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特開2019-197847フレキシブル基板およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-197847(P2019-197847A)
(43)【公開日】2019年11月14日
(54)【発明の名称】フレキシブル基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/09 20060101AFI20191018BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20191018BHJP
【FI】
   H05K1/09 A
   H05K3/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-92031(P2018-92031)
(22)【出願日】2018年5月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】特許業務法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 茂樹
【テーマコード(参考)】
4E351
【Fターム(参考)】
4E351AA01
4E351AA16
4E351BB33
4E351CC03
4E351CC06
4E351DD04
4E351GG20
(57)【要約】
【課題】銅導体層におけるピンホールの発生を抑制し、フレキシブル配線基板が製造された際に、その不良率を下げることができるフレキシブル基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】フレキシブル基板10は、絶縁体フィルム11と、絶縁体フィルム11の表面に形成されている下地金属層12と、下地金属層12に重畳して形成されている銅導体層13と、を含んで構成されている。銅導体層13は、下地金属層12側に設けられている第1銅層13aと、第1銅層13aを挟んで下地金属層12側と逆側に設けられている第2銅層13bとを含んで構成されている。そして第1銅層13aのエッチングレートが、第2銅層13bのエッチングレートよりも大きい。これにより銅導体層13におけるピンホールの発生を抑制でき、フレキシブル配線基板が製造された際の不良率を下げることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体フィルムと、
該絶縁体フィルムの表面に形成されている下地金属層と、
該下地金属層に重畳して形成されている銅導体層と、を含んで構成されており、
前記銅導体層は、前記下地金属層側に設けられている第1銅層と、該第1銅層を挟んで前記下地金属層側と逆側に設けられている第2銅層とを含んで構成されており、
前記第1銅層のエッチングレートが、前記第2銅層のエッチングレートよりも小さい、
ことを特徴とするフレキシブル基板。
【請求項2】
前記第1銅層のエッチングレートが11mmol/mS以下であり、
前記第2銅層のエッチングレートが11mmol/mSよりも大きい、
ことを特徴とする請求項1記載のフレキシブル基板。
【請求項3】
絶縁体フィルムに乾式メッキにより下地金属層を形成する下地金属層形成工程と、
前記下地金属層に重畳するように、湿式メッキにより第1銅層を形成する第1銅層形成工程と、
前記第1銅層に重畳するように、湿式メッキにより前記第1銅層のエッチングレートよりも大きいエッチングレートを有する第2銅層を形成する第2銅層形成工程と、を含む、
ことを特徴とするフレキシブル基板の製造方法。
【請求項4】
前記第1銅層形成工程が、PR法の電気メッキで行われ、
前記第2銅層形成工程が、直流電流を連続して供給する電気メッキで行われる、
ことを特徴とする請求項3記載のフレキシブル基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル基板およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、高密度実装が可能なフレキシブル基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノート型パソコンなどの携帯用電子機器の小型化・軽量化の要求に従い、これらに搭載されるフレキシブル配線基板(フレキシブル基板上に配線が形成された基板)は、高密度実装化、すなわち配線間隔を狭くして実装することが求められている。フレキシブル配線基板としては、COF(Chip On Film)基板、またはFPC(Flexible Printed Circuit)基板などが挙げられるが、これらのフレキシブル配線基板の高密度実装化の要求に応えるべく、COF基板へICを実装する技術、またはFPC基板の表面に電子部品を直接実装する技術の開発が求められるとともに、さらに配線間隔を狭くすることが求められている。
【0003】
特許文献1には、2層フレキシブル基板の製造方法が開示されている。この2層フレキシブル基板は、絶縁体フィルムの表面に、順番に乾式メッキによる下地金属層と、電気メキによる銅導体層と、が設けられている。この2層フレキシブル基板は、サブトラクティブ法によって、フレキシブル配線基板に加工される。
【0004】
2層フレキシブル基板をサブトラクティブ法によってフレキシブル配線基板とする場合、サイドエッチングによる広がりがあるため、配線間隔を小さくすることに限界がある。このため配線間隔を狭くする場合、フレキシブル配線基板の製造は近年アディティブ法、特にセミアディティブ法により行われるようになってきている。
【0005】
セミアディティブ法によりフレキシブル配線基板を製造する場合、このフレキシブル配線基板の元となるフレキシブル基板は、2μm程度の厚さの導体層が設けられた状態で流通する。そしてフレキシブル配線基板のメーカ内で、フレキシブル基板上の導体層を0.5μm程度まで薄くする減膜処理を行った後、この導体層に重畳して配線が形成される。フレキシブル基板に2μmの導体層が設けられるのは、フレキシブル基板のハンドリング性(導体層が2μmより薄いとフレキシブル基板の剛性が小さくなりすぎ、基準位置の確保が困難になったり、搬送不良が発生しやすくなったりする)を確保するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−256700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、下地金属層に生じたピンホールのうち微小ピンホールに基づく下地金属層の密着性の低下を、一次電気銅メッキ処理を行うことによって抑制し、粗大ピンホールによる絶縁体フィルムの露出欠陥を、無電解銅メッキ処理によって被覆することにより基板表面を完全に良導体化でき、これにより粗大ピンホールに基づく導体部欠落の発生を抑制でき、1〜35μmの銅導体層を有する2層フレキシブル基板が得られるとされている。
【0008】
しかし、セミアディティブ法では、サブトラクティブ法で用いられてきたフレキシブル基板よりもさらに銅導体層を薄くする。特許文献1に開示されている製造方法により、薄い銅導体層が形成された場合、フレキシブル配線基板のメーカ内で減膜処理を行った際に、銅導体層が薄くなるためピンホールに基づく導体部欠落の欠陥が顕在化し、通電不良が生じやすくなるという問題がある。すなわち、特許文献1の方法では、ピンホールの発生自体を抑制することができないという問題がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、銅導体層におけるピンホールの発生自体を抑制し、フレキシブル配線基板が製造された際に、その不良率を下げることができるフレキシブル基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明のフレキシブル基板は、絶縁体フィルムと、該絶縁体フィルムの表面に形成されている下地金属層と、該下地金属層に重畳して形成されている銅導体層と、を含んで構成されており、前記銅導体層は、前記下地金属層側に設けられている第1銅層と、該第1銅層を挟んで前記下地金属層側と逆側に設けられている第2銅層とを含んで構成されており、前記第1銅層のエッチングレートが、前記第2銅層のエッチングレートよりも小さいことを特徴とする。
第2発明のフレキシブル基板は、第1発明において、前記第1銅層のエッチングレートが11mmol/mS以下であり、前記第2銅層のエッチングレートが11mmol/mSよりも大きいことを特徴とする。
第3発明のフレキシブル基板の製造方法は、絶縁体フィルムに乾式メッキにより下地金属層を形成する下地金属層形成工程と、前記下地金属層に重畳するように、湿式メッキにより第1銅層を形成する第1銅層形成工程と、前記第1銅層に重畳するように、湿式メッキにより前記第1銅層のエッチングレートよりも大きいエッチングレートを有する第2銅層を形成する第2銅層形成工程と、を含むことを特徴とする。
第4発明のフレキシブル基板の製造方法は、第3発明において、前記第1銅層形成工程が、PR法の電気メッキで行われ、前記第2銅層形成工程が、直流電流を連続して供給する電気メッキで行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、下地金属層に重畳するように設けられている銅導体層が、下地金属層側に第1銅層と、その反対側に第2銅層を備え、第1銅層のエッチングレートが、第2銅層のエッチングレートよりも小さいことにより、銅導体層におけるピンホールの発生を抑制できる。これによりフレキシブル配線基板が製造された際の不良率を下げることができる。
第2発明によれば、第1銅層のエッチングレートが11mmol/mS以下であり、
前記第2銅層のエッチングレートが11mmol/mSよりも大きいことにより、減膜処理にかける時間を短縮しながら、銅導体層にピンホールが出現することを抑制できる。
第3発明によれば、下地金属層に重畳するように第1銅層を形成し、この第1銅層のエッチングレートよりも大きいエッチングレートを有する第2銅層を重畳して形成することにより、銅導体層におけるピンホールの発生を抑制できる。これによりフレキシブル配線基板が製造された際の不良率を下げることができる。
第4発明によれば、第1銅層形成工程がPR法の電気メッキで行われ、第2銅層形成工程が直流電流を連続して供給する電気メッキで行われることにより、供給する直流電流を制御することのみで異なるエッチングレートの銅層を形成できる。すなわち異なるエッチングレートを持つ銅層を容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係るフレキシブル基板の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するためのフレキシブル基板10およびその製造方法を例示するものであって、本発明はフレキシブル基板10およびその製造方法を以下のものに特定しない。なお、各図面が示す部材の大きさまたは位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0014】
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明に係るフレキシブル基板10は、絶縁体フィルム11と、この絶縁体フィルム11の表面に形成されている下地金属層12と、この下地金属層12に重畳して形成されている銅導体層13と、を含んで構成されている。そして、銅導体層13は、下地金属層12側に設けられている第1銅層13aと、この第1銅層13aを挟んで、下地金属層12とは逆の方向に設けられている第2銅層13bとを含んで構成されており、第1銅層13aのエッチングレートが、第2銅層13bのエッチングレートよりも小さいことが本発明に係るフレキシブル基板10の特徴である。
【0015】
また、第1銅層13aのエッチングレートが11mmol/mS以下であり、第2銅層13bのエッチングレートが11mmol/mSよりも大きいのが好ましい。
【0016】
本発明に係るフレキシブル基板10は、たとえば以下のような製造方法により製造される。まず、絶縁体フィルム11に乾式メッキにより下地金属層12を形成する下地金属層形成工程が実施される。次に湿式メッキにより第1銅層13aを形成する第1銅層形成工程が実施される。そして、このあとで第1銅層13aに重畳するように、湿式メッキにより第2銅層13bを形成する第2銅層形成工程が実施される。このとき第2銅層13bのエッチングレートは、第1銅層13aのエッチングレートよりも大きい。
【0017】
上記の製造方法において、第1銅層形成工程が、PR法の電気めっきで行われ、第2銅層形成工程が直流電流を連続して供給する電気メッキで行われていることが好ましい。
【0018】
本発明のフレキシブル基板10によれば、下地金属層12に重畳するように設けられている銅導体層13が、下地金属層12側に第1銅層13aと、その反対側に第2銅層13bを備え、第1銅層13aのエッチングレートが、第2銅層13bのエッチングレートよりも小さいことにより、減膜処理により第2銅層13bがエッチングされるときに、第1銅層13aと第2銅層13bとの間の界面に電位差が生じ、溶解速度の速い第2銅層13bが陰極となる局部電池作用により、第1銅層13aへ電子が供給され、第1銅層13aの溶解が抑制される。すなわち第2銅層13bが優先的に溶けることにより第1銅層13aのピンホールの発生を抑制できる。これにより、銅導体層13におけるピンホールの発生を抑制でき、フレキシブル配線基板が製造された際の不良率を下げることができる。
【0019】
さらに詳細に説明する。銅導体層13におけるピンホールがどのように発生するかの詳細なメカニズムは不明であるが、たとえばピンホールの元となる核が銅導体層13に存在し、その核からピンホールが発生する場合があると考えられる。減膜処理でのエッチングは、銅導体層13に対して理論上は均一に進行していくが、核が存在した場合はその核の部分が優先的に進行する。しかし、本発明のフレキシブル基板10によれば、第1銅層13aと比較して第2銅層13bが、選択的に溶解されることから、仮に第1銅層13aにピンホールの元となる核が存在しても、その核の部分でのエッチングの進行よりも、第2銅層13bが選択的に溶解される。これにより核の周辺でのエッチングの進行が抑制され、ピンホールの発生が抑制できる。
【0020】
(絶縁体フィルム11)
本実施形態に係るフレキシブル基板10に用いられている絶縁体フィルム11は、フィルム状の絶縁体であれば特に問題ない。本実施形態では絶縁体フィルム11は、ポリイミドフィルムが用いられている。
【0021】
(下地金属層12)
本実施形態に係るフレキシブル基板10を構成する下地金属層12は、絶縁体フィルム11の表面に直接形成されている。下地金属層12は、ニッケルークロム合金層12aと、下地銅層12bとを含んで形成されるのが好ましい。ニッケル−クロム合金層12aに変えて、ニッケル、銅−ニッケル合金、クロム、クロム酸化物の中の少なくとも1種から選ばれるものであっても問題ない。これらの下地金属層12は、乾式メッキであるスパッタリングにより形成されるのが好ましい。なお下地金属層12の形成は、真空蒸着、イオンプレーティングであっても問題ない。
【0022】
ニッケルークロム合金層12aは、絶縁体フィルム11の構成材料である合成樹脂と比較的密着性が良好である。また下地銅層12bは導電性が高い。下地金属層12がこのように2層で構成されていることにより、下地金属層12と絶縁体フィルム11との密着性が向上するとともに導電性が高まり、下地金属層12に重畳して設けられる銅導体層13の湿式メッキが容易に行われる。
【0023】
ニッケルークロム合金層12aの厚さは50オングストローム以上500オングストローム以下であることが好ましく、下地銅層12bは、500オングストローム以上5000オングストローム以下であることが好ましい。
【0024】
ニッケルークロム合金層12aの厚さが50オングストローム未満である場合は、その後の各処理工程時に密着性の問題が生じやすい。また500オングストロームよりも厚い場合は、配線加工時にニッケルまたはクロムの除去が困難になるとともに、ニッケルークロム合金層12aにクラックまたはそりが生じやすくなり、この点において、絶縁体フィルム11と下地金属層12との密着性の問題が生じやすくなる。また下地銅層12bの厚さが500オングストローム未満である場合、ピンホールによる欠陥の軽減効果が少なくなるとともに、その後に行われる湿式メッキの際に通電不良を引き起こす可能性がある。また、5000オングストロームを超えると、下地銅層12bにクラックまたはそりが生じやすくなり、この点において絶縁体フィルム11と下地金属層12との密着性の問題を生じやすくなる。
【0025】
(銅導体層13)
本実施形態にかかるフレキシブル基板10を構成する銅導体層13は、下地金属層12の表面に直接形成されている。銅導体層13は、2つの導体層である第1銅層13aと第2銅層13bとから構成されている。第1銅層13aは、下地金属層12側に設けられており、第2銅層13bは、第1銅層13aを挟んで、下地金属層12側と逆側に設けられている。そして、本実施形態では第1銅層13aのエッチングレートは第2銅層13bのエッチングレートよりも小さくする。
【0026】
具体的には、第2銅層13bのエッチングレートが11mmol/mSよりも大きく、第1銅層13aのエッチングレートが11mmol/mS以下であることが好ましい。このエッチングレートは、エッチングを行う際に重量法により測定できる。
【0027】
本実施形態での銅導体層13の厚さは2μmである。これは、フレキシブル基板10がセミアディティブ法によりフレキシブル配線基板となること、およびフレキシブル基板10のハンドリング性を考慮したことにより、この厚さとなる。フレキシブル配線基板のメーカは、フレキシブル基板10上の銅導体層13を0.5μmまで薄くする減膜処理を行った後、この銅導体層13に重畳して配線を形成する。なお、本発明に係るフレキシブル基板10は、この厚さに限定されない。
【0028】
本実施形態に係るフレキシブル基板10の製造方法で実施される湿式メッキは、公知の電気メッキである。ただし、エッチングレートが異なる銅層を形成するために、第1銅層13aは、PR法の電気メッキで行われ(第1銅層形成工程)、第2銅層13bは、直流電流を連続して供給する電気メッキで行われる(第2銅層形成工程)のが望ましい。PR法とは、Periodic Reverse法の略名称であり、電流の方向を周期的に反転させながら直流電流を流す電気メッキである。本実施形態では、制御装置により電流制御機から供給される電流の方向と大きさが変更されることにより、同じメッキ槽内で、第1銅層13aが積層された後、第2銅層13bが積層される。PR法の電気メッキにより積層された銅層は、逆電解時に塩素イオン等の不純物の吸着が起こり、エッチングレートが小さくなる。また積層される銅層のエッチングレートを異ならせる方法としては、メッキ槽内の銅イオン濃度を変更する方法がある。
【0029】
第1銅層形成工程がPR法の電気メッキで行われ、第2銅層形成工程が直流電流を連続して供給する電気メッキで行われることにより、供給する直流電流を制御することのみで異なるエッチングレートの銅層を形成できる。すなわち異なるエッチングレートを持つ銅層を容易に製造できる。
【0030】
(実施例)
以下、本発明の実施例と比較例を示して説明する。なお、本発明に係るフレキシブル基板10およびその製造方法は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
【0031】
絶縁体フィルム11として厚さ35μmのポリイミドフィルム(宇部興産製)が用いられた。この絶縁体フィルム11の片面に、まず下地金属層12が、乾式メッキであるスパッタリングにより形成された。下地金属層12は、絶縁体フィルム11側に形成されたニッケル−クロム合金層12aと、このニッケル−クロム合金層12aを挟んで絶縁体フィルム11側と反対側に形成された下地銅層12bと、から構成された。ニッケル−クロム合金層12aの厚みは20nmとした。また下地銅層12bの厚みは100nmとした。
【0032】
下地金属層12に重畳して、銅導体層13が設けられた。このときの銅導体層13を構成する導体層について、それぞれの形成方法によるエッチングレートを表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
(1)の「直流電流を連続供給した電気メッキによる銅層」は、電流密度を5A/dmにしてあらかじめ定められた厚さになるまで形成した場合の導体層である。この場合のエッチングレートは、重量法による測定で13mmol/mSとなった。
【0035】
(2)の「PR法の電気メッキによる銅層」は、PR法により形成された銅層である。その際の形成条件は以下のようになる。すなわち、順方向の電流は5A/dmの大きさのものを150msで通電させた。そのあと、逆方向の電流は5Admの大きさのものを50msで通電させた。そしてあらかじめ定められた厚さになるまでこの通電を繰り返した。この場合のエッチングレートは、重量法による測定で9mmol/mSとなった。
【0036】
この銅導体層13を電気メッキする際のメッキ液は、以下に記載のものを混合して用いられた。
・硫酸銅5水和物:0.4mol/L
・硫酸:2mol/L
・3、3ジチオビス(1−プロパンスルホン酸ナトリウム):2mg
・ポリエチレングリコール(分子量2000):100mg/L
・塩化物イオン:50mg/dm
【0037】
(実施例1)
2.0μmの厚さの銅導体層13は、第1銅層13aと第2銅層13bとから構成されている。下地金属層12側の導体層第1銅層13aは、エッチングレートが比較的小さい(2)「PR法の電気メッキによる銅層」であり、その厚さは1.0μmとした。第1銅層13aを挟んで下地金属層12側と逆側、すなわち非下地金属層側は、エッチングレートが比較的大きい(1)「直流電流を連続供給した電気メッキによる銅層」であり、その厚さは1.0μmとした。
【0038】
上記の銅導体層13を有するフレキシブル基板10に対し、三菱ガス化学製の、硫酸および過酸化水素を主成分としたCPE750(商品名)を10倍希釈した化学研磨液により、銅導体層13が0.5μmとなるまで減膜処理が施された。減膜処理後のフレキシブル基板10に、ポリイミドフィルム側からハロゲンランプで光を照射し、25mm□の範囲内のピンホールの有無が確認された。ピンホールの大きさは1.0μm以上のものが数えられた。減膜処理後のピンホールの数は20個以内であれば、フレキシブル配線基板となったときの不良個数が十分少なくなると言われている。実施例1ではピンホールの個数は4個であった。結果を表2に示す。
【0039】
(実施例2)
2.0μmの厚さの銅導体層13を構成する第1銅層13aは(2)の銅層であり、その厚さは0.5μmとした。第2銅層13bは(1)の銅層であり、その厚さは1.5μmとした。減膜処理、およびピンホールの確認方法は実施例1と同じである。このときのピンホールの個数は3個であった。結果を表2に示す。
【0040】
(実施例3)
2.0μmの厚さの銅導体層13を構成する第1銅層13aは(2)の銅層であり、その厚さは0.2μmとした。第2銅層13bは(1)の銅層であり、その厚さは1.8μmとした。減膜処理、およびピンホールの確認方法は実施例1と同じである。このときのピンホールの個数は13個であった。結果を表2に示す。
【0041】
(比較例1)
2.0μmの厚さの銅導体層13の全てを(1)「直流電流を連続供給した電気メッキによる銅層」とした。減膜処理、およびピンホールの確認方法は実施例1と同じである。このときのピンホールの個数は32個であった。結果を表2に示す。
【0042】
(比較例2)
2.0μmの厚さの銅導体層13の全てを(2)「PR法の電気メッキによる銅層」とした。減膜処理、およびピンホールの確認方法は実施例1と同じである。このときのピンホールの個数は24個であった。結果を表2に示す。
【0043】
(比較例3)
2.0μmの厚さの銅導体層13を構成する第1銅層13aは(1)の銅層であり、その厚さは1.0μmとした。第2銅層13bは(2)の銅層であり、その厚さは1.0μmとした。減膜処理、およびピンホールの確認方法は実施例1と同じである。このときのピンホールの個数は52個であった。結果を表2に示す。
【0044】
(比較例4)
2.0μmの厚さの銅導体層13を構成する第1銅層13aは(1)の銅層であり、その厚さは0.5μmとした。第2銅層13bは(2)の銅層であり、その厚さは1.5μmとした。減膜処理、およびピンホールの確認方法は実施例1と同じである。このときのピンホールの個数は66個であった。結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
上記の結果から、銅導体層13を2層で構成し、下地金属層12側の第1銅層13aのエッチングレートが、非下地金属層側の第2銅層13bのエッチングレートよりも小さいときは、ピンホールの数が20個を下回り、フレキシブル基板10の品質として良好であることがわかった。
【符号の説明】
【0047】
10 フレキシブル基板
11 絶縁体フィルム
12 下地金属層
13 銅導体層
13a 第1銅層
13b 第2銅層
図1