特開2019-206615(P2019-206615A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2019-206615金属ペーストおよび端面形成用電極ペースト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-206615(P2019-206615A)
(43)【公開日】2019年12月5日
(54)【発明の名称】金属ペーストおよび端面形成用電極ペースト
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20191108BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20191108BHJP
   C08K 5/3445 20060101ALI20191108BHJP
   C08L 61/06 20060101ALI20191108BHJP
   C08K 7/18 20060101ALI20191108BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20191108BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20191108BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20191108BHJP
【FI】
   C08L63/00 C
   C08K3/08
   C08K5/3445
   C08L61/06
   C08K7/18
   C08K7/00
   H01B1/22 A
   H01B1/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-101475(P2018-101475)
(22)【出願日】2018年5月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】石山 直希
(72)【発明者】
【氏名】向井 哲也
【テーマコード(参考)】
4J002
5G301
【Fターム(参考)】
4J002CC03X
4J002CC05X
4J002CD05W
4J002DA076
4J002DA086
4J002DC006
4J002EJ017
4J002EL137
4J002EN007
4J002ET017
4J002EU118
4J002FA016
4J002FA086
4J002FB076
4J002FD14X
4J002FD158
4J002GQ00
5G301DA02
5G301DA03
5G301DA57
5G301DD01
5G301DE01
(57)【要約】
【課題】 導電性樹脂端面ペーストに金属ペーストを用いた場合、端面塗布工程において、長時間の塗布作業が可能な程度に粘度変化が小さく、更には2回の仮硬化工程を経る導電性樹脂硬化工程下においても、端面電極に要求される十分な強度と電気導電性を有する導電性樹脂端面ペーストに最適な金属ペーストを提供する。
【解決手段】 金属粉末とエポキシ樹脂と硬化剤と硬化促進剤を含む金属ペーストで、前記エポキシ樹脂が、前記エポキシ樹脂の構造式における末端部にエポキシ基が導入されている2官能エポキシ樹脂であり、前記硬化促進剤の融点が、180℃以上であることを特徴とする金属ペースト。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末とエポキシ樹脂と硬化剤と硬化促進剤を含む金属ペーストで、
前記エポキシ樹脂が、前記エポキシ樹脂の構造式における末端部にエポキシ基が導入されている2官能エポキシ樹脂であり、
前記硬化促進剤の融点が、180℃以上であることを特徴とする金属ペースト。
【請求項2】
前記硬化促進剤が、イミダゾールであることを特徴とする請求項1に記載の金属ペースト。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が、100〜500[g/eq]であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属ペースト。
【請求項4】
前記硬化剤が、フェノール樹脂であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の金属ペースト。
【請求項5】
前記金属粉末が銀粉末であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の金属ペースト。
【請求項6】
前記銀粉末が、球状の銀粉末とフレーク状の銀粉末の混合粉末であることを特徴とする請求項5に記載の金属ペースト。
【請求項7】
チップ電子部品の端面形成用電極ペーストが、請求項1から6のいずれか1項に記載の金属ペーストであることを特徴とする端面形成用電極ペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性樹脂ペーストに関し、特に、抵抗体、コンデンサ、インダクタなどのチップ部品の端面電極の形成に使用するための導電性樹脂ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のチップ部品は、端面電極に、Ag、Cu、Ni等のペースト焼成膜が形成されている。その焼成膜の表面にNiめっき、Snめっきを施して端面電極が完成する。このチップ部品は、基板にはんだ付けすることにより基板に実装される。しかしながら、その実装基板の使用環境が、熱ストレスや振動などの、熱膨張、機械的ストレスがかかりやすい環境に晒されている場合、はんだ付けされた基板とチップ部品本体やその端面電極の接合部分にクラックが生じ破壊されることがある。
【0003】
このクラックを防止するために、Ag、Cu、Ni等のペースト焼成膜から形成された端面電極の外側に、熱硬化性の導電性樹脂ペーストによる電極層を形成し、その外側にNiめっき、Snめっきを施すことにより、端面電極への応力が緩和され、クラックの発生が抑制できることが知られている。
その熱硬化性の樹脂としては、主にエポキシ樹脂が用いられている。
【0004】
ところで、チップ部品に上記のような端面電極の構造を形成するためには、以下の方法が用いられる。ここでは積層セラミックコンデンサ(MLCC)の端面電極を例として説明する。
セラミック層と内部電極層を備えた積層セラミック焼結体素子を用意する。この素子の両端面にAg、Cu、Ni等の金属ペーストを塗布し、700℃〜1300℃の温度で焼成し、内部電極層と端面電極を焼結によって物理的に接合させた端面下地電極層を形成する。この端面下地電極層の上に応力緩和を目的とし、熱硬化性の導電性樹脂ペーストを形成する。
【0005】
一般に、ペースト浸漬端面塗布機としては通称“パロマ方式”が用いられる。まず、前述のコンデンサ素子の一方の下地端面電極が形成された一方端面を、600μmの膜厚で定盤上に展開した導電性樹脂ペーストに浸漬し、下地端面電極が形成された一方端面に導電性樹脂ペーストを塗布する。チップ素子はキャリアプレートに設けられた貫通孔に装着され、定盤上にドクターブレードで展開されたペースト塗膜に、一方の素子端面を挿入して浸漬し、下地端面電極が形成された一方端面に導電性樹脂ペーストを塗布する。
【0006】
これをオーブンで150℃、10〜30minの条件で加熱し、仮硬化した樹脂端面電極を形成する。次に、仮硬化した樹脂端面電極面から、素子の端面部をピンで押し込み、キャリアプレートの反対面に素子を露出させる。露出させたコンデンサ素子の他方端面に対しても同様の方法でペーストを浸漬塗布し、再度オーブンで150℃、10〜30minの条件で加熱し、両端に仮硬化した樹脂端面電極が形成されたセラミック素子を得る。
キャリアプレートから再度ピンで押し込み、両端に仮硬化した樹脂端面電極が形成されたセラミック素子を回収する。この素子をオーブンで200℃、60min加熱し、樹脂端面を硬化して下地電極上に樹脂端面電極が形成されたセラミック素子を得る。
【0007】
特許文献1には、平均粒径1μm〜6μmのゴム粒子を添加して応力緩和を改善した外部電極用導電性ペーストの技術が開示されている。
このような導電性樹脂端面ペーストの形成工程において、以下の課題があった。
先ず、ペーストを定盤上にブレードで展開し塗膜を形成させる工程で、室温下でブレードとスキージによるペーストの塗膜展開と回収を長時間繰り返していくと、樹脂ペーストの粘度が次第に上昇し、正常な塗布形状が得られなくなっていく。これは、一液型の組成である導電性樹脂ペーストは、室温下では時間とともに樹脂の重合が少しずつ進行していくためである。長時間の塗布作業においては、室温下でのポットライフが長いペーストが望まれている。
【0008】
又、端面電極の仮硬化形成において、前述の通り、樹脂ペーストには150℃で2回の熱履歴が与えられる。本硬化熱処理にて200℃硬化で端面樹脂を下地電極と接合させるのだが、この時、組成においては強度や導電性が十分に得られない問題がある。
これは、2回の仮硬化における熱履歴によって、組成に配合する反応促進剤の機能が消失するためと考えられ、硬化促進作用が機能しなくなることが原因として考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015−111576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
導電性樹脂端面ペーストに金属ペーストを用いた場合、端面塗布工程において、長時間の塗布作業が可能な程度に粘度変化が小さく、更には2回の仮硬化工程を経る導電性樹脂硬化工程下においても、端面電極に要求される十分な強度と電気導電性を有する導電性樹脂端面ペーストに最適な金属ペーストを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の発明は金属粉末とエポキシ樹脂と硬化剤と硬化促進剤を含む金属ペーストで、前記エポキシ樹脂が、前記エポキシ樹脂の構造式における末端部にエポキシ基が導入されている2官能エポキシ樹脂であり、前記硬化促進剤の融点が、180℃以上であることを特徴とする金属ペーストである。
【0012】
本発明の第2の発明は、第1の発明における硬化促進剤が、イミダゾールであることを特徴とする金属ペーストである。
【0013】
本発明の第3の発明は、第1及び第2の発明におけるエポキシ樹脂のエポキシ当量が、100〜500[g/eq]であることを特徴とする金属ペーストである。
【0014】
本発明の第4の発明は、第1から第3の発明における硬化剤が、フェノール樹脂であることを特徴とする金属ペーストである。
【0015】
本発明の第5の発明は、第1から第4の発明における金属粉末が、銀粉末であることを特徴とする金属ペーストである。
【0016】
本発明の第6の発明は、第5の発明における銀粉末が、球状の銀粉末とフレーク状の銀粉末の混合粉末であることを特徴とする金属ペーストである。
【0017】
本発明の第7の発明は、チップ電子部品の端面形成用電極ペーストが、第1から第6の発明における金属ペーストであることを特徴とする端面形成用電極ペーストである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る金属ペーストは、チップ部品の端面形成用電極ペーストに用いる導電性樹脂端面ペーストとして最適なペーストであり、チップ部品の端面塗布工程においては、長時間の塗布作業が可能な程度に粘度変化が小さく、更には2回の仮硬化工程を経る導電性樹脂硬化工程下においても、端面電極に要求される十分な強度と電気導電性を有している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、金属粉末とエポキシ樹脂と硬化剤と硬化促進剤を含む金属ペーストで、使用するエポキシ樹脂が、エポキシ樹脂の構造式における末端部にエポキシ基が導入されている2官能エポキシ樹脂であり、硬化促進剤の融点が180℃以上であることを特徴とする金属ペーストである。
【0020】
以下、本発明に係る金属ペーストの個々の構成要素を説明する。
1)金属粉末
金属粉末は、球状金属粉末やフレーク状金属粉末を使用することができる。
球状金属粉末の平均粒径は、0.1μmから5μmの範囲のものを使用できる。他方、フレーク状金属粉末は鱗片径にて1μmから15μmの粉末を使用できる。
球状金属粉末の平均粒径が5μmを超えると金属ペーストの硬化膜中の金属粒子ごとの接触が阻害されて硬化膜の導電性が悪化することがある。一方、球状金属粉末の平均粒径が0.1μm未満では、金属ペーストの流動性が悪化し、金属ペーストの塗布面の平坦性が悪化することがある。
【0021】
フレーク状金属粉末の鱗片径が1μm未満では、金属ペーストの硬化膜の導電性が悪化することがある。その鱗片径が15μmを超えると金属ペーストの硬化膜の平坦性が悪化することがある。
以上のような大きさの範囲であれば、金属粉末に特に限定はない。金属粉末の平均粒径や鱗片径は、走査型電子顕微鏡像(SEM像)により測定できる。
なお、球状金属粉末では、ステアリン酸をはじめとする有機酸で表面を被覆しても良く、金属ペーストの特性を考慮して、球状金属粉末の有機酸での被覆を適宜選択する。
【0022】
さらに、金属ペーストでは、球状金属粉末とフレーク状金属粉末を混合して用いることができる。球状金属粉末とフレーク状金属粉末を混合して用いる場合、金属粉末に占めるフレーク状金属粉末の割合を70質量%以下とすることが望ましい。金属粉末に占めるフレーク状金属粉末の割合の望ましい範囲は30質量%から70質量%である。すなわち、球状金属粉末/フレーク状金属粉末の表記で70/30〜30/70であることが望ましいのである。
金属粉末に占めるフレーク状金属粉末の割合が70質量%を超えると、金属ペーストの流動性が悪化し、金属ペーストの塗布面の平坦性が悪化する。一方、金属粉末に占めるフレーク状金属粉末の割合が30質量%未満の場合には、金属ペーストの硬化物の導電性が悪化することがある。
【0023】
用いる金属粉末の材質は、Ag粉、Ni粉、Cu粉、AgコートCu粉、AgコートNi粉、AgコートNiCuZn合金粉等の導電性粉末を単独または混合して使用できる。なお、樹脂硬化後の導電性を考慮するとAg粉が望ましい。また、貴金属コストの低減から、Agの各種コート粉や、Ni粉を単独、または混合して使用可能である。
【0024】
2)樹脂
本発明に係る金属ペーストは熱硬化性のペーストであり、エポキシ樹脂と硬化剤と硬化促進剤が含まれる。
ここで、エポキシ樹脂とは、金属ペーストに含まれる未硬化のエポキシ樹脂を指し、硬化物についてエポキシ樹脂硬化物又は、単に硬化物という。
エポキシ樹脂と硬化剤の選択により、金属ペースト硬化物の特性が影響を受ける。即ち本発明に係る金属ペーストは、硬化物の樹脂端面電極の表面にNiめっきやSnめっきを湿式めっき法で形成する。その湿式めっきを施す為に、硬化物には耐薬品性が求められる。
【0025】
本発明の金属ペーストに用いることができるエポキシ樹脂は、二官能基型のエポキシ樹脂であり、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いることができる。このうち、硬化物のガラス転移点が高くなる傾向から、エポキシ樹脂の一部にビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることが望ましい。
このようなビスフェノールA型エポキシ樹脂には「jER825、jER827、jER828、jER834(三菱ケミカル株式会社製)」、「EPICLON840、EPICLON850、EPICLON860、EPICLON1050、EPICLON1055(DIC株式会社製)」が挙げられる。
また、ビスフェノールAと炭化水素骨格、エーテル骨格、グリコール骨格を備えた変性エポキシ樹脂も用いることができる。
このような変性エポキシ樹脂には、「EPICLON EXA−4816、EPICLON EXA−4850、EPICLON TSR−960、EPICLON TSR−601」(DIC株式会社製)等が挙げられる。
このようなビスフェノールA型エポキシ樹脂と、その他の構造を持つエポキシ樹脂を混合して用いてもよい。
【0026】
本発明で用いるエポキシ樹脂は、エポキシ当量が100〜500[g/eq]であることが望ましく、エポキシ当量100〜450[g/eq]がより望ましい。ここで、エポキシ当量とは、エポキシ樹脂の分子量を1つのエポキシ樹脂分子に含まれるエポキシ基の数で割った値である。
エポキシ当量が500[g/eq]以下の場合、エポキシ樹脂の分子量が小さくなり、金属ペーストの流動性から望ましい。また、エポキシ当量が500[g/eq]を超えると、エポキシ樹脂硬化物の架橋は少なくなり、エポキシ樹脂の耐熱性が下がる問題が生じる。しかし、エポキシ当量が500[g/eq]以下では、反応するエポキシ基が多く含まれるため、硬化反応(エポキシ基の架橋反応)が多く行われることとなる。エポキシ基の架橋反応が不十分だとエポキシ樹脂硬化物は十分な特性を発揮せず、結果として金属ペーストの硬化物は、十分な硬化特性を発揮しない。
【0027】
さらに、硬化剤は、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性や化学的耐性にも影響する。
また、金属ペーストを均一の厚みで、且つ平滑に塗布する為には、硬化剤や硬化促進剤の選択が重要になる。硬化剤は、金属ペーストの保存性や作業性にも影響し、保存時や金属ペーストの塗布時には、硬化反応が発生しないことが求められる。
このような硬化を求められるエポキシ樹脂と硬化剤の反応は、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応してエポキシ樹脂の分子間に架橋して硬化する。エポキシ硬化剤としては、アミン化合物、尿素化合物、フェノール化合物、ピロメリット酸無水物、トリメリット酸無水物等の多塩基酸無水物が知られている。
【0028】
本発明に係る金属ペーストでは、硬化剤は、硬化物の湿式めっき液への耐性や、耐湿性、接着性の為、フェノール樹脂が望ましく、ノボラック型フェノール樹脂がさらに望ましい。硬化剤にノボラック型フェノール樹脂を用いると、エポキシ樹脂硬化物の架橋密度が高まり、耐熱性、耐湿性、耐薬品性が向上する。
【0029】
エポキシ樹脂と硬化剤の配合割合は、エポキシ樹脂のエポキシ当量に応じて、硬化剤の反応する官能基の当量を合わせることで配合できる。硬化剤にフェノール樹脂を用いる場合は、硬化剤の水酸基当量とエポキシ樹脂のエポキシ当量を対比して配合割合を定めることができる。なお、水酸基当量とは、フェノール樹脂の分子量を1つのフェノール樹脂に含まれる水酸基の数で割った値である。
なお、硬化剤が、粉末状などの固形の場合は、金属ペーストに添加できる溶剤に溶解して用いることができる。
【0030】
さらに、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の硬化反応を考察すると、その硬化反応は、加熱をしても進行しにくい点が知見される。そこで、反応を促進させる硬化促進剤の添加が必要になる。
この硬化促進剤は、融点180℃以上のイミダゾール系化合物を使用する。これらは性状が粉末であり、液状のイミダゾールように塗布作業時にペーストから蒸発することがないから、金属ペーストの硬化の過程でも硬化促進剤の機能が発揮される。
【0031】
このような、180℃以上の融点を備えたイミダゾール系化合物には、2,4−ジアミノ−6−[2‘−メチルイミダソリル−(1’)]エチル−s−トリアジン、2−4−ジアミノ−6−[2‘−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2−4−ジアミノ−6−[2‘−エチル4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾールを挙げることができる。
また、それらは樹脂硬化反応において150℃以上の温度で促進作用が機能する。これらイミダゾール系化合物は固形の粉末状であり、金属ペーストに添加するには、金属ペーストに使用される溶剤にイミダゾール系化合物を溶解して使用することができる。
【0032】
本発明に係る金属ペーストが使用されるチップ部品の端面電極の形成は、チップ部品の一方の端面に金属ペーストを塗布し、150℃で10分から30分で仮硬化させた後、他方の端面に金属ペーストを塗布し、同じ条件で仮硬化を行い、その後、200℃で硬化させるもので、本発明に係る金属ペーストに使用する硬化促進剤は、融点を180℃以上とすることで、150℃程度の仮硬化の温度では機能を残して緩やかに作用し、融点以上の200℃での硬化でエポキシ樹脂とフェノール硬化剤との架橋反応を十分に促進させることができる。
【0033】
硬化促進剤の配合割合は、エポキシ当量などを考慮して決めればよく、本発明に係る金属ペーストで用いられるエポキシ当量100〜500[g/eq]のエポキシ樹脂の場合は、エポキシ樹脂と硬化剤の合計の100重量部に対し、0.3重量部から5重量部の範囲で添加できる。硬化促進剤の添加量が0.3重量部未満の場合は、硬化反応が促進しない場合があり、硬化促進剤が5重量部を超える場合は、硬化物の形状が変形する場合がある。
【0034】
これらのエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤の選択により、金属ペーストの保存性や作業性を備えつつ、仮硬化を経ても十分に硬化し、金属ペーストの硬化物は、エポキシ樹脂硬化物のガラス転移点を高め、耐薬品性等を発揮することができる。
【0035】
本発明に係る金属ペーストは、金属粉末とエポキシ樹脂と硬化剤と硬化促進剤を混合することで製造できる。金属ペーストの各原料を混合して金属ペーストを得るには、公知のペーストの製造方法である3本ロールミルや自公転ミキサー等を用いることができる。
金属ペーストに含まれる金属粉末の含有量は、60質量%〜95質量%であり、金属ペーストの塗布性や、金属ペースト硬化物の密着性、電気特性から70質量%〜90質量%が望ましい。
【0036】
金属ペーストには、ペーストの粘性を調整するために、各種溶剤を添加することができる。その溶剤は、樹脂を十分に溶解し、かつ塗布作業性において沸点が200℃〜250℃程度の溶剤が望ましい。特に、モノテルペンアルコール類はペーストのチクソ比の上昇を抑制することができ、塗布形状の安定化に効果があり望ましい。特にターピネオールやジヒドロターピネオールが望ましい。
又、金属ペーストには、公知の消泡剤や分散剤を添加することもできる。さらに、密着性や分散性を改善するためにシランやチタンなどの各種カップリング剤の添加もできる。
【0037】
得られた金属ペーストは、チップ部品の端面に塗布し、硬化され樹脂端面電極を形成できる。チップ部品の両側にある一方の端面に、金属ペーストを塗布し、150℃×10分〜30分で仮硬化し、チップ部品の他方の端面に、金属ペーストを塗布し、150℃×10分〜30分で仮硬化し、その後、200℃で硬化させることで、樹脂端面電極を形成できる。また、樹脂端面電極の表面に化学めっきでNiめっきやSnめっきを施すこともできる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を用いて本発明を更に説明する。
表1に使用した金属粉末や有機組成等を記す。
(1)金属粉末
表1に示す銀粉末を金属粉末に用いた。球状銀粉末とフレーク状銀粉末を50/50の重量比で用いた。使用した球状銀粉末の平均粒径は、SEM像で測定したところ、0.2μmであった。一方のフレーク状銀粉末の鱗片径は、SEM像で測定したところ、10μmであった。また、フレーク状銀粉末の表面にはステアリン酸が表面処理して被覆されている。
【0039】
(2)有機組成
エポキシ樹脂には、エポキシ当量184[g/eq]のビスフェノールA型エポキシ樹脂とエポキシ当量403[g/eq]の長鎖炭化水素変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた。
硬化剤には水酸基当量として105のフェノールノボラック樹脂を用いた。このフェノール樹脂は固体であるため、固形分30wt%としてターピネオールに溶解してから用いた。エポキシ樹脂と硬化剤は、エポキシ当量と水酸基当量が等価になるように配合した。
硬化促進剤は、表1に示す化合物を用い、その添加量を変えて比較した。
【0040】
(3)ペースト作製
金属粉末を80質量%、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤を加え、3本ロールミルで混練することで金属ペーストを得た。エポキシ樹脂にはエポキシ当量184[g/eq]のビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた場合は、金属ペーストでのエポキシ樹脂の含有率を10質量%とした。エポキシ当量403[g/eq]の長鎖炭化水素変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いる場合は、金属ペーストでのエポキシ樹脂の含有率を14質量%とした。なお、硬化促進剤は、いずれの金属ペーストでも0.16質量%加えた。
【0041】
又、溶剤のターピネオールで適宜希釈調整し、下記に示す粘度計を用いた粘度測定により10rpm回転数での粘度が、20〜30Pa・sの範囲になるように調整した。
<粘度測定>
粘度は「ブルックフィールドHBT回転粘度計」を用いて測定した。
なお、10回転/分(10rpm)シェアレートが、4[s−1]となる条件で粘度を側定した。
【0042】
(4)端面塗布
端面塗布機MS−100(Produce社製)を用いた。作製したペーストを、チップサイズ2012M(JIS C5101−21−2006)のMLCCベアチップに、表2に示す条件で塗布した。
以下に、銅外部電極をMLCCに形成する手順を示す。
【0043】
・手順;
1.銅外電塗布:
ベアチップ一方端面に銅外部電極ペースト(TE−3025;住友金属鉱山株式会社製)を浸漬塗布し、オーブンで120℃×10minの条件で乾燥した。次にベアチップ他方端面に同様に浸漬塗布し120℃×10minの条件で乾燥させた。乾燥したものを窒素雰囲気のベルト焼成炉を用いて窒素雰囲気下での900℃×10min(in−out60min、BBO 300ppm)の条件で焼成を行い、銅下地電極層が設けられた下地電極形成チップを得た。
2.下地電極形成チップの容量測定;
キャパシタンスメータで作製したチップの「容量」、「tanδ測定(1kHz)」測定を行った。
<下地電極形成チップの容量測定>
キャパシタンスメータで容量、tanδ測定(1kHz)した。
3.金属ペースト塗布;
上記1で作製した銅下地電極層が形成されたチップの一方端面に、表1に示す導電性樹脂ペーストを、表2の塗布条件により浸漬塗布し、オーブンで150℃×30minの条件で乾燥した。次にチップ他方端面に同様に浸漬塗布し、150℃×30minで乾燥した後、キャリアプレートからチップを外し、Al基板に載せて200℃×60minの条件で硬化させ、銅下地上に導電性樹脂端面を形成したチップ(MLCC素子)を作製した。
【0044】
[特性評価]
<ポットライフ(粘度の経時変化測定)>
25℃の恒温槽にペーストを保持し、粘度の経時変化を確認した。
25℃の恒温槽に保管し、72hr後に粘度値が2倍を超えたものを「×」とし、その他は「○」で示し、評価した。
【0045】
<体積抵抗値>
アルミナ基板に巾0.6mm、長さ600mmの電極パターンを印刷した。
この試験基板を150℃に保持したオーブンに投入し、30min乾燥した。乾燥後、基板を取り出し、一旦室温に戻した。
次に、この基板を200℃に保持したオーブンに投入し、60min間保持の熱処理し、硬化させて導電ペースト硬化膜を作製した。
得られた導電ペースト硬化膜の電極パターンにおける抵抗値を、デジタルマルチメーターを用いて測定した。
サーフコム表面粗さ計(東京精密株式会社製)を用いて膜厚を求め、この膜厚より体積抵抗値(単位:Ωcm)を求めた。
体積抵抗値が、1.0×10−3Ωcm以上のものを、導電性「×」と評価した。
【0046】
<容量、tanδ測定>
上記「手順」に示す方法で作製した銅下地上に導電性樹脂端面を形成したMLCC素子について、キャパシタンスメータ(Hewlett−Packard 4278A)を用いて容量及びtanδを測定した。
測定周波数は1kHzで行った。
MLCC素子は、ペースト組成に対して30個を測定し、その平均値とした。
MLCC素子の設計容量値1μFに対して、平均値で容量が90%よりも低いものを「×」とした。tanδは、銅下地電極のみで測定されたtanδの値の1.5倍以上となったものを「×」とした。
以上の評価結果を表1に併せて示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】