【解決手段】平均粒子径が0.1μm以上1.0μm以下であり、α−SiC粉末およびβ−SiC粉末からなる群から選ばれる少なくとも一種のSiC粉末と、平均粒子径が0.1μm未満であり、プラズマCVD法により気相合成されたSiC超微粉末と、平均粒子径が0.1μm以上2.0μm以下であるSi
粒子と、を混合する工程と、混合する工程で得られた混合物を焼結する工程と、を有し、混合する工程では、SiC超微粉末を、SiC粉末100質量部に対して2質量部超、20質量部未満混合し、Si
【発明を実施するための形態】
【0016】
<SiC焼結体の製造方法>
本実施形態のSiC焼結体の製造方法は、SiC粉末、SiC超微粉末、およびSi
3N
4粒子を混合する工程と、混合する工程で得られた混合物を成形し、得られた成形体を焼結する工程と、を有する。
【0017】
[SiC粉末]
本実施形態の製造方法では、平均粒子径が0.1μm以上1.0μm以下のSiC粉末を用いる。SiC粉末の平均粒子径が0.1μm以上1.0μm以下であると、焼結前の混合物を焼結させやすく、また、取り扱いが容易である。
【0018】
本実施形態において、SiC粉末の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて無作為に選んだ500個のSiC粉末の直径をそれぞれ測定し、得られた測定値の平均値を採用した。
【0019】
本実施形態の製造方法に用いるSiC粉末は、多数の結晶構造があることが知られている。SiC粉末の結晶構造としては、立方晶系で3C型(閃亜鉛鉱型)の結晶構造を有するもの、4H型、6H型等の六方晶系でウルツ鉱型の結晶構造を有するもの、菱面体晶系で15R型の結晶構造を有するもの、が挙げられる。
【0020】
このうち、3C型の結晶構造を有するSiC粉末を「β−SiC粉末」と称する。また、それ以外の結晶構造を有するSiC粉末全てを「α−SiC粉末」と称する。
【0021】
本実施形態の製造方法では、α−SiC粉末およびβ−SiC粉末からなる群から選ばれる少なくとも一種のSiC粉末を用いる。α−SiC粉末とβ−SiC粉末との両方を用いる場合、α−SiC粉末とβ−SiC粉末との混合比率は、特に制限されない。
【0022】
本実施形態の製造方法では、一般にシリカ還元法、アチソン法などによって製造されたSiC粉末を用いることができる。ただし、高純度が要求される用途(例えば、半導体製造プロセスで用いられる発熱体)に向けては、これらの製造方法に加えて酸処理などを施した高純度のSiC焼結体を使用する。
【0023】
[SiC超微粉末]
本実施形態の製造方法では、平均粒子径が0.1μm未満であるSiC超微粉末を用いる。SiC超微粉末の平均粒子径が0.1μm未満であると、SiC焼結体中の結晶粒界にSiC超微粉末が多く存在しやすく、焼結前の混合物を焼結させやすい。その結果、相対密度が高いSiC焼結体を得ることができる。
【0024】
本実施形態において、SiC焼結体の相対密度は、アルキメデス法を用いてみかけ密度を測定し、SiCの理論密度との比により求められる。
【0025】
SiC超微粉末の平均粒子径は、0.08μm以下が好ましく、0.07μm以下がより好ましく、0.06μmがさらに好ましい。
【0026】
SiC超微粉末の平均粒子径は、0.01μm以上が好ましく、0.02μm以上がより好ましく、0.03μm以上がさらに好ましい。
【0027】
本実施形態の製造方法において、SiC超微粉末の平均粒子径の上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。
【0028】
本実施形態において、SiC超微粉末の平均粒子径は、SiC粉末の平均粒子径と同様の方法で測定される。
【0029】
本実施形態の製造方法に用いるSiC超微粉末は、上述のSiC粉末と平均粒子径の範囲が異なり、それ以外の点はSiC粉末と同様である。
【0030】
本実施形態の製造方法におけるSiC超微粉末の混合量は、SiC粉末100質量部に対して2質量部超であることが好ましい。SiC超微粉末の混合量が2質量部超であると、SiC焼結体の相対密度が十分高くなる。
【0031】
SiC超微粉末の混合量は、SiC粉末100質量部に対して20質量部未満である。SiC超微粉末の混合量が20質量部以上であると、SiC超微粉末が凝集しやすい。これにより、SiC粉末やSi
3N
4粒子の粒子同士の間の空隙にSiC超微粉末が入りにくくなる。発明者らが検討した結果、焼結前の混合物におけるSiC超微粉末の充填率が低下することがわかった。したがって、焼結後のSiC焼結体の相対密度が低下してしまう。
【0032】
SiC超微粉末の混合量は、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
【0033】
SiC超微粉末の混合量は、2質量部超であり、3質量部以上がより好ましい。
【0034】
本実施形態の製造方法において、SiC超微粉末の混合量の上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。
【0035】
本実施形態の製造方法では、プラズマCVD法により気相合成されたSiC超微粉末を用いる。
【0036】
SiC超微粉末の合成条件は特に限定されないが、非酸化性雰囲気のプラズマ中にシラン化合物またはハロゲン化ケイ素と炭化水素の原料ガスとを導入し、反応系の圧力を1気圧未満から13.3Paの範囲で制御しつつ気相反応させることが好ましい。
【0037】
本実施形態の製造方法に用いるSiC超微粉末の結晶相は、特に制限されないが、3C型の結晶構造を有するSiC超微粉末(β−SiC超微粉末)、非晶質、またはこれらの混合相であることが好ましい。これにより、焼結前の混合物の焼結性が向上し、電気的な特性および機械的な特性も向上する。
【0038】
本実施形態の製造方法においては、SiC超微粉末の結晶相の中でもβ−SiC超微粉末を用いることがより好ましい。β−SiC超微粉末は、アスペクト比が小さく分散性に優れている。また、β−SiC超微粉末は、電気伝導性に優れている。そのため、β−SiC超微粉末を少量混合するだけで、SiC焼結体の平均体積抵抗率を小さくすることができる。
【0039】
本実施形態において、SiC焼結体の体積抵抗率は、SiC焼結体を四探針測定法により測定した値を採用した。また、SiC焼結体の平均体積抵抗率は、SiC焼結体の面内における任意の5箇所について得られた5つの測定値の平均値を採用した。
【0040】
[Si
3N
4粒子]
本実施形態の製造方法では、SiC粉末およびSiC超微粉末と共にSi
3N
4粒子を混合することにより、窒素が固溶したSiC焼結体を得る。窒素が固溶したSiC焼結体中では、自由電子が増加するため、窒素が固溶していないSiC焼結体と比べてSiC焼結体の平均体積抵抗率が小さくなる。
【0041】
本実施形態の製造方法では、混合するSi
3N
4粒子の平均粒子径を調整することにより、SiC焼結体中に窒素を均一に分布させることができる。これにより、SiC焼結体の体積抵抗率は、測定位置によって変化しにくい。その結果、SiC焼結体を形成材料として用いた発熱体では、面内の温度を均一に制御しやすい。
【0042】
本実施形態の製造方法では、平均粒子径が0.1μm以上2.0μm以下のSi
3N
4粒子を用いる。Si
3N
4粒子の平均粒子径が0.1μm以上であると、Si
3N
4粒子を入手しやすく、また取り扱いやすい。また、Si
3N
4粒子の平均粒子径が2.0μm以下であると、SiC焼結体中に窒素を均一に分布させることができる。
【0043】
Si
3N
4粒子の平均粒子径は、0.15μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましい。
【0044】
本実施形態の製造方法において、Si
3N
4粒子の平均粒子径の上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。
【0045】
本実施形態において、Si
3N
4粒子の平均粒子径は、SiC粉末の平均粒子径と同様の方法で測定される。
【0046】
本実施形態の製造方法において、Si
3N
4粒子の混合量は、SiC粉末100質量部に対して0.05質量部以上3質量部以下である。Si
3N
4粒子の混合量が0.05質量部以上であると、SiC焼結体の平均体積抵抗率を十分低下させることができる。また、Si
3N
4粒子の混合量が3質量部以下であると、SiC焼結体中にSi
3N
4粒子を十分固溶させることができる。また、Si
3N
4粒子の混合量が3質量部以下であると、SiC焼結体の相対密度が十分高くなる。また、3質量部を超えると、固溶できないSi
3N
4粒子の昇華により形成される空隙が大きくなり、相対密度が低下する。
【0047】
Si
3N
4粒子の混合量は、0.1質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましい。
【0048】
Si
3N
4粒子の混合量は、2質量部以下がより好ましく、1.5質量部以下がさらに好ましい。
【0049】
本実施形態の製造方法において、Si
3N
4粒子の混合量の上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。
【0050】
[その他の材料]
本実施形態の製造方法では、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて上述のSiC粉末、SiC超微粉末およびSi
3N
4粒子以外の材料を混合してもよい。このような材料としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどを成形バインダー、ステアリン酸塩などの分散剤などが挙げられる。
【0051】
[混合する工程]
本実施形態の混合する工程では、上述のSiC粉末、SiC超微粉末、およびSi
3N
4粒子を混合する。これらの混合方法は特に限定されないが、2流粒子衝突型の粉砕混合装置による粉砕混合であることが好ましい。これにより、上述のSiC粉末、SiC超微粉末、およびSi
3N
4粒子が均一に分散されるとともに、得られた混合物の粒度分布を狭くすることができる。混合物の粒度分布が狭くなった結果、次の焼成する工程において、焼結体粒子の粗大化を抑制することができる。
【0052】
[焼結する工程]
本実施形態の焼結する工程では、まず、混合する工程で得られた混合物を成形する。混合物の成形方法は特に限定されないが、一軸プレス機を用いた成形方法が好ましい。例えば、混合物は一軸プレス機により円盤状に成形される。
【0053】
次に、混合物を成形した成形体を焼結する。成形体の焼結方法は特に限定されない。例えば、成形体の焼結方法としては、ホットプレス容器を用いた加圧焼結(ホットプレス焼結)、常圧焼結、HIP(熱間等方圧加圧法)を用いた焼結などの従来の方法が挙げられる。成形体の焼結方法の中でも、ホットプレス焼結が好ましい。成形体のホットプレス焼結では、相対密度の高いSiC焼結体が得られる。
【0054】
ホットプレス焼結では、具体的に、成形体をホットプレス容器に詰め、加圧しながら非酸化性雰囲気下で焼結する。
【0055】
上述のホットプレス焼結において、焼結温度は2400℃未満であり、2200℃以上2300℃以下が好ましい。焼結温度が2200℃以上であると、相対密度が十分高いSiC焼結体が得られる。また、焼結温度が2400℃未満、特に2300℃以下であると、焼結体粒子の粗大化が抑制され、β−SiCがα−SiCに相転移しない。そのため、得られるSiC焼結体の体積抵抗率は、測定位置によって変化しにくい。
【0056】
上述のホットプレス焼結は、焼結温度が2200℃以上2300℃以下、20Mpa以上の加圧下で行われる。
【0057】
上述のホットプレス焼結において、昇温速度が速いと、成形体の焼結時間が十分短く、SiC焼結体の製造コストが低く抑えられる傾向がある。また、上述の昇温速度が遅いと、成形体の焼結時におけるクラックの発生を抑制し、良質なSiC焼結体が得られる傾向がある。このような傾向に基づいて、上述のホットプレス焼結における昇温速度を決定するとよい。
【0058】
上述のホットプレス焼結において、圧力は20MPa以上であることが好ましい。これにより、相対密度の高いSiC焼結体が得られる。
【0059】
上述のホットプレス焼結において、非酸化性雰囲気はアルゴン雰囲気であることが好ましい。
【0060】
本実施形態によれば、高密度、かつ測定位置によって体積抵抗率が変化しにくいSiC焼結体を製造し得るSiC焼結体の製造方法が提供される。
【0061】
[SiC焼結体]
上述の製造方法を用いることにより、本実施形態のSiC焼結体を得ることができる。
【0062】
本実施形態のSiC焼結体には、製造時にSiC粉末およびSiC超微粉末と共にSi
3N
4粒子を混合することにより、窒素が固溶している。
【0063】
本実施形態のSiC焼結体における窒素原子の含有量は、40ppm以上が好ましい。また、SiC焼結体における窒素原子の含有量は、5000ppm以下が好ましく、1000ppm以下がより好ましく、150ppm未満がさらに好ましい。
【0064】
本実施形態のSiC焼結体において、窒素原子の含有量の上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。
【0065】
本実施形態のSiC焼結体における窒素原子の含有量は、混合するSi
3N
4粒子の混合量を調整することにより上述の範囲内に制御することができる。
【0066】
窒素が固溶したSiC焼結体はn型半導体となるため、本実施形態のSiC焼結体は、平均体積抵抗率が小さい。本実施形態のSiC焼結体の平均体積抵抗率は、0.001Ω・cm以上100Ω・cm以下であることが好ましい。本実施形態のSiC焼結体を発熱体の形成材料として用いる場合には、SiC焼結体の平均体積抵抗率は、10Ω・cm以下であることが好ましい。
【0067】
本実施形態のSiC焼結体には、製造時に混合するSi
3N
4粒子の平均粒子径を調整することにより、窒素が均一に分布している。これにより、SiC焼結体の体積抵抗率は、測定位置によって変化しにくい。
【0068】
ここで、本実施形態のSiC焼結体において、SiC焼結体の平均体積抵抗率をR
aveとする。また、SiC焼結体の最大体積抵抗率をR
maxとする。また、SiC焼結体の最小体積抵抗率をR
minとする。
【0069】
本実施形態のSiC焼結体において、R
max/R
aveは、1.5以下であり、1.3以下が好ましく、1.1以下がより好ましい。R
min/R
aveは0.7以上であり、0.8以上が好ましく、0.9以上がより好ましい。R
max/R
aveが1.5以下で、R
min/R
aveが0.7以上の両方を満たすと、SiC焼結体の体積抵抗率は、測定位置によって変化しにくいと言える。その結果、SiC焼結体を形成材料として用いた発熱体では、面内の温度を均一に制御しやすい。
【0070】
本実施形態のSiC焼結体の製造時に平均粒子径が0.1μm未満であり、プラズマCVD法により気相合成されたSiC超微粉末を混合することにより、得られるSiC焼結体の相対密度が高くなる。本実施形態のSiC焼結体における相対密度は98%以上であることが好ましい。本実施形態のSiC焼結体における相対密度が98%以上であると、SiC焼結体を形成材料として用いた発熱体の機械的強度が十分となる。
【0071】
本実施形態によれば、高密度、かつ測定位置によって体積抵抗率が変化しにくいSiC焼結体が提供される。
【0072】
[発熱体]
本実施形態のSiC焼結体は、従来公知の発熱体の形成材料として用いることができる。本実施形態のSiC焼結体は、測定位置によって体積抵抗率が変化しにくいので、例えば半導体製造プロセスで用いるヒータの発熱体として好適に用いることができる。
【0073】
本実施形態のSiC焼結体を形成材料とする発熱体は、機械的強度が高く、かつ面内の温度を均一に制御しやすい。
【実施例】
【0074】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0075】
(SiC超微粉末の平均粒子径)
SiC超微粉末の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて無作為に選んだ500個のSiC超微粉末の直径をそれぞれ測定し、得られた測定値の平均値を採用した。
【0076】
(SiC焼結体の平均体積抵抗率)
SiC焼結体の体積抵抗率は、SiC焼結体を四探針測定法(株式会社三菱ケミカルアナリテック製 ロレスタ−GX MCP-T700)により測定した値とした。また、SiC焼結体の平均体積抵抗率(R
ave)は、SiC焼結体の面内における任意の5箇所について得られた5つの測定値の平均値とした。
【0077】
さらに、得られた測定値のうち、SiC焼結体の最大体積抵抗率R
maxと、SiC焼結体の最小体積抵抗率R
minとを用い、R
max/R
aveおよびR
min/R
aveを算出した。
【0078】
(SiC焼結体の相対密度)
SiC焼結体の相対密度は、アルキメデス法を用いてみかけ密度を測定し、SiC理論密度との比により求めた値とした。
【0079】
(SiC焼結体の窒素含有量)
SiC焼結体の窒素含有量は、酸素窒素分析装置 TC−436(LECO社製)を使用して、不活性ガス溶融・赤外線吸収法にて測定した。
【0080】
<SiC焼結体の製造>
[実施例1〜10、比較例1〜7]
まず、SiC超微粉末をプラズマCVD法により気相合成した。具体的には、原料ガスとして水素化ケイ素(SiH
4)とエチレン(C
2H
4)とを用い、高周波により励起されたアルゴン熱プラズマ中、反応系の圧力が10.665Paの条件下で、平均粒子径が0.01μmであるSiC超微粉末を合成した。
【0081】
気相合成したSiC超微粉末、市販のα−SiC粉末(スーペリア・グラファイト社製 α−SiC 2500)(平均粒子径0.63μm)、市販のβ−SiC粉末(スーペリア・グラファイト社製 β−SiC 2500)(平均粒子径0.63μm)、および市販のSi
3N
4粒子を表1に示した割合で、2流粒子衝突型の粉砕混合装置により粉砕混合した。なお、表1に示す各成分の添加量は、α−SiCとβ−SiCとの合計量を100質量部としたときの値である。
【0082】
得られた混合物を一軸プレス機にて、成形圧力20MPaで成形し、直径400mm、厚み12mmの円盤状の成形体を得た。この成形体を黒鉛製のホットプレス容器に詰め、一軸加圧40MPa、アルゴン雰囲気中、2300℃の条件下で焼結した。このようにして、円盤状のSiC焼結体を得た。
【0083】
【表1】
【0084】
表2に、実施例1〜10、比較例1〜7のSiC焼結体のR
ave、R
max/R
ave、R
min/R
ave、相対密度、窒素含有量を示した。
【0085】
表2に示す評価は、以下の基準で行った。
○…R
max/R
aveが1.5以下、かつR
min/R
aveが0.7以上かつ、相対密度が98%以上
×…上記以外
【0086】
【表2】
【0087】
表2に示すように、本発明の製造方法を適用した実施例1〜10のSiC焼結体においては、R
max/R
aveとR
min/R
aveとの両方が1.5以下であった。このことから、実施例1〜10のSiC焼結体においては、測定位置によって体積抵抗率が変化しにくいと言える。
【0088】
また、実施例1〜10のSiC焼結体においては、相対密度が98%以上であった。このことから、実施例1〜10のSiC焼結体は、高密度であると言える。
【0089】
実施例1〜10のSiC焼結体は、Si
3N
4粒子を含むことにより、窒素が固溶している。これにより、実施例1〜10のSiC焼結体中では自由電子が増加し、窒素が固溶していない比較例4のSiC焼結体と比べて、R
aveが小さくなったと考えられる。
【0090】
実施例1のSiC焼結体は、比較例1および比較例2のSiC焼結体よりも混合されるSiC超微粉末の量が多かった。これにより、実施例1における焼結前の混合物が焼結しやすくなり、比較例1および比較例2のSiC焼結体と比べて、相対密度が高くなったと考えられる。
【0091】
実施例1のSiC焼結体は、比較例5のSiC焼結体よりも混合されるSiC超微粉末の量が多く、かつ、Si
3N
4粒子の量が少なかった。これにより、実施例1における焼結前の混合物が焼結しやすくなり、比較例5のSiC焼結体と比べて、相対密度が高くなったと考えられる。
【0092】
実施例3のSiC焼結体は、比較例3のSiC焼結体よりも混合されるSiC超微粉末の量が多く、かつ、Si
3N
4粒子の平均粒子径が小さかった。これにより、実施例3における焼結前の混合物が焼結しやすくなり、比較例3のSiC焼結体と比べて、相対密度が高くなったと考えられる。したがって、実施例3のSiC焼結体は、緻密で空隙が少ない焼結体であると考えられる。
【0093】
また、実施例3のSiC焼結体の窒素含有量は、比較例3のSiC焼結体と同等であるにもかかわらず、実施例3のSiC焼結体のR
aveは、比較例3のSiC焼結体のR
aveと比べて小さかった。これは、実施例3のSiC焼結体中に空隙が少なく、SiC焼結体中の自由電子が動きやすくなったためであると考えられる。
【0094】
実施例6、実施例8および実施例9と、比較例3とを比較する。実施例6、実施例8および実施例9では、SiC超微粉末の添加量が2質量部超20質量部未満であり、かつ、Si
3N
4粒子の平均粒子径が0.1μm以上2.0μm以下の範囲であった。このようなSiC焼結体あれば、SiC焼結体の相対密度も高く、体積抵抗率のばらつきが小さいことが分かった。一方、比較例3では、SiC超微粉末の添加量が2質量部以下であり、かつ、Si
3N
4粒子の平均粒子径が2.0μmを超えていた。このようなSiC焼結体では、SiC焼結体の相対密度の低下が認められた。この理由の一つとしては、SiC超微粉末の添加量が少なすぎるために、SiC焼結体を緻密化できないためであると考えられる。別の理由としては、用いたSi
3N
4粒子の平均粒子径が大きすぎるために、SiC焼結体を緻密化できないためであると考えられる。
【0095】
また、実施例2のSiC焼結体は、実施例1のSiC焼結体と同量のSi
3N
4粒子を含んでいるにもかかわらず、SiC焼結体中の窒素含有量が多かった。これは、混合されるSiC粉末全量に対するβ−SiC粉末の割合が多いほど、SiC焼結体中に窒素が固溶しやすいためであると考えられる。
【0096】
実施例7および実施例8は、比較例6に対し、SiC超微粉末の添加量を変更した例である。実施例7および実施例8のようにSiC超微粉末の添加量が20質量部未満であると、相対密度も高く、体積抵抗率のばらつきが小さいことが分かった。一方、比較例6のようにSiC超微粉末の添加量が20質量部以上であるとR
max/R
aveが5を超え、さらに相対密度の低下が認められた。比較例6では、SiC超微粉末の添加量が多くなりすぎたために、粒子の充填率が低下したと考えられる。その結果、比較例6では、体積抵抗率のばらつきの拡大と、相対密度の低下をもたらしたと考えられる。
【0097】
実施例1から実施例10を比較すると、α−SiCが多い実施例では、SiC焼結体の平均体積抵抗率が高い。したがって、α−SiCとβ−SiCの混合量を任意に変更することにより、SiC焼結体の平均体積抵抗率を所望の値に調整できることが分かった。
【0098】
比較例7は実施例2の焼結温度を2400℃以上に上昇させた例である。実施例2では、SiC焼結体の体積抵抗率のばらつきが小さい。一方、実施例2と比較し、比較例7では、SiC焼結体の体積抵抗率のばらつきが大きい。これはβ相からα相に相転移したSiCがSiC焼結体中に不均一に存在するためであると考えられる。
【0099】
実施例5は、比較例5に対し、SiC超微粉末の添加量およびSi
3N
4粒子の添加量を変えた例である。実施例5では、SiC超微粉末の添加量が2質量部超20質量部未満であり、かつ、Si
3N
4粒子の添加量が3質量部以下であった。このような実施例5では、SiC焼結体の相対密度が高いことが分かった。一方、比較例5では、SiC超微粉末の添加量が2質量部超20質量部未満であるものの、Si
3N
4粒子の添加量が3質量部を超えていた。このような比較例5は実施例5よりも相対密度が低いことが分かった。この理由の一つとしては、Si
3N
4粒子の添加量が原料粉のα−SiCとβ−SiCとの合計量100質量部に対して3質量部を超えると、Si
3N
4粒子が十分に固溶できないためであると考えられる。このような固溶できないSi
3N
4粒子は、焼結時に昇華し、空隙が形成されてしまう。したがって、このような焼結体は、相対密度が低下すると考えられる。また、焼結体における窒素原子の含有量が5000ppm以下である実施例5は、焼結体における窒素原子の含有量が5000ppmを超える比較例5と比べて、高密度の焼結体を得ることができた。
【0100】
以上の結果から、本発明が有用であることが確かめられた。