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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-204618(P2019-204618A)
(43)【公開日】2019年11月28日
(54)【発明の名称】走査型電子顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/21 20060101AFI20191101BHJP
【FI】
   H01J37/21 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-97543(P2018-97543)
(22)【出願日】2018年5月22日
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】山本 琢磨
【テーマコード(参考)】
5C033
【Fターム(参考)】
5C033MM01
5C033MM05
(57)【要約】
【課題】コストや装置小型化の面から高性能なリターディング電圧印加電源を採用できない場合、高加速領域では印加電圧の可変範囲内において十分な焦点位置調整が行えず、焦点評価値が最大となる点を見つけ出すことが困難であった。
【解決手段】上記課題を解決するために、電子源から放出された電子ビームを集束する対物レンズと、対物レンズに励磁電流を供給するための電流源と、試料に電子ビームの減速電界を形成するための負電圧印加電源と、試料に対する電子ビームの照射によって得られる荷電粒子を検出する検出器と、検出器の出力に基づいて形成した画像から焦点評価値を算出する制御装置を備え、制御装置は、印加電圧を変化させたときの焦点評価値を算出し、焦点評価値の増減値に応じて励磁電流を増加させるか或いは減少させるかを判定し、判定結果に基づいて励磁電流を供給することを特徴とする走査型電子顕微鏡を提案する。
【選択図】 図3(A)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子源から放出された電子ビームを集束する対物レンズと、
前記対物レンズに励磁電流を供給するための電流源と、
試料に前記電子ビームの減速電界を形成するための負電圧印加電源と、
前記試料に対する前記電子ビームの照射によって得られる荷電粒子を検出する検出器と、
前記検出器の出力に基づいて形成した画像から焦点評価値を算出する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記印加電圧を変化させたときの焦点評価値を算出し、当該焦点評価値の増減値に応じて前記励磁電流を増加させるか或いは減少させるかを判定し、当該判定結果に基づいて前記励磁電流を供給することを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御装置は、前記電流源の複数の励磁電流に対応する複数の焦点評価値で構成される対応関係を求めることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項3】
請求項2において、
前記制御装置は、前記対応関係と前記判定結果に基づいて前記対物レンズの合焦点電流値からのずれ電流量を求め、当該ずれ電流量に基づいて前記励磁電流を補正することを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項4】
請求項3において、
前記制御装置は、レシピに登録された条件に基づいて前記試料上に形成された対象パターンの計測を行うことを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項5】
請求項4において、
前記制御装置は、記憶部を備え、
前記レシピに登録された最初の計測点において前記対応関係を求めて前記記憶部に記憶することを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項6】
請求項5において、
前記制御装置は、前記レシピに登録された2番目以降の計測点において取得した画像から焦点評価値を算出し、当該算出した焦点評価値が第1の閾値よりも大きいときは、前記励磁電流を補正しないことを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項7】
請求項5において、
前記制御装置は、前記レシピに登録された2番目以降の計測点において取得した画像から焦点評価値を算出し、前記算出した焦点評価値が前記第1の閾値以下であって第2の閾値よりも大きいときは、前記励磁電流を補正することを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項8】
請求項4において、
前記制御装置は、前記対応関係を前記レシピに登録することを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項9】
請求項8において、
前記制御装置は、前記対応関係を求めるための評価条件を入力するための入力部と、当該評価条件において形成された画像および当該画像から算出した焦点評価値を出力するための出力部を備えたことを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項10】
請求項2において、
前記制御装置は、記憶部を備え、
予め前記負電圧印加電源における複数の印加電圧において前記対応関係および前記対物レンズの合焦点電流値を求め、前記複数の印加電圧および前記対応関係並びに前記合焦点電流値で構成される第2の対応関係を前記記憶部に記憶し、
当該第2の対応関係と前記判定結果に基づいて前記対物レンズの合焦点電流値からのずれ電流量を求め、前記ずれ電流量に基づいて前記励磁電流を補正することを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項11】
請求項1において、
前記制御装置は、異なる特徴を有する複数のグループのパターンにおいて前記電流源の複数の励磁電流に対応する複数の焦点評価値を算出し、当該複数の焦点評価値にフィッティングするフィッティング関数を求めることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項12】
請求項11において、
前記制御装置は、前記フィッティング関数を記憶しておく記憶部を備えることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項13】
請求項2において、
前記制御装置は、前記対応関係から前記対物レンズの合焦点電流値を求めるとともに、当該合焦点電流値における焦点評価値を焦点基準値として求め、前記合焦点電流値および前記焦点基準値をレシピに登録することを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項14】
請求項13において、
前記制御装置は、前記印加電圧を変化させたときの焦点評価値と前記レシピに登録された前記焦点基準値との比較に基づいて前記対物レンズの合焦点電流値からのずれ電流量を求め、当該ずれ電流量に基づいて前記励磁電流を補正することを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項15】
請求項14において、
前記制御装置は、予め焦点評価値に対する上限値と下限値を前記レシピに登録し、前記レシピの実行過程において前記印加電圧を変化させたときの焦点評価値が、前記上限値と前記下限値との範囲内にある場合には、前記ずれ電流量に基づいて前記励磁電流を補正することを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項16】
電子源から放出された電子ビームを集束する対物レンズと、
前記対物レンズに励磁電流を供給するための電流源と、
カラム内の電極に電圧を印加するための電圧印加電源と、
前記試料に対する前記電子ビームの照射によって得られる荷電粒子を検出する検出器と、
前記検出器の出力に基づいて形成した画像から前記電子ビームの焦点を評価する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記印加電圧を変化させたときの焦点評価値を評価し、当該焦点評価値の増減値に応じて前記励磁電流を増加させるか或いは減少させるかを判定し、当該判定結果に基づいて前記励磁電流を供給することを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体デバイスの製造工程における電子ビームを用いた計測技術に係り、特に高い加速電圧を用いた走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)における、焦点合わせ技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SEMにおいて合焦点を自動的に検出する技術(オートフォーカス技術)の例は、特許文献1にあるように、対物レンズの励磁電流値を変化させて焦点位置(フォーカス位置)を変化させながら画像を取得し、当該取得画像から各焦点位置での焦点評価値を算出して、焦点評価値(フォーカス評価値)が最大となる位置に焦点を合わせる方法が広く用いられている。また、焦点合わせのために対物レンズの励磁電流を変化させるのに時間がかかるという問題を解決し、高速で焦点を合わせる方法として、特許文献2にあるように、試料に印加する電圧(リターディング電圧)を制御して焦点調整する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−334678
【特許文献2】特開2010−211973
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、電子顕微鏡の対物レンズには、磁界型電子レンズ(磁界レンズ)が採用されている。対物レンズの励磁電流制御による焦点調整方法は、対物レンズの応答性やヒステリシスの問題から、高速化が困難である。オートフォーカス実行時には、対物レンズの励磁電流値を多数回変化させてフォーカス評価値を算出する必要があるため、オートフォーカス実行時間が長くなり、結果として装置のスループットが低下してしまうという課題があった。一方、試料に印加する電圧を制御することによる焦点調整方法は、対物レンズの励磁電流制御による焦点調整方法に比べて高速であり、低加速領域では比較的有効な方法であるものの、高加速領域において焦点位置を変化させるために十分な試料印加電圧量を確保しようとすると、高加速電圧源と同等の高電圧範囲内で高精度に変更が可能な高性能電源が必要となり、コストや装置小型化の面で問題があった。また、仮に、このような高性能電源が採用できた場合であっても、試料印加電圧の調整に伴って試料への照射電子ビームのエネルギーが変化するため、所望する画像の画質が大きく変化してしまうという課題があった。本開示は上記課題を鑑み、特に、高加速領域で用いられる走査型電子顕微鏡において、高速で焦点を合わせる手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、電子源から放出された電子ビームを集束する対物レンズと、対物レンズに励磁電流を供給するための電流源と、試料上に静電レンズを形成するための負電圧印加電源と、試料に対する前記電子ビームの照射によって得られる荷電粒子を検出する検出器と、検出器の出力に基づいて形成した画像から電子ビームの焦点を評価する制御装置を備え、制御装置は、印加電圧を変化させたときの焦点評価値を評価し、焦点評価値の増減に応じて励磁電流を増加させるか或いは減少させるかを判定し、判定結果に基づいて励磁電流を供給することを特徴とする走査型電子顕微鏡を提案する。
【発明の効果】
【0006】
上記構成により、対物レンズの励磁電流値を多数回変化させてフォーカス評価値を算出するという長時間を要するプロセスをオートフォーカスの度に実行しなくても、対物レンズの焦点調整が可能となる。また、上記構成においては、高電圧範囲内で高精度に変更が可能な高性能電源を装置に採用する必要がなく、所望する画像の画質が大きく変化してしまうといった問題も発生しない。その結果、高加速電子ビーム領域における高速な焦点合わせが可能となり、装置のスループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1〜4に示す装置の構成を示す概略図。
図2】実施例1のレシピシーケンスの説明図
図3(A)】実施例1のレシピにおけるオートフォーカスシーケンスの説明図
図3(B)】実施例1のオートフォーカス実行シーケンスの説明図
図3(C)】実施例1の対物レンズのずれ電流補正シーケンスの説明図
図4】実施例1におけるフォーカス評価値カーブの説明図
図5】実施例1の評価値算出方法の説明図
図6】実施例2のフォーカス評価値条件の設定シーケンスの説明図
図7】実施例2のフォーカス評価値条件設定用GUI
図8】実施例2のレシピにおけるオートフォーカスシーケンスの説明図
図9】実施例3のフォーカス評価値条件の設定シーケンスの説明図
図10】実施例3のフォーカス評価値条件設定用GUI
図11】実施例3のレシピにおけるオートフォーカスシーケンスの説明図
図12(A)】実施例3のフォーカス評価値カーブの説明図
図12(B)】実施例3のフォーカス評価値カーブの説明図
図13】実施例4のリターディング電圧オフセットと合焦点電流値の関係の算出方法の説明図
図14】実施例4のレシピにおけるオートフォーカスシーケンスの説明図
図15】実施例4の計測点グループの説明図
図16】実施例4のフィッティング関数の説明図
図17】実施例4の対物レンズのずれ電流量の算出方法の説明図
図18】実施例4の対物レンズのずれ電流量の算出方法の説明図
図19】実施例5に示す装置の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体装置は、半導体ウェハ上にフォトマスクに形成されたパターンをリソグラフィー処理及びエッチング処理により転写する工程を繰り返すことにより製造される。半導体装置の製造過程において、リソグラフィー処理やエッチング処理その他の良否、異物発生等は、半導体装置の歩留まりに大きく影響を及ぼす。したがって、このような製造過程における異常や不良発生を早期にまたは事前に検知するために、製造過程で半導体ウェハ上のパターンの計測や検査が行われているが、精度の高い計測が求められる場合には、走査型電子顕微鏡(SEM)による計測が広く行われている。
近年の半導体デバイスの微細化と三次元化の進行により、異なる工程間でのパターンの重ね合わせの管理の重要度が高まっている。特に、リソグラフィー工程へのフィードバックのため、5kV以上の高加速電子ビームを用いた下層パターンとの重ね合わせ計測ニーズが大きいが、ウェハあたり数100点を超えるような多点の計測が必要となるため、スループット向上への要望が強い。
【0009】
走査型電子顕微鏡における計測でスループットを上げるためには、画像取得ステップの短縮とともに、照射電子ビームの焦点調整ステップの時間短縮が重要となる。
【0010】
以下、特に高加速領域において高速で焦点合わせが可能な走査型電子顕微鏡について詳細に説明する。
【0011】
以下に説明する実施例では、走査型電子顕微鏡の一例として、半導体ウェハ上のパターンを計測するパターン計測装置を例にとって説明するが、「走査型電子顕微鏡」とは、電子ビームを用いて試料の画像を撮像する装置を広く含むものとする。走査型電子顕微鏡のその他の例としては、走査型電子顕微鏡を用いた検査装置、レビュー装置、汎用の走査型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡を備えた試料加工装置や試料解析装置等が挙げられ、本開示はこれらの装置にも適用が可能である。また、以下に説明する実施例において走査型電子顕微鏡とは、上記走査型電子顕微鏡がネットワークで接続されたシステムや上記走査型電子顕微鏡を複数組み合わせた複合装置をも含むものとする。
【0012】
また、以下に説明する実施例において「試料」とは、パターンが形成された半導体ウェハを一例として説明するが、これに限られるものではなく、金属、セラミックス、生体試料等であっても良い。
【0013】
また、以下に説明する実施例において対物レンズの「励磁電流値」とは、対物レンズを励磁するための電流値自体を装置パラメータとして直接設定することを一例として説明するが、これに限られるものではなく、GUIで設定される試料上の高さや焦点距離から対物レンズの励磁電流値を算出することも可能である。
【0014】
また、以下に説明する実施例において半導体ウェハ上のパターンを計測する走査型電子顕微鏡おける「計測」とは、半導体ウェハ上のパターンの寸法を測定することを一例として説明するが、これに限られるものではなく、当該パターンの観察、検査であっても良い。
【0015】
また、以下に説明する実施例において「リターディング電圧」とは、試料に印加する電圧を制御することによる焦点調整方法において、印加電圧自体を装置パタメータとして直接設定することを一例として説明するが、これに限られるものではなく、印加電圧設定可能範囲を8ビットや16ビットといった所定のビット数に割り当て、GUIからは当該割り当て値として設定することも可能である。
【実施例1】
【0016】
図1は、実施例1の半導体ウェハ上のパターンを計測する走査型電子顕微鏡の構成例を示す図であり、装置本体は電子光学系であるカラム1、ならびに試料室2からなる。カラム1は、電子銃3、コンデンサレンズ4、対物レンズ8、ディフレクタ7、アライナ5、2次電子検出器9、E×Bフィルタ6、反射電子検出器10を含む。電子銃3によって発生された一次電子ビーム(照射電子ビーム)は、コンデンサレンズ4と対物レンズ8によってウェハ11に対して収束させて照射する。アライナ5は一次電子ビームが対物レンズ8に入射する位置をアライメントする。一次電子ビームは、ディフレクタ7によってウェハ11に対して走査される。ディフレクタ7は、ビーム走査コントローラ16からの信号に従って一次電子ビームを前記ウェハ11に対して走査させる。一次電子ビームの照射によってウェハ11から得られる2次電子はE×Bフィルタ6で2次電子検出器9の方向に向けられ、2次電子検出器9で検出される。また、ウェハ11からの反射電子は反射電子検出器10によって検出される。2次電子や反射電子を総称して電子ビーム照射により試料から得られる信号を信号電子と呼ぶこととする。電子光学系には、これ以外に他のレンズや電極、検出器を含んでもよいし、一部が上記と異なっていてもよく、電子光学系の構成はこれに限られない。対物レンズ8には、対物レンズ励磁電流コントローラ144により励磁電流が供給される。ウェハ11には、リターディング電圧コントローラ17によりリターディング電圧が印加される。試料室2に設置されるXYステージ12は、ステージコントローラ18からの信号に従ってカラム1に対してウェハ11を移動する。また、本装置はウェハアライメントのための光学顕微鏡13を有している。2次電子検出器9および反射電子検出器10からの信号はアンプ14ならびにアンプ15により信号変換され、画像処理ユニット19に送られ画像化される。また、本実施例のパターン寸法計測装置は制御PC20により装置全体の動作が制御される。なお、制御PC20には、マウスやキーボードなどユーザーが指示入力するための入力部と、モニタやプリンタなど装置が出力する画像や測定結果等を表示或いは印刷する出力部、ハードディスクやメモリ等の記憶部が含まれている。
【0017】
走査型電子顕微鏡には、このほかにも各部分の動作を制御する制御部や、検出器から出力される信号に基づいて画像を生成する画像生成部、各種のレンズ、偏向器、電極、検出器、回路基板等に電圧を印加するための電圧源や電流を供給するための電流源等が含まれている(図示省略)。制御部や画像生成部は、専用の回路基板によってハードウェアとして構成されていてもよいし、走査型電子顕微鏡に接続されたコンピュータで実行されるソフトウェアによって構成されてもよい。ハードウェアにより構成する場合には、処理を実行する複数の演算器を配線基板上、または半導体チップまたはパッケージ内に集積することにより実現できる。ソフトウェアにより構成する場合には、コンピュータに高速な汎用CPUを搭載して、所望の演算処理を実行するプログラムを実行することで実現できる。このプログラムが記録された記録媒体により、既存の装置をアップグレードすることも可能である。また、これらの装置や回路、コンピュータ間は有線又は無線のネットワークで接続され、適宜データが送受信される。
【0018】
図2は、本実施例1の半導体ウェハ上のパターンを計測する走査型電子顕微鏡におけるレシピ動作のシーケンスを示している。レシピとは、当該装置に与えられる手順、処理方法やパラメータと指定するデータの集まり(プログラム)をいう。レシピが実行されると、ウェハ11が試料室2にロードされ(ステップ21)、ウェハ11のアライメントが実行される(ステップ22)。その後、レシピに登録された各計測点において、オートフォーカス(ステップ23)、画像取得(ステップ24)、パターン計測(ステップ25)を実行する。パターン計測実行後には、最後の計測点であるか否かの判定を行い(ステップ26)、最後の計測点が終了していればウェハ11をアンロードする(ステップ27)。
【0019】
以下、図3(A)、図3(B)、図3(C)、図4及び図5を用いて、本実施例1の図2におけるオートフォーカス(ステップ23)を実行するシーケンスについて説明する。図3(A)に示すように、開始後、最初の計測点であるか否かの判定を行い(ステップ31)、最初の計測点である場合はオートフォーカスを実行する(ステップ32)。オートフォーカス実行のシーケンスを図3(B)に示す。対物レンズの励磁電流値を下限値に設定し(ステップ44)、画像を取得して(ステップ45)、フォーカス評価値を算出する(ステップ46)。ステップ47において、現在の励磁電流値が上限値以上であるか否かを判定し、上限値未満である場合は励磁電流値を所定の増加分だけ増加させた後、再び、画像を取得して(ステップ45)、フォーカス評価値を算出する(ステップ46)。当該画像取得及びフォーカス評価値算出のステップを、現在の励磁電流値が上限値以上となるまで繰り返し(ステップ47)、複数の励磁電流に対応する複数のフォーカス評価値を求める。フォーカス評価値が最大となる励磁電流値を設定して(ステップ48)、オートフォーカス実行を終了する。オートフォーカス実行過程において得られた対物レンズの複数の励磁電流値(OBJ値)と複数のフォーカス評価値との対応関係を取得する(ステップ33)。このとき、フォーカスが最もあった点におけるフォーカス評価値、励磁電流値をそれぞれ、フォーカス基準値、合焦点電流値OBJJUSTとして設定しておく。
【0020】
フォーカス評価値としては、例えば、画像の輝度値ヒストグラムの輝度幅を用いる。図4は、フォーカスがあった時の画像(A)とその輝度値ヒストグラム(B)、および、デフォーカスした状態の画像(C)とその輝度値ヒストグラム(D)を示している。フォーカスが合っているときは、パターンエッジ(56)がシャープに撮像されるため、当該画像の輝度値ヒストグラムにおいては、最大輝度値と最小輝度値の幅(輝度幅)W1が大きい。一方で、デフォーカスした状態では、パターンエッジ(57)がぼやけて撮像されるため、当該画像の輝度値ヒストグラムにおける輝度幅W2は、フォーカスが合っているときの輝度幅W1に比べて狭くなる。フォーカス評価値として用いる指標は、上述した輝度幅に限られず、画像の標準偏差、もしくは微分画像の平均値や標準偏差であっても良い。
【0021】
図5は、フォーカス評価値としての輝度幅と対物レンズの励磁電流値との関係を示した図である。ステップ33で求めた励磁電流値とフォーカス評価値との関係は、フォーカス評価値変化曲線51のように示される。フォーカス評価値の指標として輝度幅を用いた場合は、フォーカスが合う点でフォーカス評価値が最大となり、フォーカスがずれるに従ってフォーカス評価値が減少する。
【0022】
図3(A)におけるステップ31において2点目以降の計測点であると判定した場合は、図3(B)のオートフォーカス実行のシーケンスを行わずに、画像を取得して(ステップ58)、フォーカス評価値を算出する(ステップ34)。求めたフォーカス評価値を1つ目の閾値1と比較する(ステップ35)。ここで、閾値1は、当該値よりもフォーカス評価値が大きければフォーカス調整は不要と考えられる値であり、例えば、フォーカス基準値に対する割合として予めレシピに設定しておく。ステップ35においてフォーカス評価値が閾値1より大きいの場合は、まず、図3(B)におけるオートフォーカス実行のプロセスを行わずに、図2における次の画像取得(ステップ24)へ進む。フォーカス評価値が閾値1以下の場合は、閾値2と比較する(ステップ36)。閾値2は、当該値よりもフォーカス評価値が大きければ、リターディング電圧変更によるフォーカスずれ測定が精度よく機能すると考えられる値であり、例えば、フォーカス基準値に対する割合として予めレシピに設定しておく。フォーカス評価値が閾値2よりも大きければ図3(B)のオートフォーカスシーケンスを実行せずに対物レンズのずれ電流量補正を行い(ステップ59)、逆にフォーカス評価値が閾値2以下であるときは図3(B)に示すオートフォーカスのシーケンスを実行する(ステップ37)。
【0023】
以下、図3(C)を用いて、対物レンズのずれ電流量補正のシーケンスを説明する。まず、リターディング電圧を所定の電圧だけ変更した後(ステップ38)、所定の条件で画像を取得して(ステップ39)、フォーカス評価値を算出する(ステップ40)。リターディング電圧変更前後におけるフォーカス評価値の増減値に応じて、励磁電流を増加させるか或いは減少させるかを判定する(ステップ44)。当該リターディング電圧変更後のフォーカス評価値およびステップ34で算出したリターディング電圧変更前のフォーカス評価値と、最初の計測点で取得した(図3(A)のステップ33で取得した)対物レンズの励磁電流値とフォーカス評価値との対応関係(フォーカス評価値変化曲線)から、対物レンズの合焦点電流値OBJJUSTからのずれ電流量を算出することができる(ステップ41)。
図5に示すように、ステップ33で取得したフォーカス評価値変化曲線51は、リターディング電圧を所定の電圧だけ変更すると、合焦点電流値OBJJUSTの軸を基準として、変化分の電圧値の極性に応じて、左方向の曲線52あるいは右方向の曲線53にシフトする。この特性を利用して、対物レンズの合焦点電流値OBJJUSTからのずれ電流量を算出する。例えば、ステップ38においてフォーカス評価値変化曲線51が左方向の曲線52になるようにリターディング電圧を変更し、その前のステップ34において算出したリターディング変更前のフォーカス評価値がαであったとすると、対物レンズの合焦点電流値OBJJUSTからのずれ電流量としては、−ΔBもしくは+ΔAのどちらかであることが、オートフォーカス実行時のフォーカス評価値変化曲線51から把握できる。次に、リターディング変更後のフォーカス評価値がリターディング変更前のフォーカス評価値αと比較して増加したか減少したかにより、対物レンズの合焦点電流値OBJJUSTからのずれ電流量が−ΔBと+ΔAのどちらであるかを判断する。即ち、リターディング変更後のフォーカス評価値がβ1であった場合は合焦点電流値OBJJUSTからのずれ電流量が−ΔB、フォーカス評価値がβ2であった場合は、合焦点電流値OBJJUSTからのずれ電流量が+ΔAと決められる。
【0024】
次に、算出した対物レンズのずれ電流量分を補正した励磁電流値を設定する(ステップ42)とともに、リターディング電圧を元の値に戻す(ステップ43)。ステップ42においては、当該ずれ電流量に基づいて前記対物レンズへの励磁電流を変更、増加、減少させても良い。
【0025】
本実施例1の形態により、対物レンズの励磁電流値を多数回変化させてフォーカス評価値を算出するという長時間を要するプロセスをオートフォーカスの度に実行しなくても、対物レンズによって所望の計測点にフォーカスを合わせるための適切な励磁電流の供給或いは補正をすることができる。その結果、オートフォーカス実行時に対物レンズの励磁電流値を多数回変化させてフォーカス評価値を算出する必要がなくなるため、オートフォーカス実行時間を短くすることが可能となり、装置のスループットを向上させることができる。
【0026】
また、実施例1の形態により、閾値1以下のフォーカス評価値に対して全てオートフォーカスを実行した場合に比べて、レシピ時間の短縮効果が得られる。また、閾値2以上のフォーカス評価値に対してフォーカス合わせを行わない場合に比べて、フォーカス合わせ精度が向上するという効果が得られる。
【実施例2】
【0027】
以下、パターンを計測する走査型電子顕微鏡におけるフォーカス調整の実施例2を説明する。本実施例2においては、対物レンズのずれ電流量を算出するために必要なデータを予め測定してレシピに保存しておく。
まず、図6図7により、レシピで設定するフォーカス基準値、閾値1、閾値2を決定するための手順を説明する。図6はフォーカス評価条件を設定するためのシーケンスであり、図7図6のシーケンスに沿ってフォーカス評価条件を設定するためのGUIを示す図である。まず初めに、フォーカス評価条件設定エリア(71)において、倍率(71a)、フレーム数(71b)、ローテーション(71c)、OBJ評価範囲(71d)、分割数(71e)といったフォーカス評価条件のパラメータの入力を行う(ステップ61)。倍率(71a)、フレーム数(71b)、ローテーション(71c)は、画像取得条件を設定するパラメータである。また、OBJ評価範囲(71d)は、フォーカス基準値、閾値1、閾値2を算出するために対物レンズの励磁電流を走査する範囲である。また、分割数(71e)は、OBJ評価範囲(71d)を何分割してフォーカス評価値を求めるかを決めるパラメータである。次に、フォーカス基準値の測定(ステップ62)を行うが、本ステップ62の詳細手順を図6(B)に示す。フォーカス基準値算出ボタン(75)クリックすると、画像のフォーカスを合わせるため、最初にオートフォーカスを実行する(ステップ206)。次に、OBJ評価範囲(71d)と分割数(71e)の設定に従って、焦点位置を中心として、対物レンズの励磁電流設定(ステップ201)、画像取得(ステップ202)、フォーカス評価値算出(ステップ203)の一連のプロセスを分割数分だけ繰り返し実行する。分割数分の実行が終了したかを判定し(ステップ204)、終了していれば図7の結果表示エリア(73)とフォーカス評価値変化曲線表示エリア(74)に、焦点位置からの対物レンズの励磁電流値の変化量(ΔOBJ)に対応するフォーカス評価値の結果を表示する(ステップ62f)。結果表示エリアにて任意のデータ行(73a)を選択すると、フォーカス評価値変化曲線表示エリア(74)において対応するデータ点がハイライト表示(74c)されるとともに、画像表示エリア(72)に当該データ点に対応する画像が表示される。続いて、閾値1(71f)と閾値2(71g)のパラメータを入力する。入力後、閾値確定ボタン(76)をクリックすることで、フォーカス評価値グラフには、閾値1を示す点線(74a)と閾値2を示す点線(74b)がアップデート表示される。閾値1としては、閾値1より大きければフォーカス調整は不要と考えられる値について、画像表示エリア(72)の画像で確認しながら設定する。また、閾値2としては、前後のOBJ設定値との間の評価値差が十分である閾値について、フォーカス評価値変化曲線表示エリア(74)のグラフで、閾値2におけるグラフの傾きが、リターディング電圧変化によるフォーカス評価値の増減を正しく判定するのに十分であるかを確認しながら設定する。最後に条件確定ボタン(77)をクリックして、フォーカス評価条件、即ち、フォーカス基準値、閾値1、閾値2を確定させる。
次に、フォーカス評価条件を設定したレシピ実行時のシーケンスを説明する。レシピ全体のシーケンスは実施例1と同じであり、レシピ中のオートフォーカスシーケンスを図8により説明する。オートフォーカスにおいては、最初はフォーカス評価値を算出する(ステップ81)が、以下、図8(B)により、フォーカス評価値算出の手順を説明する。フォーカス評価条件において1枚目の画像を取得する(ステップ81a)。その後、リターディング電圧に所定のオフセット電圧を印加して(ステップ81b)、2枚目の画像を取得する(ステップ81c)。最後にリターディング電圧を変更前の値に戻す(ステップ81d)。また、画像取得やリターディング電圧の変更と並行して、画像処理ユニット19において、1枚目の画像に対するフォーカス評価値1の算出(ステップ81e)、2枚目の画像に対するフォーカス評価値2の算出(ステップ81f)、ならびに対物レンズの合焦点電流値からのずれ電流量の算出(ステップ81g)を行う。ここで、対物レンズの合焦点電流値からのずれ電流量は、当該フォーカス評価値1と、図6(A)および(B)のフォーカス評価条件の設定シーケンスに基づいて測定したフォーカス評価値変化曲線との関係から、図5で説明した正負2つの励磁電流の補正量の候補を選定した後、フォーカス評価値2とフォーカス評価値1の大小関係により、補正すべき対物レンズのずれ電流量を確定する。
図8(A)のシーケンスにおいて、フォーカス評価値1と閾値1を比較し(ステップ82)、フォーカス評価値1が閾値1よりも大きければ対物レンズの励磁電流値の補正を行わずにオートフォーカスを終了する。フォーカス評価値1が閾値1以下である場合は、更にフォーカス評価値1と閾値2とを比較し(ステップ83)、フォーカス評価値1が閾値2より大きければ、算出したずれ電流量分だけ対物レンズの励磁電流値を補正する(ステップ84)。また、フォーカス評価値1が閾値2以下の場合は、オートフォーカスを実行する(ステップ85)。
【0028】
本実施例2の形態により、対物レンズの励磁電流値を多数回変化させてフォーカス評価値を算出するという長時間を要するプロセスをオートフォーカスの度に実行しなくても、対物レンズによって所望の計測点にフォーカスを合わせるための適切な励磁電流の供給或いは補正をすることができる。その結果、オートフォーカス実行時に対物レンズの励磁電流値を多数回変化させてフォーカス評価値を算出する必要がなくなるため、オートフォーカス実行時間を短くすることが可能となり、装置のスループットを向上させることができる。
【0029】
また、実施例2の形態により、GUIでのフォーカス評価値と対応する画像の確認が可能となり、レシピ最適化が容易となる効果が得られる。また、1枚目の画像のフォーカス評価値算出と2枚目の画像取得を平行に行うことで、対物レンズ励磁電流を補正する場合の処理時間の短縮という効果が得られる。
【実施例3】
【0030】
本実施例3においては、予め装置のリターディング電圧設定可能範囲において、各リターディング電圧におけるフォーカス評価値変化曲線を取得しておく形態について説明する。オートフォーカス時にも、同じリターディング電圧条件でフォーカス評価値変化曲線を取得し、各リターディング電圧条件におけるフォーカス評価値を比較したとき、誤差の総和が最小となる値を対物レンズのずれ電流量として決定することで、補正精度を向上させる。
【0031】
まず、図9図10により、本実施例3のフォーカス評価条件をレシピに設定するシーケンスを説明する。まず、図9の画像取得条件の設定(ステップ91)では、図10に示すGUIのフォーカス条件設定エリア(101)において、倍率(101a)、フレーム数(101b)、およびローテーション(101c)で画像取得条件の各パラメータを、また、OBJ評価範囲(101d)と分割数(101e)で対物レンズ励磁電流変更条件の各パラメータを入力する。次に、フォーカス基準値算出ボタン(105)をクリックして、フォーカス基準値の測定(ステップ92)を実行する。
【0032】
以下、図9(B)により、フォーカス基準値測定のシーケンスを説明する。はじめに、オートフォーカスを実行して、基準となる対物レンズの励磁電流値を決定する(ステップ92a)。次に、リターディング電圧を最初の条件に設定し(ステップ92b)、画像取得条件と対物レンズ励磁電流変更条件の設定に従って、励磁電流値設定(ステップ92c)、画像取得(ステップ92d)およびフォーカス評価値算出(ステップ92e)から成る一連のプロセスを分割数分だけ繰り返す。分割数分の実行が終了したかを判定し(ステップ92f)、終了していれば、全リターディング電圧条件において、ステップ92b〜92fに渡る一連のプロセスが終了したかを判断する(ステップ92g)。終了していなければ、リターディング電圧設定を変更しながらステップ92b〜92fに渡る一連のプロセスを繰り返す。全リターディング電圧条件におけるデータ取得が終了したら、GUI上に結果を表示する(ステップ92h)。図10のGUIでは、結果表示エリア(102)に、すべてのフォーカス評価値が表として表示される。ここで、ΔOBJは、対物レンズの合焦点電流値からのずれ電流量であり、評価値1〜3は、それぞれ1番目から3番目のリターディング電圧条件で取得したフォーカス評価値を示している。本実施例3においては、リターディング電圧の条件は、基準電圧値からのオフセット量の装置パラメータとして規定しており、1番目から順に、−10V、0V、+10Vであるが、加速電圧などの光学条件毎に装置パラメータを保持するようにしてもよいし、GUIから入力するようにしてもよい。結果表示エリア(102)のフォーカス評価値の一覧表において、任意の評価値(102a)をクリックすると、対応する取得画像が画像表示エリア(104)に表示される。また、グラフ表示エリア(103)には、対物レンズの励磁電流値に対する、フォーカス評価値1(103a)、フォーカス評価値2(103b)、およびフォーカス評価値3(103c)のフォーカス評価値変化曲線が表示される。表示されたフォーカス評価値変化曲線が、互いに横方向にシフトした形状になっていれば、条件確定ボタン(106)をクリックして、フォーカス基準値の結果を確定させる(ステップ93)。
【0033】
次に、フォーカス評価条件を設定したレシピ実行時のシーケンスを説明する。レシピ全体のシーケンスは実施例1と同じであり、レシピ中のオートフォーカスシーケンスを図11により説明する。最初の計測点であるかを判断し(ステップ111)、最初の計測点である場合は、オートフォーカスを実行して(ステップ112)フォーカス評価値を算出するとともに(ステップ211)、フォーカス基準値のピーク値が、1点目の計測点でフォーカスがあった状態で算出したフォーカス評価値と一致するように、フォーカス基準値を補正する(ステップ113)。
【0034】
2点目以降の計測点であれば、図9(B)のシーケンスで得られた結果を利用して、以下の手順によりフォーカスの調整を実行する。まず、フォーカス評価値1を取得したときのリターディング電圧を設定後(ステップ114)、画像を取得して(ステップ212)、フォーカス評価値を算出する(ステップ115)。次に、同じように、フォーカス評価値2、フォーカス評価値3を取得したときのリターディング電圧を設定して画像を取得し、フォーカス評価値を算出する。同様に、すべてのフォーカス評価値について、リターディング電圧設定(ステップ114)、画像取得(ステップ212)、フォーカス評価値算出(ステップ115)に係る一連のプロセスを実施する。当該一連のプロセスが終了したか否かを判断し(ステップ116)、すべてが終了していれば、対物レンズのずれ電流量を算出する(ステップ117)。以下、図12(A)(B)により、当該ずれ電流量の算出方法を説明する。
【0035】
図12(A)に示すように、フォーカス評価値1のフォーカス評価値変化曲線:f(ΔOBJ)、フォーカス評価値2のフォーカス評価値変化曲線:g(ΔOBJ)、フォーカス評価値3のフォーカス評価値変化曲線:h(ΔOBJ)は、互いに横軸方向にシフトした形状となっている。ここで、対物レンズの合焦点における励磁電流値(合焦点電流値)からのずれ電流量をΔOBJとし、ステップ115で算出したフォーカス評価値をそれぞれフォーカス評価値1=a、フォーカス評価値2=b、フォーカス評価値3=cとすると、ずれ電流量ΔOBJは、フォーカス評価値変化曲線とステップ115で算出したフォーカス評価値との差分の2乗和が最小となるΔOBJとして求められる。すなわち、以下の式で算出されるZ(ΔOBJ)が最小値となるΔOBJ値を求めればよい。
【0036】
【数1】
【0037】
上記の式は、フォーカス評価値が3つの場合(フォーカス評価値1、フォーカス評価値2、フォーカス評価値3)における算出式を代表例として示したが、フォーカス評価値がn個ある場合は、n個の差分の2乗和が最小となるΔOBJを求めればよいことは言うまでもない。
【0038】
図12(B)は、対物レンズのずれ電流量がtである場合におけるZ(ΔOBJ)の変化を示しているが、ΔOBJ=tにおいて、Z(ΔOBJ)の値が最小となっている。図11のオートフォーカスシーケンスのステップ118において、求められたずれ電流量が閾値3より大きいか否かを判定し、算出されたずれ電流量分だけ対物レンズの励磁電流の補正を行う(ステップ119)。この場合の閾値3の値は、当該閾値よりもずれ電流量が小さければ、対物レンズのずれ電流量補正による画質補正効果よりも、ずれ電流量補正処理を省略することでのレシピ実行速度向上、即ち、装置のスループット向上のメリットの方が大きいと考えられる値について、予め設定しておく。
【0039】
本実施例3の形態により、対物レンズの励磁電流値を多数回変化させてフォーカス評価値を算出するという長時間を要するプロセスをオートフォーカスの度に実行しなくても、対物レンズによって所望の計測点にフォーカスを合わせるための適切な励磁電流の供給或いは補正をすることができる。その結果、オートフォーカス実行時に対物レンズの励磁電流値を多数回変化させてフォーカス評価値を算出する必要がなくなるため、オートフォーカス実行時間を短くすることが可能となり、装置のスループットを向上させることができる。
【0040】
また、実施例3の形態により、n個のフォーカス評価値を用いて対物レンズのずれを求めるとで、電流量の補正精度の向上という効果が得られる。
【実施例4】
【0041】
本実施例4においては、対物レンズの励磁電流値とフォーカス評価値との対応関係を表すフィッティング関数を異なるパターン毎に算出しておき、当該フィッティング関数と各計測点で複数のリターディング電圧条件で算出したフォーカス評価値との誤差が最小となる値を、対物レンズのずれ電流量として決定する例を説明する。
【0042】
まず、事前準備として、リターディング電圧の基準値からのオフセット量(ΔV)と合焦点電流値の関係を求めておくが、図13(A)によりその手順を説明する。リターディング電圧を基準値からΔVだけシフトさせ(ステップ121)、その状態でオートフォーカスを実行して対物レンズの焦点があう励磁電流値(合焦点電流値)を算出する(ステップ122)。所定の各リターディング電圧設定条件の合焦点電流値の算出が終了したかを判断し(ステップ123)、残りの条件があれば、条件をかえてステップ121とステップ122のプロセスを繰り返す。全条件が終了していれば、図13(B)に示すようなリターディング電圧の基準値からのオフセット量(ΔV)と合焦点電流値の関係式を算出する(ステップ124)。ここで、重要となるのは、リターディング電圧を1V変えた時の合焦点電流値の変化量である、係数「a」である。
【0043】
本実施例4では、リターディング電圧を基準値からΔVだけシフトさせながらオートフォーカスにより対物レンズの励磁電流を変化させることで係数「a」を求めているが、対物レンズの励磁電流を合焦点電流値からシフトさせて、各シフト状態でリターディング電圧を変化させる手順で係数を求めることも可能である。
【0044】
次に、レシピ中のオートフォーカスのシーケンスを図14により説明する。各グループの最初の計測点であるかを判断し(ステップ131)、各グループの最初の計測点である場合は、オートフォーカスを実行して(ステップ132)、フィッティング関数を算出する(ステップ133)。ここで、計測点のグループについて、図15により説明する。半導体ウェハ(141)上の複数の計測点(142)は、パターンの特徴の違いにより3つのグループに分類されている。1つ目は円形のパターン(143a)の集合から成る計測点グループ(142a)であり、2つ目は縦ラインのパターンの集合から成る計測点グループ(143b)である。また、計測位置(142c)である3つ目は密集した円形パターンの集合から成る計測点グループ(143c)となっており、それぞれが異なる特徴を有するパターンのグループとなっている。フィッティング関数をグループ毎に算出するのは、パターンのサイズや形によりフィッティング関数が異なってくるためである。次に、図16によりフィッティング関数について説明する。本実施例4では、フィッティング関数には、以下の関数を用いる。
【0045】
f(ΔOBJ) = h / { 1 + (ΔOBJ / w ) 2 }
ただし、 h: 対物レンズの合焦点電流値におけるフォーカス評価値
w:半値幅の1/2
【0046】
各グループの2点目以降の計測点であれば、リターディング電圧を所定のオフセット量分だけ変化させ(ステップ134)、画像を取得し(ステップ213)、フォーカス評価値を算出する(ステップ135)。所定のリターディング電圧条件分のフォーカス評価値の算出が終了したか否かを判断し(ステップ136)、全条件が終了していれば、対物レンズのずれ電流量を算出する(ステップ137)。
【0047】
以下、図17により対物レンズの合焦点電流値からのずれ電流量ΔOBJの算出方法について説明する。当該ずれ電流量ΔOBJは、フィッティング関数「f(ΔOBJ)」に対して、複数のフォーカス評価値が、もっとも一致する位置を求めることで算出する。初めに、図17(A)により、フィッティング関数「f(ΔOBJ)」と3つのフォーカス評価値「data(−ΔV)、data(0)、data(ΔV)」との誤差の指標値である「G(ΔOBJ)」を求める手順を説明する。ここで、data(−ΔV)、data(0)、data(ΔV)は、それぞれ、リターディング電圧の基準値からのオフセット量が、-ΔV、0、ΔVであるときのフォーカス評価値である。図17(A)は、ΔOBJが「k」の場合を示しているが、リターディング電圧を1V変えた時の対物レンズの合焦点電流値からのずれ電流量が「a」であるとき、±ΔVのリターディング電圧シフトに相当する対物レンズの合焦点電流値からのずれ電流量は、「a*(±ΔV)」となるため、G(k)は以下の式で算出される。
【0048】
G(k) = S12 + S22 + S32
S1 = data(-ΔV) - f(k - a * ΔV)
S2 = data(0) - f(k)
S3 = data(ΔV) - f(k + a * ΔV)
ただし、a:リターディング電圧を1V変えた時の対物レンズの合焦点電流値からのずれ電流量
【0049】
G(ΔOBJ)は、図17(B)に示されるように、各フォーカス評価値「data(-ΔV)、data(0)、data(ΔV)」がフィッティング関数と一致するときに最小値となるが、このときのΔOBJの値「t」が、求めるべきΔOBJとなる。
【0050】
図17では、説明を簡単にするため、リターディング電圧のオフセット条件を3つとした場合について記載しが、複数のオフセット条件に対するフィッティング関数との誤差の2乗和であるG(ΔOBJ)は、一般的に以下の式となる。
【0051】
【数2】
【0052】
ただし、 data(ΔV) : リターディング電圧オフセット量ΔVにおけるフォーカス評価値
a:リターディング電圧を1V変えた時の対物レンズの合焦点電流値からのずれ電流量
【0053】
また、G(ΔOBJ)は、例えば、図18に示される形状となるが、図18のグラフは対物レンズの合焦点電流値からのずれ電流量が「t」の場合を示している。このように、合焦点電流値からのずれ電流量は、G(ΔOBJ)の最小値を与えるΔOBJ値として算出することができる。
【0054】
図14に示すシーケンスにおいて、対物レンズの合焦点電流値からのずれ電流量が閾値3以内かを判定し(ステップ138)、閾値3以内であれば対物レンズの電流量補正をおこなわない。一方、対物レンズの合焦点電流値からのずれ電流量が閾値4より大きければ当該ずれ電流量分だけ励磁電流値を補正する(ステップ139)。この場合の閾値4の値は、当該閾値よりもずれ電流量が小さければ、対物レンズのずれ電流量補正による画質補正効果よりも、ずれ電流量補正処理を省略することでのレシピ実行速度向上、即ち、装置のスループット向上のメリットの方が大きいと考えられる値について、ユーザーがGUIから指定する。
【0055】
本実施例4の形態により、対物レンズの励磁電流値を多数回変化させてフォーカス評価値を算出するという長時間を要するプロセスをオートフォーカスの度に実行しなくても、対物レンズによって所望の計測点にフォーカスを合わせるための適切な励磁電流の供給或いは補正をすることができる。その結果、オートフォーカス実行時に対物レンズの励磁電流値を多数回変化させてフォーカス評価値を算出する必要がなくなるため、オートフォーカス実行時間を短くすることが可能となり、装置のスループットを向上させることができる。
【0056】
また、実施例4の形態により、特徴の異なるパターンを計測点として有するレシピに対しても本開示の適用が可能となる。また、フィッティング関数を用いることにより、レシピの簡素化ならびに補正精度向上という効果が得られる。
【実施例5】
【0057】
本実施例5の装置構成においては、カラム1の内部の電極146に電圧を印加する、電極電圧コントローラ147を有している(図19)。上述した実施例1〜実施例4においては、試料に印加する電圧(リターディング電圧)を変化させたときの焦点評価値の変化から対物レンズに供給する励磁電流を補正する形態を説明したが、実施例5では試料に印加する電圧(リターディング電圧)に代えて、走査型電子顕微鏡のカラム内部の電極に印加する電圧を変化させたときの電子ビームの焦点評価値を評価し、当該焦点評価値の増減値に応じて対物レンズの励磁電流を増加させるか或いは減少させるかを判定し、当該判定結果に基づいて前記励磁電流を供給する。或いは、電流源の複数の励磁電流に対応する複数の焦点評価値で構成される対応関係を求め、当該対応関係と先の判定結果に基づいて対物レンズの合焦点電流値からのずれ電流量を求め、当該ずれ電流量に基づいて励磁電流を補正する。この場合でも、本願で示した従来課題を解決でき、オートフォーカス実行時間を短くすることで、装置のスループットを向上させることができる。
【符号の説明】
【0058】
1:カラム、2:試料室、3:電子銃、4:コンデンサレンズ、5:アライナ、6:E×Bフィルタ、7:ディフレクタ、8:対物レンズ、9:2次電子検出器、10:反射電子検出器、11:ウェハ、12:XYステージ、13:光学顕微鏡、14、15:アンプ、16:ビーム走査コントローラ、17:リターディング電圧コントローラ、18:ステージコントローラ、19:画像処理ボード、20:制御PC、
21〜27:実施例1におけるレシピの各ステップ
31〜48、58、59、145:実施例1のレシピにおけるオートフォーカスの各ステップ
56、57:フォーカス評価値算出用のSEM画像
51〜53:フォーカス評価値変化曲線
61〜64、201〜206:実施例2におけるフォーカス評価条件設定の各ステップ
71〜77:実施例2におけるフォーカス評価条件設定GUIの各部
81〜85:実施例2のレシピにおけるオートフォーカスの各ステップ
91〜93:実施例3におけるフォーカス評価条件設定の各ステップ
101〜106:実施例3におけるフォーカス評価条件設定GUIの各部
111〜119:実施例3のオートフォーカスの各ステップ
121〜124:実施例4のリターディング電圧設定範囲における合焦点励磁電流値の算出の各ステップ
131〜139、213:実施例4のレシピにおけるオートフォーカスの各ステップ
141:ウェハ、142:計測点、143:パターン形状、144:対物レンズ励磁電流コントローラ
146:電極、147:電極電圧コントローラ
図1
図2
図3(A)】
図3(B)】
図3(C)】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12(A)】
図12(B)】
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19