【課題】どのような塗布プロセスに対しても塗布ムラおよびストリエーションの発生が抑制され、均一な薄膜を形成することができる感光性樹脂組成物、その硬化物および当該硬化物を含む表示装置を提供すること。
【解決手段】(A)重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、(B)少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーと、(C)エポキシ化合物と、(D)光重合開始剤と、(E)界面活性剤と、(F)3種以上の溶剤と、を含む感光性樹脂組成物であって、(F)成分は、20℃における蒸気圧が100Pa未満であり、沸点が200℃未満である第一溶剤と、蒸気圧が100Pa以上であり、沸点が120℃以上である第二溶剤と、PGMEAである第三溶剤とを含み、感光性樹脂組成物の表面張力をσ、感光性樹脂組成物から(E)成分を除いた感光性樹脂組成物の表面張力をσ
前記第一溶剤は、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、プロピレングリコールジアセテートからなる群から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
前記第二溶剤は、シクロヘキサノン、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノールからなる群から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
((A)成分)
感光性樹脂組成物中の(A)成分である重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、分子内に重合性不飽和基と酸性基を有する樹脂であれば特に制限なく用いることができる。ここで、重合性不飽和基の代表的な例としてはアクリル基又はメタクリル基があり、酸性基の代表的な例としてはカルボキシル基がある。
【0013】
この重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の好ましい重量平均分子量(Mw)と酸価の範囲は、樹脂の骨格によって異なるが、通常、Mwは2000〜50000であり、酸価は30〜120mgKOH/gであることが好ましい。Mwが2000未満の場合には、アルカリ現像時のパターンの密着性が低下するおそれがあり、Mwが50000を超える場合には、現像性が著しく低下し、適正な現像時間の感光性樹脂組成物を得ることができなくなるおそれがある。また、酸価の値が30より小さい場合には、アルカリ現像時に残渣が残りやすくなり、酸価の値が120より大きくなる場合には、アルカリ現像液の浸透が早くなりすぎ、所望する溶解現像とならず剥離現像がおきてしまうので、いずれも好ましくない。なお、Mwが2000〜25000であること、酸価は40〜110mgKOH/gであることがより好ましい。なお、(A)成分の重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
好ましく適用できる(A)成分の重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の第一の例には、エポキシ基を2個以上有する化合物と(メタ)アクリル酸(これは「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」の意味である)とを反応させ、得られたヒドロキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート化合物に(a)ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物及び/又は(b)テトラカルボン酸二無水物を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物である。エポキシ(メタ)アクリレート酸付加物へと誘導されるエポキシ基を2個以上有する化合物としては、ビスフェノール型エポキシ化合物やノボラック型エポキシ化合物が含まれる。
【0015】
ビスフェノール型エポキシ化合物は、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンとを反応させて得られる2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物である。この反応の際には一般にジグリシジルエーテル化合物のオリゴマー化を伴うため、ビスフェノール骨格を2つ以上含むエポキシ化合物を含んでいる。この反応に用いられるビスフェノール類の例には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン、4,4’−ビフェノール、3,3’−ビフェノール等が含まれる。この中でも、フルオレン−9,9−ジイル基を有するビスフェノール類が特に好ましい。
【0016】
エポキシ(メタ)アクリレートに反応させる(a)ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物としては、鎖式炭化水素ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物、脂環式ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物、芳香族ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物等が使用される。ここで、鎖式炭化水素ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物の例には、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の酸一無水物が含まれる。さらには、任意の置換基が導入されたジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物等が含まれる。また、脂環式ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物の例には、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ノルボルナンジカルボン酸等の酸一無水物が含まれる。さらには、任意の置換基が導入されたジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物等も含まれる。また、芳香族ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物の例には、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の酸一無水物が含まれる。さらには、任意の置換基が導入されたジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物が含まれる。
【0017】
また、エポキシ(メタ)アクリレートに反応させる(b)テトラカルボン酸の酸二無水物としては、鎖式炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸の酸二無水物又は芳香族テトラカルボン酸の酸二無水物が使用される。ここで、鎖式炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物の例には、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸等の酸二無水物が含まれ、さらには、任意の置換基が導入されたテトラカルボン酸の酸二無水物が含まれる。また、脂環式テトラカルボン酸の酸二無水物の例には、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、ノルボルナンテトラカルボン酸等の酸二無水物が含まれ、さらには、任意の置換基の導入されたテトラカルボン酸の酸二無水物が含まれる。さらに、芳香族テトラカルボン酸の酸二無水物の例には、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸等の酸二無水物が含まれ、さらには任意の置換基の導入されたテトラカルボン酸の酸二無水物が含まれる。
【0018】
エポキシ(メタ)アクリレートに反応させる(a)ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸無水物と(b)テトラカルボン酸の酸二無水物とのモル比(a)/(b)は、0.01〜10.0であることが好ましく、0.02以上3.0未満であることがより好ましい。モル比(a)/(b)が上記範囲を逸脱すると、良好な光パターニング性を有する感光性樹脂組成物とするための最適分子量が得られないため、好ましくない。なお、モル比(a)/(b)が小さいほど分子量は大きくなり、アルカリ溶解性は低下する傾向にある。
【0019】
エポキシ(メタ)アクリレート酸付加物は、既知の方法、例えば、特開平8−278629号公報や特開2008−9401号公報等に記載の方法により製造することができる。まず、エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を反応させる方法の例には、エポキシ化合物のエポキシ基と等モルの(メタ)アクリル酸を溶剤中に添加し、触媒(トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、2,6−ジイソブチルフェノール等)の存在下、空気を吹き込みながら90〜120℃に加熱・攪拌して反応させる方法がある。次に、反応生成物であるエポキシアクリレート化合物の水酸基に酸無水物を反応させる方法の例には、エポキシアクリレート化合物と酸二無水物および酸一無水物の所定量を溶剤中に添加し、触媒(臭化テトラエチルアンモニウム、トリフェニルホスフィン等)の存在下、90〜130℃で加熱・攪拌して反応させる方法がある。この方法で得られたエポキシアクリレート酸付加物は一般式(1)の骨格を有する。
【0020】
【化1】
(式(1)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を表し、R
5は、水素原子又はメチル基を表し、Aは、−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−、−Si(CH
3)
2−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−O−、フルオレン−9,9−ジイル基又は直結合を表し、Xは4価のカルボン酸残基を表し、Y
1及びY
2は、それぞれ独立して水素原子又は−OC−Z−(COOH)
m(但し、Zは2価又は3価カルボン酸残基を表し、mは1又は2の数を表す)を表し、nは1〜20の整数を表す。)
【0021】
(A)成分である重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂として好ましい樹脂の別の例には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の共重合体で(メタ)アクリル基とカルボキシル基を有する樹脂が含まれる。上記樹脂は、例えば、第一ステップとしてグリシジル(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリル酸エステル類を溶剤中で共重合させて得られた共重合体に、第二ステップとして(メタ)アクリル酸を反応させ、第三ステップでジカルボン酸又はトリカルボン酸の無水物を反応させて得られる重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂である。これら共重合体の中でも好ましく用いることができる例については、特願2017−33662に具体的に示されているものを参考にできる。このような(メタ)アクリル基とカルボキシル基を有する樹脂(共重合体)を得るための別の方法としては、第一ステップとして(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルを溶剤中で共重合させて得られた共重合体に、第二ステップとしてグリシジル(メタ)アクリレートを反応させ、第三ステップでジカルボン酸又はトリカルボン酸の無水物を反応させるという方法でも可能である。
【0022】
もう1つの別の例には、第一成分として分子中にエチレン性不飽和結合を有するポリオール化合物と、第二成分として分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物と、第三成分としてジイソシアネート化合物と、を反応させて得られるウレタン化合物が含まれる。この系統の樹脂としては特開2017−76071号公報に示されているものを参考にできる。
【0023】
((B)成分)
(B)成分における少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーの例には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、エチレン性二重結合を有する化合物として(メタ)アクリル基を有する樹枝状ポリマー等が含まれる。これらのモノマーの1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、当該少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーは、含有アルカリ可溶性樹脂の分子同士を架橋する役割を果たすことができるものであり、この機能を発揮させるためには光重合性基を3個以上有するものを用いることが好ましい。また、モノマーの分子量を1分子中の(メタ)アクリル基の数で除したアクリル当量が50〜300であることが好ましく、アクリル当量は80〜200であることがより好ましい。なお、(B)成分は遊離のカルボキシ基を有しない。
【0024】
(B)成分として組成物に含ませることができるエチレン性二重結合を有する化合物として(メタ)アクリル基を有する樹枝状ポリマーの例には、多官能(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリレート基の中の炭素-炭素二重結合の一部に多価メルカプト化合物を付加して得られる樹枝状ポリマーを例示することができる。具体的には、一般式(2)の多官能(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリレートと一般式(3)の多価メルカプト化合物を反応させて得られる樹枝状ポリマーなどが含まれる。
【0026】
ここで、R
6は水素原子またはメチル基を表し、R
7はR
8(OH)
kのk個のヒドロキシル基の内l個のヒドロキシル基を式中のエステル結合に供与した残り部分を表し、好ましいR
8(OH)
kとしては、炭素数2〜8の非芳香族の直鎖又は分枝鎖の炭化水素骨格に基づく多価アルコールであるか、当該多価アルコールの複数分子がアルコールの脱水縮合によりエーテル結合を介して連結してなる多価アルコールエーテルであるか、又はこれらの多価アルコール又は多価アルコールエーテルとヒドロキシ酸とのエステルである。kおよびlは独立に2〜20の整数を表すが、k≧lである。
【0028】
ここで、R
9は単結合又は2〜6価のC1〜C6の炭化水素基であり、mはR
9が単結合であるときは2であり、R
9が2〜6価の基であるときは2〜6の整数を表す。
【0029】
一般式(2)で示される多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルが含まれる。これらの化合物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
一般式(3)で示される多価メルカプト化合物の具体例には、トリメチロールプロパントリ(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリ(メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールトリ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メルカプトプロピオネート)等が含まれる。これらの化合物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
((C)成分)
(C)エポキシ化合物の例には、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフタレン骨格を含むフェノールノボラック化合物(例えば日本化薬社製「NC−7000L」)、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、トリスフェノールメタン型エポキシ化合物、テトラキスフェノールエタン型エポキシ化合物、多価アルコールのグリシジルエーテル、多価カルボン酸のグリシジルエステル、メタクリル酸とメタクリル酸グリシジルの共重合体に代表される(メタ)アクリル酸グリシジルをユニットとして含む(メタ)アクリル基を有するモノマーの共重合体、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートに代表される脂環式エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン骨格を有する多官能エポキシ化合物(例えばDIC社製「HP−7200シリーズ」)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(例えばダイセル社製「EHPE3150」)、エポキシ化ポリブタジエン(例えば日本曹達社製「NISSO−PB・JP−100」)、シリコーン骨格を有するエポキシ化合物等が含まれる。これら成分としてはエポキシ当量が50〜500g/eqの化合物が好ましい。さらに、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物を用いることがより好ましい。なお、(C)成分は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
((D)成分)
(D)光重合開始剤の例には、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類;ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のα−アミノアルキルフェノン類;2−(o−クロロフェニル)−4,5−フェニルビイミダゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルビイミダゾール、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルビイミダゾール、2,4,5−トリアリールビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類;2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物類;2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロRメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4,5−トリメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メチルチオスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等のハロメチル−S−トリアジン系化合物類;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−(4−フェニルスルファニルフェニル)ブタン−1,2−ジオン−2−オキシム−O−ベンゾアート、1−(4−メチルスルファニルフェニル)ブタン−1,2−ジオン−2−オキシム−O−アセタート、1−(4−メチルスルファニルフェニル)ブタン−1−オンオキシム−O−アセタート等のO−アシルオキシム系化合物類;ベンジルジメチルケタール、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2−イソプロピルチオキサンソン等のイオウ化合物;2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類;アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物;トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の第3級アミンなどが含まれる。この中でも、特に着色剤を含む感光性樹脂組成物とする場合は、O−アシルオキシム系化合物類(ケトオキシムを含む)が好ましい。また、これら光重合開始剤を1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、本発明でいう「光重合開始剤」とは、増感剤を含む意味で使用される。
【0033】
((E)成分)
(E)成分の界面活性剤としては、シリコーン系、フッ素系等の公知の界面活性剤を特に限定なく使用することができる。シリコーン系界面活性剤の例には、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが含まれる。フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが含まれる。また、これら界面活性剤を1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。界面活性剤の添加量は、後に詳細に説明するように感光性樹脂組成物の表面張力を測定しながら決定することになるが、その添加量範囲としては、感光性樹脂組成物中0.001〜0.1質量%であり、界面活性剤の種類によっても添加量の範囲は異なり、シリコーン系界面活性剤の場合には0.001〜0.005質量%、フッ素系界面活性剤であれば0.01〜0.1質量%の範囲となる場合が通常である。
【0034】
((F)成分)
感光性樹脂組成物中の(F)成分である溶剤は、第一溶剤、第二溶剤および第三溶剤から構成される。第一溶媒は、20℃における蒸気圧が100Pa未満であり、かつ、沸点が200℃未満の溶剤から選択されうる。第二溶剤は、20℃における蒸気圧が100Pa以上であり、かつ、沸点が120℃以上の溶剤から選択されうる(ただし、第二溶剤はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート以外の溶剤である)。第三溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである。
【0035】
第一溶剤の例には、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(EDM)、3−メトキシ−3メチル−1−ブチルアセテート(MMBA)、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(MMB)、プロピレングリコールジアセテート(PGDA)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)などが含まれる。第二溶剤の例には、キシレン、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、シクロヘキサノン(ANON)、3−メトキシプロピオン酸メチル(MMP)、3−メトキシブチルアセテート(MBA)、1−メトキシ−2−プロパノール(PGME)、1−エトキシ−2−プロパノール、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル(MDM)、3−エトキシプロピオン酸エチル(EEP)、乳酸エチル(EL)、ジアセトンアルコール(DAA)などが含まれる。なお、本願発明においては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)は第二溶剤としては取り扱わない。
【0036】
これらのうち、第一溶剤は、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(EDM)、3−メトキシ−3メチル−1−ブチルアセテート(MMBA)、及びプロピレングリコールジアセテート(PGDA)が好ましい。なお、本願発明の感光性樹脂組成物を、例えばカラーフィルターのRGBの画素を形成した後に塗布するような場合には、RGB画素に浸透しやすい溶剤の使用を避ける方が好ましい。その場合には、第一溶剤として3−メトキシ−3メチル−1−ブチルアセテート(MMBA)、及びプロピレングリコールジアセテート(PGDA)が好ましい。また、第二溶剤は、シクロヘキサノン(ANON)、3−メトキシプロピオン酸メチル(MMP)、3−メトキシブチルアセテート(MBA)、及び1−メトキシ−2−プロパノール(PGME)が好ましい。
【0037】
これらの溶媒の沸点および20℃における蒸気圧を、表1に示す。
【0039】
感光性樹脂組成物中の(F)成分である溶剤は、第一溶剤〜第三溶剤の合計量が(F)成分中90質量%以上含まれることが好ましいが、第一溶剤〜第三溶剤と均一に混合できる溶剤であれば第一溶剤〜第三溶剤以外の溶剤を特に制限なく含ませることができる。それら溶剤としては、例えば、アルコール類、テルペン類、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類酢酸エステル類等が含まれる。
【0040】
沸点が高く、蒸気圧が低い溶剤は、ストリエーションの発生抑制に有利であるが、その沸点や割合によっては溶剤が膜中に残存し、製版不良や現像の面内バラツキを引き起こす要因となる。一方で、沸点が低く、蒸気圧が高い溶剤は、膜中への溶剤の残存は起こりにくいが、成膜時にストリエーションが発生しやすく、またモヤムラなどの別のムラの原因にもなる。そのため、ムラのない均一な膜を得るためには、沸点および蒸気圧が所定の範囲である第一溶剤および第二溶剤、第三溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)と組み合わせて、適度な割合で混合することが重要となる。具体的には、感光性樹脂組成物は、全(F)成分中、第一溶媒を10〜30%含み、第二溶媒を20〜60%含み、第三溶媒を10〜60%含む。
【0041】
さらに、界面活性剤(成分(E))の配合量を調整することにより、感光性樹脂組成物の表面張力(σ)が調整される。このとき、感光性樹脂組成物の表面張力をσとし、前記感光性樹脂組成物から前記(E)成分を除いた感光樹脂組成物の表面張力をσ
0としたときに、0.85≦σ/σ
0≦1を満たすように界面活性剤の配合量を調整することで、ストリエーションの発生を効果的に抑制することができる。なお、通常、実験的には(E)成分を添加する前にσ
0を測定し、(E)成分を添加した後にσを測定することになるが、σ
0を本願発明の感光性樹脂組成物から(E)成分を除いた感光性樹脂組成物の表面張力と記載している。
【0042】
表面張力σおよび表面張力σ
0の測定方法は、以下のとおりである。
(表面張力の測定方法)
プレート法自動表面張力計(協和界面科学社製Model:CBVP−Z)を用い、気温23℃、湿度50%の条件下、表面張力を測定した。
【0043】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて硬化剤、硬化促進剤、熱重合禁止剤、酸化防止剤、可塑剤、充填材、レベリング剤、消泡剤、カップリング剤等の添加剤を配合することができる。硬化剤としては、エポキシ化合物に通常適用される公知の化合物を利用できる。
【0044】
硬化剤は、エポキシ化合物の硬化剤として用いられるものであれば用いることができ、アミン系化合物、多価カルボン酸系化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ジシアンジアミド、ルイス酸錯化合物等を例示することができる。多価カルボン酸系化合物としては、多価カルボン酸、多価カルボン酸の無水物、及び多価カルボン酸の熱分解性エステルを例示することができる。
【0045】
硬化促進剤は、エポキシ化合物の硬化促進剤、硬化触媒、潜在性硬化剤等として知られる公知の化合物を利用でき、例えば三級アミン、四級アンモニウム塩、三級ホスフィン、四級ホスホニウム塩、ホウ酸エステル、ルイス酸、有機金属化合物、イミダゾール類等を挙げることができる。
【0046】
熱重合禁止剤および酸化防止剤の例には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジン、ヒンダードフェノール系化合物等が含まれる。可塑剤の例には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等が含まれる。充填材の例には、シリカ、チタニア等のナノサイズ粒子で塗膜の透明性を阻害しないものでかつ有機溶剤に分散することができるものが含まれる。レベリング剤や消泡剤の例には、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物が含まれる。また、シランカップリング剤の例には3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が含まれる。
【0047】
本発明の感光性樹脂組成物の固形分(固形分には硬化後に固形分となるモノマー成分を含む)中の(A)〜(E)の各成分の好ましい構成割合については次のとおりである。
(A)成分と(B)成分との配合割合[(A)/(B)]については、20/80〜90/10であることが好ましく、40/60〜70/30であることがより好ましい。ここで、(A)成分の配合割合が少ないと、光硬化反応後の硬化物が脆くなり、また、未露光部において塗膜の酸価が低いためにアルカリ現像液に対する溶解性が低下し、パターンエッジががたつきシャープにならないといった問題が生じる。反対に、(A)成分の配合割合が上記範囲より多くなると、光反応成分((A)成分+(B)成分)に占める光反応性官能基の割合が少なく光硬化反応による架橋構造の形成が十分でなくなる。
(C)成分の使用量は、上記(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して5〜40質量部の範囲であることが好ましい。ここで、(C)成分の使用量が5質量部より少ない場合は、パターニング後に硬化膜を形成した際に残存するカルボキシル基の量が多くなり、耐湿信頼性が確保できないことが懸念される。エポキシ化合物の使用量が40質量部より多い場合は、感光性樹脂組成物中の樹脂成分における感光性基の量が減少して、パターニングするための感度が十分に得られなくなる可能性がある。
(D)成分の添加量は、(A)成分と(B)成分の合計量100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましい。ここで、0.1質量部未満であると感度が十分に得られず、10質量部を超えるとテーパー形状(現像パターン断面の膜厚方向形状)がシャープにならないで裾を引いた状態になるハレーションが起こりやすくなるとともに後工程で高温に暴露した場合に分解ガスが発生する可能性がある。
【0048】
(F)成分は、第一溶剤、第二溶剤、第三溶剤から構成されている。第一溶剤、第二溶剤、第三溶剤の合計量は、目標とする感光性樹脂組成物の粘度などによって変化するが、合計量としては、感光性樹脂組成物中に、70〜90質量%であることが好ましい。また、第一溶剤、第二溶剤、第三溶剤の全(F)成分中に占める割合は、第一溶剤は10〜30%であることが好ましく、第二溶剤は20〜60%であることが好ましく、第三溶剤は10〜60%であることが好ましい。
【0049】
第一溶剤、第二溶剤、第三溶剤の配合割合を調整することにより、感光性樹脂組成物の粘度を調整することができる。そのため、膜厚の増減をしやすくなるだけなく、基板上に均一に広がる速度も調整できるので、塗布ムラ、ストリエーションの発生を抑制することができる。さらに、蒸気圧が異なる溶剤を組み合わせることで、成膜後に塗膜表面のみがすぐに乾燥してしまったり、反対に乾燥速度が遅くなるようなことを抑制できるので、焼成時においては塗膜を均一に加熱することができる。その結果、膜厚のムラを抑制することもできる。
【0050】
本発明における感光性樹脂組成物を用いた硬化膜パターンの形成方法は、通常のフォトリソグラフィー法であるが、以下に詳細に説明する。先ず、感光性樹脂組成物をガラス基板、プラスチック基板等およびそれらの上にカラーフィルターの画素パターンやTFT等の画素駆動用の電極パターンを形成した基板の上に塗布し、次いで溶剤を乾燥させた(プリベーク)後、得られた塗膜にフォトマスクを通して紫外線を照射して露光部を硬化させ、更にアルカリ水溶液を用いて未露光部を溶出させる現像を行ってパターンを形成し、更に後硬化としてポストベーク(熱焼成)を行う方法である。
【0051】
これらの基板上に感光性樹脂組成物の溶液を塗布する方法としては公知の溶液浸漬法、スプレー法の他、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコーター機やスピナー機を用いる方法等の何れの方法をも採用することができる。これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プリベーク)ことにより、被膜が形成される。プリベークはオーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。プリベークにおける加熱温度及び加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択され、例えば60〜110℃の温度(基板の耐熱温度を超えないように設定)で1〜3分間行われる。
【0052】
プリベーク後に行われる露光は、紫外線露光装置によって行なわれ、フォトマスクを介して露光することによりパターンに対応した部分のレジストのみを感光させる。露光装置及びその露光照射条件は適宜選択され、超高圧水銀灯、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、遠紫外線灯等の光源を用いて露光を行い、塗膜中の感光性樹脂組成物を光硬化させる。好ましくは、波長365nmの光を一定量照射することにより光硬化させる。
【0053】
露光後のアルカリ現像は、露光されない部分のレジストを除去する目的で行われ、この現像によって所望のパターンが形成される。このアルカリ現像に適した現像液としては、例えばアルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液、アルカリ金属の水酸化物の水溶液等を挙げることができるが、0.01〜3質量%含有する弱アルカリ性水溶液を用いて23〜28℃の温度で現像するのがよく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。
【0054】
現像後、好ましくは80〜250℃の温度(基板の耐熱温度を超えないように設定)及び20〜90分の条件で熱処理(ポストベーク)が行われる。このポストベークは、パターニングされた樹脂膜と基板との密着性を高めるため等の目的で行われる。これはプリベークと同様に、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。ポストベークの熱処理条件のより好ましい範囲は、温度180〜230℃、加熱時間30〜60分である。本発明のパターニングされた樹脂膜は、以上のフォトリソグラフィー法による各工程を経て形成される。
【0055】
本発明の感光性組成物はソルダーレジスト、メッキレジスト、エッチングレジストや、半導体素子を搭載する配線基板の多層化用の絶縁膜、半導体のゲート絶縁膜、カラーフィルター用保護膜および平坦化膜、有機EL画素形成用の隔壁材(RGBをインクジェット法により形成する場合等向け)、タッチパネル用絶縁膜等を形成するのに有用であり、これらの樹脂膜パターンを構成要素として含む液晶や有機EL等の表示装置用、撮影素子用、タッチパネル用の部材向けとすることが可能である。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の感光性樹脂組成物の調製例から説明し、当該感光性樹脂組成物を用いて形成した塗膜の評価結果を説明する。
【0057】
先ず、(A)重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の合成例を示す。合成例における樹脂の評価は、以下の通りに行った。
[固形分濃度]
合成例中で得られた樹脂溶液1gをガラスフィルター〔重量:W0(g)〕に含浸させて秤量し〔W1(g)〕、160℃にて2時間加熱した後の重量〔W2(g)〕から次式より求めた。
固形分濃度(重量%)=100×(W2−W0)/(W1−W0)
【0058】
[酸価]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置〔平沼産業株式会社製、商品名COM−1600〕を用いて1/10N−KOH水溶液で滴定して求めた。
【0059】
[分子量]
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)[東ソー株式会社製 商品名:HLC−8220GPC、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuperH−2000(2本)+TSKgelSuperH−3000(1本)+TSKgelSuperH−4000(1本)+TSKgelSuper−H5000(1本)〔東ソー株式会社製〕、温度:40℃、速度:0.6ml/min]にて測定し、標準ポリスチレン〔東ソー株式会社製PS−オリゴマーキット〕換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0060】
また、合成例で使用する略号は次のとおりである。
BPFE:ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物(9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンとクロロメチルオキシランとの反応物。エポキシ当量250g/eq)
AA:アクリル酸
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
TEAB:臭化テトラエチルアンモニウム
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
THPA:テトラヒドロ無水フタル酸
MAA:メタクリル酸
MMA:メタクリル酸メチル
CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
GMA:グリシジルメタクリレート
TPP:トリフェニルホスフィン
TBPC:2,6-ジ−tert−ブチル−p−クレゾール
【0061】
[合成例1]
還留冷却器付き500ml四つ口フラスコ中にBPFE 114.4g(0.23モル)、AA 33.2g(0.46モル)、PGMEA 157g及びTEAB 0.48gを仕込み、100〜105℃で加熱下に20時間撹拌して反応させた。次いで、フラスコ内にBPDA 35.3g(0.12モル)、THPA 18.3g(0.12モル)を仕込み、120〜125℃で6時間撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)−1を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は56.1質量%、酸価(固形分換算)は103mgKOH/g、GPC分析によるMwは3600であった。
【0062】
[合成例2]
窒素導入管及び還流管付き1000ml四つ口フラスコ中にMAA51.65g(0.60モル)、MMA36.04g(0.36モル)、CHMA40.38g(0.24モル)、AIBN5.91g、及びPGMEA360gを仕込み、80〜85℃で窒素気流下、8時間撹拌して重合させた。更に、フラスコ内にGMA61.41g(0.43モル)、TPP2.27g及びTBPC0.086gを仕込み、80〜85℃で16時間撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)−2を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は35.7質量%、酸価(固形分換算)は50mgKOH/g、GPC分析によるMwは19600であった。
【0063】
表2に記載の配合量(数値は質量部)で実施例1〜13及び比較例1〜5の感光性樹脂組成物を調製した。表中で使用した配合成分は以下のとおりである。
(A)重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂:
(A)−1:上記合成例1で得られた樹脂溶液(固形分濃度56.1質量%)
(A)−2:上記合成例2で得られた樹脂溶液(固形分濃度35.7質量%)
(B)光重合性モノマー:
(B)−1:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサアクリレートとの混合物(日本化薬(株)製 商品名:DPHA)
(C)エポキシ化合物:
(C)−1:ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物(9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンとクロロメチルオキシランとの反応物。エポキシ当量250g/eq)
(D)光重合開始剤:
(D)−1:1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(O-ベンゾイルオキシム)(BASF社製、商品名:イルガキュアOXE−01)
(E)界面活性剤:
(E)−1:メガファックF−556(DIC社製)
(E)−2:SH3775(東レダウコーニング社製)
(F)溶剤:
(第一溶剤)
PGDA :プロピレングリコールジアセテート
EDM :ジエチレングリコールエチルメチルエーテル
MMBA :3メトキシ−3メチル−1−ブチルアセテート
(第二溶剤)
PGME :1−メトキシ−2−プロパノール
MBA :3−メトキシブチルアセテート
MMP :3−メトキシプロピオン酸メチル
ANON :シクロヘキサノン
EEP :3−エトキシプロピオン酸エチル
EL :乳酸エチル
(第三溶剤)
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(G)その他添加剤
(G)−1:カップリング剤 3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0064】
【表2】
【0065】
[評価]
実施例1〜13及び比較例1〜5の感光性樹脂組成物を用いて、以下に記す評価を行った。実施例1〜13および比較例1〜5の評価結果を表3に示す。
【0066】
<放射ムラの評価方法>
ストリエーション評価基板として、5インチ角のガラス基板上にブラックレジストで、50μmのL&Sパターンが硬化後2.5μmの膜厚で形成されたものを準備した。この基板に、上記で得られた硬化性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて硬化後1.2μmの膜厚になるような条件にて塗布した。その後、100Paになるまで減圧乾燥を行い、90℃のホットプレートで2分間乾燥させて塗膜を形成した。得られた塗膜をNaランプのもと目視で表面の状態を観察し、ストリエーションの有無を確認した。
○:ストリエーションはほとんど確認されなかった
△:ストリエーションがわずかに確認された
×:ストリエーションがはっきりと確認できた
【0067】
<モヤムラの評価方法>
4インチ角のシリコンウェハー上に、実施例1〜13および比較例1〜5で得られた硬化性樹脂組成物を、スリットコーターを用いて塗布し、試験片を作製した。このとき、送液圧力、基板と塗工ヘッドの間隔、塗工速度を調節して、作製される膜厚が1.2μmとなるように塗布膜厚を制御した。その後、100Paになるまで減圧乾燥を行い、90℃のホットプレートで2分間乾燥させて塗膜を形成した。さらに、100mJ/m2で露光し、230℃の熱風オーブンで30分間焼成し、試験片を得た。得られた塗膜をNaランプのもと目視で表面の状態を観察し、モヤムラの有無を確認した。
○:モヤムラはほとんど確認されなかった
△:モヤムラがわずかに確認された
×:モヤムラがはっきりと確認できた
【0068】
【表3】
【0069】
表3の比較例1および2に示されるように、第一溶剤を含まず、表面張力が0.85≦σ/σ
0≦1の範囲外である感光性樹脂組成物にあっては、モヤムラおよびストリエーションの発生を抑制することができないことがわかった。また、表3の比較例3および4に示されるように、第一溶剤、第二溶剤、第三溶剤のすべてを含んでいた場合であっても、0.85≦σ/σ
0≦1を満たさないと、モヤムラは解消されたが、ストリエーションの発生を抑制することができなかった。さらに、比較例5に示されるように、第一溶剤を含んでいなくとも、0.85≦σ/σ
0≦1を満たす場合には、モヤムラおよびストリエーションの発生がわずかに抑制されている。このことから、感光性樹脂組成物の表面張力を調整することがストリエーションの発生を抑制するのに重要な要因であることが確認できた。
【0070】
それに対して、実施例1〜13に示されるように、第一溶媒、第二溶剤、第三溶剤のすべてを含み、0.85≦σ/σ
0≦1を満たすようにすることで、モヤムラおよびストリエーションの発生を抑制することができた。