
図4(b)は、実施例1における気泡の分布である。なお、この気泡の分布は、図4(a)の矢印方向に見た反応槽11の縦断面図である。この図4(b)から分かるように、実施例1においては、薬剤添加箇所と気泡が多く上昇する箇所が離れて位置しているため、この気泡の上昇が、薬剤が反応液Lの下部まで流れることを阻害しないと考えられる。
【0060】
図5(a)は、比較例1における薬剤の流線である。比較例1において、薬剤の流線はほとんど撹拌羽根122まで到達しておらず、薬剤は反応液Lの上部に留まっていることが分かる。これは、撹拌羽根の回転方向に対してバッフル板の奥側には、液面から反応槽底面の方向に流れる下方向の液流は弱いためであると考えられる。
【0061】
図5(b)は、比較例1における気泡の分布である。なお、この気泡の分布は、図5(a)の矢印方向に見た反応槽11の縦断面図である。この図5(b)から分かるように、比較例1においては、薬剤添加箇所と気泡が多く上昇する箇所が近接しているため、この気泡の上昇が、薬剤が反応液Lの下部まで流れることを阻害するものと考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5