特開2019-206742(P2019-206742A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-206742(P2019-206742A)
(43)【公開日】2019年12月5日
(54)【発明の名称】希土類遷移金属合金粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/20 20060101AFI20191108BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20191108BHJP
   C22C 19/07 20060101ALN20191108BHJP
   C22C 19/03 20060101ALN20191108BHJP
【FI】
   B22F9/20 D
   B22F9/20 F
   C22C38/00 303D
   C22C19/07 E
   C22C19/03 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-103404(P2018-103404)
(22)【出願日】2018年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100185018
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 亜矢
(72)【発明者】
【氏名】杉本 諭
(72)【発明者】
【氏名】松浦 昌志
(72)【発明者】
【氏名】石川 尚
(72)【発明者】
【氏名】米山 幸伸
【テーマコード(参考)】
4K017
【Fターム(参考)】
4K017AA04
4K017BA03
4K017BA06
4K017BB04
4K017BB05
4K017BB07
4K017BB12
4K017BB13
4K017BB18
4K017CA07
4K017DA04
4K017DA05
4K017DA09
4K017EH01
4K017EH18
4K017FB08
4K017FB10
(57)【要約】
【課題】湿式処理の際に合金表面の酸化劣化を抑えることができる希土類遷移金属合金粉末の製造方法を提供する。
【解決手段】希土類酸化物粉末と遷移金属粉末を含む原料物質に、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びこれらの水素化物から選ばれる少なくとも1種の還元剤を所定の割合で混合する第1の工程と、この混合物を不活性ガス雰囲気中で加熱し還元拡散する第2の工程と、得られた反応生成物を洗浄液中に投入して崩壊させる湿式処理を行い、反応生成物から還元剤を低減させた後、洗浄液の合金スラリーに酸と洗浄液を添加する酸洗浄を行い、その後、洗浄液を投入し酸を除去する第3の工程を含む、希土類遷移金属合金粉末の製造方法であって、洗浄液として、水/(グリコール+水)で規定される水含有率が0〜50質量%のグリコールを用いることを特徴とする希土類遷移金属合金粉末の製造方法などを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類酸化物粉末と遷移金属粉末を含む原料物質に、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びこれらの水素化物から選ばれる少なくとも1種の還元剤を所定の割合で混合する第1の工程と、この混合物を不活性ガス雰囲気中で加熱し還元拡散する第2の工程と、得られた反応生成物を洗浄液中に投入して崩壊させる湿式処理を行い、反応生成物から還元剤を低減させた後、洗浄液の合金スラリーに酸と洗浄液を添加する酸洗浄を行い、その後、洗浄液を投入し酸を除去する第3の工程を含む、希土類遷移金属合金粉末の製造方法であって、
洗浄液は、水/(グリコール+水)で規定される水含有率が0〜50質量%のグリコールであることを特徴とする希土類遷移金属合金粉末の製造方法。
【請求項2】
前記希土類酸化物粉末は、Y、La、Ce、Pr、Nd,Sm、Eu、Gd、Tb,Dy、Ho、及びYbから選ばれる1種以上の希土類元素を含有することを特徴とする請求項1に記載の希土類遷移金属合金粉末の製造方法。
【請求項3】
前記遷移金属粉末は、Fe、Co、Ni、Cu、Cr、及びMnから選ばれる1種以上の遷移元素を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の希土類遷移金属合金粉末の製造方法。
【請求項4】
前記洗浄液は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、及びトリプロピレングリコールから選ばれる1種以上のアルキレングリコールと水を含む液であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の希土類遷移金属合金粉末の製造方法。
【請求項5】
前記酸は、塩酸、酢酸、硝酸、及び硫酸から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の希土類遷移金属合金粉末の製造方法。
【請求項6】
前記第3の工程で得られた希土類遷移金属合金粉末が、さらに窒素及び/又はアンモニア含有雰囲気で加熱され窒化されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の希土類遷移金属合金粉末の製造方法。
【請求項7】
希土類酸化物粉末と遷移金属粉末を含む原料物質に、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びこれらの水素化物から選ばれる少なくとも1種の還元剤を所定の割合で混合する第1の工程と、この混合物を不活性ガス雰囲気中で加熱し還元拡散する第2の工程と、得られた反応生成物を窒素及び/又はアンモニア含有雰囲気で加熱し窒化する第4の工程と、得られた窒化反応生成物を洗浄液中に投入して崩壊させる湿式処理を行い、窒化反応生成物から還元剤を低減させた後、窒化合金スラリーに酸を添加し、その後、洗浄液を投入し酸を除去する第5の工程を含む、希土類遷移金属合金粉末の製造方法であって、
洗浄液は、水/(グリコール+水)で規定される水含有率が0〜50質量%のグリコールであることを特徴とする希土類遷移金属合金粉末の製造方法。
【請求項8】
SmとFeを含む希土類遷移金属合金粉末に対して、Smを含む希土類酸化物粉末と、Mn及び/又はCrを含む遷移金属酸化物粉末と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及びこれらの水素化物から選ばれる少なくとも1種の還元剤とを所定の割合で混合し、この混合物を不活性ガス雰囲気中で加熱し還元拡散した後、得られた還元拡散反応生成物を、窒素及び/又はアンモニア含有雰囲気で加熱して窒化し、引き続き、得られた窒化反応生成物を洗浄液中に投入して崩壊させる湿式処理を行い、窒化反応生成物から還元剤を低減させる工程を含む希土類遷移金属合金粉末の製造方法であって、
洗浄液は、水/(グリコール+水)で規定される水含有率が0〜50質量%のグリコールであることを特徴とする希土類遷移金属合金粉末の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類遷移金属合金粉末の製造方法に関し、より詳しくは、湿式処理の際に合金表面の酸化劣化を抑えることができる希土類遷移金属合金粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
希土類遷移金属合金粉末は、希土類磁石、水素吸蔵合金、磁歪合金、光磁気記録合金、磁気冷凍材料などの原料粉末として用いられる。
希土類遷移金属合金粉末を製造する方法として、還元拡散法が知られており、還元拡散で得られた塊状の反応生成物を崩壊させ余剰の還元剤を除去するために、水洗浄や酸洗浄が行われている。この方法は、希土類酸化物粉末と遷移金属粉末に、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びこれらの水素化物から選ばれる少なくとも1種の還元剤を混合し、この混合物を不活性ガス雰囲気中で加熱し還元拡散した後、得られた塊状の反応生成物を水中に投入して崩壊させ、得られたスラリーを塩酸や酢酸による洗浄と水洗浄で湿式処理し副生した還元剤成分を除去している。
【0003】
たとえば、還元拡散法によって希土類−遷移金属−窒素磁石粗粉末を製造した後、燐酸とともに粉砕装置で微粉砕する方法では、還元拡散後の反応生成物に水素を吸蔵させ崩壊した焙焼物を純水中に投じ、水素イオン濃度pHが10以下となるまで、攪拌とデカンテーションとを繰り返して、pHが5になるまで水中に酢酸を添加し、この状態で攪拌を行っている(特許文献1参照)。
【0004】
また、還元拡散による希土類鉄合金を冷却後に窒化熱処理し、得られた窒化反応生成物を水中に投入して湿式処理する希土類−鉄−窒素系磁石微粉末の製造方法でも、水と酸を用いた湿式処理により窒化反応生成物からCaOなどの不純物が洗浄除去されている(特許文献2参照)。これらの方法では、湿式処理を行うことにより、還元反応生成物から余剰の還元剤が効果的に除去され優れた磁気特性を有する粉末が得られている。
【0005】
しかしながら、一般に湿式処理で塊状の反応生成物を水中に投入して崩壊させると、合金粉末表面に酸化物や水酸化物が生成して、合金粉末の酸素濃度を高めてしまう。また水とともに塩酸や酢酸を用いた酸洗浄では、洗浄中にスラリーの攪拌が不足すると、局所的に高濃度の酸が合金表面を腐食させてしまうことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017−011276号公報
【特許文献2】特開2017−147434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点に鑑み、還元拡散法で直接製造される希土類遷移金属合金粉末において、湿式処理の際に合金表面の酸化劣化を抑えることができる希土類遷移金属合金粉末の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、希土類遷移金属合金粉末の酸素量と湿式処理工程での処理条件との関係について鋭意検討を重ねた結果、還元拡散法で製造された合金の酸素量が高くなる現象は、従来から一般的に行われてきた水洗浄に誘発されることを究明し、湿式処理工程において、グリコールを洗浄剤として使用することによって合金の酸素量が大幅に低減できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明の第1の態様によれば、希土類酸化物粉末と遷移金属粉末を含む原料物質に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及びこれらの水素化物から選ばれる少なくとも1種の還元剤を所定の割合で混合する第1の工程と、この混合物を不活性ガス雰囲気中で加熱し還元拡散する第2の工程と、得られた反応生成物を洗浄液中に投入して崩壊させる湿式処理を行い、反応生成物から還元剤を低減させた後、洗浄液の合金スラリーに酸と洗浄液を添加する酸洗浄を行い、その後、洗浄液を投入し酸を除去する第3の工程を含む、希土類遷移金属合金粉末の製造方法であって、洗浄液は、水/(グリコール+水)で規定される水含有率が0〜50質量%のグリコールであることを特徴とする希土類遷移金属合金粉末の製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明の第2の態様によれば、第1の態様において、希土類酸化物粉末は、Y、La、Ce、Pr、Nd,Sm、Eu、Gd、Tb,Dy、Ho、及びYbから選ばれる1種以上の希土類元素を含有することを特徴とする希土類遷移金属合金粉末の製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明の第3の態様によれば、第1又は2の態様において、遷移金属粉末は、Fe、Co、Ni、Cu、Cr、及びMnから選ばれる1種以上の遷移元素を含有することを特徴とする希土類遷移金属合金粉末の製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明の第4の態様によれば、第1〜3のいずれかの態様において、洗浄液は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、及びトリプロピレングリコールから選ばれる1種以上のアルキレングリコールであることを特徴とする希土類遷移金属合金粉末の製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明の第5の態様によれば、第1〜4のいずれかの態様において、酸は、塩酸、酢酸、硝酸、及び硫酸から選ばれる1種以上であることを特徴とする希土類遷移金属合金粉末の製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明の第6の態様によれば、第1〜5のいずれかの態様において、第3の工程で得られた希土類遷移金属合金粉末が、さらに窒素及び/又はアンモニア含有雰囲気で加熱され窒化されることを特徴とする希土類遷移金属合金粉末の製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明の第7の態様によれば、希土類酸化物粉末と遷移金属粉末を含む原料物質に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及びこれらの水素化物から選ばれる少なくとも1種の還元剤を所定の割合で混合する第1の工程と、この混合物を不活性ガス雰囲気中で加熱し還元拡散する第2の工程と、得られた反応生成物を窒素及び/又はアンモニア含有雰囲気で加熱し窒化する第4の工程と、得られた窒化反応生成物を洗浄液中に投入して崩壊させる湿式処理を行い、窒化反応生成物から還元剤を低減させた後、窒化合金スラリーに酸を添加し、その後、洗浄液を投入し酸を除去する第5の工程を含む、希土類遷移金属合金粉末の製造方法であって、洗浄液は、水/(グリコール+水)で規定される水含有率が0〜50質量%のグリコールであることを特徴とする希土類遷移金属合金粉末の製造方法が提供される。
【0016】
さらに、本発明の第8の態様によれば、SmとFeを含む希土類遷移金属合金粉末に対して、Smを含む希土類酸化物粉末と、Mn及び/又はCrを含む遷移金属酸化物粉末と、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びこれらの水素化物から選ばれる少なくとも1種の還元剤とを所定の割合で混合し、この混合物を不活性ガス雰囲気中で加熱し還元拡散した後、得られた還元拡散反応生成物を、窒素及び/又はアンモニア含有雰囲気で加熱して窒化し、引き続き、得られた窒化反応生成物を洗浄液中に投入して崩壊させる湿式処理を行い、窒化反応生成物から還元剤を低減させる工程を含む希土類遷移金属合金粉末の製造方法であって、洗浄液は、水/(グリコール+水)で規定される水含有率が0〜50質量%のグリコールであることを特徴とする希土類遷移金属合金粉末の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の態様によれば、希土類遷移金属合金粉末の製造において、還元拡散生成物あるいはその窒化反応生成物を湿式処理する際に洗浄剤としてグリコールを用いるので、処理後の希土類遷移金属合金粉末に含まれる酸素量を大幅に低減でき、酸洗浄で合金粉末に対する溶解反応が緩和され、収率を向上させることができる。また、得られる希土類遷移金属合金粉末に含まれる酸素量が大幅に低減するので、磁気特性や水素吸蔵性能であるPCT(圧力一組成一等温線)特性が改善される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施形態の希土類遷移金属合金粉末の製造方法について詳細に説明する。希土類遷移金属合金粉末の製造では、少なくとも原料物質混合工程、還元拡散工程、湿式処理工程を有し、SmFe17合金粉末の場合は、さらに窒化熱処理工程を含む本発明の方法で製造される。
【0019】
≪希土類遷移金属合金粉末≫
本発明の製造方法で目的とする希土類遷移金属合金粉末は、希土類元素R、遷移金属TMを主構成成分とする合金粉末であって、CaCu型、ThZn17型、ThNi17型、TbCu型、ThMn12型、NaZn13型、NdFe14B型、MgCu型などの結晶構造を有する金属間化合物を含有する合金粉末である。希土類遷移金属合金粉末は、平均粒径や粒度分布によって制限されないが、平均粒径が1〜100μmであるものが好ましい。
【0020】
具体的には、SmFe17合金粉末、NdFe14B合金粉末、SmCo合金粉末、LaNi合金粉末、SmCo17系合金粉末、Sm(Fe,Ti)12合金粉末、La(Fe,Si)13合金粉末、TbFe合金粉末、DyFe合金粉末、SmFe17合金粉末、これらの希土類元素や遷移金属元素を別の元素で置換した合金粉末、例えばSmFe17合金をコアとし、Sm(Fe、M)17(M=Cr、Mn)をシェル層とした磁性粉末などが挙げられる。
【0021】
このうちSmFe17合金粉末は、Smが23〜25質量%、Oが0.1質量%以下、Caが0.01質量%以下、残部が鉄であり、主相がThZn17型菱面体晶のSmFe17合金粉末であり、平均粒径が10〜40μmである。
【0022】
NdFe14B合金粉末は、Ndが32〜35質量%、Bが1〜3質量%、Oが0.1質量%以下、Caが0.1質量%以下、残部が鉄であり、主相の結晶構造はNdFe14B型正方晶で、平均粒径が5〜50μmである。
【0023】
SmCo合金粉末は、Smが32〜38質量%、Oが0.1質量%以下、Caが0.1質量%以下、残部がコバルトであり、主相の結晶構造はCaCu型六方晶で、平均粒径が5〜50μmである。Sm組成と結晶構造は異なるものの、SmCo17系合金粉末も同様である。
【0024】
LaNi合金粉末は、Laが31〜37質量%、Oが0.1質量%以下、Caが0.1質量%以下、残部がニッケルであり、主相の結晶構造はCaCu型六方晶のものが例示される。平均粒径は10〜50μmである。
【0025】
SmFe17合金粉末は、Smが23〜24質量%、Nが3〜5質量%、Oは平均粒径によるが0.8質量%以下、Caが0.5質量%以下、残部が鉄で、主相がThZn17型菱面体晶のSmFe17合金粉末である。平均粒径が1〜40μmで、粒径分布のピークが1〜5μmにあるものが好ましい。
【0026】
また、SmFe17合金をコアとし、Sm(Fe、M)17(M=Mn、Cr)をシェル層とした磁性粉末は、全体の平均的な組成として、Smが23〜29質量%、Mn又はCrが1〜3質量%、Nが3〜5質量%、Oは平均粒径によるが0.8質量%以下、Caが0.5質量%以下、残部が鉄で、平均粒径が1〜20μmである。そしてNが4質量%を超える場合には、このシェル層には、セル状微結晶粒とアモルファス境界層とからなる金属組織と、Sm(Fe,M)17化合物結晶相の内部にMn又はCrおよびNの濃度が高く長短のあるワイヤー状形態をしたアモルファス相がランダムないし規則的に存在する金属組織とが観察される。
【0027】
上記希土類遷移金属合金粉末の酸素量は、いずれも0.8質量%以下であり、0.1質量%以下であることが好ましく、0.08質量%以下であることがより好ましい。酸素量は、合金粉末の平均粒径や粒度分布に依存するが、湿式処理の洗浄剤として、還元拡散反応生成物や窒化反応生成物を水単独で洗浄していた従来の湿式処理に比べて、30〜70質量%に低減されている。
【0028】
≪希土類遷移金属合金粉末の製造方法≫
本実施形態では、原料物質と還元剤を混合し、還元拡散して得た還元拡散生成物を水含有率が0〜50質量%のグリコールで湿式処理して希土類遷移金属合金粉末を製造する。希土類遷移金属合金粉末を磁石合金粉末とするために、さらに窒化熱処理を行う場合もある。以下、原料物質混合工程、還元拡散工程、湿式処理工程、窒化熱処理工程の各工程について説明する。なお窒化熱処理は、湿式処理の前に行うこともできる。
【0029】
すなわち、本実施形態の希土類遷移金属合金粉末の製造方法は、希土類酸化物粉末と遷移金属粉末を含む原料物質に、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びこれらの水素化物から選ばれる少なくとも1種の還元剤を所定の割合で混合する第1の工程と、この混合物を不活性ガス雰囲気中で加熱し還元拡散する第2の工程と、得られた反応生成物を洗浄液中に投入して崩壊させる湿式処理を行い、反応生成物から還元剤を低減させた後、洗浄液の合金スラリーに酸と洗浄液を添加する酸洗浄を行い、その後、洗浄液を投入し酸を除去する第3の工程を含む、希土類遷移金属合金粉末の製造方法であって、洗浄液として、水/(グリコール+水)で規定される水含有率が0〜50質量%のグリコールを用いることを特徴とする。
【0030】
(原料物質)
まず、原料物質として、希土類酸化物粉末、遷移金属粉末を用意する。希土類酸化物粉末は、Y、La、Ce、Pr、Nd,Sm、Eu、Gd、Tb,Dy、Ho、及びYbから選ばれる1種以上の希土類元素を含有する酸化物である。中でもSm、Nd、又はLaが含まれるものは、本実施形態の効果を顕著に発揮させるので特に好ましく、ボンド磁石に応用される場合には、その50原子%以上がSmであること、高周波磁性材料に応用される場合には、その50原子%以上がNdであることが望ましい。
【0031】
希土類酸化物粉末の平均粒径は、50μm以下、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下がよく、最終的に作製される合金組成に応じて、遷移金属粒子の近傍に希土類酸化物粒子が均一に存在するように平均粒径を決めるのがよい。また、希土類酸化物粉末には不純物として水や有機物などが含まれており、これら不純物は得られる希土類遷移金属合金粉末の酸素量を増加させる。この不純物の量は、1000℃まで加熱してから冷却したときの、加熱前後の質量減量で評価することができ、本実施形態では、質量減量が2%以下、好ましくは1%以下である希土類酸化物粉末が好ましい。
【0032】
一方、遷移金属粉末は、Fe、Co、Ni、Cu、Cr、及びMnから選ばれる1種以上の遷移元素を含有する金属あるいは金属化合物である。代表的な遷移金属である鉄粉末は、例えば還元鉄粉、ガスアトマイズ粉、水アトマイズ粉、電解鉄粉などが使用でき、必要に応じて最適な粒度になるように分級する。
【0033】
遷移金属粉末の平均粒径は、100μm以下、好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、特に好ましくは50μm以下がよい。平均粒径が100μmを超えると、還元剤によって還元された希土類成分が遷移金属粒子の内部まで拡散せず未拡散部が芯として残る。ただし、得られた合金粉末の後工程によって、未拡散部の残留が問題ない場合には、この限りではない。また合金粉末の目標とする平均粒径があれば、それに対して1/2〜1倍の遷移金属粉末を使うとよい。なお還元拡散反応はテルミット反応であることから、その発熱反応を昇温に利用する目的で遷移金属粉末の20質量%以下を酸化物粉末の形で用いることができる。
【0034】
また遷移金属粉末に代えて、又はその一部として、希土類と遷移金属との合金粉末や、それらの複合酸化物粉末も用いることができる。ただし複合酸化物粉末を用いるときには、テルミット発熱が過剰にならないよう複合酸化物粉末の量を遷移金属粉末の20質量%以下に抑えるか、一旦水素ガス等で還元してから原料物質として用いるのがよい。これらの平均粒径は、遷移金属粉末あるいは希土類酸化物粉末の平均粒径に準ずる。またNdFeB合金粉末を構成するBのような添加元素は、単独の粉末として使用することもできるが、FeB合金粉末の形で使用してもよい。その場合の平均粒径は、遷移金属粉末の粒径と同じ範囲を選択する。
【0035】
(1)原料物質の混合
上記原料物質の希土類酸化物粉末と遷移金属粉末は、目的とする合金粉末の組成となるよう所定量を混合機の容器に採り、偏在しないように不活性ガス雰囲気中で十分に攪拌混合する。還元拡散法は、局所的な混合組成が得られる合金組成に反映されるので、それぞれの遷移金属粒子の周囲に合金組成を反映する希土類酸化物粒子やその他の添加元素が存在する必要がある。
【0036】
この工程で用いられる混合機には、乾式と湿式のものがあるが、乾式の混合機としては、Vブレンダー、ロッキングミキサー、Sブレンダー、ヘンシェルミキサー、コンピックス、メカノハイブリッド、メカノフュージョン、ノビルタ、ハイブリダイゼーションシステム、ミラーロ、タンブラーミキサー、シータ・コンポーザ、スパルタンミキサーなどが用いられる。原料物質は、酸化を避けるために窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中で混合するのがよい。一方、湿式の混合機としては、ビーズミル、ボールミル、ナノマイザー、湿式サイクロン、ホモジナイザー、ディゾルバー、フィルミックスなどが用いられる。湿式の混合機の場合には、最終的に得られる合金粉末の酸素量が増大するのを防ぐために、水、アルコールなどの有機溶媒、あるいは両者の混合溶媒の乾燥を十分にする必要がある。この場合にも、希土類酸化物粉末と同様、混合物を質量減量が2%以下、好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下になるよう乾燥するのがよい。
【0037】
(2)還元拡散処理
この工程は、上記希土類酸化物を希土類元素に還元するとともに、希土類元素が鉄粉など遷移金属に拡散した希土類遷移金属合金を合成する工程である。
【0038】
還元拡散処理では、希土類酸化物粉末の還元剤として、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びこれらの水素化物から選ばれる少なくとも1種を使用する。具体的には、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr又はBa金属、あるいは水素化物が使用される。これらは原料物質に遷移金属の酸化物粉末が含まれる場合には、その還元剤としても作用する。還元剤は、粒状又は粉末状で供給され、平均粒径が10mm以下、好ましくは0.1〜7mm、さらに好ましくは0.2〜5mmのものを使用するのが望ましい。これらの中では特にCaが有用であるので、以下Caを例に記述する。
【0039】
還元剤であるCaの量は、希土類酸化物粉末、遷移金属酸化物粉末を含む場合には、それら酸化物粉末の還元に必要な量に対して1.1〜5倍とするのが望ましい。Caが1.1倍未満であると酸化物が還元された後に拡散が進みにくく、5倍を超えるとCaに起因する残留物が多くなり、その除去に手間がかかるために好ましくない。またCaは純度が95質量%以上のものを用いるのが好ましい。95質量%未満であると、還元後の拡散反応が進みにくい。
【0040】
前記の原料物質およびCa粒は、混合機に入れて均一に混合することが重要である。混合機としてはVブレンダー、Sブレンダー、リボンミキサ、ボールミル、ヘンシェルミキサー、メカノフュージョン、ノビルタ、ハイブリダイゼーションシステム、ミラーロなどが使用できる。
【0041】
混合物は、るつぼに装填し反応容器に入れ電気炉に設置する。混合から電気炉への設置まで、可能な限り大気や水蒸気との接触を避けるのが好ましい。また混合物内に残留する大気や水を除去するため、反応容器内を真空引きしてHe、Arなどの不活性ガスで置換することが好ましい。
【0042】
還元拡散処理では、これらの不活性ガスを容器内に流通させながら昇温し、所定温度で加減された希土類元素が遷移金属粒子内に拡散するのに十分な時間保持する。保持温度は、目的とする希土類遷移金属合金相の融点以下であって還元剤であるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の融点以上が目安になる。ただし蒸気圧の高い還元剤であれば融点以下で、還元剤の蒸気により希土類酸化物粉末を還元することも可能である。たとえば原料物質の酸化サマリウムと鉄粉末からSmFe17合金粉末を製造する場合で、還元剤が金属Caの場合には、通常は金属Caの融点近傍800℃からSmFe17金属間化合物の包晶温度1280℃の範囲で保持温度が設定される。
ここで、Ca蒸気を利用するなら600℃以上に保持温度を低めに設定することもできる。保持時間は、原料物質である遷移金属粉末の粒子サイズを考慮し、その保持温度において還元された希土類元素が粒子内部まで拡散するのに十分な時間とする。SmFe17合金粉末の製造であれば、上記の温度範囲で1〜8時間保持するのが好ましい。NdFe14B合金粉末やSmCo17合金粉末、LaNi合金粉末を製造する場合は、900〜1100℃の範囲で、1〜5時間保持すればよい。所定時間保持した後は、室温まで不活性ガス雰囲気を保ったまま冷却する
【0043】
冷却後、るつぼから回収される反応生成物は、目的とする希土類遷移金属合金粉末と副生したアルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物粒子、そして過剰に投入されて残ったアルカリ金属又はアルカリ土類金属成分、からなる複合物である。
【0044】
次の工程に進む前に、得られた反応生成物に対して、水素ガス、窒素やアンモニアなどの窒素を含有するガス、COガス、炭化水素ガス等を供給し、このガス雰囲気中で熱処理し、反応生成物中の希土類遷移金属合金粒子を水素化、窒化、炭化することもできる。希土類遷移金属合金粒子を水素化すれば、塊状で得られた反応生成物が水素を吸蔵して崩壊しやすくなる。なお、窒素を含有するガスを用いた窒化については、項を改めて詳述する。
【0045】
(3)湿式処理
本実施形態において湿式処理は、前記還元拡散処理工程で得られた反応生成物をグリコール、又は水含有率が50質量%以下のグリコール液、すなわち水含有率が0〜50質量%のグリコールへ投入、攪拌し合金スラリー化して不純物を洗浄する操作である。
【0046】
還元拡散処理により得られた反応生成物は、還元剤がCaの場合、希土類遷移金属合金とCaO、および余剰のCaからなる多孔質焼結体であるため、CaO、Caおよび異相を除去しなければならない。この湿式処理工程は、この多孔質焼結体を第1の洗浄剤に投入しスラリー化する崩壊と、第1の洗浄剤で還元剤を除去する洗浄と、第2の洗浄剤に酸を投入して残留する還元剤をさらに低減させる酸洗浄と、還元剤が低減した合金スラリーに第3の洗浄液を投入し酸を除去する操作を含んでいる。第1の洗浄剤、第2の洗浄剤、第3の洗浄剤は同一でも異なっていてもよい。
【0047】
グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール及びトリプロピレングリコールから選ばれる1種以上のアルキレングリコールが使用できる。これらグリコールおよびその混合物をそのまま使用するのが好ましい。しかし、アルキレングリコールは粘度が高いため、スラリー化した後に希土類遷移金属粉末と還元剤成分を分離し還元剤成分を除去しにくい場合がある。
そのため、水で希釈してグリコール液として用いることができる。ただし、グリコールの水含有率が50質量%以下になるようにする。ここで、水含有率とは、水/(グリコール+水)の質量比を百分率で示したものである。水が50質量%を超えると希土類遷移金属粒子の酸化が顕著になるので好ましくない。好ましい水含有率は30質量%以下、より好ましいのは10質量%以下、特に好ましいのは5質量%以下のグリコール液である。
【0048】
この工程では、まず還元拡散処理工程で得られた反応生成物を、第1の洗浄剤であるグリコール又は水含有率が50質量%以下のグリコール液に投入し、スラリー化する。このとき反応生成物の形態は任意であるが、塊状の場合には、あらかじめ機械解砕してから投入すると速やかに反応が進行する。反応生成物が水素脆性を示す場合には水素雰囲気とし、機械解砕ではなく水素の吸収に適した温度で熱処理することにより解砕できることがある。またスラリーを攪拌しながら処理すると反応が進行しやすいので、処理時間を短縮しうる。また、処理時間は、希土類遷移金属合金の種類にもよるが、初回は2〜15時間の範囲とし、6〜12時間が好ましい。
【0049】
第1の洗浄剤であるグリコールの投入量は、特に制限されないが、1回当たり、反応生成物中の還元剤成分がグリコールと反応する当量に対して2〜10倍のグリコールを使用することができる。好ましいのは反応生成物の質量に対して3〜8倍のグリコールを使用することである。
【0050】
ここで、SmFe17合金粉末の製造で金属カルシウムを還元剤として使用し、グリコールとしてエチレングリコール(HOCOH)を使った場合について、反応メカニズムを説明する。反応生成物中に残留した酸化カルシウムCaOは、エチレングリコールとの間で式(1)の反応が進行してスラリー化し、また反応生成物中に金属Caが残留している場合には、エチレングリコールと式(2)の反応が進行してスラリー化が進む。
【0051】
CaO+HOCOH→CaC+HO ・・・(1)
Ca+4HOCOH→Ca(OCOH)・2HOCOH+H(ガス)・・・(2)
【0052】
こうしてスラリー化した反応生成物は、静置すると比重の大きい希土類遷移金属合金粉末が沈降するので、デカンテーションして還元剤成分を含む上澄みを除去する。そこに、再び第1の洗浄剤であるグリコール、又は水含有率が50質量%以下のグリコール液を投入し攪拌−静置−デカンテーションを2〜8回繰り返す。繰り返し回数は、還元剤の残存量によるが5回以内が望ましい。この操作で還元剤成分を可能な限り除去させる。また、2回目以降の攪拌−静置−デカンテーションについては、初回よりも短時間でよく、3〜15分間とし、5〜10分間で処理するのが好ましい。
【0053】
次に、上記洗浄後の合金スラリーに酸を添加し、上記洗浄で残留する還元剤成分を溶解除去する酸洗浄を行い、その後、還元剤が低減した合金に洗浄液を投入し合金スラリーから酸を除去する操作を行う。合金粉末に、目的とする希土類遷移金属合金相より希土類リッチな副相が生成する場合には、必要に応じてこの酸洗浄により希土類リッチ相も溶解除去することができる。
【0054】
酸としては、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸や、酢酸等の有機酸が使用できるが、コスト等の面から塩酸又は酢酸が好ましい。使用に先立ち第2の洗浄剤であるグリコール又は水を含むグリコール液で希釈するのが好ましい。従来のように酸洗浄で水だけを媒体として用いると、添加された酸が水中に迅速に電離してしまい、結果として該粉末に強力な溶解反応が起こるためである。本実施形態では、酸洗浄の際に、水/(グリコール+水)の百分率で規定される水含有率が50質量%以下のグリコール液を用いるようにする。水が50質量%を超えると希土類遷移金属粒子の酸濃度が低下して酸洗浄効果が低下するので好ましくない。好ましい水含有率は30質量%以下、より好ましいのは10質量%以下、特に好ましいのは5質量%以下のグリコール液である。
【0055】
また酸の使用量は、希土類元素の量や還元拡散生成物の量によって決定される。グリコール液で希釈した酸は、合金粉末に対して少量ずつ滴下し、pH3〜6で3〜20分間維持するのが好ましい。合金に除去しにくい還元剤が残留し、目的組成よりも希土類リッチな相が合金粉中に含まれていても、スラリーを攪拌しながら塩酸又は酢酸等を投入し処理すれば、還元剤や希土類リッチ相を溶解除去することができる。第2の洗浄液の温度は特に制限されない。ただ、グリコール中の還元剤成分の溶解度は、洗浄液の温度上昇と共に低下するため、湿式処理全工程において洗浄液の温度は50℃以下、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下にする。
【0056】
酸洗浄した後は、酸が合金スラリーに残留しないように再度、水含有率が50質量%以下のグリコール液を第3の洗浄液として投入し、攪拌−静置−デカンテーションを繰り返して酸を除去するのが好ましい。
このようにして洗浄を終えた希土類遷移金属合金粉末スラリーは、最後にろ過、乾燥することで目的の合金粉末を得ることができる。グリコールの粘性が高く乾燥しにくい場合には、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類を用いれば、グリコールを置換しやすく効率的に乾燥することができる。好ましいのは、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類である。乾燥条件は、含まれるグリコールやアルコール、希釈剤の種類にもよるが、減圧下、100〜200℃で1〜8時間の範囲とすることができる。
【0057】
上記した一連の工程を経て、酸素量が低減した希土類遷移金属合金粉末が製造される。希土類遷移金属合金粉末の酸素量は、平均粒径や粒度分布に依存するが、同じ反応生成物を水単独で洗浄した場合に比べて30〜70質量%に低減できる。
【0058】
希土類遷移金属合金粉末のうち、LaNi合金粉末は、所望の形状に成形した後、高温に加熱して焼結することで水素吸蔵合金として使用できる。酸素量が低減しているので表面の活性が低下せず、PCT特性への悪影響が回避された水素吸蔵合金用の粉末となる。
【0059】
また、SmCo合金粉末、SmCo17合金粉末、NdFe14B合金粉末は、所望の形状に成形した後、希土類リッチな合金粉末、あるいはCoなどを焼結助剤として添加し、高温に加熱して焼結することで焼結磁石として使用できる。酸素量が低減したことで焼結密度が上がり、磁気特性が改善された焼結磁石用の粉末となる。ところが、希土類遷移金属合金粉末のうちSmFe17合金粉末は、そのままでは機能が発揮されないため、窒素及び/又はアンモニア含有雰囲気で加熱し窒化してSmFe17合金粉末とする。窒化熱処理の条件は次項に詳述するとおりである。
一方、HoCo17合金粉末、Sm(Fe,Ti)12合金粉末、La(Fe,Si)13合金粉末、La(Fe,Si)13合金粉末、TbFe合金粉末、DyFe合金粉末の中には、磁歪合金、光磁気記録合金、磁気冷凍材料などに用いられるものがある。
【0060】
(4)窒化熱処理
前記方法では、還元拡散処理した反応生成物に対して、湿式処理すると述べてきたが、反応生成物は湿式処理する前に窒化熱処理することもできる。
【0061】
すなわち、この希土類遷移金属合金粉末の製造方法は、希土類酸化物粉末と遷移金属粉末を含む原料物質に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及びこれらの水素化物から選ばれる少なくとも1種の還元剤を所定の割合で混合する第1の工程と、この混合物を不活性ガス雰囲気中で加熱し還元拡散する第2の工程と、得られた反応生成物を窒素及び/又はアンモニア含有雰囲気で加熱し窒化する第4の工程と、得られた窒化反応生成物を洗浄液中に投入して崩壊させる湿式処理を行い、窒化反応生成物から還元剤を低減させた後、窒化合金スラリーに酸を添加し、その後、洗浄液を投入し酸を除去する第5の工程を含む、希土類遷移金属合金粉末の製造方法であって、洗浄液は、水/(グリコール+水)で規定される水含有率が0〜50質量%のグリコールであることを特徴とする。
【0062】
この窒化熱処理では、得られた反応生成物を窒素及び/又はアンモニア含有雰囲気で加熱し窒化反応生成物とする。窒素及び/又はアンモニア含有雰囲気としては、例えば、窒素ガス雰囲気、窒素ガスと水素ガスの混合雰囲気、アンモニアガス雰囲気、アンモニアガスと水素ガスの混合雰囲気、アンモニアガスと窒素ガスの混合ガス雰囲気、アンモニアガスと窒素ガスと水素ガスの混合ガス雰囲気が挙げられる。アンモニアガスと水素ガスの混合雰囲気を用いる場合は、流量比を1:1〜3とするのが好ましい。
好ましいのは窒素ガスを含む雰囲気、及び/又はアンモニアガスと水素ガスの混合雰囲気中であり、窒化後も十分な量のアルゴンガスを供給して、300〜500℃の温度範囲で反応生成物を加熱することである。加熱温度が300℃未満では窒化が進まず、一方、500℃を超えると合金が希土類元素の窒化反応生成物と鉄に分解するので好ましくない。より好ましいのは、300〜450℃である。
また、処理時間は、加熱温度、各ガス流量、反応生成物の大きさなどに関係するが、アンモニアガスと水素ガスの混合雰囲気の場合、例えば100分〜10時間が好ましく、2〜8時間がより好ましい。
【0063】
こうして、窒化熱処理を行ってから湿式処理を行う。窒化反応生成物への湿式処理方法、処理条件は前記還元拡散生成物に対して行う湿式処理と同様である。すなわち、窒化工程で得られた窒化反応生成物を第1の洗浄剤へ投入、攪拌してスラリー化して洗浄する操作である。通常は洗浄後の合金スラリーに第2の洗浄剤と酸を添加し、合金から還元剤を溶解し、その後、還元剤が低減した合金に第3の洗浄液を投入し酸を除去する操作を行う。本実施形態は、洗浄剤として水含有率が0〜50質量%のグリコールを用いることを特徴としている。第1の洗浄剤、第2の洗浄剤、第3の洗浄剤は同一でも異なっていてもよい。
【0064】
グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール及びトリプロピレングリコールから選ばれる1種以上のアルキレングリコールが使用できる。これらグリコールおよびその混合物をそのまま使用するのが好ましい。しかし、粘度が高いためスラリー化した後に希土類遷移金属粉末と還元剤成分の分離除去がしにくい場合、水で希釈して使用することができる。グリコールを希釈する場合には、水含有率が50質量%以下とする。水が50質量%を超えると希土類遷移金属粒子の酸化が顕著になるので好ましくない。
【0065】
グリコールの使用量は、特に制限されないが、窒化反応生成物中の還元剤成分がグリコールと反応する当量に対して2〜10倍のグリコールを使用することができる。好ましいのは窒化反応生成物の質量に対して3〜8倍のグリコールを使用することである。
【0066】
これにより、SmFe17磁石合金粉末を得ることができる。磁石粉末の物性は、樹脂組成物をバインダーとして用い、成形されたボンド磁石の磁気特性を測定することで評価できる。SmFe17合金粉末では、従来法で水単独で洗浄した場合に比べて、保磁力(MA/m)が5%以上向上し、角形性も10%以上向上することが確認されている。
【0067】
なお、希土類遷移金属合金粉末には、さらに湿式表面処理を行い、例えばリン酸塩系化合物被膜を形成して耐酸化性、耐候性を高めることができる。また、めっき処理などにより粉末表面にCrやMnのほか、Zn、CuやNiなどの金属層を形成することもできる。
【0068】
(SmFe17合金へのシェル層の形成)
次に、本実施形態により、SmFe17合金をコアとし、Sm(Fe、M)17(M=Cr、Mn)をシェル層とした合金粉末の製造方法を説明する。
【0069】
SmFe17合金へシェル層が形成された合金粉末を製造するには、SmとFeを含む希土類遷移金属合金粉末に対して、Smを含む希土類酸化物粉末と、Mn及び/又はCrを含む遷移金属酸化物粉末と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及びこれらの水素化物から選ばれる少なくとも1種の還元剤とを所定の割合で混合し、この混合物を不活性ガス雰囲気中で加熱し還元拡散した後、得られた還元拡散反応生成物を、窒素及び/又はアンモニア含有雰囲気で加熱して窒化し、引き続き、得られた窒化反応生成物を洗浄液中に投入して崩壊させる湿式処理を行い、窒化反応生成物から還元剤を低減させる工程を含んでいる。そして、洗浄液としては、水/(グリコール+水)で規定される水含有率が0〜50質量%のグリコールを用いるようにする。
【0070】
希土類遷移金属合金粉末であるSmFe17合金粉末は、製造方法によって制限されない。例えば、前記(1)〜(3)の要領で希土類酸化物粉末であるSm粉末と遷移金属酸化物粉末である鉄粉末に還元剤を混合して還元拡散し、その還元拡散反応生成物をグリコールに投入し湿式処理して還元剤を除去して得ることができる。これを平均粒径が5μm以下の希土類酸化物粉末であるSm粉末、平均粒径が3μm以下の遷移金属酸化物粉末であるMnのようなMn酸化物粉末又はCrのようなCr酸化物粉末と混合し、微粉砕して混合物の平均粒径を5μm以下、さらに好ましくは3μm以下にするのが好ましい。
【0071】
混合割合は、合金粉末の100質量部に対して、Sm粉末が5〜20質量部と、Mn酸化物粉末又はCr酸化物粉末が1〜10質量部の割合となることが好ましい。還元剤であるCaは、Sm粉末とMn酸化物粉末又はCr酸化物粉末の還元に必要な量に対して1.1〜10倍とするのが望ましい。またSmFe17希土類鉄合金粉末、Sm粉末、Mn酸化物粉末又はCr酸化物粉末の混合粉末の含有水分量が1質量%未満であることが望ましい。
【0072】
その後、反応容器内を再度真空引きするか、He、Arなどの不活性ガスを容器内にフローしながら混合物を還元拡散熱処理する。この熱処理は、前記第2の工程での還元拡散条件と若干異なり、650〜1000℃の温度範囲で、好ましくは700〜1000℃とし、かつCaによって還元されたMn又はCrがSmFe17合金粉末内部まで拡散しない条件とする。650℃より低い温度ではCaでSmやMn酸化物やCr酸化物の還元は進んでも、SmFe17合金粉末表面での拡散反応によるシェル層の形成が進み難く、最終的に得られる磁性粉末の耐熱性が向上しない。一方、1000℃を超えると、還元されたMn又はCrがSmFe17合金粉末の中心部にまで拡散してしまい所期の厚みを持ったシェル層が得られず耐熱性の向上が望めない。
【0073】
また、混合物の加熱保持時間も、Mn又はCrの拡散によるシェル層の厚みを調整するように設定される。混合物を設定温度で8時間以下保持する。保持時間は、5時間以下が好ましく、より好ましくは1時間以下とする。8時間を超えるとMn又はCrの拡散によるシェル層の厚みが増大し目的とする粒子性状を得ることが難しくなることがある。
【0074】
次に、窒素ガスを含む気流中で、該反応生成物を300〜500℃の温度で、50分〜24時間かけて窒化熱処理し、必要に応じてアンモニアと水素ガスの混合雰囲気に切り替え、30分〜120分間窒化熱処理するのが好ましい。
【0075】
こうして、窒化熱処理を行ってから湿式処理を行う。窒化反応生成物への湿式処理方法、処理条件は還元拡散生成物に対して行う前記湿式処理と同様である。すなわち、窒化熱処理工程で得られた窒化反応生成物を第1の洗浄剤であるグリコール又はグリコール液へ投入、攪拌してスラリー化して洗浄する操作である。グリコールの種類、使用量は前記と同様であり、グリコール液を用いる場合、窒化合金粉末の酸化を抑制するため、水/(グリコール+水)で規定される水含有率が50質量%以下のものとする。水含有率は、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
【0076】
得られるSmFe17合金へシェル層が形成された粉末は、酸素量が低減している。酸素量は、平均粒径や粒度分布に依存するが、同じ反応生成物を水単独で洗浄した場合に比べて30〜70質量%に低減される。
【0077】
磁石粉末の物性は、樹脂組成物をバインダーとして用い、成形されたボンド磁石の磁気特性を測定することで評価できる。SmFe17合金をコアとしSm(Fe、M)17(M=Cr、Mn)をシェル層とした合金粉末では、従来法で水単独で洗浄した場合に比べて、保磁力(MA/m)、角形性が倍近くに向上するという顕著な効果が確認されている。
【実施例】
【0078】
以下、実施例について、比較例も示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0079】
[実施例1]
平均粒径(D50)が2.3μmで質量減量が1%以下の酸化サマリウムSm粉末44g、平均粒径(D50)が40μmの鉄粉100g、1〜2mmの粒状金属カルシウム23gを小型ミキサーで混合し、鉄るつぼに入れて、アルゴンガス雰囲気下、1100℃で7時間加熱処理した。
冷却後に取り出した反応生成物100gを550gのエチレングリコールに投入し、攪拌しながら12時間放置しスラリー化した。このスラリーの攪拌をやめて2分静置した後、その上澄みを捨て、新たにエチレングリコールを500g加えて5分攪拌し、2分静置しSmFe合金粉が沈降したところで上澄みを捨てる。この操作を5回繰り返した。
再びエチレングリコール500gを加えて合金粉が攪拌されている状態で、酢酸15gを水含有率が40質量%のエチレングリコールと水の混合液65gで希釈した溶液を用意し、スポイトで40分かけて滴下した。その後、上澄みを捨てて再びエチレングリコール500gを加え攪拌し、上澄みを除去する操作を3回行い、最後に脱水エチルアルコール500gでエチレングリコールを置換した後、ヌッチェでろ過して合金粉を回収した。これを小型ミキサーに入れて、減圧しながら150℃で6時間攪拌・乾燥し、平均粒径が28μmのSmFe17合金粉末118gを得た。
実施例1で使用した洗浄液において、水含有率が最も高くなるのは、エチレングリコールに、酢酸とエチレングリコールと水の混合溶液を全量滴下した後であり、このときの洗浄液の水含有率は4.6質量%である。
この合金粉の組成は、Smが24.5質量%、Oが0.04質量%、Caが0.01質量%未満、残部が鉄であり、主相がThZn17型結晶構造のSmFe17だった。
この合金粉を管状炉に入れて、アンモニアガス:水素ガス=1:2の流量比で流通させながら450℃で8時間窒化熱処理し、その後雰囲気をアルゴンガスに切り代えて1時間熱処理してSmFe17粉末を作製した。この粉末を樹脂に埋め込み断面を研磨してSEM反射電子像観察したところ、粒子内部まで均一に窒化されていることを確認した。また得られた粉末は、エチルアルコールを溶媒とし媒体攪拌ミルでD50が2.2μmになるまで微粉砕し真空乾燥して振動試料型磁力計で磁気特性を測定したところ、表1に示すように保磁力HcJは0.89MA/m、角形性Hkは0.48MA/mと良好だった。
【0080】
[比較例1]
実施例1と同様にして原料物質と還元剤を同量配合し、同一条件で加熱処理し還元拡散反応生成物を得た。
この反応生成物100gを1Lの水中に投入し攪拌しながら、12時間かけてスラリー化した。このスラリーの攪拌を止めて2分静置した後、その上澄みを捨て、新たに水を1L加えて5分攪拌し、2分静置してSmFe合金粉が沈降したところで水酸化カルシウムが懸濁する上澄みを捨てる。この操作を5回繰り返した。
再び水1Lを加えて合金粉が攪拌されている状態で、酢酸15gを水65gで希釈した溶液を用意し、スポイトで40分かけて滴下した。その後、上澄みを捨てて再び水1Lを加え攪拌し上澄みを除去する操作を3回行い、最後に脱水エチルアルコール500gで水を置換した後、ヌッチェでろ過して合金粉を回収した。これを小型ミキサーに入れて、減圧しながら150℃で6時間攪拌・乾燥し、平均粒径が26μmのSmFe17合金粉末120gを得た。
この合金粉の組成は、Smが24.3質量%、Oが0.17質量%、Caが0.01質量%未満、残部が鉄であり、主相がThZn17型結晶構造のSmFe17だった。
得られた合金粉を実施例1と同様に管状炉に入れてSmFe17粉末を作製した。この粉末を樹脂に埋め込み断面を研磨してSEM反射電子像観察したところ、粒子内部に未窒化相を示す明るいコントラストのある粒子が1割ほどの粒子で確認された。また微粉砕した後の微粉末の磁気特性を測定したところ、表1に示すように保磁力HcJは0.81MA/m、未窒化相のために角形性Hkは0.31MA/mと低い値を示した。
【0081】
【表1】
【0082】
「評価」
実施例1と比較例1とを対比すると、表1に示した合金粉末の磁気特性結果から、実施例1では保磁力HcJ、角形性Hkともに比較例1よりも高い値を示している。実施例1では湿式処理でエチレングリコールを用いたので、水洗浄している比較例1よりも粉末の酸素量が低減していることから、湿式処理でエチレングリコールを用いたことの顕著な作用効果が分かる。
【0083】
[実施例2]
(1) まず、実施例1と同様にして原料物質と還元剤を同量配合し、同一条件で加熱処理し還元拡散反応生成物を得た。ここで湿式処理せずに、この反応生成物を管状炉に入れて、アンモニアガス:水素ガス=1:2の流量比で流通させながら450℃で6時間かけて窒化熱処理し、その後雰囲気をアルゴンガスに切り代えて1時間熱処理した。
冷却後に取り出した窒化反応生成物100gを550gのプロピレングリコールに投入し攪拌しながら12時間かけてスラリー化した。このスラリーの攪拌をやめて2分静置した後、その上澄みを捨て、新たにプロピレングリコールを500g加えて5分攪拌し、2分静置し合金粉が沈降したところで上澄みを捨てる。この操作を5回繰り返した。
再びプロピレングリコール500gを加えて合金粉が攪拌されている状態で、酢酸10gを水含有率が10質量%のプロピレングリコールと水の混合液100gで希釈した溶液を用意し、スポイトで40分かけて滴下した。その後、上澄みを捨てて再びプロピレングリコール500gを加え攪拌し上澄みを除去する操作を3回行い、最後に脱水エチルアルコール500gでプロピレングリコールを置換した後、ヌッチェでろ過して合金粉を回収した。これを小型ミキサーに入れて、減圧しながら180℃で2時間攪拌・乾燥し、平均粒径が19μmのSmFe17合金粉末121gを得た。
ここで使用した洗浄液において、水含有率が最も高くなるのは、エチレングリコールに、酢酸とエチレングリコールと水の混合溶液を全量滴下した後であり、このときの洗浄液の水含有率は1.7質量%である。
この合金粉の組成は、Smが23.3質量%、Nが3.5質量%、Oが0.09質量%、Caが0.01質量%未満、残部が鉄であり、主相がThZn17型結晶構造のSmFe17だった。
この粉末を樹脂に埋め込み断面を研磨してSEM反射電子像観察したところ、粒子内部まで均一に窒化されていることを確認した。また得られた粉末は、エチルアルコールを溶媒とし媒体攪拌ミルでD50が2.3μmになるまで微粉砕し真空乾燥して振動試料型磁力計で磁気特性を測定したところ、表2に示すように保磁力HcJは0.94MA/m、角形性Hkは0.57MA/mと良好だった。
【0084】
(2) 次に、湿式処理におけるすべての洗浄液を、イオン交換水を40質量%含むプロピレングリコール500gとした以外は上記(1)と同様にして、平均粒径が18μmのSmFe17合金粉末119gを得た。
ここで使用した洗浄液において、水含有率が最も高くなるのは、プロピレングリコールに、酢酸とプロピレングリコールと水の混合溶液を全量滴下した後であり、このときの洗浄液の水含有率は35質量%である。
この合金粉の組成は、Smが23.2質量%、Nが3.5質量%、Oが0.11質量%、Caが0.01質量%、残部が鉄であり、主相がThZn17型結晶構造のSmFe17だった。
この粉末を樹脂に埋め込み断面を研磨してSEM反射電子像観察したところ、粒子内部まで均一に窒化されていることを確認した。また得られた粉末は、エチルアルコールを溶媒とし媒体攪拌ミルでD50が2.3μmになるまで微粉砕し真空乾燥して振動試料型磁力計で磁気特性を測定したところ、表2に示すように保磁力HcJは0.90MA/m、角形性Hkは0.55MA/mと良好だった。
【0085】
[比較例2]
(1) まず、実施例2と同様にして原料物質と還元剤を同量配合し、同一条件で加熱処理し還元拡散反応生成物とし、ここで湿式処理せずに、引き続き窒化熱処理し窒化反応生成物を得た。
この窒化反応生成物100gを1Lの水中に投入し攪拌しながら、12時間かけてスラリー化した。このスラリーを2分静置した後、その上澄みを捨て、新たに水を1L加えて5分攪拌し、2分静置してSmFeN合金粉が沈降したところで水酸化カルシウムが懸濁する上澄みを捨てる。この操作を5回繰り返した。再び水1Lを加えて合金粉が攪拌されている状態で、酢酸10gを水100gで希釈した溶液を用意し、スポイトで40分かけて滴下した。その後、上澄みを捨てて再び水1Lを加え攪拌し上澄みを除去する操作を3回行い、最後に脱水エチルアルコール500gで水を置換した後、ヌッチェでろ過して合金粉を回収した。これを小型ミキサーに入れて、減圧しながら180℃で2時間攪拌・乾燥し、平均粒径が20μmのSmFe17合金粉末119gを得た。
この合金粉の組成は、Smが23.1質量%、Nが3.5質量%、Oが0.18質量%、Caが0.01質量%未満、残部が鉄であり、主相がThZn17型結晶構造のSmFe17だった。
この粉末を樹脂に埋め込み断面を研磨してSEM反射電子像観察したところ、未窒化相を有する粒子が個数基準で12%ほどあるのを確認した。得られた粉末は、エチルアルコールを溶媒とし媒体攪拌ミルでD50が2.3μmになるまで微粉砕し真空乾燥して振動試料型磁力計で磁気特性を測定したところ、表2に示すように保磁力HcJは0.78MA/m、角形性Hkは0.40MA/mだった。
【0086】
(2) 次に、湿式処理におけるすべての洗浄液を、イオン交換水を60質量%含むプロピレングリコール500gとした以外は上記(1)と同様にして、平均粒径が21μmのSmFe17合金粉末120gを得た。
この合金粉の組成は、Smが23.2質量%、Nが3.5質量%、Oが0.15質量%、Caが0.01質量%未満、残部が鉄であり、主相がThZn17型結晶構造のSmFe17だった。
この粉末を樹脂に埋め込み断面を研磨してSEM反射電子像観察したところ、未窒化相を有する粒子が個数基準で4%ほどあるのを確認した。得られた粉末は、エチルアルコールを溶媒とし媒体攪拌ミルでD50が2.3μmになるまで微粉砕し真空乾燥して振動試料型磁力計で磁気特性を測定したところ、表2に示すように保磁力HcJは0.83MA/m、角形性Hkは0.44MA/mだった。
【0087】
【表2】
【0088】
「評価」
実施例2(1)と比較例2(1)とを対比すると、表2に示した合金粉末の磁気特性結果から、湿式処理でプロピレングリコールを用いた実施例2(1)では保磁力HcJ、角形性Hkともに、水を用いた比較例2(1)よりも高い値を示している。また、実施例2(2)では、水含有率が60質量%以上のプロピレングリコール液で洗浄している比較例2(2)よりも粉末の酸素量が低減していることから、湿式処理で水含有率が40質量%以下のプロピレングリコールを用いたことの顕著な作用効果が分かる。
【0089】
[実施例3]
実施例1の操作を同様の条件で繰り返して、SmFe17合金粉末600gを得た。この合金粉は、平均で、粒径(D50)が29μmで、Smが24.5質量%、Oが0.07質量%、Caが0.01質量%未満、残部が鉄の組成を持ち、主相がThZn17型結晶構造のSmFe17である。
次に、このSmFe17合金粉末500gに対して、平均粒径(D50)が1.5μmで質量減量が1%以下の酸化サマリウムSm粉末33.0gと、平均粒径(D50)が0.3μmのMn粉末13.0gを加え、n−ヘプタンを溶媒とする媒体攪拌ミルで混合しながら微粉砕し、その後減圧乾燥した。得られた混合粉末の平均粒径(D50)は2.1μmだった。
この混合粉末に対してArガス雰囲気中で1〜2mmの粒状金属カルシウム153gを加えてロッキングミキサーで30min混合し、還元拡散処理として、鉄るつぼに入れてArガス雰囲気下で加熱し、860℃で1.5時間保持して冷却した。
回収された反応生成物を10mm以下になるよう解砕し、窒化熱処理として、管状炉に入れてNガス3.6L/minの気流中で昇温し400℃で22h保持し、温度を維持したままNHガス1.5L/min、Hガス2.1L/minの混合ガスに切り代えて60min保持し、さらに同じ温度でArガス3.6L/minに切り代えて60min保持して冷却した。
冷却後に取り出した窒化反応生成物100gを500gのエチレングリコールに投入し攪拌しながら12時間かけてスラリー化した。このスラリーの攪拌を止めて2分静置した後、その上澄みを捨て、新たにエチレングリコールを500g加えて5分攪拌し、2分静置し合金粉が沈降したところで上澄みを捨てる。この操作を8回繰り返した。続いて脱水エチルアルコール500gでエチレングリコールを置換した後、ヌッチェでろ過して合金粉を回収した。これを小型ミキサーに入れて、減圧しながら150℃で2時間攪拌・乾燥し、平均粒径(D50)が3.2μmの希土類鉄窒素系磁性粉末71gを得た。
前記実施例1の操作では還元拡散反応生成物を酸洗浄しているものの、この実施例3では、窒化反応生成物に対して酸洗浄を行っていない。そのため湿式処理で使用した洗浄液には水が含まれていない(水含有率は0質量%である)。
この希土類鉄窒素系磁性粉末は、主相がThZn17型の結晶構造で、TEM観察により、粒子表面にSm(Fe,Mn)17シェル層、その内部にMnがほとんど拡散していないSmFe17コアを有するコアシェル構造を有するものであることが確認された。そしてこのシェル層には、セル状微結晶粒とアモルファス境界層とからなる金属組織と、Sm(Fe,Mn)17化合物結晶相の内部にMnおよびNの濃度が高く長短のあるワイヤー状形態をしたアモルファス相がランダムないし規則的に存在する金属組織とが観察された。この磁性粉末の全体を分析すると、平均組成は、Smが28.1質量%、Mnが1.7質量%、Nが3.6質量%、Oが0.38質量%、Caが0.17質量%、残部が鉄であった。また、磁性粉末の磁気特性を振動試料型磁力計で測定したところ、表3に示すように保磁力HcJは1.18MA/m、角形性Hkは0.27MA/mだった。
【0090】
[比較例3]
実施例3と同様にして原料物質と還元剤を同量配合し、同一条件で加熱処理し還元拡散反応生成物とし、さらに窒化熱処理し窒化反応生成物を得た。
冷却後に取り出した窒化反応生成物100gを1Lの水中に投入し攪拌しながら、12時間かけてスラリー化した。このスラリーの攪拌をやめて2分静置した後、その上澄みを捨て、新たに水を1L加えて5分攪拌し、2分静置してSmFe合金粉が沈降したところで水酸化カルシウムが懸濁する上澄みを捨てる。この操作を8回繰り返した。続いて脱水エチルアルコール500gで水を置換した後、ヌッチェでろ過して合金粉を回収した。これを小型ミキサーに入れて、減圧しながら150℃で2時間攪拌・乾燥し、平均粒径(D50)が3.0μmの希土類鉄窒素系磁性粉末68gを得た。
この希土類鉄窒素系磁性粉末においても、主相がThZn17型の結晶構造で、TEM観察により、粒子表面にSm(Fe,Mn)17シェル層、その内部にMnがほとんど拡散していないSmFe17コアを有するコアシェル構造を有するものであることが確認され、このシェル層には、セル状微結晶粒とアモルファス境界層とからなる金属組織と、Sm(Fe,Mn)17化合物結晶相の内部にMnおよびNの濃度が高く長短のあるワイヤー状形態をしたアモルファス相がランダムないし規則的に存在する金属組織とが観察された。この磁性粉末の全体を分析すると、平均組成は、Smが27.9質量%、Mnが1.7質量%、Nが3.5質量%、Oが1.5質量%、Caが0.36質量%、残部が鉄であり、OとCaが実施例3に比べて高いことから酸化が進んだものと考えられる。また、磁性粉末の磁気特性を振動試料型磁力計で測定したところ、表3に示すように保磁力HcJは0.61MA/m、角形性Hkは0.14MA/mとかなり低い値だった。
【0091】
【表3】
【0092】
「評価」
実施例3と比較例3とを対比すると、表3に示した合金粉末の磁気特性結果から、実施例3では保磁力HcJ、角形性Hkともに比較例3よりも高い値を示している。実施例3では湿式処理でエチレングリコールを用いたので、水洗浄している比較例3よりも粉末の酸素量やCa量が低減していることから、湿式処理でエチレングリコールを用いたことの顕著な作用効果が分かる。
【0093】
[実施例4]
平均粒径(D50)が4.7μmで質量減量が1%以下の酸化ネオジムNd粉末405g、平均粒径(D50)が40μmの鉄粉405g、平均粒径(D50)が63μmのフェロボロン粉(B含量18.7質量%)65g、1〜2mmの粒状金属カルシウム217g、および無水塩化カルシウム20gを小型ミキサーで混合し、鉄るつぼに入れて、アルゴンガス雰囲気下、1000℃で3時間加熱処理した。
冷却後に取り出した反応生成物100gを500gのエチレングリコールに投入し攪拌しながら12時間かけてスラリー化した。このスラリーの攪拌を止めて2分静置した後、その上澄みを捨て、新たにエチレングリコールを500g加えて5分攪拌し、2分静置しNdFeB合金粉が沈降したところで上澄みを捨てる。この操作を5回繰り返した。再びエチレングリコール500gを加えて合金粉が攪拌されている状態で、酢酸20gを水含有率が50質量%のエチレングリコールと水の混合液20gで希釈した溶液を用意し、スポイトで滴下しながらpH=6.0を5分間維持した。その後、上澄みを捨てて再びエチレングリコール500gを加え攪拌し上澄みを除去する操作を3回行い、最後に脱水エチルアルコール500gでエチレングリコールを置換した後、ヌッチェでろ過して合金粉を回収した。これを小型ミキサーに入れて、減圧しながら100℃で5時間攪拌・乾燥し、平均粒径が20μmのNdFeB合金粉末58gを得た。
実施例4で使用した洗浄液において、水含有率が最も高くなるのは、エチレングリコールに、酢酸とエチレングリコールと水の混合溶液を全量滴下した後であり、このときの洗浄液の水含有率は1.9質量%である。
この合金粉の組成は、Ndが33.5質量%、Bが1.3質量%、Oが0.07質量%、Caが0.01質量%、残部が鉄であり、主相の結晶構造はNdFe14B型正方晶だった。
【0094】
[比較例4]
実施例4と同様にして原料物質と還元剤を同量配合し、同一条件で加熱処理し還元拡散反応生成物を得た。
この反応生成物100gを1Lの水中に投入し攪拌しながら、12時間かけてスラリー化した。このスラリーの攪拌を止めて2分静置した後、その上澄みを捨て、新たに水を1L加えて5分攪拌し、2分静置してSmFe合金粉が沈降したところで水酸化カルシウムが懸濁する上澄みを捨てる。この操作を5回繰り返した。再び水1Lを加えて合金粉が攪拌されている状態で、酢酸20gを水20gで希釈した溶液を用意し、スポイトで滴下しながらpH=6.0を5分間維持した。その後、上澄みを捨てて再び水1Lを加え攪拌し上澄みを除去する操作を3回行い、最後に脱水エチルアルコール500gで水を置換した後、ヌッチェでろ過して合金粉を回収した。これを小型ミキサーに入れて、減圧しながら100℃で5時間攪拌・乾燥し、平均粒径が21μmのNdFeB合金粉末63gを得た。
この合金粉の組成は、Ndが33.4質量%、Bが1.3質量%、Oが0.17質量%、Caが0.02質量%、残部が鉄であり、主相の結晶構造はNdFe14B型正方晶だった。実施例4に比べてO量が高いのが分かる。
【0095】
「評価」
実施例4と比較例4とを対比すると、表4に示した合金粉末の酸素量の結果から、実施例4では比較例4よりも粉末の酸素量が低減している。実施例4では湿式処理でエチレングリコールを用いており、水洗浄している比較例4に対する顕著な作用効果が得られている。
【0096】
[実施例5]
平均粒径(D50)が2.3μmで質量減量が1%以下の酸化サマリウムSm粉末157g、平均粒径(D50)が62μmのコバルト粉264g、1〜2mmの粒状金属カルシウム76gを小型ミキサー混合し、鉄るつぼに入れて、アルゴンガス雰囲気下、950℃で2時間加熱処理した。
冷却後に取り出した反応生成物100gを500gのエチレングリコールに投入し攪拌しながら6時間かけてスラリー化した。このスラリーの攪拌を止めて2分静置した後、その上澄みを捨て、新たにエチレングリコールを500g加えて5分攪拌し、2分静置しSmFe合金粉が沈降したところで上澄みを捨てる。この操作を5回繰り返した。再びエチレングリコール500gを加えて合金粉が攪拌されている状態で、酢酸20gを水含有率が50質量%のエチレングリコールと水の混合液20gで希釈した溶液を用意し、スポイトで滴下しながらpH=4.0を5分間維持した。その後、上澄みを捨てて再びエチレングリコール500gを加え攪拌し上澄みを除去する操作を3回行い、最後に脱水エチルアルコール500gでエチレングリコールを置換した後、ヌッチェでろ過して合金粉を回収した。これを小型ミキサーに入れて、減圧しながら100℃で5時間攪拌・乾燥し、平均粒径が20μmのSmCo合金粉末58gを得た。
実施例5で使用した洗浄液において、水含有率が最も高くなるのは、エチレングリコールに、酢酸とエチレングリコールと水の混合溶液を全量滴下した後であり、このときの洗浄液の水含有率は1.9質量%である。
この合金粉の組成は、Smが33.8質量%、Oが0.06質量%、Caが0.01質量%、残部がコバルトであり、主相の結晶構造はCaCu型六方晶だった。
【0097】
[比較例5]
実施例5と同様にして原料物質と還元剤を同量配合し、同一条件で加熱処理し還元拡散反応生成物を得た。
この反応生成物100gを1Lの水中に投入し攪拌しながら、6時間放置しスラリー化した。このスラリーを攪拌をやめて2分静置した後、その上澄みを捨て、新たに水を1L加えて5分攪拌し、2分静置してSmFe合金粉が沈降したところで水酸化カルシウムが懸濁する上澄みを捨てる。この操作を5回繰り返した。再び水1Lを加えて合金粉が攪拌されている状態で、酢酸20gを水20gで希釈した溶液を用意し、スポイトで滴下しながらpH=4.0を5分間維持した。その後、上澄みを捨てて再び水1Lを加え攪拌し上澄みを除去する操作を3回行い、最後に脱水エチルアルコール500gで水を置換した後、ヌッチェでろ過して合金粉を回収した。これを小型ミキサーに入れて、減圧しながら100℃で5時間攪拌・乾燥し、平均粒径が19μmのSmCo合金粉末55gを得た。
この合金粉の組成は、Smが33.6質量%、Oが0.18質量%、Caが0.04質量%、残部がコバルトであり、主相の結晶構造はCaCu型六方晶だった。
【0098】
【表4】
【0099】
「評価」
実施例5と比較例5とを対比すると、表4に示した合金粉末の酸素量の結果から、実施例5では比較例5よりも粉末の酸素量とCa量が低減している。実施例5では湿式処理でエチレングリコールを用いており、水洗浄している比較例5に対する顕著な作用効果が得られている。
【0100】
[実施例6]
平均粒径(D50)が3.8μmで質量減量が1%以下の酸化ランタンLa粉末67g、粒度53μm以下のニッケル粉100g、1〜2mmの粒状金属カルシウム30gを小型ミキサー混合し、鉄るつぼに入れて、アルゴンガス雰囲気下、1000℃で4時間加熱処理した。
冷却後に取り出した反応生成物100gを、イオン交換水を50質量%含むエチレングリコール500gに投入し攪拌しながら6時間放置しスラリー化した。このスラリーの攪拌を止めて2分静置した後、その上澄みを捨て、新たにイオン交換水を50質量%含むエチレングリコールを500g加えて5分攪拌し、2分静置しLaNi合金粉が沈降したところで上澄みを捨てる。この操作を5回繰り返した。再びイオン交換水を45質量%含むエチレングリコール500gを加えて合金粉が攪拌されている状態で、酢酸8gを水含有率が50質量%のエチレングリコールと水の混合液20gで希釈した溶液を用意し、スポイトで滴下しながらpH=4.0を10分間維持した。その後、上澄みを捨てて再びイオン交換水を50質量%含むエチレングリコール500gを加え攪拌し上澄みを除去する操作を3回行い、最後に脱水エチルアルコール500gでエチレングリコールを置換した後、ヌッチェでろ過して合金粉を回収した。これを小型ミキサーに入れて、減圧しながら100℃で5時間攪拌・乾燥し、平均粒径が32μmのLaNi合金粉末73gを得た。
実施例6で使用した洗浄液において、水含有率が最も高いのは、イオン交換水を50質量%含むエチレングリコールでデカンテーションしているときであり、このときの洗浄液の水含有率は50質量%である。
この合金粉の組成は、Laが36.6質量%、Oが0.05質量%、Caが0.02質量%、残部がニッケルであり、主相の結晶構造はCaCu型六方晶だった。
【0101】
[実施例7]
湿式処理におけるすべての洗浄液を、イオン交換水を25質量%含むエチレングリコール500gとした以外は実施例6と同様にして、平均粒径が33μmのLaNi合金粉末74gを得た。ここで使用した洗浄液の水含有率は25質量%である。
この合金粉の組成は、Laが36.8質量%、Oが0.04質量%、Caが0.06質量%、残部がニッケルであり、主相の結晶構造はCaCu型六方晶だった。
【0102】
[実施例8]
湿式処理におけるすべての洗浄液を、イオン交換水を5質量%含むエチレングリコール500gとした以外は実施例6と同様にして、平均粒径が35μmのLaNi合金粉末77gを得た。ここで使用した洗浄液の水含有率は5質量%である。
この合金粉の組成は、Laが37.0質量%、Oが0.03質量%、Caが0.07質量%、残部がニッケルであり、主相の結晶構造はCaCu型六方晶だった。
【0103】
[実施例9]
湿式処理におけるすべての洗浄液を、水を含まないエチレングリコール500gとした以外は実施例6と同様にして、平均粒径が37μmのLaNi合金粉末78gを得た。ここで使用した洗浄液の水含有率は0質量%である。
この合金粉の組成は、Laが37.2質量%、Oが0.02質量%、Caが0.1質量%、残部がニッケルであり、主相の結晶構造はCaCu型六方晶だった。
【0104】
[比較例6]
実施例6と同様にして原料物質と還元剤を同量配合し、同一条件で加熱処理し還元拡散反応生成物を得た。
この反応生成物100gを0.5Lのイオン交換水中に投入し攪拌しながら6時間かけてスラリー化した。このスラリーの攪拌を止めて2分静置した後、その上澄みを捨て、新たにイオン交換水を0.5L加えて5分攪拌し、2分静置してLaNi合金粉が沈降したところで水酸化カルシウムが懸濁する上澄みを捨てる。この操作を5回繰り返した。再び水0.5Lを加えて合金粉が攪拌されている状態で、酢酸8gをイオン交換水20gで希釈した溶液を用意し、スポイトで滴下しながらpH=4.0を10分間維持した。その後、上澄みを捨てて再びイオン交換水0.5Lを加え攪拌し上澄みを除去する操作を3回行い、最後に脱水エチルアルコール500gで水を置換した後、ヌッチェでろ過して合金粉を回収した。これを小型ミキサーに入れて、減圧しながら100℃で5時間攪拌・乾燥し、平均粒径が34μmのLaNi合金粉末75gを得た。
この合金粉の組成は、Laが36.9質量%、Oが0.13質量%、Caが0.02質量%、残部がニッケルであり、主相の結晶構造はCaCu型六方晶だった。
【0105】
[比較例7]
湿式処理におけるすべての洗浄液を、イオン交換水を60質量%含むエチレングリコール500gを用いた以外は比較例6と同様にして、平均粒径が31μmのLaNi合金粉末76gを得た。ここで使用した洗浄液の水含有率は60質量%である。
この合金粉の組成は、Laが36.5質量%、Oが0.10質量%、Caが0.03質量%、残部がニッケルであり、主相の結晶構造はCaCu型六方晶だった。
【0106】
【表5】
【0107】
「評価」
表5に示した合金粉末の酸素量の結果から、実施例6〜9では比較例6、7よりも粉末の酸素量が低減している。実施例6、9と比較例7とを対比すれば、湿式処理でエチレングリコール、又は水含有率50質量%以下のエチレングリコール液を用いることによる顕著な作用効果が分かる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の希土類遷移金属合金粉末は、含有する酸素量を従来よりも低く抑えることができるため、希土類磁石合金、水素吸蔵合金、磁歪合金、光磁気記録合金、磁気冷凍材料など幅広い分野の原料合金として、あるいは希土類焼結磁石又はボンド磁石として極めて有用である。