(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-203057(P2019-203057A)
(43)【公開日】2019年11月28日
(54)【発明の名称】ナノカーボンを含有する三次元多孔質体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/28 20060101AFI20191101BHJP
C08J 3/215 20060101ALI20191101BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20191101BHJP
C08L 33/20 20060101ALI20191101BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20191101BHJP
【FI】
C08J9/28 101
C08J3/215CEY
C08K3/04
C08L33/20
B82Y40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-98244(P2018-98244)
(22)【出願日】2018年5月22日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、革新的技術創造促進事業「産地及び流通過程におけるエネルギー消費を劇的に下げる冷凍・冷蔵用新型キャパシタの研究開発とその実用化」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】511163735
【氏名又は名称】ナノサミット株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】240000316
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人 瓜生・糸賀法律事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 一郎
(72)【発明者】
【氏名】古月 文志
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 弘太郎
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 翔一
(72)【発明者】
【氏名】熊代 嗣生
【テーマコード(参考)】
4F070
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA34
4F070AC04
4F070AC50
4F070AE06
4F070AE30
4F070FA04
4F070FA12
4F070FB05
4F070FB06
4F070FC03
4F074AA49
4F074AC02
4F074AC16
4F074AD14
4F074AG08
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4F074AH03
4F074AH04
4F074CB34
4F074CB37
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4F074CC05Y
4F074CC22X
4F074CC27Y
4F074CC28Z
4F074CC32X
4F074CC32Y
4J002BG101
4J002DA016
4J002FA056
4J002FD016
4J002FD116
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】
従来の方法では、高い電気伝導性や熱伝導性を実現するために、三次元多孔質体にカーボンナノチューブ分散液を含浸させ又はコーティングした後に、さらにこれを炭化させる工程が必要であり、また、強酸などの酸化剤によって酸化処理をすることによってカーボンナノチューブを化学的に修飾する必要があった。そのため、カーボンナノチューブがダメージを受けることで電気伝導性や熱伝導性は大きく損なわれ、また、大量生産を実現することも困難であった。
【解決手段】
多孔質体の母材とカーボンナノチューブ分散液とを混合した後に、相分離を生じさせて多孔質体を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノカーボンを含有する多孔質体の製造方法であって、多孔質体の母材とナノカーボン分散液を混合した後に、相分離を生じさせることにより多孔質体を形成する工程を含む、ナノカーボン含有多孔質体の製造方法。
【請求項2】
多孔質体の母材とナノカーボン分散液とを混合する工程における多孔質体の母材とナノカーボン分散液との混合溶液中のDMSOと水との体積比が、90:10〜80:20になるよう調整する工程を含む、請求項1記載のナノカーボン含有多孔質体の製造方法。
【請求項3】
多孔質体の母材がポリアクリロニトリルである、請求項1又は2記載の、カーボンナノチューブ含有多孔質体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナノカーボンを含有する多孔質体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、三次元多孔質体は、キャパシタータイプの蓄電デバイス、燃料電池、二次電池、フィルター、触媒、又はクロマトグラフィーの固定相などへの利用が研究されてきた。
【0003】
特に、三次元多孔質体とカーボンナノチューブのような電気伝導性や熱伝導性を有する材料とを組み合わせた、電気伝導性や熱伝導性を有する三次元多孔質体の研究が行われ、例えば、カーボンナノチューブを含有する三次元多孔質体を実現する方法として、成形後の三次元多孔質体にカーボンナノチューブ分散液を含浸させ又はコーティングする方法が研究されてきた。
【0004】
しかしながら、三次元多孔質体にカーボンナノチューブ分散液を含浸させ又はコーティングする方法の場合、多孔質体内にカーボンナノチューブを安定的に担持することができず、また、多孔質体へのカーボンナノチューブの積載効率も低いという問題があった(非特許文献1)。
【0005】
また、従来の方法では、高い電気伝導性や熱伝導性を実現するために、三次元多孔質体にカーボンナノチューブ分散液を含浸させ又はコーティングした後に、さらにこれを炭化させる工程が必要であり、また、強酸などの酸化剤によって酸化処理をすることによってカーボンナノチューブを化学的に修飾する必要があった(非特許文献2)。そのため、カーボンナノチューブがダメージを受けることで電気伝導性や熱伝導性は大きく損なわれ、また、大量生産を実現することも困難であった。
【0006】
従来のカーボンナノチューブ含有多孔質体では、カーボンナノチューブの含浸後又はコーティング後にさらなる炭化を行っていたり、使用するカーボンナノチューブに対して酸化処理を行ったりする必要があったところ、本発明者らは、多孔質体の母材とカーボンナノチューブ分散液とを混合した後に、相分離(phase separation)を生じさせて多孔質体を形成することで、カーボンナノチューブの分散液とカーボンナノチューブを安定的にかつ高い積載効率で含有させた多孔質体を実現した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-20933
【非特許文献1】M.T.Byrne et al., Recent Advances in reasearch on carbon nanotubepolymer composites, Adv.Mater 22 (2010) 1672
【非特許文献2】S. Nardecchia, et al., Three dimensional macroporous architectures and aerogels built of carbon nanotubes and/or graphene: synthesis and applications, Chem Soc. Rev. 42 (2013) 794-830
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ナノカーボンを含有する多孔質体及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、従前の本発明者ら自身による発明であるカーボンナノチューブ含有多孔質体をさらに改良することで、本発明を完成させた。具体的には、多孔質体の母材とナノカーボンの分散液を混合する工程を工夫することで、本発明を完成させた。
【0010】
本発明では、ナノカーボンの含浸後又はコーティング後のナノカーボン含有多孔質体に対してさらなる炭化を行ったり、ナノカーボンに対して酸化処理を行ったりする工程を経る必要がないため、ナノカーボンにダメージを与えることなく、その高い電気伝導性や熱伝導性を維持したまま利用することができ、かかるナノカーボンを含有する多孔質体の電気伝導性と熱伝導性を高くすることができる。
また、従来の方法と異なり、多孔質体を炭化させることはないため、多孔質体の表面積が大きいままに維持できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ナノカーボンにより実現される高い電気伝導性と熱伝導性を有する多孔質体を実現することができる。また、多孔質体の表面積を大きいままに維持することができる。また、本発明によれば、鋳型を用いずに多孔質体を形成することができるため、様々な形状のナノカーボン含有多孔質体を形成することができる(
図2参照)。さらに、本発明により、多孔質体の母材とナノカーボンの分散液を、高温の溶媒中であったとしても従前よりも均一に混合することができるようになったため、形成することができる多孔質体の容量(バルク)をより大きなものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、カーボンナノチューブ含有多孔質体であるポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ複合体モノリスの断面のSEM画像である。
【
図2】
図2は、23.7wt%カーボンナノチューブ含有多孔質体であるポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ複合体モノリスの写真である。
【
図3】
図3は、カーボンナノチューブが管状レベルで分散した、多層カーボンナノチューブ濃度が2wt%であるDMSOのSEM画像である。
【
図4】
図4は、乾燥したポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ複合体モノリスの電気伝導性を測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。ただし、以下の実施形態は、発明内容の理解を助けるためのものであり、本発明を限定するものではない。
【0014】
<ナノカーボン含有多孔質体>
本発明におけるナノカーボン含有多孔質体は、ナノカーボンと多孔質体の母材とを含む。
【0015】
本発明に使用できるナノカーボンとしては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー、フラーレン、グラフェン、若しくはこれらの誘導体、又はこれらの混合物が挙げられ、高い導電性を実現する観点から、好ましくは、カーボンナノチューブ又はグラフェンであり、特に好ましくは、カーボンナノチューブ及びグラフェンの混合物である。
【0016】
本発明に使用できるカーボンナノチューブとしては、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、又はこれらの混合物が挙げられる。カーボンナノチューブの平均の直径は、0.4nm〜1μm程度であればよく、好ましくは1nm〜50nmである。また平均の長さは、長い方が好ましいが、50nm以上であればよく、好ましくは、1μm以上である。カーボンナノチューブは酸化処理等の化学的修飾がされていても良いが、カーボンナノチューブの高い電気伝導性や熱伝導性を維持するという観点からは、酸化処理のような、カーボンナノチューブの性質を損なう化学的修飾については、行われないことが望ましい。
【0017】
本発明で使用できるグラフェン又は酸化グラフェンは、シート構造の平均の長さと平均の幅との比が、好ましくは1:0.1〜1:10であり、特に好ましくは、1:0.5〜1:5である。シート構造の平均の長さは、好ましくは100nm〜1000μmであり、特に好ましくは200nm〜50μmである。
【0018】
本発明における多孔質体の母材は、多孔質体を構成できる材料であれば特に限定されないが、ナイロンなどのポリアミド、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアクリロニトリル(PAN)などのアクリル、ゴム、プラスチック、熱可塑性プラスチック、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリ塩化ビニル、ビニルニトリル、シリコン、ラテックス、それらの誘導体及びそれらの組み合わせの材料から形成することができる。
【0019】
ナノカーボンとしてカーボンナノチューブを用いる場合、本発明のナノカーボン含有多孔質体におけるカーボンナノチューブ濃度は、0.1〜98質量%であればよいが、多孔質体内でのカーボンナノチューブネットワーク形成の観点から、好ましくは、25質量%以上である。
<ナノカーボンを含有する多孔質体の製造方法>
【0020】
本発明におけるナノカーボンを含有する多孔質体は、多孔質体の母材とナノカーボン分散液を混合した後に、相分離を生じさせることにより多孔質体を形成することで製造することができる。
【0021】
本発明におけるナノカーボン分散液とは、ナノカーボンをジメチルスルホキシド(DMSO)等の溶媒に分散させた溶液を意味する。ここで、ナノカーボンとしてカーボンナノチューブを用いる場合のカーボンナノチューブの分散は、管状レベルまで行われていることが望ましい(
図3参照)。
また、ナノカーボンを分散させる際には、公知の分散剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等や胆汁酸等の界面活性剤)を用いても良く、カルボキシメチルセルロース(CMC)やポリビニルピロリドン(PVP)等の安定剤を用いても良い。
【0022】
本発明における多孔質体の母材とナノカーボン分散液との混合液は、多孔質体の母材をDMSO等の溶媒に溶解させた後、これにナノカーボン分散液を加え、撹拌等をすることで均一に混合させ、この混合液に水(H2O)、エタノール、アセトニトリル等の溶媒を添加することで得ることができるし、ナノカーボン分散液に水(H2O)、エタノール、アセトニトリル等の溶媒を適宜添加した上で、または添加せずに、これにDMSO等の溶媒で溶解させた多孔質体の母材の溶液に加えることでも得ることができる。ただし、多孔質体の母材とナノカーボン分散液とを均一に混合する観点からは、多孔質体の母材の溶液にナノカーボン分散液を均一に混合させた後に、水、エタノール、アセトニトリル等の溶媒を添加することが好ましい。
【0023】
本発明における多孔質体の母材とナノカーボン分散液とを混合する工程では、相分離に伴う多孔質体の生成における好適条件の観点から、多孔質体の母材とナノカーボン分散液との混合溶液中のDMSOと水との体積比は、90:10〜80:20となるように調製すればよく、より好ましくは、88:12〜87:13である。
【0024】
本発明において形成されるナノカーボン含有多孔質体における孔のサイズ(孔径)は、平均約5nm〜500nmであることが望ましい。
【0025】
本発明において形成されるナノカーボン含有多孔質体のBET(Brunauer, Emmett and Teller)比表面積は、130〜250m
2/gであることが望ましく、より好ましくは、210〜240m
2/gである。
【0026】
本発明において形成されるナノカーボン含有多孔質体の気孔率は、約85〜95%であることが望ましく、より好ましくは、約90〜95%である。
【0027】
本発明において形成されるナノカーボン含有多孔質体の平均かさ密度(bulk density)は、0.75〜0.85g/cm
3であることが望ましく、より好ましくは、0.8g/cm
3である。
【0028】
本発明において形成されるナノカーボン含有多孔質体の機械強度は、約0.5〜1.5MPaであることが望ましく、より好ましくは、1.1〜1.5MPaである。
【0029】
本発明において形成されるナノカーボン含有多孔質体の電気伝導性は、1.5〜3.5S/cmであることが望ましく、好ましくは、2.7〜3.5S/cmである。
【0030】
本発明において形成されるナノカーボン含有多孔質体の熱伝導性は、0.05〜0.5W/(m.K)であることが望ましく、好ましくは、0.148〜0.5W/(m.K)である。
【0031】
本発明において形成されるナノカーボン含有多孔質体は、モノリス形状や薄膜形状など、様々な形状のものにすることができる(
図2参照)。
【0032】
本発明において形成されるナノカーボン含有多孔質体は、成形後に炭化させて用いることもできる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施例及び比較例を説明する。ただし、以下の実施例及び比較例は、発明の内容の理解を助けるためのものであり、本発明を限定するものではない。
【0034】
(実施例1)
1)単分散カーボンナノチューブ分散液の調製工程
多層カーボンナノチューブ(NC7000、Nanocyl社製)20g、98.5%ジメチルスルホキシド(DMSO、和光純薬社製043−07211)1000ml、ポリビニルピロリドン5g、カルボキシメチルセルロース3g、及びFS−30(デュポン社製)5mlを、ボールミルにて混合し、次いで、ビーズミルを用いて十分に混合してカーボンナノチューブを管状レベルまで分散(単分散)させ、カーボンナノチューブ濃度が2wt%である単分散カーボンナノチューブ分散液を調整した。
【0035】
2)ポリアクリロニトリル(PAN)溶液の調製
98.5%DMSO(和光純薬社製043−07211)26.2gを添加し、これをメカニカルスターラーを用いて210rpmで撹拌し、オイルバスによって温度を120℃に保ちながら、ポリアクリロニトリルの粉末5.8gを3分ごとに1gずつ添加し、全量添加後10分間撹拌し、ポリアクリロニトリルを完全に溶解させ、ポリアクリロニトリル溶液を調製した。
【0036】
3)ポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ混合溶液の調製工程
1)で調整した単分散カーボンナノチューブ分散液63.3mlをオイルバスを用いて120℃に予熱し、これを2)で調製したポリアクリロニトリル溶液23.7mlに加え、120℃、300rpmで、10分撹拌した。さらに、これに、120℃に予熱しておいた98.5%DMSO(和光純薬社製043−07211)2.0gと脱イオン水15.8mlの混合液を、1分ごとに8gずつ添加し、全量添加後、120℃、410rpmで、15分間撹拌し、ポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ混合溶液を調製した。
【0037】
4)ポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ複合体モノリスの形成工程
調整したポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ混合溶液を蓋付きの型容器に注ぎ、2時間、室温にて冷却しながら、相分離を生じさせ、ポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ複合体モノリスを形成させた。
【0038】
5)ポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ複合体モノリスの洗浄工程
形成されたポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ複合体モノリスを型容器から取り出し、ビーカー内にメタノール200mlと共に入れ、ボルテックスミキサーを用いて80rpmで3時間撹拌して洗浄した。同様の洗浄工程を繰り返し、合計3度のメタノール洗浄を行った。
次いで、ポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ複合体モノリスを、ビーカー内にメタノール200mlと共に入れ、ボルテックスミキサーを用いて80rpmで12時間撹拌し洗浄した。同様の洗浄工程を繰り返し、合計3度のメタノール洗浄を行った。
【0039】
6)ポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ複合体モノリスの乾燥工程
洗浄後のポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ複合体モノリスを、20Paの減圧下で、24時間乾燥させ、乾燥したポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ複合体モノリスを得た。なお、乾燥したポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ複合体モノリスにおけるカーボンナノチューブ濃度は、19.4wt%である。
【0040】
(実施例2ないし4)
実施例1の1)単分散カーボンナノチューブ分散液の調製工程における単分散カーボンナノチューブ分散液中のカーボンナノチューブ濃度を、乾燥したポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ複合体モノリスにおけるカーボンナノチューブ濃度が、9.2wt%、14.3wt%、及び16.6wt%になるよう、実施例1と同様の方法で単分散カーボンナノチューブ分散液をそれぞれ調製した。その後、他の工程については、実施例1と同様の工程を経ることで、乾燥したポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ複合体モノリスにおけるカーボンナノチューブ濃度が9.2wt%、14.3wt%、及び16.6wt%である、実施例2ないし4の乾燥したポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ複合体モノリスをそれぞれ得た。
【0041】
7)カーボンナノチューブ含有ポリアクリロニトリル溶液におけるカーボンナノチューブの分散状態の確認
実施例1ないし実施例4における、ポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ混合溶液の調製工程を経て得たポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ混合溶液を、動的光散乱サイズ分布解析(DLS size distribution analysis)によって分析したところ、いずれのポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ混合溶液においても、カーボンナノチューブは凝集することなく、その分散状態が維持されていることが確認された。
【0042】
(比較例1)
1)ポリアクリロニトリルモノリスの形成工程
実施例1の2)で調製して得たポリアクリロニトリル溶液98mlに、120℃に予熱しておいた98.5%DMSO(和光純薬社製043−07211)2.0g及び脱イオン水15.8mlの混合液を、1分ごとに8gずつ添加し、全量添加後、120℃、410rpmで、15分間撹拌し、ポリアクリロニトリル溶液を調製した。これを型容器に注ぎ、2時間、室温にて冷却しながら、相分離を生じさせ、ポリアクリロニトリルモノリスを形成させた。
【0043】
2)ポリアクリロニトリルモノリスの洗浄工程
形成されたポリアクリロニトリルモノリスを型容器から取り出し、ビーカー内にメタノール200mlと共に入れ、ボルテックスミキサーを用いて80rpmで3時間撹拌して洗浄した。同様の洗浄工程を繰り返し、合計3度のメタノール洗浄を行った。
次いで、ポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ複合体モノリスを、ビーカー内にメタノール200mlと共に入れ、ボルテックスミキサーを用いて80rpmで12時間撹拌し洗浄した。同様の洗浄工程を繰り返し、合計3度のメタノール洗浄を行った。
【0044】
3)ポリアクリロニトリルモノリスの乾燥工程
洗浄後のポリアクリロニトリルモノリスを、20Paの減圧下で、24時間乾燥させ、乾燥したポリアクリロニトリル複合体モノリスを得た。
【0045】
4)ポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ複合体モノリスの特性評価
実施例1ないし4の乾燥したポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ複合体モノリスの断面を電子顕微鏡で確認したところ、いずれのも三次元構造となっており、相互に架橋し合う重合化が生じていることを確認した(
図1参照)。また、ポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ複合体モノリスにおける孔の大きさは、約0.08〜1μmであった。
【0046】
実施例1ないし4の乾燥したポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ複合体モノリスは、いずれも約90〜95%の気孔率 を有しており、水よりも比重が小さく、水に浮かぶものであった。
【0047】
実施例1ないし4の乾燥したポリアクリロニトリル/カーボンナノチューブ複合体モノリスの電気伝導性を測定したところ、結果は、
図4のとおりであった。実施例1では、約16.49S/cmであった。