【発明を実施するための形態】
【0012】
<化合物>
本実施形態は、下記一般式(1)で表される化合物である。
本実施形態の化合物は、活性カーボネート構造と、半導体特性を有する基とを含む。このため、本実施形態の化合物はアミノ化基板の修飾と、半導体特性基の導入とを同時に行うことができる。即ち、本発明の化合物を用いることにより、例えば配線形成下地膜を形成する工程を省略し、有機半導体下地膜を形成することができる。
【0013】
【化4】
[式中、X
01は半導体特性を示す基である。Yは2価の連結基である。]
【0014】
{X
01}
一般式(1)中、X
01は半導体特性を示す基である。
本明細書において「半導体特性」とは、光、電圧など外部刺激によりその導電性が変化することを指し、特にゲート電圧によりドレイン−ソース電流が変化する特性を意味する。
【0015】
本実施形態において、X
01としての半導体特性を示す基は、半導体特性を示す化合物から、1つの水素原子を除去した基が好ましい。半導体特性を示す化合物としては、下記の化合物が挙げられる。
p型半導体としてペンタセン、ルブレン、テトラセンなどアセン類、ベンゾジチオフェン(BDT)・ベンゾチエノベンゾチオフェン(BTBT)・ジナフトチエノチオフェン(DNTT)・ジナフトベンゾジチオフェン(DNBDT)のようなチオフェン類がある。
n型半導体としてはペリレンジイミド(PTCDI)などのペリレン類、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)などのキノン類、C60のようなフラーレン類がある。
n型半導体として、フラーレン類を用いる場合には、フラーレンにエステル構造が含まれる分子を前駆体に用いることで導入できる。
【0016】
これら半導体特性を有する化合物に、アルキル基やアルキルシリル基など可溶性構造を導入した化合物を用いてもよい。このような化合物としては、例えばTIPSペンタセン(6,13−Bis(triisopropylsilylethynyl)pentacene)のような可溶性ペンタセンが挙げられる。
【0017】
{Y}
一般式(1)中、Yは2価の連結基である。本実施形態においてYとしては特に限定されないが、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適なものとして挙げられる。
【0018】
・置換基を有していてもよい2価の炭化水素基
置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である場合、該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基が好ましい。前記脂肪族炭化水素基としては、直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
上記のなかでも直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数が1〜20の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であることが好ましく、1〜15の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基がより好ましく、1〜10の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基がさらに好ましい。
【0019】
・ヘテロ原子を含む2価の連結基
ヘテロ原子を含む2価の連結基である場合、該連結基として好ましいものとして、−O−、−C(=O)−O−、−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−、−NH−、−NH−C(=NH)−、−S−、−S(=O)
2−、−S(=O)
2−O−、を含む連結基が好ましい。
Yとしては、エステル結合[−C(=O)−O−]と、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基を組合せた基であることが好ましい。
【0020】
本実施形態において、一般式(1)は、下記一般式(1)−1であることが好ましい。
【0021】
【化5】
[一般式(1)−1中、Y
01は炭素数1〜20のアルキレン基であり、Y
02は、−O−、−C(=O)−O−、−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−、−NH−、−NH−C(=NH)−、−S−、−S(=O)
2−、−S(=O)
2−O−、を含む連結基であり、X
01は半導体特性を示す基である。]
【0022】
一般式(1)−1中、Y
01は前記Yで例示したアルキレン基と同様の基が挙げられるが、中でも直鎖状のアルキレン基であることが好ましく、炭素数4〜15のアルキレン基であることがより好ましい。
【0023】
本実施形態において、一般式(1)−1は、下記一般式(1)−1−1であることが好ましい。
【0024】
【化6】
[式中、X
01は半導体特性を示す基である。nは1から20の整数である。]
【0025】
{n}
一般式(1)−1−1中、nは1〜20の整数であり、1〜15が好ましく、5〜10がより好ましく、7又は10が特に好ましい。
【0026】
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体例を記載する。下記の具体例において、nは1〜20の整数のいずれをもとりうるが、1〜15が好ましく、5〜10がより好ましく、7又は10が特に好ましい。
【0029】
≪化合物の製造方法≫
本実施形態の一般式(1)で表される化合物は、下記の方法により製造することができる。
【0030】
[工程1]
まず、半導体特性を示す化合物にアセチル基を導入する。次に、下記の反応式に示すように前記アセチル基を脱保護して水酸基を生じさせる。
【0031】
【化9】
[式中、X
01は半導体特性を示す化合物から水素原子を1つ除いた基である。]
【0032】
[工程2]
次に、前記工程1で得られた化合物に、式(HOOC−Y’)で表される化合物を反応させる。
【0033】
【化10】
[式中、X
01は半導体特性を示す化合物から水素原子を1つ除いた基であり、Yは2価の連結基であり、Y’は前記Yに水素原子を1つ付加した基である。]
【0034】
[工程3]
次に、前記工程2で得られた化合物にジ(N−スクシンイミジル)カーボネートを反応させ、本実施形態の化合物を得る。
【0035】
【化11】
[式中、X
01は半導体特性を示す化合物から水素原子を1つ除いた基であり、Yは2価の連結基である。]
【0036】
上記工程1〜3において、用いられる溶媒としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどが挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上混合してもよい。
【0037】
<パターン形成用基板>
本発明の第2の実施形態のパターン形成用基板は、前記本発明の第1の態様の化合物を用いて化学修飾されている。つまり、基板上に半導体特性を有する官能基が導入されている。このため、導入した半導体特性基と母骨格が類似する半導体材料分散媒に分散又は溶解させた有機半導体材料を好適に配置することができる。
【0038】
基材としては、特に限定されず、ガラス、石英ガラス、シリコンウェハ、プラスチック板、金属板等が好ましく挙げられる。また、これらの基板上に、金属薄膜が形成された基板を用いてもよい。
【0039】
基材の形状としては、特に限定されず、平面、曲面、または部分的に曲面を有する平面が好ましく、平面がより好ましい。また基材の面積も特に限定されず、従来の塗布方法が適用できる限りの大きさの面を有する基材を採用できる。また、第1の実施形態の化合物を用いて化学修飾された表面は平面上の基材の片面に形成するのが好ましい。
【0040】
基板の表面を修飾する際は、基板表面を前処理しておくことが好ましい。前処理方法としては、ピラニア溶液での前処理や、UV−オゾンクリーナーによる前処理が好ましい。
【0041】
<カップリング剤>
本発明の第3の実施形態は、第1の実施形態の化合物からなるカップリング剤である。
本実施形態のカップリング剤によれば、半導体特性を有する基を含む化合物からなるため、対象物の表面に半導体特性基を導入することができる。
【0042】
<パターン形成方法1>
本発明の第4の実施形態は、対象物の被処理面にパターンを形成するパターン形成方法であって、対象物の被処理面の少なくとも一部をアミノ化し、アミノ化面を形成する第1工程と、本発明の第1の態様の化合物を用いて、前記アミノ化面を化学修飾する第2工程と、を備えるパターン形成方法である。
本実施形態によれば、対象物の表面に、半導体特性を有する基を導入したパターンを形成することができる。
【0043】
[第1工程]
まず、対象物の被処理面の少なくとも一部をアミノ化し、アミノ化面を製造する。本工程は、例えば、下記に示すように水酸基を持つ基板に、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等を作用させることにより、アミノ基を持つ基板を製造する。
【0045】
[第2工程]
第2工程は、本発明の第1の態様の化合物を用いて、前記第1工程で製造したアミノ化面を化学修飾する工程である。本発明の第1の態様の化合物は、活性カーボネート構造と半導体特性を有する基とを含むため、アミノ化基板の修飾と、半導体特性を有する基の導入とを同時に行うことができる。
【0046】
対象物としては、特に限定されず、例えば、金属、結晶質材料(例えば単結晶質、多結晶質および部分結晶質材料)、非晶質材料、導体、半導体、絶縁体、光学素子、塗装基板、繊維、ガラス、セラミックス、ゼオライト、プラスチック、熱硬化性および熱可塑性材料(例えば、場合によってドープされた:ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリスチレン、セルロースポリマー、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、樹脂、ポリエステル、ポリフェニレンなど)、フィルム、薄膜、箔、が挙げられる。
【0047】
本実施形態のパターン形成方法においては、可撓性の基板の上に電子デバイス用の回路パターンを形成することが好ましい。
【0048】
本実施形態において、対象物となる可撓性の基板としては、例えば樹脂フィルムやステンレス鋼などの箔(フォイル)を用いることができる。例えば、樹脂フィルムは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、などの材料を用いることができる。
【0049】
ここで可撓性とは、基板に自重程度の力を加えても線断したり破断したりすることはなく、該基板を撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、上記可撓性は、該基板の材質、大きさ、厚さ、又は温度などの環境、等に応じて変わる。なお、基板としては、1枚の帯状の基板を用いても構わないが、複数の単位基板を接続して帯状に形成される構成としても構わない。
【0050】
対象物の被処理面を化学修飾する方法としては、前記一般式(1)中の、カーボネート基が、基板と結合する方法であれば特に限定されず、浸漬法、化学処理法等の公知の方法を用いることができる。
【0051】
本工程における化学修飾の一例を示す。
本工程における化学修飾は、例えば下記に示すように前工程で製造したアミノ基を持つ基板に、前記一般式(1)で表される化合物を反応させることにより行うことができる。
【0052】
【化13】
[式中、X
01は半導体特性を示す基である。nは1から20の整数である。]
【0053】
<パターン形成方法2>
本発明の第5の態様は、対象物の被処理面にパターンを形成する方法であって、光応答性基を有する化合物を含む第1の光分解性カップリング剤を用いて、前記被処理面の少なくとも一部をアミノ化する工程Aと、工程Aの後、半導体特性を有する基を含む化合物を含有する第1のカップリング剤を用いて、前記被処理面に半導体特性を有する基を導入する工程Bと、工程Bの後、前記本発明の第1の態様の化合物を含む第2のカップリング剤を用いて、半導体特性を有する基を導入する工程Cと、を備えるパターン形成方法である。
パターン形成方法2によれば、半導体特性を有する基を高密度で導入することができる。
【0054】
[工程A]
本工程は、光応答性基を有する化合物を含む第1の光分解性カップリング剤を用いて、前記被処理面の少なくとも一部をアミノ化する工程である。
【0055】
{前処理工程}
工程Aの前に、対象物の表面を修飾する前に、対象物の表面を前処理しておくことが好ましい。前処理方法としては、ピラニア溶液での前処理や、UV−オゾンクリーナーによる前処理が好ましい。対象物は、前記本発明の第4の態様のパターン形成方法において説明した対象者と同様のものを使用できる。
【0056】
工程Aのアミノ化は、光応答性基を有する化合物を含む第1の光分解性カップリング剤が、基板と結合する方法であれば特に限定されず、浸漬法、化学処理法等の公知の方法を用いることができる。
【0057】
工程Aで用いる光分解性シランカップリング剤が含有する光応答性基を有する化合物としては、被処理面を撥水性に改質できる材料であれば特に限定されない。本実施形態においては、後述する化合物A又は化合物A1を用いることが好ましく、後述する含フッ素化合物A−1を用いることがより好ましい。
含フッ素化合物A−1を用いて化学修飾することにより、被処理面の水に対する接触角を増加させ、撥水性に改質することができる。
【0058】
工程Aでは、第1の光分解性カップリング剤を基板と結合させた後、被処理面に所定パターンの光を露光することにより、露光部では分解性基が解離し、親水性能を有するアミノ基が生成する。
【0059】
露光時に照射する光は紫外線が好ましい。照射する光は、200nm〜450nmの範囲に含まれる波長を有する光を含むことが好ましく、320nm〜450nmの範囲に含まれる波長を有する光を含むことがより好ましい。また、波長が365nmの光を含む光を照射することも好ましい。これらの波長を有する光は、光分解性基を効率よく分解することができる。光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ナトリウムランプ;窒素等の気体レーザー、有機色素溶液の液体レーザー、無機単結晶に希土類イオンを含有させた固体レーザー等が挙げられる。
また、単色光が得られるレーザー以外の光源としては、広帯域の線スペクトル、連続スペクトルをバンドパスフィルター、カットオフフィルター等の光学フィルターを使用して取出した特定波長の光を使用してもよい。一度に大きな面積を照射することができることから、光源としては高圧水銀ランプまたは超高圧水銀ランプが好ましい。
本実施形態のパターン形成方法においては、上記の範囲で任意に光を照射することができるが、特に回路パターンに対応した分布の光エネルギーを照射することが好ましい。
【0060】
本工程において、化学修飾された被処理面に所定パターンの光を照射することにより、光分解基が解離し、アミノ基が生じる。このパターンは回路パターンであることが好ましく、可撓性基板の上に回路パターンを形成することが好ましい。
【0061】
本工程における化学修飾の一例を示す。
【0064】
[工程B]
本工程は前記工程Aの後、半導体特性を有する基を含む化合物を含有する第1のカップリング剤を用いて、前記被処理面に半導体特性を有する基を導入する工程である。工程Bは、例えば後述する化合物Bは、工程Aにおいて残存する未修飾の水酸基と反応し、対象物表面に半導体特性を有する基を導入することができる。第1のカップリング剤が含有する半導体特性を有する基を含む化合物は、後述する化合物Bを用いることが好ましい。
【0065】
本工程における化学修飾の一例を示す。
【0067】
[工程C]
本工程は、前記工程Bの後、本発明の第1の態様の化合物を含む第2のカップリング剤を用いて、半導体特性を有する基を導入する工程である。工程Cに関する説明は、前記本発明の第4の態様のパターン形成方法の第2工程の説明と同様である。
【0068】
本工程における化学修飾の一例を示す。
【0070】
本実施形態によれば、半導体特性を有する基を含む第1のカップリング剤と、第2のカップリングを多段階修飾し、基板表面に半導体特性を有する基を導入することができる。基板表面に半導体特性を有する基を導入した後、さらに後述する任意工程Dを備えることが好ましい。工程Dは、形成したパターン上にさらにパターン形成材料を配置させる工程である。工程Dにおいてパターン形成材料をより配置し易くするためには、半導体特性基が高密度で導入されていることが好ましい。また、半導体特性基の導入後の表面粗さが低減されていることが好ましい。
本実施形態によれば、多段階で半導体特性を有する基を導入しているため、半導体特性基を高密度で導入することができる。
また、工程Cで用いる第2のカップリング剤は、本発明の第1の態様の化合物を用いている。第1の態様の化合物は、リンカー構造であるアルキレン鎖の長さを調整することにより、半導体特性基導入後の表面粗さを低減できる。具体的には、上記の例を用いて説明すると、「n1=3+n」となるようにアルキレン鎖を調整することにより、表面の凹凸を揃えることができ、表面粗さを低減できる。
【0071】
本発明の第4の態様のパターン形成方法、第5の態様のパターン形成方法は、さらに工程Dを備えることが好ましい。即ち、第4の態様のパターン形成方法は、前記第1工程、第2工程及び工程Dをこの順で備えることが好ましい、第5の態様のパターン形成方法は、前記工程A、工程B、工程C及び工程Dをこの順で備えることが好ましい。
【0072】
[工程D]
本工程は、パターンを形成した領域にパターン形成材料を配置させる工程である。
【0073】
パターン形成材料としては、金、銀、銅やこれらの合金などの粒子を所定の溶媒に分散させた導電材料(金属溶液)、又は、上記した金属を含む前駆体溶液、絶縁体(樹脂)、半導体、有機EL発光材などを所定の溶媒に分散させた電子材料、レジスト液などが挙げられる。中でもパターン形成材料として電子材料を配置させることが好ましい。
【0074】
本実施形態のパターン形成方法においては、パターン形成材料は、導電材料、半導体材料、又は絶縁材料であることが好ましく、中でも半導体材料を好適に配置できる。
【0075】
導電材料としては、導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液からなるパターン形成材料が挙げられる。導電性微粒子として、例えば、金、銀、銅、パラジウム、ニッケル及びITOのうちのいずれかを含有する金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。
【0076】
これらの導電性微粒子は、分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。
【0077】
分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法(インクジェット法)への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0078】
半導体材料としては、分散媒に分散又は溶解させた分散液からなる有機半導体材料を用いることができる。有機半導体材料としては、その骨格が共役二重結合から構成されるπ電子共役系の低分子材料または高分子材料が望ましい。代表的には、ペンタセン等のアセン類、ベンゾチエノベンゾチオフェン等のチエノアセン類等の可溶性の低分子材料、ポリチオフェン、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリチオフェン誘導体等の可溶性の高分子材料が挙げられる。また、熱処理により上述の半導体に変化する可溶性の前駆体材料を用いてもよく、例えば、ペンタセン前駆体としてスルフィニルアセトアミドペンタセン等が挙げられる。なお、有機半導体材料に限られず、無機半導体材料を用いてもよい。
【0079】
絶縁材料としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)、ポリシラザン系SOGや、シリケート系SOG(Spin on Glass)、アルコキシシリケート系SOG、シロキサンポリマーに代表されるSi−CH
3結合を有するSiO
2等を分散媒に分散又は溶解させた分散液からなる絶縁材料が挙げられる。
【0080】
工程Dにおいて配置するパターン形成材料は、工程Cにおいて導入する半導体特性を有する基と母骨格が同一又は類似の化合物を含むパターン形成材料を用いることが好ましい。
【0081】
本工程において、パターン形成材料を配置させる方法としては、液滴吐出法、インクジェット法、スピンコート法、ロールコート法、スロットコート法、ディップコート法等を適用することができる。
【0082】
以下、本実施形態に用いることができる各材料について説明する。
【0083】
≪化合物A≫
化合物Aは、下記一般式(A)で表される化合物である。
【0084】
【化18】
[一般式(A)中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、R
1は水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を表し、R
01、R
02はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭化水素基であり、nは0以上の整数を表す。]
【0085】
前記一般式(A)中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基である。Xで表されるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子等を挙げることができるが、Xはハロゲン原子よりもアルコキシ基であることが好ましい。nは整数を表し、出発原料の入手の容易さの点から、1〜20の整数であることが好ましく、2〜15の整数であることがより好ましい。
【0086】
前記一般式(A)中、R
1は水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基である。
R
1のアルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
環状のアルキル基としては、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
本実施形態においては、R
1は水素原子、メチル基、エチル基又はイソプロピル基であることが好ましく、メチル基又はイソプロピル基であることがより好ましい。
【0087】
前記一般式(A)中、R
01、R
02はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭化水素基である。
本明細書において、「置換基を有していてもよい」と記載する場合、水素原子(−H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(−CH
2−)を2価の基で置換する場合との両方を含むものとする。
R
01、R
02の炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
該直鎖状のアルキル基は、炭素数が1〜20であることが好ましい。
R
01、R
02の炭化水素基としてのアルキル基が、炭素数が1〜5の短鎖アルキル基であると、濡れ性が良好となり、洗浄性が高く吸着した異物を除去できる場合がある。
R
01、R
02の炭化水素基としてのアルキル基が、炭素数が10以上の長鎖アルキル基であると、化合物1を撥水性の化合物とすることができる。
【0088】
前記一般式(A)中、R
01、R
02が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ヘテロ原子を含む置換基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが最も好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
ヘテロ原子を含む置換基としては、−O−、−C(=O)−O−、−S−、−S(=O)
2−、−S(=O)
2−O−が好ましい。
【0089】
前記一般式(A)中、nは0以上の整数である。本実施形態においては、nは3以上が好ましい。また、nは10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。
上記上限値と上記下限値は任意に組み合わせることができる。
【0090】
一般式(A)で表される化合物(A)は、下記一般式(A)−1で表される含フッ素化合物(A)−1であることが好ましい。
【0091】
【化19】
[一般式(A)−1中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、R
1は水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を表し、R
f1、R
f2はそれぞれ独立にフッ素化アルコキシ基であって、nは0以上の整数を表す。]
【0092】
前記一般式(A)−1中、X、R
1、nに関する説明は前記同様である。
【0093】
前記一般式(A)−1中、R
f1、R
f2はそれぞれ独立にフッ素化アルコキシ基である。
前記一般式(A)−1中、R
f1、R
f2のフッ素化アルコキシ基は、好ましくは炭素数3以上のアルコキシ基であって、部分的にフッ素化されたものであってもよく、パーフルオロアルコキシ基であってもよい。本実施形態においては、部分的にフッ素化されたフッ素化アルコキシ基であることが好ましい。
【0094】
本実施形態において、R
f1、R
f2のフッ素化アルコキシ基としては、例えば、−O−(CH
2)
nf1−(C
nf2F
2nf2+1)で表される基が挙げられる。前記n
f1は0以上の整数であり、n
f2は0以上の整数である。R
f1、R
f2のフッ素化アルコキシ基は同一であってもよく、異なっていてもよいが、合成の容易さの観点から同一であることが好ましい。
本実施形態において、R
f1、R
f2のフッ素化アルコキシ基は長鎖フルオロアルキル鎖が好ましい。
本実施形態において、n
f1は0〜10であることが好ましく、0〜5であることがより好ましく、0〜3であることが特に好ましく、3であることが極めて好ましい。
また、本実施形態において、n
f2は1〜15であることが好ましく、4〜15であることがより好ましく、6〜12であることが特に好ましく、7〜10であることが極めて好ましい。
【0095】
以下に一般式(A)で表される化合物及び一般式(A)−1で表される含フッ素化合物の具体例を示す。
【0097】
≪化合物A1≫
化合物A1は、下記一般式(A1)で表される化合物である。
【0098】
【化21】
[一般式(A1)中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、R
1は水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を表し、R
01、R
02はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭化水素基であって、nは0以上の整数を表す。]
【0099】
一般式(A1)中、X、R
1、R
01、R
02、nについての説明は前記一般式(A1)中におけるR
1、R
01、R
02、nについての説明と同様である。
【0100】
一般式(A1)で表される化合物(A1)は、下記一般式(A1)−1で表される含フッ素化合物(A1)−1であることが好ましい。
【0101】
【化22】
[一般式(A1)−1中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、R
1は水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を表し、R
f1、R
f2はそれぞれ独立にフッ素化アルコキシ基であって、nは0以上の整数を表す。]
【0102】
一般式(A1)−1中、X、R
1、R
f1、R
f2、nについての説明は前記一般式(A1)−1中におけるR
1、R
f1、R
f2、nについての説明と同様である。
【0103】
以下に、一般式(A1)で表される化合物及び一般式(A1)−1で表される含フッ素化合物(A1)−1の好ましい具体例を以下に示す。
【0105】
≪化合物B≫
化合物Bは、下記一般式(B)で表される化合物である。
【0106】
【化24】
[一般式(B)中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、R
1は水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を表し、R
12はチオフェン骨格を有する置換基である。nは0以上の整数を表す。]
【0107】
上記式(B)中、X、R
1、nについての説明は前記一般式(A)中におけるX、R
1、nについての説明と同様である。
R
12のチオフェン骨格を有する置換基としては、下記(R
12−1)〜(R
12−3)のいずれかで表される基が挙げられる。
【0108】
【化25】
[(R
12−1)〜(R
12−3)中、波線部は、一般式(B)において、R
12が結合する炭素原子との結合手を示す。]
【0109】
以下に一般式(B)で表される化合物の具体例を示す。
【0111】
化合物Bは、下記一般式(B1)で表される化合物(B1)であってもよい。
【0112】
【化27】
[一般式(B1)中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、R
1は水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を表し、R
12はチオフェン骨格を有する置換基である。Lは(−NH−)及びメチレン基を含む2価の連結基である。]
【0113】
上記式(B1)中、X、R
1についての説明は前記一般式(A)中におけるX、R
1についての説明と同様である。
R
12のチオフェン骨格を有する置換基としては、前記(R
12−1)〜(R
12−3)のいずれかで表される基が挙げられる。
【0114】
化合物(B1)は、前記一般式(1)で表される化合物にシラン化合物を反応させ、活性カーボネート構造を変化させることにより得ることができる。
前記一般式(1)で表される化合物は、前述のとおり、アミノ化基板の修飾と半導体特性基の導入とを同時に行うことができる。一般式(1)で表される化合物を構造の一部を変化させることにより、水酸基を有する対象物の表面に半導体特性を有する基を導入する材料とすることができる。
【0115】
また、化合物(B1)は、下記一般式(B1)−1で表される化合物(B1)−1であることが好ましい。
【0116】
【化28】
[一般式(B1)−1中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、R
1は水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を表し、R
12はチオフェン骨格を有する置換基である。nは0以上の整数を表す。]
【0117】
上記式(B1)−1中、X、R
1、nについての説明は前記一般式(A)中におけるX、R
1、nについての説明と同様である。
R
12のチオフェン骨格を有する置換基としては、前記(R
12−1)〜(R
12−3)のいずれかで表される基が挙げられる。
【0118】
化合物(B1)の好ましい具体例を下記に記載する。下記の化合物(B1)の具体例において、nは1〜20の整数のいずれをもとりうるが、1〜15が好ましく、5〜10がより好ましく、7又は10が特に好ましい。
【0121】
以下、図面を参照して、本実施形態のパターン形成方法を説明する。
本実施形態のパターン形成方法において、いわゆるロール・ツー・ロールプロセスに対応する可撓性の基板を用いる場合には、
図1に示すような、ロール・ツー・ロール装置である基板処理装置100を用いてパターンを形成してもよい。
図1に基板処理装置100の構成を示す。
【0122】
図1に示すように、基板処理装置100は、帯状の基板(例えば、帯状のフィルム部材)Sを供給する基板供給部2と、基板Sの表面(被処理面)Saに対して処理を行う基板処理部3と、基板Sを回収する基板回収部4と、第1の実施形態の化合物の塗布部6と、露光部7と、マスク8と、パターン材料塗布部9と、これらの各部を制御する制御部CONTと、を有している。基板処理部3は、基板供給部2から基板Sが送り出されてから、基板回収部4によって基板Sが回収されるまでの間に、基板Sの表面に各種処理を実行できる。
この基板処理装置100は、基板S上に例えば有機EL素子、液晶表示素子等の表示素子(電子デバイス)を形成する場合に好適に用いることができる。
【0123】
なお、
図1は、所望のパターン光を生成するためにフォトマスクを用いる方式を図示したものであるが、本実施形態は、フォトマスクを用いないマスクレス露光方式にも好適に適用することができる。フォトマスクを用いずにパターン光を生成するマスクレス露光方式としては、DMD等の空間光変調素子を用いる方法、レーザービームプリンターのようにスポット光を走査する方式等が挙げられる。
【0124】
本実施形態のパターン形成方法においては、
図1に示すようにXYZ座標系を設定し、以下では適宜このXYZ座標系を用いて説明を行う。XYZ座標系は、例えば、水平面に沿ってX軸及びY軸が設定され、鉛直方向に沿って上向きにZ軸が設定される。また、基板処理装置100は、全体としてX軸に沿って、そのマイナス側(−側)からプラス側(+側)へ基板Sを搬送する。その際、帯状の基板Sの幅方向(短尺方向)は、Y軸方向に設定される。
【0125】
基板処理装置100において処理対象となる基板Sとしては、例えば樹脂フィルムやステンレス鋼などの箔(フォイル)を用いることができる。例えば、樹脂フィルムは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、などの材料を用いることができる。
【0126】
基板Sは、例えば200℃程度の熱を受けても寸法が変わらないように熱膨張係数が小さい方が好ましい。例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合して熱膨張係数を小さくすることができる。無機フィラーの例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ケイ素などが挙げられる。また、基板Sはフロート法等で製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単体、或いはその極薄ガラスに上記樹脂フィルムやアルミ箔を貼り合わせた積層体であっても良い。
【0127】
基板Sの幅方向(短尺方向)の寸法は例えば1m〜2m程度に形成されており、長さ方向(長尺方向)の寸法は例えば10m以上に形成されている。勿論、この寸法は一例に過ぎず、これに限られることは無い。例えば基板SのY方向の寸法が50cm以下であっても構わないし、2m以上であっても構わない。また、基板SのX方向の寸法が10m以下であっても構わない。
【0128】
基板Sは、可撓性を有するように形成されていることが好ましい。ここで可撓性とは、基板に自重程度の力を加えても線断したり破断したりすることはなく、該基板を撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、上記可撓性は、該基板の材質、大きさ、厚さ、又は温度などの環境、等に応じて変わる。なお、基板Sとしては、1枚の帯状の基板を用いても構わないが、複数の単位基板を接続して帯状に形成される構成としても構わない。
【0129】
基板供給部2は、例えばロール状に巻かれた基板Sを基板処理部3へ送り出して供給する。この場合、基板供給部2には、基板Sを巻きつける軸部や当該軸部を回転させる回転駆動装置などが設けられる。この他、例えばロール状に巻かれた状態の基板Sを覆うカバー部などが設けられた構成であっても構わない。なお、基板供給部2は、ロール状に巻かれた基板Sを送り出す機構に限定されず、帯状の基板Sをその長さ方向に順次送り出す機構(例えばニップ式の駆動ローラ等)を含むものであればよい。
【0130】
基板回収部4は、基板処理装置100を通過した基板Sを例えばロール状に巻きとって回収する。基板回収部4には、基板供給部2と同様に、基板Sを巻きつけるための軸部や当該軸部を回転させる回転駆動源、回収した基板Sを覆うカバー部などが設けられている。なお、基板処理部3において基板Sがパネル状に切断される場合などには例えば基板Sを重ねた状態に回収するなど、ロール状に巻いた状態とは異なる状態で基板Sを回収する構成であっても構わない。
【0131】
基板処理部3は、基板供給部2から供給される基板Sを基板回収部4へ搬送すると共に、搬送の過程で基板Sの被処理面Saに対して第1の実施形態の化合物を用いた化学修飾をする工程、化学修飾された被処理面に所定パターンの光を照射する工程、及びパターン形成材料を配置させる工程を行う。基板処理部3は、基板Sの被処理面Saに対して第1の実施形態の化合物を塗布する化合物塗布部6と、光を照射する露光部7と、マスク8と、パターン材料塗布部9と、加工処理の形態に対応した条件で基板Sを送る駆動ローラR等を含む搬送装置20とを有している。
【0132】
化合物塗布部6と、パターン材料塗布部9は、液滴塗布装置(例えば、液滴吐出型塗布装置、インクジェット型塗布装置、スピンコート型塗布装置、ロールコート型塗布装置、スロットコート型塗布装置など)が挙げられる。
【0133】
これらの各装置は、基板Sの搬送経路に沿って適宜設けられ、フレキシブル・ディスプレイのパネル等が、所謂ロール・ツー・ロール方式で生産可能となっている。本実施形態では、露光部7が設けられるものとし、その前後の工程(感光層形成工程、感光層現像工程等)を担う装置も必要に応じてインライン化して設けられる。
【実施例】
【0134】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0135】
<化合物の合成例1>
・ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(BTBT)の合成
300mLナスフラスコにo−クロロベンズアルデヒド10.0g(71.1mmol)、硫化水素ナトリウム水和物7.98g(142mmol)、NMP(N−メチルピロリドン)を100mL加え、80℃で1時間、180℃で1時間撹拌した。その後、反応溶液を室温近くまで冷まし、飽和塩化アンモニウム水溶液100mLに注いだ。これを氷浴で冷却し、生じた茶色い沈殿物を吸引ろ過した。残渣を水とアセトンで洗い、薄黄色固体を得た。この固体をクロロホルムに溶解し、カラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製し、濃縮した。得られた黄色固体を再結晶(トルエン120mL、60℃)により精製、吸引ろ過、真空乾燥し、薄黄色固体を得た。
【0136】
収量・収率 1.32g(5.48mmol,15%)
R
f0.83(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)
1H−NMR(CDCl
3/TMS,400MHz)δ=7.39(ddd,J=7.6Hz,7.6Hz,1.2Hz,2H),7.44(ddd,J=7.6Hz,7.6Hz,1.2Hz,2H),7.87(dd,J=7.2Hz,0.8Hz,2H),7.90(dd,J=7.6Hz,0.8Hz,2H)
【0137】
【化31】
【0138】
・[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチエン−2−イル)エタン−1−オンの合成
300mLナスフラスコに[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(BTBT)2.01g(8.36mmol)を加え、ジクロロメタン200mLで溶解した。−20℃(氷、エタノール、液体窒素)に冷却後、塩化アルミニウム4.27g(32.0mmol)を加え、塩化アセチル2.62g(33.4mmol)をゆっくり滴下し、1時間撹拌した。その後反応溶液を水100mLに注ぎ、ジクロロメタン100mLを加えた。水層と有機層に分離し、有機層を水(50mL×6)、食塩水(100mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過、濃縮した。再結晶(トルエン300mL、70℃)により単離精製、真空乾燥し、薄黄色固体を得た。
【0139】
収量・収率1.93g(6.85mmol,82%)
R
f0.63(クロロホルム)
1H−NMR(CDCl
3/TMS,400MHz)δ=2.72(s,3H),7.44〜7.52(m,2H),7.93〜7.96(m,3H),8.05〜8.08(m,1H),8.56(m,1H)
IR(KBr)1674cm
−1
【0140】
【化32】
【0141】
・[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチエン−2−イル)エタン−1−オールの合成
100mLナスフラスコに[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチエン−2−イル)エタン−1−オン0.111g(0.393mmol)、THF(テトラヒドロフラン)30mL、メタノール15mLを入れ、氷浴中でテトラ水素化ホウ素ナトリウム0.0297g(0.786mmol:2eq)を少しずつ加え30分間撹拌した。その後、室温で30分間撹拌した。反応溶液を濃縮し、クロロホルム60mLで溶解し、水20mL、2N塩酸5mLを加え、水層と有機層に分離した。さらにクロロホルム(20mL×2)で抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮、真空乾燥を行い白色固体を得た。
【0142】
収量・収率 0.111g(0.390mmol,99%)
R
f0.33(クロロホルム)
1H−NMR(CDCl
3/TMS,400MHz)δ=1.60 (d,3H,J=6.5),1.90(d,1H,J=3.2),5.06〜5.11(m,1H),7.26〜7.49(m,3H),7.86〜7.96(m,4H)
IR(KBr)3347cm
−1
【0143】
【化33】
【0144】
・9−(1−(ベンゾ[b]ベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]チオフェン−2−イル)エトキシ)−9−オキソノナン酸の合成
窒素雰囲気下、200mL二口ナスフラスコにEDC・HCl(1−(3−ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩)0.543g(2.83mmol,1.5eq)、dryTHF50mL、アゼライン酸0.768g(4.24mmol,2.0eq)を加え、氷浴中で10分間撹拌した。[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチエン−2−イル)エタン−1−オール0.523g(1.84mmol,1.0eq)、DMAP(N,N−ジメチル−4−アミノピリジン)0.352g(2.89mmol,1.5eq)をdry−THF50mLに溶かし、ゆっくり滴下した。滴下後、氷浴を外し、室温で16時間撹拌した。反応溶液を濃縮し、酢酸エチル200mLに溶解、水100mL、2N塩酸を加え水層を酸性にし、水層と有機層を分離した。さらに酢酸エチル(100mL×2)で抽出し、有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液(100mL×2)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=2:1,φ=4.3cm,h=15cm)で精製、濃縮、真空乾燥を行い白色固体を得た。
【0145】
収量:0.271g(0.596mmol)
収率:32%
1H−NMR(400MHz,CDCl
3/TMS)
δ=1.25−1.31(6H,m),1.62−1.63(9H,m),2.32−2.37(4H,m),6.01−6.06 (1H,q,J=6.4Hz) 7.39−7.49,7.85−7.93(4H,m)
IR(KBr)
1692cm
−1,1730cm
−1,2919cm
−1
【0146】
【化34】
【0147】
・1−(1−(ベンゾ[b]ベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]チオフェン−2−イル)エチル)9−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)ノナンジオエートの合成
窒素雰囲気下、100mL二口ナスフラスコに9−(1−(ベンゾ[b]ベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]チオフェン−2−イル)エトキシ)−9−オキソノナン酸0.126g(0.28mmol,1.0eq.)を入れdryアセトン75mLで溶解し、トリエチルアミン0.085g(0.84mmol,3.0eq.)、ジ(N−スクシンイミジル)カーボネート0.215g(0.84mmol,3.0eq)を加えた。その後、室温で1時間撹拌した。反応溶液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(クロロホルム、φ=3.0cm,h=15cm)で単離精製、濃縮、真空乾燥を行い白色固体(本実施形態の一般式(1)−1−1で表される化合物)を得た。
【0148】
〈収量〉0.123g(0.224mmol)
〈収率〉80%(Rf=0.66,ヘキサン:酢酸エチル=2:1)
1H−NMR(CDCl
3/TMS)400MHz
δ=1.25−1.43(m,13H),1.63−1.73(m,7H),2.33−2.38 (t,2H,J=8.0Hz),2.55−2.59(t,2H,J=7.6Hz),2.82−2.84(m,4H),6.01−6.06(q,1H,J=6.4Hz),7.41−7.47(m,3H),7.87−7.93(m,4H)
【0149】
【化35】
【0150】
・1−(benzo[b]benzo[4,5]thieno[2,3−d]thiophen−2−yl)ethyl 3,3−dimethoxy−9−oxo−2,8−dioxa−7−aza−3−silaheptadecan−17−oateの合成
20 mL二口ナスフラスコに原料150 mg ( 0.272 mmol, 1.0 eq. ), dry−THF 3 mL,
(3−aminopropyl)tirmethoxysilane 51.5 mL (0.412 mmol, 1.5 eq.), トリエチルアミン150 mL( 0.677 mmol, 2.5 eq.)を加え、窒素雰囲気下、室温で16時間攪拌した。その後、濃縮を行いカラムクロマトグラフィー(hexane : ethyl acetate: tetramethyl orthosilicate =1 : 1: 0.02, f=2.0 cm, h=8 cm)、濃縮、真空乾燥(40℃)を行い白色固体を得た。
【0151】
〈結果〉
収量 126 mg (0.205 mmol)
収量 75%
Rf値 0.50 (1:1=酢酸エチル:ヘキサン)
1H−NMR (CDCl
3 / TMS) 400 MHz
δ=0.54−0.58 (2H, t, J=8.0 Hz), 1.21 (7H, m), 1.53−1.56 (12H, m), 2.00−2.05 (2H, t, J=8.0 Hz),
2.26−2.30 (2H, t, J=6.0 Hz), 3.13−3.18 (2H, q, J=6.3 Hz), 3.48−3.58 (10H, m), 5.53 (1H, br), 5.94−6.00 (1H, q, J=1.5Hz), 7.19−7.42 (3H, m), 7.78−7.87 (4H, m)
【0152】
【化36】
[式中、「BTBT」は、前記(R
12−1)で表される基である。]
【0153】
<化合物の合成例2>
・12−(1−(ベンゾ[b]ベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]チオフェン−2−イル)エトキシ)−12−オキソドデカノイックアシッドの合成
窒素雰囲気下、100mL二口ナスフラスコにEDC・HCl0.051g(0.26mmol:1.5eq)、dryTHF10mL、ドデカン二酸0.41g(1.8mmol:10eq)を加え、氷浴中で10分間撹拌した。[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチエン−2−イル)エタン−1−オール0.050g(0.18mmol:1eq)、DMAP0.032g(0.26mmol:1.5eq)をdry−THF10mLに溶かし、ゆっくり滴下した。滴下後、氷浴を外し、室温で16時間撹拌した。反応溶液を濃縮し、酢酸エチル30mLに溶解、H
2O30mL、2N塩酸5mLを加え、水層と有機層に分離した。さらに酢酸エチル(30mL×2)で抽出し、有機層を飽和食塩水(30mL×2)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。50℃に過熱したエタノールを加え、吸引ろ過し、残渣を回収した。これを真空乾燥し、白色固体を得た。
【0154】
収量・収率 0.046g(0.093mmol,35%)
R
f0.30(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)
1H−NMR(acetone−d6/TMS)400MHz
δ=1.26〜1.29(m,12H),1.53〜1.63(m,7H),2.24(t,2H,J=7.4),2.38(t,2H,J=7.4),6.05(q,1H,J=6.5),7.48〜7.59(m,3H),7.98〜8.13(m,4H)
IR(KBr)1698cm
−1,1731cm
−1,2919cm
【0155】
・1−(1−(ベンゾ[b]ベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]チオフェン−2−イル)エチル)N−スクシンイミジルドデカンジオエートの合成
窒素雰囲気下、50mL二口ナスフラスコに12−(1−(ベンゾ[b]ベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]チオフェン−2−イル)エトキシ)−12−オキソドデカノイックアシッド0.034g(0.069mmol:1eq)を入れdry−アセトン15mLで溶解し、トリエチルアミン0.021g(0.21mmol:3eq)、ジ(N−スクシンイミジル)カーボネート0.053g(0.21mmol:3eq)を加えた。その後、室温で1時間撹拌した。反応溶液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で単離精製し、濃縮、真空乾燥を行い白色固体(本実施形態の一般式(1)−1−1で表される化合物)を得た。
【0156】
収量・収率 0.040g(0.067mmol,98%)
R
f0.53(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)
1H−NMR(CDCl
3/TMS,400MHz)δ=1.24〜1.35 (m,12H),1.62〜1.74(m,7H),2.35(t,2H,J=7.6),2.56(t,2H,J=7.6),2.82(s,4H),6.04(q,1H,J=6.5),7.39〜7.49(m,3H),7.85〜7.93(m,4H)
【0157】
IR(KBr)1724,1742,1784,1814cm
−1
元素分析
計算値C,64.73;H,5.94;N,2.36
実測値C,64.72;H,5.81;N,2.36
【0158】
【化37】