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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-199629(P2019-199629A)
(43)【公開日】2019年11月21日
(54)【発明の名称】溶射装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 4/134 20160101AFI20191025BHJP
   B05B 7/22 20060101ALI20191025BHJP
   H05H 1/26 20060101ALI20191025BHJP
【FI】
   C23C4/134
   B05B7/22
   H05H1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-93533(P2018-93533)
(22)【出願日】2018年5月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 八城
【テーマコード(参考)】
2G084
4F033
4K031
【Fターム(参考)】
2G084AA06
2G084BB11
2G084BB14
2G084BB27
2G084BB37
2G084CC23
2G084CC33
2G084DD11
2G084FF02
2G084FF07
2G084FF13
2G084FF14
2G084FF31
2G084FF39
2G084GG02
2G084GG06
2G084GG18
2G084HH10
2G084HH18
2G084HH41
2G084HH52
4F033QA01
4F033QB02Y
4F033QB05
4F033QB13Y
4F033QD03
4F033QD14
4F033QF11X
4F033QF17X
4F033QG07
4F033QG13
4F033QG19
4F033QK02X
4F033QK02Y
4F033QK09X
4F033QK09Y
4F033QK12X
4F033QK16X
4F033QK16Y
4F033QK23X
4F033QK23Y
4F033QK27X
4F033QK27Y
4K031DA04
4K031EA01
4K031EA07
(57)【要約】
【課題】溶射皮膜の品質を向上させる。
【解決手段】溶射装置は、輸送管と、回転体と、を備える。輸送管は、プラズマ噴流を形成してプラズマ溶射を実行する溶射ガンの上流に配置され、溶射材料を通過させる。回転体は、輸送管中に設けられ、溶射材料の供給方向と略直交する軸と、表面に回転方向に所定間隔ごとに形成される複数の溝部とを有し、輸送管を略遮蔽しつつ供給方向に回転駆動されるよう構成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ噴流を形成してプラズマ溶射を実行する溶射ガンの上流に配置され、溶射材料を通過させる輸送管と、
前記輸送管中に設けられ、前記溶射材料の供給方向と略直交する軸と、表面に回転方向に所定間隔ごとに形成される複数の溝部とを有し、前記輸送管を略遮蔽しつつ前記供給方向に回転駆動されるよう構成される回転体と、
を備える溶射装置。
【請求項2】
前記溝部は、前記回転方向に千鳥状に配置される、請求項1に記載の溶射装置。
【請求項3】
前記溝部は、前記回転方向に非連続的に配置される、請求項1または2に記載の溶射装置。
【請求項4】
前記溝部は、前記回転方向に沿って常に少なくとも1つ配置される、請求項1または2に記載の溶射装置。
【請求項5】
前記溝部は、半球状または楕円形状である、請求項1から4のいずれか1項に記載の溶射装置。
【請求項6】
前記輸送管中、前記回転体の上流に沈降する溶射材料の量を検知する検知部をさらに備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の溶射装置。
【請求項7】
前記回転体の上流に設けられ、溶射材料を分級する粉体分離器をさらに備える、請求項1から6のいずれか1項に記載の溶射装置。
【請求項8】
前記粉体分離器は、サイクロンセパレータである、請求項7に記載の溶射装置。
【請求項9】
前記粉体分離器は、前記溶射材料の静電気を除去する静電除去部を備える、請求項7または8に記載の溶射装置。
【請求項10】
前記粉体分離器は、前記溶射材料の水分を除去する加熱部を備える、請求項7から9のいずれか1項に記載の溶射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、溶射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶射装置は、溶射材料と作動ガスとを溶射ガンへ輸送及び供給し、溶射ガンへ電力を印加してプラズマを発生する。溶射ガンにおいては、発生したプラズマの熱により溶射材料が溶融され、プラズマ化した作動ガスとともに対象物へ溶射されて皮膜を形成する。溶射とは、プラズマを発生させ、プラズマの熱を用いて溶射材料を溶融し、溶融した溶射材料により対象物表面に溶射皮膜を形成する表面改質技術である。
【0003】
対象物表面に溶射皮膜を形成する技術としては、たとえば材料粉末を高温、高速にして基材に吹き付けることにより、材料粉末を基材に堆積、コーティングするコールドスプレー方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−201890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、溶射皮膜の品質を向上させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による溶射装置は、輸送管と、回転体とを備える。輸送管は、プラズマ噴流を形成してプラズマ溶射を実行する溶射ガンの上流に配置され、溶射材料を通過させる。回転体は、輸送管中に設けられ、溶射材料の供給方向と略直交する軸と、表面に回転方向に所定間隔ごとに形成される複数の溝部とを有し、輸送管を略遮蔽しつつ供給方向に回転駆動されるよう構成される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、溶射皮膜の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る溶射装置の構成の概要を示す図である。
図2図2は、一実施形態に係る溶射装置が備える供給部の一構成を溶射材料の供給方向に対して垂直方向から見た概略断面図である。
図3図3は、一実施形態に係る溶射装置が備える供給部の一構成を溶射材料の供給方向から見た概略断面図である。
図4A図4Aは、実施形態に係る溝部の一例を示す図である。
図4B図4Bは、図4Aに示す回転体の正面図である。
図5A図5Aは、実施形態に係る溝部の他の例を示す図である。
図5B図5Bは、図5Aに示す回転体の正面図である。
図6A図6Aは、実施形態に係る溝部のさらに他の例を示す図である。
図6B図6Bは、図6Aに示す回転体の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
開示する一つの実施形態において、溶射装置は、輸送管と、回転体と、を備える。輸送管は、プラズマ噴流を形成してプラズマ溶射を実行する溶射ガンの上流に配置され、溶射材料を通過させる。回転体は、輸送管中に設けられ、溶射材料の供給方向と略直交する軸と、表面に回転方向に所定間隔ごとに形成される複数の溝部とを有し、輸送管を略遮蔽しつつ供給方向に回転駆動されるよう構成される。
【0010】
また、開示する一つの実施形態において、溶射装置の回転体が備える溝部は、回転方向に千鳥状に配置されてもよい。
【0011】
また、開示する一つの実施形態において、溶射装置の回転体が備える溝部は、回転方向に非連続的に形成されてもよい。
【0012】
また、開示する一つの実施形態において、溝部は、回転方向に非連続的に形成されてもよい。
【0013】
また、開示する一つの実施形態において、溝部は、回転方向に沿って常に少なくとも1つ配置されてもよい。
【0014】
また、開示する一つの実施形態において、溝部は、半球状または楕円形状であってもよい。
【0015】
また、開示する一つの実施形態に係る溶射装置は、輸送管中、回転体の上流に沈降する溶射材料の量を検知する検知部をさらに備えてもよい。
【0016】
また、開示する一つの実施形態に係る溶射装置は、回転体の上流に設けられ、溶射材料を分級する粉体分離器をさらに備えてもよい。
【0017】
また、開示する一つの実施形態において、溶射装置が備える粉体分離器は、サイクロンセパレータであってもよい。
【0018】
また、開示する一つの実施形態において、溶射装置が備える粉体分離器は、溶射材料の静電気を除去する静電除去部を備えてもよい。
【0019】
また、開示する一つの実施形態において、溶射装置が備える粉体分離器は、溶射材料の水分を除去する加熱部を備えてもよい。
【0020】
以下に、開示する実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態は限定的なものではない。また、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0021】
(一実施形態に係る溶射装置の構成の一例)
図1は、一実施形態に係る溶射装置100の構成の概要を示す図である。図1に示す溶射装置100は、収容部1と、分級部2と、滞留部3と、供給部4と、溶射ガン5と、処理部6と、収集部7と、減圧部8と、を備える。
【0022】
収容部1は、溶射材料Mを収容し、溶射材料Mを下流の輸送管へ送出する。収容部1は、たとえば、ホッパ11と、フィーダ12と、エジェクタ13と、流量制御部14と、を備える。
【0023】
ホッパ11は溶射材料Mを収容する。溶射材料Mは粉末系の溶射材料である。また、溶射材料Mの粒子径は数10μmである。また、溶射材料Mの粒子径は10μm以下であることが好ましい。ホッパ11の下流にはフィーダ12が配置される。ホッパ11はフィーダ12に接続され、ホッパ11内に収容された溶射材料Mはフィーダ12により下流の輸送管へ送出される。フィーダ12はたとえばスクリューフィーダである。なお、フィーダ12に代えて、圧力制御部や加振器を設けて、溶射材料Mを下流に送出するように収容部1を構成してもよい。フィーダ12の下流にはエジェクタ13が配置される。エジェクタ13は、流量制御部14(たとえばマスフローコントローラ:MFC)とバルブを介して接続される。エジェクタ13には作動ガスまたは不活性ガスが導入される。エジェクタ13は、フィーダ12から供給される溶射材料Mを、導入されるガスとともに下流の輸送管へ送出する。流量制御部14は、エジェクタ13に導入される作動ガスまたは不活性ガスの流量を制御する。なお、エジェクタ13に導入される作動ガスまたは不活性ガスは予め加熱されていてもよい。
【0024】
分級部2は、収容部1から送出される溶射材料Mを分級する。分級とは粉体を粒子の大きさにより選別する処理である。分級部2は、たとえば、粉体分離器21と、エジェクタ22と、静電除去部23と、流量制御部24と、加速部25と、を備える。
【0025】
粉体分離器21は、たとえばサイクロンセパレータまたはサイクロンと呼ばれる装置であってよい。サイクロンセパレータは、内部が空洞で底部が漏斗型になった略円筒状の装置である。分級の対象である溶射材料Mが混じった気体は、サイクロンセパレータの外壁に設けられた導入口から円周方向に旋回流を成すよう導入される。たとえば気体は、サイクロンセパレータの導入口における接線と鋭角をなす方向に導入される。粒子径が大きい粒子または重量が重い粒子は、旋回流によって移送されサイクロンセパレータの漏斗状の底部に沈降する。他方、粒子径が小さい粒子または重量が軽い粒子は、旋回流と減圧部8による吸引によってサイクロンセパレータの中心部に形成される上昇流により、サイクロンセパレータの上部からサイクロンセパレータの外部に送出される。粉体分離器21は、このようにして、溶射材料Mのうち、所望の粒子径または所望の重量の粒子を選別して下流に送出する。
【0026】
エジェクタ22は、粉体分離器21の底部に沈降した溶射材料Mを粉体分離器21の上流側に接続される輸送管へと送出する。エジェクタ22は、粉体分離器21の底部に沈降した材料を循環させて再利用する場合に設けることができる。エジェクタ22には流量制御のための流量制御部(MFC)24が接続される。
【0027】
静電除去部23は、溶射材料Mの粒子間に発生する静電気を除去する。溶射材料Mの粒子は、粉体分離器21中で分級される際に粒子間引力が働くことで相互に付着、凝集した状態となる場合がある。静電除去部23は、溶射材料Mの粒子間に発生する静電気を除去し、粒子を相互に分離した状態とする。静電除去部23はたとえば、フォトイオナイザである。静電除去部23はたとえば、粉体分離器21の壁面に形成される透過窓を介して真空紫外光を照射することで溶射材料Mの粒子間に発生する静電気を除去する。なお、静電除去部23の具体的態様は特に限定されず、粒子間に発生する静電気を除去できるのであれば他の手段を利用してもよい。
【0028】
加速部25は、粉体分離器21により分級され下流に送出される溶射材料Mの流れを加速させる。加速部25は、たとえばマスフローコントローラを備え、作動ガスまたは不活性ガスを輸送管内に導入して溶射材料Mの流れを加速させる。
【0029】
滞留部3は、分級部2の下流に設けられる。滞留部3において、分級部2において分級された溶射材料Mは滞留部3の底部に沈降される。滞留部3はたとえば、サイクロントラップ31と、フィルタ32と、目詰まり防止部33とを備える。
【0030】
サイクロントラップ31には、下流の供給部4の輸送管41(後述、図2参照)と、減圧部8に接続される排気管と、が接続される。サイクロントラップ31はサイクロンセパレータと同様の構成および機能を有する。サイクロントラップ31は、上流から供給される溶射材料Mが混じった気体の旋回流を生じさせ、所望の径または重量の粒子を底部に沈降させる。サイクロントラップ31は、所望の径または重量の粒子以外の粒子を上部側に収集する。溶射材料Mは、滞留部3に到達する前に上流側の分級部2において分級されている。しかし、溶射に用いる場合には、分級部2において分級され滞留部3に到達した粒径の小さい粒子のうち粒径の比較的大きい粒子のみを用いることが望ましい場合がある。そこで、滞留部3において分級部2での分級に加えてさらに溶射材料Mを分級するものとしている。
【0031】
フィルタ32は、サイクロントラップ31の上部側に配置される。フィルタ32は、サイクロントラップ31により分級された所望の径または重量の粒子以外の粒子の、減圧部8側への流出を防止する。
【0032】
目詰まり防止部33は、フィルタ32よりも下流側すなわち減圧部8側の排気管内に設けられる。目詰まり防止部33は、フィルタ32の目詰まりを防止する。たとえば、目詰まり防止部33は、フィルタ32に向けてガスを噴出し、フィルタ32に付着した所望の径または重量の粒子以外の溶射材料Mをフィルタ32から除去する機能を有する。
【0033】
供給部4は、滞留部3の下流に設けられる。供給部4は、滞留部3のサイクロントラップ31の底部に沈降した溶射材料Mを、定量ずつ溶射ガン5に供給する。供給部4の詳細は後述する。
【0034】
溶射ガン5は、供給部4の下流に配置される。溶射ガン5は、アノード電極とカソード電極とを備え、電力印加によりプラズマを発生させる。溶射ガン5は、供給部4から供給される溶射材料Mをプラズマにより溶融し、溶融した溶射材料Mの溶滴をチャンバ60内に配置される対象物に衝突させることで、対象物上に溶射材料Mの溶射皮膜を形成する。
【0035】
処理部6は、溶射ガン5の下流に配置される。処理部6には、溶射ガン5による溶射の対象物が配置され、溶射処理が実行される。処理部6はたとえば、チャンバ60と、載置台61と、移動機構62と、流量制御部63と、真空計64と、搬出入口65と、を備える。
【0036】
チャンバ60は密閉チャンバであり、上部に溶射ガン5が配置される。たとえば、チャンバ60の天井に溶射材料Mの溶滴が放出される溶射ガン5のノズル出口が形成される。チャンバ60の内部空間Sは、溶射ガン5のノズル内空間と連通している。チャンバ60は、ガス置換と真空排気が行われる。ガス置換と真空排気を実現するための構成は特に限定されない。
【0037】
載置台61は、チャンバ60の内部空間Sに配置される。載置台61は、溶射の対象物が載置される台である。溶射の対象物はたとえば、シリコン、ガラス、セラミックス等の基板である。載置台61は加熱手段(図示せず)を備え、加熱手段により加熱される。載置台61はまた、載置台61の温度を測定する温度測定手段(図示せず)を備える。
【0038】
移動機構62は、チャンバ60および載置台61の下部に配置され、載置台61と接続される。移動機構62は、載置台61を移動させる機械的構造物である。移動機構62はたとえば、水平方向1軸、垂直方向1軸および回転方向に載置台61を移動させる。
【0039】
流量制御部63は、載置台61上に載置される対象物の下面にバルブを介して供給されるガスの流量を制御する。流量制御部63は、ガスを供給することにより、載置台61上に載置される対象物の下面、すなわち、載置台61側の面に溶射材料Mが付着することを防止する。
【0040】
真空計(Vacuum Gauge:VG)64は、チャンバ60と接続される。真空計64を用いてチャンバ60内の圧力を測定することができる。測定された圧力に基づいて、減圧ポンプ81の上流にある減圧バルブの開閉または開度制御を行い、チャンバ60の内部空間Sを所定の圧力に保つことができる。
【0041】
搬出入口65は、チャンバ60の任意の位置に設けられる。搬出入口65を介して溶射の対象物はチャンバ60内に搬入され、チャンバ60外に搬出される。
【0042】
収集部7は、処理部6の下流かつ下部に配置される。収集部7は、処理部6において溶射ガン5から射出される溶射材料Mのうち、溶射皮膜を形成せずチャンバ60内に浮遊する残留粒子を収集する。収集部7はたとえば、サイクロントラップ71と、フィルタ72と、目詰まり防止部73と、を備える。
【0043】
サイクロントラップ71は、滞留部3のサイクロントラップ31と同様の構成および機能を有する。サイクロントラップ71は、チャンバ60の下部に接続され、チャンバ60の内部空間とサイクロントラップ71の内部空間が連通する。サイクロントラップ71の底部には収集した溶射材料Mの粒子を収容するコンテナが接続されてもよい。
【0044】
サイクロントラップ71の上部すなわち下流口にはフィルタ72が設けられる。フィルタ72は、溶射材料Mの粒子の下流側への流出を防止する。また、フィルタ72の下流側に目詰まり防止部73が設けられる。フィルタ72および目詰まり防止部73の構成および機能は、滞留部3のフィルタ32および目詰まり防止部33と同様である。
【0045】
減圧部8は、収集部7の下流に設けられる。減圧部8はたとえば、真空ポンプ81である。減圧部8は、滞留部3のサイクロントラップ31の上部に接続される。そして、減圧部8は、滞留部3において分級された所望の径または重量の粒子以外の溶射材料Mの粒子をフィルタ32側に吸引する。また、減圧部8は、収集部7のサイクロントラップ71の上部と接続される。そして、減圧部8は、収集部7を通じてチャンバ60を真空排気する。同時に、分級された所望の径または重量の粒子以外の溶射材料Mの粒子をフィルタ72側に吸引する。
【0046】
(供給部4の構成)
図2は、一実施形態に係る溶射装置100が備える供給部4の一構成を溶射材料Mの供給方向(図2中、紙面上から下に向かう方向)に対して垂直方向から見た概略断面図である。
【0047】
供給部4は、溶射材料Mの粒子が沈降し滞留する滞留部3と、溶射ガン5との間に配置される。供給部4は、輸送管41と、回転体42と、第1ガス供給管43と、第2ガス供給管44と、検知部45と、を備える。
【0048】
輸送管41は、滞留部3において溶射材料Mの粒子が沈降するサイクロントラップ31の底部と接続する。輸送管41の内部かつ回転体42の上流には滞留部3において沈降した溶射材料Mの粒子が滞留する。
【0049】
回転体42は、回転軸が略水平方向に配置された略円筒形状である。回転体42は、輸送管41の内部に配置されて輸送管41を閉塞する。回転体42の軸方向(図2の紙面に直交する方向)は、輸送管41を通じて供給される溶射材料Mの供給方向(図2の紙面の上から下に向かう方向)に対して略垂直である。回転体42は輸送管41内に軸止され、駆動部(後述)により図2に示す円の中心を軸として図2において時計回り方向に回転駆動される。回転体42は、円筒側面の中央部分に所定間隔で形成される複数の溝部42aを有する。輸送管41内に滞留する溶射材料Mの粒子は、回転体42の溝部42a内に入り込み、回転体42の回転に伴い、輸送管41内を滞留部3側から溶射ガン5側へと移送される。
【0050】
第1ガス供給管43は、輸送管41内にキャリアガスを導入する。第1ガス供給管43は、流量制御部(MFC,図1参照)と接続され、流量制御部の制御下でキャリアガスを輸送管41内に導入する。第1ガス供給管43の排出口は、回転体42よりも下流側に形成される。第1ガス供給管43から導入されるキャリアガスにより、回転体42の回転によって溶射ガン5側に移送された溶射材料Mの粒子は溶射ガン5へと送られる。
【0051】
第2ガス供給管44は、輸送管41内にパージガスを導入する。第2ガス供給管44は、流量制御部(図示せず)と接続され、流量制御部の制御下でパージガスを輸送管41内に導入する。第2ガス供給管44は、詰まり防止用第2ガス供給管44aと軸用第2ガス供給管44bとを備える。詰まり防止用第2ガス供給管44aは、回転体42の溝部42aに向けてパージガスを吹き付けるよう、パージガスを供給する。詰まり防止用第2ガス供給管44aから供給されるパージガスは、回転体42の溝部42a内に溶射材料Mの粒子が付着して溝部42aが埋まったままになることを防止する機能を持つ。他方、軸用第2ガス供給管44bは、軸受け部にパージガスを吹き付けるよう、パージガスを供給する。軸用第2ガス供給管44bから供給されるパージガスは、回転体42の軸部分や、軸受け部に溶射材料Mの粒子が付着することを防止する。詰まり防止用第2ガス供給管44aと軸用第2ガス供給管44bの具体的な形状や、パージガスが噴出される開口部の位置などは特に限定されない。
【0052】
検知部45は、輸送管41中、回転体42の上流に沈降する溶射材料Mの量を検知する。検知部45の構成は特に限定されない。検知部45は、回転体42の上流に沈降する溶射材料Mの量が予め定められた規定の量よりも少なくなったとき、その旨を検知する。溶射装置100は、検知部45における検知結果に基づき、収容部1から下流に供給する溶射材料Mの量を調整する。たとえば、検知部45は、溶射装置100の制御部(図示せず)と接続され、検知部45の検知結果に応じて、制御部は収容部1から下流に供給する溶射材料Mの量や流量制御部14の制御流量を調整する。検知部45はこのように、溶射ガン5に供給される溶射材料Mの量を一定に維持する機能を有する。
【0053】
図3は、一実施形態に係る溶射装置100が備える供給部4の一構成を溶射材料Mの供給方向から見た概略断面図である。図3に示すように、回転体42には、回転体42の回転駆動を実現するための機構が接続される。図3の例では、回転体42に、軸継手47とモータ48とが接続される。回転体42は、回転に伴って溝部42aが輸送管41内を通過するように輸送管41内に配置され軸支される。回転体42は、輸送管41および第1、第2ガス供給管43,44が形成される構造体に固定される。また、輸送管41内から溶射材料Mの粒子が周囲の構造体に漏れ出さないよう、回転体42の両端側と他の構造体との間に回転軸シール等の封止手段46が配置される。軸用第2ガス供給管44bは、封止手段46の近傍に開口部が配置されてもよい。
【0054】
(溝部42aの形状の例)
図4Aは、実施形態に係る溝部の一例を示す図である。また、図4Bは、図4Aに示す回転体の正面図である。図4Aおよび図4Bに示す回転体42Aは、回転体42の一例である。また、図4Aおよび図4Bに示す溝部42a1は、溝部42aの一例である。
【0055】
図4Aは、図3と同様の方向から回転体の一例42Aを見た場合の概略図である。図4Aの例では、溝部42a1は、回転体42Aの軸方向に延びる楕円形状の溝である。溝部42a1の軸方向の長さは輸送管41の直径(図4A中、「W」で示す。)と略同一である。溝部42a1の円周方向の長さは特に限定されない。複数の溝部42a1は各々同量の溶射材料Mの粒子を収容できる大きさに形成される。また、複数の溝部42a1は、回転体42Aの回転方向に所定の間隔をあけて配置される。図4Bから分かるように、溝部42a1は、回転体42Aの円周上に等間隔に配置される、断面半円状の凹部である。このように複数の溝部42a1を配置することで、回転体42Aの回転にともない、滞留部3側から溶射ガン5側に溶射材料Mを定量ずつ移送することができる。また、回転体42Aが回転する際に、輸送管41の内壁が溝部42a1の縁に沿って動くことで、輸送管41は溝部42a1に収容された粒子を摺り切りする機能を果たす。このため、供給部4は、溝部42a1に収容される粒子の量を定量に均すことができる。
【0056】
図5Aは、実施形態に係る溝部の他の例を示す図である。また、図5Bは、図5Aに示す回転体の正面図である。図5Aおよび図5Bに示す回転体42Bは、回転体42の一例である。また、図5Aおよび図5Bに示す溝部42a2は、溝部42aの一例である。
【0057】
図5Aの例では、溝部42a2は、回転体42Bの軸方向に異なる位置に互い違いに千鳥状に配置される半球状の溝である。図5Aの例では、溝部42a2は、輸送管41の直径と略同一の幅の間に配置される。また、溝部42a2は、回転体42Bの回転方向に所定の間隔をあけて配置される。図5Bから分かるように、溝部42a2は、回転体42Bの円周上に等間隔に配置される、断面半円状の凹部である。このように溝部42a2を形成した場合、供給部4は、溶射材料Mを定量ずつ溶射ガン5側に移送することができる。
【0058】
図6Aは、実施形態に係る溝部のさらに他の例を示す図である。また、図6Bは、図6Aに示す回転体の正面図である。図6Aおよび図6Bに示す回転体42Cは、回転体42の一例である。また、図6Aおよび図6Bに示す溝部42a3は、溝部42aの一例である。
【0059】
図6Aの例では、溝部42a3は、図5Aの例と同様、回転体42Cの軸方向に異なる位置に互い違いに千鳥状に配置される半球状の溝である。ただし、図6Aの例では、図5Aの例よりも回転体42Cの回転方向における溝部42a3の間隔が狭い。図6Bから分かるように、溝部42a3の間隔は図5Bに示す溝部42a2の間隔の約2分の1である。このように、溝部42a3の回転方向の間隔を狭くすることで、供給部4は途切れることなく定量ずつ溶射材料Mを溶射ガン5側に移送することができる。
【0060】
なお、溝部42aを回転体42の回転方向に連続する形状とした場合、溝部42aから一様に粒子が落下するとは限らないため、溶射ガン5側への供給量が定量とならないことが考えられる。このため、本実施形態においては、溝部42aは、回転体42の回転方向に所定間隔をあけて非連続的に形成する。ただし、回転体42の回転方向に非連続的に形成されている限り、溝部42aの形状は楕円形状、半球状に限定されない。また、回転体42の回転方向に沿って常に少なくとも一つの溝部42aが配置されるようにした場合には、溶射ガン5側に途切れなく溶射材料Mを移送することができる。なお、回転体42の軸方向に沿って1以上の溝部42aを形成してもよい。
【0061】
(実施形態の効果)
溶射技術を用いて形成される溶射皮膜は緻密な膜であることが好ましい。このため、溶射材料を微粒子化すること、微粒子を均一にすることが望ましい。溶射材料の粒子径等が均一でない場合、全ての粒子が一様に溶融せず、形成される皮膜に未溶融粒子が混在し皮膜の品質が低下する可能性がある。たとえば、溶射皮膜中に酸化膜が混在したり、気孔が内蔵されたりする欠陥が発生する可能性がある。この場合、所望のレベルの機械的強度や特性を有する溶射皮膜が形成できない可能性がある。上記実施形態に係る溶射装置は、輸送管と、回転体と、を備える。輸送管は、プラズマ噴流を形成してプラズマ溶射を実行する溶射ガンの上流に配置され、溶射材料を通過させる。回転体は、輸送管中に設けられ、溶射材料の供給方向と略直交する軸と、表面に回転方向に所定間隔ごとに形成される複数の溝部とを有し、輸送管を略遮蔽しつつ供給方向に回転駆動されるよう構成される。このため、溶射装置は、溶射ガンに対して定量ずつ、溶射材料を供給することができる。このため、溶射装置は、溶融状態を均一にすることができ、溶射皮膜の品質を向上させることができる。
【0062】
また、上記実施形態において溶射装置の回転体が備える溝部は、回転体の回転方向に千鳥状に配置されてもよい。このように構成した場合、溶射装置は定量ずつ所望の量の溶射材料を溶射ガンに供給することができる。このため、溶射装置は、溶射ガンにより形成される溶射皮膜の品質を向上させることができる。
【0063】
また、上記実施形態において溶射装置の回転体が備える溝部は、回転体の回転方向に非連続的に配置されてもよい。このように構成した場合、溶射装置は、溶射材料を連続的に供給する場合と比較して溶射ガンに供給される溶射材料の量をより正確に制御しつつ供給することができる。このため、溶射装置は、溶射ガンにより形成される溶射皮膜の品質を向上させることができる。
【0064】
また、上記実施形態において溶射装置の回転体が備える溝部は、回転体の回転方向に沿って常に少なくとも一つ配置されてもよい。このように構成した場合、溶射装置は、溶射ガンに供給する溶射材料の量を正確に制御しつつ、途切れなく供給を実行することができる。このため、溶射装置は、溶射ガンにより形成される溶射皮膜の品質を向上させることができる。
【0065】
また、上記実施形態において溶射装置の回転体が備える溝部は、半球状または楕円形状であってもよい。このように構成した場合、溝部の形成が容易となり、溶射装置のコストの増加を抑制することができる。
【0066】
また、上記実施形態に係る溶射装置は、輸送管中、回転体の上流に沈降する溶射材料の量を検知する検知部をさらに備えてもよい。このように構成した場合、回転体の上流に沈降する溶射材料があらかじめ設定した規定量より減少したことを検知することができる。このため、溶射装置は、溶射材料の供給切れを防止することができ、溶射ガンに供給される溶射材料を常に一定量で正確に供給することができる。
【0067】
また、上記実施形態に係る溶射装置は、回転体の上流に設けられ、溶射材料を分級する粉体分離器をさらに備えてもよい。粉体分離器を設けることにより、溶射装置は、さらに溶射ガンに供給される溶射材料の粒径や重量を均一化することができる。このため、溶射装置は、溶射ガンにより形成される溶射皮膜の品質を向上させることができる。
【0068】
また、上記実施形態に係る溶射装置において、粉体分離器はサイクロンセパレータであってもよい。サイクロンセパレータを用いることで、溶射装置は、溶射材料の粒径や重量を均一化することができ、また、所望の粒径や重量を柔軟に設定して分級を行うことができる。
【0069】
また、上記実施形態に係る溶射装置において、粉体分離器は、溶射材料の静電気を除去する静電除去部を備えてもよい。また、粉体分離器は、溶射材料の水分を除去する加熱部を備えてもよい。かかる構成により、溶射装置は、溶射ガンに供給される溶射材料の凝集や相互付着を防止することができる。このため、溶射装置は、溶射ガンにより形成される溶射皮膜の品質を向上させることができる。
【0070】
また、上記実施形態に係る溶射装置は、溶射材料の粒子径や重量を均質にするため分級部を備える。このため、実施形態に係る溶射装置は、一定品質の溶射材料の粒子を溶射装置内で分級することができる。この点、上記実施形態に係る溶射装置は、分級部を備えることにより、溶射材料の粒子径を均一化することができる。
【0071】
また、上記実施形態では、溶射材料の粒子径を数10μm、好ましくは10μm以下とした。そして溶射装置は、分級部、供給部等において粒子径、重量が均一な粒子を選別して溶射ガンに供給する。このため、実施形態の溶射装置は、粒子径が数10μmと大きい溶射材料がそのまま溶射ガンに供給されて未溶融粒子が残存することを防止できる。また、実施形態の溶射装置は、溶射材料を分級するだけでなく、供給部において一定量ずつ供給できる。このため、実施形態の溶射装置は、溶射材料の粒子径を均一化し、かつ、一定量ずつ溶射ガンに供給することができる。
【0072】
また、上記実施形態に係る溶射装置は、エジェクタのエジェクタ効果により、作動ガスまたは不活性ガスとともに溶射材料を輸送することができる。また、エジェクタに供給する作動ガスまたは不活性ガスを予め加熱しておくことにより、輸送中の粒子が相互に付着、凝集した状態となることを防止することができる。
【0073】
また、上記実施形態に係る溶射装置は、分級された溶射材料の粒子を加速させる加速部を備える。このため、溶射装置は、輸送途中で圧力損失などにより流速が低下することを防止することができる。
【0074】
また、上記実施形態に係る溶射装置は、溶射材料から均質かつ所望の粒径を有する粒子を抽出して溶射ガンに供給する。このため、溶射ガンにおいて印加する電力量を低減することができる。また、溶射装置は、予め均質な粒子を抽出して溶射ガンに供給するため、未溶融粒子をなくして緻密な溶射皮膜を形成することができる。
【0075】
また、上記実施形態に係る溶射装置は、作動ガスまたは不活性ガスの雰囲気で酸素に触れることなく溶射処理を実行できるため、酸素欠陥のない溶射皮膜を形成することができる。
【0076】
また、上記実施形態に係る溶射装置は、チャンバが密閉構造を有しガス置換と真空排気を実行できるように構成している。さらに、上記実施形態に係る溶射装置は、減圧部を備え、装置内の空間を減圧環境に維持することを可能としている。このため、上記実施形態に係る溶射装置は、溶射皮膜の気孔欠陥を抑制し、溶射皮膜の品質を向上させることができる。
【0077】
また、上記実施形態に係る溶射装置の載置台は加熱手段を備える。このため、溶射装置は、載置台の温度を調整し、溶射温度に近づけて溶射皮膜を形成することができる。さらに、溶射装置の載置台は移動機構に接続される。このため、溶射装置は、載置台に載置される対象物を移動させつつ溶射処理を行うことで、対象物に均一な溶射皮膜を形成することができる。
【0078】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 収容部
13 エジェクタ
2 分級部
21 粉体分離器
23 静電除去部
3 滞留部
31 サイクロントラップ
4 供給部
41 輸送管
42 回転体
42a,42a1,42a2,42a3 溝部
45 検知部
5 溶射ガン
6 処理部
60 チャンバ
61 載置台
62 移動機構
8 減圧部
81 真空ポンプ
100 溶射装置
M 溶射材料
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B