請求項7〜9のいずれか1項記載のネガ型レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜を露光する工程、及びアルカリ現像液を用いて前記露光したレジスト膜を現像してレジストパターンを得る工程を含むレジストパターン形成方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
限界解像性に優れ、ラインエッジラフネス(LER)がは小さく、温度依存性も少ないレジスト組成物が求められているが、欠陥が発生しないことも極めて重要なファクターである。特にフォトマスクブランク加工に多用される電子線用レジスト組成物については欠陥が発生しないことは重視される。すなわち、半導体デバイスは、電子線用レジスト組成物を用いて加工されたマスク上のパターンをウェハー上に転写することで製造されるため、電子線用レジスト組成物のパターニング時に欠陥が発生し、それが原因でマスク上に欠陥が残ると、欠陥がウェハー上に転写されてしまい、半導体デバイスの歩留まりを低下させるためである。
【0009】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、50nm以下という高解像性や、小さなLERを実現しつつ、欠陥の発生が非常に少ないレジスト膜を与えるネガ型レジスト組成物、これに用いるポリマー、及び該レジスト組成物を用いるレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
特許文献12に記載されたレジスト組成物で、解像性は向上し、パターン密度依存性も克服されたが、欠陥性能が満足されるものではなかった。すなわち、前記レジスト組成物を用いてパターニングし、現像を行ったところ、パターン部から放射状に分布する欠陥が多数発現することが判明した。
【0011】
本発明者らは、前記欠陥を解決すべく様々な試行錯誤を行った結果、酸脱離性ヒドロキシ基又はアルコキシ基を1分子中に2つ以上有する繰り返し単位を含むポリマーを用いたレジスト組成物が前記欠陥を抑制することを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記単量体、ポリマー、ネガ型レジスト組成物、フォトマスクブランク、及びレジストパターン形成方法を提供する。
1.下記式(1)で表される単量体。
【化1】
(式中、R
Aは、水素原子又はメチル基である。R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜15の1級若しくは2級アルキル基であり、該アルキル基の水素原子の一部が、ヒドロキシ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよい。また、R
1及びR
2は、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。k
1は、0又は1である。k
2は、2〜4の整数である。)
2.下記式(a)で表される繰り返し単位を含むポリマー。
【化2】
(式中、R
Aは、水素原子又はメチル基である。R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜15の1級若しくは2級アルキル基であり、該アルキル基の水素原子の一部が、ヒドロキシ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよい。また、R
1及びR
2は、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。k
1は、0又は1である。k
2は、2〜4の整数である。)
3.更に、下記式(b1)〜(b6)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含む2のポリマー。
【化3】
(式中、R
Bは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
Z
Aは、炭素数1〜20のフェノール性ヒドロキシ基含有置換基である。
Z
Bは、炭素数1〜20のフルオロアルコール含有置換基であるが、酸の作用によって極性が変化する構造は含まない。
Z
Cは、炭素数1〜20のカルボキシ基含有置換基である。
Z
Dは、ラクトン骨格、スルトン骨格、カーボネート骨格、環状エーテル骨格、酸無水物骨格、アルコール性ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、スルホンアミド基又はカルバモイル基を含む置換基である。
X
A〜X
Dは、それぞれ独立に、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、ナフチレン基、−O−X
E−、−C(=O)−O−X
E−又は−C(=O)−NH−X
E−であり、X
Eは、炭素数1〜6のアルカンジイル基、炭素数2〜6のアルケンジイル基、フェニレン基又はナフチレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
R
11及びR
12は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜8のアシルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基である。
a1及びa2は、0≦a1≦5、1≦a2≦3、及び0≦a1+a2≦6を満たす整数である。b1及びb2は、0≦b1≦3、1≦b2≦3、及び0≦b1+b2≦4を満たす整数である。)
4.更に、下記式(b1')で表される繰り返し単位及び下記式(b2')で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含む2のポリマー。
【化4】
(式中、R
Bは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
A
1は、単結合、又は炭素数1〜10のアルカンジイル基であり、エーテル結合を含んでいてもよい。
A
2は、単結合、又は炭素数1〜10のアルカンジイル基であり、エーテル結合を含んでいてもよい。ただし、d4が0のとき、A
2は単結合である。
A
3は、単結合、又は炭素数1〜10の (d3+1)価の脂肪族炭化水素基であり、フッ素原子、エーテル結合、カルボニル基又はカルボニルオキシ基を含んでいてもよい。
Rf
1及びRf
2は、それぞれ独立に、少なくとも1つのフッ素原子を有する炭素数1〜6のアルキル基である。Rf
1は、A
3と結合してこれらの間に存在する原子と共に環を形成してもよい。
R
13及びR
14は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜8のアシルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基である。
t1は、0又は1である。x1及びx2は、それぞれ独立に、0〜2の整数である。c1は、0≦c1≦5+2(x1)−c2を満たす整数である。c2は、1〜3の整数である。d1は、0≦5+2(x2)−d2を満たす整数である。d2は、1又は2である。d3は、1又は2である。d4は、0又は1である。t2は、0又は1であるが、d4が0のとき、t2は1である。)
5.更に、下記式(c)で表される繰り返し単位、下記式(d)で表される繰り返し単位及び下記式(e)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含む2〜4のいずれかのポリマー。
【化5】
(式中、R
Bは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
R
15及びR
16は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜8のアシルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基である。
R
17は、アセチル基、アセトキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20の1級アルコキシ基、炭素数2〜20の2級アルコキシ基、炭素数2〜20のアシルオキシ基、炭素数2〜20のアルコキシアルキル基、炭素数2〜20のアルキルチオアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基である。
A
4は、単結合、又は炭素数1〜10のアルカンジイル基であり、エーテル結合を含んでいてもよい。
eは、0〜5の整数である。fは、0〜3の整数である。gは、0〜5の整数である。t3は、0又は1である。x3は、0〜2の整数である。)
6.更に、下記式(f1)で表される繰り返し単位、下記式(f2)で表される繰り返し単位及び下記式(f3)で表される繰り返し単位から選ばれる1種以上の繰り返し単位を含む2〜5のいずれかのポリマー。
【化6】
(式中、R
Aは、水素原子又はメチル基である。
Z
1は、単結合、フェニレン基、−O−Z
11−、−C(=O)−O−Z
11−又は−C(=O)−NH−Z
11−であり、Z
11は、炭素数1〜6のアルカンジイル基、炭素数2〜6のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
Z
2は、単結合、又は−Z
21−C(=O)−O−であり、Z
21は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価炭化水素基である。
Z
3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、−O−Z
31−、−C(=O)−O−Z
31−又は−C(=O)−NH−Z
31−であり、Z
31は、炭素数1〜6のアルカンジイル基、炭素数2〜6のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
R
21〜R
28は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の1価炭化水素基である。R
21とR
22とは、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R
23、R
24及びR
25のうちいずれか2つは、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R
26、R
27及びR
28のうちいずれか2つは、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
M
-は、非求核性対向イオンである。)
7.2〜6のいずれかのポリマーを含むベースポリマーを含むネガ型レジスト組成物。
8.更に、酸発生剤を含む7のネガ型レジスト組成物。
9.更に、クエンチャーを含む7又は8のネガ型レジスト組成物。
10.7〜9のいずれかのネガ型レジスト組成物から得られるレジスト膜を有するフォトマスクブランク。
11.7〜9のいずれかのネガ型レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜を露光する工程、及びアルカリ現像液を用いて前記露光したレジスト膜を現像してレジストパターンを得る工程を含むレジストパターン形成方法。
12.前記高エネルギー線が、EUV又はEBである11のレジストパターン形成方法。
13.前記基板の最表面が、クロムを含む材料からなる11又は12のレジストパターン形成方法。
14.前記基板が、フォトマスクブランクである11〜13のいずれかのレジストパターン形成方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、50nm以下という高解像性や、小さなLERを実現しつつ、欠陥の発生が非常に少ないネガ型レジスト組成物に用いられるポリマー、及び該ポリマーを用いたネガ型レジスト組成物を提供できる。本発明のネガ型レジスト組成物は、微細加工技術、特にEBリソグラフィーにおいて、極めて高い解像性を有し、LERの小さいパターンを与える。また、本発明の特定の部分構造を有する繰り返し単位を含有するポリマーを用いたネガ型レジスト組成物は、欠陥の発現を抑制できるため、特にフォトマスクブランクの加工の際に有用である。また、本発明のレジストパターン形成方法であれば、50nm以下という高解像性や、小さなLERを実現しつつ、欠陥の発生が非常に少ないパターンを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[単量体]
本発明の単量体は、下記式(1)で表される化合物である。
【化7】
【0016】
式(1)中、R
Aは、水素原子又はメチル基である。R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜15の1級若しくは2級アルキル基であり、該アルキル基の水素原子の一部が、ヒドロキシ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0017】
前記1級アルキル基又は2級アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、1−エチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。前記1級アルキル基又は2級アルキル基としては、炭素数1〜8のものが好ましく、炭素数1〜6のものがより好ましく、炭素数1〜4のものが更に好ましい。
【0018】
また、R
1及びR
2が、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。このとき形成される環としては、特に限定されないが、3〜6員環が好ましく、5又は6員環がより好ましい。
【0019】
R
1及びR
2は、少なくとも一方が炭素数1〜15の1級又は2級アルキル基であることが好ましく、両方とも炭素数1〜15の1級又は2級アルキル基であることが好ましい。
【0020】
式(1)中、k
1は、0又は1である。k
2は、2〜4の整数であるが、化合物の合成容易性の観点からk
2は2であることが好ましい。
【0021】
式(1)で表される化合物としては、以下に示すものが挙げられるが、これら限定されない。
【化8】
【0022】
前記化合物の合成方法の例として、R
Aが水素原子、k
1が0、k
2が2、並びにR
1及びR
2がメチル基である場合について下記スキームAに示すが、この方法に限定されない。
【化9】
【0023】
スキームAに示す反応では、まず3−ブロモイソフタル酸ジメチル(1A)のエステル部位のGrignard試薬による還元を行い、必要に応じて蒸留、再結晶、クロマトグラフィー等の常法に従って精製を行うことにより、アルコール(1B)を得る。続いて、得られたアルコール(1B)のヒドロキシ基をシリル基で保護し、必要に応じ、蒸留、再結晶、クロマトグラフィー等の常法に従って精製することにより、化合物(1C)を得る。更に、化合物(1C)にマグネシウムを作用させGrignard試薬に変換した後、ニッケル触媒存在下で臭化ビニルと反応させ、塩酸中でシリル基の脱保護を行い、単量体(1D)が得られる。
【0024】
また、前記化合物の合成方法の他の例として、R
Aがメチル基、k
1が1、k
2が2、並びにR
1及びR
2がメチル基である場合について下記スキームBに示すが、この方法に限定されない。
【化10】
【0025】
スキームBに示す反応では、まず3−アセトキシイソフタル酸ジメチル(1E)のエステル部位のGrignard試薬による還元を行い、必要に応じて蒸留、再結晶、クロマトグラフィー等の常法に従って精製を行うことにより、フェノール化合物(1F)を得る。続いて、得られたフェノール化合物(1F)をアシル化剤と反応させることで、単量体(1G)が得られる。この反応は公知の方法により容易に進行する。また、この反応は、無溶剤あるいは塩化メチレン、トルエン、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等の溶剤中で、フェノール化合物(1F)と、アシル化剤、及びトリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基とを順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱する等して行うのがよい。また、必要があれば、蒸留、再結晶、クロマトグラフィー等の常法に従って精製してもよい。
【0026】
[ポリマー]
本発明のポリマーは、下記式(a)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位aともいう。)を含むものである。繰り返し単位aは、式(1)で表される単量体に由来するものである。
【化11】
(式中、R
A、R
1、R
2、k
1及びk
2は、前記と同じ。)
【0027】
繰り返し単位aを含むポリマーがネガ化する機構について、例として、式(a)においてR
Aが水素原子、k
1が0、k
2が2、並びにR
1及びR
2がメチル基のもの(下記スキームC中の繰り返し単位A)を用いて説明する。繰り返し単位Aは、高エネルギー線の照射を受けた際、酸発生剤より発生する酸の作用によりヒドロキシ基が脱離反応を起こし、カチオンを生じさせる。この際、スキームCに示すように脱離可能なヒドロキシ基は2つ存在するので、カチオンAとカチオンAAが生じると考えられる。これらのカチオンは、他のポリマー(Nuで示す。)からの求核攻撃を受けることで架橋し、架橋ポリマーA又は架橋ポリマーAAが生じると考えられる。この架橋ポリマーは、高分子量化しているため現像液に不溶となり、結果としてネガ化する。また、カチオンA及びカチオンAAは、プロトンの脱離により、それぞれ脱水ポリマーA及び脱水ポリマーAAも生じると考えられる。この脱水ポリマーは、ヒドロキシ基が消失しているため現像液に対する溶解性が低下し、結果としてネガ化する。
【0029】
特許文献12に記載された、4−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)スチレン単位(下記スキームD中の繰り返し単位B)を含むポリマーも下記スキームDに示すように、繰り返し単位Aと同様の機構でネガ化すると考えられる。
【0031】
ここで、特許文献12に記載の、4−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)スチレン単位(スキームD中の繰り返し単位B)を含むポリマーを含むネガ型レジスト組成物を用いて描画、現像を行うと、
図1に示すような放射状の欠陥が観測される。この理由は以下のように推察される。なお、
図1において、1はフォトマスクブランク基板を、2はラインアンドスペースのパターンを描画した部分を、3は欠陥の検出個数の限界となる位置を、4は放射状欠陥を、5は背景を示す。
【0032】
すなわち、脱水ポリマーBは、脱水反応前のポリマーと比較してヒドロキシ基が消失しているためにアルカリ現像液への溶解性は低下しているものの、依然としてわずかに溶解性が残っている。そのため、脱水したポリマーは現像中に露光部からわずかに溶けだすが、その速度は非常に遅い。一般に、現像は基板を回転させながら現像液を供給する方法で行われるが、このとき、脱水したポリマーの溶解速度は非常に遅いため、完全には現像液によって除去されずに、現像終了時にも基板上に脱水したポリマーがわずかに残ってしまう。その結果、基板の中心部から放射状欠陥として発現する。
【0033】
同様の欠陥は本発明の繰り返し単位を有するポリマーを用いたレジスト組成物でも発現すると予想されたが、驚くべきことに、欠陥は見られなかった。欠陥の原因になると予想される脱水ポリマーAはヒドロキシ基を有していることから、水溶性が比較的高いため現像液によってきれいに除去され得るためと推察される。また、脱水ポリマーAAは同じく欠陥の原因になると予想されるが、生成する量が少ないために欠陥として発現しなかったと推察される。
【0034】
繰り返し単位aの好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化14】
【0035】
本発明のポリマーを含むネガ型レジスト組成物は、酸の作用により脱離反応を起こした結果生じるベンジルカチオンを利用してポリマー間の架橋を誘発することによってネガ化するものであり、また、脱水反応により引き起こされる高分子化合物の極性変化によってもネガ化するものである。この効果を得るためには、繰り返し単位aの含有量は、ポリマーを構成する全繰り返し単位中、1〜90モル%が好ましく、10〜80モル%がより好ましく、15〜70モル%が更に好ましい。繰り返し単位aの含有量が前記範囲であれば、酸による反応でのアルカリ溶解性変化が十分となり、本発明の効果を確実に得ることができる。繰り返し単位aは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
本発明のポリマーは、アルカリ現像液への溶解性制御、基板への密着性の向上等の目的で、更に、下記式(b1)〜(b6)で表される繰り返し単位(以下、それぞれ繰り返し単位b1〜b6ともいう。)から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
【化15】
【0037】
式(b1)〜(b4)中、R
Bは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であるが、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0038】
式(b1)〜(b4)中、Z
Aは、炭素数1〜20のフェノール性ヒドロキシ基含有置換基である。Z
Bは、炭素数1〜20のフルオロアルコール含有置換基であるが、酸の作用によって極性が変化する構造は含まない。Z
Cは、炭素数1〜20のカルボキシ基含有置換基である。Z
Dは、ラクトン骨格、スルトン骨格、カーボネート骨格、環状エーテル骨格、酸無水物骨格、アルコール性ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、スルホンアミド基又はカルバモイル基を含む置換基である。
【0039】
式(b1)〜(b4)中、X
A〜X
Dは、それぞれ独立に、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、ナフチレン基、−O−X
E−、−C(=O)−O−X
E−又は−C(=O)−NH−X
E−であり、X
Eは、炭素数1〜6のアルカンジイル基、炭素数2〜6のアルケンジイル基、フェニレン基又はナフチレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
【0040】
式(b5)及び(b6)中、R
11及びR
12は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜8のアシルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基である。
【0041】
R
11及びR
12で表されるアシルオキシ基、アルキル基及びアルコキシ基の炭化水素部分の好ましい例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、及び分岐又は環構造を持つ炭素骨格の構造異性体等が挙げられる。炭素数が上限以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性が良好である。
【0042】
式(b5)及び(b6)中、a1及びa2は、0≦a1≦5、1≦a2≦3、及び0≦a1+a2≦6を満たす整数である。b1及びb2は、0≦b1≦3、1≦b2≦3、及び0≦b1+b2≦4を満たす整数である。
【0043】
繰り返し単位b1としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
Bは、前記と同じである。
【化16】
【0044】
繰り返し単位b2は、アルカリ水溶液との親和性が高いフルオロアルコール含有置換基を有する。これらフルオロアルコール含有単位の好適な例として、特開2007−297590号公報、特開2008−111103号公報、特開2008−122932号公報及び特開2012−128067号公報に記載されている、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基、2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルオキソラン構造等を含む繰り返し単位が挙げられる。これらは3級のアルコール性ヒドロキシ基、又はヘミアセタール構造を有するが、フッ素原子で置換されているため、酸に対する反応性はない。
【0045】
繰り返し単位b2としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
Bは、前記と同じである。
【化17】
【0047】
また、フルオロアルコール基をアシル基や酸不安定基で保護しておき、アルカリ現像液による加水分解や、露光後の酸による脱保護によって式(b2)に対応するフルオロアルコール含有単位を発生させることもできる。この場合、好適な繰り返し単位としては、特開2012−128067号公報の、段落[0036]〜[0040]に記載されたものや段落[0041]中の式(2a)、(2b)又は(2f)で表されるもの等が挙げられる。
【0048】
繰り返し単位b3としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
Bは、前記と同じである。
【化19】
【0049】
繰り返し単位b4としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
Bは、前記と同じである。
【化20】
【0050】
繰り返し単位b5及びb6としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化21】
【0051】
本発明のポリマーは、繰り返し単位b1〜b6の中でも、繰り返し単位b1及びb2から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。特に、繰り返し単位b1及びb2の中でも、下記式(b1')で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位b1'ともいう。)及び下記式(b2')で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位b2'ともいう。)が好ましい。これらの繰り返し単位は、繰り返し単位aに含まれる酸脱離性基の脱離に伴う不溶化反応を有利に進め、適度なポリマーの熱振動を許容する単位である。このようなポリマーを用いることで、解像性の高いネガ型レジスト組成物が得られる。
【化22】
【0052】
式(b1')及び(b2')中、R
Bは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であるが、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0053】
式(b1')及び(b2')中、A
1及びA
2は、それぞれ独立に、単結合、又は炭素数1〜10のアルカンジイル基であり、エーテル結合を含んでいてもよい。A
1及びA
2で表されるアルカンジイル基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、及び分岐又は環構造を持つ炭素骨格の構造異性体等が挙げられる。A
1がエーテル結合を含む場合には、式中のt1が1である場合にはエステル酸素に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に入ってもよい。また、t1が0である場合には主鎖と結合する原子がエーテル性酸素となり、該エーテル性酸素に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に第2のエーテル結合が入ってもよい。なお、前記アルカンジイル基の炭素数が10以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性を十分に得ることができるため好ましい。
【0054】
式(b2')中、A
3は、単結合、又は炭素数1〜10の (d3+1)価の脂肪族炭化水素基であり、フッ素原子、エーテル結合、カルボニル基又はカルボニルオキシ基を含んでいてもよい。このような基としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン及びこれらの構造異性体等の脂肪族炭化水素から、(d3+1)個の水素原子を脱離して得られる基が挙げられる。
【0055】
式(b2')中、Rf
1及びRf
2は、それぞれ独立に、少なくとも1つのフッ素原子を有する炭素数1〜6のアルキル基である。また、Rf
1は、A
3と結合してこれらの間に存在する原子と共に環を形成してもよい。このような基としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル基等が挙げられる。
【0056】
式(b1')及び(b2')中、R
13及びR
14は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜8のアシルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基である。R
13及びR
14で表されるアシルオキシ基、アルキル基及びアルコキシ基の炭化水素部分の好ましい例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、及び分岐又は環構造を持つ炭素骨格の構造異性体等が挙げられる。炭素数が上限以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性が良好である。
【0057】
式(b1')及び(b2')中、t1は、0又は1である。x1及びx2は、それぞれ独立に、0〜2の整数である。x1及びx2が0の場合はベンゼン骨格を、1の場合はナフタレン骨格を、2の場合はアントラセン骨格を表す。c1は、0≦c1≦5+2(x1)−c2を満たす整数である。c2は、1〜3の整数である。d1は、0≦5+2(x2)−d2を満たす整数である。d2は、1又は2であるが、d4=のとき、d2は1である。d3は、1又は2である。d4は、0又は1である。t2は0又は1であるが、d4が0のとき、t2は1である。
【0058】
式(b1')においてt1が0かつA
1が単結合である場合、つまり芳香環がポリマーの主鎖に直接結合した、すなわち、リンカー(−CO−O−A
1−)を有しない場合、繰り返し単位b1'の好ましい例としては、3−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシスチレン、5−ヒドロキシ−2−ビニルナフタレン、6−ヒドロキシ−2−ビニルナフタレン等に由来する単位が挙げられる。これらのうち、より好ましくは下記式(b1'−1)で表される繰り返し単位等である。
【化23】
(式中、R
B及びc2は、前記と同じ。)
【0059】
また、式(b1')においてt1が1である場合、すなわち、リンカー(−CO−O−A
1−)を有する場合、繰り返し単位b1'の好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
Bは、前記と同じである。
【化24】
【0060】
繰り返し単位b2'の好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
Bは、前記と同じである。
【化25】
【0061】
繰り返し単位b1〜b6の含有量は、本発明のポリマーを構成する全繰り返し単位中、10〜99モル%が好ましく、20〜90モル%がより好ましく、30〜85モル%が更に好ましい。繰り返し単位b1〜b6は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
本発明のポリマーは、更に、下記式(c)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位cともいう。)、下記式(d)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位dともいう。)、及び下記式(e)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位eともいう。)から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【化26】
【0063】
式中、R
Bは、前記と同じである。R
15及びR
16は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜8のアシルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基である。R
17は、アセチル基、アセトキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20の1級アルコキシ基、炭素数2〜20の2級アルコキシ基、炭素数2〜20のアシルオキシ基、炭素数2〜20のアルコキシアルキル基、炭素数2〜20のアルキルチオアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基である。A
4は、単結合、又は炭素数1〜10のアルカンジイル基であり、エーテル結合を含んでいてもよい。eは、0〜5の整数である。fは、0〜3の整数である。gは、0〜5の整数である。t3は、0又は1である。x3は、0〜2の整数である。
【0064】
A
4で表されるアルカンジイル基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、及び分岐又は環構造を持つ炭素骨格の構造異性体等が挙げられる。前記アルカンジイル基がエーテル結合を含む場合には、式(e)中のt3が1である場合にはエステル酸素に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に入ってもよい。また、t3が0である場合には主鎖と結合する原子がエーテル性酸素となり、該エーテル性酸素に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に第2のエーテル結合が入ってもよい。なお、前記アルカンジイル基の炭素数が10以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性を十分に得ることができるため好ましい。
【0065】
R
15及びR
16で表されるアシルオキシ基、アルキル基及びアルコキシ基の炭化水素部分の好ましい例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、及び分岐又は環構造を持つ炭素骨格の構造異性体等が挙げられる。炭素数が上限以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性が良好である。
【0066】
R
17として好ましくは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基及びその構造異性体、シクロペンチル基、シクロへキシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、へキシルオキシ基及びその炭化水素部の構造異性体、シクロペンチルオキシ基、シクロへキシルオキシ基等が挙げられる。これらのうち、特にメトキシ基及びエトキシ基が有用である。また、アシルオキシ基は、ポリマーの重合後でも容易に化学修飾法で導入することができ、ベースポリマーのアルカリ現像液に対する溶解性の微調整に有利に用いることができる。前記アシルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基及びその構造異性体、シクロペンチルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。炭素数が20以下であれば、ベース樹脂としてのアルカリ現像液に対する溶解性を制御・調整する効果(主に、下げる効果)を適切なものとすることができ、スカム(現像欠陥)の発生を抑制することができる。また、前述の好ましい置換基の中で、特にモノマーとして準備しやすく、有用に用いられる置換基としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基が挙げられる。
【0067】
式(e)中、x3は0〜2の整数であり、0の場合はベンゼン骨格、1の場合はナフタレン骨格、2の場合はアントラセン骨格をそれぞれ表す。x3が0の場合、好ましくはgは0〜3の整数であり、x3が1又は2の場合、好ましくはgは0〜4の整数である。
【0068】
式(e)においてt3が0かつA
4が単結合である場合、つまり芳香環がポリマーの主鎖に直接結合した、すなわち、リンカー(−CO−O−A
4−)を有しない場合、繰り返し単位eの好ましい例としては、スチレン、4−クロロスチレン、4−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−ブロモスチレン、4−アセトキシスチレン、2−ヒドロキシプロピルスチレン、2−ビニルナフタレン、3−ビニルナフタレン、1−ビニルアントラセン、2−ビニルアントラセン、9−ビニルアントラセン等に由来する単位が挙げられる。
【0069】
また、式(e)においてt3が1である場合、すなわち、リンカー(−CO−O−A
4−)を有する場合、繰り返し単位eの好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
Bは、前記と同じである。
【化27】
【0071】
前記ポリマーが、繰り返し単位c〜eのうち少なくとも1種を含む場合、芳香環が持つエッチング耐性に加えて主鎖に環構造が加わることによるエッチングやパターン検査の際のEB照射耐性を高めるという効果を得ることができる。
【0072】
繰り返し単位aと、繰り返し単位b1〜b6から選ばれる1種以上と、繰り返し単位c〜eから選ばれる1種以上とを同時に含むポリマーを用いたネガ型レジスト組成物より得たレジスト膜は、EB又はEUVによってアイソパターンとアイソスペースパターンの両者を含むパターン露光を行った場合においても、照射されたパターンと形成されるパターンの寸法のパターン依存性を強く抑制することができ、かつ、高い解像性と両立することができる。
【0073】
エッチング耐性を向上させるという効果を得るためには、繰り返し単位c〜eの含有量は、前記ポリマーを構成する全繰り返し単位中、その下限は、2モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、その上限は、35モル%が好ましく、20モル%がより好ましい。繰り返し単位c〜eは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0074】
本発明のポリマーは、更に、下記式(f1)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位f1ともいう。)、下記式(f2)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位f2ともいう。)、及び下記式(f3)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位f3ともいう。)から選ばれる1種以上を含んでもよい。
【化29】
【0075】
式(f1)〜(f3)中、R
Aは、前記と同じ。Z
1は、単結合、フェニレン基、−O−Z
11−、−C(=O)−O−Z
11−又は−C(=O)−NH−Z
11−であり、Z
11は、炭素数1〜6のアルカンジイル基、炭素数2〜6のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Z
2は、単結合、又は−Z
21−C(=O)−O−であり、Z
21は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価炭化水素基である。Z
3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、−O−Z
31−、−C(=O)−O−Z
31−又は−C(=O)−NH−Z
31−であり、Z
31は、炭素数1〜6のアルカンジイル基、炭素数2〜6のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
【0076】
式(f1)〜(f3)中、R
21〜R
28は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の1価炭化水素基である。また、これらの基の水素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、これらの基の炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。R
21とR
22とは、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R
23、R
24及びR
25のうちいずれか2つは、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R
26、R
27及びR
28のうちいずれか2つは、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。M
-は、非求核性対向イオンである。
【0077】
式(f2)中、Z
2が−Z
21−C(=O)−O−である場合、Z
21で表されるヘテロ原子を含んでいてもよい2価炭化水素基としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化30】
(式中、破線は結合手を示す。)
【0078】
式(f2)及び(f3)中、R
23、R
24及びR
25のうちのいずれか2つ、又はR
26、R
27及びR
28のうちのいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成する場合、スルホニウムカチオンとしては、以下に示すもの等が挙げられる。
【化31】
(式中、R
29は、R
21〜R
28で表される基と同じである。)
【0079】
式(f2)及び(f3)中、スルホニウムカチオンの具体的な構造としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化32】
【0080】
繰り返し単位f1〜f3は、高エネルギー線の照射により酸を発生させる単位である。これらの単位がポリマー中に含まれることで、酸拡散が適度に抑制され、LERが低減されたパターンが得られると考えられる。また、これらの単位がポリマーに含まれていることで、真空中でのベーク時に、露光部から酸が揮発し、未露光部へ再付着するというケミカルフレア現象が抑制され、LERの低減や、未露光部での望まないネガ化反応抑制による欠陥の低減等に効果的であると考えられる。
【0081】
繰り返し単位f1〜f3を含む場合、その含有量は、本発明のポリマーを構成する全繰り返し単位中、0.5〜20モル%が好ましく、1〜10モル%がより好ましい。含有量が前記範囲であれば、ポリマーのレジスト溶剤に対する溶解性が低下することを防ぐことができ、欠陥が発生する怖れがなくなる。
【0082】
前記ポリマーは、重量平均分子量(Mw)が1,000〜50,000であることが好ましく、1,000〜10,000であることがより好ましい。なお、本発明においてMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。
【0083】
また、前記ポリマーは、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜2.0、特に1.0〜1.8と狭分散であることが好ましい。このように狭分散である場合には、現像後、パターン上に異物が生じたり、パターンの形状が悪化したりすることがない。
【0084】
[ネガ型レジスト組成物]
本発明のネガ型レジスト組成物は、前述したポリマーを含むベースポリマーを含むものである。前記ポリマーは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0085】
本発明のネガ型レジスト組成物は、更に、高エネルギー線の照射により酸を発生させる化合物(酸発生剤)を含むことが好ましい。酸発生剤を含むことで、本発明のネガ型レジスト組成物は、化学増幅ネガ型レジスト組成物として機能する。酸発生剤は、調整を行いたい物性に応じて適宜公知の酸発生剤より選択される。好適な酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等がある。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。このような酸発生剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0122]〜[0142]に記載されているものが挙げられる。
【0086】
前記酸発生剤としては、アレーンスルホネート型の酸発生剤が、繰り返し単位aからベンジルカチオンを生じさせ、架橋反応又は脱水反応を誘発するのに適度な強度の酸を発生させるため好ましい。
【0087】
このような酸発生剤としては、以下に示す構造のスルホネートアニオンを有する化合物を好適に用いることができ、対をなすカチオンとしては、式(f2)及び(f3)中のスルホニウムカチオンとして例示したものと同様のものが挙げられる。
【化33】
【0093】
前記酸発生剤の含有量は、前記ベースポリマー100質量部に対し、1〜20質量部が好ましく、2〜15質量部がより好ましい。前記酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0094】
本発明のネガ型レジスト組成物は、感度調整と高解像性を得るために、クエンチャー(酸拡散制御剤)を含むことが好ましい。前記クエンチャーとしては、第1級、第2級又は第3級脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシ基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類、アンモニウム塩類、カルボン酸塩類等が挙げられる。これらの具体例としては、特許文献2や特開2008−111103号公報の段落[0146]〜[0164]や、特許第3790649号公報に多数例示されているが、基本的にはこれらの全てを使用することができる。
【0095】
前記クエンチャーの好ましい例として、下記式(2)で表される塩が挙げられる。
【化39】
【0096】
式(2)中、R
101は、炭素数1〜20の1価炭化水素基である。前記1価炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は炭素数6〜36のアリール基が挙げられる。これらの基は、フッ素原子、窒素原子、エーテル結合、エステル結合、ラクトン環、ラクタム環、カルボニル基又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
【0097】
式(2)中、Q
+は、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン又はアンモニウムカチオンである。
【0098】
式(2)で表される塩は、露光により発生した酸と交換反応を起こすため、クエンチャーとして機能する。この塩はイオン性化合物であるため、熱によって揮発することがない。一方、クエンチャーとして常用されるアミン化合物は、ベーク時や描画時に生じる熱によって、揮発するおそれがある。レジスト組成物に、クエンチャーとしてイオン性化合物を用いると、ベークや描画の際に発生する熱の影響を受けず、パターン寸法の温度依存性が少ない利点がある。
【0099】
式(2)で表される塩のアニオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化40】
【0101】
また、前記クエンチャーとして、下記式(3)で表される塩も好ましい。
【化42】
【0102】
式(3)中、R
111〜R
114は、それぞれ独立に、水素原子、−L
A−CO
2-、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の1価炭化水素基である。R
111とR
112と、R
112とR
113と、又はR
113とR
114とが、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。L
Aは、単結合又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価炭化水素基である。R
115は、水素原子又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の1価炭化水素基である。
【0103】
式(3)中、環Rは、式中の炭素原子及び窒素原子を含む炭素数2〜6の環であり、該環の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部が、炭素数1〜20の1価炭化水素基、又は−L
A−CO
2-で置換されていてもよく、該環の炭素原子の一部が、硫黄原子、酸素原子又は窒素原子で置換されていてもよい。前記環は、脂環でも芳香環でもよく、また、5員環又は6員環であることが好ましく、その具体例としては、ピリジン環、ピロール環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピラゾール環、イミダゾリン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、イミダゾリン環、オキサゾール環、チアゾール環、モルホリン環、チアジン環、トリアゾール環等が挙げられる。
【0104】
式(3)で表されるカルボン酸オニウム塩は、少なくとも1つの−L
A−CO
2-基を有する。
【0105】
式(3)で表される塩のアニオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化43】
【0109】
また、下記式(4)で表されるベタイン型の化合物もクエンチャーとして好適に用いることができる。
【0111】
式(4)中、R
121、R
122及びR
123は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の1価炭化水素基である。また、前記1価炭化水素基の水素原子の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、これらの基の炭素原子間に、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子含有基が介在していてもよく、又はこれらの基のベンゼン環に結合する炭素原子が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、カーバメート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0112】
式(4)中、p及びqは、それぞれ独立に、0〜5の整数である。rは、0〜4の整数である。p、q及びrは、合成容易性や原料入手性の観点から、それぞれ0、1又は2が好ましい。
【0113】
pが2〜5の場合において、隣接する2つのR
121は、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。qが2〜5の場合において、隣接する2つのR
122は、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。rが2〜4の場合において、隣接する2つのR
123は、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
【0114】
式(4)で表される化合物としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化47】
【0115】
前記クエンチャーの含有量は、前記ベースポリマー100質量部に対し、0.01〜20質量部が好ましく、0.05〜15質量部がより好ましい。前記クエンチャーは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0116】
本発明のネガ型レジスト組成物には、基本的には架橋剤を添加しなくてもよいが、性能の微調整を行いたい場合には、前記ベースポリマー100質量部に対し、0.5〜5質量部程度添加してもよい。前記架橋剤としては、すでに多数のものが公知であり、特許文献1〜3にも例示されている。
【0117】
好ましい架橋剤としては、アルコキシメチルグリコールウリル類、アルコキシメチルメラミン類を挙げることができ、具体的には、テトラメトキシメチルグリコールウリル、1,3−ビスメトキシメチル−4,5−ビスメトキシエチレンウレア、ビスメトキシメチルウレア、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン等が挙げられる。架橋剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0118】
本発明のネガ型レジスト組成物には、塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤を用いる場合、特許文献1〜5にも多数の例が記載されているように多数のものが公知であり、それらを参考にして選択することができる。また、特開2008−304590号公報に開示されているようなフッ素を含有するポリマーを添加することもできる。
【0119】
なお、界面活性剤を添加する場合、その添加量は、前記ベースポリマー100質量部に対し、0.01質量部以上が好ましく、2質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましい。
【0120】
本発明のネガ型レジスト組成物は、有機溶剤を含んでもよい。前記有機溶剤としては、前記ポリマー、酸発生剤、その他の添加剤等が溶解可能な有機溶剤であれば、特に限定されない。このような有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、メチル−n−アミルケトン等のケトン類;3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。これらの有機溶剤の中でも、本発明においては、レジスト成分中の酸発生剤の溶解性が最も優れている乳酸エチルやプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びこれらの混合溶剤が好ましく使用される。
【0121】
有機溶剤の含有量は、前記ベースポリマー100質量部に対し、1,000〜10,000質量部が好ましく、2,000〜9,700質量部がより好ましい。このような濃度に調整することにより、回転塗布法を用い、膜厚が10〜300nmのレジスト膜を安定して平坦度よく得ることができる。
【0122】
更に、本発明のネガ型レジスト組成物には、適宜、溶解阻害剤等の添加剤を加えることもできる。
【0123】
[パターン形成方法]
本発明のパターン形成方法は、前述したネガ型レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜を露光する工程、アルカリ現像液を用いて前記露光したレジスト膜を現像してレジストパターンを得る工程を含むものである。
【0124】
本発明のネガ型レジスト組成物を使用してパターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができる。一般論としては、基板として、例えば、集積回路製造用の基板(表層の材料がSi、SiO
2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等であるシリコンウエハー等)、あるいは表層の材料がCr、CrO、CrON、MoSi
2、SiO
2等である石英基板等のマスク回路製造用の基板(例えば、フォトマスクブランク)にスピンコーティング等の方法で膜厚が0.05〜2.0μmとなるように塗布し、これをホットプレート上で、好ましくは60〜150℃、1〜10分間、より好ましくは80〜140℃、1〜5分間プリベークする。前記基板、特にフォトマスクブランクとしては、最表面がクロムを含む材料で形成されたものを好適に用いることができる。
【0125】
次いで、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜を露光し、パターンを照射する。前記高エネルギー線としては、遠紫外線、エキシマレーザー(KrF、ArF等)、X線、EUV、EB等が挙げられる。前記高エネルギー線として遠紫外線、エキシマレーザー、X線、EUV等を用いる場合は、目的のパターンを形成するためのマスクを用いて、露光量が好ましくは1〜200mJ/cm
2、より好ましくは10〜100mJ/cm
2となるように照射する。高エネルギー線としてEBを用いる場合は、露光量が好ましくは1〜300μC/cm
2、より好ましくは10〜200μC/cm
2で直接描画する。
【0126】
露光は、通常の露光法のほか、場合によってはマスクとレジスト膜との間に液体を挿入する液浸法を用いることも可能である。その場合には、水に不溶な保護膜を用いることも可能である。
【0127】
次いで、ホットプレート上で、好ましくは60〜150℃、1〜10分間、より好ましくは80〜140℃、1〜5分間ポストエクスポージャーベーク(PEB)する。更に、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、好ましくは0.1〜3分間、より好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。
【0128】
なお、本発明のネガ型レジスト組成物は、特に高いエッチング耐性を持つため厳しいエッチング条件にも耐えることができ、かつLERが小さいことが要求される条件で使用される際に有用である。また、基板として、レジストパターンの密着性が取り難く、パターン剥がれやパターン崩壊を起こしやすい材料を表面に持つ基板への適用が特に有用であり、金属クロムや酸素、窒素、炭素の1以上の軽元素を含有するクロム化合物をスパッタリング成膜した基板上、特に、フォトマスクブランク上でのパターン形成に有用である。
【実施例】
【0129】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
【0130】
[1]単量体の合成
[実施例1−1]モノマー1の合成
【化48】
【0131】
3−ブロモイソフタル酸ジメチル(1−1)440gを、テトラヒドロフラン(THF)3.5kgに溶解させた後、3mol/LメチルマグネシウムクロリドのTHF溶液3.6kgを、50℃水浴下で2時間かけて滴下した。次いで、氷冷下、飽和塩化アンモニウム水溶液を5kg加え、有機層を分取し、水層を酢酸エチル3kgで抽出した後、減圧濃縮した。濃縮液にトルエンを加え、再び濃縮を行い、析出した固体をヘキサンで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥することで、目的物である3,5−ビス(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ブロモベンゼン(1−2)264gを白色固体として得た(収率60%)。
【0132】
3,5−ビス(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ブロモベンゼン(1−2)152g及びイミダゾール94.6gをジメチルホルムアミド(DMF)304gに溶解させた後、氷冷下でトリエチルシリルクロリド168gを滴下し、室温で24時間攪拌した。次いで、氷冷下で水152g及びヘキサン304gを加え、有機層を分取し、水洗を行い、その後減圧濃縮し、3,5−ビス(2−トリエチルシリルオキシ−2−プロピル)ブロモベンゼン(1−3)を得た。3,5−ビス(2−トリエチルシリルオキシ−2−プロピル)ブロモベンゼン(1−3)をTHF390gに溶解させた後、マグネシウムを18.7g加え、55℃に加温し、Grignard試薬を調製した。得られたGrignard試薬に氷冷下でジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)1.4gを加えた後、ビニルブロミド65.8gを滴下した。氷冷下で1時間攪拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液250g及びヘキサン300gを加え、有機層を分取し、水洗を行い、その後減圧濃縮した。得られた化合物をTHF454gに溶解させた後、氷冷下で35質量%HCl水溶液120gを加え、6時間攪拌した。その後、酢酸エチル900gを加え、有機層を分取し、水洗を行い、減圧濃縮した。析出した固体をアセトンに溶解させ、ヘキサンで再結晶を行い、得られた固体を減圧乾燥することで、目的物である3,5−ビス(2−ヒドロキシ−2−プロピル)スチレン(モノマー1)92.9gを白色固体として得た(収率82%)。
【0133】
[実施例1−2]モノマー2の合成
【化49】
【0134】
3−アセトキシイソフタル酸ジメチル(2−1)270gを、THF3.5kgに溶解させた後、3mol/LメチルマグネシウムクロリドのTHF溶液3.6kgを、50℃水浴下で2時間かけて滴下した。次いで、氷冷下、飽和塩化アンモニウム水溶液を5kg加え、有機層を分取し、水層を酢酸エチル3kgで抽出した後、減圧濃縮した。濃縮液にトルエンを加え、再び濃縮を行い、析出した固体をヘキサンで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥することで、目的物である3,5−ビス(2−ヒドロキシ−2−プロピル)フェノール(2−2)187gを白色固体として得た(収率73%)。
【0135】
続いて、3,5−ビス(2−ヒドロキシ−2−プロピル)フェノール(2−2)515g、トリエチルアミン417g及びテトラヒドロフラン(THF)1,500gを混合した後、メタクリロイルクロリド282gを1時間かけて滴下し、室温で3時間攪拌した。次いで、氷冷下で10質量%HCl水溶液750g及び酢酸エチル1500gを加え、有機層を分取し、水洗を行い、その後減圧濃縮した。析出した固体をアセトンに溶解させ、ヘキサンで再結晶を行い、得られた固体を減圧乾燥することで、目的物である3,5−ビス(2−ヒドロキシ−2−プロピル)フェニルメタクリレート(モノマー2)486gを白色固体として得た(収率80%)。
【0136】
[2]ポリマーの合成
[実施例2−1]ポリマー1の合成
窒素雰囲気下、500mLの滴下シリンダーに、50質量%の4−ヒドロキシスチレンのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液62.5g、アセナフチレン8.51g、3,5−ビス(2−ヒドロキシ−2−プロピル)スチレン49.3g、トリフェニルスルホニウム−1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−メタクリロイルオキシプロパン−1−スルホネート11.0g、ジメチル−2,2'−アゾビス−(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業(株)製、商品名V601)10.3g、及び溶剤としてγ−ブチロラクトン156gとPGMEA24gとを加えた溶液Aを調製した。更に、窒素雰囲気下とした別の1,000mL重合用フラスコに、γ−ブチロラクトンを78g加え、80℃に加熱し、その温度を保った状態で、溶液Aを4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合温度を80℃に維持しながら18時間攪拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を3,000gのジイソプロピルエーテルに滴下すると、固体が析出した。デカンテーションによりジイソプロピルエーテルを除去し、析出した固体をアセトン200gに溶解した。このアセトン溶液を3,000gのジイソプロピルエーテルに滴下し、析出した固体を濾別した。濾別した共重合体を再度アセトン200gに溶解し、このアセトン溶液を3,000gの水に滴下し、析出した固体を濾別した。その後、40℃で40時間乾燥し、目的のポリマー(ポリマー1)72gを白色固体として得た。得られたポリマーを
13C−NMR、
1H−NMR、及びGPCで測定したところ、以下の分析結果となった。なお、共重合組成比はモル比である(以下同じ。)。
【0137】
【化50】
Mw=14,600
Mw/Mn=1.62
【0138】
[実施例2−2〜2−27、比較例1−1〜1−4]ポリマー2〜27、比較ポリマー1〜4の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、実施例2−1と同じ方法で、下記表1及び3に示すポリマー2〜27及び比較ポリマー1〜4を合成した。
【0139】
[実施例2−28]ポリマー28の合成
窒素雰囲気下、200mLの滴下シリンダーに4−アセトキシスチレン26.0g、アセナフチレン9.31g、3,5−ビス(2−ヒドロキシ−2−プロピル)スチレン64.71g、ジメチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業(株)製、商品名V601)9.8g、及び溶剤としてメチルエチルケトンを56g加え、溶液Bを調製した。更に、窒素雰囲気下とした別の500mL重合用フラスコに、メチルエチルケトンを38g加え、80℃に加熱し、その温度を保った状態で、溶液Bを4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合温度を80℃に維持しながら18時間攪拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を1,400gのヘキサンに滴下し、析出した固体を濾別した。濾別した固体をヘキサン280gで2回洗浄した。得られた固体を窒素雰囲気下で、1Lフラスコ中、THF180g及びメタノール60gの混合溶剤に溶解し、エタノールアミン29.4gを加え、60℃で3時間攪拌した。この反応溶液を減圧濃縮し、得られた濃縮物を300gの酢酸エチル及び水90gの混合溶剤に溶解させ、得られた溶液を分液ロートに移し、酢酸29gを加え、分液操作を行った。下層を留去し、得られた有機層に水90g及びピリジン39gを加え、分液操作を行った。下層を留去し、得られた有機層に更に水90gを添加して水洗分液を行った。水洗分液は計5回行った。分液後の有機層を濃縮後、アセトン150gに溶解し、得られたアセトン溶液を水3,000gに滴下して得られた晶出沈澱物を濾過し、水洗浄を行い、2時間吸引濾過を行った後、再度得られた濾別体をアセトン150gに溶解し、得られたアセトン溶液を水3,000gに滴下して得られた晶出沈澱物を濾過、水洗浄、乾燥を行い、目的のポリマー(ポリマー28)58.0gを白色固体として得た。得られたポリマーを
13C−NMR、
1H−NMR、及びGPCで測定したところ、以下の分析結果となった。
【0140】
【化51】
Mw=3,900
Mw/Mn=1.68
【0141】
[実施例2−34]ポリマー34の合成
窒素雰囲気下、200mLの滴下シリンダーにヒドロキノンモノメタクリレート13.2g、アセナフチレン5.51g、3,5−ビス(2−ヒドロキシ−2−プロピル)スチレン31.4g、ジメチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業(株)製、商品名V601)4.85g、及び溶剤としてメチルエチルケトンを56g加え、溶液Cを調製した。更に、窒素雰囲気下とした別の500mL重合用フラスコに、メチルエチルケトンを38g加え、80℃に加熱し、その温度を保った状態で、溶液Cを4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合温度を80℃に維持しながら18時間攪拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を1,000gのヘキサンに滴下し、析出した固体を濾別した。濾別した固体をヘキサン200gで2回洗浄した。得られた固体を濾過、乾燥を行い、目的のポリマー(ポリマー34)45.0gを白色固体として得た。得られたポリマーを
13C−NMR、
1H−NMR、及びGPCで測定したところ、以下の分析結果となった。
【0142】
【化52】
Mw=4,500
Mw/Mn=1.69
【0143】
[実施例2−29〜2−33、2−35〜2−47、比較例1−5〜1−8]ポリマー29〜33、35〜47、比較ポリマー5〜8の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、A−1単位を含有するポリマーの場合は、実施例2−28と同じ方法で、A−2単位を含有するポリマーの場合は、実施例2−34と同じ方法で、表2及び3に示すポリマー29〜33、35〜47、比較ポリマー5〜8を合成した。
【0144】
【表1】
【0145】
【表2】
【0146】
【表3】
【0147】
表1〜3中、各繰り返し単位の構造を下記表4〜7に示す。
【表4】
【0148】
【表5】
【0149】
【表6】
【0150】
【表7】
【0151】
[3]ネガ型レジスト組成物の調製
[実施例3−1〜3−75、比較例2−1〜2−10]
ポリマー1〜47又は比較ポリマー1〜8、酸発生剤PAG−1〜PAG−4、クエンチャーQ−1〜Q−4、一部組成物にはフッ素含有ポリマーFP−1を、下記表8〜11に示す組成で有機溶剤中に溶解して溶液を調合し、更に各溶液を0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過することで、ネガ型レジスト組成物をそれぞれ調製した。なお、各ネガ型レジスト組成物には、界面活性剤としてPF−636(OMNOVA SOLUTIONS社製)を固形分100質量部に対しに対し、0.075質量部添加した。
なお、表8〜11中の溶剤の、PGMEAはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ELは乳酸エチル、PGMEはプロピレングリコールモノメチルエーテルを表す。
【0152】
【表8】
【0153】
【表9】
【0154】
【表10】
【0155】
【表11】
【0156】
なお、表8〜11中、酸発生剤(PAG−1〜PAG−4)、クエンチャー(Q−1〜Q−4)、及びフッ素含有ポリマー(FP−1)の構造は、以下のとおりである。
【化53】
【0157】
【化54】
【0158】
【化55】
【0159】
[4]EB描画評価
[実施例4−1〜4−75、比較例3−1〜3−10]
(1)解像性評価
ネガ型レジスト組成物R−1〜R−75及びCR−1〜CR−10を、それぞれACT−M(東京エレクトロン(株)製)を用いて152mm角の最表面が酸化窒化クロム膜であるフォトマスクブランク上にスピンコーティングし、ホットプレート上で、110℃で600秒間プリベークして膜厚75nmのレジスト膜を作製した。得られたレジスト膜の膜厚測定は、光学式測定器ナノスペック(ナノメトリックス社製)を用いて行った。測定はブランク外周から10mm内側までの外縁部分を除くブランク基板の面内81箇所で行い、膜厚平均値と膜厚範囲を算出した。
更に、電子線露光装置((株)ニューフレアテクノロジー製、EBM-5000plus、加速電圧50kV)を用いて露光し、130℃で600秒間PEBを施し、2.38質量%TMAH水溶液で現像を行い、ネガ型のパターンを得た。得られたレジストパターンを次のように評価した。
作製したパターン付きブランクを上空SEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、400nmのラインアンドスペース(LS)を1:1で解像する露光量を最適露光量とした。また、400nmのLSを1:1で解像する露光量における最小寸法を解像度(限界解像性)とし、200nmLSのLERをSEMで測定した。また、また、400nmのLSを1:1で解像する露光量でアイソライン(IL)及びアイソスペース(IS)パターンを露光し、最小寸法をIL及びISについての解像度とした。ILは、孤立した一本のラインパターンの解像性であり、ISは、孤立した一本のスペースパターンの解像性である。評価結果を表12〜14に示す。なお、表12〜14に示す最適露光量とは、LS基準の値である。
【0160】
【表12】
【0161】
【表13】
【0162】
【表14】
【0163】
[実施例5−1〜5−7、比較例4−1〜4−5]
(2)欠陥評価
ネガ型レジスト組成物R−1、R−3、R−15、R−17、R−54、R−55、R−58、CR−1、CR−2、CR−5、CR−6及びCR−9を用いて、(1)解像性評価と同様の条件で、基板中心部にパターンを作製し、露光、現像を行った後、マスク欠陥検査装置(レーザーテック社製M2351)で未露光部を検査し、クロム膜上に放射状の現像残渣が生じているかどうかを観察した。評価結果を表15に示す。
【0164】
【表15】
【0165】
表12〜14に示したように、本発明のネガ型レジスト組成物は、いずれも解像性やLERの値は、比較例のネガ型レジスト組成物よりも良好な値を示した。
【0166】
また、表15に示したように、本発明のネガ型レジスト組成物を用いた場合、放射状の欠陥は観察されず、欠陥性能にも優れる結果となったが、比較例のネガ型レジスト組成物は、解像性はそれほど悪くないものの、欠陥検査にて放射状の残渣が生じる結果となった。比較例に用いたポリマーは、露光部において酸の作用により架橋を誘発するとともに、脱水したポリマーを生成してしまう。脱水したポリマーは現像液に対する溶解性が低いため、露光部から溶けだした脱水したポリマーは現像で除去されきれずに、現像終了後にも基板上に残ってしまい、結果として放射状の残渣が生じたと考えられる。
【0167】
以上の結果より、本発明のネガ型レジスト組成物を用いれば、高解像かつLERが小さいパターンを形成することができる。また、現像欠陥を発現しないという長所もあるため、これを用いたパターン形成方法は、半導体素子製造、特に欠陥数が少ないことが求められるフォトマスクブランクの加工におけるフォトリソグラフィーに有用である。