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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-205970(P2019-205970A)
(43)【公開日】2019年12月5日
(54)【発明の名称】半導体光電極
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20191108BHJP
   B01J 31/26 20060101ALI20191108BHJP
【FI】
   B01J35/02 J
   B01J31/26 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-102547(P2018-102547)
(22)【出願日】2018年5月29日
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】渦巻 裕也
(72)【発明者】
【氏名】里 紗弓
(72)【発明者】
【氏名】小野 陽子
(72)【発明者】
【氏名】小松 武志
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA22A
4G169BA22B
4G169BB11B
4G169BC16B
4G169BC17B
4G169BE21B
4G169BE22B
4G169CC33
4G169EB14Y
4G169EB15Y
4G169EC28
4G169FB01
4G169FB23
4G169FB57
4G169HA05
4G169HB10
4G169HC16
4G169HD10
4G169HD12
4G169HE09
(57)【要約】
【課題】半導体光電極の光エネルギー変換効率を改善する。
【解決手段】光の照射により表面で水の酸化反応が進行する半導体光電極1において、絶縁性又は導電性の基板11に積層された第1の半導体層12と、第1の半導体層12に積層され、透明な導電性高分子で構成され、水の酸化反応を促進する活性機能を持つ透明導電性高分子層13と、を備える。透明導電性高分子層の透明性により、光の透過度が向上するとともに、半導体層の全面に透明導電性高分子層を積層することができ、半導体光電極の光エネルギー変換効率を向上することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照射により表面で水の酸化反応が進行する半導体光電極において、
絶縁性又は導電性の基板上に積層された第1の半導体層と、
前記第1の半導体層に積層され、透明な導電性高分子で構成され、水の酸化反応を促進する活性機能を持つ透明導電性高分子層と、
を備えることを特徴とする半導体光電極。
【請求項2】
光の照射により表面で水の酸化反応が進行する半導体光電極において、
絶縁性又は導電性の基板上に積層された第1の半導体層と、
前記第1の半導体層に積層され、結晶成長方向と垂直な面の格子定数が前記第1の半導体層よりも小さい第2の半導体層と、
前記第2の半導体層に積層され、透明な導電性高分子で構成され、水の酸化反応を促進する活性機能を持つ透明導電性高分子層と、
を備えることを特徴とする半導体光電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光エネルギーにより水の酸化反応を行う半導体光電極に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒を用いた水の分解反応は、水の酸化反応とプロトンの還元反応からなり、それぞれ下記の通りである。
【0003】
酸化反応:2HO+4h→O+4H
還元反応:4H+4e→2H
n型の光触媒材料に光を照射した場合、光触媒内で電子と正孔が生成され分離する。正孔は、光触媒材料の表面に移動し、水の酸化反応に寄与する。一方、電子は、還元電極に移動し、プロトンの還元反応に寄与する。理想的には、このような酸化還元反応が進行し、水の分解反応が生じる。
【0004】
図5は、半導体光電極による水の分解反応を行う試験装置を示す図である。
【0005】
酸化槽2は、水溶液3と半導体光電極である酸化電極1を備える。酸化電極1は、水溶液3に接している。水溶液3は、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、塩酸である。酸化電極1は、例えば、窒化物半導体、酸化チタン、アモルファスシリコンである。
【0006】
還元槽4は、水溶液5と還元電極6を備える。還元電極6は、水溶液5に接している。水溶液5は、例えば、炭酸水素カリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、塩化カリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液である。還元電極6は、金属や金属化合物であり、例えば、ニッケル、鉄、金、白金、銀、銅、インジウム、チタンである。
【0007】
酸化槽2と還元槽4の間にはプロトン膜7が挟まれており、酸化槽2で生成されたプロトンはプロトン膜7を介して還元槽4へ拡散する。プロトン膜7は、例えば、ナフィオン(登録商標)であり、炭素−フッ素からなる疎水性テフロン骨格とスルホン酸基を持つパーフルオロ側鎖とで構成されるパーフルオロカーボン材料である。
【0008】
酸化電極1と還元電極6は導線8で電気的に接続されており、酸化電極1から還元電極6へ電子の移動が行われる。
【0009】
光源9は、例えば、キセノンランプ、水銀ランプ、ハロゲンランプ、疑似太陽光源、太陽光、又は、これらの組み合わせである。光源9から、酸化電極1を構成する材料が吸収可能な波長の光が照射される。例えば、酸化電極1が窒化ガリウムで構成される場合、窒化ガリウムで吸収可能な365nm以下の波長の光が照射される。
【0010】
図6は、従来の酸化電極1の構成を示す側面図である。従来の酸化電極1には、基板11に積層された半導体層12の上面に、半導体層12で行われる水の酸化反応を促進するため酸化ニッケルや白金等のナノ粒子の酸化助触媒20が島状に形成されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Satoshi Yotsuhashi、外6名、“CO2 Conversion with Light and Water by GaN Photoelectrode”、Japanese Journal of Applied Physics、51、2012年、02BP07-1〜02BP07-3.
【非特許文献2】Soo Hee Kim、外3名、“Improved efficiency and stability of GaN photoanode inphotoelectrochemical water splitting by NiO cocatalyst”、Applied Surface Science、305、2014年、p.638-p.641
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、酸化ニッケルや白金等の酸化助触媒は光の透過性が低いため、半導体薄膜の全面には形成できず、約1%の被覆率となる。それゆえ、光源からの光が半導体薄膜まで十分に透過せず、光励起による電子及び正孔の生成が起こりにくくなる。つまり、従来の半導体光電極には、酸化助触媒の性能を十分活かしきれず、光エネルギーの変改効率向上に限界があった。
【0013】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、半導体光電極の光エネルギー変換効率を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の半導体光電極は、光の照射により表面で水の酸化反応が進行する半導体光電極において、絶縁性又は導電性の基板上に積層された第1の半導体層と、前記第1の半導体層に積層され、透明な導電性高分子で構成され、水の酸化反応を促進する活性機能を持つ透明導電性高分子層と、を備える。
【0015】
また、本発明の半導体光電極は、光の照射により表面で水の酸化反応が進行する半導体光電極において、絶縁性又は導電性の基板上に積層された第1の半導体層と、前記第1の半導体層に積層され、結晶成長方向と垂直な面の格子定数が前記第1の半導体層よりも小さい第2の半導体層と、前記第2の半導体層に積層され、透明な導電性高分子で構成され、水の酸化反応を促進する活性機能を持つ透明導電性高分子層と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、半導体光電極の光エネルギー変換効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1に係る半導体光電極の構成を示す側面図である。
図2】実施例1に係る半導体光電極の端部拡大図である。
図3】実施例5に係る半導体光電極の構成を示す側面図である。
図4】実施例5に係る半導体光電極の端部拡大図である。
図5】水の分解反応を行う試験装置を示す図である。
図6】従来の半導体光電極の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<概要>
本発明は、光触媒である半導体層に、透明な導電性高分子で構成され、水の酸化反応を促進する活性機能を持つ透明導電性高分子層を積層する。つまり、半導体光触媒である半導体層の表面に、透明な導電性高分子を酸化助触媒として担持させる。
【0019】
透明導電性高分子層の透明性により、光の透過度が向上するとともに、半導体層の全面に透明導電性高分子層を積層することができる。また、透明導電性高分子層を半導体層の全面に積層可能となるので、従来と比べて有効な反応面積が増大し、水の酸化反応を高効率に行うことができる。その結果、半導体光電極の光エネルギー変換効率を向上することができる。
【0020】
以下、本発明を実施する一実施の形態について図面を用いて説明する。但し、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で変更を加えても構わない。
【0021】
<実施例1>
(半導体光電極1の構成)
図1は、実施例1に係る半導体光電極1の構成を示す側面図である。半導体光電極1は、図1に示すように、基板11と、第1の半導体層12と、透明導電性高分子層13と、を備えて構成される。
【0022】
基板11は、絶縁性又は導電性の基板である。実施例1では、サファイア基板を用いて基板11を構成する。サファイア基板の代わりに、例えば、ガラス基板、Si基板、GaN基板等の基板を用いて構成してもよい。
【0023】
第1の半導体層12は、基板11の上面に積層された薄膜であり、光が照射されることにより水の酸化反応を生起する光触媒材料により構成される。光照射により、第1の半導体層12の内部では電子と正孔が生成して分離し、正孔は第1の半導体層12の上側に移動し、電子は第1の半導体層12に接続された還元電極(不図示)へ移動する。
【0024】
実施例1では、n型窒化ガリウム(n−GaN)を用いて第1の半導体層12を構成する。n−GaNの代わりに、例えば、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)や窒化インジウムガリウム(InGaN)等のIII-V族化合物半導体、アモルファスシリコン等の化合物半導体、酸化チタン等の酸化物半導体を用いて構成してもよい。
【0025】
透明導電性高分子層13は、第1の半導体層12の上面に積層された薄膜であり、透明な導電性高分子で構成され、水の酸化反応を促進する活性機能を持つ。透明導電性高分子層13は、第1の半導体層12である光触媒材料に対して酸化助触媒として作用する助触媒材料により構成される。
【0026】
実施例1では、ポリ3,4エチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)を用いて透明導電性高分子層13を構成する。PEDOT:PSSの代わりに、例えば、正孔を輸送し、表面での触媒活性機能をもつ、ポリ3,4エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)と可溶性ポリマー材料との共重合体、その他正孔輸送材料を用いて構成してもよい。
【0027】
(半導体光電極1の作製方法)
次に、実施例1に係る半導体光電極1の作製方法について説明する。
【0028】
まず、厚さ430μm、2インチサイズのサファイア(0001)の上に、シリコンをドープしたn−GaN(=第1の半導体層12)を有機金属気相成長法によりエピタキシャル成長させる。n−GaNの膜厚は、光を吸収するに十分に足る2μmとする。このとき、シリコンのドープにより、n−GaNのキャリア(電子)密度は3×1018cm−3であった。その後、2インチサイズのサファイア基板及びn−GaNを4等分にへき開し、そのうちの1枚を半導体光電極1として用いる。
【0029】
次に、目的の膜厚が形成されるように濃度が調整されたPEDOT:PSS(重量組成比=1:6)(=透明導電性高分子層13)が含まれる水系分散液(Clevios P:Heraeus社製)をn−GaNの表面に滴下し、30秒間、5000rpmでスピンコートを行う。その後、110℃に設定されたホットプレート上に1時間置いて乾燥させる。これにより、複数のナノ構造体が密接した多孔質構造を備えた透明導電性高分子層13を得ることができる。この透明導電性高分子層13は、多孔度をもち、反応表面積の増大が期待できる。
【0030】
以上の作製方法により、図1に示した半導体光電極1を作製することができる。作製した透明導電性高分子層13の膜厚は約50nmであり、300nm以上の波長域の光の透過率は約90%以上であった。
【0031】
(酸化還元反応の試験方法及び試験結果)
次に、酸化還元反応の試験方法及び試験結果について説明する。
【0032】
まず、図2に示すように、露出した第1の半導体層12の上面に導線14を接続し、インジウム(In)を用いてはんだ付けを行った。その後、インジウムの表面が露出しないように、かつ、光照射面積が1cmとなるように、エポキシ樹脂15で被覆した。これにより得られた半導体光電極1を図5の酸化電極1として用いた。
【0033】
また、図5に示した試験装置において、酸化槽2内の水溶液3は、1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を用いた。還元槽4内の水溶液5は、0.5mol/lの炭酸水素カリウム水溶液を用いた。還元電極6は、白金(ニラコ製)、プロトン膜7は、ナフィオンを用いた。
【0034】
酸化槽2と還元槽4の各反応槽に窒素ガスを10ml/minで流し、光源9から照射されるサンプル光の光照射面積を1cmとし、撹拌子とスターラーを250rpmの回転速度で各反応槽の底の中心位置で回転させて各水溶液3,5を攪拌した。
【0035】
そして、各反応槽内が窒素ガスに十分に置換された後、光源9の光源面が酸化電極1(=半導体光電極1)の第1の半導体層12及び透明導電性高分子層13の形成面に向くように固定した。光源9には、300Wの高圧キセノンランプ(照度5mW/cm)を用いて、酸化電極1に均一に光を照射した。
【0036】
その後、光照射中の任意の時間に各反応槽内のガスを採取し、ガスクロマトグラフで反応生成物を分析した。その結果、酸化槽2では酸素が生成され、還元槽4では水素が生成されていることを確認した。
【0037】
なお、酸化還元反応試験に用いる酸化槽2内の水溶液3は、水酸化ナトリウム以外に、水酸化カリウム水溶液、塩酸でも構わない。還元槽4内の水溶液5は、炭酸水素カリウム以外に、炭酸水素ナトリウム水溶液、塩化カリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液でも構わない。また、実施例1では目的生成物を水素としたが、還元電極6やセル内の雰囲気を変えることにより、例えば、白金(Pt)の還元電極6をNi、Fe、Au、Pt、Ag、Cu、In、Ti、Co、Ru等に変更することにより、二酸化炭素の還元反応による炭素化合物の生成や窒素の還元反応によるアンモニアの生成も可能である。
【0038】
<実施例2>
実施例2では、実施例1と同様に、n−GaNを用いて第1の半導体層12を構成し、PEDOT:PSSを用いて透明導電性高分子層13を構成した。透明導電性高分子層13の膜厚は約100nmであり、300nm以上の波長域の光の透過率は約90%以上であった。その他については実施例1と同様である。
【0039】
<実施例3>
実施例3も実施例1と同様に、n−GaNを用いて第1の半導体層12を構成し、PEDOT:PSSを用いて透明導電性高分子層13を構成した。透明導電性高分子層13の膜厚は約1μmであり、300nm以上の波長域の光の透過率は約85%以上であった。その他については実施例1と同様である。
【0040】
<実施例4>
実施例4も実施例1と同様に、n−GaNを用いて第1の半導体層12を構成し、PEDOT:PSSを用いて透明導電性高分子層13を構成した。透明導電性高分子層13の膜厚は約5μmであり、300nm以上の波長域の光の透過率は約70%以上であった。その他については実施例1と同様である。
【0041】
<実施例5>
(半導体光電極1の構成)
図3は、実施例5に係る半導体光電極1の構成を示す側面図である。半導体光電極1は、図3に示すように、基板11と、第1の半導体層12と、第2の半導体層16と、透明導電性高分子層13と、を備えて構成される。
【0042】
基板11と第1の半導体層12は、いずれも実施例1と同様の構成及び機能を備える。実施例5では、実施例1と同様に、サファイア基板を用いて基板11を構成し、n−GaNを用いて第1の半導体層12を構成する。
【0043】
第2の半導体層16は、第1の半導体層12の上面に積層され、第1の半導体層12又は自身の結晶成長方向(上方向)と垂直な面の格子定数が第1の半導体層12よりも小さい薄膜であり、光が照射されることにより水の酸化反応を生起する光触媒材料により構成される。実施例5では、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)を用いて第2の半導体層16を構成する。
【0044】
透明導電性高分子層13は、第2の半導体層16の上面に積層され、実施例1と同様の構成及び機能を備える。実施例5では、実施例1と同様に、PEDOT:PSSを用いて透明導電性高分子層13を構成する。
【0045】
なお、第1の半導体層12及び第2の半導体層16は、AlGaNや窒化インジウムガリウム(InGaN)等のIII-V族化合物半導体の組み合わせを用いて構成してもよい。
【0046】
(半導体光電極1の作製方法)
まず、2インチサイズのサファイア(0001)の上に、シリコンをドープしたn−GaN(サファイア基板に平行な面の格子定数;3.189Å)(=第1の半導体層12)を有機金属気相成長法によりエピタキシャル成長させる。n−GaNの膜厚は、光を吸収するに十分足る2μmとする。このとき、シリコンのドープにより、n−GaNのキャリア(電子)密度は、3×1018cm−3であった。
【0047】
その後、アルミニウムの組成比を5%とした窒化ガリウム(Al0.05Ga0.9N)(サファイア基板に平行な面(=結晶成長方向と垂直な面)の格子定数;3.185Å)を成長させる。Al0.05Ga0.9Nの膜厚は、光を十分に吸収するに足る100nmとする。
【0048】
このように、窒化物半導体(n−GaN)の上に、結晶性成長方向と垂直の面における格子定数がより小さな窒化物半導体(AlGaN)を積層したヘテロ構造を形成することにより、格子ひずみに起因するピエゾ効果によって、上層の窒化物半導体(AlGaN)内に大きな電界が発生し、電子と正孔の分離に有利な働きをすることが期待される。なお、透明導電性高分子層13は、実施例1と同様の方法で形成した。
【0049】
以上の作製方法により、図3に示した半導体光電極1を生成することができる。透明導電性高分子層13の膜厚は約50nmであり、300nm以上の波長域の光の透過率は約90%以上であった。
【0050】
(酸化還元反応の試験方法及び試験結果)
図4に示すように、透明導電性高分子層13と第2の半導体層16の端部をけがき、第1の半導体層12の表面を露出させた。露出した第1の半導体層12の上面に導線14を接続し、インジウムを用いてはんだ付けを行った。その後、インジウムの表面が露出しないようにエポキシ樹脂15で被覆した。これにより得られた半導体光電極1を図5の酸化電極1として用い、以降、実施例1と同様の方法で酸化還元反応試験を行った。
【0051】
<実施例6>
実施例6では、実施例5と同様に、n−GaNを用いて第1の半導体層12を構成し、AlGaNを用いて第2の半導体層16を構成し、PEDOT:PSSを用いて透明導電性高分子層13を構成した。透明導電性高分子層13の膜厚は約100nmであり、300nm以上の波長域の光の透過率は約90%以上であった。その他については実施例5と同様である。
【0052】
<実施例7>
実施例7も実施例5と同様に、n−GaNを用いて第1の半導体層12を構成し、AlGaNを用いて第2の半導体層16を構成し、PEDOT:PSSを用いて透明導電性高分子層13を構成した。透明導電性高分子層13の膜厚は約1μmであり、300nm以上の波長域の光の透過率は約85%以上であった。その他については実施例5と同様である。
【0053】
<実施例8>
実施例8も実施例5と同様に、n−GaNを用いて第1の半導体層12を構成し、AlGaNを用いて第2の半導体層16を構成し、PEDOT:PSSを用いて透明導電性高分子層13を構成した。透明導電性高分子層13の膜厚は約5μmであり、300nm以上の波長域の光の透過率は約70%以上であった。その他については実施例5と同様である。
【0054】
<比較対象例1>
実施例1と比較して、透明導電性高分子層13を形成することなく、半導体光電極1を作製した。その他については実施例1と同様である。
【0055】
<比較対象例2>
実施例1と比較して、透明導電性高分子層13を形成する代わりに、酸化助触媒として酸化ニッケル(NiO)のナノ粒子を形成して半導体光電極1を作製した。目的の膜厚が形成されるように濃度が調整されたMOD(Metal Organic Decomposition)コート剤(SYM-NI05:SYMETRIX社製)を、半導体薄膜表面にスピンコート(5000rpm、30秒間)した。MODコート剤とは、金属の有機化合物を有機溶剤に溶解した溶液である。そして、110℃のホットプレート上で仮焼した後、この半導体薄膜を電気炉を用いて酸素雰囲気下で500℃で2時間熱処理を行った。これにより、ナノサイズのNiOの粒子が集まった多孔度をもつ層となり、厚さ約5nmであり、300nm以上の波長域の光の透過率は約85%以上であった。その他については実施例1と同様である。
【0056】
<比較対象例3>
実施例1と比較して、透明導電性高分子層13を形成する代わりに、酸化助触媒としてNiOのナノ粒子を形成して半導体光電極1を作製した。NiOの厚さは約10nmであり、300nm以上の波長域の光の透過率は約30%以下であった。その他については実施例1と同様である。
【0057】
<比較対象例4>
実施例1と比較して、透明導電性高分子層13を形成する代わりに、酸化助触媒としてNiOのナノ粒子を形成して半導体光電極1を作製した。NiOの厚さは約50nmであり、300nm以上の波長域の光の透過率は約5%以下であった。その他については実施例1と同様である。
【0058】
<比較対象例5>
実施例5と比較して、透明導電性高分子層13を形成することなく、半導体光電極1を作製した。その他については実施例5と同様である。
【0059】
<比較対象例6>
実施例5と比較して、透明導電性高分子層13を形成する代わりに、酸化助触媒としてNiOのナノ粒子を形成して半導体光電極1を作製した。NiOの厚さは約5nmであり、300nm以上の波長域の光の透過率は約85%以上であった。その他については実施例5と同様である。
【0060】
<比較対象例7>
実施例5と比較して、透明導電性高分子層13を形成する代わりに、酸化助触媒としてNiOのナノ粒子を形成して半導体光電極1を作製した。NiOの厚さは約10nmであり、300nm以上の波長域の光の透過率は約30%以下であった。その他については実施例5と同様である。
【0061】
<比較対象例8>
実施例5と比較して、透明導電性高分子層13を形成する代わりに、酸化助触媒としてNiOのナノ粒子を形成して半導体光電極1を作製した。NiOの厚さは約50nmであり、300nm以上の波長域の光の透過率は約5%以下であった。その他については実施例5と同様である。
【0062】
<実施例の効果>
実施例1〜8及び比較対象例1〜8による酸素及び水素の各ガス生成量を表1に示す。表1の「半導体薄膜」は、第1の半導体層12、第2の半導体層16を示す。表1の「酸化助触媒」は、透明導電性高分子層13を示す。
【0063】
【表1】
【0064】
実施例1と比較対象例1のガス生成量を比べると、PEDOT:PSSのある実施例1の方が多くのガスを生成しているので、PEDOT:PSSにより酸化助触媒機能が有効に作用し、半導体光電極1の光エネルギー変換効率を向上することができたと言える。これは、実施例5と比較対象例5を比べたときでも同様である。
【0065】
また、実施例1〜4のガス生成量から、PEDOT:PSSの膜厚は1μm程度が好ましいことがわかった。これより、PEDOT:PSSの光透過率は8割以上が望ましいことがわかった。これは、実施例5〜8を比べたときでも同様であった。PEDOT:PSSの膜厚増加に従い、反応表面積が増加し、ガス生成量が増加したものと考えられる。その一方で、PEDOT:PSSの膜厚を厚くしすぎると、光の透過率が大きく減少したことによる半導体薄膜での光吸収の減少が起因となり、実施例4、8では生成ガスが減少したものと考えられる。これより、PEDOT:PSSが光を十分に透過する範囲領域では表面積が大きいほうが望ましいことがわかった。
【0066】
比較対象例1、2のガス生成量の比較結果や比較対象例5、6のガス生成量の比較結果から、NiOは酸化助触媒機能を有することがわかる。その一方で、比較対象例2〜4のガス生成量の比較結果から、NiOの膜厚増加に従い、ガス生成量は減少することがわかった。これは、比較対象例6〜8についてもガス生成量の比較結果から同様である。NiOの膜厚増加に伴い、反応表面積は増加したものの、それ以上に光透過率の減少による半導体薄膜での光吸収の減少が影響したためと考えられる。
【0067】
実施例1と比較対象例4のガス生成量を比べると、双方の酸化助触媒の膜厚は同程度にも関わらず、比較対象例4ではガス生成が検知できなかったのに対して、実施例1ではガス生成の向上を確認した。これは、実施例5と比較対象例8のガス生成量の比較でも同様であった。これは、PEDOT:PSSの場合、反応表面積を増加しても、光の透過率を一定以上保つことができたことによるものと考えられる。
【0068】
実施例3と比較対象例2のガス生成量を比べると、光の透過率は同程度にも関わらず、実施例3のガスの生成量は比較対象例2のガス生成量に比べて、4倍向上することがわかった。これは、実施例7と比較対象例6のガス生成量の比較でも同様であった。この結果は、酸化助触媒の反応表面積増加が影響していると考えられる。
【0069】
<発明の効果>
以上より、実施例1〜4によれば、光触媒である第1の半導体層12に、透明な導電性高分子で構成され、水の酸化反応を促進する活性機能を持つ透明導電性高分子層13を積層するので、透明導電性高分子層13の透明性により、光の透過度が向上する(=助触媒材料による光の遮蔽に伴う半導体光触媒の光吸収量低下を防止できる)とともに、半導体層の全面に透明導電性高分子層を積層することができる。また、透明導電性高分子層を半導体層の全面に積層可能となるので、従来と比べて有効な反応面積が増大し、水の酸化反応を高効率に行うことができる。その結果、半導体光電極の光エネルギー変換効率を向上することができる。
【0070】
また、実施例5〜8によれば、光触媒である第1の半導体層12に、結晶成長方向と垂直な面の格子定数が第1の半導体層12よりも小さい第2の半導体層16を積層するので、第1の半導体層12と第2の半導体層16がヘテロ構造で形成される。これにより、格子ひずみに起因するピエゾ効果によって、第2の半導体層16内に大きな電界が発生し、電子と正孔の分離に有利な働きをするので、半導体光電極の光エネルギー変換効率を更に向上することができる。
【符号の説明】
【0071】
1…半導体光電極、酸化電極
11…基板
12…第1の半導体層
13…透明導電性高分子層
14…導線
15…エポキシ樹脂
16…第2の半導体層
2…酸化槽
3…水溶液
4…還元槽
5…水溶液
6…還元電極
7…プロトン膜
8…導線
9…光源
20…酸化助触媒
図1
図2
図3
図4
図5
図6