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特開2019-206502カーボネート基含有シラン化合物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-206502(P2019-206502A)
(43)【公開日】2019年12月5日
(54)【発明の名称】カーボネート基含有シラン化合物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/08 20060101AFI20191108BHJP
【FI】
   C07F7/08 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-103445(P2018-103445)
(22)【出願日】2018年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】殿村 洋一
(72)【発明者】
【氏名】久保田 泰文
(72)【発明者】
【氏名】清森 歩
【テーマコード(参考)】
4H049
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP02
4H049VQ22
4H049VR24
4H049VS18
4H049VT49
4H049VU21
4H049VU23
4H049VV02
4H049VW02
(57)【要約】
【課題】化学的に安定であり、非水電解液の添加剤として用いた場合に、厳しい環境下での使用の際にもリチウムイオン二次電池の安全性を損なうことがないカーボネート基含有シラン化合物を提供すること。
【解決手段】
下記一般式(1)で示されるカーボネート基含有シラン化合物。

(式中、R1およびR4は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1〜10の直鎖状または分岐状の2価炭化水素基を表し、R2、R3、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルケニル基を表し、R8は、置換または非置換の炭素数1〜10の1価炭化水素基を表し、nは、1または2である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるカーボネート基含有シラン化合物。
【化1】
(式中、R1およびR4は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1〜10の直鎖状または分岐状の2価炭化水素基を表し、R2、R3、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルケニル基を表し、R8は、置換または非置換の炭素数1〜10の1価炭化水素基を表し、nは、1または2である。)
【請求項2】
前記R2、R3、R5、R6およびR7の少なくとも一つが、置換または非置換の炭素数2〜10の直鎖状または分岐状のアルケニル基である請求項1記載のカーボネート基含有シラン化合物。
【請求項3】
下記一般式(2)
【化2】
(式中、R1〜R7およびnは、前記と同じ意味を表す。)
で示されるシリルアルコール化合物と、下記一般式(3)
【化3】
(式中、R8は、前記と同じ意味を表し、Xは、ハロゲン原子を表す。)
で示されるハロゲン化ギ酸エステルとを、塩基の存在下で縮合反応させる請求項1または2記載のカーボネート基含有シラン化合物の製造方法。
【請求項4】
前記塩基が、複素環式アミンまたは三級アミンである請求項3記載のカーボネート基含有シラン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボネート基含有シラン化合物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーボネート基を有する有機ケイ素化合物は、シランカップリング剤、表面処理剤、接着剤等に有用であることが知られている。例えば、リチウムイオン二次電池の非水電解液にカーボネート基含有シランカップリング剤を添加することにより、電極の表面状態を理想的な状態にすることができること、即ち、ケイ素化合物が表面処理剤として機能することにより、電極表面の耐久性や耐熱性、Li伝導性が向上することが知られている。
【0003】
近年、リチウムイオン二次電池は、スマートフォンやノートパソコン、電気自動車等のバッテリーとして数多く使用されている。その一方で、厳しい環境下での放電特性および短時間に大量の電気を必要とする高出力下での放電特性は満足のいく水準に達していない。
また、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等を主成分とする非水電解液を用いたリチウムイオン二次電池では、電解液の気化や分解が起こり、電池の破裂や引火といった事態が起こるおそれがある。このようなことから、リチウムイオン二次電池の放電特性、サイクル特性、安全性の改良が望まれており、様々な検討が行われてきた。
【0004】
その中の一つに、非水電解液に環状カーボネート変性シロキサンを添加する方法が報告されている(特許文献1)。この環状カーボネート変性シロキサンは、高い界面活性能を有しており、電極またはセパレーターの濡れ性を改善させる効果があるため、リチウムイオン二次電池の低温下での放電特性や、高出力下での放電特性の向上に寄与する。また、このようなシロキサン誘導体は、難燃性、低蒸気圧といった特徴を有し、低引火性を示すため、リチウムイオン二次電池の安全性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−77075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の環状カーボネート変性シロキサンは、低引火性を示すものの、電解液中での化学的安定性が十分ではないという問題がある。すなわち、リチウムイオン二次電池の電解液には、LiPF4等のフッ素原子を有するリチウム塩が使用されているため、このフッ素原子によってシロキサン結合が切断されてしまうおそれがある。しかも、シロキサン化合物が分解した場合は、蒸気圧が上昇することによって、引火の危険性が高まるという問題もある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、化学的に安定であり、非水電解液の添加剤として用いた場合に、厳しい環境下での使用の際にもリチウムイオン二次電池の安全性を損なうことがないカーボネート基含有シラン化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、二つ以上のケイ素原子が炭素鎖で連結された構造的特徴を有するカーボネート基含有シラン化合物が、シランカップリング剤の中間体として有用であると共に、リチウムイオン二次電池の電解液中で化学的に安定であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
1. 下記一般式(1)で示されるカーボネート基含有シラン化合物、
【化1】
(式中、R1およびR4は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1〜10の直鎖状または分岐状の2価炭化水素基を表し、R2、R3、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルケニル基を表し、R8は、置換または非置換の炭素数1〜10の1価炭化水素基を表し、nは、1または2である。)
2. 前記R2、R3、R5、R6およびR7の少なくとも一つが、置換または非置換の炭素数2〜10の直鎖状または分岐状のアルケニル基である1のカーボネート基含有シラン化合物、
3. 下記一般式(2)
【化2】
(式中、R1〜R7およびnは、前記と同じ意味を表す。)
で示されるシリルアルコール化合物と、下記一般式(3)
【化3】
(式中、R8は、前記と同じ意味を表し、Xは、ハロゲン原子を表す。)
で示されるハロゲン化ギ酸エステルとを、塩基の存在下で縮合反応させる1または2のカーボネート基含有シラン化合物の製造方法、
4. 前記塩基が、複素環式アミンまたは三級アミンである3のカーボネート基含有シラン化合物の製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカーボネート基含有シラン化合物は、ケイ素原子同士が炭素原子を介して連結しているため、電解液中で極めて安定であり、リチウムイオン二次電池の電解液用添加剤として有用な化合物である。
また、二重結合を持つカーボネート基含有シランは、カーボネート基含有シランカップリング剤の中間体としても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1で得られた化合物の1H−NMRスペクトルである。
図2】実施例1で得られた化合物のIRスペクトルである。
図3】実施例2で得られた化合物の1H−NMRスペクトルである。
図4】実施例2で得られた化合物のIRスペクトルである。
図5】実施例3で得られた化合物の1H−NMRスペクトルである。
図6】実施例3で得られた化合物のIRスペクトルである。
図7】実施例4で得られた化合物の1H−NMRスペクトルである。
図8】実施例4で得られた化合物のIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に係るカーボネート基含有シラン化合物は、下記一般式(1)で示される。
【0013】
【化4】
(式中、nは1または2を表す。)
【0014】
上記式(1)において、R1およびR4は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の直鎖状または分岐状2価炭化水素基を表す。
上記2価炭化水素基の具体例としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン基等の直鎖状アルキレン基;イソプロピレン、イソブチレン、イソペンチレン基等の分岐状アルキレン基が挙げられ、原料調達の観点から、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基等の炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
なお、上記2価炭化水素基の水素原子の一部または全部は、その他の置換基で置換されていてもよく、そのような置換基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、(イソ)プロポキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;シアノ基、アミノ基、芳香族炭化水素基、エステル基、酸素原子を介在したアルキル基、アシル基、スルフィド基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。これらの置換基は、2種以上組み合わせて用いることもでき、置換位置および置換基数も特に限定されるものではない。
【0015】
上記R2、R3、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状アルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜6の直鎖状もしくは分岐状アルケニル基を表す。
上記アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、イソヘキシル、イソヘプチル、イソオクチル、tert−オクチル、イソノニル、イソデシル、イソウンデシル基等の分岐状アルキル基が挙げられる。
上記アルケニル基の具体例としては、ビニル、1−プロペニル、n−プロペニル(2−プロペニルまたはアリル)、n−ブテニル、n−ペンテニル、n−ヘキセニル、n−ヘプテニル、n−オクテニル、n−ノネニル、n−デセニル、n−ウンデセニル、n−ドデセニル基等の直鎖状アルケニル基;イソプロペニル、イソブテニル、イソペンテニル、イソヘキセニル、イソヘプテニル、イソオクテニル、イソノニル、イソデセニル、イソウンデシル基等の分岐状アルケニル基が挙げられる。
これらの中でも、原料調達の観点から、メチル基、エチル基等の炭素数1〜3の直鎖状アルキル基;ビニル基、n−プロペニル基等の炭素数2または3の直鎖状アルケニル基が好ましい。
なお、上記アルキル基またはアルケニル基も、その水素原子の一部または全部がその他の置換基で置換されていてもよい。その他の置換基の具体例としては、R1およびR4と同様の置換基が挙げられる。
【0016】
上記R8は、置換または非置換の炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜3の1価炭化水素基を表す。
上記1価炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、イソヘキシル、イソヘプチル、イソオクチル、tert−オクチル、イソノニル、イソデシル、イソウンデシル基等の分岐状アルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル基等の環状のアルキル基;ビニル、n−プロペニル、n−ブテニル、n−ペンテニル、n−ヘキセニル、n−ヘプテニル、n−オクテニル、n−ノネニル、n−デセニル、n−ウンデセニル、n−ドデセニル基等の直鎖状アルケニル基;イソプロペニル、イソブテニル、イソペンテニル、イソヘキセニル、イソヘプテニル、イソオクテニル、イソノニル、イソデセニル、イソウンデシル基等の分岐状アルケニル基;フェニル、トリル、キシリル基等のアリール基;ベンジル、メチルベンジル、フェネチル、メチルフェネチル、フェニルベンジル基等のアラルキル基等が挙げられる。
これらの中でも、原料調達の観点から、メチル基、エチル基等の炭素数1〜3の直鎖状アルキル基;ビニル基、n−プロペニル基等の炭素数2または3の直鎖状アルケニル基;フェニル基等の炭素数6〜8のアリール基が好ましい。
なお、上記1価炭化水素基も、その水素原子の一部または全部がその他の置換基で置換されていてもよい。その他の置換基の具体例としては、R1およびR4と同様の置換基が挙げられる。
【0017】
上記一般式(1)で表される本発明のカーボネート基含有シラン化合物は、難燃性元素としてケイ素が導入されているため、塩素やフッ素等のハロゲン原子が導入されたカーボネート基含有シラン化合物と比べて、燃焼時に発生する有害ガスが少ないという特徴を持つ。
【0018】
上記一般式(1)で示される化合物の具体例としては、メチル[ジメチル(トリメチルシリルメチル)シリル]メチルカーボネート、エチル[ジメチル(トリメチルシリルメチル)シリル]メチルカーボネート、メチル[3−[ジメチル(トリメチルシリルメチル)シリル]プロピル]カーボネート、エチル[3−[ジメチル(トリメチルシリルメチル)シリル]プロピル]カーボネート、メチル[ジメチル[2−(トリメチルシリル)エチル]シリル]メチルカーボネート、エチル[ジメチル[2−(トリメチルシリル)エチル]シリル]メチルカーボネート、メチル[3−[ジメチル[2−(トリメチルシリル)エチル]シリル]プロピル]カーボネート、エチル[3−[ジメチル[2−(トリメチルシリル)エチル]シリル]プロピル]カーボネート、メチル[ジメチル[3−(トリメチルシリル)プロピル]シリル]メチルカーボネート、エチル[ジメチル[3−(トリメチルシリル)プロピル]シリル]メチルカーボネート、メチル[3−[ジメチル[3−(トリメチルシリル)プロピル]シリル]プロピル]カーボネート、エチル[3−[ジメチル[3−(トリメチルシリル)プロピル]シリル]プロピル]カーボネート、メチル[ジメチル(ジメチルビニルシリルメチル)シリル]メチルカーボネート、エチル[ジメチル(ジメチルビニルシリルメチル)シリル]メチルカーボネート、メチル[3−[ジメチル(ジメチルビニルシリルメチル)シリル]プロピル]カーボネート、エチル[3−[ジメチル(ジメチルビニルシリルメチル)シリル]プロピル]カーボネート、メチル[ジメチル[2−(ジメチルビニルシリル)エチル]シリル]メチルカーボネート、エチル[ジメチル[2−(ジメチルビニルシリル)エチル]シリル]メチルカーボネート、メチル[3−[ジメチル[2−(ジメチルビニルシリル)エチル]シリル]プロピル]カーボネート、エチル[3−[ジメチル[2−(ジメチルビニルシリル)エチル]シリル]プロピル]カーボネート、メチル[ジメチル[3−(ジメチルビニルシリル)プロピル]シリル]メチルカーボネート、エチル[ジメチル[3−(ジメチルビニルシリル)プロピル]シリル]メチルカーボネート、メチル[3−[ジメチル[3−(ジメチルビニルシリル)プロピル]シリル]プロピル]カーボネート、エチル[3−[ジメチル[3−(ジメチルビニルシリル)プロピル]シリル]プロピル]カーボネート、メチル[ジメチル(トリビニルシリルメチル)シリル]メチルカーボネート、エチル[ジメチル(トリビニルシリルメチル)シリル]メチルカーボネート、メチル[3−[ジメチル(トリビニルシリルメチル)シリル]プロピル]カーボネート、エチル[3−[ジメチル(トリビニルシリルメチル)シリル]プロピル]カーボネート、メチル[ジメチル[2−(トリビニルシリル)エチル]シリル]メチルカーボネート、エチル[ジメチル[2−(トリビニルシリル)エチル]シリル]メチルカーボネート、メチル[3−[ジメチル[2−(トリビニルシリル)エチル]シリル]プロピル]カーボネート、エチル[3−[ジメチル[2−(トリビニルシリル)エチル]シリル]プロピル]カーボネート、メチル[ジメチル[3−(トリビニルシリル)プロピル]シリル]メチルカーボネート、エチル[ジメチル[3−(トリビニルシリル)プロピル]シリル]メチルカーボネート、メチル[3−[ジメチル[3−(トリビニルシリル)プロピル]シリル]プロピル]カーボネート、エチル[3−[ジメチル[3−(トリビニルシリル)プロピル]シリル]プロピル]カーボネート、メチル[ジメチル[ジメチル(トリメチルシリルメチル)シリルメチル]シリル]メチルカーボネート、エチル[ジメチル[ジメチル(トリメチルシリルメチル)シリルメチル]シリル]メチルカーボネート、メチル[3−[ジメチル[ジメチル(トリメチルシリルメチル)シリルメチル]シリル]プロピル]カーボネート、エチル[3−[ジメチル[ジメチル(トリメチルシリルメチル)シリルメチル]シリル]プロピル]カーボネート、メチル[ジメチル[2−[ジメチル[2−(トリメチルシリル)エチル]シリル]エチル]シリル]メチルカーボネート、エチル[ジメチル[2−[ジメチル[2−(トリメチルシリル)エチル]シリル]エチル]シリル]メチルカーボネート、メチル[3−[ジメチル[2−[ジメチル[2−(トリメチルシリル)エチル]シリル]エチル]シリル]プロピル]カーボネート、エチル[3−[ジメチル[2−[ジメチル[2−(トリメチルシリル)エチル]シリル]エチル]シリル]プロピル]カーボネート、メチル[ジメチル[ジメチル(ジメチルビニルシリルメチル)シリルメチル]シリル]メチルカーボネート、エチル[ジメチル[ジメチル(ジメチルビニルシリルメチル)シリルメチル]シリル]メチルカーボネート、メチル[3−[ジメチル[ジメチル(ジメチルビニルシリルメチル)シリルメチル]シリル]プロピル]カーボネート、エチル[3−[ジメチル[ジメチル(ジメチルビニルシリルメチル)シリルメチル]シリル]プロピル]カーボネート、メチル[ジメチル[2−[ジメチル[2−(ジメチルビニルシリル)エチル]シリル]エチル]シリル]メチルカーボネート、エチル[ジメチル[2−[ジメチル[2−(ジメチルビニルシリル)エチル]シリル]エチル]シリル]メチルカーボネート、メチル[3−[ジメチル[2−[ジメチル[2−(ジメチルビニルシリル)エチル]シリル]エチル]シリル]プロピル]カーボネート、エチル[3−[ジメチル[2−[ジメチル[2−(ジメチルビニルシリル)エチル]シリル]エチル]シリル]プロピル]カーボネート、メチル[ジメチル[ジメチル(トリビニルシリルメチル)シリルメチル]シリル]メチルカーボネート、エチル[ジメチル[ジメチル(トリビニルシリルメチル)シリルメチル]シリル]メチルカーボネート、メチル[3−[ジメチル[ジメチル(トリビニルシリルメチル)シリルメチル]シリル]プロピル]カーボネート、エチル[3−[ジメチル[ジメチル(トリビニルシリルメチル)シリルメチル]シリル]プロピル]カーボネート、メチル[ジメチル[2−[ジメチル[2−(トリビニルシリル)エチル]シリル]エチル]シリル]メチルカーボネート、エチル[ジメチル[2−[ジメチル[2−(トリビニルシリル)エチル]シリル]エチル]シリル]メチルカーボネート、メチル[3−[ジメチル[2−[ジメチル[2−(トリビニルシリル)エチル]シリル]エチル]シリル]プロピル]カーボネート、エチル[3−[ジメチル[2−[ジメチル[2−(トリビニルシリル)エチル]シリル]エチル]シリル]プロピル]カーボネート等が挙げられる。
【0019】
上記一般式(1)で表されるカーボネート基含有シラン化合物は、下記スキームに示されるように、一般式(2)で示されるシリルアルコール化合物と、一般式(3)で示されるハロゲン化ギ酸エステルとを、塩基存在下で縮合させて製造することができる。
【0020】
【化5】
(式中、R1〜R8、Xおよびnは、上記と同じ意味を表す。)
【0021】
上記一般式(2)で示されるシリルアルコール化合物の具体例としては、ジメチル(トリメチルシリルメチル)シリルメタノール、3−[ジメチル(トリメチルシリルメチル)シリル]プロパノール、ジメチル[2−(トリメチルシリル)エチル]シリルメタノール、3−[ジメチル[2−(トリメチルシリル)エチル]シリル]プロパノール、ジメチル[3−(トリメチルシリル)プロピル]シリルメタノール、3−[ジメチル[3−(トリメチルシリル)プロピル]シリル]プロパノール、ジメチル(ジメチルビニルシリルメチル)シリルメタノール、3−[ジメチル(ジメチルビニルシリルメチル)シリル]プロパノール、ジメチル[2−(ジメチルビニルシリル)エチル]シリルメタノール、3−[ジメチル[2−(ジメチルビニルシリル)エチル]シリル]プロパノール、ジメチル[3−(ジメチルビニルシリル)プロピル]シリルメタノール、3−[ジメチル[3−(ジメチルビニルシリル)プロピル]シリル]プロパノール、ジメチル(トリビニルシリルメチル)シリルメタノール、3−[ジメチル(トリビニルシリルメチル)シリル]プロパノール、ジメチル[2−(トリビニルシリル)エチル]シリルメタノール、3−[ジメチル[2−(トリビニルシリル)エチル]シリル]プロパノール、ジメチル[3−(トリビニルシリル)プロピル]シリルメタノール、3−[ジメチル[3−(トリビニルシリル)プロピル]シリル]プロパノール、ジメチル[ジメチル(トリメチルシリルメチル)シリルメチル]シリルメタノール、3−[ジメチル[3−(トリビニルシリル)プロピル]シリル]プロパノール、ジメチル[ジメチル(トリメチルシリルメチル)シリルメチル]シリルメタノール、3−[ジメチル[ジメチル(トリメチルシリルメチル)シリルメチル]シリル]プロパノール、ジメチル[2−[ジメチル[2−(トリメチルシリル)エチル]シリル]エチル]シリルメタノール、3−[ジメチル[2−[ジメチル[2−(トリメチルシリル)エチル]シリル]エチル]シリル]プロパノール、ジメチル[ジメチル(ジメチルビニルシリルメチル)シリルメチル]シリルメタノール、3−[ジメチル[ジメチル(ジメチルビニルシリルメチル)シリルメチル]シリル]プロパノール、ジメチル[2−[ジメチル[2−(ジメチルビニルシリル)エチル]シリル]エチル]シリルメタノール、3−[ジメチル[2−[ジメチル[2−(ジメチルビニルシリル)エチル]シリル]エチル]シリル]プロパノール、ジメチル[ジメチル(トリビニルシリルメチル)シリルメチル]シリルメタノール、3−[ジメチル[ジメチル(トリビニルシリルメチル)シリルメチル]シリル]プロパノール、ジメチル[2−[ジメチル[2−(トリビニルシリル)エチル]シリル]エチル]シリルメタノール、3−[ジメチル[2−[ジメチル[2−(トリビニルシリル)エチル]シリル]エチル]シリルプロパノール等が挙げられる。
【0022】
上記一般式(3)で示されるハロゲン化ギ酸エステルの具体例としては、クロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸プロピル、クロロギ酸ブチル、クロロギ酸ペンチル、クロロギ酸ヘキシル、クロロギ酸ヘプチル、クロロギ酸オクチル、クロロギ酸ノニル、クロロギ酸デシル、クロロギ酸イソプロピル、クロロギ酸イソブチル、クロロギ酸sec−ブチル、クロロギ酸tert−ブチル、クロロギ酸シクロペンチル、クロロギ酸シクロヘキシル、クロロギ酸ビニル、クロロギ酸プロペニル、クロロギ酸ブテニル、クロロギ酸イソプロペニル、クロロギ酸イソブテニル、クロロギ酸フェニル、クロロギ酸ベンジル、ブロモギ酸メチル、ブロモギ酸エチル、ブロモギ酸プロピル、ブロモギ酸ブチル、ブロモギ酸ペンチル、ブロモギ酸ヘキシル、ブロモギ酸ヘプチル、ブロモギ酸オクチル、ブロモギ酸ノニル、ブロモギ酸デシル、ブロモギ酸イソプロピル、ブロモギ酸イソブチル、ブロモギ酸sec−ブチル、ブロモギ酸tert−ブチル、ブロモギ酸シクロペンチル、ブロモギ酸シクロヘキシル、ブロモギ酸ビニル、ブロモギ酸プロペニル、ブロモギ酸ブテニル、ブロモギ酸イソプロペニル、ブロモギ酸イソブテニル、ブロモギ酸フェニル、ブロモギ酸ベンジル等が挙げられる。
【0023】
上記一般式(2)で示されるシリルアルコール化合物と上記一般式(3)で示されるハロゲン化ギ酸エステルのモル比は、特に制限はないものの、経済的な観点から、好ましくは、シリルアルコール化合物:ハロゲン化ギ酸エステル=0.1:1〜1:10、より好ましくは0.5:1〜1:5である。
【0024】
また、副生する塩酸を捕捉するため用いられる塩基の具体例は、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、ビピリジン等の複素環式アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリフェニルアミン、1,4−ジアザビシクロオクタン、1,5−ジアザビシクロノネン、1,8−ジアザビシクロウンデセン等の三級アミン等が挙げられる。
【0025】
塩基の使用量は、特に制限はないものの、ハロゲン化ギ酸エステル1モルに対して、好ましくは1.0〜5.0モル、より好ましくは1.1〜2.0モルである。
【0026】
上記縮合反応時の圧力に制限はないが、常圧で行うことが好ましい。反応雰囲気は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
また、上記縮合反応において、反応温度は特に限定されないが、好ましくは0〜200℃、より好ましくは0〜100℃であり、反応時間も特に限定されないが、好ましくは1〜40時間、より好ましくは1〜20時間である。
【0027】
なお、上記縮合反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。使用可能な溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で用いても、2種以上を混合してもよい。
【0028】
反応終了後は、純水を用いた分液または濾過等の後処理を行って副生した塩酸塩を除去することが好ましい。分液操作において、純水の使用量は特に限定されないが、塩酸塩1モルに対して、好ましくは100〜300g、より好ましくは100〜150gである。
【0029】
本発明の製造方法によって得られるカーボネート基含有シラン化合物は、後処理後の粗生成物をそのまま用いてもよいが、その目的品質に応じて、蒸留、濾過、洗浄、カラム分離、固体吸着剤等の各種の精製法によってさらに精製して使用してもよい。高純度にするためには、蒸留による精製が特に好ましい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0031】
[実施例1]メチル[ジメチル[2−(ジメチルビニルシリル)エチル]シリル]メチルカーボネートの合成
撹拌機、還流器、滴下ロートおよび温度計を備えたフラスコに、ジメチル[2−(ジメチルビニルシリル)エチル]シリルメタノール30.4g(0.15mol)、ピリジン14.2g(0.18mol)、トルエン30mLを仕込み、0℃に冷却した。その中へ、クロロギ酸メチル15.6g(0.17mol)を1時間かけて滴下した後、室温まで昇温して更に2時間撹拌した。純水15mLを加え、有機層を分液、蒸留し、沸点113℃/0.8kPaの留分を32.2g得た。
得られた留分の質量スペクトル、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム)、IRスペクトルを測定した。質量スペクトルの結果を下記に示す。また、1H−NMRスペクトルのチャートを図1に、IRスペクトルのチャートを図2に示す。
質量スペクトル
m/z 245,231,147,89,75,59
以上の結果より、得られた化合物はメチル[ジメチル[2−(ジメチルビニルシリル)エチル]シリル]メチルカーボネートであることが確認された。
【0032】
[実施例2]エチル[ジメチル[2−(ジメチルビニルシリル)エチル]シリル]メチルカーボネートの合成
撹拌機、還流器、滴下ロートおよび温度計を備えたフラスコに、ジメチル[2−(ジメチルビニルシリル)エチル]シリルメタノール30.4g(0.15mol)、ピリジン14.2g(0.18mol)、トルエン30mLを仕込み、0℃に冷却した。その中へ、クロロギ酸エチル17.9g(0.17mol)を1時間かけて滴下した後、室温まで昇温して更に2時間撹拌した。純水15mLを加え、有機層を分液、蒸留し、沸点114℃/0.6kPaの留分を26.8g得た。
得られた留分の質量スペクトル、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム)、IRスペクトルを測定した。質量スペクトルの結果を下記に示す。また、1H−NMRスペクトルのチャートを図3に、IRスペクトルのチャートを図4に示す。
質量スペクトル
m/z 259,161,133,85,59
以上の結果より、得られた化合物はエチル[ジメチル[2−(ジメチルビニルシリル)エチル]シリル]メチルカーボネートであることが確認された。
【0033】
[実施例3]メチル[ジメチル[(ジメチルビニルシリル)メチル]シリル]メチルカーボネートの合成
撹拌機、還流器、滴下ロートおよび温度計を備えたフラスコに、ジメチル(ジメチルビニルシリルメチル)シリルメタノール22.6g(0.12mol)、ピリジン11.4g(0.15mol)、トルエン24mLを仕込み、0℃に冷却した。その中へ、クロロギ酸メチル12.5g(0.13mol)を1時間かけて滴下した後、室温まで昇温して更に2時間撹拌した。純水12mLを加え、有機層を分液、蒸留し、沸点102℃/0.8kPaの留分を18.4g得た。
得られた留分の質量スペクトル、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム)、IRスペクトルを測定した。質量スペクトルの結果を下記に示す。また、1H−NMRスペクトルのチャートを図5に、IRスペクトルのチャートを図6に示す。
質量スペクトル
m/z 245,187,157,117,73,59
以上の結果より、得られた化合物はメチル[ジメチル[(ジメチルビニルシリル)メチル]シリル]メチルカーボネートであることが確認された。
【0034】
[実施例4]エチル[ジメチル[(ジメチルビニルシリル)メチル]シリル]メチルカーボネートの合成
撹拌機、還流器、滴下ロートおよび温度計を備えたフラスコに、ジメチル(ジメチルビニルシリルメチル)シリルメタノール18.8g(0.10mol)、ピリジン9.5g(0.12mol)、トルエン20mLを仕込み、0℃に冷却した。その中へ、クロロギ酸エチル12.0g(0.11mol)を1時間かけて滴下した後、室温まで昇温して更に2時間撹拌した。純水10mLを加え、有機層を分液、蒸留し、沸点112℃/0.8kPaの留分を19.0g得た。
得られた留分の質量スペクトル、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム)、IRスペクトルを測定した。質量スペクトルの結果を下記に示す。また、1H−NMRスペクトルのチャートを図7に、IRスペクトルのチャートを図8に示す。
質量スペクトル
m/z 259,245,217,157,129,115,73,59
以上の結果より、得られた化合物はエチル[ジメチル[(ジメチルビニルシリル)メチル]シリル]メチルカーボネートであることが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8