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特開2019-207124生体内温度測定装置および生体内温度測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-207124(P2019-207124A)
(43)【公開日】2019年12月5日
(54)【発明の名称】生体内温度測定装置および生体内温度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/00 20060101AFI20191108BHJP
   A61B 5/01 20060101ALI20191108BHJP
【FI】
   G01K7/00 361C
   G01K7/00 361T
   G01K7/00 341Z
   A61B5/01 250
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-101586(P2018-101586)
(22)【出願日】2018年5月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】瀬山 倫子
(72)【発明者】
【氏名】松永 大地
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄次郎
【テーマコード(参考)】
4C117
【Fターム(参考)】
4C117XB17
4C117XE16
4C117XE23
4C117XF13
4C117XJ16
4C117XJ18
(57)【要約】
【課題】核心部温度の変動をより正確に把握する。
【解決手段】二つの温度センサ(20u、20s)を含む熱流束センサ(20)を用いて生体の核心部温度の時系列データを取得する一方、血流センサ(30)で前記熱流束センサ(20)近傍の血流量を測定し、演算回路(40)によって、血流センサ(30)で測定された血流量と、予め用意した血流量と生体の核心部温度の変動が表皮温度に反映されるまでの遅延時間との関係とに基づいて、生体の核心部温度の変動が表皮温度に反映されるまでの遅延時間を算出し、前記遅延時間に基づいて前記生体の核心部温度に対応づけられた時刻を補正する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の表皮温度を測定する温度センサと、
前記生体の体表部から放出される熱流束の大きさを測定する熱流束センサと、
前記熱流束センサの近傍の血流量を測定する血流センサと、
前記熱流束センサの近傍の血流量と前記生体の核心部温度の変動が表皮温度に反映されるまでの遅延時間に関するパラメータとの関係を記憶した記憶部と、
前記温度センサで測定された表皮温度と前記熱流束センサで測定された熱流束の大きさから前記生体の核心部温度を算出するとともに、前記熱流束センサの近傍の血流量と前記記憶部に記憶された前記関係とに基づいて前記遅延時間を算出し、前記遅延時間に基づいて前記生体の核心部温度に対応づけられた時刻を補正するように構成された演算回路と
を備える生体内温度測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載された生体内温度測定装置において、
前記演算回路は、
前記温度センサで測定された表皮温度と前記熱流束センサで測定された熱流束の大きさから前記生体の核心部温度を算出する第1算出部と、
前記熱流束センサの近傍の血流量と前記記憶部に記憶された前記関係とに基づいて前記遅延時間を算出する第2算出部と、
前記遅延時間に基づいて前記生体の核心部温度に対応づけられた時刻を補正する補正部と
を有することを特徴とする生体内温度測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された生体内温度測定装置において、
前記パラメータは、前記生体の核心部温度の変動に対する表皮温度の変動の時定数または前記遅延時間であることを特徴とする生体内温度測定装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載された生体内温度測定装置において、
二以上の前記血流センサを備え、
前記演算回路は、二以上の前記血流センサでそれぞれ測定した血流量の代表値を求め、前記血流量の代表値と前記記憶部に記憶された前記関係とに基づいて前記遅延時間を算出する
を有することを特徴とする生体内温度測定装置。
【請求項5】
生体の表皮温度と前記生体の体表部から放出される熱流束の大きさとを測定するステップと、
前記体表部の血流量を測定するステップと、
測定された前記表皮温度と前記熱流束の大きさとから前記生体の核心部温度を算出するとともに、予め用意した、前記血流量と前記生体の核心部温度の変動が表皮温度に反映されるまでの遅延時間に関するパラメータとの関係と、前記体表部の血流量と、に基づいて前記遅延時間を算出し、前記遅延時間に基づいて前記生体の核心部温度に対応づけられた時刻を補正するステップと、を有する生体内温度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の核心部温度を測定する生体内温度測定装置および生体内温度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体において、表皮から核心部に向かってある一定の深さを超えると、外気温の変化等に左右されない温度領域が存在する(以下、その部分の温度を「核心部温度」または「深部体温」という。)。核心部温度の変動を計測することは、体内リズムの把握に有用であることが知られている。
核心部温度を測定するにあたり、体内留置といった侵襲的な測定ではなく、経皮的な温度測定法は、手軽で、日常的な体温管理に有用である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】中山昭雄、「新生理科体系 第22巻」、医学書院(1987)
【非特許文献2】中川慎也 他、「MEMS熱流束センサによるウェアラブル深部体温計の提案」、電気学会論文誌E、135 巻 (2015) 8 号 p. 343-348
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の経皮的な体温計測装置では、核心部温度の変動を正確に把握することが困難であった。その理由の一つが、核心部温度の変動が表皮で測定される温度に反映されるまでの時間の変動、すなわち遅延時間の変動である。
【0005】
図15に示すように、表皮から核心部温度Tcの温度領域までの深さは、血流量に依存することが知られている(非特許文献1、図59)。体表部の血流は、真皮層に存在する動静脈吻合(AVA:Arteriovenous anastomoses)と呼ばれる血管が身体の神経活動によって拡張することで増加する。体表部の血流量が増加すると、核心部の熱エネルギーが血流に乗って表層部へ移動してくるので、表皮から核心部温度の温度領域までのみかけの深さが浅くなる。
【0006】
体表部の血流量が時々刻々と変化すれば、表皮から核心部温度の温度領域までのみかけの深さが変化して、表皮で測定される温度に核心部温度の変動が反映されるまでの遅延時間も変動する。そのため、経皮的に測定された値が、実際にはどの時刻の核心部温度を反映した値なのか分からず、結果的に、核心部温度の変動を正確に捉えることができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、核心部温度の変動をより正確に把握することができる生体内温度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明に係る生体内温度測定装置は、生体の表皮温度を測定する温度センサ(20s)と、前記生体の体表部から放出される熱流束の大きさを測定する熱流束センサ(20)と、前記熱流束センサの近傍の血流量を測定する血流センサ(30)と、前記熱流束センサの近傍の血流量と前記生体の核心部温度の変動が表皮温度に反映されるまでの遅延時間に関するパラメータとの関係を記憶した記憶部(50)と、前記温度センサで測定された表皮温度と前記熱流束センサで測定された熱流束の大きさから前記生体の核心部温度を算出するとともに、前記熱流束センサの近傍の血流量と前記記憶部に記憶された前記関係とに基づいて前記遅延時間を算出し、前記遅延時間に基づいて前記生体の核心部温度に対応づけられた時刻を補正するように構成された演算回路(40)とを備える。
【0009】
本発明に係る生体内温度測定装置において、前記演算回路(40)は、前記温度センサで測定された表皮温度と前記熱流束センサで測定された熱流束の大きさから前記生体の核心部温度を算出する第1算出部(41)と、前記熱流束センサの近傍の血流量と前記記憶部に記憶された前記関係とに基づいて前記遅延時間を算出する第2算出部(43)と、前記遅延時間に基づいて前記生体の核心部温度に対応づけられた時刻を補正する補正部(44)とを有していてもよい。
【0010】
本発明に係る生体内温度測定装置において、前記パラメータは、前記生体の核心部温度の変動に対する表皮温度の変動の時定数または前記遅延時間とすることができる。
【0011】
本発明に係る生体内温度測定装置は、二以上の前記血流センサ(30−1、30−2)を備え、前記演算回路(40)は、二以上の前記血流センサでそれぞれ測定した血流量の代表値を求め、前記関係を用いて前記血流量の代表値に対応する前記パラメータの値を求めるようにしてもよい。
【0012】
また、本発明に係る生体内温度測定方法は、生体の表皮温度と前記生体の体表部から放出される熱流束の大きさとを測定するステップ(S10)と、前記体表部の血流量を測定するステップと(S20)と、測定された前記表皮温度と前記熱流束の大きさとから前記生体の核心部温度を算出するとともに、予め用意した、前記血流量と前記生体の核心部温度の変動が表皮温度に反映されるまでの遅延時間に関するパラメータとの関係と、前記体表部の血流量と、に基づいて前記遅延時間を算出し、前記遅延時間に基づいて前記生体の核心部温度に対応づけられた時刻を補正するステップ(S40、S50、S70)と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、生体の体表部の血流量に基づいて算出した遅延時間に基づいて核心部温度の時系列データの時刻を補正することによって、核心部温度の変動をより正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態に係る生体内温度測定装置の構成を示す図である。
図2図2は、温度センサを含む熱流束センサの構成を示す図である。
図3図3は、第1の実施の形態に係る生体内温度測定装置の構成を示す図である。
図4図4は、第1の実施の形態に係る生体内温度測定装置における熱流束センサと血流センサとの位置関係を説明する図である。
図5図5は、生体の皮下組織の温度分布を模式的に説明する図である。
図6図6は、生体の皮下組織の熱流束を模式的に説明する図である。
図7図7は、生体の皮下組織の熱流束と血流との関係を模式的に説明する図である。
図8図8は、血流量と、生体の核心部温度の変動に対する表皮温度の変動の時定数との関係を説明する図である。
図9図9は、第1の実施の形態に係る生体内温度測定装置の動作を説明するフローチャートである。
図10図10は、遅延時間に基づく核心部温度の時系列データの補正について説明する図である。
図11図11は、遅延時間に基づくデータの補正によって復元された核心部温度変動の周波数情報について説明する図である。
図12図12は、本発明の第2の実施の形態に係る生体内温度測定装置の構成を示す図である。
図13図13は、本発明の第2の実施の形態に係る生体内温度測定装置における熱流束センサと血流センサとの位置関係を説明する図である。
図14図14は、本発明の第2の実施の形態に係る生体内温度測定装置における熱流束センサと血流センサとの位置関係の変形例を説明する図である。
図15図15は、表皮から核心部温度の温度領域までの深さと血流量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
[第1の実施の形態]
[生体内温度測定装置の測定原理]
本発明の第1の実施の形態に係る生体内温度測定装置1は、図1に示すように、シート状の基材80の上に、熱流束センサ20と、血流センサ30と、演算回路40と、メモリ50と、外部とのI/F回路として機能する通信回路60と、演算回路40や通信回路60等に電力を供給する電池70とを備えている。
【0017】
ここで熱流束センサ20は、単位時間・単位面積当たりの熱の移動を計測するデバイスである。本実施の形態においては、図2に示すように、熱抵抗体20rの上面と下面とにそれぞれ温度センサ20uと温度センサ20sと有する熱流束センサ20を用い、生体90の体表部から放出される熱流束の大きさを測定すると同時に、温度センサ20sで表皮温度Tsを測定することとする。温度センサ20u、20sとしては、例えば、公知のサーミスタや、熱電対を用いたサーモパイル、温度により音速が変わることを利用した超音波温度計、温度により光吸収率が変わることを利用した赤外線温度センサその他の光温度計などを用いることができる。
【0018】
血流センサ30は、熱流束センサ20の近傍に配置され、生体90の体表部の血流量を測定するデバイスである。このような血流センサ30としては、例えば、レーザを皮膚に照射することで皮下組織内の血流量を測定するレーザドップラー血流計その他の光学式血流量センサや、超音波血流計を用いることができる。
【0019】
メモリ50は、生体の核心部温度の変動が表皮温度に反映されるまでの遅延時間に関するパラメータと体表部の血流量との関係を記憶している。
生体の核心部温度の変動が表皮温度に反映されるまでの遅延時間に関するパラメータは、具体的には、生体の核心部温度の変動に対する表皮温度の変動の時定数や、生体の核心部温度の変動が表皮温度に反映されるまでの遅延時間である。血流量と時定数または遅延時間との関係は、テーブルの形式でメモリ50に記憶しておけばよいが、関数として記憶されていてもよい。なお、血流量と時定数または遅延時間との関係については後述する。
また、メモリ50は、熱流束センサ20で測定した結果から算出した核心部温度の時系列データ、すなわち、核心部温度とその核心部温度を測定した時刻とが互いに関連づけられたデータや、後述するように、その時刻を補正した、補正後の時系列データを記憶する。
【0020】
演算回路40は、計時部42を備え、温度センサ20sで測定された表皮温度と熱流束センサ20で測定された熱流束の大きさから生体の核心部温度Tcを算出して、核心部温度Tcの時系列データを生成するとともに、熱流束センサ20近傍の体表部の血流量と、メモリ50に記憶された遅延時間と血流量との関係とに基づいて、生体の核心部温度Tcの変動が表皮温度に反映されるまでの遅延時間Δtを算出し、この遅延時間Δtに基づいて、時系列データを構成する各核心部温度Tcに対応づけられた時刻を補正するように構成されている。
【0021】
このような演算回路40は、演算装置とコンピュータ・プログラムによって構成することができる。例えば、演算回路40は、温度センサ20sで測定された表皮温度Tsと熱流束センサ20で測定された熱流束の大きさから、生体の核心部温度Tcを算出し、計時部42によって計時された核心部温度Tcの計測時刻とともに、核心部温度Tcの時系列データを生成する第1算出部41と、熱流束センサ20近傍の体表部の血流量とメモリ50に記憶された、血流量と遅延時間との関係とに基づいて、生体の核心部温度Tcの変動が表皮温度Tsに反映されるまでの遅延時間Δtを算出する第2算出部43と、遅延時間Δtに基づいて核心部温度Tcに対応づけられた時刻を補正する補正部44とから構成される。
【0022】
通信回路60は、演算回路40によって補正された温度の時系列データを外部に出力したり、エラーが発生したときにアラームを出力したりするためのI/F回路である。このような通信回路60としては、有線でデータ等を出力する場合は、USBその他のケーブルが接続できる出力回路となるが、例えば、Bluetooth(登録商標)等に準拠した無線通信回路を用いることもできる。
【0023】
シート状の基材80は、熱流束センサ20、血流センサ30、演算回路40、メモリ50、通信回路60および電池70を載置するための土台として機能する他、これらの要素を電気的に接続する図示しない配線を備えている。生体内温度測定装置1を生体の表皮上に載置することを考えると、シート状の基材80には、変形可能なフレキシブル基板を用いることが望ましい。
また、図3に示すように、シート状の基材80の一部には開口82、83が設けられており、熱流束センサ20および血流センサ30は、これらの開口82、83からそれぞれ生体の表皮に接するように、基材80に載置される。
【0024】
血流センサ30によって熱流束センサ20近傍の体表部の血流量を測定するためには、仮に熱流束センサ20の熱抵抗体20rが例えば円盤状に形成されていたとすると、熱抵抗体20rの直径Rの2倍程度の領域が核心部温度Tcの計測に影響を与えるため、図4に示すように、熱流束センサ20の熱抵抗体20rの直径Rの2倍、すなわち平面視で熱抵抗体20rを中心に直径2R程度の領域内に血流センサ30を設置する。1個の熱流束センサ20に対して血流センサ30を1個または複数個設けることができるが、本実施の形態においては、1個の熱流束センサ20に対して血流センサ30を1個設けるものとする。
【0025】
[生体内温度測定装置の測定原理]
次に、本実施の形態に係る生体内温度測定装置の測定原理について図5ないし図8を参照して説明する。
図5に示すように、生体90においては、表皮から皮下組織の深さ方向に一定の深さを超えたところに、外気温の変化等に左右されない温度、すなわち、核心部温度の領域が存在し、通常は、核心部温度Tcより表皮温度Tsの方が低く、核心部から表皮に向かって温度勾配が生じている。
【0026】
一般に、表皮温度Tsの時間温度変化は、図6に示すように、核心部からの熱流束qskinと空気中への熱流束qairとから、次の式(1)のように表される。
【0027】
【数1】
【0028】
ここで、ρは皮下組織の密度、Aは熱流束が貫く面の面積、cは皮下組織の熱容量、Lは表皮から核心部温度の温度領域までの深さ(距離)である。
【0029】
また、表皮から空気中への熱流束qairおよび核心部から表皮への熱流束qskinは、それぞれ比例定数h(空気中への熱放射係数、熱蒸散係数、熱伝達係数を含む)および皮下組織の熱伝導率kを用いて、次の式(2)のように表される。
【0030】
【数2】
【0031】
これを式(1)式に代入すると、次の(3)式のようになる。
【0032】
【数3】
【0033】
この(3)式より、表皮温度Tsは時定数τ=(ρL2c)/(hL+k)を持つため、核心部温度Tcが表皮温度Tsに反映されるまでの時間は、表皮から核心部温度の温度領域までの深さLの2乗に比例することがわかる。
【0034】
上述したように、表皮から核心部温度の温度領域までのみかけの深さLは血流量に依存することが知られており(図15参照。)、生体90においては、血流によって時々刻々と表皮から核心部温度の温度領域までのみかけの深さが変化している。これをモデル化するため、図7に示すように、血管からの熱流束qbloodを新たに定義して(1)式に追加し同様に解くと、血流量と時定数τとは図8で表される関係となり、このように時定数τの変化は血流量の変化の関数となる。
【0035】
以上のように、表皮から核心部温度の温度領域までの深さLが変化すると時定数τが変化すること、および血流量が変化すると時定数τが変化することから、血流量の変化によって表皮から核心部温度の温度領域までのみかけの深さLが変化することがわかる。
【0036】
なお、熱流束センサ20を用いた場合、2つの温度センサ20u、20sで計測された空気温度Taおよび表皮温度Tsの差ΔTと熱抵抗体20rの熱伝導率λと厚さLrから、熱抵抗体20rを貫く熱流束qrの大きさ(この熱流束qrは、図6または図7における空気中への熱流束qairに相当する。)を求めることができる。
核心部から表皮に向かって皮下組織を貫く熱流束の大きさと熱抵抗体20rを貫く熱流束の大きさが等しいと仮定すれば、演算回路40の第1算出部41(図1参照。)は、皮下組織の熱抵抗Rx、熱抵抗体20rの熱抵抗Rr、表皮温度Ts、空気温度Taから、次の(4)式に基づいて核心部温度Tcを算出することができる。
【0037】
【数4】
【0038】
[生体内温度測定装置の測定方法]
次に、本実施の形態に係る生体内温度測定装置の動作について、図9を参照して説明する。
なお、メモリ50には、事前に用意された血流量と時定数τとの関係f(vblood)(図8参照。)を表す関係式f(vblood)またはテーブルが記憶されているものとする。
【0039】
まず、熱流束センサ20の2つの温度センサ20u、20sを用いて温度を測定するとともに(ステップS10)、血流センサ30を用いて体表部の血流量を測定する(ステップS20)。この動作を複数回繰り返したところで空気温度Taおよび表皮温度Tsの変動が所定の範囲内に収まっているか否かを判断し(ステップS30)、収まっていなければ(ステップS30:No)熱流束は定常状態にないと判断して、ステップS10に戻り、ステップS10〜S30を繰り返す。
【0040】
一方、空気温度Taおよび表皮温度Tsの変動が所定の範囲内に収まっていれば(ステップS30:Yes)、熱流束は定常状態にあると判断して、表皮温度Tsおよび空気温度Taから核心部温度Tcを推定し(ステップS40)、遅延時間Δtを算出する(ステップS50)。遅延時間Δtの算出(ステップS50)では、メモリ50に記憶した血流量と時定数τとの関係f(vblood)を参照して、血流センサ30によって検出された体表部の血流量に対応した時定数τを求め、遅延時間Δtを算出する。遅延時間Δtは、事前に決定した定数αを用いて、下記の(5)式によって求めることができる。
【0041】
Δt=α×f(vblood) (5)
ここで定数αは、時定数τより求められる周波数応答における位相遅延から算出することができる。
【0042】
遅延時間Δtが算出されたら、予め定めた閾値と比較して(ステップS60)、算出された遅延時間Δtがその閾値より大きい場合(ステップS60:No)には、核心部温度の変化に追従できず、核心部温度Tcはもとより核心部温度Tcの変化を捉えることができないので、核心部温度の推定が不可能であったと判定して、アラームの発報など、所定のエラー処理を実行する(ステップS80)。
【0043】
一方、算出された遅延時間Δtがその閾値以下だった場合(ステップS60:Yes)は、その時点で推定された核心部温度Tcの時刻を遅延時間Δtの分だけ時間的にシフトして、時系列データを補正する(ステップS70)。
以上のステップを終了の指示があるまで(ステップS90:Yes)繰り返す。
【0044】
以上のようにして補正された核心部温度Tcの時系列データの一例を図10に示す。図10において、実線は実際の核心部温度を表し、〇印と□印は、それぞれ推定された補正前の核心部温度と補正後の核心部温度とを表す。血流量の変化に伴う遅延時間Δtを考慮しない場合(〇印)は、実際の核心部温度Tcと比較して時間軸上でずれが生じている。
これに対し、血流量に応じて算出された遅延時間Δtを用いて補正した時系列データでは、実際の核心部温度Tcとの時間軸上のずれが低減される。したがって、本実施の形態に係る生体内温度測定装置によれば、核心部温度の変動をより正確に把握することができる。
【0045】
例えば、本実施の形態に係る生体内温度測定装置において算出される補正量、すなわち遅延時間Δtは、血流量によって変動するため、補正された核心部温度Tcの時系列データからは、図11に示すように、従来失われていた核心部温度Tcの変動の周波数情報も復元することができる。これによって体内リズムとしての核心部温度Tcの変動をより精確に把握することが出来る。
【0046】
[第2の実施の形態]
次に図12および図13を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、上述した第1の実施の形態に係る生体内温度測定装置1と共通する構成要素については同一の符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0047】
第1の実施の形態に係る生体内温度測定装置1は、1個の熱流束センサ20に対して1個の血流センサ30を用いたが、第2の実施の形態に係る生体内温度測定装置1aは、1個の熱流束センサ20に対して複数の血流センサを備えている。具体的には、第2の実施の形態に係る生体内温度測定装置1aは、図12に示すように、シート状の基材80の上に、2つの温度センサ20u、20sを含む熱流束センサ20と、2つの血流センサ30−1、30−2と、演算回路40aと、メモリ50と、外部とのI/F回路として機能する通信回路60と、演算回路40aや通信回路60等に電力を供給する電池70とを備えている。
【0048】
本実施の形態に係る生体内温度測定装置1aは、1個の熱流束センサ20に対して2個の血流センサ30−1、30−2を備えていることに伴い、演算回路40aは、第2の算出部43aにおいて、血流量の代表値として2個の血流センサ30−1、30−2でそれぞれ測定した血流量の平均値を求め、メモリ50に記憶された関係を用いて、血流量の平均値に対応する時定数または遅延時間Δtを求めるように構成されている。
【0049】
2個の血流センサ30−1、30−2は、熱流束センサ20の熱抵抗体20rの近傍に配置される。このとき、熱抵抗体20rの直径Rの2倍程度の領域が核心部温度Tcの計測に影響を与えることを考慮すれば、図13に示すように、熱流束センサ20の熱抵抗体20rの直径Rの2倍、すなわち平面視で熱抵抗体20rを中心に直径2R程度の領域内に2個の血流センサ30−1、30−2を設置する。
【0050】
なお、本実施の形態においては、2個の血流センサ30−1、30−2を、図13に示すように、平面視で熱流束センサ20の熱抵抗体20rを挟んで線対象の位置に配置する。
【0051】
このように複数の血流センサを用いることによって熱流束センサの近傍の血流量を精度よく計測することができるので、遅延時間Δtの推定精度が上がり、核心部温度の変動をより正確に把握することが可能となる。
【0052】
なお、本実施の形態においては、2個の血流センサを平面視で熱流束センサ20の熱抵抗体20rを挟んで線対象の位置に配置しているが、これに限定されるものではなく、例えば、図14に示すように、2個の血流センサ30−1、30−2を、平面視で熱流束センサ20の熱抵抗体20rの中心を通り互いに直交する2つの線上に位置するように配置してもよい。
【0053】
また、本実施の形態においては、2個の血流センサ30−1、30−2を用いることとしたが、3個以上の血流センサを用いてもよいことは言うまでもない。
また、複数の血流センサでそれぞれ測定した血流量の代表値としては、これらの血流量の平均値を用いることができるが、平均値に代えて、最大値や最小値、または3個以上の血流センサを用いた場合は、これらの加えて中央値等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1、1a…生体内温度測定装置、20…熱流束センサ、20u、20s…温度センサ、20r…熱抵抗体、30…血流センサ、40…演算回路、50…メモリ、60…通信回路、70…電池、80…基材、90…生体。
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