特開2019-201373(P2019-201373A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-201373(P2019-201373A)
(43)【公開日】2019年11月21日
(54)【発明の名称】出力回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/30 20060101AFI20191025BHJP
【FI】
   H03F3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-95940(P2018-95940)
(22)【出願日】2018年5月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083194
【弁理士】
【氏名又は名称】長尾 常明
(72)【発明者】
【氏名】松田 丈智
(72)【発明者】
【氏名】三柴 竹太郎
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA12
5J500AA17
5J500AA63
5J500AC65
5J500AF15
5J500AH02
5J500AH17
5J500AH19
5J500AH25
5J500AK02
5J500AK05
5J500AK12
5J500AM08
5J500AT01
5J500WU08
(57)【要約】
【課題】回路規模の縮小と消費電流の低減を実現しながらスルーレートを改善した出力回路を提供する。
【解決手段】エミッタ接地型AB級出力回路10の前段に出力段駆動回路20が接続される。出力段駆動回路20は、トランジスタQ1のベースと電源端子1間に接続される抵抗R3と、トランジスタQ1のベースがエミッタに接続されGm増幅器30の出力端子がベースに接続されるトランジスタQ7と、トランジスタQ7のコレクタがコレクタとベースに接続されエミッタが電源端子2に接続されるトランジスタQ5と、トランジスタQ5のベースがベースに接続されエミッタが電源端子2に接続されコレクタがトランジスタQ2のベースに接続されるトランジスタQ6と、ベースに定電圧V1が印加されコレクタがトランジスタQ6のコレクタに接続されエミッタが抵抗R2を介して電源端子1に接続されるトランジスタQ8とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源端子にエミッタが接続された第1導電型の第1トランジスタと、第2電源端子にエミッタが接続されコレクタが前記第1トランジスタのコレクタと共通に出力端子に接続された第2導電型の第2トランジスタからなるプッシュプル出力部と、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタのアイドリング電流を設定するアイドリング電流設定部を有するエミッタ接地型AB級出力回路を有する出力回路において、
前記第1トランジスタのベースと前記第1電源端子間に接続される第3抵抗と、前記第1トランジスタのベースがエミッタに接続され前段の増幅器の出力端子がベースに接続される第1導電型の第7トランジスタと、該第7トランジスタのコレクタがコレクタとベースに接続されエミッタは前記第2電源端子に接続される第2導電型の第5トランジスタと、該第5トランジスタのベースがベースに接続されエミッタが前記第2電源端子に接続されコレクタが前記第2トランジスタのベースに接続される第2導電型の第6トランジスタと、ベースに定電圧が印加されコレクタが前記第6トランジスタのコレクタに接続されエミッタが第2抵抗を介して前記第1電源端子に接続される第1導電型の第8トランジスタとを備えた出力段駆動回路をさらに有することを特徴とする出力回路。
【請求項2】
第1電源端子にエミッタが接続された第1導電型の第1トランジスタと、第2電源端子にエミッタが接続されコレクタが前記第1トランジスタのコレクタと共通に出力端子に接続された第2導電型の第2トランジスタからなるプッシュプル出力部と、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタのアイドリング電流を設定するアイドリング電流設定部を有するエミッタ接地型AB級出力回路を有する出力回路において、
前記第2トランジスタのベースと前記第2電源端子間に接続される第3抵抗と、前記第2トランジスタのベースがエミッタに接続され前段の増幅器の出力端子がベースに接続される第2導電型の第7トランジスタと、該第7トランジスタのコレクタがコレクタとベースに接続されエミッタが前記第1電源端子に接続される第1導電型の第5トランジスタと、該第5トランジスタのベースがベースに接続されエミッタが前記第1電源端子に接続されコレクタが前記第1トランジスタのベースの間に接続される第1導電型の第6トランジスタと、ベースに定電圧が印加されコレクタが前記第6トランジスタのコレクタに接続されエミッタが第2抵抗を介して前記第2電源端子に接続される第2導電型の第8トランジスタとを備えた出力段駆動回路をさらに有することを特徴とする出力回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の出力回路において、前記ベースをゲートに、前記コレクタをドレインに、前記エミッタをソースに置き換えたことを特徴とする出力回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体集積回路を用いたエミッタ接地型AB級出力回路を有する出力回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に従来の出力回路を示す(特許文献1)。10はエミッタ接地型AB級出力回路、30はGm増幅器、40はA級出力段駆動回路、1は高電位(VCC)電源端子(第1電源端子)、2は低電位(VEE)電源端子(第2電源端子)、3は入力端子、4は出力端子である。
【0003】
エミッタ接地型AB級出力回路10において、Q1,Q3はPNPトランジスタ、Q2,Q4はNPNトランジスタ、I1,I2,I3,I4は電流源、D1,D2,D3,D4はダイオードである。トランジスタQ1,Q2はそのコレクタが負荷抵抗R1と出力端子4に共通接続されたことによりAB級増幅用のプッシュプル出力部を構成している。電流源I1〜I4とトランジスタQ3,Q4とダイオードD1〜D4は、プッシュプル出力部のトランジスタQ1,Q2のアイドリング電流を設定するアイドリング電流設定部を構成している。Gm増幅器30は入力端子3に入力する入力電圧VINに応じた電流を出力するが、その出力電流の不足を補うために、A級出力段駆動回路40が接続されれている。A級出力段駆動回路40において、Q13はPNPトランジスタ、I6は電流源である。
【0004】
エミッタ接地型AB級出力回路10のアイドリング電流設定部では、電流源I1がダイオードD1,D2に電流を供給し、電流源I2,I3がトランジスタQ3,Q4にコレクタ電流を供給し、電流源I4がダイオードD3,D4に電流を供給する。そして、ダイオードD1,D2の順方向電圧加算値(Vf1+Vf2)からトランジスタQ3のエミッタ・ベース間電圧Vbe(Q3)を差し引いた電圧が、トランジスタQ1のベース・エミッタ間にバイアス電圧として印加される。また、ダイオードD3,D4の順方向電圧加算値(Vf3+Vf4)からトランジスタQ4のベース・エミッタ間電圧Vbe(Q4)を差し引いた電圧が、トランジスタQ2のベース・エミッタ間にバイアス電圧として印加される。
【0005】
このような回路構成において周波数特性を伸長しスルーレートの改善を狙う際には、Gm増幅器30の出力電流の変化に応じて、トランジスタQ1,Q2のベース電位をいかに迅速に所望の電位へと変動させることができるかが重要となる。しかし、トランジスタQ1,Q2はプッシュプル出力段を構成するパワートランジスタであり、エミッタ面積が大きくベース端子に付加される容量成分が大きい。また、一般的にはトランジスタQ1,Q2のベース・コレクタ間に容量を付加しミラー効果を利用した位相補償も行なわれる。このため、総合的にはトランジスタQ1,Q2のベース端子に付加される容量成分は大きなものになり、スルーレートの向上を図る際にはエミッタ接地型AB級出力回路10の前段回路による駆動能力の増強がさらに必要となる。
【0006】
このスルーレートを改善する中でネックとなるのが、トランジスタQ2のベース電位を電圧VEE側へと低下させる動作である。トランジスタQ1のベース電位については、そのトランジスタQ1が前段のA級出力段駆動回路40で直接駆動されるので迅速な変化が可能となるが、トランジスタQ2のベース電位については、A級出力段駆動回路40が全ての動作を担える訳ではない。
【0007】
トランジスタQ2をONさせるベース電流Ib2はA級出力段駆動回路40の電流源I6が供給しているが、トランジスタQ2を、そのベース電位を電圧VEE側へ変動させてOFFさせる動作時には、トランジスタQ2のベース電荷を抜く電流経路が電流源I2しかない。電流源I2の役割は、本来的にはトランジスタQ1,Q2のベース電位を決定するためのバイアス用であるので、通常は数百μA程度に設定されていて、この電流源I2の電流値を増加させるには限界がある。そのため、トランジスタQ2のベース端子に溜まった電荷を放電する電流経路が電流源I2のみであると、トランジスタQ2のベース電位を電圧VEE側に低下させる動作が遅くなってしまう。
【0008】
トランジスタQ2のベース電位の電圧VEE側への変動が遅くなるということは、トランジスタQ2がOFFする動作が遅くなってしまうということである。このとき、トランジスタQ2のインピーダンスが十分に高くなっていないので、トランジスタQ1が先にONしていると、そのトランジスタQ1から出力端子4に流れるべき電流がトランジスタQ2側に流れてしまう。このため、出力電圧VOUTの上昇が遅くなるので、この部分の動作を改善しなければ、スルーレートの改善が回路構成上で困難であるという課題を持っていると言える。
【0009】
そこで、トランジスタQ1,Q2のベースを駆動する能力を改善するために、特許文献2が提案されている。図6にその出力回路を示す。図6の出力回路は、Gm増幅器30の後段にコレクタ接地型AB級出力回路50を接続し、そのコレクタ接地型AB級出力回路50とエミッタ接地型AB級出力回路10の間にレベルシフト回路60を介在させたものである。
【0010】
コレクタ接地型AB級出力回路50において、Q14,Q16,Q17はNPNトランジスタ、Q15はPNPトランジスタ、I7,I8,I9は電流源である。また、レベルシフト回路60において、Q18,Q19はNPNトランジスタ、Q20,Q21はPNPトランジスタ、I10,I11,I12は電流源、61は電圧V2の電圧源である。
【0011】
コレクタ接地型AB級出力回路50は、Gm増幅器30から出力する吸込電流と吐出電流を増幅し、トランジスタQ14,Q15の共通エミッタから低インピーダンス・高駆動能力で、吸込電流Ib1c又は吐出電流Ib2cとして出力する。レベルシフト回路60は、トランジスタQ18,Q19がカレントミラー接続され、トランジスタQ20,Q21がカレントミラー接続され、トランジスタQ20のコレクタは電圧源61により電圧V2に固定されれている。このため、トランジスタQ19,Q21のベースは固定バイアスされている。よって、入力する吸込電流Ib1cは吸込電流Ib1にレベルシフトされて出力し、入力する吐出電流Ib2cは吐出電流Ib2にレベルシフトされて出力する。つまり、吸込電流Ib1と吐出電流Ib2は異なる経路を流れる。
【0012】
前述のトランジスタQ2のベース電位を電圧VEE側へ低下させる動作については、そのトランジスタQ2のベースと電源端子2の間に接続された電流源I12によって、トランジスタQ2のベースから電荷を抜く能力が補充される。また、トランジスタQ1のベース電位を電圧VCC側へ上昇させる動作についても、トランジスタQ1のベースと電源端子1の間に接続された電流源I11によって、トランジスタQ1のベースを駆動する能力が増大される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−33537号公報
【特許文献2】特開2011−9906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところが、図6の出力回路では、コレクタ接地型AB級出力回路50に加えて、レベルシフト回路60が必要となって回路規模が大きく増加し、それに伴ってチップサイズが拡大する問題がある。また、アイドリング電流を流し続けなければならない素子が増大することで消費電流も増加して省電力性にも課題が残っていた。
【0015】
本発明の目的は、回路規模の縮小と消費電流の低減を実現しながらスルーレートを改善した出力回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、第1電源端子にエミッタが接続された第1導電型の第1トランジスタと、第2電源端子にエミッタが接続されコレクタが前記第1トランジスタのコレクタと共通に出力端子に接続された第2導電型の第2トランジスタからなるプッシュプル出力部と、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタのアイドリング電流を設定するアイドリング電流設定部を有するエミッタ接地型AB級出力回路を有する出力回路において、前記第1トランジスタのベースと前記第1電源端子間に接続される第3抵抗と、前記第1トランジスタのベースがエミッタに接続され前段の増幅器の出力端子がベースに接続される第1導電型の第7トランジスタと、該第7トランジスタのコレクタがコレクタとベースに接続されエミッタは前記第2電源端子に接続される第2導電型の第5トランジスタと、該第5トランジスタのベースがベースに接続されエミッタが前記第2電源端子に接続されコレクタが前記第2トランジスタのベースに接続される第2導電型の第6トランジスタと、ベースに定電圧が印加されコレクタが前記第6トランジスタのコレクタに接続されエミッタが第2抵抗を介して前記第1電源端子に接続される第1導電型の第8トランジスタとを備えた出力段駆動回路をさらに有することを特徴とする。
【0017】
請求項2にかかる発明は、第1電源端子にエミッタが接続された第1導電型の第1トランジスタと、第2電源端子にエミッタが接続されコレクタが前記第1トランジスタのコレクタと共通に出力端子に接続された第2導電型の第2トランジスタからなるプッシュプル出力部と、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタのアイドリング電流を設定するアイドリング電流設定部を有するエミッタ接地型AB級出力回路を有する出力回路において、前記第2トランジスタのベースと前記第2電源端子間に接続される第3抵抗と、前記第2トランジスタのベースがエミッタに接続され前段の増幅器の出力端子がベースに接続される第2導電型の第7トランジスタと、該第7トランジスタのコレクタがコレクタとベースに接続されエミッタが前記第1電源端子に接続される第1導電型の第5トランジスタと、該第5トランジスタのベースがベースに接続されエミッタが前記第1電源端子に接続されコレクタが前記第1トランジスタのベースの間に接続される第1導電型の第6トランジスタと、ベースに定電圧が印加されコレクタが前記第6トランジスタのコレクタに接続されエミッタが第2抵抗を介して前記第2電源端子に接続される第2導電型の第8トランジスタとを備えた出力段駆動回路をさらに有することを特徴とする。
【0018】
請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載の出力回路において、前記ベースをゲートに、前記コレクタをドレインに、前記エミッタをソースに置き換えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、エミッタ接地型AB級出力回路に追加するのは出力段駆動回路のみであるので、図6で説明した従来の出力回路に比べて回路規模を小さくすることができ、消費電流も削減でき、しかもプッシュプル出力部の動作速度を高速化してスルーレートを改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施例の出力回路の回路図である。
図2図1の出力回路の変形例の回路図である。
図3】第2実施例の出力回路の回路図である。
図4図3の出力回路の変形例の回路図である。
図5】従来の出力回路の回路図である。
図6】従来の別の出力回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施例>
図1に第1実施例の出力回路を示す。エミッタ接地型AB級出力回路10の構成については、図5図6で説明したものと同じであり、同じ符号を付けて重複説明は省略する。20は出力段駆動回路である。この出力段駆動回路20において、Q5,Q6はカレントミラー接続されたNPNトランジスタ、Q7,Q8はPNPトランジスタ、R2,R3は抵抗である。
【0022】
出力段駆動回路20は、トランジスタQ7に前段のGm増幅器30からの出力信号が入力される。エミッタ接地型AB級出力回路10のトランジスタQ1のベース電位を電圧VCC側に上昇させるトランジスタQ1のOFF動作時は、このトランジスタQ7と抵抗R3が、トランジスタQ1のベースをエミッタフォロア出力でそのトランジスタQ1を駆動する。エミッタ接地型AB級出力回路10のトランジスタQ2のベース電位を電圧VEE側に低下させるトランジスタQ2のOFF動作時は、トランジスタQ7のコレクタ電流をトランジスタQ5,Q6のカレントミラーで折り返した電流でそのトランジスタQ2を駆動する。トランジスタQ6は、ベースに固定電圧V1が印加されたいわゆるベース接地のトランジスタQ8を介して抵抗R2に接続されているので、トランジスタQ2のベース電位と抵抗R2に発生する電圧が切り離されている。
【0023】
さて、Gm増幅器30への入力電圧が上昇するときは、そのGm増幅器30から出力する吸込電流が増加するので、トランジスタQ7のコレクタ電流が増大し、トランジスタQ6のコレクタ電流も増大する。このため、エミッタ接地型AB級出力回路10から出力段駆動回路20へは2系統の電流Ib1a,Ib1bが流れて増大電流となるので、トランジスタQ1がONする方向に強く駆動される。このとき、トランジスタQ2については、電流源I2の補助としてのトランジスタQ6のコレクタ電流の増大により、そのベース電位の電圧VEE側への低下が迅速に行われるので、トランジスタQ1がONになった後もトランジスタQ2が完全にOFFになりきらない事態が発生することを防止することができる。
【0024】
一方、Gm増幅器30への入力電圧が下降するときは、そのGm増幅器30から出力する吸込電流が減少するので、トランジスタQ7のコレクタ電流が減少し、トランジスタQ6のコレクタ電流も減少する。このため、出力段駆動回路20からエミッタ接地型AB級出力回路10へは2系統の電流Ib2a,Ib2bが流れて増大電流となるので、トランジスタQ2がONする方向に強く駆動される。このとき、トランジスタQ1については、トランジスタQ7のコレクタ電流減少により、そのベース電位の電圧VCC側への上昇が迅速に行われるので、トランジスタQ2がONになった後もトランジスタQ1が完全にOFFになりきらない事態が発生することを防止することができる。
【0025】
このように、トランジスタQ1をONしトランジスタQ2をOFFさせるときは、2系統の電流Ib1a,Ib1bが流れる。また、トランジスタQ1をOFFしトランジスタQ2をONさせるときは、2系統の電流Ib2a,Ib2bが流れる。このため、トランジスタQ1,Q2のON動作及びOFF動作を高速化させて、スルーレートを向上させることができる。共通素子の定数を変えずに図6の出力回路と比較した検証結果では、出力電圧VOUTの立ち上がりで40[V/μsec]程度、立下りで10[V/μsec]程度のスルーレート改善が見込まれる。他の素子の定数調整も行い最適化すればこれ以上の改善も見込まれる。
【0026】
また、従来の図6の出力回路では、コレクタ接地型AB級出力回路50とレベルシフト回路60を構成するために少なくとも能動素子と受動素子として14点を必要としていたが、本実施例の出力回路では出力段駆動回路20を6点の素子で構成することができる。よって、素子数を半分以下に削減することが可能となり、回路規模を大幅に縮小することができる。
【0027】
さらに、従来の図6の出力回路では、アイドリング電流を必要とする箇所が5段であったが、本実施例の出力回路では2段のみで構成できる。これに伴い1mA強の消費電流の削減も見込まれる。
【0028】
図2に第1実施例の変形例の出力回路を示す。ここでは、出力段駆動回路20を逆極性のトランジスタで構成した出力段駆動回路20aに置き換えている。出力段駆動回路20aにおいて、Q5a,Q6aはPNPトランジスタ、Q7a,Q8aはNPNトランジスタ、R2a,R3aは抵抗である。トランジスタQ1はトランジスタQ6aのコレクタ電位で駆動され、トランジスタQ2はトランジスタQ7aのエミッタ電位で駆動される点が図1の出力回路と異なるが、全体動作は図1の出力回路と同様であるので、詳細説明は省略する。
【0029】
<第2実施例>
図3に第2実施例の出力回路を示す。この図3図1におけるGm増幅器30を具体化したものである。このGm増幅器30において、Q9,Q10はNPNトランジスタ、Q11,Q12はPNPトランジスタ、I5は電流源である。トランジスタQ9,Q10と電流源I5は、入力端子3p、3nの入力電圧VIN+,VIN−が入力する差動入力段を構成する。トランジスタQ11,Q12は差動のトランジスタQ9,Q10の能動負荷として機能するカレントミラーである。このカレントミラーではそのベース電流補償用素子として、出力段駆動回路20のトランジスタQ8と抵抗R2を兼用している。
【0030】
図4に第2実施例の変形例の出力回路を示す。ここでは、図2と同様に出力段駆動回路20を逆極性のトランジスタで構成した出力段駆動回路20aに置き換えるとともに、Gm増幅器30を逆極性のトランジスタで構成したGm増幅器30aに置き換えている。Gm増幅器30aにおいて、Q9a,Q10aはPNPトランジスタ、Q11a,Q12aはNPNトランジスタ、I5aは電流源である。
【0031】
<その他の実施例>
なお、以上説明した図1図4の出力回路において、PNPトランジスタはPMOSトランジスタに置き換え、NPNトランジスタはNMOSトランジスタに置き換えることができる。このとき、ベースはゲートに、コレクタはドレインに、エミッタはソースに置き換える。
【符号の説明】
【0032】
10:エミッタ接地型AB級出力回路
20,20a:出力段駆動回路
30,30a:Gm増幅器
40:A級出力段駆動回路
50:コレクタ接地型AB級出力回路
60:レベルシフト回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6