【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24〜29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「安定な有機ラジカルの蓄電および光電変換材料への応用」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
前記非共有電子対を有する窒素含有化合物が式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)、(2e)、(2f)で表される化合物、又はポリアミン化合物(ただし、式(2a)〜(2f)で表すことができるポリアミン化合物を除く)である、請求項1または2に記載の錯体。
【化2】
(式(2a)、(2b)及び(2d)中、R
1は水素原子、アルキル基、環状飽和炭化水素基、アリール基、又はアラルキル基を示し、式(2a)及び(2d)で表される化合物が複数のR
1を有する場合、各R
1は互いに同一でも異なっていてもよい。式(2c)及び(2d)中、R
2は水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、スルフィド基、チオール基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホノ基、又はシリル基を示し、式(2c)及び(2d)で表される化合物が複数のR
2を有する場合、各R
2は互いに同一でも異なっていてもよい。式(2b)中、R
3は、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアミノ基を表し、式(2b)で表される化合物が複数のR
3を有する場合、各R
3は互いに同一でも異なっていてもよい。
なお、R
1、R
2又はR
3で表されるアルキル基、環状飽和炭化水素基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、又はアルコキシカルボニル基を構成する炭素原子は、アミノ基、ヒドロキシ基、又はカルボキシ基で置換されていてもよい。
式(2d)の環Aは、NR
1単位及びCR
22単位が環の外周に存在する限り、単環でも縮合環でもよく、飽和複素環、不飽和複素環、芳香族複素環のいずれでもよい(ただし、式(2c)になることはない)。mはNR
1単位の数を表しnはCR
22単位の数を表し、複数のNR
1単位及びCR
22単位を有する場合、NR
1単位とCR
22単位の並び方は任意である。NR
1単位とNR
1単位の間、NR
1単位とCR
22単位の間、又はCR
22単位とCR
22単位の間には、酸素原子又は硫黄原子が挿入されていてもよい。
mは1以上4以下の整数であり、nは、2以上7以下の整数である)
前記式(1)中のXが、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、(ヘテロ)アリール基、アラルキル基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、又はシリル基を表す請求項1〜4のいずれかに記載の錯体。
請求項8に記載の層から前記非共有電子対を有する窒素含有化合物を除去して得られる、式(1)で示されるトリオキソトリアンギュレン系中性ラジカル化合物を含む層。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記トリオキソトリアンギュレン系中性ラジカル化合物は、溶剤に溶解しない。そのため、該化合物を基板上に積層するには、該化合物を基板に蒸着させたり、該化合物の分散液を塗布したりする必要があった。しかし、蒸着は、その作業が煩雑であったり、層形成速度が遅いなどのプロセス上の欠点があり、また他の機能性材料と共存する複合成分層の形成が困難であって応用性に劣る。一方、分散液を塗布する場合は、分散安定性や層中の化合物の分散均一性に問題があり、層物性向上の面で不利である。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、トリオキソトリアンギュレン系中性ラジカル化合物を簡便かつ均一に層化できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、トリオキソトリアンギュレン系中性ラジカル化合物は特定の化合物によって錯体化できる事、得られた錯体は溶剤に対する溶解性を有するものになる事、そして該錯体を含む溶液を塗布すると、錯体を含む層が得られるだけでなく、該層から前記特定の化合物の除去が可能であり、トリオキソトリアンギュレン系中性ラジカル化合物の層が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の発明を含む。
[1] 式(1)で表されるトリオキソトリアンギュレン系中性ラジカル化合物と、
非共有電子対を有する窒素含有化合物から構成される錯体。
【化1】
(式中、Xは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、(ヘテロ)アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、スルフィド基、チオール基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホノ基、又はシリル基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。これらXは置換基を有していてもよい。さらに基Xを介して分子間結合が形成されることでトリオキソトリアンギュレン系中性ラジカル化合物が多量化してもよい。実線と破線からなる二重結合は非局在化した二重結合を意味しており、式中、●で表される不対電子は、この非局在化二重結合中に存在する。)
[2] 非共有電子対を有する窒素含有化合物が、窒素原子の隣接位にカルボニル基をもたない化合物である、[1]に記載の錯体。
[3] 前記非共有電子対を有する窒素含有化合物が式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)、(2e)、(2f)で表される化合物、又はポリアミン化合物(ただし、式(2a)〜(2f)で表すことができるポリアミン化合物を除く)である、[1]または[2]に記載の錯体。
【化2】
(式(2a)、(2b)及び(2d)中、R
1は水素原子、アルキル基、環状飽和炭化水素基、アリール基、又はアラルキル基を示し、式(2a)及び(2d)で表される化合物が複数のR
1を有する場合、各R
1は互いに同一でも異なっていてもよい。式(2c)及び(2d)中、R
2は水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、スルフィド基、チオール基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホノ基、又はシリル基を示し、式(2c)及び(2d)で表される化合物が複数のR
2を有する場合、各R
2は互いに同一でも異なっていてもよい。式(2b)中、R
3は、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアミノ基を表し、式(2b)で表される化合物が複数のR
3を有する場合、各R
3は互いに同一でも異なっていてもよい。
なお、R
1、R
2又はR
3で表されるアルキル基、環状飽和炭化水素基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、又はアルコキシカルボニル基を構成する炭素原子は、アミノ基、ヒドロキシ基、又はカルボキシ基で置換されていてもよい。
式(2d)の環Aは、NR
1単位及びCR
22単位が環の外周に存在する限り、単環でも縮合環でもよく、飽和複素環、不飽和複素環、芳香族複素環のいずれでもよい(ただし、式(2c)になることはない)。mはNR
1単位の数を表しnはCR
22単位の数を表し、複数のNR
1単位及びCR
22単位を有する場合、NR
1単位とCR
22単位の並び方は任意である。NR
1単位とNR
1単位の間、NR
1単位とCR
22単位の間、又はCR
22単位とCR
22単位の間には、酸素原子又は硫黄原子が挿入されていてもよい。
mは1以上4以下の整数であり、nは、2以上7以下の整数である)
[4] 前記非共有電子対を有する窒素含有化合物の沸点が−50〜200℃である[1]〜[3]のいずれかに記載の錯体。
[5] 前記式(1)中のXが、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、(ヘテロ)アリール基、アラルキル基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、又はシリル基を表す[1]〜[4]のいずれかに記載の錯体。
[6] 前記式(1)中のXが、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基、又は炭素数6以下のアリール基である[1]〜[5]のいずれかに記載の錯体。
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載の錯体が溶解している溶液。
[8] [1]〜[6]のいずれかに記載の錯体を含む層。
[9] [8]に記載の層から前記非共有電子対を有する窒素含有化合物を除去して得られる、式(1)で示されるトリオキソトリアンギュレン系中性ラジカル化合物を含む層。
【発明の効果】
【0007】
本発明のトリオキソトリアンギュレン系中性ラジカル化合物の錯体は溶剤に可溶であり、塗布層の形成が可能である。また得られた錯体層をラジカル化合物層に戻すことができ、均一なラジカル化合物層の簡便な形成手段を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.錯体
1.1 トリオキソトリアンギュレン系中性ラジカル化合物
本発明の錯体は、トリオキソトリアンギュレン系中性ラジカル化合物と、非共有電子対を有する窒素含有化合物とから構成され、前記ラジカル化合物は、下記式(1)で表される。なお、以下、トリオキソトリアンギュレンを「TOT」と表記し、置換基Xが3つ結合したトリオキソトリアンギュレンについては「X
3TOT」の様に表記する場合がある(Xの内容は、置換基の具体例に応じて変化する)。本明細書で「錯体」とは、窒素含有化合物の非共有電子対がTOT中性ラジカル化合物に配位して複合体を形成した状態を意味する。
【化3】
(式中、Xは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、(ヘテロ)アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、スルフィド基、チオール基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホノ基、又はシリル基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。これらXは置換基を有していてもよい。さらに基Xを介して分子間結合が形成されることでトリオキソトリアンギュレン系中性ラジカル化合物(A)が多量化してもよい。実線と破線からなる二重結合は非局在化した二重結合を意味しており、式中、●で表される不対電子は、この非局在化二重結合中に存在する。)
【0010】
前記ハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が含まれ、臭素原子が好ましい。
【0011】
前記アルキル基には、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基などの炭素数が1〜20程度、好ましくは1〜10程度の鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの炭素数が3〜20程度、好ましくは4〜8程度のシクロアルキル基などが含まれる。
【0012】
前記(ヘテロ)アリール基は、アリール基及びヘテロアリール基の両方を含み、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ナフチル基;ピリジル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、ピリミニジル基、ピリダジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、インドリル基、キノリル基などの含窒素芳香族複素環基;チエニル基、チオピラニル基、チオクロメニル基、チオキサンテニル基などの含硫黄芳香族複素環基;フリル基、ピラニル基などの含酸素芳香族複素環基など、炭素数が3〜20程度、好ましくは炭素数が3〜10程度の(ヘテロ)アリール基が挙げられる。
【0013】
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基などの炭素数6〜10程度のアリール基が結合した炭素数1〜5程度のアルキル基が挙げられる。
【0014】
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの炭素数が1〜20程度、好ましくは炭素数が1〜10程度のアルキル基が結合したオキシ基が挙げられる。
アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、アミノフェノキシ基、ナフトキシ基などの炭素数が6〜20程度、好ましくは炭素数が6〜10程度のアリール基が結合したオキシ基が挙げられる。
【0015】
アシル基としては、例えば、アセチル基、ベンゾイル基などの炭素数が2〜20程度、好ましくは炭素数が2〜10程度のアシル基が挙げられる。
アシルオキシ基としては、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などの炭素数が2〜20程度、好ましくは炭素数が2〜10程度のアシルオキシ基が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基などの炭素数が2〜20程度、好ましくは炭素数が2〜10程度のアルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0016】
アミノ基としては、例えば、無置換のアミノ基の他、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基などの炭素数が1〜15程度、好ましくは炭素数が1〜6程度のアルキル基が結合したアミノ基(モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基など);アニリノ基、トルイジノ基、ベンジジノ基、ジフェニルアミノ基などの炭素数が4〜15程度、好ましくは炭素数が6〜10程度のアリール基が結合したアミノ基(モノアリールアミノ基又はジアリールアミノ基など);炭素数が1〜15程度、好ましくは炭素数が1〜6程度のアルキル基と、炭素数が4〜15程度、好ましくは炭素数が6〜10程度のアリール基とが結合したアミノ基(モノアルキルモノアリールアミノ基など);ピロリジノ基、イミダゾリジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基、ピラゾリジノ基、モルフォリノ基などの炭素数が3〜15程度、好ましくは炭素数が4〜10程度の含窒素飽和複素環構造を有するアミノ基などが挙げられる。アミノ基としては、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、含窒素飽和複素環構造を有するアミノ基が好ましい。
【0017】
アミド基としては、例えば、以下に示すような炭素数が1〜20程度、好ましくは炭素数が1〜13程度のアミド基が挙げられる。
【0019】
イミド基としては、例えば、以下に示すような炭素数が3〜20程度、好ましくは炭素数が3〜14程度のイミド基が挙げられる。
【0021】
スルフィド基としては、例えば、チオメチル基、チオエチル基、チオプロピル基、チオブチル基などのチオアルキル基;チオフェニル基、チオトルイル基、チオキシリル基、チオナフチル基などのチオアリール基などの炭素数が1〜20程度、好ましくは炭素数が1〜12程度のスルフィド基が挙げられる。
【0022】
ホスホノ基としては、例えば、ジメチルホスホノ基、ジエチルホスホノ基、ジフェニルホスホノ基などの炭素数が2〜20程度、好ましくは炭素数が2〜12程度のホスホノ基が挙げられる。
【0023】
シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基などのトリアルキルシリル基;トリフェニルシリル基などのトリアリールシリル基;トリス(トリメチルシロキシ)シリル基などのトリス(トリアルキルシロキシ)シリル基;トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、フェニルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、フェニルジエトキシシリル基などのアルコキシシリル基などが挙げられる。該シリル基に含まれるアルキル基の炭素数は、例えば、1〜20程度、好ましくは1〜10程度であり、該シリル基に含まれるアリール基の炭素数は、例えば、6〜20程度、好ましくは6〜10程度である。
【0024】
異なる分子が基Xを介して形成する結合としては、例えば、一方の分子の基Xとしてのカルボキシ基と、他方の分子の基Xとしてのヒドロキシ基とが形成するエステル結合;一方の分子の基Xとしてのカルボキシ基と、他方の分子の基Xとしてのアミノ基とが形成するアミド結合;一方の分子の基Xとしてのカルボキシ基と、他方の分子の基Xとしてのカルボキシ基とが窒素原子を介して形成するイミド結合;一方の分子の基Xとしてのチオール基と、他方の分子の基Xとしてのチオール基とが形成するスルフィド結合;一方の分子の基Xとしてのヒドロキシ基と、他方の分子の基Xとしてのヒドロキシ基とが形成するエーテル結合;一方の分子の基Xとしてのトリス(トリアルキルシロキシ)シリル基と、他方の分子の基Xとしてのトリス(トリアルキルシロキシ)シリル基とが形成する加水分解縮合結合などが挙げられる。
【0025】
式(1)のトリオキソトリアンギュレン(TOT)骨格に結合する3つのXは、互いに異なっていてもよく、特に該基Xが異なるTOT分子の結合基となる場合は該結合基がすべて同一にならなくてもよいが、基Xが結合基にならない場合は、基Xは少なくとも2つが同じであることが好ましく、3つとも同じであることがより好ましい。
【0026】
基Xとしては、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、(ヘテロ)アリール基、アラルキル基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、又はシリル基が好ましく、より好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基、又は炭素数6以下のアリール基である。
【0027】
上記TOT中性ラジカル化合物は、例えば、従来技術欄に記載の各特許文献及び非特許文献の記載を参考にして製造できる。
【0028】
1.2 窒素含有化合物
上記TOT中性ラジカル化合物は、上述した様に非共有電子対を有する窒素含有化合物と錯体を形成し、溶剤に対して可溶性を示す。
前記窒素含有化合物は、窒素原子上に非共有電子対を有する化合物であることがより好ましく、窒素原子上に非共有電子対を有する非芳香族化合物、窒素原子上に非共有電子対を有する芳香族化合物のいずれでもよい。また窒素原子上に非共有電子対を有する化合物が酸素原子、硫黄原子などを有する場合には、これら酸素原子や硫黄原子上に非共有電子対を有していてもよい。窒素原子上に非共有電子対を有する化合物としては、アセトニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類などであってもよいが、TOT中性ラジカル化合物への配位能力が高い点で窒素原子の隣接位にカルボニル基を持たない化合物が好ましく、アミン化合物がより好ましく、式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)、(2e)、(2f)などで表される化合物、又はポリアミン化合物(ただし、式(2a)〜(2f)で表すことができるポリアミン化合物を除く)が好ましい。
【0029】
【化6】
(式(2a)、(2b)及び(2d)中、R
1は水素原子、アルキル基、環状飽和炭化水素基、アリール基、又はアラルキル基を示し、式(2a)及び(2d)で表される化合物が複数のR
1を有する場合、各R
1は互いに同一でも異なっていてもよい。式(2c)及び(2d)中、R
2は水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、スルフィド基、チオール基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホノ基、又はシリル基を示し、式(2c)及び(2d)で表される化合物が複数のR
2を有する場合、各R
2は互いに同一でも異なっていてもよい。式(2b)中、R
3は、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアミノ基を表し、式(2b)で表される化合物が複数のR
3を有する場合、各R
3は互いに同一でも異なっていてもよい。
なお、R
1、R
2又はR
3で表されるアルキル基、環状飽和炭化水素基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、又はアルコキシカルボニル基を構成する炭素原子は、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基などのヘテロ原子を有する基で置換されていてもよい。
式(2d)の環Aは、NR
1単位及びCR
22単位が環の外周に存在する限り、単環でも縮合環でもよく、飽和複素環、不飽和複素環、芳香族複素環のいずれでもよい(ただし、式(2c)になることはない)。mはNR
1単位の数を表しnはCR
22単位の数を表し、複数のNR
1単位及びCR
22単位を有する場合、m個のNR
1単位が連続に並ぶ必要はなく、またn個のCR
22単位が連続に並ぶ必要はなく、NR
1単位とCR
22単位の並び方は任意である。NR
1単位とNR
1単位の間、NR
1単位とCR
22単位の間、又はCR
22単位とCR
22単位の間には、酸素原子又は硫黄原子が挿入されていてもよい。
mは1以上4以下の整数であり、nは、2以上7以下の整数である。)
【0030】
R
1が示すアルキル基、アリール基、アラルキル基としては、前記Xが示すアルキル基、アリール基、アラルキル基と同様の基が例示できる。R
1が示す環状飽和炭化水素基には、シクロヘキシル基、アダマンチル基などが例示できる。
R
2が示すアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、スルフィド基、チオール基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホノ基、又はシリル基としては、前記Xが示すアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、スルフィド基、チオール基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホノ基、又はシリル基と同様の基が例示できる。また2つのR
2が結合して環を形成してもよい。
R
3が示すアルキル基、アリール基、アラルキル基、アミノ基としては、前記Xが示すアルキル基、アリール基、アラルキル基、アミノ基と同様の基が例示できる。
置換基としてのアミノ基としては、前記Xが示すアミノ基と同様の基が例示できる。
nは、好ましくは3以上6以下であり、より好ましくは4以上5以下である。
【0031】
式(2a)で表される化合物としては、アンモニア;
メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、アニリン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、アマンタジン、フェネチルアミン、トルイジン、ドーパミン、ノルアドレナリン、グリシンなどの第1アミン化合物;
ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジフェニルアミン、エチルフェニルアミン、アドレナリンなどの第2アミン化合物;
トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンなどの第3アミン化合物などが挙げられる。
【0032】
式(2b)で表される化合物としては、グアニジン、アセトアミジンが挙げられる。
式(2c)で表される化合物としては、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジンが挙げられる。
式(2d)で表される化合物としては、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、イミダゾール、プリンが挙げられる。
ポリアミン化合物(ただし、式(2a)〜(2f)で表すことができるポリアミン化合物を除く)としては、スペルミジン、スペルミンなどが挙げられる。
【0033】
窒素含有化合物は、常温(25℃)で、気体、液体、固体のいずれであってもよいが、錯体の溶媒溶解性向上の観点から、また形成された錯体から窒素含有化合物を除去してTOT中性ラジカル化合物に戻す観点から、気体または液体であることが好ましい。さらに後述する様に、窒素含有化合物に錯体が溶解することで、窒素含有化合物が実質的に溶媒として作用することがある。窒素含有化合物が実質的に溶媒として作用する場合、窒素含有化合物は、液体であることが好ましい。
【0034】
窒素含有化合物の融点は、好ましくは−100℃〜150℃であり、より好ましくは−50℃〜120℃であり、さらにより好ましくは0℃〜100℃である。
窒素含有化合物の沸点は、好ましくは−50〜200℃であり、より好ましくは0〜150℃であり、さらにより好ましくは50〜100℃である。
【0035】
1.3 錯体
前記錯体は、TOT中性ラジカル化合物と窒素含有化合物を接触させることで形成できる。特に該TOT中性ラジカル化合物が、単離乃至精製された粉体である場合、溶媒に対して溶解性がなく層化が困難であったところ、錯体化することで溶媒に対して溶解性を有する様になり、層化が容易になる。
【0036】
TOT中性ラジカル化合物が、単離乃至精製された粉体である場合、その純度は、例えば、80〜100重量%、好ましくは90〜100重量%、より好ましくは95〜100重量%である。また該粉体状TOT中性ラジカル化合物(B)と接触させる窒素含有化合物の純度は、例えば、80〜100重量%、好ましくは90〜100重量%、より好ましくは95〜100重量%である。さらにこれらから得られる錯体の純度は、例えば、80〜100重量%、好ましくは90〜100重量%、より好ましくは95〜100重量%である。ところでTOT中性ラジカル化合物は、対応するTOTアニオン塩を酸化剤で処理することによって得られることが多いが、単離乃至精製されたTOT中性ラジカル化合物やそれから得られる錯体は、該酸化剤を実質的に含有していない。残存する酸化剤の量は、TOT中性ラジカル化合物100質量部に対して、例えば、5質量部以下、好ましくは3質量部以下、より好ましは1質量部以下である。
前記錯体においてTOT中性ラジカル化合物と窒素含有化合物のモル比(TOT中性ラジカル化合物:窒素含有化合物)は、1:10〜3:1である。
【0037】
1.4 錯体溶解液
TOT中性ラジカル化合物と窒素含有化合物の錯体は、溶液にすることができる。この溶液は、窒素含有化合物が液体の時は、錯体の形成に関与しない余剰の窒素含有化合物を溶媒とする溶液であってもよい。また、錯体形成に用いたものと異なる窒素含有化合物を溶媒とする溶液であってもよく、窒素含有化合物として使用できない液体を溶媒とする溶液であってもよい。なお、錯体溶解液に固形分(溶け残り、析出物など)が存在する場合には、フィルター濾過などの固形分除去手段を適宜利用することによって、該固形分を除去してもよい。
【0038】
このような窒素含有化合物であってもなくてもよい溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの飽和炭化水素系溶媒;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸tert−ブチル、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのエステル系溶媒;アセトニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどの硫黄含有溶媒;ブチルトリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリブチルメチルアンモニウム メチルスルフェート、1−アリル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロフォスフェート、テトラブチルフォスフォニウム メタンスルフォネート、1−ブチル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミドなどのイオン液体などが好ましい。またプロピルアミン、ヘキシルアミンなどの第1、第2、又は第3アミン化合物も好ましい。乾燥が容易な点で沸点が200℃未満の溶媒が好ましく、150℃未満の溶媒がより好ましい。
【0039】
錯体溶解液における錯体の濃度は、例えば、0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%である。
【0040】
2.錯体層
前記錯体溶液を適当な基板上に塗布し、乾燥することで錯体層が形成できる。なお本明細書において、「層」は、「膜」を含む概念であり、好ましくは膜である。
【0041】
錯体溶液を基板に塗布する方法としては、スピンコート法、ディッピング法、スプレー塗布法、スクリーン印刷、凸版印刷、凹版印刷など各種方法を適用可能である。
乾燥は、空気中などの、水蒸気及び酸素の存在下で行ってもよく、不活性ガス中などの、水蒸気及び酸素の非存在下で行ってもよい。水蒸気及び酸素の存在下で乾燥すると、錯体層から窒素含有化合物が抜けやすくなり、錯体層からTOT中性ラジカル化合物層への変化が比較的早く進む。また水蒸気及び酸素の非存在下で乾燥すると、TOT中性ラジカル化合物層への変化を遅くして錯体層の寿命を長くすることができる。
【0042】
錯体層の厚みは目的に応じて任意に設定可能であるが、例えば、10nm〜100μmが好ましく、100nm〜50μmがより好ましい。
【0043】
3.TOT中性ラジカル化合物層
前記錯体層から窒素含有化合物を除去することでTOT中性ラジカル化合物層を得ることができる。窒素含有化合物は、例えば、減圧、加熱などの乾燥条件を適宜採用することで除去できる。
このようにして形成された本発明のTOT中性ラジカル化合物層は、該ラジカル化合物の分散液を用いることなく形成されているため、層中のラジカル化合物の均一性が良好である。
TOT中性ラジカル層の厚みは目的に応じて任意に設定可能であるが、例えば、10nm〜100μmが好ましく、100nm〜50μmがより好ましい。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
なお、以下で得られた錯体層、TOT中性ラジカル化合物層における分光スペクトル測定及び走査型電子顕微鏡(SEM)像測定は、以下の様にして実施した。
1.分光スペクトル
(株)日立ハイテクノロジーズ製の紫外可視近赤外分光光度計(U−4000)を用い、ガラス基板上に作製したTOT誘導体の薄層について、光路が基板と垂直方向になるよう固定し、測定を行った。測定波長は2600nm〜240nmとし、750nm/min(近赤外領域)及び300nm/min(紫外可視領域)のスキャンスピードで、スリット幅2nm、サンプリング間隔1nmにて測定を実施した。
2.SEM像
日本電子(株)製FE−SEM(JSM−7600F)を用い、酸化皮膜付きシリコン基板上に作製したTOT誘導体の薄層を試料台にカーボンテープで固定して測定を行った。測定条件として、加速電圧は2.0kV、焦点距離は3.0mmを用いた。
【0045】
実施例1
(t−Bu)
3TOT中性ラジカル化合物・n−ヘキシルアミン錯体の合成
【化7】
特開2013−172020号公報の製造例1と同様にして得られた(t−Bu)
3TOT中性ラジカル化合物(式(E1−1)で表される化合物)17.2mgを試験管に入れ、n−ヘキシルアミン12mL(9.2g)を加えて超音波照射を5分間行うことにより、(t−Bu)
3TOT中性ラジカル化合物とn−ヘキシルアミンの錯体(式(E1−2)で表される化合物)を得た。この錯体は過剰のn−ヘキシルアミンを溶媒として溶解しており、溶液の色は青色であった。トリオキソトリアンギュレン(TOT)を基準とするとこの溶液の濃度は0.18重量%と計算される。この溶液を一部とり、過剰に存在するn−ヘキシルアミンを揮発させて乾燥させることにより、(t−Bu)
3TOT・n−ヘキシルアミン錯体を青色粉末として得た。この粉末の元素分析から(t−Bu)
3TOTとn−ヘキシルアミンのモル比は1:3.2であり、(t−Bu)
3TOTに対して水分子を2.1(モル比)の割合で含有することがわかった。
元素分析結果:
C
34H
33O
3+3.2(C
6H
15N)+2.1(H
2O)の計算値 C:75.06%、H:10.09%、N:5.27%。
実測値 C:75.38%、H:10.43%、N:4.97%。
【0046】
実施例2
(t−Bu)
3TOT中性ラジカル化合物・n−ヘキシルアミン錯体の薄層
金電極付きシリコン基板をアセトン、エタノール、及び蒸留水で洗浄し、さらにオゾン洗浄を10分間行った。この洗浄後の基板をブレードコート装置に設置し、ブレード(厚さ0.12mm)と基板間の距離を100μmに調整した。実施例1と同じ方法で作製した(t−Bu)
3TOT中性ラジカル化合物・n−ヘキシルアミン錯体(式(E1−2)化合物)の0.23重量%ヘキシルアミン溶液5μLを基板上に滴下し、10μm/秒の速度で基板を掃引してブレードコーティングを行った。室温で乾燥させることにより、(t−Bu)
3TOT中性ラジカル化合物・n−ヘキシルアミン錯体(式(E1−2)化合物)の薄層を得た。
【0047】
実施例3
(t−Bu)
3TOT中性ラジカル化合物の薄層
【化8】
サンプル瓶に(t−Bu)
3TOT中性ラジカル化合物((式(E1−1)化合物)(9.0mg)とイソプロピルアミン5mL(3.4g)を入れ、この混合物を撹拌することにより青色の(t−Bu)
3TOT中性ラジカル化合物・イソプロピルアミン錯体(式(E1−3)で表される化合物)のイソプロピルアミン溶液を得た。不溶物をメンブレンフィルターでろ過して除き、ろ液をガラス基板にスピンコート(溶液0.1mL、2000rpm、30秒)して薄層を作製した。得られた青色の錯体の薄層を大気中室温で1日静置することにより赤紫色の(t−Bu)
3TOT中性ラジカル化合物(式(E1−1)化合物)の薄層が得られた。スピンコート直後の錯体薄層の吸収スペクトルと、1日静置後の中性ラジカル化合物薄層の吸収スペクトルを測定し、その結果を合わせて
図1に示した。1日静置後の吸収スペクトル(実線)には(t−Bu)
3TOT中性ラジカル化合物に特有の1100nm付近の大きな吸収が認められる一方、スピンコート直後の錯体の吸収スペクトル(破線)にはこの中性ラジカル化合物特有のピークが見られなかった。また1日静置後の(t−Bu)
3TOT中性ラジカル化合物薄層の走査型電子顕微鏡(SEM)像を
図2に示す。
【0048】
実施例4
(t−Bu)
3TOT中性ラジカル化合物の薄層
【化9】
サンプル瓶に(t−Bu)
3TOT中性ラジカル化合物(式(E1−1)化合物)(15mg)と、クロロホルム(1.3mL)と、イソプロピルアミン(0.6mL)とを入れ、超音波処理することにより(t−Bu)
3TOT中性ラジカル化合物・イソプロピルアミン錯体(式(E1−3)化合物)の青色溶液を得た。不溶物をメンブレンフィルターでろ過して除き、ろ液をガラス基板にスピンコート(溶液0.06mL、3500rpm、30秒)して薄層を作製した。得られた青色の錯体の薄層を150℃で1時間加熱することによりイソプロピルアミンを揮発させて(t−Bu)
3TOT中性ラジカル化合物(式(E1−1)化合物)の薄層を得た。この中性ラジカル化合物薄層の吸収スペクトルを
図3に、走査型電子顕微鏡(SEM)像を
図4に示す。(t−Bu)
3TOT中性ラジカル化合物に特徴的な1100nm付近の大きな吸収スペクトルが観察された。
【0049】
実施例5
(t−Bu)
3TOT中性ラジカル化合物の薄層
【化10】
サンプル瓶に(t−Bu)
3TOT中性ラジカル化合物(式(E1−1)化合物)(10mg)と、オルトジクロロベンゼン(1.0mL)と、トリエチルアミン(0.1mL)とを入れ、超音波処理することにより(t−Bu)
3TOT・トリエチルアミン錯体(式(E1−4)化合物)の青色溶液を得た。不溶物をメンブレンフィルターでろ過して除き、ろ液をガラス基板にスピンコート(溶液0.8mL、800rpm、60秒)して薄層を作製した。得られた錯体の薄層を大気中室温で1日静置してトリエチルアミンを揮発させ、(t−Bu)
3TOT中性ラジカル化合物(式(E1−1)化合物)の薄層を得た。この中性ラジカル化合物薄層の吸収スペクトルを
図5に示す。(t−Bu)
3TOT中性ラジカル化合物に特徴的な1100nm付近の大きな吸収スペクトルが観察された。