【解決手段】本発明の透明導電膜付き基板の製造装置700は、成膜室SP1〜SP4内において、基体101の表面側に第一透明導電膜を形成する第一ターゲットTG21、TG22の近傍には、水素を含む第一プロセスガスを供給する第一プロセスガス導入機構G21、G22のガス導出部が、前記基体が移動する方向において、前記第一ターゲットのうち上手側に位置するターゲットに向けて前記第一プロセスガスを吹きつける位置に配設されている。前記基体の裏面側に第二透明導電膜を形成する第二ターゲットTG41、TG42の近傍には、水素を含まない第二プロセスガスを供給する第二プロセスガス導入機構G41、G42のガス導出部が配設されている。
トレイに載置された状態にある基体を熱処理する第三温調手段と共に、前記基体の表面側及び裏面側に各々、第一透明導電膜及び第二透明導電膜を形成する第一成膜手段及び第二成膜手段を備えた成膜室を含む透明導電膜付き基板の製造装置であって、
前記成膜室内において、前記第一成膜手段をなす、前記基体の表面側に第一透明導電膜を形成する第一ターゲットの近傍には、水素を含む第一プロセスガスを供給する第一プロセスガス導入機構のガス導出部が、前記基体が移動する方向において、前記第一ターゲットのうち上手側に位置するターゲットに向けて前記第一プロセスガスを吹きつける位置に配設されており、
前記成膜室内において、前記第二成膜手段をなす、前記基体の裏面側に第二透明導電膜を形成する第二ターゲットの近傍には、水素を含まない第二プロセスガスを供給する第二プロセスガス導入機構のガス導出部が配設されており、
前記基体が前記第一ターゲットの前を通過する際に、該基体の表面側に前記第一透明導電膜をスパッタ法により形成し、前記基体が前記第二ターゲットの前を通過する際に、該基体の裏面側に前記第二透明導電膜をスパッタ法により形成するように、前記第一ターゲットと前記第二ターゲットが前記成膜室内に配置されている、ことを特徴とする透明導電膜付き基板の製造装置。
前記成膜室には、前記第一ターゲットと前記第二ターゲットとの間に位置する内部空間に連通するように、吸気口を備えた排気手段が1つ以上配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜付き基板の製造装置。
前記トレイが前記基体の表面と裏面を露呈するための開口部、及び、該基体の側面を支持する部位を備え、前記成膜室内において、複数の該トレイがその進行方向に直線的に並んで配され、かつ、複数の該トレイのうち特定トレイは、前記第一ターゲットと前記第二ターゲットの前を通過する際に、その進行方向で、前記特定トレイの前後に位置する先行トレイと後行トレイに各々重なる部位を有しており、前記第一ターゲット側または前記第二ターゲット側から前記特定トレイを見たとき、前記特定トレイはその前後に位置する先行トレイ及び後行トレイと一群をなし、かつ、特定トレイを挟んで先行トレイと後行トレイが一面をなすように、各トレイの移動を制御する手段を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜付き基板の製造装置。
前記成膜室内において、前記基体が前記第一ターゲットと前記第二ターゲットの前を通過する手前の位置にある内部空間、及び、各ターゲットの前を通過して成膜が行われる位置にある内部空間には、各内部空間ごとに、前記第三温調手段が1つ以上配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜付き基板の製造装置。
前記成膜室内において、前記第一成膜手段をなす、前記基体の表面側に第一透明導電膜を形成する第一ターゲットと、移動する前記基体との間に発生した放電空間に向けて、前記水素を含む第一プロセスガスを供給する第一プロセスガス導入機構のガス導出部が、該第一プロセスガスを吹きかける位置に配設されている、ことを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜付き基板の製造装置。
前記成膜室内において、前記第一成膜手段をなす、前記基体の表面側に第一透明導電膜を形成する第一ターゲットと、移動する前記基体との間に発生した放電空間を包囲するようにチムニーが配設されている、ことを特徴とする請求項1又は5に記載の透明導電膜付き基板の製造装置。
前記成膜室の前段には、大気雰囲気から導入した、トレイに載置された状態にある、表面及び裏面にa−Si膜が配された基体を、減圧雰囲気において熱処理する第一温調手段を備えた仕込室Lと、前記仕込室から移動されたトレイと基体を、熱処理する第二温調手段を備えた加熱室Hとを備え、
前記成膜室の後段には、前記成膜室から移動されたトレイと基体を冷却する搬送室と、前記搬送室から移動されたトレイと基体を、減圧雰囲気から大気雰囲気へ導出する取出室とを備える、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の透明導電膜付き基板の製造装置。
請求項7に記載の仕込室、加熱室、成膜室、搬送室及び取出室を少なくとも備える透明導電膜付き基板の製造装置を用い、トレイに載置された基体の表面及び裏面に配されたa−Si膜上に透明導電膜を形成する、透明導電膜付き基板の製造方法であって、
前記仕込室における熱処理温度の最大値をTL[℃]、前記加熱室における熱処理温度の最大値をTH[℃]、前記成膜室における熱処理温度の最大値をTSP[℃]と各々定義した場合、TL≧TSPまたはTH≧TSPの関係式を満たす、ことを特徴とする透明導電膜付き基板の製造方法。
前記仕込室の内部空間及び前記加熱室の内部空間にあっては、前記基体はその表面側と裏面側に各々配置された、第一温調手段及び第二温調手段により熱処理される、ことを特徴とする請求項8に記載の透明導電膜付き基板の製造方法。
前記成膜室内において、前記基体が前記第一ターゲットの前を通過する手前の位置にある内部空間、及び、該基体が該第一ターゲットの前を通過して成膜が行われる位置にある内部空間にあっては、該基体はその非成膜面側に配置された第三温調手段により熱処理される、ことを特徴とする請求項8に記載の透明導電膜付き基板の製造方法。
前記成膜室内において、前記基体が前記第二ターゲットの前を通過する手前の位置にある内部空間、及び、該基体が該第二ターゲットの前を通過して成膜が行われる位置にある内部空間にあっては、該基体はその非成膜面側に配置された第三温調手段により熱処理される、ことを特徴とする請求項8に記載の透明導電膜付き基板の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、基体の表面側と裏面側に、水素の含有量が異なる透明導電膜が配されてなる、透明導電膜付き基板の製造装置、透明導電膜付き基板の製造方法、透明導電膜付き基板、及び太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の透明導電膜付き基板の製造装置は、トレイに載置された状態にある基体を熱処理する第三温調手段と共に、前記基体の表面側及び裏面側に各々、第一透明導電膜及び第二透明導電膜を形成する第一成膜手段及び第二成膜手段を備えた成膜室を含む透明導電膜付き基板の製造装置であって、
前記成膜室内において、前記第一成膜手段をなす、前記基体の表面側に第一透明導電膜を形成する第一ターゲットの近傍には、水素を含む第一プロセスガスを供給する第一プロセスガス導入機構のガス導出部が、前記基体が移動する方向において、前記第一ターゲットのうち上手側に位置するターゲットに対して前記第一プロセスガスを吹きかける位置に配設されており、
前記成膜室内において、前記第二成膜手段をなす、前記基体の裏面側に第二透明導電膜を形成する第二ターゲットの近傍には、水素を含まない第二プロセスガスを供給する第二プロセスガス導入機構のガス導出部が配設されており、
前記基体が前記第一ターゲットの前を通過することにより、該基体の表面側に前記第一透明導電膜をスパッタ法により形成し、前記基体が前記第二ターゲットの前を通過することにより、該基体の裏面側に前記第二透明導電膜をスパッタ法により形成するように、前記第一ターゲットと前記第二ターゲットが前記成膜室内に配置されている、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に記載の透明導電膜付き基板の製造装置は、請求項1において、前記成膜室には、前記第一ターゲットと前記第二ターゲットとの間に位置する内部空間に連通するように、吸気口を備えた排気手段が1つ以上配置されている、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3に記載の透明導電膜付き基板の製造装置は、請求項1において、前記トレイが前記基体の表面と裏面を露呈するための開口部、及び、該基体の側面を支持する部位を備え、前記成膜室内において、複数の該トレイがその進行方向に直線的に並んで配され、かつ、複数の該トレイのうち特定トレイは、前記第一ターゲットと前記第二ターゲットの前を通過する際に、その進行方向で、前記特定トレイの前後に位置する先行トレイと後行トレイに各々重なる部位を有しており、前記第一ターゲット側または前記第二ターゲット側から前記特定トレイを見たとき、前記特定トレイはその前後に位置する先行トレイ及び後行トレイと一群をなし、かつ、特定トレイを挟んで先行トレイと後行トレイが一面をなすように、各トレイの移動を制御する手段を備えている、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4に記載の透明導電膜付き基板の製造装置は、請求項1において、前記成膜室内において、前記基体が前記第一ターゲットと前記第二ターゲットの前を通過する手前の位置にある内部空間、及び、各ターゲットの前を通過して成膜が行われる位置にある内部空間には、各内部空間ごとに、前記第三温調手段が1つ以上配置されている、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項5に記載の透明導電膜付き基板の製造装置は、請求項1において、前記成膜室内において、前記第一成膜手段をなす、前記基体の表面側に第一透明導電膜を形成する第一ターゲットと、移動する前記基体との間に発生した放電空間に向けて、前記水素を含む第一プロセスガスを供給する第一プロセスガス導入機構のガス導出部が、該第一プロセスガスを吹きかける位置に配設されている、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項6に記載の透明導電膜付き基板の製造装置は、請求項1又は5において、前記成膜室内において、前記第一成膜手段をなす、前記基体の表面側に第一透明導電膜を形成する第一ターゲットと、移動する前記基体との間に発生した放電空間を包囲するようにチムニーが配設されている、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項7に記載の透明導電膜付き基板の製造装置は、請求項1乃至6のいずれか一項において、前記成膜室の前段には、大気雰囲気から導入した、トレイに載置された状態にある、表面及び裏面にa−Si膜が配された基体を、減圧雰囲気において熱処理する第一温調手段を備えた仕込室Lと、前記仕込室から移動されたトレイと基体を、熱処理する第二温調手段を備えた加熱室Hとを備え、前記成膜室の後段には、前記成膜室から移動されたトレイと基体を冷却する搬送室と、前記搬送室から移動されたトレイと基体を、減圧雰囲気から大気雰囲気へ導出する取出室とを備える、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項8に記載の透明導電膜付き基板の製造方法は、請求項7に記載の仕込室、加熱室、成膜室、搬送室及び取出室を少なくとも備える透明導電膜付き基板の製造装置を用い、トレイに載置された基体の表面及び裏面に配されたa−Si膜上に透明導電膜を形成する、透明導電膜付き基板の製造方法であって、前記仕込室における熱処理温度の最大値をT
L[℃]、前記加熱室における熱処理温度の最大値をT
H[℃]、前記成膜室における熱処理温度の最大値をT
SP[℃]と各々定義した場合、T
L≧T
SPまたはT
H≧T
SPの関係式を満たす、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項9に記載の透明導電膜付き基板の製造方法は、請求項8において、前記仕込室の内部空間及び前記加熱室の内部空間にあっては、前記基体はその表面側と裏面側に各々配置された、第一温調手段及び第二温調手段により熱処理される、ことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項10に記載の透明導電膜付き基板の製造方法は、請求項8において、前記成膜室内において、前記基体が前記第一ターゲットの前を通過する手前の位置にある内部空間、及び、該基体が該第一ターゲットの前を通過して成膜が行われる位置にある内部空間にあっては、該基体はその非成膜面側に配置された第三温調手段により熱処理される、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項11に記載の透明導電膜付き基板の製造方法は、請求項8において、前記成膜室内において、前記基体が前記第二ターゲットの前を通過する手前の位置にある内部空間、及び、該基体が該第二ターゲットの前を通過して成膜が行われる位置にある内部空間にあっては、該基体はその非成膜面側に配置された第三温調手段により熱処理される、ことを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項12に記載の透明導電膜付き基板は、基体の表面及び裏面に配されたa−Si膜上に、それぞれ第一透明導電膜及び第二透明導電膜を配してなる透明導電膜付き基板であって、前記第一透明導電膜に含まれる水素含有量C
H1[atoms/cm
3]、前記第二透明導電膜に含まれる水素含有量C
H2[atoms/cm
3]と定義した場合、C
H1>C
H2の関係式を満たす、ことを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項13に記載の透明導電膜付き基板は、請求項12において、前記C
H1が10
21台であり、かつ、前記C
H2[atoms/cm
3]が10
20台である、ことを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項14に記載の太陽電池は、基体の表面及び裏面に配されたa−Si膜上に、それぞれ第一透明導電膜及び第二透明導電膜を配してなる透明導電膜付き基板を備えた太陽電池であって、前記基体の表面側を光入射面として、前記第一透明導電膜に含まれる水素含有量C
H1[atoms/cm
3]、前記第二透明導電膜に含まれる水素含有量C
H2[atoms/cm
3]と定義した場合、C
H1>C
H2の関係式を満たす透明導電膜付き基板を備えた、ことを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項15に記載の太陽電池は、請求項14において、前記C
H1が10
21台であり、かつ、前記C
H2[atoms/cm
3]が10
20台である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る透明導電膜(以下ではTCOとも呼ぶ)付き基板の製造装置によれば、第一成膜手段は第一ターゲットと水素を含むプロセスガスを用い、成膜室内において前段に位置する特定の内部空間においてスパッタ法によって基体の表面側に第一透明導電膜を形成する。次いで、第二成膜手段は第二ターゲットと水素を含まないプロセスガスを用い、成膜室内において後段に位置する特定の内部空間においてスパッタ法によって基体の裏面側に第二透明導電膜を形成する。換言すると、本発明の製造装置は、同じ成膜室内には存在するが、基体の進行方向において、前段に位置する特定の成膜空間で水素を含む第一透明導電膜を基体の表面側に成膜した後に、後段に位置する特定の成膜空間で水素を含まない第二透明導電膜を基体の裏面側に成膜できる。
ゆえに、本発明の製造装置は、基体の表裏両面にTCOの下地をなす非晶質シリコン(a−Si)が予め設けてある基板に対して、基板の表面側に水素を含むプロセスガスを用いて第一透明導電膜を形成した際に、水素ガスを含むプラズマに接することによりH
2Oが発生したとしても、これが基体の裏面側に回り込むことによって、基体の裏面側の非晶質シリコン(a−Si)に再付着するなどして、基体の裏面側の非晶質シリコン(a−Si)とその上に堆積するTCOとの界面に絶縁層が生じるという問題が解消される。
したがって、本発明は、基体の表面側と裏面側に、水素の含有量が異なる透明導電膜が配されてなる透明導電膜付き基板の形成に寄与する製造装置をもたらす。
【0022】
本発明に係る透明導電膜付き基板の製造方法は、仕込室、加熱室、成膜室、搬送室及び取出室を少なくとも備える透明導電膜付き基板の製造装置を用い、トレイに載置された基体の表面及び裏面に配されたa−Si膜上に透明導電膜を、前記成膜室内で熱処理しながら成膜する前に、前もって前記仕込室と前記加熱室において熱処理を行う。
その際の熱処理条件を、前記仕込室における熱処理温度の最大値をT
L[℃]、前記加熱室における熱処理温度の最大値をT
H[℃]、前記成膜室における熱処理温度の最大値をT
SP[℃]と各々定義した場合、T
L≧T
SPまたはT
H≧T
SPの関係式を満たすものとする。
この関係式を満たすように、仕込室と加熱室と成膜室における各熱処理温度の最大値を制御することより、成膜室の前段に位置する仕込室と加熱室において、トレイに載置された基体はピーク温度を迎える。成膜室へ移動したトレイに載置された基体は、このピーク温度より低温状態とされる。これにより、トレイに載置された基体による、成膜室内における水の放出や持ち込みが低減される。
したがって、本発明に係る透明導電膜付き基板の製造方法によれば、成膜室内における水の放出や持ち込みが低減されるので、基体の表面側と裏面側に、水素の含有量が異なる透明導電膜が配されてなる透明導電膜付き基板を安定に形成することが可能となる。
【0023】
上述した本発明の製造装置や製造方法により、基体の表面及び裏面に配されたa−Si膜上に、それぞれ第一透明導電膜及び第二透明導電膜を配してなる透明導電膜付き基板が形成するならば、前記第一透明導電膜に含まれる水素含有量C
H1[atoms/cm
3]、前記第二透明導電膜に含まれる水素含有量C
H2[atoms/cm
3]と定義した場合、C
H1>C
H2の関係式を満たす、透明導電膜付き基板が得られる。これにより、本発明の透明導電膜付き基板は、基体の表面側と裏面側に、水素の含有量が異なる透明導電膜が配されてなる構成を備え、基体の表面側を光入射面として活用できることから、太陽電池用途に好適である。
【0024】
上述した本発明の製造装置や製造方法により、基体の表面及び裏面に配されたa−Si膜上に、それぞれ第一透明導電膜及び第二透明導電膜を配してなる透明導電膜付き基板が得られる。この透明導電膜付き基板を用いることにより、前記基体の表面側を光入射面として、前記第一透明導電膜に含まれる水素含有量C
H1[atoms/cm
3]、前記第二透明導電膜に含まれる水素含有量C
H2[atoms/cm
3]と定義した場合、C
H1>C
H2の関係式を満たす太陽電池が得られる。この構成を有する太陽電池は、曲線因子(F.F.:Fill Factor)や発電効率(Eff)の向上が図れる。なお、曲線因子は「最大出力(Pmax)を開放電圧(Voc)と短絡電流(Isc)との積で除した値」であり、発電効率は「開放電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、曲線因子(F.F.)の積」である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る透明導電膜付き基板の製造装置及び製造方法の最良の形態について、図面に基づき説明する。なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0027】
<第一実施形態>
以下では、表面及び裏面の両面がa−Si膜により被覆された基体上に、前記a−Si膜を覆うように透明導電膜が配されてなる透明導電膜付き基板の製造方法について、
図5を参照して説明する。
図5は、透明導電膜付き基板及びこれを含む太陽電池の一例を示す断面図である。
図5において、透明導電膜付き基板10A(10)を構成する基体101(基板)は平板状の結晶系シリコン基材であり、基体101の表面101aと裏面101bは両面とも、a−Si膜により被覆されている。
図5において、基体101の表面101aに向けた(下向きの)矢印は、光入射方向を表している。
【0028】
光入射側となる表面101aに設けられたa−Si膜(
図5ではαと表記)は、表面101aに接して設けられたi型のa−Si膜102と、該i型のa−Si膜102の上に設けられたp型のa−Si膜103と、から構成されている。また、a−Si膜(α)の外面をなすp型のa−Si膜103を覆うように、第一透明導電膜104が設けられている。さらに、第一透明導電膜104の外面には、金属膜からなる電極105が配されている。
【0029】
これに対して、非光入射側となる裏面101bに配置されたa−Si膜(
図5ではβと表示)は、裏面101bに接して設けられたi型のa−Si膜112と、該i型のa−Si膜112の上に設けられたn型のa−Si膜113と、から構成されている。また、a−Si膜(β)の外面をなすn型のa−Si膜113を覆うように、第二透明導電膜114が設けられている。さらに、第二透明導電膜114の外面には、金属膜からなる電極115が配されている。
【0030】
本発明では、後述する透明導電膜付き基板の製造装置及び製造方法によって、第一透明導電膜104と第二透明導電膜114に含まれる水素含有量が制御される。すなわち、第一透明導電膜104に含まれる水素含有量C
H1[atoms/cm
3]、前記第二透明導電膜に含まれる水素含有量C
H2[atoms/cm
3]と定義した場合、C
H1>C
H2の関係式を満たすように、制御される。これにより、本発明の透明導電膜付き基板は、基体の表面側と裏面側に、水素の含有量が異なる透明導電膜が配されてなる構成を備え、基体の表面側を光入射面として活用できることから、太陽電池用途に好適である。
【0031】
以下では、基体101に対してa−Si膜(α)とa−Si(β)を配した構造体を中間構造体1A(1)と呼ぶ。この中間構造体1A(1)に対して第一透明導電膜104及び第二透明導電膜114を配した構造体が、透明導電膜付き基板10A(10)である。また、基体101として結晶系シリコン基材を用い、透明導電膜付き基板10A(10)に対して電極105と電極115を配した構造体が、太陽電池100A(100)である。
【0032】
後に詳述する本発明の製造装置と製造方法により作製された、上記構成(
図5)とした第一透明導電膜104及び第二透明導電膜114を有する透明導電膜付き基板10A(10)は、後述する表2から、基体の表面側と裏面側に、水素の含有量が異なる透明導電膜が配されてなる構成を備えていることが確認された。この構成とした透明導電膜付き基板は、基体の表面側を光入射面として活用できることから、太陽電池用途に好適である。
また、上記構成からなる透明導電膜付き基板を用いた太陽電池は、曲線因子(F.F.:Fill Factor)や発電効率(Eff)の向上が図れることが分かった。
【0033】
なお、
図5には明示していないが、基体101の表面101a側には、必要に応じて反射防止層(Anti Reflection Layer:AR層)が配される構成としてもよい。反射防止層としては、たとえば、絶縁性の窒化膜、窒化ケイ素膜、酸化チタン膜、酸化アルミニウム膜などが好適に用いられる。
【0034】
図6及び
図7は、透明導電膜付き基板の製造方法を示すフローチャートであり、
図6は従来例を示しており、
図7は本発明の実施形態を示している。従来例に対して本発明の実施形態は、以下に詳述する「S16、S17」の工程で相違する。
【0035】
従来の透明導電膜付き基板は、
図6に示すS51〜S58の工程フローを経て形成される。すなわち、「c−Si(n)準備、テクスチャー形成(両面)、i型a−Si形成(両面)、p型a−Si形成(表面)、n型a−Si形成(裏面)、水なしTCO形成(表面)、水あり(又は水なし)TCO形成(裏面)、電極形成(両面)」からなる8つの工程処理を順に行うことにより製造される。
【0036】
特に、従来の透明導電膜付き基板の製造方法においては、受光面となる表面側のTCO膜を成膜する際には「水を含まないプロセスガス」を用い、非受光面となる裏面側のTCO膜を成膜する際には「水を含むプロセスガス」を用いて、この順番で成膜した場合には、裏面側のTCO膜を形成する際に用いた「水を含むプロセスガス」が、前もって成膜済である表面側のTCO膜面に回り込み、水が付着した状態にあるTCO膜面上に、電極が形成されることになる。そのため、表面側のTCOと電極との間で電気的な不具合が生じる虞があった。
【0037】
これに対し、本発明の透明導電膜付き基板は、
図75に示すS11〜S18の工程フローを経て形成される。すなわち、「c−Si(n)準備、テクスチャー形成(両面)、i型a−Si形成(両面)、p型a−Si形成(表面)、n型a−Si形成(裏面)、水ありTCO形成(表面)、水なしTCO形成(裏面)、電極形成(両面)」からなる8つの工程処理を順に行うことにより製造される。この順番で成膜した場合、裏面側のTCO膜は「水を含まないプロセスガス」を用いるため、前もって成膜済である表面側のTCO膜面に回り込んだとしても、表面側のTCO膜面上に水が付着した状態になる虞はない。これにより、水の影響を受けることなく、表面側のTCO膜面上に電極が形成される。そのため、表面側のTCOと電極との間で電気的な不具合が発生する問題が解消される。
【0038】
上述した本発明の透明導電膜付き基板を製造するためには、たとえば、
図1に示すような透明導電膜付き基板の製造装置が好適である。
図2は、
図1の製造装置において、トレイに載置された状態にある基体の一例を示す断面図である。以下では、
図1及び
図2を参照して、本発明に係る透明導電膜付き基板の製造装置を詳述する。
【0039】
<スパッタ装置>
本発明における透明導電膜付き基板の製造方法では、透明導電膜の下地に相当するa−Si膜(α、β)は、公知のCVD装置によって基体101の上に予め形成されたものを用いる。ここで、2つの透明導電膜104(TCO1)、114(TCO2)は、
図1に示すような、スパッタ法を用いて成膜する製造装置(以下、スパッタ装置と呼ぶ)700により形成できる。製造装置700は、インライン式スパッタリング装置であり、基体101を水平に保持して搬送する搬送機構を備えた、水平搬送型のスパッタリング装置である。スパッタ装置700における放電形式は、DCに限定されず、RFや(DC+RF)重畳であってもよい。
【0040】
図1に示すスパッタ装置においては、複数のプロセス室[仕込室L、加熱室H、成膜入口室ENT、第1成膜室SP1、第2成膜室SP2、第3成膜室SP3、第4成膜室SP4、成膜出口室EXT、搬送室B、取出室UL]が直列に接続して配置されている。a−Si膜(α、β)が形成された基体101[中間構造体1A(1)]を搭載したトレイ400は、各プロセス室を順に通過することにより、本発明の実施形態に係る透明導電膜を中間構造体1A(1)上に作製する。
【0041】
すなわち、後述するように、本発明では、所望の温度に熱処理された基体101が、4つ成膜室(SP1→SP2→SP3→SP4)内を通過することにより、基体101の表面側[光入射面として用いられるa−Si膜(α)の上]には「水素含有量の多い第一透明導電膜104(TCO1)」を形成し、基体101の裏面側[非光入射面として用いられるa−Si膜(β)の上]には、水素含有量の少ない第二透明導電膜114(TCO2)を形成する。
【0042】
第一透明導電膜104(TCO1)と第二透明導電膜114(TCO2)をスパッタ法により形成する際に、
図2に示すような構成のトレイ400が好適に用いられる。すなわち、トレイ400は、被処理体である基体101の表面αと裏面βを露呈するための第一開口部400aと第二開口部400bを備えた本体401と、本体401の内側に位置する第一突出部402と、本体401の外側に位置する第二突出部403a、403bとから構成されている。
【0043】
第一突出部402は、第一開口部400aが第二開口部400bより大きく設定されるように、本体401の内側において基体101を載置する。これにより、第一開口部400aは本体401の内側面401sにより規定され、第二開口部400bは突出部402の内側面402sにより規定される。これは光入射側となる第一透明導電膜104(TCO1)を、非光入射側となる第二透明導電膜114(TCO2)に比べて、より大面積で形成するためである。
【0044】
本体401の外側には、第二突出部403a、403bを備える。トレイ(特定トレイとも呼ぶ)400の進行方向(
図2の矢印方向)において、先進するトレイ(先行トレイとも呼ぶ)410の方向に延設された第二突出部403aと、後進するトレイ(後行トレイとも呼ぶ)420の方向に延設された第二突出部403bとは、本体401との接続位置が上下逆転して設けられている。すなわち、トレイ400の第二突出部403aと重なるように、先進するトレイ410には第二突出部413bが配置される。同様に、トレイ400の第二突出部403bと重なるように、後進するトレイ420には第二突出部423aが配置される。
【0045】
これにより、トレイ400の第二突出部403aと先進するトレイ410の第二突出部413bが重なり状態を保つと共に、トレイ400の第二突出部403bと後進するトレイ420の第二突出部423aが重なり状態を保ちながら、3つのトレイ400、410、420が連結されて、第一透明導電膜104(TCO1)と第二透明導電膜114(TCO2)のスパッタ成膜が行われる。
【0046】
本発明の製造装置においては、トレイの進行方向において、基体101を載置するトレイ400、410、420が連結されており、トレイ同士の間に空隙が存在しない。ゆえに、トレイ間の空隙を通じて、スパッタ粒子が基体101の非成膜面(たとえば、表面が成膜面の場合は裏面が非成膜面である)に到達する可能性が大幅に低減される。同様に、スパッタに供するプロセスガスの回り込みも抑制される。
【0047】
ゆえに、本発明は、基体101の非成膜面にスパッタ粒子が付着したり、基体101の非成膜面がスパッタに供するプロセスガスに曝される、という不具合が回避できる、透明導電膜付き基板の製造装置をもたらす。この作用・効果は、「所望の温度に熱処理された基体101が、4つ成膜室(SP1→SP2→SP3→SP4)内を通過することにより、基体101の表面側[光入射面として用いられるa−Si膜(α)の上]には「水素含有量の多い第一透明導電膜104(TCO1)」を形成し、基体101の裏面側[非光入射面として用いられるa−Si膜(β)の上]には、水素含有量の少ない第二透明導電膜114(TCO2)を形成する」という本発明においては、極めて有効にはたらく。
【0048】
図1のスパッタ装置は、複数のプロセス室[仕込室L、加熱室H、成膜入口室ENT、第1成膜室SP1、第2成膜室SP2、第3成膜室SP3、第4成膜室SP4、成膜出口室EXT、搬送室B、取出室UL]が直列に接続して配置されている。
図1のスパッタ装置では、仕込室Lから取出室ULまで、基体101[中間構造体1A(1)]を載置し、基体101を水平に保ちながら搬送する機構(不図示)を備えている。
【0049】
図1のスパッタ装置において、符号DV1〜DV6は何れもドアバルブを表している。第一ドアバルブDV1は、装置外部の大気空間と仕込室Lの内部空間との間を遮断する。第二ドアバルブDV2は、仕込室Lの内部空間と加熱室Hの内部空間との間を遮断する。第三ドアバルブDV3は、加熱室Hの内部空間と成膜入口室ENTの内部空間との間を遮断する。第四ドアバルブDV4は、成膜出口室EXTの内部空間と搬送室Bの内部空間との間を遮断する。第五ドアバルブDV5は、搬送室Bの内部空間と取出室ULの内部空間との間を遮断する。第六ドアバルブDV6は、取出室ULの内部空間と装置外部の大気空間との間を遮断する。
【0050】
図1のスパッタ装置においては、6つのチャンバ(成膜入口室ENT、第1成膜室SP1、第2成膜室SP2、第3成膜室SP3、第4成膜室SP4、及び、成膜出口室EXT)の内部空間が全て連通しており、1つの真空槽を構成している。6つのチャンバにおいて、隣接する位置にあるチャンバどうしの仕切りを示す「一点鎖線」は、隣接する位置にあるチャンバの内部空間が連通していることを意味する。
【0051】
スパッタ装置の外部空間から仕込室Lの内部空間へ搬入された、トレイ400に搭載された基体101[中間構造体1A(1)]の表面及び裏面の両面には、予め、公知のCVD装置によりa−Si膜が形成されている。基体101は、トレイ400に搭載された状態で、仕込室Lから取出室ULへ向けて、順方向にのみ移動することができる。つまり、
図1に示す製造装置においては、トレイ400に搭載された基体101は、逆方向[取出室ULから仕込室Lの方向]へ戻る必要がない。ゆえに、
図1のスパッタ装置は、量産性に優れている。
【0052】
第一ドアバルブDV1の開閉動作を行い、基体101は大気空間(スパッタ装置外部)から仕込室Lの内部空間へ搬入される。第一排気手段P11を用い、仕込室Lの内部空間を所望の減圧雰囲気とする。必要に応じて、仕込室Lの温調手段H11、H12を用い、仕込室Lにおいて基体101の両面から加熱処理が施される。熱処理なしの基体101、あるいは加熱処理により所望の温度になった基体101は、第二ドアバルブDV2の開閉動作を行い、仕込室Lから加熱室Hへ移動される。
【0053】
次に、仕込室Lから加熱室Hへ移動された基体101は、地点Aにおいて、温調手段H21、H22により基体101の両面から加熱処理が施される。その際、加熱室Hの内部空間は第二排気手段P21を用い、所望の減圧雰囲気が保持される。加熱室Hにおいて所望の温度になった基体101は、第三ドアバルブDV3の開閉動作を行い、加熱室Hから成膜入口室ENTへ移動される。
【0054】
次に、加熱室Hから成膜入口室ENTへ移動された基体101は、地点Bにおいて、温調手段H311、H312により基体101の両面から加熱処理が施される。成膜入口室ENTにおいて所望の温度になった基体101は、成膜入口室ENTから、4つ成膜室(SP1→SP2→SP3→SP4)の内部空間を通過させることにより所望の成膜を行った後、成膜出口室EXTまで移動される。
【0055】
基体101が収容された成膜入口室ENTの雰囲気は、後段に位置する第一成膜室SP1、第二成膜室SP2、第三成膜室SP3、第四成膜室SP4における、基体101の表裏に形成される第一透明導電膜104(TCO1)と第二透明導電膜114(TCO2)が形成される際の雰囲気条件(スパッタ成膜条件など)に合わせて調整される。
【0056】
成膜入口室ENTの次に位置する第一成膜室SP1には、基体101が地点Cを通過する際に、基体101の裏面を熱処理する温調手段H322が配置されている。これにより、次の第二成膜室SP2で行われる第一透明導電膜104(TCO1)の形成直前にある基体101の温度を調整可能とされている。
【0057】
第一成膜室SP1の次に位置する第二成膜室SP2には、基体101が地点Dを通過する際に、基体101の裏面を熱処理する温調手段H332と、基体101の表面側に第一透明導電膜104(TCO1)を形成するための1対の回転ターゲットTG21、TG22からなる第一成膜手段と、が配置されている。これにより、第一透明導電膜104(TCO1)の形成時にある基体101は、非成膜面である裏面(
図1では下面)から、成膜温度が調整可能とされている。1対の回転ターゲットTG21、TG22に対して、基体101の進行方向において上手側の位置に、2つのプロセスガス供給手段G21、G22の導出口が配置されている。
【0058】
このように温度調整された基体101は第二成膜室SP2の地点Dを通過する。このとき、トレイ400は、第一ターゲットTG21、TG22に基体101の表面が対向するように、基体101を水平に維持する。トレイ400によって基体101が地点Dを通過することにより、第一ターゲットTG21、TG22を用いた、たとえばDCスパッタ法によって、基体101の表面側にのみ、第一透明導電膜104(TCO1)が形成される。これにより、基体101の表面(101b)側のa−Si膜(α)上に、第一透明導電膜104(TCO1)が形成される。なお、上述した通り、本発明におけるスパッタ法の放電形式は、DCに限定されず、RFや(DC+RF)重畳であってもよい。
【0059】
その際、プラズマを形成する第一プロセスガスとして、不活性ガス(たとえばAr)G21と反応性ガス(たとえばO
2ガス)や水素を含むガス(たとえばH
2O)G22が、基体の進行方向において上手側のターゲットTG21に向けて吹きつけるように供給される。第二成膜室SP2においては、第一ターゲットTG21、TG22が基体101に対して上方に配置されており、デポダウンのスパッタリングが行われる。
【0060】
図3は、ターゲットが2本の構成例におけるガス導出部を示す拡大断面図である。
図3に示す1対のターゲットは、
図1の第二成膜室SP2に配置された1対の第一ターゲットTG21、TG22を表している。
図3において、符号400が基体を搭載したトレイであり、白抜きの太い矢印(紙面右向き)がトレイ(すなわち基体)の移動する方向を表している。
【0061】
図3に示すように、前記成膜室内において、前記第一成膜手段をなす、前記基体の表面側に第一透明導電膜を形成する第一ターゲットTG21、TG22の近傍には、第一プロセスガスのうち、反応性ガスや水素を含むガスG22を供給する第一プロセスガス導入機構のガス導出部(矢印)が、前記基体が移動する方向[(
図3においてはトレイ400の右端から右側へ延びる)白抜きの太い矢印の方向]において、第一ターゲットTG21、TG22のうち上手側に位置するターゲットTG21に向けて第一プロセスガスG22を吹きつける位置に配設される構成が好ましい。この構成によれば、上手側のカソードで水素を消費させ、下手側のカソードでは水素の少ない成膜を行うことができる。これにより、基体の表面側に形成された第一透明導電膜は、初期成長部が水素濃度の高いものとなり、膜厚が厚くなるに連れて水素濃度の低いものとすることができる。
【0062】
なお、
図3において、第一プロセスガスのうち、不活性ガスG21を供給する第一プロセスガス導入機構のガス導出部については図示を省略しているが、反応性ガスや水素を含むガスG22と同様に上手側に必ず配設する必要はなく、たとえば下手側などに配設する構成としても構わない。
【0063】
また、上述した構成(ターゲットTG21に向けて第一プロセスガスG22を吹きつける構成)に代えて、前記成膜室内において、前記第一成膜手段をなす、前記基体の表面側に第一透明導電膜を形成する第一ターゲットTG21、TG22と、移動する前記基体との間に発生した放電空間(プラズマ)に向けて、前記水素を含む第一プロセスガスG22を供給する第一プロセスガス導入機構のガス導出部が、第一プロセスガスG22を吹きかける位置に配設される構成としてもよい。これにより、放電空間(プラズマ)内において水素が均等に含まれる状態が実現できるので、基体上に形成される第一透明導電膜はその膜内において水素含有量の均一化が図れる。
【0064】
図3の構成、すなわち、第一ターゲットが2本の円筒形ターゲットTG21、TG22からなる構成において、チムニーの配設は有効である。
図3の構成においてチムニーを配設する場合は、2つの第一ターゲットTG21、TG22を囲むようにチムニーC21、C22を設ける構成が好ましい。チムニーを設けることにより、前記基体の表面側に第一透明導電膜を形成するために用いる、前記水素を含む第一プロセスガスG22が、前記基体の裏面側の成膜(第二透明導電膜の形成)に及ぼす影響を抑制することが可能となる。
【0065】
図4は、ターゲットが3本の構成例におけるガス導出部を示す拡大断面図である。
図3には、第一ターゲットTG21、TG22が一対からなる構成を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば、
図4に示すように、第一ターゲットが3本の円筒形ターゲットTG21、TG22、TG23からなり、前記基体が移動する方向[(
図4においてはトレイ400の右端から右側へ延びる)白抜きの太い矢印の方向]において上手側から下手側へ順に、TG23、TG21、TG22と並べて配設される構成にも、本発明は適用できる。
図4におけるTG21、TG22は、
図3と同様の1対の第一ターゲットである。
【0066】
前記基体が移動する方向において、1つ目の第一ターゲットTG23が単独で前段に位置し、2つ目と3つ目の第一ターゲットTG21、TG22が1対をなして後段に位置する場合は、単独で前段に位置する第一ターゲットTG23に対してのみ、第一プロセスガスを供給する第一プロセスガス導入機構のガス導出部が配設されていればよい。その際、第一ターゲットTG23に対する第一プロセスガスを供給する第一プロセスガス導入機構のガス導出部は、前記基体が移動する方向において、上手側に限定されるものではなく、たとえば、下手側などに配設されてもよい。
【0067】
前段に位置する第一ターゲットTG23に対して供給された第一プロセスガスは、後段の第一ターゲットTG21、TG22の方向へ流れることにより、後段の第一ターゲットTG21、TG22にも供給可能である。これにより、必ずしも、後段の第一ターゲットTG21、TG22に対して第一プロセスガスを供給する第一プロセスガス導入機構のガス導出部(
図3に示すようなガス導出部)を、
図4の構成において配設する必要はない。
【0068】
図4の構成、すなわち、第一ターゲットが3本の円筒形ターゲットTG21、TG22、TG23からなる構成においても、チムニーの配設は有効である。、
図4の構成においてチムニーを配設する場合は、1つ目の第一ターゲットTG23を囲むように第一のチムニーC23、C24を設けるとともに、2つ目と3つ目の第一ターゲットTG21、TG22を囲むように第二のチムニーC21、C22を設ける構成が好ましい。これにより、
図4の構成においても、前述した
図3の構成と同様に、チムニーを設ける効果[前記基体の表面側に第一透明導電膜を形成するために用いる、前記水素を含む第一プロセスガスG22が、前記基体の裏面側の成膜(第二透明導電膜の形成)に及ぼす影響を抑制する効果]が安定して得られる。
【0069】
なお、第一ターゲットは4本以上の円筒形ターゲットから構成されてもよい。第一ターゲットが4本の場合、すなわち、上述した1対のターゲット配置を2回繰り返せばよい。同様に、第一ターゲットが5本の場合、1つの第一ターゲットと1対のターゲット配置を2回繰り返せばよい。つまり、本発明は、第一ターゲットが偶数本の円筒形ターゲットからなる場合にも、第一ターゲットが奇数本の円筒形ターゲットからなる場合にも適用することが可能である。
【0070】
第二成膜室SP2の次に位置する第三成膜室SP3には、基体101が地点Eを通過する際に、基体101の表面を熱処理する温調手段H331が配置されている。
【0071】
第三成膜室SP3の次に位置する第四成膜室SP4には、基体101が地点Fを通過する際に、基体101の表面を熱処理する温調手段H341と、基体101の裏面側に第二透明導電膜114(TCO2)を形成するための1対の回転ターゲットTG41、TG42からなる第二成膜手段と、が配置されている。これにより、第二透明導電膜114(TCO2)の形成時にある基体101は、非成膜面である表面(
図1では上面)から、成膜温度が調整可能とされている。2対の回転ターゲットTG41、TG42に対して、基体101の進行方向において上手側の位置に、2つのプロセスガス供給手段G41、G42の導出口が配置されている。
【0072】
このように温度調整された基体101は第四成膜室SP4の地点Fを通過する。このとき、トレイ400は、第二ターゲットTG41、TG42に基体101の裏面が対向するように、基体101を水平に維持する。トレイ400によって基体101が地点Fを通過することにより、第二ターゲットTG41、TG42を用いた、たとえばDCスパッタ法によって、基体101の裏面側にのみ、第二透明導電膜114(TCO2)が形成される。これにより、基体101の裏面(101b)側のa−Si膜(β)上に、第二透明導電膜114(TCO2)が形成される。なお、上述した通り、本発明におけるスパッタ法の放電形式は、DCに限定されず、RFや(DC+RF)重畳であってもよい。
【0073】
その際、プラズマを形成するプロセスガスとして、不活性ガス(たとえばArガス)G41や反応性ガス(たとえばO
2ガス)G42が、基体の進行方向において上手側のターゲットTG41または下手側のターゲットTG42に向けて吹きつけるように供給される。第四成膜室SP4においては、ターゲットTG41、TG42が基体101に対して下方に配置されており、デポアップのスパッタリングが行われる。
【0074】
換言すると、前記成膜室内において、前記第二成膜手段をなす、前記基体の裏面側に第二透明導電膜を形成する第二ターゲットTG41、TG42の近傍には、水素を含まない第二プロセスガスを供給する第二プロセスガス導入機構のガス導出部が配設されている。たとえば、第二プロセスガス導入機構のガス導出部は、前記基体が移動する方向において、前記第二ターゲットTG41、TG42のうち、上手側に位置するターゲットTG41や下手側に位置するターゲットTG42に向けて、前記第二プロセスガスを吹きつける位置に配置される構成が好適であるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
【0075】
第二ターゲットについても、上述した1対の構成に限定されるものではない。前述した第一ターゲットと同様に、第二ターゲットは3本の円筒形ターゲットを並べて配置してもよいし、第二ターゲットとして4本以上の円筒形ターゲットを並べて配置しても構わない。つまり、本発明は、第二ターゲットが偶数本の円筒形ターゲットからなる場合にも、第二ターゲットが奇数本の円筒形ターゲットからなる場合にも適用することが可能である。
【0076】
図1には、第一成膜室SP1と第三成膜室SP3において、成膜は行わない仕様構成の製造装置を開示したが、本発明はこの構成に限定されない。たとえば、第一成膜室SP1には、第二成膜室SP2と同様の成膜手段を設けてもよい。第三成膜室SP3には、第四成膜室SP4と同様の成膜手段を設けても構わない。
【0077】
図1のスパッタ装置においては、6つのチャンバ(成膜入口室ENT、第1成膜室SP1、第2成膜室SP2、第3成膜室SP3、第4成膜室SP4、及び、成膜出口室EXT)には、連通した内部空間を減圧雰囲気とするため、複数の排気手段(P31、P332、P331、P352)が配置されている。すなわち、前記6つのチャンバ間には、たとえば、仕切りバルブ、ドアバルブ、差圧バルブなどが、隣接する位置にある成膜室どうしの間に一切設けられていない。これにより、上述した「複数のトレイ(たとえば、トレイ400、410、420)が連結して進行方向へ移動する構成」が実現できる。
【0078】
第三排気手段P31は、成膜入口室ENTの内部空間を主に排気する位置に接続されている。第四排気手段P332は、第二成膜室SP2の内部空間を主に排気する位置に接続されている。第五排気手段P331は、第三成膜室SP3の内部空間を主に排気する位置に接続されている。第六排気手段P352は、成膜出口室EXTの内部空間を主に排気する位置に接続されている。
【0079】
中でも、第四排気手段P332と第五排気手段P331は重要である。第四排気手段P332は、第一透明導電膜104(TCO1)を形成するための1対の回転ターゲットTG11、TG22からなる成膜手段が配置された第二成膜室SP2の内部空間を主に排気する。第五排気手段P331は、第二透明導電膜114(TCO2)を形成するための2対の回転ターゲットTG41、TG42からなる成膜手段が配置された第四成膜室SP4の内部空間に手前に位置する、第三成膜室SP3の内部空間を主に排気する。
【0080】
これにより、第四排気手段P332と第五排気手段P331は、第一透明導電膜104(TCO1)を形成するための2つのプロセスガス供給手段G21、G22から導入されたプロセスガス[水素含有量の多い第一透明導電膜104(TCO1)を形成するためのガス]が、後工程に位置する、水素含有量の少ない第二透明導電膜114(TCO2)の成膜に影響を及ぼすことがないように機能する。
【0081】
この後工程に位置する、水素含有量の少ない第二透明導電膜114(TCO2)の成膜に影響を及ぼすことがないように機能を助ける工夫が、上述した「3つのトレイ400、410、420が連結されて、第一透明導電膜104(TCO1)と第二透明導電膜114(TCO2)のスパッタ成膜が行われる仕組み」である。 本発明の製造装置においては、複数のトレイ(たとえば、トレイ400、410、420)が連結して進行方向へ移動することにより、トレイ同士の間に空隙が存在しないので、トレイ間の空隙を通じて、スパッタ粒子が基体101の非成膜面(たとえば、表面が成膜面の場合は裏面が非成膜面である)に到達する可能性が大幅に低減される。同様に、スパッタに供するプロセスガスの回り込みも抑制される。したがって、本発明によれば、第一透明導電膜104(TCO1)を形成した後に作製される、水素含有量の少ない第二透明導電膜114(TCO2)が安定に成膜可能とされている。
【0082】
このように、4つ成膜室(SP1→SP2→SP3→SP4)内を通過することにより、基体101の表面側[光入射面として用いられるa−Si膜(α)の上]には「水素含有量の多い第一透明導電膜104(TCO1)」が形成され、基体101の裏面側[非光入射面として用いられるa−Si膜(β)の上]には、水素含有量の少ない第二透明導電膜114(TCO2)が形成された基体101が得られる。4つ成膜室(SP1→SP2→SP3→SP4)内を通過した基体101は、成膜出口室EXTの内部空間にある地点Gまでトレイ400によって移動される。
【0083】
第一透明導電膜104(TCO1)と第二透明導電膜114(TCO2)が形成された基体101は、成膜出口室EXTに移動された後(地点G)、第四ドアバルブDV4の開閉動作を行い、成膜出口室EXTから搬送室Bへ移動される。
【0084】
搬送室Bへ移動された後(地点H)、第五ドアバルブDV5の開閉動作を行い、搬送室Bから取出室UL(地点I)へ移動される。その後、取出室ULの内部の圧力を大気圧としてから、第六ドアバルブDV6の開閉動作を行うことにより、第一透明導電膜104(TCO1)と第二透明導電膜114(TCO2)が形成された基体101は、スパッタ装置の外部へ搬出される。
【0085】
上述したように、
図1のスパッタ装置においては、前段に位置する第二成膜室SP2の内部空間に導入された水素を含むガスが、後段に位置する第四成膜室の内部空間へ流出することを防ぐために、第一透明導電膜104(TCO1)を形成するための1対の回転ターゲットTG11、TG22に対して、第四排気手段P332と第五排気手段P331を設ける配置を工夫した。
【0086】
また、
図1のスパッタ装置においては、前段に位置する第二成膜室SP2の内部空間に導入された水素を含むガスが、後段に位置する第四成膜室の内部空間へ流出することを防ぐために、基体101を載置して移動するトレイ401についても工夫した。すなわち、トレイの進行方向において、基体101を載置するトレイ400、410、420が連結されており、トレイ同士の間に空隙が存在しないようにトレイ400、410、420が連結された状態で移動可能とした。
【0087】
本発明は、このような排気手段とトレイに関する工夫により、基体の一方の面側から他方の面側(たとえば表面側から裏面側)へスパッタに供するプロセスガスの回り込みが大幅に抑制できるスパッタ装置をもたらす。
【0088】
また、
図1のスパッタ装置は、インライン式スパッタリング装置であるため、透明導電膜付き基板(および太陽電池)を高い生産性で製造することが可能であり、装置のフットプリントを小さくすることができるという利点を有する。さらに、インライン式スパッタリング装置の場合、同じ成膜条件で、均一な膜を製造するには適している。
【0089】
一方、一般的な枚葉式製造装置を用いる場合では、一枚の基板を処理する毎に、先に成膜された基板(成膜後基板)を成膜室から移動室(トランスファチャンバ)に取り出し、次に成膜される基板(成膜前基板)を移動室から成膜室に搬送する必要がある。また、成膜後基板を取り出した後に、成膜室内の残存ガスを除去することによって、成膜室内を清浄な状態にし、その後、成膜前基板を成膜室内に搬送する必要もある。しかしながら、この場合、残存ガスの残存成分が成膜室の壁部等に付着すること等に起因して、残存成分が成膜室から完全に除去されず、残存成分が後に成膜される膜の特性に影響を与える恐れがある。また、基板に膜を形成する際には、成膜室内においてプロセスガスの導入とプロセスガス導入の停止を行い、放電のON/OFFを行っている。この場合、一枚の基板を処理する毎に、下地膜に対する水の吸着量を制御する必要があり、プロセスが困難となり易い。
【0090】
これに対し、インライン式スパッタリング装置を用いる場合、基体101が仕込室Lから取出室ULへ向けて順方向にのみ移動しながら、連通する内部空間内を通過して、基体101の両面のa−Si膜(α、β)上に、それぞれ第一透明導電膜104(TCO1)と第二透明導電膜114(TCO2)が成膜されるため、下地膜であるa−Si膜に対する水の吸着量の制御がシンプルになるという利点がある。また、常に電源がONされているため、成膜に寄与する時間は100[%]であり、高い生産性と低いランニングコストを両立することができる。
【0091】
また、
図1のスパッタ装置においては、連続した閉空間を構成する成膜室(SP1、SP2、SP3、SP4)において、基体101の両面のa−Si膜(α、β)に、それぞれ第一透明導電膜104(TCO1)と第二透明導電膜114(TCO2)が成膜されるため、基体101が大気雰囲気に曝されることなく、真空状態を維持したまま、基体101の両面のa−Si膜(α、β)に、それぞれ第一透明導電膜104(TCO1)と第二透明導電膜114(TCO2)を形成することができる(真空一貫表裏成膜)。
【0092】
以下では、
図1のスパッタ装置を構成する、複数のプロセス室[仕込室L、加熱室H、成膜入口室ENT、第1成膜室SP1、第2成膜室SP2、第3成膜室SP3、第4成膜室SP4、成膜出口室EXT、搬送室B、取出室UL]におけるトレイ温度について検証した結果について説明する。
【0093】
図8は、実験例1〜実験例4におけるトレイ温度[℃]を表す一覧表であり、
図8において、「Pos.」はプロセス室の名称であり、「Time」はトレイが移動を開始してからの時間であり、たとえば、「240」は「トレイの移動開始から240秒後」を表している。実験例1〜4の欄に記載した数字は、その時間(Time)における(各プロセス室に配置された温調手段によって熱処理された)トレイの温度[℃]である。
図9は、
図8のトレイ温度[℃]を示すグラフである。
図9において、実線は実験例1を、短い点線は実験例2を、長い点線は実験例3を、一点鎖線は実験例4を、それぞれ示している。
【0094】
<実験例1>
実験例1の設定条件では、仕込室Lと加熱室Hで徐々に温度を加え、4つの成膜室(SP1〜SP4、特にSP3、SP4)で温度ピークをもたせる。このため、成膜室の内部空間へトレイ表面から水の放出が増大し、スパッタ時のプロセスガスへ悪影響を及ぼす虞がある。
【0095】
<実験例2>
実験例2の設定条件では、仕込室Lで加熱して温度ピークをもたせて、トレイ表面から水を脱気する。仕込室Lより後段に位置するプロセス室では、トレイ温度が単調減少させる。これにより、4つの成膜室(SP1〜SP4)では、温度ピーク時よりも低温状態をつくることができるので、水の放出や持ち込みを低減できる。
【0096】
<実験例3>
実験例3の設定条件では、仕込室Lと加熱室Hで加熱してトレイ表面から水を十分に脱気する。その後、成膜入口室ENTと4つの成膜室(SP1〜SP4)においても、高温保持時間を設けることにより、脱気効果を高める。
【0097】
<実験例4>
実験例4の設定条件では、仕込室Lは真空排気のみ行い、加熱室Hで加熱してトレイ表面から水を脱気する。その後、実験例3と同様に、成膜入口室ENTと4つの成膜室(SP1〜SP4)においても、高温保持時間を設けることにより、脱気効果を高める。裏面成膜時の温度調整で若干温度を上昇させているが、事前に加熱脱気できているため、放出ガスの影響は軽微である。
【0098】
図10は、透明導電膜の水素含有量のプロファイルを示す図(H
2O/Ar=0%の場合)である。
図11は、透明導電膜の水素含有量のプロファイルを示す図(H
2O/Ar=6%の場合)である。
図10及び
図11は、SIMS分析によって得られた結果である。SIMS分析に用いた測定器は、アルバックファイ製のSIMS6650である。測定条件として、1次イオン種はCs
+であり、加速電圧は5kVとした。
図10及び
図11において、横軸は透明導電膜の深さ(透明導電膜の表面から裏面の方向に透明導電膜を掘った時間)であり、左の縦軸は水素の含有量[atoms/cm
3]を、右の縦軸は2次イオン強度(16O、115In、28Si)を示している。
【0099】
図10及び
図11から、以下の点が明らかとなった。
図10の透明導電膜は、上述した第二透明導電膜114(TCO2)に相当し、その水素含有量が10
20[atoms/cm
3]台であった。
図11の透明導電膜は、上述した第一透明導電膜104(TCO1)に相当し、その水素含有量が10
21[atoms/cm
3]台であった。
【0100】
表1は、第一透明導電膜104(TCO1)と第二透明導電膜114(TCO2)を形成する際の代表的な成膜条件である。表1の項目欄において、「Front」は基体の表面側に成膜した第一透明導電膜104(TCO1)を、「Rear」は基体の裏面側に成膜した第二透明導電膜114(TCO2)を、それぞれ意味する。
【0102】
以上の結果より、本発明の透明導電膜付き基板は、基体の表面及び裏面に配されたa−Si膜上に、それぞれ第一透明導電膜及び第二透明導電膜を配してなる透明導電膜付き基板であって、前記第一透明導電膜に含まれる水素含有量C
H1[atoms/cm
3]、前記第二透明導電膜に含まれる水素含有量C
H2[atoms/cm
3]と定義した場合、C
H1>C
H2の関係式を満たすことにより形成できる。その際に、前記C
H1が10
21台であり、かつ、前記C
H2[atoms/cm
3]が10
20台である。
【0103】
表1のFront条件において、「水(H
2O)/Ar」の比率を変更し、第一透明導電膜に含まれる水素含有量C
H1[atoms/cm
3]を評価した結果を表2に示す。
【0105】
図3に示した構成からなる4種類の太陽電池を作製した。4種類の太陽電池は、基体の表面側(受光面側)に設ける透明導電膜[Front side TCO]と基体の裏面側に設ける透明導電膜[Rear side TCO]、の水素含有量が異なる組み合わせとした。その他の構成は同一とした。表3に示す実験例11〜実験例14が、4種類の太陽電池である。太陽電池の評価結果としては、曲線因子FFと発電効率Effとを評価した。
【0107】
曲線因子FFは、実験例14の数値で規格化すると、実験例11の場合が1.019、実験例12の場合が0.998、実験例13の場合が1.007であった。
発電効率Effは、実験例14の数値で規格化すると、実験例11の場合が1.044、実験例12の場合が1.032、実験例13の場合が1.010であった。
【0108】
以上の結果から、基体の表面側を光入射面として、前記第一透明導電膜に含まれる水素含有量C
H1[atoms/cm
3]、前記第二透明導電膜に含まれる水素含有量C
H2[atoms/cm
3]と定義した場合、C
H1>C
H2の関係式を満たす太陽電池(実験例11)は、曲線因子(F.F.:Fill Factor)や発電効率(Eff)の向上が図れることが分かった。なお、曲線因子は「最大出力(Pmax)を開放電圧(Voc)と短絡電流(Isc)との積で除した値」であり、発電効率は「開放電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、曲線因子(F.F.)の積」である。
【0109】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。