特開2019-206480(P2019-206480A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2019206480-蚊の誘引方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-206480(P2019-206480A)
(43)【公開日】2019年12月5日
(54)【発明の名称】蚊の誘引方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/04 20060101AFI20191108BHJP
   A01P 19/00 20060101ALI20191108BHJP
【FI】
   A01N59/04
   A01P19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-101760(P2018-101760)
(22)【出願日】2018年5月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】317015560
【氏名又は名称】ユーヴィックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陸井 梨乃
(72)【発明者】
【氏名】横田 大佑
(72)【発明者】
【氏名】藤嶋 昭
(72)【発明者】
【氏名】勝又 健一
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AC07
4H011BB18
4H011BC03
4H011DA20
4H011DB07
4H011DB08
(57)【要約】
【課題】炭酸ガスを発生させて蚊を誘引、捕集する蚊取り器に好適に用いることのできる蚊の誘引方法を提供すること。
【解決手段】光触媒により有機ガスを分解して炭酸ガスを発生させることにより蚊を誘引する方法であって、前記有機ガスの発生源として、醸造酒を含有し、且つアルコール度数が1〜50度である薬液を用いる、蚊の誘引方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒により有機ガスを分解して炭酸ガスを発生させることにより蚊を誘引する方法であって、
前記有機ガスの発生源として、醸造酒を含有し、且つアルコール度数が1〜50度である薬液を用いる、蚊の誘引方法。
【請求項2】
前記醸造酒が、米、水及び米麹を原材料とする日本酒である、請求項1に記載の蚊の誘引方法。
【請求項3】
前記薬液が、前記醸造酒を10質量%以上含有する、請求項1又は2に記載の蚊の誘引方法。
【請求項4】
前記薬液を収容し前記有機ガスを発生する有機ガス供給部と、紫外線を照射する紫外線照射部と、前記紫外線を受光し前記有機ガスを分解して前記炭酸ガスを発生させる光触媒シートを有する光触媒部とを有する炭酸ガス発生装置を用いて、100Lの空間あたりの二酸化炭素濃度を5〜30ppm/hr上昇させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蚊の誘引方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蚊の誘引方法に関し、更に詳しくは、光触媒を用いて炭酸ガスを発生させることにより蚊を誘引する蚊の誘引方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蚊に吸血されるとかゆみを覚えたり、吸血部位に発疹や皮膚炎を引き起こす。特に、一部の蚊は、デング熱、ジカ熱、黄熱病、脳炎、マラリアなどの病原体を媒介することから、衛生学的に非常に有害な昆虫であるとされている。
【0003】
蚊のような吸血昆虫は、動物の体温を感知する温熱センサー、味を感知する味覚受容体、体臭などの揮発性物質を感知する嗅覚受容体、高揮発性物質である二酸化炭素を感知する二酸化炭素受容体等の優れた化学受容システムを保有し、多様な行動をとっている。例えば、メス蚊は、産卵前に血を求めて、動物が呼吸によって吐き出す二酸化炭素や体臭を辿って動物に近づき、温熱センサーによって体温を感知して目標の動物を探知し、吸血することが知られている。
【0004】
従来、二酸化炭素の密度が高いところへ蚊が集まりやすいという習性を利用して、炭酸ガス(二酸化炭素)を発生させて蚊を捕集することがなされている。例えば、特許文献1には、有機ガスを発生する有機ガス供給部と、紫外線を照射する紫外線照射部と、前記紫外線を受光し、前記有機ガスを分解して炭酸ガスを発生させるアナターゼ型酸化チタン光触媒シートを有する光触媒部と、前記有機ガス供給部、前記紫外線照射部及び前記光触媒部を収納し、窓を有する収納容器と、前記窓を覆い、蚊が通れる寸法より少し大きい寸法の網目を有する蚊選別ネットと、前記網目を通り前記収納容器内に侵入した蚊を捕集する捕集部とを備える酸化チタン光触媒を用いた蚊取り器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−86790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蚊取り器で蚊を捕集する場合、蚊取り器まで蚊を誘引する必要があるが、蚊の誘引範囲を広げてより効率良く蚊を捕獲、防除することが求められている。
そこで、本発明は、炭酸ガスを発生させて蚊を誘引、捕集する蚊取り器に好適に用いることのできる蚊の誘引方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、光触媒により有機ガスを分解して炭酸ガスを発生させる際に、炭酸ガスを発生させるための有機ガスの発生源として、醸造酒を含有し、かつアルコール度数を特定範囲とした薬液を用いることにより蚊の誘引性が向上し、効率的に蚊を捕獲できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下の(1)〜(4)を特徴とする。
(1)光触媒により有機ガスを分解して炭酸ガスを発生させることにより蚊を誘引する方法であって、前記有機ガスの発生源として、醸造酒を含有し、且つアルコール度数が1〜50度である薬液を用いる、蚊の誘引方法。
(2)前記醸造酒が、米、水及び米麹を原材料とする日本酒である、前記(1)に記載の蚊の誘引方法。
(3)前記薬液が、前記醸造酒を10質量%以上含有する、前記(1)又は(2)に記載の蚊の誘引方法。
(4)前記薬液を収容し前記有機ガスを発生する有機ガス供給部と、紫外線を照射する紫外線照射部と、前記紫外線を受光し前記有機ガスを分解して前記炭酸ガスを発生させる光触媒シートを有する光触媒部とを有する炭酸ガス発生装置を用いて、100Lの空間あたりの二酸化炭素濃度を5〜30ppm/hr上昇させる、前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の蚊の誘引方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の蚊の誘引方法は優れた蚊の誘引性を発揮し、当該方法により蚊の誘引、防除の効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例で使用したオルファクトメーターの構成を示す斜視図である。
図2】実施例で使用した炭酸ガス発生装置の構成を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の蚊の誘引方法について詳細に説明する。
本発明の蚊の誘引方法は、光触媒により有機ガスを分解して炭酸ガス(二酸化炭素)を発生させることにより蚊を誘引する方法である。
【0012】
本実施形態の蚊の誘引方法に用いる炭酸ガスの発生方法では、分解して炭酸ガスを発生する有機ガス(揮発性有機化合物)を光触媒の光触媒作用によって分解することにより発生させる方法を用いる。光触媒の酸化還元反応は、光のエネルギーを吸収して光触媒が励起し、生じた電子と正孔が空気中の水及び酸素と反応して活性酸素が発生することにより、発現するとされている。発生した活性酸素が有機ガスと接触すると、有機物が酸化分解し、炭酸ガス(二酸化炭素)が生じる。
【0013】
有機ガスの発生源として、本実施形態では、醸造酒を含有し、且つアルコール度数が1〜50度である薬液を用いる。
【0014】
醸造酒は、穀類、果実などの原料を発酵させて作る酒のことをいい、これに対し醸造酒を蒸留した酒を蒸留酒という。蒸留酒は蒸留過程で醸造酒の香気成分が除去され減少するので、本発明においてはより多くの香気成分を含む醸造酒を用いる。
【0015】
醸造酒としては、例えば、日本酒、果実酒(ワイン、シードル)、ビール、紹興酒等が挙げられる。中でも、ワインや紹興酒などはショウジョウバエに対する誘引性が知られているが、使用時には特異なにおいが人に対して不快感を与えることがある。醸造酒の中でも、日本酒はショウジョウバエに対して誘引性が低いため、選択的に蚊を誘引でき、使用時に人に対して不快感が少ないという観点から、日本酒を使用することがより好ましい。
【0016】
日本酒は、米、水及び米麹を原材料としてアルコール発酵させて作られた酒である。麹の酵素によって米のデンプンを単糖(具体的に、ブドウ糖)に分解し(糖化)、分解された単糖を酵母の産生する酵素によりアルコール発酵を行っている。日本酒は、「糖化」と「アルコール発酵」の2つの化学反応を同時に行う平行複発酵と呼ばれる形式で醸造されるため、味や香りに関与する成分が多く生産される。日本酒は醸造アルコールの添加の有無により、純米酒と吟醸酒、本醸酒に大きく分けられるが、いずれの日本酒を用いてもよい。日本酒は、炭酸ガスの発生と共にその他香気成分や香気成分と光触媒反応により発生する成分により、誘引効果をより高めることができると推測する。
【0017】
醸造酒のアルコール度数(アルコール濃度(v/v%))は、1〜50度であることが好ましく、3〜40度であることがより好ましく、10〜20度であることが更に好ましい。アルコール度数が1度以上であれば、有機ガスを発生させることができるので、光触媒の光触媒作用により分解して炭酸ガスを発生させることができる。醸造酒のアルコール度数が高すぎると、他の成分(具体的に味や香りに関与する成分等)の量が相対的に少なくなるので誘引性が低下する場合があるため、50度以下であることが好ましい。
【0018】
蚊は吸血以外にも糖を摂取する習性がある。醸造酒の糖質濃度は特に限定されないが、1〜50g/100gであることが好ましく、3〜25g/100gがより好ましい。糖質濃度が1g/100g以上であると蚊の誘引効果を発揮することができるので好ましい。また、糖質濃度が高すぎると他の成分(具体的に味や香りに関与する成分等)が相対的に含まれなくなるので、50g/100g以下であることが好ましい。
【0019】
薬液には、光触媒反応による炭酸ガスの発生を抑制しない範囲において、既知の誘引成分を含有することができる。
【0020】
誘引成分としては、例えば、ブランデー、ウイスキー、ラム酒、ウォッカ、焼酎等の蒸留酒;黒酢、赤酢、食酢、リンゴ酢、米酢等の醸造酢;リンゴ、オレンジ、ミカン、イチゴ、ブドウ、メロン、バナナ、マンゴー、パイナップル等の果実エキスや果実加工品(ジュース、ペースト等);蜂蜜、液糖、メープルシロップ等の糖類;乳酸飲料、ヨーグルト、チーズ等の乳酸製品;前記した果実調の香料等が挙げられる。これらは常温でガス化する揮散性成分を含むことが好ましい。
【0021】
また、本発明の薬液には光触媒反応による炭酸ガスの発生を抑制しない範囲において、殺虫成分、抗菌成分、着色剤、紫外線吸収剤、保持剤、滑沢剤、溶剤等の添加剤を含有することができる。
【0022】
殺虫成分としては、例えば、ジクロルボス、フェニトロチオン、IBTA、IBTE、トランスフルトリン、メトフルスリン、プロフルスリン、エンペントリン、プロポクスル、フェノブカルブ、アミドフルメト、ジノテフラン、フィプロニル、ヒドラメチルノン、カルバリル等が挙げられる。
【0023】
抗菌成分としては、例えば、二酸化塩素、ヨウ素、チモール、イソプロピルメチルフェノール、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、エタノール、プロピルアルコール、フェノール、クレゾール、フェノキシエタノール、塩化セチルピリジニウム等が挙げられる。
【0024】
着色剤としては、例えば、青色1号、黄色4号等が挙げられる。
【0025】
紫外線吸収剤としては、例えば、トリスレゾルシノールトリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物等が挙げられる。
【0026】
保持剤としては、アクリル酸系架橋物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合ナトリウム塩架橋物等の吸水性ポリマー等が挙げられる。
【0027】
滑沢剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤等が挙げられる。
【0028】
また、本発明の薬液には、薬液中に含まれる成分を溶解するために溶媒を用いてもよい。溶媒としては、例えば、メタノール、プロパノール等の低級アルコールや、醸造酒(すなわち、飲用)以外のエタノール(工業用アルコール)等のアルコール成分、水等が挙げられる。
【0029】
薬液は、醸造酒と任意の成分を混合することにより得ることができる。
醸造酒は、薬液中5質量%以上含有することが好ましい。薬液中に醸造酒を5質量%以上含有することにより、光触媒反応により蚊の誘引に十分な炭酸ガスを発生させることができる。醸造酒は、薬液中10質量%以上含有することがより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。醸造酒の含有量の上限は特に制限されないが、100質量%以下であることが好ましく、90質量%以下がより好ましい。
【0030】
なお、本実施形態において、薬液のアルコール度数は1〜50度となるように調整される。薬液のアルコール度数が1度以上であると、薬液から揮散したアルコールが炭酸ガス発生装置に供給され、炭酸ガスを放出するための炭素源となるため好ましく、50度を超えても蚊の誘引効果に大きな差は見られず、また薬液の主成分である醸造酒のアルコール度数に基づくアルコール度数の調整のしやすさの観点から、50度以下であることが好ましい。薬液のアルコール度数は、下限は3度以上であることがより好ましく、5度以上が更に好ましく、また上限は30度以下であることがより好ましく、15度以下が更に好ましい。
【0031】
薬液のアルコール度数は、使用する醸造酒のアルコール度数及び当該醸造酒の含有量を基に、所望のアルコール度数となるよう水や他のアルコール成分等の溶媒を用いて調整することができる。
【0032】
本実施形態において、炭酸ガスを発生させるための炭酸ガス発生装置は、前記薬液を収容し有機ガスを発生する有機ガス供給部と、紫外線を照射する紫外線照射部と、紫外線を受光し有機ガスを分解して炭酸ガスを発生させる光触媒シートを有する光触媒部とを有する。
【0033】
有機ガス供給部は有機ガスを発生させる。有機ガス供給部は、本実施形態の薬液を収容する薬液漕を有する。薬液の液面から揮散性有機化合物が揮散するが、揮散効率を高めるために薬液漕の上にシート置台を設置して、シート置台上に繊維質シートを敷き、繊維質シートの一端をシート置台から垂下し薬液漕内の薬液に浸漬することが好ましい。繊維質シートは不織布などの布製シートが好適に用いられ、薬液漕から薬液を繊維質シートに毛管現象により吸い上げるよう構成される。これにより、繊維質シートは薬液を含浸したものとなる。そして、薬液中の醸造酒に含まれる揮発性有機化合物(具体的に、アルコール、芳香成分)が有機ガスとして繊維質シートから揮発する。所望により薬液に添加剤が含まれている場合は、添加剤に含まれる揮発成分も有機ガスとして揮発する。
【0034】
紫外線照射部は紫外線を照射する。紫外線照射部として、例えば、紫外線LED等の紫外線ランプが使用される。紫外線照射部は有機ガス供給部の上方、具体的に、薬液槽中の薬液の液面に対向する位置に設置され、有機ガス供給部に向けて紫外線を照射する。紫外線は、光触媒部の光触媒シートに担持される光触媒のバンドギャップに相当する波長以下の波長のものを使用できる。例えば、光触媒としてアナターゼ型酸化チタンを用いる場合、アナターゼ型酸化チタンのバンドギャップ3.2eVに相当する388nm以下の波長のものを使用できる。
【0035】
紫外線照射部は、所望の大きさの基板の下面(すなわち、有機ガス供給部に対向する側の面)に紫外線ランプを所定間隔で複数配置し(例えば、10cm×10cmボードの下面に5mmφ、ピーク波長375nmの紫外線LEDを4×4=16個配置する。)、リード線をボードの上側に配線して引き出し、まとめて操作盤を介して電気供給部に導かれるようにする。
【0036】
光触媒部は紫外線を受光し、有機ガスを分解して炭酸ガスを発生させる光触媒シートを有する。光触媒シートは有機ガス供給部と紫外線照射部の間に敷設される。光触媒シートは、薬液の液面や繊維質シートに直接接触しないように、例えばスペーサを介して支持されていればよく、薬液の液面又は繊維質シートからの高さを例えば3〜30mm等の間の任意な間隔で設定できる。
【0037】
光触媒シートに担持される光触媒としては、特に限定されないが、TiO、ZnO、SrTiO、BaTiO、BaTiO、BaTi、KNbO、Nb、Fe、Ta、KTaSi、WO、SnO、Bi、BiVO、NiO、CuO、RuO、CeO等の酸化物が挙げられ、これらの中でも、TiO(酸化チタン)は無害であり、化学的安定性にも優れるため好ましい。酸化チタンとしては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型のいずれも使用できる。
【0038】
光触媒は紫外線を受光すると、まずその光エネルギーにより光励起され、光触媒の表面に電子と正孔が発生する。次いで、電子が空気中の酸素を還元し、スーパーオキサイドイオン(O)に変化させ、一方、正孔が光触媒上の水分を酸化し、ヒドロキシルラジカル(OHラジカル)に変化させる。このような光励起状態で、光触媒上に有機ガスが付着すると、スーパーオキサイドイオンが有機ガスから炭素を、ヒドロキシルラジカル(OHラジカル)が有機ガスから水素を奪うことにより、有機ガスを分解する。そして、これらの炭素および水素は、それぞれ酸化され、炭酸ガス(二酸化炭素)等に変化する。
【0039】
有機ガス供給部、紫外線照射部及び光触媒部は収納容器に収納され、収納容器には、発生した炭酸ガスを容器外に揮散させるための窓部を有する。本実施形態において、炭酸ガス発生装置は、有機ガス供給部、紫外線照射部及び光触媒部が収納容器に収納された構成からなるものであっても、有機ガス供給部、紫外線照射部及び光触媒部を収納した収納容器が更に外容器に収納された構成からなるものであってもよい。なお、外容器にも光触媒反応により発生した炭酸ガスを容器外に揮散させるための窓部を有する。
【0040】
本実施形態の炭酸ガス発生装置は蚊取り器として使用することができ、蚊取り器として使用する場合は、炭酸ガスに誘引された蚊を捕集する捕集部を備えることが好ましい。捕集部は、収納容器の内部に設けられていても、外容器をさらに有する場合は該外容器の内部に収納容器に隣接させて設けられていてもよい。
【0041】
捕集部としては、例えば、粘着シート、吸引器等が好適に使用できるが、捕集した蚊の回収や取り換えの簡便さ、衛生面から、粘着シートであることが好ましい。
【0042】
本実施形態の炭酸ガス発生装置を用いた蚊の誘引方法を具体的に説明する。
繊維質シートは薬液漕から薬液を吸い上げて、有機ガスを揮発する。電気供給部により紫外線照射部に電気が供給されると、紫外線が光触媒部に向けて照射される。光照射部の光触媒シートの光触媒が紫外線を受光すると、ヒドロキシルラジカル(OHラジカル)、スーパーオキサイドアニオン、正孔、電子等の活性種が発生する。これらの活性種は繊維質シートから揮発した有機ガスを炭酸ガス等に分解する。炭酸ガスは収納容器の窓部、或いは収納容器が外容器に収納されている場合は外容器の窓部から容器外へ放出され、炭酸ガスに誘引された蚊が窓部を通って容器内へ侵入する。そして収納容器或いは外容器内に侵入した蚊は捕集部にて捕集される。
【0043】
本実施形態の蚊の誘引方法では、上記した炭酸ガス発生装置を用いて炭酸ガスを発生させ、100Lの空間あたりの二酸化炭素濃度を5〜30ppm/hrで上昇させることが好ましい。100Lの空間あたりの二酸化炭素濃度が1時間あたり5ppm上昇するように炭酸ガスを発生させることにより、蚊の誘引範囲が広がるのでより効率良く蚊を誘引することができる。より高い二酸化炭素濃度とすることで蚊に対する誘引効果を高めることができるが、濃度を高めるほど炭酸ガス発生装置(蚊取り器)が大きくなるため、一般家庭用サイズとするには、二酸化炭素濃度の上昇が1時間あたり30ppm以下とすると好ましい。
なお、蚊は5ppm以上の二酸化炭素濃度に誘引されやすいため、蚊取り器の蚊吸い込み口付近の二酸化炭素濃度を5ppm以上となるように炭酸ガスを発生させればよい。
【0044】
炭酸ガス発生装置(蚊取り器)から発生させる炭酸ガスの発生量(二酸化炭素濃度)は、薬液のアルコール度数や紫外線照射強度、光触媒の面積および体積により調整できる。
【0045】
本発明の蚊の誘引方法で誘引対象となる蚊としては、例えば、アカイエカ、ヒトスジシマカ、チカイエカ、コダカアカイエカ、ネッタイシマカ、ハマダラカ、ネッタイイエカ等が挙げられるが、これらの例示の蚊に限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
以下、具体的な試験例に基づき本発明の蚊の誘引方法を更に説明するが、本発明は下記例に何ら制限されるものではない。
【0047】
<試験例1>
オルファクトメーター法を用いて、日本酒とエタノールの蚊の誘引対比試験を行った。
図1に示すようなオルファクトメーター10を用いた。オルファクトメーター10は、一組の透明な検体ボックス(第1検体ボックス1A,第2検体ボックス1B)と、第1検体ボックス1Aと第2検体ボックス1Bのそれぞれに接続する透明な筒状の誘引部2A,2Bと、誘引部2A,2Bに接続する透明な蚊収容ボックス3を備えている。蚊収容ボックス3と誘引部2A,2Bとの連結部には、蚊収容ボックス3から誘引部2A,2Bへ侵入した蚊が蚊収容ボックス3へ再侵入するのを防ぐ逆止弁4が設けられている。オルファクトメーター10内には清浄な空気を流し、検体ボックス1A,1B側から蚊収容ボックス3に向けて気流を0.3m/sで発生させている。
【0048】
検体1として日本酒(料理用清酒「酒菜」(商品名、宝酒造株式会社製)、アルコール度数13.5度)を用いた。日本酒をプラスチック製カップ(直径6cm、深さ5cm)に20mL測り取り、オルファクトメーター10の第1検体ボックス1A内に設置した。
検体2として13.5%エタノール水溶液を用いた。13.5%エタノール水溶液をプラスチック製カップ(直径6cm、深さ5cm)に20mL測り取り、オルファクトメーター10の第2検体ボックス1B内に設置した。
蚊収容ボックス3内にヒトスジシマカの雌成虫を30頭放ち、24時間放置した。第1検体ボックス1Aに接続する誘引部2A及び第2検体ボックス1Bに接続する誘引部2Bにそれぞれ誘引された蚊をカウントした。試験は3回行い、平均を求めた。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
<試験例2>
オルファクトメーター法を用いて、日本酒と日本酒を用いて発生させた炭酸ガスの蚊の誘引対比試験を行った。
誘引対比試験には、試験例1で用いたものと同様のオルファクトメーター10を用いた。
また、炭酸ガスの発生には図2に示すような炭酸ガス発生装置20を用いた。炭酸ガス発生装置20は、薬液6が収容された有機ガス供給部5と、有機ガス供給部5の上方に位置する駆動部9を備えている。駆動部9は、基板71の表面に実装された紫外線ランプ72からなる紫外線照射部7と、紫外線ランプ72に対向して設けられた光触媒シート8から構成されており、光触媒シート8が有機ガス供給部5と対向するように設置される。紫外線照射部7は、縦5cm×横5cmの基板71と、直径φ3mm、ピーク波長365nmの紫外線ランプ72(9個(3列×3個))とで構成され、紫外線ランプ72に接続されたリード線を基板71の裏面側に配線して引き出し、ACアダプタ11に接続している。このように構成された炭酸ガス発生装置20は、通電により炭酸ガスを発生する。
【0051】
検体3として、日本酒(料理用清酒「酒菜」(商品名、宝酒造株式会社製)、アルコール度数13.5度)を用いて炭酸ガス発生装置20により炭酸ガスを発生させた。日本酒を炭酸ガス発生装置20の有機ガス供給部5に20mL充填し、薬液の液面から3cm上に、光触媒シート8が液面と水平になるように駆動部9を設置した。12V、0.08Aで通電させて紫外線を照射することにより炭酸ガスを発生させ、オルファクトメーター10の第1検体ボックス1A内に設置した。
対照の検体4として、日本酒(料理用清酒「酒菜」(商品名、宝酒造株式会社製)、アルコール度数等13.5度)を用いた。日本酒をプラスチック製カップ(直径6cm、深さ5cm)に20mL測り取り、オルファクトメーター10の第2検体ボックス1B内に設置した。
蚊収容ボックス3内にヒトスジシマカの雌成虫を30頭放ち、24時間放置した。第1検体ボックス1Aに接続する誘引部2A及び第2検体ボックス1Bに接続する誘引部2Bにそれぞれ誘引された蚊をカウントした。試験は3回行い、平均を求めた。結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
試験例1の結果より、検体1と検体2との対比ではエタノールに比べて日本酒のほうが蚊の誘引性が高いことが分かり、試験例2の結果より、検体3と検体4の対比では有機ガスの発生源として日本酒を用いて、有機ガスの分解により炭酸ガスを発生させることにより蚊の誘引性が顕著に高まることが分かった。
【0054】
<試験例3>
オルファクトメーター法を用いて、日本酒を用いて発生させた炭酸ガスとウイスキーを用いて発生させた炭酸ガスの蚊の誘引対比試験を行った。
なお、オルファクトメーター及び炭酸ガス発生装置は、試験例1、2で用いたものと同様である。
【0055】
検体5として、日本酒(料理用清酒「酒菜」(商品名、宝酒造株式会社製)、アルコール度数13.5度)を用いて炭酸ガス発生装置20により炭酸ガスを発生させた。日本酒を炭酸ガス発生装置20の有機ガス供給部5に20mL充填し、薬液の液面から3cm上に、光触媒シート8が液面と水平になるように駆動部9を設置した。12V、0.08Aで通電させて紫外線を照射することにより炭酸ガスを発生させ、オルファクトメーター10の第1検体ボックス1A内に設置した。
対照の検体6として、ウイスキー(「サントリーウイスキー角瓶」(商品名、サントリーホールディングス株式会社製)、アルコール度数40度)用いて炭酸ガス発生装置20により炭酸ガスを発生させた。検体5と同様にして炭酸ガスを発生させ、オルファクトメーター10の第2検体ボックス1B内に設置した。
蚊収容ボックス3内にヒトスジシマカの雌成虫を30頭放ち、24時間放置した。第1検体ボックス1Aに接続する誘引部2A及び第2検体ボックス1Bに接続する誘引部2Bにそれぞれ誘引された蚊をカウントした。結果を表3に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
表3の結果より、ウイスキー(蒸留酒)を使用した検体6に比べて日本酒(醸造酒)を使用した検体5のほうが蚊の誘引性が高く、日本酒には炭酸ガスを発生する有機ガスと共に芳香成分により蚊の誘引性が向上していると考えられる。
【0058】
<試験例4>
オルファクトメーター法を用いて、日本酒を用いて発生させた炭酸ガスと日本酒とエタノールの混合物を用いて発生させた炭酸ガスの蚊の誘引対比試験を行った。
なお、オルファクトメーター及び炭酸ガス発生装置は、試験例1、2で用いたものと同様である。
【0059】
検体7として、日本酒(料理用清酒「酒菜」(商品名、宝酒造株式会社製)、アルコール度数13.5度)を用いて炭酸ガス発生装置20により炭酸ガスを発生させた。日本酒を炭酸ガス発生装置20の有機ガス供給部5に20mL充填し、薬液の液面から3cm上に、光触媒シート8が液面と水平になるように駆動部9を設置した。12V、0.08Aで通電させて紫外線を照射することにより炭酸ガスを発生させ、オルファクトメーター10の第1検体ボックス1A内に設置した。
対照の検体8として、日本酒とエタノールのアルコール混合液[日本酒(料理用清酒「酒菜」(商品名、宝酒造株式会社製)、アルコール度数13.5度)69.4質量%と100%エタノール30.6質量%を混合してアルコール度数40度に調整したもの]を用いて炭酸ガス発生装置20により炭酸ガスを発生させた。検体7と同様にして炭酸ガスを発生させ、オルファクトメーター10の第2検体ボックス1B内に設置した。
蚊収容ボックス3内にヒトスジシマカの雌成虫を30頭放ち、24時間放置した。第1検体ボックス1Aに接続する誘引部2A及び第2検体ボックス1Bに接続する誘引部2Bにそれぞれ誘引された蚊をカウントした。結果を表4に示す。
【0060】
【表4】
【0061】
表4の結果より、日本酒にエタノールを混合してアルコール濃度を40度に高めても蚊の誘引性を向上させることはできず、炭酸ガス発生装置に供給する薬液のエタノール濃度が高すぎても誘引性に寄与しないことが分かった。
【0062】
<試験例5>
100Lのアクリルボックス内に日本酒(料理用清酒「酒菜」(商品名、宝酒造株式会社製)、アルコール度数13.5度)用いて、試験例2で用いたものと同様の炭酸ガス発生装置により炭酸ガスを発生させた。
一定時間ごとに炭酸ガス濃度を一酸化炭素二酸化炭素測定器:MODEL CMCD−200(商品名、株式会社ガステック製)にて測定したところ、試験開始時に比べて、1時間後に二酸化炭素は10ppm、2時間後には17ppm増加した。
【符号の説明】
【0063】
1A 第1検体ボックス
1B 第2検体ボックス
2A,2B 誘引部
3 蚊収容ボックス
4 逆止弁
5 有機ガス供給部
6 薬液
7 紫外線照射部
8 光触媒シート
9 駆動部
10 オルファクトメーター
11 ACアダプタ
20 炭酸ガス発生装置
図1
図2