【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例について比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明に係る技術的範囲が下記実施例の記載内容に限定されることはなく、本発明に適合する範囲で変更を加えて実施することも当然のことながら可能である。
【0052】
[実施例1]
平均粒径10μm以下のSnO
2粉と、平均粒径10μm以下のZnO粉と、第1添加元素Mとして平均粒径20μm以下のGeO
2粉、および、第2添加元素Xとして平均粒径20μm以下のTa
2O
5粉を用意した。
【0053】
SnとZnの原子数比Sn/(Sn+Zn)が0.33となるようにSnO
2粉とZnO粉を調合し、第1添加元素Mの原子数比Ge/(Sn+Zn+Ge+Ta)が0.003、第2添加元素Xの原子数比Ta/(Sn+Zn+Ge+Ta)が0.003となるように、GeO
2粉とTa
2O
5粉を調合した。
【0054】
そして、調合された原料粉末と純水、有機バインダー、分散剤を、原料粉末濃度が60質量%となるように混合タンクにて混合した。
【0055】
更に、硬質ジルコニアボールが投入されたビーズミル装置(アシザワ・ファインテック株式会社製、LMZ型)を用いて10時間の湿式粉砕を行った。そして、得られたスラリーをサンプリングし、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製、SALD−2200)を用いて湿式粉砕された原料粉末の粒度分布を測定した結果、90%粒径(D90)は1.2μmであった。
【0056】
次に、得られたスラリーをスプレードライヤー装置(大川原化工機株式会社製、ODL−20型)にて噴霧および乾燥し造粒粉末を得た。
【0057】
次に、得られた造粒粉末をゴム型へ充填し、冷間静水圧プレス機(株式会社神戸製鋼所製、EA10064)で294MPa(3ton/cm
2)の圧力をかけて成形し、得られた直径約250mmの成形体を常圧焼成炉(丸詳電器株式会社製、BIGMAN)に投入し、700℃まで焼結炉内に空気(酸素濃度21体積%)を導入した。焼成炉内の温度が700℃になったことを確認した後、酸素濃度が100体積%となるように酸素を導入し、1400℃まで昇温させ、かつ、1400℃で15時間保持した。
【0058】
保持時間が終了した後は酸素導入を止め、冷却を行い、実施例1に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を得た。
【0059】
得られたSn−Zn−O系酸化物焼焼結体の一部を切断し、密度をアルキメデス法で測定したところ、相対密度は93%であり高い密度を有していた。また、上記焼結体の別の一部を切断し、研磨した後、焼結体破断面のSEM(走査型電子顕微鏡)像を撮影し、得られたSEM撮像図から平均結晶粒径を測定したところ22μmであった。同様に、上記焼結体の別な一部を破断し、焼結体破断面のSEM撮像図から粒内割れ部分を色塗りして面積を求めたところ粒内割れ面積率は91%で、粒界剥離は少なかった。更に、焼結体の別な一部を切断し、乳鉢で粉砕した粉末をXRDにより分析したところ、Zn
2SnO
4のみが検出された。
【0060】
次に、実施例1に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体を、平面研削盤(日立ビアメカニクス株式会社製、BHL−S40SNSP)とグライディングセンター(株式会社森精機製作所製、VSC60/40)を用いて直径200mm、厚さ5mmの板材に加工し、かつ、「ろう材」となる金属インジウムを用いて加工された酸化物焼結体とバッキングプレートを超音波はんだにより接合し、実施例1に係るスパッタリングターゲットを作製した。
【0061】
得られた実施例1に係るスパッタリングターゲットの外観を検査したところ、割れは認められなかった。また、ターゲットの比抵抗を4探針法で測定したところ0.08Ω・cmであり、高い導電性を有していた。
【0062】
これ等の結果から、実施例1に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は高密度(相対密度93%)で、Zn
2SnO
4を主成分としながら粒内割れ面積率が91%、かつ、大きな平均結晶粒径(22μm)を有している。このため、上記酸化物焼結体がバッキングプレートにボンディング(接合)された際、粒界剥離による導電性の悪化が起こらず、当該焼結体を加工して得られるスパッタリングターゲットは割れのない良好なものであった。この結果を[表1−1][表1−2]および[表1−3]に示す。
【0063】
[実施例2]
湿式粉砕の時間を5時間とした以外は、実施例1と同様にして造粒粉末を作製した。
【0064】
そして、実施例1と同様、湿式粉砕された原料粉末の粒度分布を測定したところ90%粒径(D90)は2μmであった。
【0065】
この造粒粉末を用い、実施例1と同様にしてSn−Zn−O系酸化物焼結体を製造し、かつ、機械加工して実施例2に係るスパッタリングターゲットを作製した。
【0066】
尚、実施例2に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度は90%、平均結晶粒径は15μm、粒内割れ面積率は52%、XRD分析結果はZn
2SnO
4のみであり、ターゲットに割れはなく、比抵抗は0.1Ω・cmであった。
【0067】
これ等の結果から、実施例2に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は、高密度(相対密度90%)で、Zn
2SnO
4を主成分としながら粒内割れ面積率が52%、かつ、大きな平均結晶粒径(15μm)を有している。このため、上記酸化物焼結体がバッキングプレートにボンディング(接合)された際、粒界剥離による導電性の悪化が起こらず、当該焼結体を加工して得られるスパッタリングターゲットは割れのない良好なものであった。この結果も[表1−1][表1−2]および[表1−3]に示す。
【0068】
[実施例3]
実施例1と同様にして造粒粉末を作製した。
【0069】
そして、実施例1と同様、湿式粉砕された原料粉末の粒度分布を測定したところ90%粒径(D90)は1.1μmであった。
【0070】
この造粒粉末を用い、焼結温度を1450℃、保持時間を30時間とした以外は実施例1と同様にしてSn−Zn−O系酸化物焼結体を製造し、かつ、機械加工して実施例3に係るスパッタリングターゲットを作製した。
【0071】
尚、実施例3に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度は94%、平均結晶粒径は48μm、粒内割れ面積率は90%、XRD分析結果はZn
2SnO
4のみであり、ターゲットに割れはなく、比抵抗は0.07Ω・cmであった。
【0072】
これ等の結果から、実施例3に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は、高密度(相対密度94%)で、Zn
2SnO
4を主成分としながら粒内割れ面積率が90%、かつ、大きな平均結晶粒径(48μm)を有している。このため、上記酸化物焼結体がバッキングプレートにボンディング(接合)された際、粒界剥離による導電性の悪化が起こらず、当該焼結体を加工して得られるスパッタリングターゲットは割れのない良好なものであった。この結果も[表1−1][表1−2]および[表1−3]に示す。
【0073】
[実施例4]
実施例1と同様にして造粒粉末を作製した。
【0074】
そして、実施例1と同様、湿式粉砕された原料粉末の粒度分布を測定したところ90%粒径(D90)は1.2μmであった。
【0075】
この造粒粉末を用い、焼結温度を1200℃、保持時間を30時間とした以外は実施例1と同様にしてSn−Zn−O系酸化物焼結体を製造し、かつ、機械加工して実施例4に係るスパッタリングターゲットを作製した。
【0076】
尚、実施例4に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度は88%、平均結晶粒径は11μm、粒内割れ面積率は58%、XRD分析結果はZn
2SnO
4のみであり、ターゲットに割れはなく、比抵抗は0.5Ω・cmであった。
【0077】
これ等の結果から、実施例4に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は、高密度(相対密度88%)で、Zn
2SnO
4を主成分としながら粒内割れ面積率が58%、かつ、大きな平均結晶粒径(11μm)を有している。このため、上記酸化物焼結体がバッキングプレートにボンディング(接合)された際、粒界剥離による導電性の悪化が起こらず、当該焼結体を加工して得られるスパッタリングターゲットは割れのない良好なものであった。この結果も[表1−1][表1−2]および[表1−3]に示す。
【0078】
[実施例5]
SnとZnの原子数比Sn/(Sn+Zn)を0.15とした以外は、実施例1と同様にして造粒粉末を作製した。
【0079】
そして、実施例1と同様、湿式粉砕された原料粉末の粒度分布を測定したところ90%粒径(D90)は0.5μmであった。
【0080】
この造粒粉末を用い、実施例1と同様にしてSn−Zn−O系酸化物焼結体を製造し、かつ、機械加工して実施例5に係るスパッタリングターゲットを作製した。
【0081】
尚、実施例5に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度は96%、平均結晶粒径は18μm、粒内割れ面積率は89%、XRD分析結果は、Zn
2SnO
4が51質量%、ZnOが49質量%であり、ターゲットに割れはなく、比抵抗は0.02Ω・cmであった。
【0082】
これ等の結果から、実施例5に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は、高密度(相対密度96%)で、Zn
2SnO
4を主成分としながら粒内割れ面積率が89%、かつ、大きな平均結晶粒径(18μm)を有している。このため、上記酸化物焼結体がバッキングプレートにボンディング(接合)された際、粒界剥離による導電性の悪化が起こらず、当該焼結体を加工して得られるスパッタリングターゲットは割れのない良好なものであった。この結果も[表1−1][表1−2]および[表1−3]に示す。
【0083】
[実施例6]
SnとZnの原子数比Sn/(Sn+Zn)を0.6としたこと以外は実施例1と同様にして造粒粉末を作製した。
【0084】
そして、実施例1と同様、湿式粉砕された原料粉末の粒度分布を測定したところ90%粒径(D90)は1.5μmであった。
【0085】
この造粒粉末を用い、実施例1と同様にしてSn−Zn−O系酸化物焼結体を製造し、かつ、機械加工して実施例6に係るスパッタリングターゲットを作製した。
【0086】
尚、実施例6に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度は95%、平均結晶粒径は15μm、粒内割れ面積率は90%、XRD分析結果は、Zn
2SnO
4が51質量%、SnO
2が49質量%であり、ターゲットに割れはなく、比抵抗は0.03Ω・cmであった。
【0087】
これ等の結果から、実施例6に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は、高密度(相対密度95%)で、Zn
2SnO
4を主成分としながら粒内割れ面積率が90%、かつ、大きな平均結晶粒径(15μm)を有している。このため、上記酸化物焼結体がバッキングプレートにボンディング(接合)された際、粒界剥離による導電性の悪化が起こらず、当該焼結体を加工して得られるスパッタリングターゲットは割れのない良好なものであった。この結果も[表1−1][表1−2]および[表1−3]に示す。
【0088】
[実施例7]
第1添加元素Mの原子数比Ge/(Sn+Zn+Ge+Ta)が0.0001、第2添加元素Xの原子数比Ta/(Sn+Zn+Ge+Ta)が0.0001となるようにGeO
2粉とTa
2O
5粉を調合したこと以外は、実施例1と同様にして造粒粉末を作製した。
【0089】
そして、実施例1と同様、湿式粉砕された原料粉末の粒度分布を測定したところ90%粒径(D90)は0.8μmであった。
【0090】
この造粒粉末を用い、実施例1と同様にしてSn−Zn−O系酸化物焼結体を製造し、かつ、機械加工して実施例7に係るスパッタリングターゲットを作製した。
【0091】
尚、実施例7に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度は86%、平均結晶粒径は42μm、粒内割れ面積率は74%、XRD分析結果はZn
2SnO
4のみであり、ターゲットに割れはなく、比抵抗は0.8Ω・cmであった。
【0092】
これ等の結果から、実施例7に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は、高密度(相対密度86%)で、Zn
2SnO
4を主成分としながら粒内割れ面積率が74%、かつ、大きな平均結晶粒径(42μm)を有している。このため、上記酸化物焼結体がバッキングプレートにボンディング(接合)された際、粒界剥離による導電性の悪化が起こらず、当該焼結体を加工して得られるスパッタリングターゲットは割れのない良好なものであった。この結果も[表1−1][表1−2]および[表1−3]に示す。
【0093】
[実施例8]
第1添加元素Mの原子数比Ge/(Sn+Zn+Ge+Ta)が0.04、第2添加元素Xの原子数比Ta/(Sn+Zn+Ge+Ta)が0.1となるように、GeO
2粉とTa
2O
5粉を調合したこと以外は実施例1と同様にして造粒粉末を作製した。
【0094】
そして、実施例1と同様、湿式粉砕された原料粉末の粒度分布を測定したところ90%粒径(D90)は1.3μmであった。
【0095】
この造粒粉末を用い、実施例1と同様にしてSn−Zn−O系酸化物焼結体を製造し、かつ、機械加工して実施例8に係るスパッタリングターゲットを作製した。
【0096】
尚、実施例8に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度は95%、平均結晶粒径は22μm、粒内割れ面積率は90%、XRD分析結果はZn
2SnO
4のみであり、ターゲットに割れはなく、比抵抗は0.5Ω・cmであった。
【0097】
これ等の結果から、実施例8に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は、高密度(相対密度95%)で、Zn
2SnO
4を主成分としながら粒内割れ面積率が90%、かつ、大きな平均結晶粒径(22μm)を有している。このため、上記酸化物焼結体がバッキングプレートにボンディング(接合)された際、粒界剥離による導電性の悪化が起こらず、当該焼結体を加工して得られるスパッタリングターゲットは割れのない良好なものであった。この結果も[表1−1][表1−2]および[表1−3]に示す。
【0098】
[実施例9]
実施例1と同様にして造粒粉末を作製した。
【0099】
そして、実施例1と同様、湿式粉砕された原料粉末の粒度分布を測定したところ90%粒径(D90)は1.2μmであった。
【0100】
この造粒粉末を用い、焼結温度を1450℃、保持時間を10時間、酸素濃度を70%とした以外は実施例1と同様にしてSn−Zn−O系酸化物焼結体を製造し、かつ、機械加工して実施例9に係るスパッタリングターゲットを作製した。
【0101】
尚、実施例9に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度は90%、平均結晶粒径は38μm、粒内割れ面積率は73%、XRD分析結果はZn
2SnO
4のみであり、ターゲットに割れはなく、比抵抗は0.2Ω・cmであった。
【0102】
これ等の結果から、実施例9に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は、高密度(相対密度90%)で、Zn
2SnO
4を主成分としながら粒内割れ面積率が73%、かつ、大きな平均結晶粒径(38μm)を有している。このため、上記酸化物焼結体がバッキングプレートにボンディング(接合)された際、粒界剥離による導電性の悪化が起こらず、当該焼結体を加工して得られるスパッタリングターゲットは割れのない良好なものであった。この結果も[表1−1][表1−2]および[表1−3]に示す。
【0103】
[実施例10]
第1添加元素MをTiO
2とした以外は実施例1と同様にして造粒粉末を作製した。
【0104】
そして、実施例1と同様、湿式粉砕された原料粉末の粒度分布を測定したところ90%粒径(D90)は1.3μmであった。
【0105】
この造粒粉末を用い、実施例1と同様にしてSn−Zn−O系酸化物焼結体を製造し、かつ、機械加工して実施例10に係るスパッタリングターゲットを作製した。
【0106】
尚、実施例10に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度は90%、平均結晶粒径は22μm、粒内割れ面積率は78%、XRD分析結果はZn
2SnO
4のみであり、ターゲットに割れはなく、比抵抗は0.7Ω・cmであった。
【0107】
これ等の結果から、実施例10に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は、高密度(相対密度90%)で、Zn
2SnO
4を主成分としながら粒内割れ面積率が78%、かつ、大きな平均結晶粒径(22μm)を有している。このため、上記酸化物焼結体がバッキングプレートにボンディング(接合)された際、粒界剥離による導電性の悪化が起こらず、当該焼結体を加工して得られるスパッタリングターゲットは割れのない良好なものであった。この結果も[表1−1][表1−2]および[表1−3]に示す。
【0108】
[実施例11]
第1添加元素MをBi
2O
3とした以外は実施例1と同様にして造粒粉末を作製した。
【0109】
そして、実施例1と同様、湿式粉砕された原料粉末の粒度分布を測定したところ90%粒径(D90)は1.2μmであった。
【0110】
この造粒粉末を用い、実施例1と同様にしてSn−Zn−O系酸化物焼結体を製造し、かつ、機械加工して実施例11に係るスパッタリングターゲットを作製した。
【0111】
尚、実施例11に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度は93%、平均結晶粒径は20μm、粒内割れ面積率は85%、XRD分析結果はZn
2SnO
4のみであり、ターゲットに割れはなく、比抵抗は0.11Ω・cmであった。
【0112】
これ等の結果から、実施例11に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は、高密度(相対密度93%)で、Zn
2SnO
4を主成分としながら粒内割れ面積率が85%、かつ、大きな平均結晶粒径(20μm)を有している。このため、上記酸化物焼結体がバッキングプレートにボンディング(接合)された際、粒界剥離による導電性の悪化が起こらず、当該焼結体を加工して得られるスパッタリングターゲットは割れのない良好なものであった。この結果も[表1−1][表1−2]および[表1−3]に示す。
【0113】
[実施例12]
第1添加元素MをCeO
2とした以外は実施例1と同様にして造粒粉末を作製した。
【0114】
そして、実施例1と同様、湿式粉砕された原料粉末の粒度分布を測定したところ90%粒径(D90)は1.1μmであった。
【0115】
この造粒粉末を用い、実施例1と同様にしてSn−Zn−O系酸化物焼結体を製造し、かつ、機械加工して実施例12に係るスパッタリングターゲットを作製した。
【0116】
尚、実施例12に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度は94%、平均結晶粒径は28μm、粒内割れ面積率は82%、XRD分析結果はZn
2SnO
4のみであり、ターゲットに割れはなく、比抵抗は0.07Ω・cmであった。
【0117】
これ等の結果から、実施例12に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は、高密度(相対密度94%)で、Zn
2SnO
4を主成分としながら粒内割れ面積率が82%、かつ、大きな平均結晶粒径(28μm)を有している。このため、上記酸化物焼結体がバッキングプレートにボンディング(接合)された際、粒界剥離による導電性の悪化が起こらず、当該焼結体を加工して得られるスパッタリングターゲットは割れのない良好なものであった。この結果も[表1−1][表1−2]および[表1−3]に示す。
【0118】
[実施例13]
第1添加元素MをGa
2O
3とした以外は実施例1と同様にして造粒粉末を作製した。
【0119】
そして、実施例1と同様、湿式粉砕された原料粉末の粒度分布を測定したところ90%粒径(D90)は1.2μmであった。
【0120】
この造粒粉末を用い、実施例1と同様にしてSn−Zn−O系酸化物焼結体を製造し、かつ、機械加工して実施例13に係るスパッタリングターゲットを作製した。
【0121】
尚、実施例13に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度は89%、平均結晶粒径は30μm、粒内割れ面積率は85%、XRD分析結果はZn
2SnO
4のみであり、ターゲットに割れはなく、比抵抗は0.4Ω・cmであった。
【0122】
これ等の結果から、実施例13に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は、高密度(相対密度89%)で、Zn
2SnO
4を主成分としながら粒内割れ面積率が85%、かつ、大きな平均結晶粒径(30μm)を有している。このため、上記酸化物焼結体がバッキングプレートにボンディング(接合)された際、粒界剥離による導電性の悪化が起こらず、当該焼結体を加工して得られるスパッタリングターゲットは割れのない良好なものであった。この結果も[表1−1][表1−2]および[表1−3]に示す。
【0123】
[実施例14]
第2添加元素XをNb
2O
5とした以外は実施例1と同様にして造粒粉末を作製した。
【0124】
そして、実施例1と同様、湿式粉砕された原料粉末の粒度分布を測定したところ90%粒径(D90)は1.2μmであった。
【0125】
この造粒粉末を用い、実施例1と同様にしてSn−Zn−O系酸化物焼結体を製造し、かつ、機械加工して実施例14に係るスパッタリングターゲットを作製した。
【0126】
尚、実施例14に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度は89%、平均結晶粒径は31μm、粒内割れ面積率は86%、XRD分析結果はZn
2SnO
4のみであり、ターゲットに割れはなく、比抵抗は0.15Ω・cmであった。
【0127】
これ等の結果から、実施例14に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は、高密度(相対密度89%)で、Zn
2SnO
4を主成分としながら粒内割れ面積率が86%、かつ、大きな平均結晶粒径(31μm)を有している。このため、上記酸化物焼結体がバッキングプレートにボンディング(接合)された際、粒界剥離による導電性の悪化が起こらず、当該焼結体を加工して得られるスパッタリングターゲットは割れのない良好なものであった。この結果も[表1−1][表1−2]および[表1−3]に示す。
【0128】
[実施例15]
第2添加元素XをWO
3とした以外は実施例1と同様にして造粒粉末を作製した。
【0129】
そして、実施例1と同様、湿式粉砕された原料粉末の粒度分布を測定したところ90%粒径(D90)は1.2μmであった。
【0130】
この造粒粉末を用い、実施例1と同様にしてSn−Zn−O系酸化物焼結体を製造し、かつ、機械加工して実施例15に係るスパッタリングターゲットを作製した。
【0131】
尚、実施例15に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度は86%、平均結晶粒径は16μm、粒内割れ面積率は72%、XRD分析結果はZn
2SnO
4のみであり、ターゲットに割れはなく、比抵抗は0.45Ω・cmであった。
【0132】
これ等の結果から、実施例15に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は、高密度(相対密度86%)で、Zn
2SnO
4を主成分としながら粒内割れ面積率が72%、かつ、大きな平均結晶粒径(16μm)を有している。このため、上記酸化物焼結体がバッキングプレートにボンディング(接合)された際、粒界剥離による導電性の悪化が起こらず、当該焼結体を加工して得られるスパッタリングターゲットは割れのない良好なものであった。この結果も[表1−1][表1−2]および[表1−3]に示す。
【0133】
[実施例16]
第2添加元素XをMoO
3とした以外は実施例1と同様にして造粒粉末を作製した。
【0134】
そして、実施例1と同様、湿式粉砕された原料粉末の粒度分布を測定したところ90%粒径(D90)は1.2μmであった。
【0135】
この造粒粉末を用い、実施例1と同様にしてSn−Zn−O系酸化物焼結体を製造し、かつ、機械加工して実施例16に係るスパッタリングターゲットを作製した。
【0136】
尚、実施例16に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度は87%、平均結晶粒径は42μm、粒内割れ面積率は68%、XRD分析結果はZn
2SnO
4のみであり、ターゲットに割れはなく、比抵抗は0.3Ω・cmであった。
【0137】
これ等の結果から、実施例16に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は、高密度(相対密度87%)で、Zn
2SnO
4を主成分としながら粒内割れ面積率が68%、かつ、大きな平均結晶粒径(42μm)を有している。このため、上記酸化物焼結体がバッキングプレートにボンディング(接合)された際、粒界剥離による導電性の悪化が起こらず、当該焼結体を加工して得られるスパッタリングターゲットは割れのない良好なものであった。この結果も[表1−1][表1−2]および[表1−3]に示す。
【0138】
[比較例1]
湿式粉砕時間を3時間とした以外は実施例1と同様にして造粒粉末を作製した。
【0139】
そして、実施例1と同様、湿式粉砕された原料粉末の粒度分布を測定したところ90%粒径(D90)は2.4μmであった。
【0140】
この造粒粉末を用い、実施例1と同様にしてSn−Zn−O系酸化物焼結体を製造し、かつ、機械加工して比較例1に係るスパッタリングターゲットを作製した。
【0141】
尚、比較例1に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度は91%、平均結晶粒径は8μm、粒内割れ面積率は40%、XRD分析結果はZn
2SnO
4のみであり、ターゲットは割れなかったが、比抵抗は1×10
6Ω・cm以上であった。
【0142】
比較例1に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体は高密度(相対密度91%)であったが、湿式粉砕した原料粉末の90%粒径(D90)が大きい(2.4μm)ため「粒界拡散」が高まらず、粒成長が進まないことにより結晶粒同士の結合が強くならず、粒界剥離を生じて導電性が悪化(比抵抗が1×10
6Ω・cm以上)した。この結果についても[表1−1][表1−2]および[表1−3]に示す。
【0143】
[比較例2]
実施例1と同様にして造粒粉末を作製した。尚、湿式粉砕した原料粉末の90%粒径は実施例1と同様、1.2μmであった。
【0144】
この造粒粉末を用い、焼結温度を1500℃、保持時間を40時間とした以外は実施例1と同様にしてSn−Zn−O系酸化物焼結体を製造し、かつ、機械加工して比較例2に係るスパッタリングターゲットを作製したところ、ターゲットに割れが発生した。
【0145】
尚、比較例2に係るSn−Zn−O系酸化物焼結体の相対密度は89%、平均結晶粒径は55μm、粒内割れ面積率は93%、XRD分析結果はZn
2SnO
4のみであり、比抵抗は0.07Ω・cmであった。
【0146】
湿式粉砕した原料粉末の90%粒径(D90)は小さい(1.2μm)が、高温(1500℃)で長時間(40時間)の焼成により上限を超える大きな平均結晶粒径(55μm)となり、機械的強度が下がったことでターゲットに割れが発生した。この結果も[表1−1][表1−2]および[表1−3]に示す。
【0147】
【表1-1】
【0148】
【表1-2】
【0149】
【表1-3】