特開2019-196710(P2019-196710A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-196710(P2019-196710A)
(43)【公開日】2019年11月14日
(54)【発明の名称】硫酸供給装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 43/02 20060101AFI20191018BHJP
   C22B 3/08 20060101ALN20191018BHJP
   C22B 23/00 20060101ALN20191018BHJP
【FI】
   F04B43/02 D
   C22B3/08
   C22B23/00 102
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-89374(P2018-89374)
(22)【出願日】2018年5月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】菅 隆将
【テーマコード(参考)】
3H077
4K001
【Fターム(参考)】
3H077AA01
3H077BB03
3H077CC02
3H077CC09
3H077DD02
3H077EE24
3H077EE26
3H077FF13
4K001AA19
4K001BA02
4K001BA05
4K001CA05
4K001DB03
4K001DB14
(57)【要約】
【課題】ダイヤフラムポンプを備えた硫酸供給装置において、ダイヤフラムポンプに接続された配管等から、内部の硫酸の漏れの発生を効果的に抑制することができる装置を提供すること。
【解決手段】反応容器10に硫酸を供給する硫酸供給装置1であって、内部に硫酸が充填され、硫酸の圧力を調整することにより反応容器10に硫酸を供給するダイヤフラムポンプ11と、ダイヤフラムポンプ11に一端が接続された配管12と、を備え、配管12は、他端が固定されており、前記配管は、螺旋状に巻き回された螺旋状部121を有する硫酸供給装置1である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器に硫酸を供給する硫酸供給装置であって、
内部に硫酸が充填され、該硫酸の圧力を調整することにより前記反応容器に該硫酸を供給するダイヤフラムポンプと、
前記ダイヤフラムポンプに一端が接続された配管と、
を備え、
前記配管は、他端が固定されており、
前記配管は、螺旋状に巻き回された螺旋状部を有する、
硫酸供給装置。
【請求項2】
前記配管は、前記ダイヤフラムポンプの内部の硫酸を排出する排出配管である、
請求項1に記載の硫酸供給装置。
【請求項3】
前記反応容器は、加圧反応容器である、
請求項1又は2に記載の硫酸供給装置。
【請求項4】
前記配管における前記螺旋状部は、螺旋状に1/2周以上巻き回されている、
請求項1乃至3のいずれかに記載の硫酸供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫酸供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ニッケル品位の低い低品位なニッケル酸化鉱石からニッケル等の有価金属を湿式製錬により回収する方法として、例えば特許文献1に示すような、鉱石スラリーに硫酸を添加して高温高圧下で浸出する高圧酸浸出法(HPAL法:High Pressure Acid Leach法 以下、単にHPAL法と表記することがある。)が行われている。HPAL法は、還元及び乾燥等の乾式工程を含まず、湿式工程からなるので、エネルギー的及びコスト的に有利である。
【0003】
具体的に、この高圧酸浸出法によるニッケル製錬方法は、例えばニッケル酸化鉱石をスラリー化して鉱石スラリーを調製する工程(鉱石スラリー調製工程)と、その鉱石スラリーに硫酸を添加し、加圧反応容器にて220℃〜280℃の高温高圧下で浸出処理を施し、鉱石中のニッケル及びコバルトを浸出して浸出スラリーを得る工程(浸出工程)と、浸出スラリー中の浸出残渣とニッケル及びコバルトを含む浸出液とを固液分離する工程(固液分離工程)と、ニッケル及びコバルトと共に不純物元素を含む浸出液のpHを3〜4に中和して鉄等の不純物元素を沈殿分離する工程(中和工程)と、中和分離後の浸出液に硫化水素ガス等の硫化剤を供給してニッケルコバルト混合硫化物を回収する工程(硫化工程)とを有している。
【0004】
このような高圧酸浸出法では、浸出工程において、反応容器内の浸出液の酸化還元電位及び温度を制御することにより、主要不純物である鉄をヘマタイト(Fe)の形で浸出残渣に固定し、一方でニッケル及びコバルトを選択的に浸出することができるので、非常に大きなメリットがある。
【0005】
浸出工程においては、例えば図1に示すように、硫酸供給装置1から配管(ライン)を通じて加圧反応容器10へ硫酸が供給される。反応容器10では、硫酸が添加された鉱石スラリーが攪拌機により攪拌されながら、隔室10aから隔室10gへ順次(に)移動して、硫酸によりニッケルやコバルト等が浸出される。
【0006】
ここで、上述のような反応容器に硫酸を供給するための硫酸供給装置としては、容積式ポンプの一つであるダイヤフラムポンプが多用されている。ダイヤフラムポンプとは、内部に充填された流体(硫酸)の圧力を調整することにより反応容器に硫酸を供給するポンプである。具体的には、シリンダーの動作によってダイヤフラムをポンプヘッド側へ膨張・収縮させてポンプヘッド内の流体(硫酸)の圧力を調整することで反応容器へ流体(硫酸)を供給するポンプである。
【0007】
なお、例えば特許文献2では、硫酸添加設備に備えられた複数の硫酸供給ポンプのうちの、従来では予備機として用いられていたポンプを通常操業中においても運転させた硫酸添加設備が開示されている。この文献に記載の技術は、硫酸供給ポンプの最大能力を引き上げ、又、稼働率を向上させるというものである。
【0008】
さて、ダイヤフラムポンプを備えた硫酸供給装置においては、ダイヤフラムポンプの内部の点検や補修を行う場合、ダイヤフラムポンプの内部に存在する硫酸を一旦排出して作業する。そのため、硫酸供給装置には、内部の硫酸を排出するための配管が、所定の箇所に設けられた接続部(継ぎ手部)を介して接続されており、その配管を介して硫酸を排出している。
【0009】
ダイヤフラムポンプは、その性質上、ポンプシャフトのストローク長さを調整する際に発生するダイヤフラムの伸縮に合わせて、ダイヤフラムポンプ自体が振動する。この振動は、ダイヤフラムの伸縮が大きくなるほど増幅するのが一般的であり、例えば硫酸の供給先が加圧反応容器等である場合には、振動が大きくなる。
【0010】
このようなダイヤフラムポンプの振動は、周辺部品や機器にも悪影響を及ぼすことがあり、ダイヤフラム付近では振動が大きく及ぶ。特に振動による力がかかる部分においては悪影響が大きくなる。
【0011】
上述したように、ダイヤフラムポンプを備えた硫酸供給装置においては、内部の硫酸を排出するための配管が接続部を介して接続されているが、例えばダイヤフラムポンプに振動が発生した場合には、その接続部におけるバルブ等に緩みが生じ、あるいは接続部の配管が破断することも考えられる。このような接続部の緩みや配管の破断は、硫酸の漏れにもつながり、トラブル発生の原因にもなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−350766号公報
【特許文献2】特開2016−153527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、ダイヤフラムポンプを備えた硫酸供給装置において、ダイヤフラムポンプに接続された配管等から、内部の硫酸の漏れの発生を効果的に抑制することができる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討をした結果、配管に螺旋状に巻き回された螺旋状部を有する硫酸供給装置であれば、上記課題を解決することが出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
(1)本発明の第1は、反応容器に硫酸を供給する硫酸供給装置であって、内部に硫酸が充填され、該硫酸の圧力を調整することにより前記反応容器に該硫酸を供給するダイヤフラムポンプと、前記ダイヤフラムポンプに一端が接続された配管と、を備え、前記配管は、他端が固定されており、前記配管は、螺旋状に巻き回された螺旋状部を有する、
硫酸供給装置である。
【0016】
(2)本発明の第2は、第1の発明において、前記配管は、前記ダイヤフラムポンプの内部の硫酸を排出する排出配管である硫酸供給装置である。
【0017】
(3)本発明の第3は、第1又は第2の発明において、前記反応容器は、加圧反応容器である硫酸供給装置である。
【0018】
(4)本発明の第4は、第1から第3のいずれかの発明において、前記配管における前記螺旋状部は、螺旋状に1/2周以上巻き回されている硫酸供給装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の硫酸供給装置によれば、ダイヤフラムポンプに接続された配管等から、内部の硫酸の漏れの発生を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】反応容器とその反応容器に硫酸を添加する本実施の形態に係る硫酸供給装置の構成を示す図である。
図2】本実施の形態に係る硫酸供給装置の構成を示す図である。
図3】本実施の形態に係る排出配管の螺旋状部を模式的に示す図である。
図4】本実施の形態に係る排出配管の螺旋状部について、螺旋状部の直径L、ピッチP、及び配管の直径dを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において適宜変更を加えて実施することができる。
【0022】
≪1.硫酸供給装置≫
【0023】
図2は、本実施の形態に係る硫酸供給装置1の構成の一例を模式的に示す斜視図である。硫酸供給装置1は、ダイヤフラムポンプ11と、配管12と、を備える硫酸供給装置である。以下、各構成についてそれぞれ説明する。
【0024】
[ダイヤフラムポンプ]
ダイヤフラムポンプ11は、内部に充填された硫酸の圧力を調整することにより反応容器10に硫酸を供給するポンプである。具体的には、ダイヤフラムポンプ11は、図示しないが、ダイヤフラム(膜)と、流体である硫酸を吐出する吐出口(ポンプヘッド)とを有しており、ダイヤフラムを往復運動させることにより流体の吸引及び排出を行うポンプである。例えば、ダイヤフラムポンプは、モーター駆動によるシリンダーの動作によって膜を膨張・収縮させて流体を送液するように構成されている。あるいは、フランジ部材により密閉状態で収容され、空気圧で加圧又は減圧される構造となっており、加圧により膜が収縮し減圧により膜が膨張することによる往復運動で流体を送液するように構成されている。
【0025】
ダイヤフラムポンプ11は、上述のように、硫酸の圧力を調整することにより反応容器10に硫酸を供給するポンプであるため、反応容器が常圧の反応容器のみならず、硫酸の圧力をより高圧に調整することで高圧反応容器(例えば、オートクレーブ)であっても硫酸を供給することができる利点がある。
【0026】
ここで、ダイヤフラムポンプ11においては、ダイヤフラムの伸縮に合わせて振動が発生する。発生した振動は、ダイヤフラムポンプ11に接続された周辺機器に伝わる。本実施の形態に係る硫酸供給装置1では、詳しく後述するが、ダイヤフラムの伸縮に伴う振動に起因して、配管12との接続箇所等から内部の硫酸が漏れることを有効に抑制することができる。
【0027】
[配管]
配管12は、一端がダイヤフラムポンプ11に接続されている中空状の配管である。例えば、この配管12は、ダイヤフラムポンプ11の内部の硫酸を排出するための排出配管である。
【0028】
配管12においては、ダイヤフラムポンプ11との接続箇所の近傍にバルブ122が設けられており、バルブ122の開閉を制御することによって、当該配管12を介して内部の硫酸の移送が制御される。例えば、配管12が排出配管として用いられる場合、ダイヤフラムポンプ11から反応容器に硫酸が供給される際には、バルブが閉じた状態(閉状態)となっている。一方で、ダイヤフラムポンプ11の内部の点検や補修等を行う場合には、それら作業に先立ち、ダイヤフラムポンプ11の内部の硫酸を排出するために、バルブ122をバルブが開いた状態(開状態)として、排出配管である配管12を介して硫酸を排出させる。
【0029】
なお、バルブ122は、手動で開閉することのできるマニュアルバルブであってもよく、いわゆる電磁弁であってもよい。
【0030】
配管12は、上述のように、その一端がダイヤフラムポンプ11に接続されている。なお、配管12の一端とダイヤフラムポンプ11との接続箇所を接続部123aという。又、配管12は、その他端(ダイヤフラムポンプに接続されていない側の端部)が、所定の箇所に固定されている。例えば、配管12が硫酸を排出する排出配管である場合、その配管12は、排出した硫酸を貯留する貯留タンク等に硫酸を移送するための移送配管(図2中の符号13で示す配管)や定置型又は移動型のタンク等に固定されている。なお、配管12の他端と移送配管13等との固定箇所を固定部123bといい、その固定部123bでの固定方法の態様は限定されず、例えば単に固定治具等によって固定される態様であってよい。
【0031】
ところが、このような排出配管が接続部を介してダイヤフラムポンプと接続されている場合、ダイヤフラムポンプの稼働による硫酸供給に伴って発生する振動により、その接続部の部分(継ぎ手の部分)において接続緩みや破断等が生じて、ダイヤフラムポンプの内部の硫酸が漏れる可能性がある。
【0032】
そこで、本実施の形態に係る硫酸供給装置1では、一端がダイヤフラムポンプ11と接続され、他端が所定の箇所に固定されている配管12において、螺旋状に巻き回された螺旋状部121を有することを特徴としている。
【0033】
図3は、螺旋状部121を有する配管12の一例を示す模式図である。図3に示すように、螺旋状部121は、配管12の長手方向に対して略垂直方向に巻き回されることにより螺旋状に形成されている。
【0034】
このような硫酸供給装置1であれば、ダイヤフラムポンプ11において振動が発生し、その振動が配管12に伝わった場合であっても、その配管12における螺旋状に形成された螺旋状部121がバネのように伸縮してその振動を吸収することができる。これにより、配管12に与えられる負荷を軽減し、ダイヤフラムポンプ11との接続部123a等からの硫酸の漏れの発生を効果的に抑制することができる。
【0035】
配管12の外径d(図4参照)は、特に制限されないが、例えば2mm以上であることが好ましく、4mm以上であることがより好ましい。又、40mm以下であることが好ましく、20mm以下であることがより好ましい。2mm以上であると、太いのでポンプヘッド内の硫酸を速やかに排出できる。40mm以下であると、配管12が充分に細いので配管12を螺旋状に加工しやすく、螺旋状部121も嵩張らない。
【0036】
又、配管12の材質は、ダイヤフラムポンプ11内部に充填される硫酸に耐えられる材質であればよい。例えば、ステンレス(例えば、SUS316)等の金属を挙げることができる。
【0037】
ここで、配管12に形成される螺旋状部121は、ダイヤフラムポンプから発生した振動を吸収することができる程度に螺旋状に巻き回されていればよい。より効果的に、ダイヤフラムポンプから発生した振動を吸収するためには、螺旋状に1/2周以上巻き回されていることが好ましく、1周以上巻き回されていることがより好ましく、1周と1/3周以上巻き回されていることが更に好ましい。なお、上限は特に制限はないが、例えば、10周以下巻き回されていればよい。又、螺旋状部121における螺旋の回転の向きは、本発明の効果を奏する態様であれば、右回り左回りのどちらでもよい。螺旋状部121における螺旋は、螺旋が取り巻く円柱状の空間の軸方向が振動方向に沿うように配置するのが有効である。これにより振動をより効果的に吸収することができる。接続部123aから固定部123bまでは縦方向、横方向、高さ方向に配管を引き回す必要があるが、各方向を取り巻くように螺旋状部を配置してもよい。
【0038】
又、螺旋状部121を形成する螺旋の直径(外径)L(図4参照)はダイヤフラムポンプから発生した振動を吸収することができる程度の直径(外径)であればよく、40mm以上1000mm以下であることが好ましく、80mm以上500mm以下であることがより好ましい。
【0039】
螺旋状部121を形成する螺旋のピッチP(図4参照)は、ダイヤフラムポンプ11から発生した振動を吸収することができる程度であり且つ、ピッチを隔てた配管12の部分同士が振動でぶつからない程度のピッチであればよい。螺旋の直径(外径)Lを一定に巻く場合は、配管12よりもピッチPは大きくし、たとえば、5mm以上500mm以下であることが好ましく、50mm以上300mm以下であることがより好ましい。
【0040】
≪2.硫酸供給装置の適用≫
本実施の形態に係る硫酸供給装置1は、HPAL法を用いたニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおける硫酸浸出処理において、原料の鉱石スラリーを装入した反応容器に硫酸を添加する硫酸供給装置として好適に用いることができる。
【0041】
<2−1.ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスについて>
先ず、高圧酸浸出法によるニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスの概要を説明する。
【0042】
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスは、ニッケル酸化鉱石のスラリーに硫酸を添加して高温高圧下で浸出処理を施す浸出工程と、浸出スラリーから残渣を分離して浸出液を得る固液分離工程と、浸出液のpHを調整して中和処理を施す中和工程と、中和終液に硫化剤を添加することでニッケル及びコバルトを含む混合硫化物を生成させる硫化工程(ニッケル回収工程)と、を有する。
【0043】
[浸出工程]
浸出工程では、オートクレーブ(高温加圧容器)を用い、ニッケル酸化鉱石のスラリー(鉱石スラリー)に硫酸を添加して、温度230℃〜270℃程度、圧力3MPa〜5MPa程度の条件下で攪拌し、浸出残渣と浸出液からなる浸出スラリーを形成する。
【0044】
浸出工程における浸出処理では、例えば下記式(i)〜(v)で表される浸出反応と高温加水分解反応が生じ、ニッケル、コバルト等の硫酸塩としての浸出と、浸出された硫酸鉄のヘマタイトとしての固定化が行われる。ただし、鉄イオンの固定化は完全には進行しないため、通常、得られる浸出スラリーの液部分には、ニッケル、コバルト等の他に2価の鉄イオンと3価の鉄イオンが含まれる。なお、この浸出工程では、次工程の固液分離工程で分離されるヘマタイトを含む浸出残渣のろ過性の観点から、得られる浸出液のpHが0.1〜1.0にとなるように調整することが好ましい。
【0045】
・浸出反応
MO+HSO⇒MSO+HO ・・(i)
(なお、式中Mは、Ni、Co、Fe、Zn、Cu、Mg、Cr、Mn等を表す)
2Fe(OH)+3HSO⇒Fe(SO+6HO ・・(ii)
FeO+HSO⇒FeSO+HO ・・(iii)
・高温加水分解反応
2FeSO+HSO+1/2O⇒Fe(SO+HO ・・(iv)
Fe(SO+3HO⇒Fe+3HSO ・・(v)
【0046】
鉱石スラリーを装入したオートクレーブへの硫酸の添加量としては、特に限定されないが、鉱石中の鉄が浸出されるような過剰量が用いられる。このように、過剰量の硫酸を添加して浸出処理を施すことによって、ニッケルやコバルトの浸出率を高めることができる。例えば、鉱石1トン当り200kg〜400kgとする。
【0047】
本実施の形態に係る硫酸供給装置1は、この浸出工程において硫酸を添加することができる硫酸供給装置である。本実施の形態に係る硫酸供給装置1をこの浸出工程において用いることによりダイヤフラムポンプに接続された排出配管から硫酸が漏れることを抑制することができる。
【0048】
[固液分離工程]
固液分離工程では、浸出工程で形成される浸出スラリーを多段洗浄して、ニッケル及びコバルトを含む浸出液と浸出残渣を得る。
【0049】
[中和工程]
中和工程では、浸出液の酸化を抑制しながら、pHが4以下となるように酸化マグネシウムや炭酸カルシウム等の中和剤を添加して、3価の鉄を含む中和澱物スラリーとニッケル回収用母液(中和終液)とを得る。
【0050】
[硫化工程(ニッケル回収工程)]
硫化工程では、ニッケル回収用母液である中和終液に硫化水素ガス等の硫化剤を吹きこみ、ニッケル及びコバルトを含む硫化物(ニッケル・コバルト混合硫化物)と、ニッケル濃度が低い貧液(硫化後液)とを生成する。
【0051】
<2−2.浸出処理における硫酸供給装置の適用について>
本実施の形態に係る硫酸供給装置は、上述した浸出工程における硫酸の添加に用いらえる装置として適用することができる。
【0052】
図1に示すように、本実施の形態に係る硫酸供給装置1から配管(ライン)を通じて加圧反応容器10の隔室10aへ硫酸が供給される。反応容器10では、硫酸が添加された鉱石スラリーが攪拌機により攪拌されながら、攪拌機を有する隔室1aから隔室1gへと順次に移動して、鉱石からニッケル及びコバルトが、それに伴い不純物等が浸出される。
【0053】
HPAL法による硫酸浸出処理は、ニッケル酸化鉱石が低品位なニッケル酸化鉱石であることから、多量の硫酸を添加して高濃度で硫酸浸出処理を行なう。又、HPAL法による硫酸浸出処理は、高圧反応容器(例えば、オートクレーブ)に硫酸を添加する。
【0054】
硫酸の供給先が加圧反応容器等である場合には、開放容器と比べて、より強い圧力によりダイヤフラムを往復運動する必要があることから、ダイヤフラムの伸縮に合わせてより大きな振動が発生する。
【0055】
そのため、本実施の形態に係る硫酸供給装置1は、HPAL法による硫酸浸出処理への適用に限定されるものではないが、高圧反応容器に多量の硫酸を添加することができるダイヤフラムポンプを備え、ダイヤフラムポンプに接続された配管等から内部の硫酸の漏れの発生を効果的に抑制することができる硫酸供給装置であることから、HPAL法による硫酸浸出処理に適用することが特に好ましい。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0057】
<実施例>
実施例として、図2に構成図を示した硫酸供給装置を用いた硫酸供給操業(1日24時間稼働)を行った。ダイヤフラムポンプは流量10m/hr、圧力5MPaで運転した。この硫酸供給装置は、ダイヤフラムと、流体である硫酸を吐出する吐出口と、を有しており、このダイヤフラムポンプには、ダイヤフラムポンプの内部の硫酸を排出する配管(排出配管)が接続されている。又、この配管(排出配管)は、図2に示すように、一端がダイヤフラムポンプに接続されており、他端は移送配管13に接続(固定)されている。配管は外径dが12mm、材質がSUS316であり、ピッチP:50mm、螺旋の直径L:130mmで螺旋状に1周と1/2周巻き回された螺旋状部を有している。この硫酸供給装置を用いて硫酸供給操業を1年間行い、1月ごとに硫酸供給装置の検査を行ったところ、その接続部におけるバルブ等に緩みや、接続部の配管に破断が生じることは発見されなかった。そのため、配管を交換することなく硫酸供給を操業することができた。
【0058】
<比較例>
螺旋状に巻き回された螺旋状部を有していない配管、すなわち直線状の通常の配管を排出配管として備えた従来の硫酸供給装置を用いた硫酸添加操業を行った以外は実施例1と同様に硫酸供給操業を行った。硫酸供給操業を1年間行い、1月ごとに硫酸供給装置の検査を行ったところ、その接続部の配管に亀裂が生じることが4回発見され、その度に配管を新規の配管に交換した。
【0059】
この結果から、螺旋状に巻き回された螺旋状部を有する配管を備えた硫酸供給装置であることにより、配管からの硫酸の漏れ等の発生を効果的に抑制することができることが分かる。
【符号の説明】
【0060】
1 硫酸供給装置
11 ダイヤフラムポンプ
12 配管(排出配管)
121 振動吸収部
122 バルブ
123a 接続部
123b 固定部
13 移送配管
10 反応容器
10a〜10g 隔室
2 撹拌機
図1
図2
図3
図4